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DCF 会計と現代会計システム

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DCF 会計 と現代会計システム

上 野 清 貴

Abs t r ac t

Thepur po s eo ft hi spa pe ri st oc o ns i de rdi s c o unt e dc a s hf lo w ( DCF)i na c c o unt a nc y,a nd s t udyt heme a nl ngO ft heDCFa c c o unt i nga sa na c c o unt i ngs ys t e m. Al t ho ughi tha st hea d va nt a g e t ha tDCFa c c o unt i ngt os o mee xt e nte na bl ei nve s t me ntde c i s i o n一 ma ki nga ndc o r po r a t eva l ua t i o n , i ta l s oha st hepr o bl e m s i mul t a ne o us l y.Thepr o bl e msa r et ha ti tdo e sno tha vear e a l i s t i cc o s to f c a pi t a li nt hi sa c c o unt i ngs ys t e m,t hepe r f o r ma nc ee va l ua t i o nf unc t i o ni sl a c ki ng,a ndt heva l ua ‑ t i o nme t ho di sno tf l e xi bl e.At r e ndo fDCFi sno tne c e s s a r i l yi na gr e e me ntwi t hat r e ndo fc o r

po r a t ee a r nl ngS ,a ndDCFa c c o unt i ngc a nno tgr a s pat r e ndo fc o r po r a t ee a r nl ngS .Fur t he r mo r e , ne i t he ra s s e t sno rapr o j e c tma ybef l e xi bl ye s t i ma t e dbyt hi sa c c o unt i ngs ys t e m, a sar e s ul ti tma y beunde r e s t i ma t e d.APV ( a d j us t e dpr e s e ntva l ue )a c c o unt i ng,CFROI( c a s hf l o wr e t ur no ni n

ve s t me nt )a c c o unt i ng,EVA ( e c o no mi cva l uea dde d)a c c o unt i nga ndr e a lo pt i o na c c o unt i nga r e a dvo c a t e da swha tc o nq ue r ss uc haf a ul to fDCFa c c o unt i nga ndi nhe r i t sa na dva nt a ge. Ho we ve r , DCFa c c o unt i ngi st hes t a r t i ngpo i nt so fc o r po r a t eva l ua t i o na ndc ur r e ntf i na nc ea c c o unt i ng, a ndi s be a r l ngar o l eo ft hef o unda t i o no ft hec ur r e nta c c o unt i ngs ys t e m.

Keywor ds:di s c o unt e dc a s hf l o w,f r e ec a s hf l ow,c o r por a t eva l ua t i on,f i na nc ea c c o unt i ng

Ⅰ はじめに

近年 ,会計界 において,伝統的な稼得利益 とともに,キ ャッシ ュ ・フローが注 目を集め ている。キ ャッシ ュ ・フローが重視 される原 因はい くつか考 え られるが,その最 も重要な 1つは,会計観および会計 目的の変遷 にある ように思われる。周知の ように,現代の会計 思考の中心は 「 意思決定有用性アプローチ」

であ り,会計の 目的は , 「 現在 お よび将来の 投資者,債権者その他の情報利用者が合理的 な投資 ,与信 お よび これに類似 す る意 思決 定 を行 うの に有 用 な情報 を提 供 」( FASB

[1 978]par. 34 :邦訳 26 頁)す ることである とされる。

そ して, この意思決定 に とって重要 となる のがキ ャッシ ュ ・フローにはかな らない。米 国財務会計基準審議会 ( FAS B) に よれば,

「 特定の営利企業 に最 も直接的な関心を もっ ている財務情報の潜在的な情報利用者は,一 般 に,彼 らの意思決定が予測 されるキ ャッシ ュ ・フローの金額,時期および不確実性 と関 連 しているので,良好なキ ャッシ ュ ・フロ「

を生み出す当該企業の能力に関心を もってい る 。 」 「したがって,財務報告は,投資者,債 権者その他の情報利用者が,当該企業への正 味キ ャッシ ュ ・イソフローの見込額,その時 期お よび不確実性をあ らか じめ評価すろのに 役 立 つ情報 を提供 しな ければ な らな い。」

( FAS B [1 978]par s. 25, 37 :邦訳 21, 28 頁)

(2)

この ように,会計において,キ ャッシ ュ ・ フ ロー情報 が非常 に重要 とな って きてい る が,上記 との関連 で特 に重要 なのは , 「割引 キ ャ ッシ ュ ・フ ロー 」( DCF,d i s c o u n t e d c a s hf l o w) 情報である 。DCF は,企業ない

しプロジ ェク トの将来のキ ャッシ ュ ・フロー 系列を予測 し, これ らを資本 コス トで割 り引 いた現在価値であ り,戦略的な投資意思決定 お よび企業価値評価のために多 く用い られて いる。企業価値は これ らの DCF の合計 とし て算定 され, これを数式で示せば,次の よう である。

企業価値 ‑ て

す+港 + ・ ・ ・

‑ t i& t ( 1 )

ここで, CFt は第 t 期 のキ ャッシ ュ .フ ローの予測額であ り , k は資本 コス トである。

そ して, このキ ャッシ ュ ・フローに関 して 特 に重要 であ り,具体的 に用 い られ るのが

「フ リー ・キ ャッシ ュ ・フロー 」( FCF,f r e e c a s hf l o w) にはかな らない。後述す るよう に, FCF は,営業活動 によるキ ャッシ ュ ・ フローか ら運転資本の増加額 と設備等への投 資額 を控除 した ものであ り,株主や債権者等 の投資者の側か ら見れば,彼 らに帰属する利 用可能なキ ャッシ ュ ・フローである。換言す れば, FCF とは,投資者 に 自由に分配で き るキ ャッシ ュ ・フローである。

本稿では,かかる DCF および FCF の重 要性 に鑑み, これ らを改めて会計学的に考察 し,会計システム としての DCF 会計の意義 を究明することを 目的 としている。本稿の内 容は以下の とお りである。

( 1 ) まず, FCF の意 味 を 明 らか に し,

FCF 会計お よび DCF 会計の概要 を説明 する。

( 2 ) 次に, FCF 会計および DCF 会計を具

体的な数値例によって計算 し,企業価値 を最終的に算定する。

( 3 ) これ らに よって, DCF 会計の全容が 明 らかになる と思われるので, これ らに 基づいて, DCF 会計 を機能的お よび会 計構造的側面 か ら検討 し,い くつかの観 点か らこの会計システムの問題点を指摘 する。

( 4 ) 最後 に, DCF 会計の利点を継承 し問 題点を超克する会計,つま り DCF 会計 の発展形態 を提示 す る とともに, DCF

会計の現代会計システムにおける意義な いし役割を明 らかにす る。

Ⅱ DCF 会計の概要

DCF は近年 の会計 において非常 に重要で あ り, その概略的な意味は, 将来キ ャッシ ュ ・ フローの割引現在価値である。そ して,こq) キ ャッシ ュ ・フロー として具体的に用い られ るのが FCF であることは,前述 した ところ であるが, DCF 会計 を本格的 に考察す るに 際 して, DCF 会計の前提 となる FCF 会計を 改めて考察 してお く必要がある。そ こで,こ の ことか ら論述を始めることにしよう。

1 FCF 会計

前述 した ように, FCF は,営業活動 によ るキ ャッシ ュ ・フローか ら運転資本の増加額

と設備等への投資額 を控除 した ものであ り, 株主や債権者等の投資者の側か ら見れば,彼 らに帰属する利用可能なキ ャッシ ュ ・フロー である。これをさらに厳密に定義するな らば,

FCF は 2 つの方法で定義す ることがで き, 両者の額は当然一致す ることになる。その 2 つの方法 とは,事業 アプ ローチ と財務 アプ ローチである。

事 業 ア プ ロー チ は事 業 活 動 に着 目し,

(3)

3

FCF を税引後営業利益 ( NOPAT,ne to pe r

a t i ngpr o f i ta f t e rt a x) 1 ) か ら純投資額 を控除

した もの と定義する。 この純投資額 とは投下 資本の増加額であ り,具体的には,運転資本 の増加額お よび設備投資額である。 NOPAT に減価償却費 を加 えた ものが営業 キ ャ ッシ ュ ・フロー ( グロス ・キ ャッシ ュ ・フロー) であ り,純投資額 に減価償却費 を加 えた もの が総投資額 であ るので ,FCF は通常次の よ うに表 される ( Co pe l a nd,拡o l l e ra ndMur r i n

[ 2 0 0 0 ]p. 1 6 8 :邦訳 1 9 5 頁) 0 FCF‑NOPAT 一純投資額

‑ [ NOPAT+ 減価償却費]

‑ [ 純投資額 +減価償却費]

‑営業キ ャッシ ュ ・フロー ー総投資額 ( 2 )

財務アプローチは株主および債権者 との財 務活動 に着 目し, FCF を株主 お よび債権者 の双方に帰属するキ ャッシ ュ ・フロー と定義 する。 これは,具体的には,支払利息,支払 配当金,新規借入金,借入金返済,増資,受 取利息,余剰有価証券等の増減額 となる。 し たが って, FCF は一般 に次の ように表 され る。

FCF ‑税引後支払利息 +借入金等の減少額 一借入金等の増加額 +支払配当金 一税引後受取利息 +余剰有価証券の増加額

一余剰有価証券の減少額 ( 3 ) 事業アプローチおよび財務アプローチに基 づいて算定 され る FCF は当然一致す る。そ して,キ ャッシ ュ ・フロー会計の財務諸表で あるキ ャッシ ュ ・フロー計算書は これ らに基 づいて作成 され ることになる。その場合, こ

の計算書は通常の形式 とは異な り,後述する ように,営業活動お よび投資活動 によるキ ャ ッシ ュ ・フローか ら投資者 に分配可能なキ ャ ッシ ュ ・フローを計算 し,その支払額 および 調達源泉 として,財務活動 に よるキ ャ ッシ

ュ ・フローを計算する とい う形式を とる。

2 DCF 会計

これまでは暗黙の うちに実際に生起 した取 引に基づ く,歴史的ない し過去的な FCF 会 計を説 明 して きたが,その延長線上 に,将来 の FCF を予測 し,それ らを資本 コス トで現 在価値 に割 り引 く DCF 会計が存在する。 こ の会 計 の主 な 目的 な い し機 能 は , 将 来 の FCF を予測す ることに よって,投資意思決 定のほかを と企業価値 を評価することである と いわれている。そこで, これが どの ように行 われるかをここで説明 してみ よう 。

DCF 会計 に よって企業価値 を評価 す る場 令 ,既述 の ように,企業価値 は将来期 間の FCF の現在価値 合計 とな る 。 すなわち,吹 の ようになる。

企業価値 ‑将来期間の FCF の現在価値 ( 4 )

問題は将来期間の FCF を どの ように予測 するかであるが, これには通常 「2 段階アプ ローチ」が とられる。それは,将来期間を予 測期間 と予測期間以降に分け,直近の一定期 間に対 して詳細な FCF 予測を行い,それ以 降の長期予測 は簡略化 す る とい う方法 であ る。 これによる と,企業価値 は次の ように表 される。

企業価値 ‑予測期間における FCF の現 在価値

+予測期間以降の FCF の現

在価値 ( 5 )

(4)

予測期間以降の FCF の現在価値 は,遠 い 将来 に対 して予測が継続す る と仮定 して算定 す る価値 であ るので 「 継続価値」 と呼ばれ,

‑般 に次の式で計算 され る 2 ) 0

継続価 値‑NOPA 三 丁二 l エ1 / g i ROI C) ( 6 ) WACC‑g

ここで,各記号は次の こ と表 している。

NOPATT . I ‑予測期間以降の 1 年 目にお ける標準化 された NOPAT g‑NOPAT の永続的な期待成長率 ROJ C ‑新規投資 に対 して期待 される投

下資本利益率

‑NOPAT/ 投下資本

WACC ‑加重平均資本 コス ト ( we i g ht e d a ve r a gec o s to fc a pi t a l )3)

以上 が DCF 会計 による企業価値評価の概 要であるが, これを実際に行 う場合の重要な ポ イン トは,予測期間において FCF を どの ように具体的 に予測するかである。 これに関 して,コープラン ド等に よれば,予測は次の ス テ ップ で 行 う こ とに な る ( Copel and , Ro l l e ra ndMur r i n [ 2 0 0 0 ]pp. 2 3 3 :邦訳 2 7 3 頁) 4 ) 0

( 1 ) どれだけの期間について, どれほ ど詳 細 に将来予測 をたてるのかを決定する。

上述 した ように, これ には一般 に2 段階 アプローチが適用 され る。

( 2 ) 将来の業績 について,戦略 レベルで見 通 しをたてる。 この場合,業界の特徴 と 企業の競争優位 ・競争劣位の双方 を考慮 す る。

( 3 ) 戦略 レベルの見通 しを,損益計算書, 貸借 対 照表 , FCF ,主要 指標 等 の財務 予測 に具体化す る。

( 4 ) 上の( 2 ) と ( 3 ) で作成 したケースに加 え, 異 な った シナ リオ に基 づ く予 測 をた て る。

( 5 ) 全体 として予測 に矛盾はないか,戦略 レベルの見通 しと適合す るかをチ ェック す る。特 に, ROI C ,売上高 お よび利益 成長率の予測結果 に注意す る。

これ らの作業が終了す る と,最後 に企業価 値 を算 定 し評価 す るため に以下 の手続 を行

う。

( 1 ) 予測 した各期の FCF を,加重平均資 本 コス ト ( WACC) を用 いて現在価値 に割 り引 く。

( 2 ) 継続価値 を, WACC を用 いて現在価 値 に割 り引 く。 なお,継続価値 は FCF

を予測す る期間の最終時点での価値 であ る た め , 現 在 価 値 に修 正 す る に は , FCF を予測 した期 間の年数分割 り引 く こ とにな る。例 えば, FCF の予測 を行 った期間が 1 0 年 であれば,継続価値 は 1 1 年 ではな く ,1 0 年で割 り引 く。

( 3 ) 各期の FCF の現在価値合計 に継続価 値 の現在価値 を加算 して,事業価値 とす る。次 に,事業価値の期中調整 を行 う。

FCF は期末 に一度 に発生 す るのではな く,期 中を通 じて平均的 に発生す るもの であ る。通常 の計算 では ,FCF が期末 に発生 した もの として,現在価値 を計算 してい るため, FCF が遅 くな りす ぎて い る月数分 ( その期の後半 に企業価値評 価 を行 っていれば,ほ とん どの場合 6 か 月かそれ以上) を, WACC を用 いて調 整す る。

( 4 ) 上 で算定 した ものに,非事業用資産の

価値 を加算 して,企業価値 とする。非事

業用資産 とは, 事業価値の算定 にあた り,

それ らの資産 か らの FCF が算入 されて

いない ような資産 である。例 えば,余剰

有価証券や,事業 と関連のない子会社 に

対す る投資 な どが これにあたる。 これ ら

の資産評価 には,それ らの資産が生み出

(5)

5

す将来 キ ャ ッシ ュ ・フ ロー を適切 な割 引 率 に基 づ いて現在価値 に修正 した もの を 用 い るか, もし くは時価 が存在 す る資産 については時価 を用 い る。

( 5 ) 次 に,株主価値 を算定 す るため に ,( 4 ) で算定 した企業価値 か ら,すべての有利 子負債 ,ハ イブ リッ ド証券 ,少 数株 主持 分 , そ の他 の債 務 な どの 時 価 を控 除 す る。

Ⅲ DCF 会計の計算

これ に よって ,FCF の意 味 ,FCF 会計 お よび DCF 会 計 の概 要 が 明 らか とな った の

で,本節 では この会計 システム を さ らに理解 す るため に,具体 的 な数値 例 に よって FCF 会計 お よび DCF 会計 の計算 を行 い,企業価 値 を最終 的 に算定 してみ よう。 その場 合 ,倭 用 す る数値 例 として, コー プラン ド等の数値 例 ( Copel and,Rol l erandMur r i n[ 2000]pp.

1 86‑1 90: 邦訳 21 7‑221 頁 お よび pp. 257‑261 :邦訳 304‑ 308 頁 ) を参考 とす る こ とにす る。

1 FCF会計

まず , FCF 会 計 の計算 か らで あ るが , い ま,あ る企業 の前期 と当期 の損益計算書 と貸 借 対 照 表 は表 1 お よび表 2 で あ った とし よ

う。

表 1 損 益計算書

前 期 当 期

売 上 南 ̲1 3, 51 2 1 3, 822

原 価 ( 7, 442) ( 7. , 447)

業 費 ( 4, 1 23) ( 4, 1 01 )

業 利 益 1, 2 03 1, 452

受 取 利 息 . 配 当 金 1 59 1 89 支 払 利 息 ( 1 23) ( 11 7) 税 引 前 利 益 1, 239 1, 52 4 法 人 税 ( 456 ) ( 51 8) 少 数 株 主 持 分 ( 2 1 ) ( 26)

当 期 利

762 980

普通株 主持分変動計算書

期 首 普 通 株 主 持 分 4, 51 4 5, 1 03

当 期 利

762 980

株式配 当金 .株式 買戻 し ( 1 76) ( 254)

評 価 替 え 損 益 1 3 4 ( 1 5 1 )

(6)

表 2 貸借対照表

前 期 当 期 事 業 用 現 金 2 7 6 2 8 3 余 剰 有 価 証 券 1, 5 9 5 1, 8 0 6

売 上 債 権 1, 2 75 1, 21 8 棚 卸 資 産 1, 0 2 6 9 9 6 そ の 他 濁 動 資 産 L4 8 6 4 9 0 流 動 資 産 合 計 14, 6 5 8 4, 7 9 3 総 有 形 固 定 資 産 1 3, 9 2 2 1 4, 2 0 0 減 価 償 却 累 計 額 ( 8, 3 6 8 ) ( 8, 4 5 9 ) 純 有 ̲ 形 固 定 資 産 5, 5 5 4 5, 7 41 投 資 及 び 前 払 金 9 4 5 1 , 0 8 0 資 産

.計 l l , 1 5 7 l l, 61 4 短 期 借 入 金 4 7 6 4 7 4 買 入 債 . 務 9 0 3 9 0 7 未 払 配 当.p金 1 0 6 1 2 9 そ の 他 流 動 負 債 1, 5 6 4 1, 7 0 8 流 動 負 債 合 計 3, 0 4 9 3, 21 8 長 期 借 入 金 9 0 9 1, 1 51

繰 延 税 金 6 2 9 6 01

過 去 勤 務 債 務 1 5 7 1 0 3 継 続 的 引 当 金 9 0 9 91 2 少 数 株 主 持 分 4 01 5 6 3 普 通 株 主 持 分 5, 1 0 3 5, 0 6 6

これ らの損益 計 算 書 お よび貸 借 対 照表 に 基 づ いて, FCF を計算 しなければ な らない が , そ の た め に は , ま ず 税 引 後 営 業 利 益 ( NOPAT) を計算 す る必要 があ る 5) 。 そ し て,これを行 ったのが表 3であ る。ここでは,

それは事業 アプローチお よび財務 アプローチ

で計算 されてお り,両者 の計算結果 は当然一

致 してい る。 なお, NOPAT を計算 す る際の

実効税率 は 3 5 % と仮定 してい る。

(7)

7

表 3 NOPAT

事 業 ア プ ロ ー チ

税 引 前

業 利

1 , 4 5 2

過 去 勤 務 債 務 に 関 す る 調 整 5

継 続 的 引 当 金 の 増 加 3

税 引 前 営 業 利 益 に 対 す る 税 金 ( 4 9 5 )

繰 延 税 金 の 増 減 ( 2 8 )

N O P′ A T 9 3 7

税 引 前 営 業 利 益 に 対 す る 税 金 5 1 8

納 税 引 当 金

支 払 利 息 に 対 す る 節 税 額 4卜

過 去 勤 務 債 務 に 対 す る 節 税 額 2

受 取 利 息 に 対 す る 税 金 ( 6 6 )

税 引 前 営 業 利 益 に 対 す る 税 金 . 4 9 5.

当 期 利 9 8 0

+ 繰 延 税 金 の 増 加 ( 2 8 )

+ 継 続 的 引 当 金 の 増 加 3

+ 少 数 株 主 海 分 2 6

調 整 後 当 期 利 益 9 81

+ 税 引 後 支 払 利 息 7 6

+ 過 去 勤 癖 債 務 に対 す る支 払 利 息 3

投 資 者 に 分 配 可 能 な 総 利 益 1 , 0 6 0

‑ 税 引 後 ̲ .

取 利 息 ( 1 2 3 )

これ に よって, NOPAT が判 明 したので, 業 ア プ ロー チ と財 務 ア プ ロー チ とが あ るの

FCF は容 易 に計算 で きる こ とにな る。 前述 で,両者 を計算 す る必要 があ る。 そ して,そ

した よ うに ,FCF を計 算 す る場 合 に も,事 れ を行 う と,表 4 の ようにな る。

(8)

表 4 FCF 事 業 ア プ ロ ー チ

営 .

業 C F の 計 算

N O P . A T 9 3 7

減 価 償 却 費 8 2 2

営 業 C F ・ 1 , 7 5 9

‑ 運 転 資 本 の 増 加 2 2 4

‑ 設 備 投 資 ( 1 , 0 0 9 )

総 投 資 ( 7 8 5 )

の れ ん 加 算 前 F C . F 9 7 4

の れ ん 投 資 ( 61 2 )

F c F 3 6 2

財 務 ア プ ロ ー チ

業 外 C F 2 8 6

税 引 後 受 取 利 息 ( 1 2 3 )

余 剰 有 価 証 券 の 増 加 2 1 1

税 引 後 支 払 利 息 7 6

過 去 勤 務 債 務 に 対 す る 支 払 利 息 3 借 ー 入 金 の 増 . 加 ( 2 4 0 )

過 去 勤 務 債 務 の 減 少 5 4

少 数 株 主 持 分 ( 1 3 6 )

配 当 金 2 3 1

F C F 3 6 2

( 1 ) 設備投資 は,有形 固定資産 の増加 と減 価償却費の合計 であ る。

( 2 ) 営業外 CF は,評価替 えの影響 と投資 及 び前 払 金 の増 加 を加 算 した もの で あ

る。

( 3 ) 少数株主持分 は,少数株主持分利益 か ら少数株主持分 の増加 を控除 した もので あ る。

( 4 ) 配 当金 は,支払配 当金 か ら未払配当金 の増加 を控除 した ものであ る。

そ して , この FCF の計 算 に基 づ いて , FCF を重視 したキ ャ ッシ ュ ・フ ロー計算書

を作成 す る と,表 5 の ようにな る。 この計算

書 では,通常 のキ ャッシ ュ ・フロー計算書の

形式 とは異な り,営業活動 お よび投資活動 に

よるキ ャッシ ュ ・フローか ら投資者 に分配可

能 なキ ャッシ ュ ・フローを計算 し,その支払

額 お よび調達源泉 として,財務活動 に よるキ

ャッシ ュ ・フローが計算 されてい るこ とに注

意 す る必要 があ る。すなわち,営業活動 お よ

び投資活動 に よるキ ャッシ ュ ・フローの過不

足 を財務活動 に よるキ ャッシ ュ ・フローが賄

ってい る とい う,通常 の企業活動 の実態 に沿

った形式 にな ってい るのであ る。

(9)

9

表 5 キ ャッシ ュ ・フ ロー計算書

業 C F の 計 算

N O P A T 9 3 7

減 価 償 却 費 8 2 2

業 C F 1 , 7 5 9

‑ 運 ,転 資 本 の 増 加 2 2 4′

‑ 設 備 投 資 ( 1 , 0 0 9 )

総 投 資 ( 7 8 5 )

. の れ ん 加 算 .前 F C F 9 7 4

の れ ん 投 資 ( 6 1 2 )

F C F 3 6 2

業 外 C F ( 2 8 6 )

税 引 後 受 取 利 息 1 2 3

余 剰 有 価 証 券 の 増 加 ( 2

11)

投 資 者 に 分 配 可 能 な C F

財 務 C F の 計 算

埠 引 後 支 払 利 息 7 6

過 去 勤 務 債 務 に 対 す る 支 払 利 息 3 借 入 金 の 増 加 ( 2 4 0 )

過 去 勤 務 債 務 の 減 少 5 4

少 数 株 主 持 分 ( 1 3 6 )

醍 . 当 金 2 3 1

2 DCF 会計 関す る前提条件 が表 6 お よび表 7 の ようであ

それでは次 に, DCF 会計 を具体 的 な数値 った としよう。 ここでは,予測期 間が 8 年 で

例 に よって計算 してみ よう。 いま,上記の企 あ り,それ らは現在 の実績値 に基づいて予測

業の予測損益計算書 お よび予測貸借対照表 に され る と仮定 されてい る。

(10)

表 6 予測損益計算書 に関する前提条件

1 2 3 4 ・5 6 7 8

売上高成長率 7. 0 5 % 5. l o 財 4. 9 0 % 6. 7 0 % 4. 5 0 % 4. 4 0 % 4. 3 0 % 4. 2 0 % 売上原価/売上高 5 3. 8 8 % 5 3. 8 8 % 5 3. 8 8 % 5 3. 8 8 % 5 3. 8 8 % 5 3. 8 8 % 5 3ー 8 8 % 5 3. 8 8 % 営業費/売上高 2 9. 6 7 % 2 9. 6 7 % 2 9. 6 7 % 2 9. 紳% 2 9. 6 7 % 2 9. 6 7 % 2 9. 6 7 % 2 9. 6 7 % 金利

余剰有価証券運用金利 3. 3 % 3. 3 % 3. 3 3. BO O 3. 3 % 3. 30 0 3, 3 % 3. 30 0 既存借入金の金利 8. 5 % 8. . 5 % 8. 5 % ・ 8. 5 兎 8. 5 % 8. 5 % 8. 5 % H. 50 0 新規有利子負債の金利 4. 3 % 4. 3 % 4. 3 % 4. 3 % 4. 3 % 4. 3 % 4. 3 % 4. 3 % 法人税

EBⅠ TA みな し税率 ・ 3 3. 8 % 3 3. 8 % 3 3. 8 % 3 3. 8 % 3 3. 8 % 3 3. 8 % 3 3. 8 % 3 3. 8 % 実効税率 3 5. 0 % 3 5. 0 % 3 5. 0 % 3 5. 0 % 3 5. 0 % 3 5. 0 % 3 5. 0 % 3 5. 0 %

繰延税金増加 みな し法人税 /E BⅠ TA 3. 0 % 3. 0 % 3. 0 % 3. 0 % 3. 0 % 3. 0 % 3. 0 % 3. 0 % 少数株主持分

利益中の少数株主持分 /EBⅠ TA 2. 8 2 % 2. 8 2 % 2. 8 6 % 2. 8 7 % 2. 8 2 % 2. 8 2 % 2. 8 2 % 2. 8 2 %

少数株主持分に対する 配当性 向 6 0. 0 0 % 6 0. 0 0 % 6 0. 0 0 % 6 0. 0 0 % 6 0. 0 0 % 6 0. 0 0 % 6 0. 0 0 % 6 0. 0 0 %

(11)

i F l

表 7 予測貸借対照表に関する前提条件

1 2 3 4 5 6 7 8

設備投資及び減価償却費

有形固定資産/売上高 40. 9 6 % 41. 01 % 41. 06 % 41. 2 2 % 41. 1 7 % 41. . 2 0% 41. 2 3 % 41. 26 %

減価償却費/ 看形 固

定資産 ( 期末) 1 4. 3 0 % 1 4. 28 % 1 4. 2 7 % 1 4. 22 % 1 4. 2 2 % 1 4. 22 % 1 4, 2 2 % 1 4. 22 %

. 除却 資産 の減価償却

‑/総 有形 固定資産 1. 00 % 1. 00 % 1. 00 % 1. 0 0 % 1. Od % 1. 0 0% 1. d o% 1. 00 % その他資産

投資及び前払金成長率 5. 00 % 5. 0 0% 5. 00 % 5. 0 0 % 5. 00 % 5. 0 0 % 5. 00 % 5. 0 0%

余剰 有価証券 1, 409! 82 0 1, 077 9 351 5 30! 53 0 5 30 5 3 0 運転 資金

棚卸資産/ 売上 高 7. 21 % 7. 21 % 7. . 21 % 7. 2 0% 7. 20 %′ 7. 2 0 % 7. 2 0 % 7. 2 0 % 売上債権/ 売上高 8. 81 % 8. 82 % 8. 82 % 8. 81 % 8. 81 % 8. 81 % 8. 81 % 8. 8i % その他流動資産/売上高 3. 5 4 % 3. 5 4 % 3. 5 4 % 3. 5 4% 3. 55 % 3. 55 % 3∴ 55 % 3. 5 5 % 事業用現金/ 売上高 2. 0 4% 2. 0 4 % 2. . 04 % 2. 05 % 2. 05 % 2. 05 % 2. 05 % 2. 05 % 買入債務/ 売上高 6. 5 6 % 6. 5 6 % 6. 5 6 % 6」 56 % 6. 56 % 6. 56 % 6. 56 % 6. 5 6 % その他流動負債/売上高 ll. 7 7 % l l. 77 % l l. 76% ll. 7 7% ll. 7 7 % l l. 77 % l l. 7 7 % l l. 77 %

資本 の部

配 当性 向 2 5. 8 8% 1 0 0. 00 % 25. 99 % 2 6. 48 % 1 00. 0 0% 76. 05 % 7 6. 07 % 76. 37 %

のれ ん償却 25 3 91 9 5 コ t M 1 0 8 0 0 0

その他負債

短期 借入金 21 8 1 5 0 2 57 0 0 0 0 0

長期借 入金 9 33 7 8 3 5 26 52 6 52 6 5 26 5 26 5 26 過去 勤務債務 1 03 1 03 1 03 1 03 1 03 1 03 1 03 1 03 継続 的引当金 989 1, 0 65 1, 1 4 2 1, 21 9 1, 2 95 1, 372 1, 4 49 1, 5 25

これ らの前提条件 に基づいて予測損益計算 お よび表 9 の ようになる。

書お よび予測貸借対照表 を作成する と,表 8

(12)

表 8 予測損益計算書

1 2 3 4 5 6 7 8

売 上 高 1 4, 7 9 6 1 5, 5 51 1 6, 31 3 1 7, 4 0 6 1 8, 1 8 9 1 8, 9 8 9 1 9, 8 0 6 2 0, 6 3 8

営 業 費 ( 4, 3 9 0 ) ( 4, 61 4 ) ( 4, 8 4 0 ) ( 5, 1 6 4 ) ( 5, 3 9 6 ) ( 5, 6 3 4 ) ( 5, 8 7 6 ) ( 6, 1 2 3 ) 減 価 償 却 費 ( 8 6 7 ) ( 91 1 ) ( 9 5 6 ) ( 1, 0 2 0 ) ( 1, 0 6 5 ) ( 1」

13)

( 1, 1 61 ) ( 1, 21 1 ) 営 業 利 益 1, 5 6 7 1, 6 4 8 1, 7 2 8 1, 8 4 4 1, 9 2 9 2, 01 1 2, 0 9 8 2, 1 8 5 受 取 利 息 .配 当 金 5 9 4 6 2 7 3 5 3 0 1 7 1 7 1 7 支 払 利 息 ( 1 3 8 ) ( 9 7 ) ( 7 9 ) ( 6 6 ) ( 4 5 ) ( 4 5 ) ( 4 5 ) ( 4 5 ) 税 引 前 利 益 1, 4 8 8 1, 5 9 7 1, 6 7 6 1, 81 3 1, 91 4 1, 9 8 3 2, 0 7 0 2, 1 5 7 法 人 税 ( 5 0 3 ) ( 5 3 9 ) ( 5 6 6 ) ( 61 3 ) ( 6 4 7 ) ( 67 0 ) ( 7 0 0 ) ( 7 2 9 ) 少 数 株 主 持 分 ( 4 2 ) ( 4 5 ) ( 4 8 ) ( 5 2 ) ( 5 4 ) ( 5 6 ) ( 5 8 ) ( 6 1 ) 当 期 利 益 9 4 3 1, 01 3 1, 0 6 2 1, 1 4 8 1, 21 3 1, 2 5 7 1, 31 2 1, 3 6 7

普通株主持分変動計算書

期 首 普 通 株 主 持 分 5, 0 6 6 5, 51 2 ̲ 5, 4 21 6, 1 1 2 6, 6 5 7 6, 5 4 9 6, 8 5 0 7, 1 6 4 当 期 利 益 9 4 3 1, 01 3 1, 0 6 2 1, 1 4 8 1, 21 3 1, 2 5 7 1, 31 2 1, 3 6 7 株式配当金 .株式買戻し ( 2 4 4 ) ( 1, 01 3 ) ( 2 7 6 ) ( 3 0 4 ) ( 1, 21 3 ) ( 9 5 6 ) ( 9 9 8 ) ( 1, 0 4 4 )

評 価 香 え 損 益 0 0 0 0 0 0 0 0

の れ ん 償 却 ( 2 5 3 ) ( 9 日 ( 9 5 ) ( 2 9 9 ) ( 1 0 8 ) 0 0 0

(13)

1 3

表 9 予測貸借対照表

1 2 3 4 5 6 7 8

事 業 用 現 金 3 0 2 31 8 3 3 3 3 5 6 3 7 2 3 8 9 4 0 6 4 2 3 余 剰 有 価 証 券 1, 4 0 9 8 2 0 1, 07 7 9 3 5 5 3 0 5 3 0 5 3 0 5 3 0 売 上 債 権 1, 3 0 4 1, 3 71 1, 4 3 8 1, 5 3 4 1, 6 0 3 1, 6 7 3 1, 7 4 5 1, 81 8 棚 卸 資 産 1, 0 6 7 1, 1 21 1, 1 7 6 1, 2 5 4 1, 31 0 1, 3 6 7 1, 4 2 6 1, 4 8 6 そ の 他 流 動 資 産 5 2 4 5 51 5 7 8 61 7 6 4 5 6 7 4 7 0 3 7 3 3 流 動 資 産 合 計 4, 6 0 6 4, 1 81 4, 6 0 2 4, 6 9 6 4, 4 6 0 4, 6 3 3 4, 81 0 4, 9 9 0 総 有 形 固 定 資 産 1 5, 2 4 4 1 6, 31 9 1 7, 4 31 1 8, 7 3 4 1 9, 9 4 2 21, 1 91 2 2, 4 8 3 2 3, 81 8 減 価 償 却 累 計 額 ( 9, 1 8 3 ) ( 9, 9 4 1 ) ( 1 0, 7 3 3 ) ( l l, 5 7 7 ) ( 1 2, 4 5 4 ) ( 1 3, 3 6 7 ) ( 1 4, 31 6 ) ( 1 5, 3 0 2 ) 純 有 形 固 定 資 産 6, 0 61 6, 3 7 8 6, 6 9 8 7, 1 7 5 7, 4 8 8 7, 8 2 4 8, 1 6 7 8, 51 6 投 資 及 び 前 払 金 1, 1 3 4 1, 1 9 0 1, 2 5 0 1, 31 2 1, 3 7 8 1, 4 4 7 1, 51 9 1, 5 9 5 資 産

計 l l, 8 01 l l, 7 4 9 1 2, 5 5 0 1 3, 1 6 5 1 3, 3 2 6 1 3, 9 0 4 1 4, 4 9 6 1 5, 1 01 短 期 借 入 金 21 8 1 5 0 2 5 7 0 0 0 0 0

買 入 債 務 9 71 1, 0 2 0 1, 0 7 0 1, 1 4 2 1, 1 9 3 1, 2 4 6 1, 2 9 9 1, 3 5 4 未 払 配 当 金 1 3 8 1 4 5 1 5 2 1 6 2 1 6 9 1 7 9 1 8 7 1 9 4 そ の 他 流 動 負 債 ‑ 1, 7 41 1, 8 3 0 1, 91 9 2, 0 48 2, 1 4 0 2, 2 3 5 2, 3 31 2, 4 2 9 流 動 負 債 合 計 3, 0 6 8 3, 1 4 5 3, 3 9 8 3, 3 5 2 3, 5 0 2 3, 6 6 0 3, 81 7 3, 9 7 7 長 期 借 入 金 9 3 3 7 8 3 5 2 6 5 2 6 5 2 6 5 2 6 5 2 6 5 2 6 繰 延 税 金 61 7 6 3 4 6 51 6 7 0 6 9 0 71 0 7 31 7 5 3 過 去 勤 務 債 務 1 0 3 1 0 3 1 0 3 1 0 3 1 0 3 1 0 3 1 0 3 1 0 3 継 続 的 引 当 金 9 8 9 1, 0 6 5 1, 1 4 2 1, 21 9 1, 2 9 5 1, 3 7 2 1, 4 49 1, 5 2 5 少 数 株 主 持 分 5 7 9 5 9 8 61 8 6 3 8 6 61 6 8 3 7 0 6 7 3 0 普 通 株 主 持 分 5, 51 2 5, 4 21 6, 1 1 2 6, 6 5 7 6, 5 4 9 6, 8 5 0 7, 1 6 4 7, 4 8 7

前項 と同様 に, これ らの予測損益計算書お よび予測貸借対照表 に基づいて,予測 FCF を計算す るためには,まず予測 NOPAT を 計算する必要がある。そ して, これを行 った のが表 1 0 であ る 6) 。 ここで も,それは事業ア

ブローチおよび財務アプローチによって計算

されてお り,両者の計算結果は当然一致 して

い る。 また,予測 NOPAT の計算 に際 して

の実効税率はやは り 35 % が仮定 されている。

(14)

表 1 0 予測 NOPAT

1 2 3 4 ・5 6 7 8

事 業 ア プ ロ ー チ

税 引 前 営 業 利 益 1, 5 6 7 1, 6 4 8 p 1, 7 2 8 1, 8 4 4 1, 9 2 9 2, 01 1 2, 0 9 8 2, 1 8 5

過去勤務債務に関する調整 4 4 4 4 4 4 4 4 .

継 続 的 引 当 金 の 増 加 7 7 7 6 7 7 7 7 7 6 7 7 7 7 7 6 調 整 後 税 引前 営 業 利 益 1, 6 4 8 1, 7 2 8 1, 8 0 9 1, 9 2 5 2, 0 0 9 2, 0 9 2 2, 1 7 9 2, 2 6 5 税引前営業利益に対する税金 ( 5 3 1 ) ( 5 5 8 ) ( 5 8 6 ) ( 6 2 5 ) ( 6 5 3 ) ( 6 8 1 )

(

7

11)

( 7 4 0 ) 繰 延 税 金 の 増 減 .1 6 1 7 1 7 1 9 2 0 2 0 21 2 2 N b p A T 1, 1 3 3 1, 1 8 7 1, 2 4 0 1, 31 9 1, 3 7 6 1, 4 31 1, 4 8 9 1, 5 4 7

税引前営業利益に対する税金

納 税 引 当 金 5 0 3 5 3 9 5 6 6 61 3 6 4 7 6 7 0 7 0 0 7 2 9 支払利息に対する節税額 4 8 3 4 2 8 2 3 1 6 1 6 1 6 1 6

過去勤務債務に対する節税額 1 1 1

. 1

1 1 p 1 1

受取 利 息 に対 す る税 金 ( 2 1 ) (

1 6 )

( 那 ( 1 2 ) い

(い 捕 ) 叫

税引前営業利益に対する税金 5 31 5 5 8 5 8 6 6 2 5 6 5 3 6 81 71 1 7 4 0 財 務 ア プ ロ ー チ

当 期 利 益 9 4 3 1, 01 3 1, 0 6 2 1, 1 4 8 1, 21 3 1, 2 5 7 1, 31 2 1, 3 6 7 +繰 延 税 金 の 増 加 1 6 1 7 1 7 川 2 0 2 0 21 2 2 + 継続 的 引 当金 の増 加 7 7 7 6 7 7 7 7 7 6 7 7 7 7 7 6

調 整 後 当 期 利 益 1, 0 7 8 1, 1 51 1, 2 0 4 1, 2 9 6 1, 3 6 3 1, 41 0 1, 4 6 8 1, 5 2 6 +税 引 後 支 払 利 息 9 0 6 3 51 4 3 2 9 2 9 2 9 2 9

+過去勤務債務に対する支払利息 3 3 3 3 3 3 3 3

投資者に分配可能な総利益 1, 1 71 1, 21 7 1, 2 5 8 1, 3 4 2 1, 3 9 5 1, 4 4 2 1, 5 0 0 1, 5 5 8

‑ 税 引 後 受 取 利 息 ( 3 8 ) ( 3 0 ) ( 1 8 ) 豆3 1

(

1 恒 り1 1

(

1 い りい

これに よって,予測 NOPAT が判 明 した こで も, FCF は事業 アプローチお よび財務 ので,予測 FCF は容易 に計算で きることに アプローチに基づいて計算 されている。

な り,それを行 うと,表1 1 の ようになる。 こ

(15)

1 5

表 1 1 予測 F CF

事 業 ア プ ロ ー チ ・ 1 2 3 4 5 6 7 8

営 業 C F の 計 算

N O P .A T 1, 1 3 3 1, 1 8 7 1, 2 4 0 1, 31 9 1, 3 7 6 1, 4 31 1, 4 8 9 1, 5 4 7 減 価 償 却 費 8 6 7 91 1 9 5 6 1, 0 2 0 1, 0 6 5 1, 1 1 3 1, 1 61 1, 21 1

業 C F 2, 0 0 0 2, 09 8 ・ 2, 1 9 6 2, 3 3 9 2, 4 41 2, 5 4 4 2, 6 5 0 2, 7 5 8

‑ 運転資本の増加( 減少) (

11 3)

( 2 6 ) 豆5 1 ( 3 5 ) ( 2 6 ) ( 2 5 ) ( 2 8 ) ( 2 7 )

‑ 設 備 投 資 ( 1, 1 8 7 ) ( 1, 2 2 8 ) ( 1, 2 7 6 ) ( 1, 4 7 9 ) ( 1, 3 9 6 ) ( 1, 4 4 9 ) ( 1, 5 0 4 ) ( 1, 5 6 0 ) 紘 . 投 資 ( 1, 3 0 0 ) ( 1, 2 5 4 ) ( 1, 3 0 1 ) ( 1, 51 4 ) ( 1, 4 2 2 ) ( 1, 4 7 4 ) ( 1, 5 3 2 ) ( 1, 5 8 7 ) の れ ん 投 資 ( 2 5 3 ) ( 9 p l ) ( 9 5 ) ( 2 9 9 ) ( 1 0 8 ) 0 0 0

F C F 4 4 7 7 5 3 8 0 0 5 2 6 91 1 1, 0 7 0 1, 1 1 8 . 1, 1 71 財 務 ア プ ロ ー チ

営 業 外 C F 5 4 5 6 6 0 6 2 郎 6 9 7 2 7 6

税 引 後 受 取 利 息 ( 3 8 ) ( 3 0 )

(18)

( 2 3 )

Ll恒

ぐ 1 い

L

l n ( 1い 余剰有価証券の増加( 減少) ( 3 9 7 ) ( 5 8 9 ) 2 5 7 ( 1 4 2 ) ( 4 0 5 ) 0 0 . 0

税 引 後 支 払 利 息 9 0 6 3 51 4 3 2 9 2 9 2 9 2 9

過去勤務債務に対する支払利息 3 3 3 3 3 3 . 3 3

借 入 金 の 減 少 (増 加 ) 4 7 4 21 8 1 5 0 2 5 7 0 0 0 0

過去勤務債務の減少( 増加)

0㌔

0 0 0 0 0 0 0

少 数 株 主 持 分 2 6 2 6 2 8 3 2 31 3 4 3 5 3 7 配 当 金 2 3 5 1, 0 0 6 2 6 9 2 9 4 1, 2 0 6 9 4 6 9 9 0 1, 03 7

( 1 ) 設備投資 は,有形固定資産の増加 と減価 償却費の合計である。

( 2 ) 営業外 CF は,評価替 えの影響 と投資及 び前払金の増加 を加算 した ものであ る。

( 3 ) 少数株主持分は,少数株主持分利益 か ら 少 数株 主持分 の増 加 を控 除 した もので あ

る。

( 4 ) 配 当金は,支払配 当金 か ら未払配 当金の

増 加 を控 除 した もので あ る。

そ して,前項 と同様 に, この予測 FCF の

計算 に基づ いて, FCF を重視 したキ ャ ッシ

ュ ・フロー計算書を作成す る と,表 1 2 の よう

になる。

(16)

表1 2 予測キ ャッシュ ・フ ロー計算書

1 2 3 4 5 6̲ 7 8

営 業 C F の 計 算

N O P A T 1, 1 3 3 1, 1 8 7 1, 2 4 0 1, 91 9 1, 3 7 6 1, 4 31 1, 4 8 9° 1, 5 4 7 減 価 償 却 費 8 6 7 91 1 9 5 6 1, 0 2 0 1, 0 6 5 1, 1 1 3 1, 1 61 1, 21 1 営 業 C F 2, 0 0 0 2, 0 9 8 2, 1 9 6 2, 3 3 9 2, 4 41 2, 5 4 4 2, 6 5 0 2, 7 5 8

‑ 運転資本の増加( 減少) ( 1 1 3 ) ( 2 6 ) ( 2 5 ) . 再5 1 ( 2 6 ) 鳥5 1 ( 2 8 ) ( 2 7 )

‑設 備 投 資 ( 1, 1 8 7 ) ( 1, 2 2 8 ) ( 1, 2 7 6 ) ( 1, チ 7 9 ) ( 1, 3 9 6 ) ( 1, 4 4 9 ) ( 1, 5 0 4 ) ( 1, 5 6 0 ) 総 投 資 ( 1, 3 0 0 ) ( 1, 2 5 4 ) ( 1, 3 0 : 1 ) ( 1, 51 4 ) ( 1, 4 2 2 ) ( 1, 4 7 4 ) ( 1, 5 3 2 ) ( 1, 5 8 7 ) の れ ん 加 算 前 FCF 7 0 0 8 4 4 8 9 5 8 2 5 1, 01 9 1, 0 7 0 1, 1 1 8 1, 1 71 の れ ん 投 資 ( 2 5 3 ) ( 9 1 ) ( 9 5 ) ( 2 9 9 ) ( 1 0 8 ) 0 0 0

F C F 4 47 7 5 3 8 0 0 5 2 6 91 1 1, 0 7 0 1, 1 1 8 1, 1 71 営 業 外 C F ( 5 4 ) ( 5 6 ) ( 6 0 ) ( 6 2 ) ( 6 6 ) ( 6 9 ) ( 7 2 ) ( 7 6 ) 税 引 後 受 取 利 息 3 8 3 0 1 8 2 3 1 9 l l l l l l 余剰有価証券の減少( 増加) 3 9 7 5 8 9 ( 2 5 7 ) 1 4 2 4 0 5 0 0 0

投資者 に分配可能 な CF 8 2 8 1, 31 6 5 01 6 2 . 9 1, 2 6 9 1, 01 2 1, 0 5 7 1, 1 0 6 財 務 C F の 計 算

税 引 後 支 払 利 息 9 0 6 3 51 4 3 2 9 2 9 2 9 2 9

過去勤務債務に対する支払利息 3 3 3 3 3 3 3 3

借 入 金 の 減 少 ( 増加) 4 7 4 21 8 1 5 0 2 5 7 0 0 . 0 0

過去勤務債務の減少( 増加) 0 0 0 0 0 0 0 0

少 数 株 主 持 分 2 6 2 6 2 8 3 2 31 3 4 3 5 3 7 配 当 金 2 3 5 1, 0 0 6 2 6 9 2 9 4 1, 2 0 6 9 4 6 9 9 0 1, 0 3 7

以上 によって,予測 FCF が算定 されたの で, さ らに,企業価値評価 のため に,予測 FCF の現在価値 および継続価値の現在価値, すなわち DCF を計算 し, これ らに基づいて 企業価値 を最終的に計算することにしよう。

その場合,計算の便宜上,予測期間を 7 年 と し, 8 年 目の予測数値 を継続価値の計算基礎 にすることとする。

この場合,予測 FCF の現在価値計算は容 易であ り,ポイン トは継続価値の計算である が, これは ( 6)式 を用 いて行 うことがで き る。表 1 0 および注 6 より,新規投資 にかかる ROI C が1 2. 93 % ( ‑1, 547 / ll, 967) であるこ とが明 らかになるので,いま WACC を6. 7

% とし, NOPAT の成長率を 4%であるとす

ると,継続価値 は次の ようになる。

(17)

1 7

継続価 値 NOPAT 8 ( I / Rol e) WACC‑g

1, 5 4 7 ( 1‑4 %/1 2. 9 3 %) 6. 7 %‑4 %

‑3 9, 5 71

これに よって, DCF に よる事業価値 を計 算 す る こ とがで き, これ を行 う と,表 1 3 の よ うにな る。 なお, こ こでの期 中調整値 の 1. 0 3 3 は, 1. 0 6 7 の 0. 5 乗 であ る。

表 1 3 DCF による事業価値

FCF 割 引率 DCF 1 4 4 7 0. 9 3 7 2 41 9 2 7 5 3 0. 8 7 8 4 6 61 3 8 0 0 0. 8 2 3 2 6 5 9 4 5 2 6 0. 7 71 5 4 0 6 5 91 1 0. 7 2 3 . 1 6 5 9 6 1, 0 7 0 ・0. 6 7 7 7 7 2 5 7 1, 1 1 8 0. 6 3 51 71 0

継 続 価 値

事 業 価 値 3 9, 5 71 0. 6 3 51 2 2 5, 9, 3 1 31 7 0

期 中 調 整

調 整 後 事 業 価 値 1. 0 3 3

そ して最後 に,企業価値 お よび株主価値 を DCF 会計が完了す るりである。

計算する と表 1 4 の ようにな り, これによって

表 1 4 企業価値 および株主価値

事 業 価 値

余 剰 有 価 証 券 そ の 他 の 非 事 業 用 資 産

企 業 価 値

借 入 金

過 去 勤 務 債 務 少 数 株 主 持 分

株 主 価 値

直 近 の 発 行 済 株 式 数 1 株 当 た り 価 値

3 0, 9 3 4

3, 0 9 3

(18)

Ⅳ DCF会計の問題点

これまで ,FCF の意味および FCF 会計な らびに DCF 会計の概要 を説明 し,次にこれ らの会計システムを具体的な数値例 によって 解説 した。 これに よって, DCF 会計の全容 が明 らかになった ことと思われる。そ こで, 本節では これ らを受けて, DCF 会計 を機能 的および会計構造的側面 か ら検討 し, この会 計システムの問題点をい くつかの観点か ら指 摘 してい きたい。その観点 とは,資本 コス ト, 投賛意思決定および企業価値評価の観点であ

る。.

1 資本 コス ト

資本 コス トは資本 に価値 を付加するために 企業が最低限稼得 しなければな らない収益率 である。それは,投資者が同等の リスクをも つ企業の株式や債券 に投資 して稼得が期待で きる全体の収益率に等 しい機会費用である。

注 3 で示 した ように,この資本 コス トは負債 コス トと株主資本 コス トとに分け られる。

負債 コス トは,負債の利息および元本の返 済 に対 す る信用 リス クに見合 う収益率 であ る。 これは具体的には負債の利子率を税引後 で示 した ものであるが,その利子率 として, 現在の負債の利率ではな く,企業が新規 に負 債を借 り入れ ようとする ときに支払わなけれ ばな らない利率が採用 される。いま,税引前 の負債の利子率を bとし,実効税率を t とす るな らば,負債 コス トは ( 1‑i ) b とな る。す なわち,負債 コス トには節税効果が働 くこと になる。

株主資本 コス トは,株主が個 々の企業の株 式を所有す ることによる期待収益率であ り, その計算 には資本資産評価モデル ( CAPM , c a pi t a la s s e tpr i c i ngmo de l )を用いることが 多い。そこでは,それは国債等の無 リスクの

収益率に当該企業の株式 リスク ・プレミアム を加えた もの となる。いま,無 リスクの収益 率を r f ,株式市場全体の リスク ( 株式市場全 体の期待収益率)を指,株式市場全体 に対す る個別株式の リスク ( 市場全体 に対する個別 企業の株価のボラテ ィリテ ィ)を βとするな らば,株主資本 コス ト b)は次の ように表 される。

y‑r f + P( r m‑r f ) ( 7 ) ここで, ( r m ‑r f )は株式市場の リスク ・プ レミアムであ り, これを r pで表す と,株主 資本 コス トは次の ようになる 7) 0

y‑r f+βr b ( 8 )

そ して,企業全体の資本 コス トはこれ らの 負債 コス トと株主資本 コス トを,投下総資本 に対する負債 と株主資本 との比で加重平均 し た もの となる。 したがって, これは加重平均 資本 コス ト ( WACC,we i ght e da ve r a gec o s t o fc a pi t a l ) と呼ばれる。いま,総資本を TC , 負債 を D ,株 主資本 を E とす るな らば, WACC は,注 3 で示 した ように,次の よう

になる。

WACC‑( 1‑i ) bxD/ TC+yxE/TC ( 9 )

問題は, この WACC が資本 コス トとして 適 しているか どうかであ るが, WACC が機 能するためには,企業の資本構成が長期的に 変化 しないことが必要である。すなわち,企 業は将来にわた り同 じ市場価値での負債比率 を維持 してい くために資本構成のバ ランスを 回復 しなければな らない。

もちろん,現実の社会は,その ような機械

的かつ強制的な形で資本構成のバランスを回

復 させ ようとは しない。実際に WACC を活

用するためには,長期的な 目標負債比率に徐

々に, しか し確実に近づいてい くと仮定すれ

(19)

1 9

ば十分である。 しか し,企業が例 えば負債の 返済計画の ような資本構成の重要な変更を計 画 してい る場合 には, WACC は機能 しない のである ( Br e a l e ya ndMye r s[ 2 0 0 0 ]:邦訳 上 6 0 4 頁) 0

これに関連 して, WACC は もう 1 つの問 題点を有 している。それは, WACC を算定 す る際 に重要 な計算要素 とな る βが過去 の デー タに基づいて将来を予測する方法 を とっ ていることである。 βは,株式市場全体の平 均価格変動 を基準 とした場合,個別企業の株 式の価格変動が平均価格変動を どれほ ど上回 っているか,あるいは下回っているかを示す 数値 である。 これは過去のデータに基づいて 算定 された ものであ り, WACC が機能す る ためには,将来 に対する直接的な予測が必要 であ るにもかかわ らず,それがなされないの であ る。

この こ とをマ ッデソは次 の ように述 べ, WACC の ような資本 コス トを次の ように批 判 してい る 。「 DCF の割引率の算定 に関 し て,われわれは従来 の資本資産評価 モ デル ( CAPM) お よび βを利用 しない。株式市 場における過去の リターンについて, どれだ け無 リスク金利 を上回るプレミアムが存在 し ていたか とい う,言い換 えれば,過去を見て 将来 を予想する方法である βと呼ぶ疑わ しい リスク指標 に根ざしているか らである。‑‑・

一般的に使われている評価モデルでは,割引 率の計算が予想純キ ャッシ ュ ・フローの算出 過程 か ら独立 して存在 している。すなわち, 割引率の妥当性を判断するフィー ドバ ック ・ シ ス テ ム が 存 在 して い な い の で あ る。

CAPM お よび βは,実証的 に有益だか らで はな く,それが主流 となっている企業財務論 において基準化 されてお り, しか も数学的優 美さ とい う理 由だけで活用 されている面があ

る 。 」( Ma dde n[ 1 9 9 9 ]p. 1 0 :邦訳 1 2 頁)

2 投資意思決定

次に,投資意思決定 と DCF 会計 との関係 を考 えてみ よう。従来か ら用い られている投 資意思決定方法でポピュラーなのは正味現在 価値法 ( NPV 法 ,ne tpr e s e ntva l uemo de l ) であ り, ここに DCF 会計が用い られる。

これ は ,投 資 案 が生 み 出 す毎 期 の 予 測 FCF を加重平均資本 コス ト ( WACC) で割 り引いて現在価値 を計算 し, これか ら初期投 資額 を控除することによって,それがプラス であればその投資案を採択 し,マイナスであ れば棄却す る とい う方法である。いま ,t 期 の FCF を FC Fi ( t ‑0, 1 , 川 , T) ,経済命数を T 年 , WACC を k ,初期投資額を Z oとす る と,正味現在価値は次の ように算定 される。

NPV‑FC F l /( 1 + k ) + FC F2 /( 1 + k ) 2 +

. ・ + FC FT /( 1 + k ) T I

Zo

T

‑ ∑FC t ‑ 1 Ft /( 1 + k ) i ‑I o ( 1 0 ) この NPV 法は一般 によ く用い られている が,その問題点は,企業 には途中で戦略を変 更する自由度があることを考慮 に入れていな い とい うことである。通常,プロジ ェク トが うま く行かなければ, 規模縮小か中止 とな り, プロジ ェク トの存続期間 も短縮 される。逆 に

きわめて うま く行けば,プロジ ェク トは拡大 あるいは延長 となる。 さらに,投資のタイミ ング も,通常は即座 に投資せず,吟味するの で,翌期 もしくは翌 々期 に延期することもあ りうる。 NPV 法は これ らの点を加味 してい ない ( Co pe l a nd,Ro l l e ra ndMur r i n[ 2 0 0 0 ] p. 3 9 9 :邦訳 4 3 0 頁) 0

要す るに, NPV 法は,プロジ ェク トがい

ったん承認 され,資金が費やされる と,現実

のキ ャッシ ュ ・フローが予測に相応 している

かをチ ェックする㌢ステムを有 していないの

である。 これは,予測 FCF を NPV に割 り

引 くことはス トック的ない し静的な方法であ

(20)

る, とい うこ とに起 因 してい る。 つま り, NPV 法は各期 ご との変化額 を提供す るので はな く,予測で きる将来価値 を現在価値 に圧 縮す るにすぎないのである。

確 かに, ′ NPV 法 において も, 1 期 日の NPV と 2 期 日の NPV とを比較 し,利益あ るいは損失が生 じているかを見 ることがで き る。 しかし,これでは投資意思決定の評価が 不可能 となるのである。なぜな らば, この場 合の利益 は表面上 は個別期 間的利益 であ る が,その実質は全体期間的利益であるか らで ある。その理 由は次の とお りである。

NPV 法 としての DCF 会計は一般 に現在価 値会計 と呼ばれてお り,そこで算定 される利 益は経済的利益 と呼ばれている。本来の現在 価値会計 における経済的利益の特質は,次の ように表す こ とがで きる ( 上野 [ 1 9 93 ]1 05 蛋) 0

( 1 ) 経済的利益は,将来の収入 ・支出基調 的利益である。

( 2 ) 経済的利益は,知覚の時点で認識 され る将来先取 り的利益である。

( 3 ) 経済的利益は,現在価値 を企業全体 と して測定する全体企業的利益である。

( 4 ) 経済的利益は,全体期間の収入 ・支出 を見越 した全体期間的利益である。

( 5 ) 経済的利益は,貨幣の時間的価値 を考 慮 した利益である。

( 6 ) 経済的利益は,名 目資本維持利益であ る。

これ らを解説する と,以下の ようになる。

まず,経済的利益は資産 と負債の評価基準 と して現在価値 を適用 して決定 される利益であ り, この現在価値は将来の収入および支出 と 密接 に結びついた評価基準である。 したがっ て, これによって算定 される準 済的利益は将 来の収入 と支出に基づいた利益である とい う

ことがで きる。

現在価値会計では,利益は取引の時点では な く,知覚の時点で認識 される。具体的には, 計画期間の初めにおいて取引がないにもかか わ らず 「 主観のれん」が認識 され,計画期間 の初期 において,収入が少な くて も利益が多 く認識 される。 この ことは,将来の利益が先 取 りされて認識 されることを意味 し,この意 味で,経済的利益は知覚の時点で認識 される 将来先取 り的利益である。

経済的利益は 2 つの意味で 「 全体的利益」

であるとい うことがで きる。まず,現在価値 会計では資産や負債を評価する場合に将来の 収入や支出を割 り引 くことによって企業全体 としての現在価値 を測定する。そ してさらに, 現在価値会計は他の利益決定要素の現在価値

も企業全体 として測定する。 したがって,経 済的利益は現在価値 を企業全体 として測定す る全体企業的利益であ り, この ことか ら, こ の会計特有の 「 主観のれん」が生 じることに なる。

しかも, この現在価値は計画期間末までの 全体期 間の収 入 と支 出を見越 した価値 であ り,これに基づいて経済的利益が算定 される ことになる。確かに,経済的利益は期間利益 として認識 されるが,その認識期間は全体期 間の収入 と支出に基づ く現在価値であること に注意 しなければな らない。 この意味で,経 済的利益は全体期間の収入 ・支出を見越 した 全体期間的利益である とい うことがで きる。

現在価値会計は,利益の認識 に 「 時間的要 素」を一貫 して導入 している。 この時間的要 素を導入することによって,将来の収入や支 出に割引率を考慮する 「 貨幣の時間的価値」

が認識 されることにな り,現在価値が算定 さ

れることになる。そ して, これによって上記

の経済的利益 における諸特質,すなわち,将

来の収入 ・支出基調性,将来先取 り性および

全体性が生 じるのである。 したがって,経済

(21)

21

的利益の最 も重要な特質は,貨幣の時間的価 値を考慮 した利益であるということになる。

最後 に,資本維持に関 して,現在価値会計 では測定単位 として名 目貨幣単位が用い られ るので,維持すべ き資本は名 目資本 となる。

そして,経済的利益の算定に際 して, この額 が期末資本か ら控除 されるので,現在価値会 計では, これによって名 目資本が維持 される とい うことになる。それゆえ,経済的利益は 名 目資本維持利益であるとい うことがで きる のである。

以上が本来の現在価値会計 における経済的 利益の特質であるが, これはまさに NPV 法 としての DCF 会計における特質であ り, と りわけ,そ こにおける利益は,全体期間の収 入 ・支出を見越 した全体期間的利益である と いうことがで きるのである。そ して,全体期 間的利益であるゆえに, DCF 会計は個別期 間における投資意思決定の評価 を行 うことが できず,プロジ ェク トの途中で投資案をチ ェ ックするシステムが欠如 しているのである。

3 企業価値評価

最後 に,企業価値評価 について考察 してみ よう。既述の ように, DCF 会計は,将来の FCF を予測す るこ とによって企業価値 を評 価す る。 ここでの問題は,かかる企業価値評 価が真の意味での企業価値評価 となっている かどうか とい うことである。 これに関 して, 上の投資意思決定 について述べた ことがその まま妥当する と思われる。投資意思決定 と企 業価値評価 とは,将来の予測 FCF を資本 コ ス トで割 り引いて現在価値を算定することに おいて共通 しているか らである。

したがって, ここで も DCF 会計はス トッ ク的ない し静的な方法であ り,各期 ご との動 的な変化額を提供するのではな く,予測で き る将来価値 を現在価値 に圧縮 す るにす ぎな

い。その結果,全体的な企業価値評価は可能 である として も,将来の個別期間における業 績予測がで きないのである。将来の FCF 情 報は重要であるが,それにも増 して重要なの は,将来の企業業績 に関する情報であ り,さ らにい うな らば, どの期間に企業価値 を創造 してお り,どの期間に破壊 しているかに関す る企業業績の情報である。

そ して, これに関 して, DCF 会計は何 ら 情報 を提供 しない。 この会計システムは期間 ご とに企業業績を評価する機能 を有 していな いか らである。 ここに, DCF 会計の問題点 があるのである。

さ らに, DCF による評価方法では,資産 や投資機会が本来備 えている可能性 を捕捉す ることが難 しい。 とい うのは,上述 した よう に, この方法では,最初の意思決定時点にお いて投資を行 うか行わないかの択一的な決定 が行われ,プロジ ェク トが進行 してい く過程 で不確実性のある側面が確実 となった時点で 経営者が投資の方向を変更するとい う,経営 上の柔軟性を考慮 しないか らである。その結 莱, DCF 会計 を用 いる と,特定の資産やプ ロジ ェク トの価値がはなはだ し く過小評価 さ れて しま う恐れがある。 ここに, この会計シ ステムのさらなる問題点が内在 しているので ある。

Ⅴ む す び

以上,本稿では, DCF を会計学的 に考察 し,会計システム としての DCF 会計の意義 を究明す ることを 目的 として,まず FCF の 意味を明 らかにし ,FCF 会計お よび DCF 会 計の概要を説 明し,具体的な数値例 によって 計算 した。

そ して, これに基づいて DCF 会計を,質

本 コス ト,投資意思決定および企業価値評価

(22)

の観点か ら検討 した。その結果,資本 コス ト に関 して, WACC は企業の資本構成が長期 的に変化 しない とい う非現実的な仮定を基礎 においてお り,そこにおける βは過去のデー タに基づいてお り,将来の直接的な予想を し ていないために,機能 しがたい ことを解明 し た。

また,投資意思決定および企業価値評価 に 関 して, DCF 会計は,投資案 お よび企業価 値の評価は可能であるが,期間ご とに企業業 績を評価する機能を有 していないために,将 来の個別期間における業績予測がで きない こ とが明 らか とな った。すなわち, DCF 会計 による投資意思決定および企業価値評価は, 予測で きる将来価値 を現在価値 に圧縮す るに すぎず,静的概念であ り,活動途中の企業業 績を評価する機能を欠如 しているのである。

さ らに, DCF に よる評価方法 では,資産 や投資機会が本来備 えている可能性 を捕捉す ることが難 しい ことを解 明 した。とい うのは, この方法では,最初の意思決定時点において 投資を行 うか行わないかの択一的な決定が行 われ,プロジ ェク トが進行 してい く過程で不 確実性のある側面が確実 となった時点で経営 者が投資の方向を変更する とい う,経営上の 柔軟性 を考慮 しないか らである。その結果, DCF 会計 を用 いる と,特定の資産やプロジ ェク トの価値 がはなはだ し く過小評価 されて しまう恐れがあるのである。

この ように見て くる と, DCF 会計 は投資 意思決定および企業価値評価 をある程度可能 にする とい う利点を有 しているが,同時に問 題点 も有 していることが分かる。そ して,そ の最大の問題点は, この会計システムでは, 資本 コス トが現実的ではないこと,業績評価 機能が欠如 していることおよびその評価方法 は弾力的ではない ことであ る。 DCF の動 き が企業業績 の動 き と必ず しも一致 してお ら

ず, DCF 会計は企業業績の動 きを把握で き ないのである。 さ らに, この会計システムで は,資産やプロジ ェク トが弾力的に評価 され ず,その結果,過小評価 される可能性がある のである。

そこで, DCF 会計のかかる欠点を超克 し, かつ利点を継承するもの として提唱されたの が, APV ( 調整 現在価値 )会 計 , CFROI

( キ ャ ッシ ュ ・フ ロー投資利益率)会計 , EVA ( 経済付加価値)会計 お よび リアル ・ オプシ ョン会計にはかな らない。

APV 会計は, DCF 会計 と基本的に同じで あ るが,企業価値 を ,1 0 0% 株式で資金調達 された場合の事業価値 と,有利子負債 による 調達 か ら得 られた節税効果 に よる価値 とい う, 2 つの価値 に分けて捉 える会計である。

これによって,現実的な資本 コス トの算定を 可能 とす る 。CFROI 会計は ,CAPM および βとは対照的に,割引率をモデルの予測プロ セ ス に組 み 込 ん で 利 用 し, 内 部 収 益 率 ( I RR, i nt e r na lr a t eo fr e t ur n) の思考 を適用 する会計であ り, これによって,将来を直接 的に予想 した適合的な資本 コス トを算 出でき

ることとなる。

EVA 会計は,現金主義会計をベース とし なが ら発生主義会計を適宜適用 した会計であ り, 収益 と費用の対応を重視する会計である。

そ して, これに よって, DCF 会計ではで き なかった, 個別期間の業績評価 を可能 とする。

リアル ・オプシ ョン会計は,動的で不確実な 企業環境 に適応す るモデルを組み込んだ会計 であ り, これによって,適正な投資意思決定

と企業価値評価を可能 とするのである。

この ように, APV 会計 , CFROI 会計 ,

EVA 会計および リアル ・オプシ ョン会計は,

DCF 会計の利点を継承 しなが ら問題点を超

克 しているとい う点で,非常に重要な会計シ

ステムである と考 えられる。 したがって, こ

(23)

2 3

れ らの会計システムを詳細に検討 し,それ ら の特質を解明することが, 今後の課題 となる。

しか し,それを行 う前 に, DCF 会計の現 代会計システムにおける意義ないし役割を改 めて明らかにしておかなければな らない。 こ れまで述べて きた ように, DCF 会計はい く つかの問題点を有 してお り,それを超克 して いるのが APV 会計等であるが,それ らの会 計は共通 して将来のキャッシ ュ ・フローを予 測 し,貨幣の時間的価値 を考慮 している。 こ の起源は DCF 会計にあるのであ り, APV 会 計等はそれの延長線上にあるということがで きる。 この意味で, DCF 会計は,企業価値 評価および現代ファイナンス会計の出発点で あ り,現代会計システムの基礎 としての役割 を担 っているq) である。

[ 注]

1)NOPAT および後述する投下資本は,現金主義会 計をベース としなが ら発生主義会計を適宜適用 して 算定 され,具体的には,通常の発生主義 に基づ く財 務諸表 ( 損益計算書および貸借対照表)を必要な部 分に関 して現金主義に修正 してい く方法を とる。そ の場合,その修正方法には,やは り事業アプローチ

と財務アプローチ とい う 2 つの ものがある。

事業アプローチは,貸借対照表の借方 に着 目し, 投下資本 とは総資産額その ものであるとまず定義す る。その上で,投下資本 と考え られる項 目の追加 と 投 下 資 本 とは考 え られ な い項 目の削 除 を行 う。

NOPAT については,税引前営業利益 ( NOPBT , ne to pe r a t i ngpr o f i tbe f o r et a x) か ら始めて所定の 修正を行い,修正後の NOPBT を求める。そ して,

この NOPBT か ら NOPBT にかかるキ ャッシ ュ ・ ベースの税金額を控除 して NOPAT を算定する。

財務アプローチは,貸借対照表の貸方 に焦点を当 てて,投下資本を有利子負債 と普通株主持分の合計 と定義 し,それに対 して調整を行 うとい う考 え方を 採用 している 。NOPAT は普通株主持分 に帰属する 普通株主利益額 に税引後有利子負債利息を加えた も の として定義 して,投下資本の修正の考 え方 にした がって修正を加 える とい う方法を とる。

事業アプローチおよび財務アプローチに基づいて 算定 され る NOPAT お よび投下資本はそれぞれ当 然一致することになる。

2 ) これは以下 の ように導 き出 され る ( Copel and , Ko l l e ra ndMur r i n[ 2 0 0 0 ]pp. 2 6 9 ‑ 2 7 0 :邦訳 31 8 ‑ 31 9 頁) 。

まず ,NOPAT が一定の割合で増加する との前提 をおいて,単純化 した公式 ( 継続価値 算定式) か

ら始める。

継続価値

ここで ,FCF

T.1

は,キ ャッシ ュ ・フロー予測期 間後 1年 目の標準化 した FCF である。

次 に , NOPAT と投 資 比 率 ( ZR , 各 年 の NOPAT の うち再投資 され る割合) お よび FCF

( FCF) の関係は次の ようになる,

FCF‑NOPATx( 1‑Z R)

ところで ,NOPAT の予測成長率 ( g) ,投下資 本利益率 ( Rol e) および投資比率 ( Z R) との関係 は ,g‑ROI CxZ R とな り, これを変換す る と,吹 の ようになる。

z R‑ R % C

そ して ,FCF q) 式 に これを代入す る と,次q)よ うになる。

FCF‑NOPATx ( 1‑ R % C)

この FCF の部分を上記の継続価値算定式 に代入 する と,本文の継続価値が導 き出される。

3 )加重平均資本 コス ト ( WACC) は,負債 コス ト と株主資本 コス トの加重平均 コス トであ り,次の 式 によって求め られる。

WACC‑( l lt ) bxD/ TC+yxE/ TC

ここで,各記号 はそれぞれ次の こ とを表 してい る。

t ‑実効税率,b‑負債の利子率,

y ‑ 株主資本 コス ト ,D ‑負債,E ‑株主資本, TC ‑投下資本

そ して,株主資本 コス トは次式 に よって求め ら れ,それぞれの記号は次の ことを表 している。

y‑r f +P( r m ‑r f )

(24)

r f ‑無 リスクの収益率,

㍍ ‑株式市場全体の リスク ( 株式市場全体の期 待収益率),

β ‑株式市場全体 に対 す る個別株式 の リス ク ( 市場全体 に対 す る個別企業 の株価 のボ ラテ ィリテ ィ)

ここで, ( r m‑r f )は株式市場 の リス ク ・プ レミ アムであ り, これを r pで表す と,株主資本 コス ト は次の ようになる。

y=r f+ βr b

なお, これの詳細な説 明は後の本文で行 う予定で ある。

4) これ らを彼 らの所論にしたがってさらに詳細に説 明す る と,以下 の ようにな る ( Copel and,Rol l er a ndMur r i n [ 2 0 0 0 ]pp. 2 3 4 ‑ 2 4 5 :邦訳2 7 4‑ 2 8 7 頁) 0

まず,最初のステ ップは,何年先まで, どれほど 詳細に業績予測をたてるかを決定することであるO 前述 した ように,通常,最初の数年間分は厳密な業 績予測をたて,その後の価値は単純な公式 に基づい て算定する。 この一定期間経過後の価値が継続価値 であ り,算定期間の業績が安定 している との前提 に よるものである。そのため,少な くとも業績が安定 するまでの十分な期間について,詳細な業績予測を 行 う必要がある。 業績が次の ような特徴を示 した ら, 安定期 に入 った といえる。

( 1 ) 新規の投資 された資本の回転率が一定になる。

( 2 ) 企業全体の投下資本回収率が一定 になる。

( 3 ) 企業の成長率が一定にな り,毎年営業利益の う ち一定割合を再投資する。

第 2のステ ップでは,戦略的な見通 しをたてるた めに,企業 の将来 の業績 について現実性のあ るス トー リーを構築する。そ して,企業の将来について ス トー リーがで きた ら,それを財務予測に転換する のが第 3 のステ ップである。その際,まず損益計算 書 と貸借対照表の予測か ら始め,そ こか ら FCF や ROI C を導 き出す。業績予測の典型的な手順は以下 の とお りである。

( 1 ) 売上 を予測する。売上予測は数量の増加 と価格 変動 か ら計算す る。

( 2 ) 営業項 目を予測す る。営業項 目とは,営業費用, 運転資金,有形固定資産な どの項 目で,この予測 は売上額 または数量か ら導 く。

( 3 ) 営業外項 目を予測する。連結対象外の関連会社 への投資や関連収入,支払利息,受取利息な どで ある。

( 4 ) 資本の部の合計額を予測する。 これは前期の資 本の部の合計に,当期の税引後利益 と株式発行額 を加算 し,支払配当額 と株式買戻 し額を減算 した もの となるようにする。

( 5 ) 現金および負債項 目でキ ャッシ ュ ・フロー と貸 借対照表の過不足を調整する。

( 6 ) ROI C ツ リー と主要指標を計算 し,全体像を把 握する とともに,矛盾がないか確認する。

第 4 のステ ップにおいて,上記のステ ップに基づ いて複数のシナ リオを作成 し,それ らを実現確率で 加重平均することにより,全体の企業業績を推定す る。そ して,企業業績予測の最後のステップでは, 全体 として予測 に矛盾がないかをチ ェックするため に,損益計算書 と貸借対照表か ら主要なバ リュー ・

ドライバーを導 き出し, これ らに着 目して,以下の 点を検討する。

( 1 ) バ リュー ・ドライバーの動 きは対象企業の業績 や業界の競争状況 と矛盾 しないか。

( 2 ) 売上高成長率は業界の成長率か らかけ離れてい ないか。対象企業の売上高が,業界の成長率 より も高い増加率を示 している場合には, どの競合企 業のシ ェアを奪 っているのか。シ ェアを奪われた 企業は反撃 に出ないのか。また,対象企業 には, それだけ成長で きる経営資源があるか。

( 3 ) 資本収益率は,その業界の競争状況 と矛盾 しな いか。算入障壁が崩れつつある場合には,利益率 が低下 しているのではないか。逆に業界内での対 象企業の地位が大幅に上昇 している とすれば,収 益率が向上するのではないか。予測 した収益率お

よび成長率は競合企業に比べて どうか。

( 4 ) 技術革新は収益率 にどう影響するか。 リスクに は どう影響するか。

( 5 ) 対象企業は手掛けている投資案件すべてを実現 で きるか。

5)FCF 会計の場合 にはそれほ ど必要 ではないが, 後述の DCF 会計の場合,継続価値 を計算するため に投下資本利益率 ( ROI C)を計算する必要があ り, そのためには投下資本 を計算 してお く必要 がある。

いま,念のためにこれを行 うと,次の ようになるO

表 2 貸借対照表 前 期 当 期 事 業 用 現 金 2 7 6 2 8 3 余 剰 有 価 証 券 1, 5 9 5 1, 8 0 6 売 上 債 権 1, 2 75 1, 21 8 棚 卸 資 産 1, 0 2 6 9 9 6 そ の 他 濁 動 資 産 L4 8 6 4 9 0 流 動 資 産 合 計 14, 6 5 8 4, 7 9 3 総 有 形 固 定 資 産 1 3, 9 2 2 1 4, 2 0 0 減 価 償 却 累 計 額 ( 8, 3 6 8 ) ( 8, 4 5 9 ) 純 有 ̲
表 4 FCF 事 業 ア プ ロ ー チ 営 . 業 C F の 計 算 N O P . A T 9 3 7 減 価 償 却 費 8 2 2 営 業 C F ・ 1 , 7 5 9 ‑ 運 転 資 本 の 増 加 2 2 4 ‑ 設 備 投 資 ( 1 , 0 0 9 ) 総 投 資 ( 7 8 5 ) の れ ん 加 算 前 F C
表 6 予測損益計算書 に関する前提条件 1 2 3 4 ・5 6 7 8 売上高成長率 7. 0 5 % 5. l o 財 4. 9 0 % 6. 7 0 % 4. 5 0 % 4
表 8 予測損益計算書 1 2 3 4 5 6 7 8 売 上 高 1 4, 7 9 6 1 5, 5 51 1 6, 31 3 1 7, 4 0 6 1 8, 1 8 9 1 8, 9 8 9 1 9, 8 0 6 2 0, 6 3 8 営 業 費 ( 4, 3 9 0 ) ( 4, 61 4 ) ( 4, 8 4 0 ) ( 5, 1 6 4 ) ( 5, 3 9 6 ) ( 5, 6 3 4 ) ( 5, 8 7 6 ) ( 6, 1 2 3 ) 減 価 償 却 費 ( 8 6 7 ) ( 91 1
+2

参照

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