解析 II ・講義ノート
第 11 回
(2020
年12
月22
日(
火)
配信分)
§ 11. 線積分とグリーンの定理
ここまでは、 1 変数関数の ( 定 ) 積分を、平面 R
2の部分集合の
内、特に面的な広がりがありかつ面積を計算することのできる面 積確定領域上での 2 変数関数の ( 重 ) 積分へと、拡張することを考 えて来ました。
しかし R
2の部分集合と言っても、面的な広がりのある集合で はなく、曲線上で定義された関数の積分や、定義自体は広い所で 定義された関数を、積分範囲を曲線にとって ( 曲線に沿って ) 積分
すると言うことも考えられます。そのような積分を線積分と呼び
ます。
関数 f (x, y) を考える範囲を、曲線 C 上に制限するとき、この 曲線を (x(t), y (t)) とパラメーター表示してしまえば、
f (x(t), y (t)) は 1 変数 t のみによる関数ですから、重積分と言う より 1 変数関数の積分がそのまま適用できそうです。ただし、そ のためにはパラメーター t が曲線の長さをきちんと測れる尺度に なっている必要があります。そこで、まず曲線の長さから始めま しょう。
一般に、平面 R
2上の C
1級曲線
C : x(t) = (x(t), y(t)) (t ∈ I = [a, b])
の長さは
Z ba
|| x
′(t) || dt =
Z ba
r
x
′(t)
2+ y
′(t)
2dt
で与えられます。
これは、定義域の閉区間 I = [a, b] を
∆ : a = t
0< t
1< · · · < t
n= b
と分割して、各小区間 I
i= [t
i−1, t
i] (i = 1, . . . , n) における曲線の
長さを、分点 x(t
i−1) と x(t
i) を結ぶ線分の長さで近似、言い換え れば、曲線全体の長さを、隣り合う分点をつないでできる折れ線 の長さで近似した
Xn i=1
q
(x(t
i) − x(t
i−1))
2+ (y(t
i) − y(t
i−1))
2=
Xn i=1
vu uu t
x(t
i) − x(t
i−1) t
i− t
i−1
2
+
y(t
i) − y(t
i−1) t
i− t
i−1
2
(t
i− t
i−1)
=
Xn i=1
vu uu
t
∆x
∆t
i!2
+ ∆y
∆t
i!2
∆t
iを考え ( ただし ∆t
i= t
i− t
i−1(i = 1, . . . , n) ) 、この分割を限りな
く細かく取り、その大きさ
| ∆ | = max
1≤i≤n
∆t
iを 0 に近づけたときの極限として定義されるものです。 (
厳密な議 論は二年次専門科目の解析学I,II
に委ねます。)
0
-x y 6
x(a) = x(t0)
x(t1) x(t2) x(b) = x(t3)
:
C
●
●
●
●
0
-x y 6
x(a) = x(t0)
x(t1) x(t2)
x(t3)
x(t4) x(t5) x(b) = x(t6)
:
C
●
●
●
●
●
●
●
さて、以下では C は正則曲線、つまり各点で x
′(t) ̸ = 0 が成り
立つと仮定します。ここで
s(t) =
Z ta
|| x
′(τ ) || dτ
とおくと、被積分関数 || x
′(τ ) || の値が常に正なので、 s = s(t) は
狭義単調増加関数となり、 C
1級の逆関数を持ちます。これを
t = t(s) と表すことにしましょう。そこで、同じ曲線 C を x(t(s)) (s ∈ [s(a), s(b)] = [0, L]) と表しなおすと、
dx(t(s)) ds
= 1 (s ∈ [0, L])
が成り立ちます。これは進む速さが常に 1 であることを表し、 s
を弧長パラメーターと呼びます。
ここで
ds
dt = || x
′(t) ||
より
ds = || x
′(t) || dt
が成り立つと考えられます。この ds を曲線 C の線素と呼び
ます。
ds, dt
は、分母分子分けてはいけないと習った人もいるかもしれませんが、全微分のところでも触れたように、厳密な意味はちゃんとあります。外微分ま たは微分形式の名で、
3
年次以降の講義で扱うので、ここでは省略します。ここまでのことは、曲線 C が区分的 C
1級、つまり、定義域の
閉区間 I = [a, b] を、有限個の小区間に
a = t
0< t
1< · · · < t
n= b
と分割したとき、各小閉区間 I
i= [t
i−1, t
i] 上では C
1級で、各分
点 t
1, . . . , t
n−1では角があってもよいと仮定を緩めても成り立ち ます。以下 C は区分的 C
1級とします。
0
-x y 6
x(a) = x(t0) x(b) = x(t4)
:
C
●
●
●
x(t1) x(t2)
x(t3)
●
●
さて 2 変数関数 f (x, y) の曲線 C に沿う ( 線 ) 積分とは、
Z
C
f ds =
Z L0
f (x(t(s)))ds =
Z ba
f (x(t)) || x
′(t) || dt
のことを言います。これは曲線 C の上に立てた屏風を広げて、 1
変数関数 f (x(t(s))) のグラフが sz 平面上で囲む図形の面積に相 当します。
0
x
y- 6
z
z = f(x, y)
C Z
C
f ds
この屏風を xz 平面や yz 平面に射影して積分したものを、そ れぞれ
Z
C
f dx =
Z ba
f (x(t))x
′(t)dt
Z
C
f dy =
Z ba
f (x(t))y
′(t)dt
と表し、 f (x, y) の曲線 C に沿う x または y に関する ( 線 ) 積分と
呼びます。
0
x
-y 6
z
z = f(x, y)
C Z
C
f dx 0
x
-y 6
z
z = f(x, y)
C Z
C
f dy
曲線 C が領域 D を左回りに囲む単純閉曲線のとき、次が成り 立ちます。
Z Z
D
(Q
x− P
y)dxdy =
ZC
P dx + Qdy
この等式は、グリーンの定理と呼ばれます。 (
ZC
P dx + Qdy は
Z
C
P dx +
ZC
Qdy と言う意味です )
0
-x y 6
C D
領域 D の閉包 D が
φ
1(x) ≤ y ≤ φ
2(x) (a ≤ x ≤ b)
と表される最も簡単な場合で、第2項について示してみましょう。
0
-x y 6
a b
D
y =φ1(x) y = φ2(x)
このとき、左回りですから、曲線 C の下半分は
(x, y) = (x, φ
1(x)) (a ≤ x ≤ b), 続く上半分は逆向きに (x, y) = (x, φ
2(x)) (b ≥ x ≥ a) と表されます。よって
Z Z
D
( − P
y)dxdy =
Z ba
Z φ2(x)
φ1(x)
( − P
y)dydx
=
Z ba
[ − P (x, y)]
φy=φ2(x)1(x)
dx
=
Z ba
( − P (x, φ
2(x)) + P (x, φ
1(x)))dx
=
Z ba
P (x, φ
1(x))dx +
Z ab
P (x, φ
2(x))dx
=
ZC
P dx
を得ます。
[ 練習課題 ] Q の方も同様です。示してみましょう。
0
-x y 6
c d
D
x =ψ2(y) x = ψ1(y)
一般の場合は、領域を切り分けてこの特別な場合を適用し、後 で足し合わせるだけで示せます。その際、切り分けることで新た に付け加わった曲線は左右それぞれの境界として現れますが、逆 向きに回ることで、線積分の値の符号が逆になるため、その部分 での線積分は足し合わせると消えてしまうのが要点です。
0
-x y 6
:
C
0
-x y 6
6 6 C1
: C2
?
C3
?
ここで Q = P
f, − P = Q
fと置き換え、グリーンの定理を書き直 してみると
Z Z
D
( P
fx+ Q
fy)dxdy =
ZC
( − Qdx
f+ P dy
f)
=
ZC
( − Qx
f ′(s) + P y
f ′(s))ds
=
ZC
( P ,
fQ)
f· (y
′(s), − x
′(s))ds
=
ZC
( P ,
fQ)
f· nds
となります。ここで s は曲線の弧長パラメーターです。一方
n = (y
′(s), − x
′(s)) は、 C の左回りの進行方向を表す単位接ベク トル
dds
x(t(s)) = (x
′(s), y
′(s)) を 90 度右に回転した外向き単位法
線ベクトルで、通常 n ( normal の頭文字 ) で表します。
0 - x y 6
C
? N R
q - 6
I M i
n
また、第一式の被積分関数は通常 div ( P ,
fQ)
fと表され、ベクト
ル場 ( 厳密な定義は難しいのですが、ここではベクトルに値をとる 関数のようなものと考えておいて下さい ) ( P ,
fQ)
fの発散と呼びま
す。これらの表記を用いると、グリーンの定理は次のように書き 直すことができます。
Z Z
D
div ( P ,
fQ)dxdy
f=
ZC
( P ,
fQ)
f· nds
元の表記に戻って、任意の C
2級の 2 変数関数 F (x, y) に対し
て P = F
x, Q = F
yととると、
Q
x− P
y= (F
y)
x− (F
x)
y= F
yx− F
xy= 0
より、
ZC
P dx + Qdy = 0
が成り立ちます。
さて一旦 F のことは忘れましょう。一般に、二つの被積分関数
P , Q が、 Q
x− P
y= 0 を満たすとき、
Z
C
P dx + Qdy = 0
が成り立ちます。
これは、穴の開いていない領域においては、任意の 2 点に対
し、その 2 点を結ぶ曲線 C
′上の線積分
Z
C′
P dx + Qdy
の値が、 C
′の選び方に依らないことを意味します。
実際、任意の 2 点 x
1, x
2を固定し、それらを結び、途中で交わ らない 2 本の ( 区分的 ) C
1級曲線 C
1, C
2を任意にとるとき、 C
1と C
2−1( C
2を逆向きに走る曲線 ) をつないで出来る閉曲線を C
とすれば、
0 =
ZC
P dx + Qdy
=
ZC1
P dx + Qdy +
ZC2−1
P dx + Qdy
=
ZC1
P dx + Qdy −
ZC2
P dx + Qdy
より (
最後の式の「−
」はC
2 上の線積分全体にかかっています)
Z
C1
P dx + Qdy =
ZC2
P dx + Qdy
を得ます。
0
-x y 6
x1 x2
C1 C2
●
●
0
-x y 6
x1 C
C1 C2−1
●
C
1と C
2が途中で交わるときは、どちらとも交わらない C
3を
別に選べば、 C
1と C
3, C
2と C
3でそれぞれ線積分の値が一致す るので、同じ結論が得られます。
0
-x y 6
x1 x2
:
C1 C2
C3
●
●
そこで、点 x
0を固定し任意の点 x に対し、 x
0と x を結ぶ曲
線を C (x) と表すとき、
F (x) =
ZC(x)
P dx + Qdy
により、 2 変数関数 F (x, y) が一意に定まります。 ( 積分経路に依
らないので、
Z x
x0
P dx + Qdy
と書くこともあります。 ) この F を偏微分すると、実は、
F
x= P, F
y= Q
が成り立つので、 F は P , Q を偏導関数とする、原始関数と言う
ことになります。
微積分学の基本定理 ( F (x) =
Z xx0
f (t)dt に対し F
′(x) = f (x) が
成り立つ ) の 2 変数版が、こうして得られたわけです。ここで
Q
x− P
y= 0 は、原始関数が存在するための条件と言うわけです。
ここでの考察は、全てグリーンの定理に依存しているので、
3
変数以上で同 様のことを考えるには、改めて別の公式(
ストークスの定理)
が必要です。また、任意の C
2級の 2 変数関数 f (x, y) に対して、 P = − f
y, Q = f
xつまり (P, Q) が grad f を 90 度左に回転したベクトル ( f
の等高線の接ベクトル ) になるようとると、
Q
x− P
y= f
xx+ f
yy= △ f
より、グリーンの公式における重積分の被積分関数は、ラプラス 作用素またはラプラシアンと呼ばれる 2 回微分作用素
△ = ∂
2∂x
2+ ∂
2∂y
2により f を微分したものになります。
一方
P dx + Qdy = − f
ydx + f
xdy
=
y
′(s) ∂
∂x − x
′(s) ∂
∂y
f (x, y) |
(x,y)=(x(s),y(s))ds
= ∂f
∂n ds
より、線積分の被積分関数は、外向き単位法線ベクトル
n = (y
′(s), − x
′(s)) 方向の f の方向微分 ( ∂
∂n で表します ) にな
り、次の等式が得られます。
Z Z
D
△ f dxdy =
ZC
∂f
∂n ds
これもまた、重要な公式の一つです。
ちなみに、これを発散を用いた表記で見ておくと、
( P ,
fQ) = (Q,
f− P ) = (f
x, f
y) = grad f
より、
Z Z
D
div grad f dxdy =
ZC
grad f · nds
が成り立つのですが、実はそれぞれの用語の定義から
div grad f = △ f grad f · n = ∂f
∂n
なので、 ( 当然のことながら ) 同じ結論に至ります。ベクトル解析
などでは、こちらの表記の方が一般的でしょう。
一般に、定義域全体で △ f = 0 を満たす関数を調和関数と言い ます。 f が D 上で定義された調和関数のとき、上の公式より
Z
C
∂f
∂n ds = 0
が成り立ちます。これは D の境界での f の値の瞬間の増減の総
和が 0 であることを示しています。このことから、 f は D におけ
る熱の定常状態を表しています。
ラプラシアンは、この他、熱伝導の方程式や波動方程式など、物理で扱う重 要な自然現象を記述する際にも用いられる非常に重要な微分作用素です。
1 変数関数なら、 2 回微分が消えていると言うと、定数関数か 一次関数しかありませんが、これは線状で均質な物質の両端の温 度をそれぞれ一定に保っておくと、両端以外から熱が逃げない場 合の温度分布のグラフが直線になることを意味しています。
しかし 2 変数つまり面的な物質の温度分布は、境界が 2 点だけ
ではないので、一般にはもっと複雑で、例えば次のような関数が、
調和関数の例になっています。
1, x, y, x
x
2+ y
2, y
x
2+ y
2, x
2− y
2, xy, e
xcos y, e
xsin y,
x
3− 3xy
2, 3x
2y − y
3, log(x
2+ y
2), Tan
−1y
x
調和関数のスカラー倍、調和関数どうしの和は、やはり調和関 数になりますから、任意の一次関数は調和関数です。
複素解析で学ぶ正則関数の実部、虚部はどちらも調和関数に なっています。実は上の例はそれぞれ、
1, z, z
2, z
3, 1
z , e
z, log z
の実部または虚部またはそのスカラー倍として得られるもの
です。
第 10 回練習課題の解答
Z Z
x2+y2≤R2
x
2dxdy =
Z R−R
Z √
R2−x2
−√
R2−x2
x
2dydx
=
Z 2π0
Z R
0
(r cos θ)
2rdrdθ
=
Z 2π0
Z R
0
r
3cos
2θdrdθ
=
Z 2π0
Z R 0
1
2 r
3(cos 2θ + 1)drdθ
=
Z 2π0
1
8 r
4(cos 2θ + 1)
R
0
dθ
=
Z 2π0
1
8 R
4(cos 2θ + 1)dθ
=
1 8 R
4
1
2 sin 2θ + θ
2π
0