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リンゴ果皮のフラボノイド代謝と窒素多肥

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全文

(1)

リンゴ果皮のフラボノイド代謝

と窒素多肥

課題番号

07 66 007 4

平成7年度一平成8年度科学研究費

補助金(基盤研究?‑i)戸 究成果報告書

平成

10

5

研究代表

者 寮藤 寛

(弘前大学農学生

(2)

平成

7

年度 一平成

8

年度文部省科学研究費補助金 (基盤研究

C)

研 究 成 果 報 告 書 (2・)

課 題 番 号

0 7660C , 74

研 究 課 題

リンゴ果皮の フラボノイ ド代謝 と窒素多肥 研 究 組 織

研究代表者 :斉藤 寛 (弘前大学農学部助教授) 研 究 経 費

平成

7年度

平成

8

年度

計 研 究 発 表

な し

1 , 900 千 円

200 千 円

2, 1 00 千 円

(3)

緒 昌

わが国においてリンゴ果実の品質 に対する要求は,生産者 ,流通業界および消費者の思 惑が絡み合い,きわめて高い。すなわち,大きい果実が好まれ,食 味はもちろんであるが, 果形,着色,傷や病 虫害痕の有無等の外観 が評価の対象となり,とくに着色は重視される。

そのため生産者 は精微な勢定技術 ,窒素多肥,中心花‑の人工授粉 ,強度の摘果 ,袋掛 け,除袋,着 色管理,徹底 した薬剤散布 等で対応している。このうち,袋掛けは元来病 虫害 防除が 目的であった

しかし,農薬 による防除が可能となった現在 では,袋掛けにより着色 が促進されることより,遮光度の強い袋を使用した着色促進技術として位 置づけられている。

着色管理技術としては,菓摘み,実 回し,反射シートの使用等があり,着色促進 に多大な労 力を払っている。

収量の増 大と果 実肥大の促 進を期待して,生産者 は多量の窒素を施肥する傾 向がある。

青森 県におけるリンゴに対する平均窒素施肥量は 1 70kg N瓜a であり,欧米の窒素施肥量 0‑ 1 00kg N瓜a に比べて多いといえる。窒素の多肥 は収 量増大 に対して期待するほど効果 はなく,むしろ着色阻害,貯蔵性低下等負 の効果をもたらすことが知 られている。とくに窒素 多肥により着色が不 良となることは重要である。

リンゴ果実の赤色色素 はアントシアニンであり,主として c ya 血d 山一 3‑ ga l ac t o s i de である ( 3 ) 。 アントシアニン生合成経路を第 1図に示す( 4) 0

m H;00H 任3 cooH忘 H。ノ

phenylalanlne tCinnamlcacid

H

p<ounarylCoA scoA+ H C。A CHS OH

Hooc‑C,coscoA .I HO

OH

0

nariq enin

OH OH ILJeCOCyanidin

OH

erlodjctl

oI

̲ OH

cyanldjn

4・{oLJrnaricacid COOH

= 4 C

CFl

L

==

OH 0 nariq eninchaJcone o

H

OH

0

dihyd

(4)

phe nyl a la ni ne は phe nyl a la ni nea m mo ni al yas e郡 山)

により

,t ‑ c i nnam i cac i d とな り

,

c i nna m at e4‑ hyd ro xyl as e ( C4 H) および 4‑ C o uma r a t e: Co A l i gas e( 4CL) により ,pI c o uma r ylCo A とな る。 p‑ c o umar ylCo A は

3

分 子 の mo l o nylCo A と c ha lc o ne s ynt has e( CHS) に より縮 合 し

,

na r inge ni n c ha lc o ne とな り

,

c ha lc o ne‑ f la va no ne i s o me r as e( CFI ) に よ り nar inge ni n と な る

Nar inge ni n は f la va n o n 3

1

hyd ro xyl as e ( F3H) に よ り e r iod i c t io l を 経 由 し て d i hyd r oq ue r c e t i n とな り, di hyd r oq ue r c e t i nは d i hyd ro f r a vo no I4‑ r educ t as e ( DFR) により還元され l e uc o c yam id i n を経て c yam id i nとなる。また

,

d i hydr oque r c e t i n は脱水素されることにより que r c e t in とな る。従って

,

d i hyd ro que r c e t in は c i a ni d i n と que r c e t i n の共通の前駆物質である。窒素 多肥がこの経路 にいかなる影響を与えるか明らかにすることは,窒素多肥 により着色が不 良 となる原因を解 明する上で重要である。

筆者 は連年無 窒素栽培してきたリンゴ果 実と窒素多肥 したリンゴ果実を用いて果皮 中の アントシアニン濃度 とケルセチン濃度を測定し,以下の事実を明らかにした(

5)

。アントシアニ ン濃度 は常に無窒素 区で高かった。全ケルセチン配糖体の濃度 は窒素多肥 区で無窒素 区 より高かった。また,アントシアニン濃度 とケルセチン濃度の合量 に対するアントシアニン漢 度の割合は無窒素 区で窒素 区より高かった。これらのことと d i hyd r o que r c e t i nが両化合物 の共通の前駆物質であることから,無窒素 区の果実では d i hyd r oque r c e t in からアントシア ニン合成 にいたる系の活性 がケルセチン配糖体合成 系の活性より相対的 に高いのに対し, 窒素多肥 区の果 実ではケルセチン配糖体合成系の活性 がアントシアニン合成系より相対的 に強いと結論づ けた。このことが窒素多肥 によりリンゴ果 実の着 色が不 良となる直接 的な原 因と考えた。

しかし窒素がいかなる機 作でこの経 路 に影響を与えるかは依然不明である。そこでこの合

成経路の種 々の 中間代謝産物をリンゴ果皮 に与え,無窒素 区の果実と窒素多肥 区の果実

でアントシアニンおよびケルセチン配糖体の濃度 に及ぼす影響を検討することを目的にこの

研究を計画した。リンゴ果皮の表 面はクチクラ層で覆われているため,果皮表面から前駆物

質溶液を浸透 させることは困難 である。従ってリンゴ果皮のプロトプラストを調整 し,プロトプ

ラストを用いる実験系の確 立を目指した。

(5)

無窒素 区および窒素 多肥 区の着色率別果実収量,果皮中のフラボノイド化合物濃度

窒 素 多肥 によりリンゴ果 実 の着 色 が不 良 となることはよく知 られ た事 実 である。著者 は 1 972 年より無窒素栽培 区 ( ‑N 区)と窒素 多肥 区 ( +N 区)を設け,窒素 多肥 がリンゴ樹の 生育,果実収 量,着色率等 に及 ぼす影響を継続 して調査してきた 。1 995 年の結果を示す。

実験材料 および方法 供試材料

弘前大学農 学部 附属藤 崎農場 に試 験 区を設 定した。土壌 は岩 木川 の支 流である平川 の河成 沖積 の灰色低地土である。リンゴ園土壌として肥沃な土壌と位 置づ けられている。品 種 は丸薬 台の紅 玉である。 ‑N 区は 1 972 年より処理を開始 した。 +N 区は 1 997 年より 2kg N/ 樹を 4

20 日頃 に施肥 した。栽培管理 は通常通りであるが,着色管理 は行わなか った。 1 0月 20 日に収穫し,肉眼的 に着色率別 ( 着色率 90% 以上, 80‑ 90% , 60‑ 80% およ び 60% 以下)に区分した。着色率別 に収 量,個数を求めた。

各着色率別 に 5 個果 実を採 取し,果 実の赤道面よりコルクボーラーで果皮を切 り抜いた。

果皮より果 肉をできるだけ取り除き,液体窒素で急凍,凍結 乾燥後,粉砕 し,分析 に供した。

分析方法

アントシアニンの定量 : 果皮粉 末を 1 %HCl 含有メタノールで抽 出し, 530mm で比色し, c ya r id hn 3‑ ga lac t o s i de の分子吸光係数を 34300( 2 ) として濃度を求め, nmo l / c m

2

で表 示した。

ケルセチン(

Q)

配糖 体の定量 : 果皮粉末試料 30mg を 7 0% メタノール 5m lで一夜抽 出し た。定量は Spa no s と Wr o l s t ad( 6) の方法 に準じて高速液体クロマトグラフィーで行った

カ ラムは ODS , 溶離液 として 0. 07 MX H2 PO4 bH2. 5 ) と 1 00% メタノールを用い, 2 液グラジェ ントで行った 。280mm で検 出し ,nmo l / c m

2

で表示した。

結 果

1 表 に 1 樹あたりの着色率別収 量と‑果重を示した。全収 量は ‑N 区で 30 1 . 8kg , +N

区で 467. 6kg であり, +N 区で高かった。しかし,着色率 90% 以上の果 実収 量は ‑N 区で

(6)

1 1 3. 6kg であるのに対して, +N 区では 8. 9kg であった。また,着色率 60% 以下の果実は

‑N 区で 3. 3 kg であったのに対し, +N 区では 1 84 kg であり,窒素多肥 により着色が著しく 悪化することが認 められた。このことは以前の結果 と一致した(

5)

。また,‑果重 は +N 区 の果実が

‑ N

区の果実 よ り重かった。

第1表 一樹あたりの着色率別収量および一果重

着色率 >90% 80‑90% 60・80% <60% 計

‑N区

収量仕g) 133.6 125.4 割 合(%) 37.8 41.6

‑果重(g) 171.1 178.4 +N区

収量仕g) 8.9 84.8 割 合(%) 2.1 18.1

‑果重(g) 196.0 195.8

59.5 3.3 301.8 19.7 1.1 100.0 174.0 157.0

189.0 184.0 467.6 40.4 39.0 100,0 183.3 163.1

2表 収 穫 時の 果皮 中の着 色率別フラボノイド化 合物濃 度(nmol/cm2果皮)

着色率 アントシアニン ロイコアントシアニン 全ケルセテン配糖 体 全フラボノイド

‑N

>90% 125(33)★ 80・90% 27(23) 60・80% 30(30)

<60% 14(24)

判り6}03^03.〜1224iZI5iZI5iZI5iZI596994222

+N

>90% 75(23) 39(12) 80・90% 54(27) 34(17) 60・80% 50(27) 35(19)

<60% 13(lq) 31(25)

3:向t:飢

209644ll6

221(65) 111(56) 104(55) 81(65)

38311710059 080549923111

( )内は全フラボノイド化合物に対する各フラボノイド化合物の割合(%)

アン トシアニン濃度 は着色率 90% 以上では ‑N 区で +N 区 よ り高かった。他 の着色 率では +N 区で高かった。 ロイ コアン トシアニ ン濃度 は ‑N 区の 90% 以上を除 くと

+N 区で高い傾 向があった。 また, ‑N 区の着色率 90% 以上を除 くと着色率間で大 きな濃 度 差 は な か っ た。 ケ ル セ チ ン配 糖 体 と して Q

l l c o s i de , Q一 ga la c t o s i de , Q‑ r u

t

i no s i de ( r ut in) , Q‑ a ra bi no s i de , Q‑ xyl o s i de お よび Q‑ r ha mno s i de を検 出 した。

これ らの合 量 を全 ケルセチ ン配糖体濃度 と した。 全 ケルセチ ン配糖体濃度 はすべ て

(7)

の着色率 で

+ N

区が

‑ N

区 よ り高か った。全 フラボ ノイ ド化合物濃度 に対す るア ン

トシアニ ン濃度 の割 合 は

‑ N

区の果実 で

+ N

区の果実 よ り高い傾 向があった。 これ

に対 し,全 ケルセチ ン配糖体 の割合 は

+ N

区で高い傾 向が あった。従 って,

‑ N

の果実 ではア ン トシアニ ンの生合成 が旺盛 であ り,

+ N

区の果実 ではケルセ チ ン配

糖体の生合成 が活発 である とい え る。 この こ とが窒素多肥 に よ り着色 が不 良 とな る

原 因である と考え られ,以前の結果 と一致 した(

5)

(8)

Ⅱリンゴ果皮のプロトプラスト調整とプロトプラストでのアントシアニン発現

窒素多肥 した リンゴ果 実 の着 色 は不 良 とな るこ とを前節 で示 した。 +

N

区の果 実 はア ン トシアニ ン濃度 が低 く, ケルセチ ン配糖体濃度 の高い こ とが認 め られ た。 し か し,その生理的機 作 は不 明で ある。 前節第

1

図に示 したア ン トシアニ ンお よびケ ルセチ ンの生合成経 路 のいずれ かの段 階で,窒素 が影響 を与 えてい る可能性 が考 え られ る

したが って, この経路 の 中間代 謝産物 を リンゴ果皮 に添加 し, ア ン トシア ニ ンお よび ケルセ チ ン生成 に及 ぼす影響 を検討す るこ とで窒素 の作用機 作 を明 らか にす るこ とがで きる と考 え られ る

しか し, リンゴ果皮 は クチ クラ層 に覆 われ てい るため果皮表 面 か ら前駆物質 を浸透 させ るこ とは困難 で ある

そ こで前駆物質 の取 り込み を容易 にす るた めに果皮 のプ ロ トプ ラス トを調整 し,それ を用 いて実験す る こ とを計画 した。 リンゴ果 肉か らのプ ロ トプ ラス トの調整例 はあるが,果皮 のプ ロ

トプラス ト調整例 は報告 されていない。

実験材料および方法

1. 実験材料 弘前大学農 学部附属藤崎農場 に栽植 されている未着色の紅玉果実を用いた。

果実からコルクボーラーで果皮を切 り取り,果 肉をできるだけ除去してプロトプラストの調整 に供した。

2. 酵素液調整法 蒸留水 に 0. 6M マンニトール, 0. 56M 塩化カルシウムとなるようにそれぞ れを加 え,溶解 した。この溶 液 に 4% セルラーゼ" オノヅ ガ ' RS , 1 % マセロザイム R‑ 1 0 , 0. 2% ペクトリアーゼ

7

‑ 23 をそれぞれ加え,溶解した 。3500r pm で遠心分離し ,pH を 5. 9

5. 8 に調整した 。0. 45〝皿 のメンブランフィルターでろ過滅菌した 。25℃ の恒温器 に 1 ‑ 2 日 間静置して雑 菌のないことを確認してプロトプラストの調整 に使用 した。

3.

培地の調整法(

1)

1

表 に培地組成を示した.

KM 1‑4

および

MS‑2

の所要量をそれぞ れ蒸留水 に入れ,糖を加えて pH5. 6‑ 5. 8 に調整し,ろ過滅 菌した。 25℃ で 1 ‑ 2 日静置し, 雑菌の混入がないことを確認 して使用した。

4.

プロトプラストの調整

3枚重ねのガーゼで果皮を包み

75% エタノールで軽くすすぎ,蒸

留水で洗浄した。その後 ,有効塩 素濃度 1 % の次亜塩素酸ソーダ液 に入れ, 1 5 分間脱気

した。殺菌の終わった果皮を滅 菌水で洗浄後,果皮 5 枚 について 20ml の酵素液を加え,

30℃ で 4 時間振とう処理した 。8 枚重ねのガーゼでろ過して,未 消化残さを除去し,ろ液を

(9)

80g で 6 分間遠心分離して,プロトプラストを分離した。

次いで, 0. 05M 塩化カルシウムを含 む 0. 56M マンニトール溶液 bH5. 8) で 3 回洗浄した。

その後, 8P 培地および 1 0pM d i hyd r o q ue r c e t i nを含 む 8 P 培地で洗浄し,培地 4ml に 懸濁し,照明下 25℃で培養した。

第 1表 8P培 地の組成 KaoandMichayluk'smedium(KM medium)(1) KM・1Majorelements

KNO 3

CaC12・2H20 MgSO 4・7H20 KCI

KH 2PO 4

MS・2 Na2EDTA FeSO・7H20 KM・2Minorelements

MnSO 4・4H20 H3BO 3

ZnSO 4・7H20 KI

Na2MoO 4・2H20 CuSO 4・5H20 CoC12・6H20

mg Sugars 1900

600 600

300 170

37.3 27.8

0.。3・。誌o・‑5雌雌日日

KM‑3Organicconstituents(Vitamin) Ascorbicacid

Nicotin・amide Thiamine・HCI D・Capanto血enate Cholm chloride Folicacid Riboflabin

p・aminobenzoicacid Biotin

Vitamin B12

Vitamin D3

KM‑4Organicconstituents Citricacid

Malicacid Fumaricacid NapyTuVate

oooO.042020102012LL1・10・0.00.00 000000004442

Glucose Sucrose Fmctose Ribose Xylose Mannose

Rhamnose Ceuobiose

SorbitoI Mannibl Casaminoacid myo・inositol

mg/L

68400 250

250 250 250 250 250

250250250250100

(10)

結果と考察

写真 1 に示したようにプロトプラストを単離する事ができた。収量はシャーレあたり 1×1 0

5

個であった。細胞 内物質が密 に詰まったものと細胞 内物質が見られない透 明なものの

2

種 類のプロトプラストが見られた。また,細胞 の大きさが大きいものと小さいものが認 められた。

果皮組織の断面を写真 2 に示 したが,果皮組織 はおよそ 5 層の細胞からなり,第 1 ‑ 2 層 目 は細胞 内容物が詰まった小さい細胞からなり,アントシアニンの発 現が認 められた。 3‑ 5 層

目の細胞 は

ト2層 目の細胞より大きく,細胞 内容物はあまり認 められなかった。果 肉細胞 は

果皮細胞よりはるかに大きいことが分かる( 写真

3)

。したがって,小さくて細胞 内物質が密 に 詰まったプロトプラストは 1 1 2 層 目に由来するものであり,透 明で大きいプロトプラストは 3‑ 5 層 目の細胞 に由来すると考えられる。また,細菌等 によるコンタミネーションは認 められなか った。

写真 4‑ 9 に未着色紅玉果皮プロトプラストを 1 0〟M 曲 y血O q ue r c e t i n ( DHQ) を含 む 8P 培地で培養 した 24 時間毎の写真を示した。培養 48 時間後でもアントシアニンの発現は認 められなかった 。48 時間後では崩壊 した細胞 が対照でも認 められ , DHQ 添加 により崩壊 する細胞が多くなることが認 められた。また, HPLC によるケルセチン配糖体の検 出を試 み たが,検 出することはできなかった。

以上のようにリンゴ果皮からプロトプラストを調整することに成功したが,アントシアニンおよ びケルセチン配糖体を検 出することはできなかった。その理 由の一つとして,殺菌 に用いた 次亜塩 素酸ソーダの強い酸化力 によりアントシアニン合成経路の中間代謝産物分解 された か,合成 系が不調 になった可能性 が考えられた。その傍 証として,着色 した果皮でプロトプ ラストを調整するとアントシアニンが消失するという事実があげられる。

そこで殺菌の際,次亜塩 素酸ソーダの使用をやめ, 70% エタノール 中で 5‑ 1 5 分間殺菌す る方法を検討した。5 ‑ 1 0 分間では殺 菌効果が不十分でコンタミネーションが激 しく,実験 に は使用できなかった。 1 5 分と処理時 間を長 くするとエタノール による障害が認 められ,健全 なプロトプラストは得られなかった。

そのほか,抗 生物質の使 用等 ,種 々の方法を試 みたが,いずれ においてもプロトプラスト

でアントシアニンを発現させることはできず,プロトプラストを用いた実験を断念せざるを得な

かった。

(11)

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写真 1紅玉果皮から調整したプロトプラスト

叫 等L・ ̲I 守

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(12)

写真3

(13)

実4対照 8P培地 (培養 開始時) L7

(14)

.m隠β八一

‑1'LW

写実6対照 8

P培地

(15)

̲/.I:.I;Lll

・J.:.I.I)療写真8

対照 8P培地(48時間後)

l 享 かJ ≠

Ir・

(16)

リンゴ果皮に添加した窒素化合物およびフラボノイド生合成経路 中間代謝産物が アントシアニンおよびケルセテン配糖体の生成 に及ぼす影響

本研 究 はリンゴ果皮のプロトプラストを用いて標 記の実験を行うべく計画されたものであっ た。しかし,前節 で述べたようにプロトプラストの調整 には成功したものの,プロトプラストでの アントシアニンの発現には成功せず,実験系を確 立することができなかった

それ故, i nt ac t なリンゴ果実を用いて標記の実験を行うことにした。

著者 は,リンゴの着色 に関連して以下のことを報告した(

5)

1)

果 実 中の可溶性 窒素濃度 とアントシアニン濃度 間 に有意な負相 関,可溶性 窒素濃度 と

C6 / C1 比 ( 糖代謝経路の EM P経路とPP経路の相対活性を示す値で,この比が小さい ほど PP 経路の活性 が大きいことを示す。)間に有意な正相 関, C6 / C1 比とアントシアニ ン濃度 間に有意な負相 関を認 めた。このことは窒素施肥 により果実の糖代謝はアントシア ニンの前駆物質であるフェニルアラニンの合成 に関与する PP 経路より EM P 経路の活 性が強まることを示 し,着色に不利 になるといえる。

2)

果皮 中の可溶性 窒素は窒素多肥 区で無窒素 区より高かった

可溶性 窒素 中でもっとも濃 度が高いのはアスパラギンであった

全アミノ酸濃度 およびアスパラギン濃度 とアントシア ニン濃度 間 に有意な負相 関,また,果皮 中の遊離イソロイシン濃度 とアントシアニン間 に 有意な正相 関を兄いだした。

3)

着色開始期の果 芯 中エチレン濃度 とアントシアニン濃度 に有意な正相 関,果 肉中のスパ ーミン濃度 とアントシアニンおよびエチレン濃度 間 に有意な負相 関を認 めた

さらに果皮 中のスパ ーミン濃度とアントシアニン濃度間に有意な二次回帰を認 めた。

4)

果皮 中のシトラマル酸濃度 とアントシアニン濃度 間に有意な正相 関を認 めた。

これらの結果から,窒素化合物として無機態窒素として硫安 ,有機体窒素としてアスパラギ

ン( A s n) ,フェニルアラニン Phe ) ,イソロイシン me ) ,ポリアミン類 としてプトレシン Put ) ,スパ

ミジン

(Spa)

およびスパ ーミン(

Spn)

を供試 することにした。また,フラボノイド生合成 系の 中

間産物として t ‑ c i nnami cac i d( t CA) , 4‑ hy血o xyc i nna 血cac i d( 4HC) , 曲 y血oque r ‑

c e t i nP HQ) を供試 した。

(17)

実験材料および方法

1.

実駿材料 弘前大学農 学部 附属藤 崎農場 に栽植 の

‑ N

区 と

+ N

区の紅 玉 を使用 し た。9 月 中旬 に未着色の果実 を採 取 し,実験 に供す るまで

0℃

で保存 した。

2. 供試液の調整法 各添加物質をジメチルスルホキサイドの最終濃度が 1 % 以下となるよう にジメチルスルホキサイドに溶解 し ,pH を 5. 6‑ 5. 8 に調整し,蒸留水で所定の濃度 に希 釈した。

3. 処理方法 果実表面を

75%

エタノールで洗浄した。各添加液を

0.6m

lしみこませたガラ ス繊維 ろ紙

(3×3cm)

を果 面に密着 させ ,ラップで果実を包み一夜暗黒下,

25℃で放置

した。 1 個の果実 に最大 3 処理する事ができたが‑カ所 は対照 ( 1 % ジメチルスルホキサイ ド溶液) とした。その後,ろ紙片を取り除き,果実をラップで包み,

15℃

,蛍光灯下で

72時

間静置した。果 実の処理部分を切 り取り,できるだけ果 肉を取り除き,

2

分してアントシア ニンとケルセチン配糖体の分析 に供した。

4. アントシアニンおよびケルセテン配糖体の分析方法

アントシアニンおよびケルセチン配糖体の分析方法は第

1

節の方法と同様である。

結果と考察

第 1 表 ,第 2 表 にそれぞれ窒素化合物およびフラボノイド前駆物質の添加実験の結果を 示した。表示 は対照 区の濃度を

1

とした場合の相対濃度で示 した。その理 由は個 々のリン ゴにより対照の濃度 が異なるからである。

第1表 窒素化合物添加実験 (対照の濃度を1とした相対濃度 )

‑N区 +N区

アントシアニン 全ケルセチン配糖体 アントシアニン 全ケルセチン配糖休 1mM 硫安 0.68

10mM硫安 0.66 1mM Asn 0.68 1mM Put 0.77 1mM Spd 1.25 1mM Spn 0.81

窒素化合物を添加した結果 ‑N 区では 1 m MSpd を除くとアントシアニン濃度 は低下した。

全ケルセチン濃度 はすべての処理で低下した。

+N

区では

1

mM 硫安を除くすべての処理

でアントシアニン濃度 は低下した。一方 ,ケルセチン濃度 は硫安とA

sn

処理で低下したが,

(18)

ポリアミン処理では上昇した。窒素化合物の添加 がアントシアニンおよびケルセチン配糖体 濃度 に及ぼす影響 は

‑N

区の果実と

+N

区の果実で異なった

とくにケルセチン配糖体 に たいする影響 は異なり,

‑N

区ではすべての窒素化合物で低下したのに対し,

+N

区では すべてのポリアミン類 がケルセチン配糖体の濃度を上昇させた。ポリアミン濃度 は

+N

区の 果実で高いという事実(

5)

と考えあわせるとポリアミン類 がケルセチン配糖体の濃度を高めて いる一因とも考えられる。

第2表 フラボノイド化合物前駆物質の添加実験 (対照の濃度を1とした相対濃度)

‑N区 +N区

アントシアニン 全ケルセチン配糖体 アントシアニン 全ケルセチン配糖体 1mMPhe 1.45

1mMtCA 0.77 1mM4HC 0.70 1mMDHQ 0.85

第3表 対照のケルセテン配糖体の濃度を1とした場合の相対濃度

1mM硫安 1mMAsn lmMP止 1mMSpd lmMSpn Q‑glc 0.27 0.81

Q‑gal 0.29 0.29 Q‑rut 0.36 0.53 Q‑ara 0.60 0.ll Q‑xy1 0.31 0.69 Q‑rha 0.34 1.10 Tota1 0.32 0.66

0.64 0.32 0.50 0.29 0.80 0.57 0.50 0.33 0.73 0.46 0.62 0.41 0.69 0.43

0.45 0.75 0.57 1.00 0.41 1.58 0.40 1.00 0.67 2.00 0.40 2.00 0.43 0.81 0.62

0.25 6.00 1.00 0.68 1.00 0.63 0.67 2.25 0.48 0.56 1.23 0.59

1.00 0.50 1.27 5.00 0.25 5.00

1.13 0.62 1.70

1.38 0.63 2.25 1.30 0.53 1.77 lmMPhe lmMtCA lmM4HC lmMDHQ 濃 度 (nnH,I/cm2)

Q‑glc 1.70 0.25 Q‑ga1 2.00 0.50 Q‑rut 1.15 0.29 Q‑ar° 0.60 0.75 Q‑xyl 1.40 0.94 Q‑rha 1.54 0.56 Total 1.42 0.36

0.81 0.92 1.00 1.00 0.81 0.95 0.75 0.83 0.63 0.88 0.70 0.93 0.72 0.91

0.55 0.52 0.67 0.60 0.50 0.71 0.88 0.67 0.58 0.53 0.79 0.76 0.63 0.51

0.74 1.43 0.33 1.50 0.57 1.54 0.25 0.75 0.83 1.45 0.56 1.16 0.70 1.36

,550302.16 3‑・84・020・3

4.8 5.0 45.5 55.8 21.3 27.5 120.5 150.3

フラボノイド化合物前駆物質の添加実験でアントシアニン濃度を上昇させたのは ‑N 区で

は Phe のみであり,他の化合物 は低 下させた。それ に対し

+N

区では Phe に効果は認 め

(19)

られなかったが,他の化合物ではアントシアニン濃度 に上昇効果が認 められた

とくに DHQ で効果が大きかった

全ケルセチン配糖体 に関して,

‑N

区では Phe に上昇効果があり, 他の化合物では低下した。一方, +N 区では DHQ のみが濃度を上昇させた。

以上のことより ,‑N区の果実は Phe のプールサイズが小さく ,Phe を添加 によりアントシ アニン生成が促進されたと考えることができる。これに対し ,+N 区では

tCA

以降のプール サイズが小さくそれ らの化合物の添加 により,アントシアニン生成が促進されたといえる。し かし,

+N

区の対照のアントシアニン生成量は

‑N

区のそれ に比較 して低く,これ らの添加 により

‑N

区の果実並 にアントシアニンが生成されたわけではない。全ケルセチン配糖体 に 関しては,

‑N

区ではアントシアニンとほぼ同様な傾 向を認 めたが, +N 区では DHQ のみ 効果があった

このことは DHQ がフラボノイド生合成 系でケルセチンの直前の化合物であ ることより, +N 区の果実ではケルセチン合成が旺盛であることの傍 証であると考えることが できる。

第 2表 には全ケルセチン配糖体について相対濃度を示したが,第 3表 には個 々のケル セチン配糖体について対照の濃度を 1 とした場合の相対濃度を示した。第 3 表の最後の 項 目" 濃度' ' は

‑N

区,

+N

区それぞれ対照区での絶対濃度の平均値である。

‑N

区の各ケ ルセチン配糖体の濃度 は

+N

区の濃度より低かった。両区とももっとも濃度が高いのは Q‑

xyl であり,次いで Q‑ g l c >Q‑ r haQ‑ r ut >Q‑ a r a>Q一 ga l の順であった。各ケルセチン配糖体

の相対濃度 に及ぼす処理の影響 に一定の傾 向は認められなかった。したがって,各処理の

影響 はアグリコンであるケルセチンの生合成 に及ぼしたものであり,配糖体化する際に影響

を与えたとは考えられない。

(20)

総 括

1.窒素多肥した果 実の着色は著しく不 良となることが確認 できた。 +N 区の‑果 重は‑

N 区より重かった

果 皮のアントシアニン濃度 は着色率 90% 以 上の果 実では ‑N 区 で高かったが,その他 の着 色率では +N 区でやや 高かった

ケルセチン(

Q)

配糖 体と し て , Q‑ g l uc o s i de ( Q‑ g lC ) , Q一 ga lac t o s i de( Q一 ga l) , Q‑ r ut i no s i de( Q‑ r ut ) , Q‑

ar a bi no s i de( Q‑ a ra ) , Q‑ xyl o s i de および Q‑ r hamno s i de ( Q‑ r ha ) を検 出した。濃度 は Q‑ xyl がもっとも高く,次いで Q‑ g lC >Q‑ r haQ‑ r ut >Q‑ ar a>Q‑ ga l の順 であった。

これ らの合 量を全ケルセチン配糖 体濃度 としたが,す べ ての着 色 率 において +N 区 で

‑N

区より高かった。全 フラボノイド化合物 に対す るアントシアニンの割合 は

‑N

区 で高く,ケルセチン配糖 体の割合 は

+N

区で高かった

このことより,

‑N

区の果実で はアントシアニン合成 系 が活 発 であるの に対して, +N 区の果 実 ではケルセチン合 成 系が活発であることを示 す。このことが窒素多肥 により,リンゴ果実の着 色 が不 良と なる直接的な原 因であると考えられた。

2. リンゴ果皮 からプロトプラストを調整 し,それを用いてフラボノイド合成経 路 に及 ぼす 窒素化合物 および フラボノイド合成 系の 中間代 謝産物の影 響を検 討す ることを試 み た。リンゴ果皮からプロトプラストを調整 することに成功した。これ は最 初の報 告である と思われる。しかし,種 々検 討 したがプロトプラストでアントシアニンを発 現 させ ること はできず ,プロトプラストを用いる実験を断念せざるを得なかった。

3. リンゴ果皮表 面から窒素化合物 ,フラボノイド生合成 中間代 謝産物 を吸収させ,それ らがアントシアニンおよびケルセチン配糖体生成 に及ぼす影響 を検討 した

窒素化合物 を添加 した結果 ,

‑N

区では

1

m MSpd を除 くす べての化合物でアント

シアニン濃度 は低 下した 。+N 区では

1

mM 硫 安を除くすべてでアントシアニンは低

下 した 。フラボ ノイド前 駆 物 質 を 1 mM の 濃 度 で 添 加 した が , ‑N 区 で は

phe ny l a la ni ne が,

+N

区では t ‑ C i nna m i ca c i d , 4‑ hyd r o xyc i nna m icac i d および

仙 y血oq ue r c e 血 がアントシアニン濃度 を上昇させた。これ らのことより, ‑N 区の

果実では phe ny l a la ni ne のプールが小さいこと,

+N区の果 実では

t ‑ C i nnam i ca c i d

以降のプールが小さいことが推 察され た。 +N 区の果実でケルセチンの生合成経 路

の活性 が強いことが示 唆 され た。これ らのことが窒 素 多肥 によりリンゴの着 色が悪 化

する原 因と考えられた。

(21)

引用文献

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参照

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