序 文
肺炎球菌はグラム陽性の双球菌で,強毒菌であ ると共に呼吸器親和性が高いため,肺炎・敗血 症・髄膜炎などの重症感染症や副鼻腔炎,中耳炎 の主要起炎菌として重 要 で あ る
1).市 中 肺 炎 の 20〜35% は肺炎球菌が起炎菌であり,同菌が強毒 菌で高齢者や基礎疾患を有する患者に発症した劇
症型の肺炎球菌性肺炎では早期診断・治療が必須 である.
肺炎球菌性呼吸器感染症の迅速診断として,喀 痰グラム染色は有用であり
2),喀痰の品質が良質
(100 倍検鏡で 1 視野当たり好中球数 25 以上)の 場合, 肺炎球菌の予測率は 62〜79% と報告されて いる
3).しかし, 喀痰グラム染色による原因菌推定 には,一定レベルのグラム染色標本作成の手技と 鏡検の熟練を要し, 喀痰の品質にも左右される
4). 肺炎球菌感染症では莢膜多糖が尿中に排泄され,
この肺炎球菌莢膜多糖 抗 原 を 15 分 で 検 出 す る
肺炎球菌性呼吸器感染症迅速診断における尿中抗原検査と 喀痰グラム染色検査の有用性の検討
1)神奈川県立循環器呼吸器病センター呼吸器科,2)同 検査科,3)小田切呼吸器科クリニック
綿貫 祐司
1)高橋 宏
1)小倉 高志
1)宮沢 直幹
1)冨岡 敏昭
2)小田切繁樹
3)(平成 16 年 8 月 18 日受付)
(平成 16 年 11 月 8 日受理)
肺炎球菌性呼吸器感染症の迅速診断における尿中抗原検査と喀痰グラム染色検査の有用性について比 較検討した.呼吸器感染症を疑い肺炎球菌尿中抗原検査(Now Streptococcus pneumoniae)と同時に喀 痰塗抹・培養検査を行った 289 症例,313 感染エピソードを対象とした.肺炎球菌陽性の所見は尿中抗 原・喀痰塗抹・培養でそれぞれ 43 回,45 回,46 回,のべ 67 例・73 回に認められ,54 例・57 回で肺炎 球菌性呼吸器感染症の診断基準を満足した.肺炎球菌性呼吸器感染症診断における陽性率は,尿中抗原 64.9%(37
!
57),喀痰グラム染色 63.1%(36!
57)と同等で,偽陽性率も共に 3% 程度と低率であった.感染重症度別陽性率を比較すると,尿中抗原は,軽症 5
!
10,中等症 26!
41,重症 6!
6 と重症例ほど陽性率 が高かったのに対し,喀痰グラム染色陽性は,軽症 8!
10,中等症 27!
41,重症 1!
6 と,重症例では良質な 喀痰が得られないことが多く低い陽性率であった.また抗菌薬前投与のある 9 例中尿中抗原は 8 例,喀 痰グラム染色は 4 例で陽性であった.肺炎球菌性呼吸器感染症の迅速診断として,尿中抗原検査は感染 症重症度が軽症の場合は喀痰塗抹に比べ陽性率は劣るものの,中等症以上,特に重症例での有用性に優 れ,良質な喀痰が得られない症例や,抗菌薬の前投与のある症例でも高い陽性率を保っていた.〔感染症誌 79:13〜19,2005〕
要 旨
別刷請求先:(〒236―0051)横浜市金沢区富岡 東 6―
16―1
神奈川県立循環器呼吸器病センター呼吸
器科 綿貫 祐司
Key words: urinary antigen, Gram stain,
Streptococcus pneumoniae,
pneumonia, rapid diagnosisTable 1 Results of urinary antigen, sputum gram stain and sputum culture in 313 episodes of presumptive respiratory infections
8 7 6 5 4 3 2 1 Group
−
−
−
−
+
+
+
+ urinary antigen
−
−
+
+
−
−
+
+ sputum gram stain
−
+
−
+
−
+
−
+ sputum culture
240 7 8 15 18 3 1 21 No. of episodes
キット(Binax NOW Streptococcus pneumoniae)が 開発され,1999 年に FDA から認可された.わが 国でも肺炎球菌性肺炎の早期診断における本キッ トの有用性を示す報告がなされているが
5)6),迅速 診断としての喀痰グラム染色との有用性を比較し た報告はされていない.今回我々は呼吸器感染症 の原因菌迅速診断における尿中抗原検査と喀痰グ ラム染色検査の有用性について比較検討した.
対象と方法
2001 年 11 月より 2003 年 3 月までの 17 カ月間 に,当科で呼吸器感染症を疑い肺炎球菌尿中抗原 検査と同時に喀痰塗抹・培養検査を行った 289 症 例,313 感染エピソードを対象とした.臨床所見,
胸部 X 線,血液・生化学検査などにより呼吸器感 染病態と起炎微生物の検索を行い,肺炎球菌性呼 吸器感染症迅速診断における尿中抗原検査,喀痰 塗抹グラム染色の有用性を比較検討した.
肺 炎 球 菌 尿 中 抗 原 検 査 は,Now Streptococcus pneumoniae (Binax 社,USA,アスカ純薬取り扱い)
を用いた.喀痰検査では肉眼的性状を確認後,塗 抹グラム染色の鏡検を行い,その品質と共に肺炎 球菌を示唆するグラム陽性双球菌の有無を調べ た.
呼吸器感染病態の有無は,1. 発熱 (≧37℃) ,2.
咳嗽・痰の新たな発現,あるいは喀痰の増量や膿 性度の悪化,3. 白血球数増加(≧8,000 ! µ l) ,4.
CRP の増加(≧0.7mg ! dl)のうち少なくとも 2 つ を満足することを条件とした.感染症重症度は,
日本化学療法学会の呼吸器感染症における新規抗 微生物薬の臨床評価法
7)に基づいて決定した.
肺炎球菌性呼吸器感染症の診断は,1 呼吸器感 染病態にある,2 良質な喀痰(グラム染色標本で 1 視野に好中球数 25 以上,扁平上皮細胞数 25 未
満)から肺炎球菌が分離培養される,あるいは喀 痰の品質が悪い場合は尿中抗原陽性,3 肺炎球菌 に感受性のある抗菌薬投与により病態改善とパラ レルに検査所見が改善,の 3 条件を満足するもの とした.
成 績
289 症例,313 感染エピソード中,尿中抗原・喀 痰塗抹・培養陽性はそれぞれ 43 回,45 回,46 回 であった.尿中抗原・喀痰塗抹・培養いずれかで 肺炎球菌陽性の所見を認めたのは 67 例・73 感染 エピソードであった(Table 1) .
73 感染エピソード中,肺炎球菌性呼吸器感染症 と診断できたのは 54 例・57 回であった.54 例の 患者背景は,男性 37 例,女性 17 例で,年齢は 65 歳以上の高齢者が 37 例と多数を占めた. 呼吸器系 の基礎疾患は 37 例に認められ, 気管支喘息 13 例,
肺気腫 12 例で,以下硬化性肺結核 3, 気管支拡張 症・慢性気管支炎が各 2,DPB・肺結核・間質性 肺炎・塵肺・肺癌が各 1 例であった(Table 2) . 肺炎球菌性呼吸器感染症 57 回の感染病態は,
Table 3 の通りで,有熱例は 51 回,白血球増多は 43 回,CRP 陽性は 55 回で確認された.呼吸器感 染症病名は,肺炎 42 回,急性気管支炎 1 回,慢性 呼吸器疾患の感染合併 14 回で,感染重症度は,軽 症 10 回,中等症 41 回,重症 6 回であった.
肺炎球菌性呼吸器感染症と診断された 57 回の 感染エピソードにおける,尿中抗原陽性は 37 回
(64.9%) ,喀痰塗抹で肺炎球菌陽性所見が確認で きたのは 36 回(63.1%)で,喀痰培養で肺炎球菌 が分離されたのは 43 回(75.4%)であった(Ta- ble 4) .また肺炎球菌性肺炎と診断された 42 回の 感染エピソードに限ると,尿中抗原陽性は 28 回
(66.7%),喀痰塗陽性 27 回(64.3%)で,喀痰培養
Table 2 Background of 54 patients(57 episodes)with pneumococcal respiratory infections
Total Negative
Positive Urinary antigen
54(57)
20(20)
35(37)
No. of patients(episodes)
17/37 6/14
11/24 Age(< 65/ ≧ 65)
37/17 16/4
22/13 Sex(male/female)
37/17 15/5
23/12 Underlying disease(+ / −)
13 6
8 Bronchial asthma
12 5
7 Emphysema
3 1
2 Old tuberculosis
2 1
1 Chronic bronchitis
2 0
2 Bronchiectasis
1 0
1 Diffuse panbronchiolitis
1 0
1 Pneumoconiosis
1 1
0 Interstitial pneumonitis
1 0
1 Lung cancer
1 1
0 Lung tuberculosis
9/48 1/19
8/29 Previous antibiotics(+ / −)
Diagnosis
42 14
28 Pneumonia
1 1
0 Acute bronchitis
14 5
9 Chronic respiratory disease
+ infection
で肺炎球菌が分離されたのは 31 回(73.8%)で あった (Table 5) .以上より肺炎球菌性呼吸器感染 症診断における尿中抗原と喀痰塗抹グラム染色の 陽性率(臨床的診断感度)は喀痰培養にはやや劣 るものの共に 63〜64% と同等であった. 肺炎球菌 性肺炎に限定しても同様の結果であった.
感染重症度別陽性率を比較すると,尿中抗原陽 性は,軽症 5 ! 10, 中等症 26 ! 41, 重症 6 ! 6 と重症例 ほど陽性度が高率であった.喀痰グラム染色陽性 は,軽症 8 ! 10, 中等症 27 ! 41, 重症 1 ! 6 であり,感 染重症度と陽性率との関係は認められなかった
(Table 5) .
各検査の肺炎球菌性呼吸器感染症診断における 偽陽性率は,Table 4 から計算されるとおり,尿中 抗原 6 ! 256=2.3%,喀痰塗抹グラム染色 9 ! 256=
3.5% と喀痰培養検査(1.2%)と同様に低率であっ た.
考 察
今回の検討では,肺炎球菌性呼吸器感染症迅速 診断として尿中抗原検査は喀痰塗抹グラム染色検
査と同等の高い有用性を示した.肺炎球菌性の市 中肺炎診断に関する尿中抗原キットの有用性は最 近多数報告されており
8)〜11),肺炎球菌性肺炎に対 する尿中抗原検査の感度は 70〜82% で, 特異度は 89〜99% であった.わが国での 379 例の呼吸器感 染症を対象とした報告でも肺炎球菌性肺炎の診断 感度は 72%,特異度は 94% であった
6).
肺炎球菌性肺炎の確定診断は,血液培養陽性あ
るいは良質な喀痰(グラム染色標本で 1 視野に好
中球数 25 以上,扁平上皮細胞数 10 未満)から肺
炎球菌が多量に分離培養されることが一般的な
Gold standard である.わが国の肺炎球菌尿中抗原
検査の感度を検討した報告
6)でも上記の基準が用
いられ,肺炎 188 例中肺炎球菌尿中抗原陽性は 64
例であったのに対し培 養 陽 性 は 25 例 と 少 数 で
あったものの,この 25 例中尿中抗原陽性は 18 例
あり,尿中抗原検査の感度は 72% と報告してい
る.同報告では尿中抗原検査を組み合わせること
により肺炎球菌性肺炎と診断できた症例は 25 例
か ら 45 例 と 増 加 し,尿 中 抗 原 検 査 は 診 断 率 を
Table 3 Degree of infections in 57 episodes with pneumococcal respiratory infections Total
(57)
Negative
(20)
Positive
(37)
Urinary antigen
(No. of episodes)
55 20
35 purulent
Property of sputum
2 0
2 mucus
43 20
23 Quality of sputum good
14 0
14 poor
36 15
Str.pneumoniae + 21 Sputum gram stain
21 5
Str.pneumoniae − 16
14 0
Str.pneumoniae − 14
Sputum cultere Str.pneumoniae + 8 5 13
30 15
Str.pneumoniae ≧ 2 + 15
6 2
4
< 37
Temperature(℃) 37 ≦ , < 37.5 4 3 7
22 8
14 37.5 ≦ , < 38.5
22 7
15 38.5 ≦
14 5
9
< 8,000
WBC(/mm
3) 8,000 ≦ , < 10,000 2 3 5
32 11
21 10,000 ≦ , < 20,000
6 1
5 20,000 ≦
2 1
1
< 0.7
CRP(mg/dl) 0.7 ≦ , < 10 9 8 17
16 6
10 10 ≦ , < 20
22 5
17 20 ≦
10 5
5 mild
Severity of infection moderate 26 15 41
6 0
6 severe
Table 4 Results of urinary antigen, sputum gram stain and sputum culture in patients with respiratory infections
Total Pneumococcal respiratory infection
(−)
(+)
43 6
37
(+)
Urinary antigen
270 250
20
(−)
45 9
36
(+)
Sputum gram stain
268 247
21
(−)
46 3
43
(+)
Sputum culture
267 253
14
(−)
313 256
57 Total
80% 向上させたと結論している.これは一般臨床 における肺炎球菌性肺炎の診断では喀痰培養に比 べ尿中抗原検査は感度が高い可能性を示唆するも のであり,レジオネラ肺炎の診断において喀痰検 査に比べ尿中抗原検査の感度が高く,尿中抗原が レジオネラ肺炎診断の Gold standard になりつつ
あることに一部通じるものである.
今回のわれわれの検討は,肺炎球菌性呼吸器感
染症迅速診断における有用性を尿中抗原検査と喀
痰塗抹検査で比較することを目的としており,肺
炎球菌性呼吸器感染症の診断を喀痰培養陽性に限
定すると,良質の喀痰を喀出できない症例は肺炎
Table 5 Correlation between severity of infection/diagnosis and urinary antigen/sputum gram stain
sputum gram stain Urinary antigen
(−)
(+)
(−)
(+)
Severity of infection
2 8
5 5
mild
14 27
15 26
moderate
5 1
0 6
severe Diagnosis
15 27
14 28
Pneumonia
6 9
6 9
Bronchial infection Previous antibiotics
5 4
1 8
(+)
16 32
19 29
(−)
21 36
20 37
Total
球菌による感染症であっても除外されてしまい,
診断陽性率は喀痰グラム染色では高く,尿中抗原 検査は不当に低く判定される可能性がある. また,
今までの多くの報告で肺炎球菌性肺炎の診断にお ける尿中抗原検査の有用性は確立されているた め,今回の検討では肺炎球菌性呼吸器感染症の診 断は,喀痰・尿中抗原を組み合わせた基準を採用 した.すなわち,良質な喀痰が得られた症例は従 来の Gold standard に準じて喀痰培養陽性を採用 し,良質な喀痰が得られなかった症例は尿中抗原 陽性を採用した.しかし今までの報告では尿中抗 原陽性は感染症軽快後も持続し偽陽性となること もあるため,検査時に呼吸器感染病態にあり,肺 炎球菌に有効な抗菌薬が投与され病態改善とパラ レルに検査所見が改善することも肺炎球菌性呼吸 器感染症診断の条件に加えた.
今回の我々の報告では肺炎球菌性呼吸器感染症 における尿中抗原検査の陽性率 (臨床的診断感度)
は 65%,偽陽性率は 2.3% で,肺炎球菌性肺炎に 限っても陽性率は 66% で, 今までの報告に合致す るものの陽性率はやや低い結果であった.これは 今回の肺炎球菌性呼吸器感染症の診断基準は良質 の喀痰より分離された肺炎球菌は菌量 1+以上を 起炎菌と判定したためで,菌量が 2+以上に限定 すると陽性率は 71% となり, 今までの報告の範囲 内におさまる.
感染症重症度と尿中抗原陽性率との関係では,
例数は少ないものの重症例では 100% 陽性であっ たが,中等症で 70% 弱,軽症で 50% 程度と,重 症例ほど陽性率は高い傾向にあった.これに対し 喀痰グラム染色では感染重症度が中等症以下で あっても 70% 程度の陽性率が維持された反面, 重 症例では喀痰検査が困難で 6 例中 5 例は良質な喀 痰が得られず,塗抹および培養で肺炎球菌を認め たのは 1 例のみであった.これは軽症の肺炎球菌 性呼吸器感染症の診断においては,尿中抗原検査 は喀痰検査に及ばないものの,中等症以上,特に 重症例では尿中抗原検査は明らかに喀痰検査より 有用であることを示唆する結果であった.
感染症病名と尿中抗原,喀痰グラム染色との関
係では, 肺炎 42 例中 28 例 67% が尿中抗原陽性で
あったのに対し,肺炎以外(急性気管支炎,慢性
呼吸器疾患+感染)では尿中抗原陽性は 15 例中 9
例 60% であった.Smith らは菌血症を伴う肺炎球
菌感染症 107 例を対象とした検討で,尿中抗原検
査の感度は肺炎非合併例では 70% であったのに
対し, 肺炎合併例は 82% と有意に高率であったと
報告している
12).今回の我々の結果でも,肺炎で
の陽性率は肺炎以外に比べてやや高い傾向にあっ
たものの有意な差は認められなかった.また,喀
痰グラム染色陽性は肺炎 27 例(64%)肺炎以外 9
例(60%)で,尿中抗原に比べ陽性率の差は狭ま
り,喀痰培養では陽性例は肺炎 31 例(74%) ,肺
炎以外 12 例(80%)で肺炎以外の症例のほうが高
い陽性率であった.これらは,肺炎球菌による呼 吸器感染症では,感染の主体が肺胞の場合 (肺炎)
に比べ,感染の主体が気道の場合は,細菌は血管 に入り莢膜多糖が尿中に排泄されにくい反面,気 道から喀痰として喀出されやすいためと考えられ た.
検査前抗菌薬投与と尿中抗原,喀痰グラム染色 との関係では,検査前に抗菌薬がすでに投与され ていた 9 例中,尿中抗原は 8 例で陽性であったが,
喀痰グラム染色陽性は 4 例のみで,培養陽性も 5 例にとどまった.抗菌薬前投与症例では診断にお ける尿中抗原の優位性が示唆される結果であっ た.
今回の検討では,肺炎球菌性呼吸器感染症診断 における尿中抗原検査の偽陽性率は 2.3% と低率 で,尿中抗原陽性であったものの肺炎球菌が原因 菌と判定できなかったのは 6 例であった.5 例は 喀痰の品質は良質であったものの培養で肺炎球菌 は分離されず,うち 3 例は培養で他の原因菌(イ ンフルエンザ菌 2 例,黄色ブドウ球菌 1 例)が分 離され, このうち 2 例は 1〜3 カ月前に肺炎球菌性 肺炎に罹患しその後も尿中抗原陽性が持続してい た症例に新たに呼吸器感染症を発症したもので あった.残りの 1 例は喀痰塗抹・培養とも肺炎球 菌陽性の所見であった.この症例は肺炎球菌が定 着と感染増悪を反復している慢性気管支炎症例の 非感染病態時に検査が行われたもので,抗菌化療 は行われなかった.
以上,肺炎球菌性呼吸器感染症迅速診断におけ る尿中抗原検査と喀痰グラム染色検査の有用性を 比較すると,尿中抗原は中等症以上,特に重症例 での陽性率に優れ,良質な喀痰が得られない症例 や,抗菌薬の前投与のある症例でも高い陽性率を 保っている.しかも検体が尿であり非侵襲的で,
操作が簡便,15 分という短時間で結果が得られ る,夜間・休日でも可能などの利点がある.これ に対し軽症例での陽性率が低い,以前に肺炎球菌 性感染症に罹患した症例では偽陽性となる危険が ある,キットが手に入りにくく高価であるなどの 問題点もあり,今後の課題である.
文 献
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1), Hiroshi TAKAHASHI
1), Takashi OGURA
1), Naoki MIYAZAWA
1), Toshiaki TOMIOKA
2)& Shigeki ODAGIRI
3)1)Department of Respiratory Disease and2)Laboratory Division, Kanagawa Cardiovascular and Respiratory Diseases Center,3)Odagiri Respiratory Disease Clinic