著者連絡先 江木盛時 〒 700-8558 岡山県岡山市北区鹿田町 2-5-1 岡山大学病院麻酔科蘇生科 *岡山大学病院麻酔科蘇生科
Ⅰ 急性期高血糖
急性期患者では,感染,外傷,手術などの生理学
的ストレスにより惹起されたインスリン抵抗性の増
大により急性高血糖が頻繁に生じる.このストレス
性高血糖の原因となるインスリン抵抗性の増大に
は,平滑筋の糖の取り込み障害および利用障害,肝
臓での糖新生の増加,グリコーゲン産生の減少,遊
離脂肪酸の増加の 4 因子が主としてかかわってい
る
1)∼ 3).また,ステロイド投与,高カロリー輸液,
カテコラミン投与などの急性期治療も高血糖を惹起
する(医原性高血糖)
1), 4).このように,急性期高血
糖は,患者重症化に伴うストレス性高血糖と治療に
伴う医原性高血糖が相加的に働いて生じる.
急性期高血糖の重症度が患者重症度と正の相関関
係にあり,患者予後と密接にかかわることは,多く
の研究で報告されてきた.また,急性高血糖は脳細
胞や赤血球など細胞への糖の移行を促進する有利な
生体防衛反応であり,低血糖は軽微であっても危険
であると古くから考えられてきた.このため15年以
上前には,インスリンの投与は,生体に不利に働く
浸透圧利尿や体液のシフトを起こしうる 215 ∼
250mg/d
l
以上で開始することが推奨されていた
5).
Ⅱ 急性高血糖の制御による患者予後改善の報告
1. DIGAMI study(1995 年)DIGAMI study は,糖尿病を合併した 620 名の心
筋梗塞患者(研究開始時の血糖値約 280mg/d
l
)を対
象とし,従来型血糖管理(臨床上高血糖が問題とな
らない限りインスリンを使用しない;平均血糖値
211mg/d
l
)と 低 め の 血 糖 管 理(目 標 血 糖 値 126 ∼
196mg/d
l
;平均血糖値 173mg/d
l
)を比較した多施
設無作為化比較試験(randomized controlled trial:
RCT)である
6), 7).DIGAMI study では,低めの血糖
日本臨床麻酔学会第 29 回大会教育講演
日臨麻会誌 Vol.31 No.4, 551 〜 559, 2011血糖管理の新時代:
What is a NICE-SUGAR for critically ill patients?
江木盛時
*[要旨]重症患者は,インスリン抵抗性の増大により高血糖を生じる.2008 年版の Surviving Sepsis Campaign guidelines では,この急性期高血糖を 150mg/dL 以下にコントロールする よう提言している.しかし,集中治療患者の血糖降下療法を検討する無作為化比較試験のうち,最 も大規模な研究である NICE-SUGAR trial は,強化インスリン療法が患者死亡率を増加させるこ とを示した.今後,新たな知見が加わるまでは,144 〜180mg/dL を目標とする“安全な血糖 管理”が推奨されるようになると考えられる.
管理が,従来型血糖管理と比較して有意に 1 年後死
亡 率 を 低 下 さ せ た(18.6 % vs. 26.1 %,
P
= 0.028)
(図 1).DIGAMI study 以降,急性期患者の目標血
糖値は,やや下がり 180 ∼ 200mg/d
l
以下となった.
2. Leuven studies(2001 & 2006 年)
2001 年に Van den Berghe らは,1,548 名の人工
呼吸を要する外科系重症患者を対象に強化インスリ
ン療法(IIT;Intensive Insulin Therapy)
(目標血糖
値 80 ∼ 110mg/d
l
)の有効性を検討する 1 施設 RCT
を報告した(Leuven I study)
8).Leuven I study で
は,IIT は従来型血糖管理(目標血糖値 180 ∼ 215mg/
d
l
)と比較して,有意に ICU 死亡率を低下させた(IIT
vs. 従来型;4.6% vs. 8.0%,
P
< 0.04).IIT は死亡
率を低下させるだけではなく,人工呼吸期間,輸血
量,軸索性多発神経炎,急性腎不全の有病率を有意
に低下させることも併せて報告された.40mg/d
l
以
下の低血糖の発生率が従来群と比較して約 6 倍に増
加するものの
9),大半の ICU で可能な血糖測定とイ
ンスリン投与で,患者死亡率を減少させうることを
示したこの研究結果は,大きなインパクトを集中治
療領域に与え,重症患者の血糖管理に関する研究は
飛躍的に増加した
.
その 5 年後の 2006 年,Van den Berghe らは,内
科系重症患者 1,200 名を対象に Leuven II study を
報 告 し た
11).Leuven II study で は,IIT の ICU 死
亡率減少効果は軽微で,有意差は存在しなかった
(IIT vs. 従来型;24.2% vs. 26.8%,
P
= 0.31)
(表 1).
この 2 つの Leuven study をメタ解析したところ,
①平均血糖 110mg/d
l
以下であった患者では,死亡
率・有病率ともに有意に低かったが,低血糖発生率
が有意に高く,②平均血糖 110 ∼ 150mg/d
l
であっ
た患者は死亡率が有意に低値であったが,有病率と
低血糖発生率は変化しなかった
12).この結果を受け
て Surviving Sepsis Campaign guidelines
13)では,推
奨される目標血糖値を 150mg/d
l
以下としている.
Ⅲ 強化インスリン療法にまつわる論争
以上のように IIT の効果は,2 つの Leuven study
で華々しい結果として報告された.しかし,2 つの
Leuven study は,① 1 施設研究である
14),②盲検
化されていない
14),③ Early termination(研究の早
期終了)が行われている
14),④患者重症度と比較し
てコントロール群の死亡率が高い
15),⑤ Leuven I
trial の患者の 60%以上が開心術後患者である
15),⑥
入 室 直 後 か ら の 高 カ ロ リ ー 輸 液 を 使 用 し て い
る
16), 17),⑦低血糖の発生率が増加する
18), 19)など,統
計法,研究法そして IIT そのものに問題点を抱えて
いたため,他の研究で血糖降下療法の効果の是非を
再確認する必要があった
14), 20).
Ⅳ 強化インスリン療法に関する多施設研究
このような IIT に対する論争に終止符を打つため
に 3 つの大規模多施設研究が各国で計画実施され,
報告された.
1. VISEP trial(2008 年)2008 年,ドイツの SepNet により,537 名の敗血
症 患 者 を 対 象 に IIT の 有 効 性 を 検 討 し た VISEP
trial
21)が報告された.VISEP trial では,IIT 群によ
図 1 DIGAMI study の結果 DIGAMI study における血糖降下療法群(平均血糖 173mg/dl)とコントロール群(平均血糖 211mg/dl)間 における 1 年後死亡率の比較.コントロール群と比 較して,血糖降下療法群で有意に死亡率が低下した (P= 0.028). 〔文献 7)より引用・改変〕
る 28 日死亡率の低下は 1.3%と軽微で統計学的有意
差はなかった(
P
= 0.74)
(表 1).
2. GLUCONTROL study(2009 年)ヨーロッパで行われた GLUCONTROL study は,
21 施設の ICU に入室した 3,500 名の集中治療患者を
対象に IIT の有効性を検討する予定で開始された.
しかし,1,101 名の対象患者で行われた最初の中間
解析で,IIT による ICU 死亡率が有意でないが 1.9%
上 昇 す る 傾 向 が あ り(従 来 型 vs. IIT;15.3 % vs.
17.2%,
P
= 0.41),予定患者集積前に研究が中止さ
れた
22)(表 1).
3. NICE-SUGAR trial(2009 年)NICE-SUGAR trial は,4 ヵ国 42 施設 6,022 名の集
中治療患者を対象に IIT の有効性を検討した最大の
RCT で
23),IIT(目標血糖値 80 ∼ 108mg/d
l
;平均血
糖値 115mg/d
l
)の 90 日死亡率に対する効果を通常
血糖管理群(目標血糖値 144 ∼ 180mg/d
l
;平均血糖
値 144mg/d
l
)と比較した研究である.IIT は 28 日死
亡率を有意でないが 1.5%上昇させ(
P
= 0.17),90 日
死 亡 率 を 有 意 に 2.6 % 上 昇 さ せ る と 報 告 さ れ た
(27.5% vs. 24.9%,
P
= 0.02)
(表 1,図 2).
Ⅴ 血糖降下療法に関するメタ解析
NICE-SUGAR trial の報告の後,Griesdale らは,
集中治療患者に対する血糖降下療法に関する 26 の
RCT(13,567 名の重症患者)のメタ解析を報告した.
血糖降下療法は重症患者の低血糖(40mg/d
l
以下)発
生率を 6 倍増加させたが,死亡率に対する有意な効
果は存在しなかった
24)(図 3).
Griesdale らの解析では,IIT は外科系 ICU 患者
の死亡率を有意に 37%相対的に低下させた.この検
討では,NICE-SUGAR trial の結果は,Mixed ICU
に含められており,外科系 ICU 患者で死亡率が 1.31
倍に増加するとしたサブ解析の結果は含まれていな
表 1 強化インスリン療法の有効性を検討した代表的な無作為化比較研究 血糖管理 死亡率従来型 IIT 従来型 IIT p︲value Leuven I study 8) 153 ± 32 103 ± 20 63/783 (8.0%) 35/765 (4.6%) < 0.04 Leuven II study 11) 153 ± 31 112 ± 29 162/605 (26.8%) 144/595 (24.2%) 0.31 VISEP Trial 21) 151 ± 32 112 ± 18 75/289 (26.0%) 61/247 (24.7%) 0.74 Glucontrol study 22) 144(中央値) 117(中央値) 83/542 (15.3%) 92/536 (17.2%) 0.41 NICE︲SUGAR Trial 23) 144 ± 23 115 ± 31 751/3012 (24.9%) 829/3010 (27.5%) 0.02 0 0.0 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 図 2 NICE-SUGAR trial の結果 NICE-SUGAR trial における血糖降下療法群(平均血 糖 115mg/dl)とコントロール群(平均血糖 144mg/dl) 間における 90 日後死亡率の比較.コントロール群と 比較して,血糖降下療法群で有意に死亡率が増加し た(P=0.03). 〔文献 23)より引用・改変〕
い.Griesdale の報告した外科系 ICU 患者に関する
メタ解析に NICE-SUGAR trial の外科系 ICU 患者
に関する検討を加えると,そのリスク比は 1.00 とな
り,その有効性は否定的となる(表 2).
Ⅵ なぜ結果が異なるのか ?
(Leuvenvs.NICE-SUGARtrial)
十分な患者数を集積した研究で,IIT の死亡に与
える有意な効果を報告した研究は,Leuven I study
と NICE-SUGAR trial の 2 つである.前述のように,
Leuven I study で は 死 亡 率 減 少,NICE-SUGAR
trial では死亡率増加と,両研究は IIT に関して相反
する結果を示した.この相反する結果が得られたメ
カニズムは,明確ではないが,いくつかの理由が考
えられる
25)(表 3).
1. 患者構成IIT の死亡率軽減効果を示した Leuven I study の
総患者のうち 62.7%が心臓手術後患者であった.
IIT は, 心 臓 手 術 患 者 の ICU 死 亡 率 を 相 対 的 に
58.8%低下(
P
= 0.013)させたが,非心臓術後患者で
は相対的死亡率低下は 33.6%と低く有意差は存在し
なかった(
P
= 0.088).それに対し,NICE-SUGAR
図 3 集中治療患者に対する強化インスリン療法のメタ解析 集中治療患者における強化インスリン療法の効果を検討した無作為化比較試験のメタ解析の Funnel plot. 全患者を対象とした際,強化インスリン療法の有効性は,リスク比 0.93 であり,有意差はない. 〔文献 24)より引用・改変〕 表 2 外科系患者の死亡率に対する強化インスリン療法の効果を検討した無作 為化比較試験の結果 死亡率 IIT コントロール リスク比(95%信頼区間) Leuven I study 8) 55/765 85/783 0.66(0.48︲0.92) Grey et al. 38) 4/34 6/27 0.53(0.17︲1.69) Bilotta et al. 41) 6/40 7/38 0.81(0.30︲2.20) He et al. 39) 7/150 6/38 0.30(0.11︲0.83) Bilotta et al. 40) 5/48 6/49 0.85(0.28︲2.60) NICE︲SUGAR (サブ解析)23) 272/1111 222/1121 1.31(1.07︲1.61) Total 349/2148(16.2%) (16.1%)332/2056 1.00trial では,総患者のうち,内科系患者が 63.1%であ
り,心臓手術後患者の割合は少なかったと考えられ
る.治療対象とする患者構成によって IIT の有効性
が変わる可能性が以前より指摘されており
15),両研
究の対象患者の構成の違いが相反する結果が生じた
一因となった可能性がある.心臓手術後患者のみを
対象とした大規模無作為化比較試験はいまだ行われ
ておらず,今後の検討が必要な領域といえる.
2. 栄養管理法の相違Leuven I study では,研究対象患者のすべてが
入室直後より 800 ∼ 1,200kCal/ 日のブドウ糖静脈投
与を行われている.対照的に NICE-SUGAR trial で
は,初日の非タンパク投与カロリーは 460kCal/ 日
で,投与カロリーの約 75%は経腸栄養によるもので
あった.ブドウ糖の静脈投与量増大は,医原性高血
糖を生じさせ,患者予後悪化に関与する可能性があ
る
16), 17).IIT の有効性あるいは有害性が,高カロリ
ー輸液の使用率によって変化することが Marik ら
によっても報告されており
26),栄養投与法の相違が
両研究の結果の違いの一因になった可能性がある.
3. Follow Up 期間ICU 領域の研究で,どの程度の期間患者予後を
Follow Up するべきかは,いまだ結論が出ていない
分野である.かつては ICU 滞在中の観察(例:ICU
死亡率)でよいと考えられていたが,最近は長期の
Follow Up が重要と考えられ 90 日間の継続した観察
を行っている研究が増えてきた(例:90 日死亡率).
IIT に関する大規模無作為化試験で異なる Follow
Up 期間での死亡率を報告したものに VISEP trial と
NICE-SUGAR trial が あ る.VISEP で は,28 日 死
亡 率 は 5 % 低 下(
P
= 0.74)し た が,90 日 死 亡 率 は
12%増加した(
P
= 0.35).NICE-SUGAR trial では,
28 日死亡率は 9%増加(
P
= 0.17)し,90 日死亡率は
14%まで増加した(
P
= 0.03).このように 90 日間と
いう長期の Follow Up を行うと 28 日間と比較して
IIT に よ る 死 亡 率 は 1.18(VISEP)あ る い は 1.05
(NICE-SUGAR)倍 増 加 す る.Leuven I study の
Primary outcome の Follow Up 期 間 は ICU 滞 在 中
で,その中央値は 3 日であり,NICE-SUGAR の 90
日と比較して非常に短い.このような Follow Up 期
間の違いも異なる結果が生じた一因と考えられる.
4. 血糖降下療法による低血糖発生率Leuven I study では,40mg/d
l
以下と定義される
低血糖は,IIT 群で 5.1%,従来群で 0.8%発生した(オ
ッズ比;6.7,
P
< 0.001).NICE-SUGAR trial でも,
IIT 群で 6.8%,従来型管理群で 0.5%と低血糖発生率
は有意に増加している(
P
< 0.001).両研究の低血糖
発生率はほぼ同様に見えるが,NICE-SUGAR の低
血糖発生に関するオッズ比は 14.7 であり,Leuven
I study の 2 倍以上となっている.
著者らの研究グループは,4,946 名の集中治療患
者の低血糖を対象とした研究を行った.重度低血糖
(40mg/d
l
以 下 )の 発 生 率 は 2.1 % で, 軽 度 低 血 糖
(81mg/d
l
以下)はその約 10 倍の 22.4%であった.本
表 3 Leuven I study と NICE-SUGAR trial の相違点
Leuven I study 8) NICE︲SUGAR Trial 23)
研究施設数 1 施設 37 施設 対象患者 心臓術後患者が中心 内科系集中治療患者が中心 栄養管理 早期高カロリー輸液積極的使用 経腸栄養中心 Follow Up 期間 ICU 死亡 (ICU 滞在中央値 3 日間) 90 日死亡 低血糖発生率 (IIT vs. コントロール群) 5.1% vs. 0.8% 6.8% vs. 0.5% 低血糖発生のリスク比 5.9 13.7
研究では,低血糖の重症度は患者死亡と有意に関与
し,たとえ軽度な低血糖(72 ∼ 81mg/d
l
)を生じた
患者であっても,低血糖を起こさない患者と比べる
と有意に死亡率が高かった
27).
重度低血糖の発生は,氷山の一角であり,その背
後に非常に多くの軽度低血糖が発生している.重症
患者にとって有害となりうる低血糖の閾値はいまだ
不明確で,軽度低血糖であっても,予後悪化に関与
している可能性は否定できない.NICE-SUGAR
trial では,IIT は重度低血糖の発生率を 14.7 倍にし
たが,このことは,NICE-SUGAR trial の IIT 群で
より多くの中等度・軽度低血糖が発生していること
を示唆している.このような低血糖の発生率増加が,
NICE-SUGAR trial での IIT を有害な治療にしてし
まった可能性がある.
Ⅶ 今後推奨されると考えられる血糖管理法
前述のように,IIT が,ある特別な疾患群や患者
群で有効性があることを否定することはできない.
しかし,重症患者に対する一般的な血糖管理方針と
しては,著者は以下のように推奨する
25).
(1) 重症患者では,血糖値が 180mg/d
l
を超えるま
ではインスリンを投与しない.
(2) 高血糖によりインスリン投与を始めたならば,
144 ∼ 180mg/d
l
を目標としてコントロールす
る.高血糖と同等あるいはそれ以上に低血糖の
発生に注意する.
今後,NICE-SUGAR trial 以上の大規模研究が行
われない限りこの 2 点が重症患者の血糖管理の標準
治療となると考えられる.
Ⅷ 血糖測定に関する注意点
やや高めの血糖管理が推奨されるとしても,血糖
測定の正確性は変わらず重要である.ベッドサイド
型簡易血糖測定器は集中治療患者で使用することを
想定して開発しておらず,血糖を 30 ∼ 40mg/d
l
の
範囲内で維持し続けるには十分な正確性がないこと
を指摘されている
.
ブドウ糖の生体内活性はその血漿濃度に依存する
ため,血漿糖濃度が重要である.これが,中央検査
室で測定された血糖値(血漿糖濃度)がGold standard
と呼ばれる所以である
30), 31).血漿中の水分濃度
(93%)と比較して,赤血球中の水分濃度(73%)が低
いため,血漿中の糖濃度は,全血の糖濃度と比較し
て約 11%高いといわれている
32).多くのベッドサイ
ド型簡易血糖測定器は,全血の糖濃度を測定し,正
常ヘマトクリット(40%前後)であるとの仮定のも
と,血漿糖濃度を算出して表示する
33), 34).このため
ヘマトクリットが低い患者では,血糖値は高めに表
示され,低血糖を見過ごす可能性が高くなる
35).集
中治療患者では,輸血の制限が推奨され,ヘマトク
リット 21 ∼ 30%が許容されているため多くの患者
では正常値と比較して低ヘマトクリットとなるため
この問題は重要である
13).また,Glucose oxidase
を使用した血糖測定は血中酸素濃度によって誤差が
生じることが知られている.正常値以上の酸素濃度
(PaO
2> 100mmHg)で は, 測 定 誤 差 は 15 % を 超
え
36),同様の誤差が低酸素血症でも生じる(PaO
2<
44mmHg)
37).
このようにベッドサイド型簡易血糖測定器は集中
治療患者で使用すると血糖値を誤って高めに表示す
る可能性があり,インスリンの過量投与を招き低血
糖の発生率を高める可能性があるため,ヘマトクリ
ットや酸素濃度を自動補正できるような洗練された
デバイスでない限り推奨できない
35).血液ガス分析
機による血糖測定は,ベッドサイド型簡易血糖測定
器よりも測定誤差が少なく集中治療患者での使用が
推奨されている.
まとめ
近年,重症患者に対する血糖降下療法の効果を検
討する RCT が数多く施行された.最も大規模な多
施設 RCT である NICE-SUGAR trial は,強化イン
スリン療法が,患者死亡率を増加させることを示し
た.この結果は,血糖管理の方法によって,患者死
亡率が変化することを証明した.今後,新たな知見
が加わるまでは,144 ∼ 180mg/d
l
を目標とする 安
全な血糖管理 が推奨されるようになると考えら
れる.
参考文献1) McCowen KC, Malhotra A, Bistrian BR:Stress-in-duced hyperglycemia. Crit Care Clin 17:107-124, 2001 2) Mizock BA:Alterations in carbohydrate metabolism during stress:a review of the literature. Am J Med 98:75-84, 1995 3) Khaodhiar L, McCowen K, Bistrian B:Perioperative hyperglycemia, infection or risk? Curr Opin Clin Nutr Metab Care 2:79-82, 1999
4) Gearhart MM, Parbhoo SK:Hyperglycemia in the critically ill patient. AACN Clin Issues 17:50-55, 2006 5) Vincent JL, Abraham E, Annane D, et al.:Reducing
mortality in sepsis:new directions. Crit Care 6(Suppl 3):S1-S18, 2002
6) Malmberg K:Prospective randomised study of inten-sive insulin treatment on long term survival after acute myocardial infarction in patients with diabetes mellitus. DIGAMI(Diabetes Mellitus, Insulin Glucose Infusion in Acute Myocardial Infarction)Study Group. BMJ 314:1512-1515, 1997 7) Malmberg K, Ryden L, Efendic S, et al.:Randomized trial of insulin-glucose infusion followed by subcutane-ous insulin treatment in diabetic patients with acute myocardial infarction(DIGAMI study):effects on mortality at 1 year. J Am Coll Cardiol 26:57-65, 1995 8) van den Berghe G, Wouters P, Weekers F, et al.:In-tensive insulin therapy in the critically ill patients. N Engl J Med 345:1359-1367, 2001 9) Van den Berghe G, Wouters PJ, Bouillon R, et al.: Outcome benefit of intensive insulin therapy in the critically ill:Insulin dose versus glycemic control. Crit Care Med 31:359-366, 2003 10) Devos P, Preiser JC:Tight blood glucose control:a recommendation applicable to any critically ill patient? Crit Care 8:427-429, 2004 11) Van den Berghe G, Wilmer A, Hermans G, et al.:In-tensive insulin therapy in the medical ICU. N Engl J Med 354:449-461, 2006 12) Van den Berghe G, Wilmer A, Milants I, et al.:Inten- sive insulin therapy in mixed medical/surgical inten-sive care units:benefit versus harm. Diabetes 55: 3151-3159, 2006 13) Dellinger RP, Carlet JM, Masur H, et al.:Surviving Sepsis Campaign guidelines for management of severe sepsis and septic shock. Crit Care Med 32:858-873, 2004 14) 江木盛時,内野滋彦,森松博史ほか:Randomized con-trolled trial が異なる結果を出すのはなぜか ? ─知って おくべき三要素─.日集中医誌 16:21-26,2009 15) Egi M, Bellomo R, Stachowski E, et al.:Intensive insu- lin therapy in postoperative intensive care unit pa-tients:a decision analysis. Am J Respir Crit Care Med 173:407-413, 2006 16) der Voort PH, Feenstra RA, Bakker AJ, et al.:Intra- venous glucose intake independently related to inten-sive care unit and hospital mortality:an argument for glucose toxicity in critically ill patients. Clin Endocrinol (Oxf) 64:141-145, 2006 17) Egi M, Morimatsu H, Toda Y, et al.:Hyperglycemia and the outcome of pediatric cardiac surgery patients requiring peritoneal dialysis. Int J Artif Organs 31: 309-316, 2008 18) Bagshaw SM, Bellomo R, Jacka MJ, et al.:The impact of early hypoglycemia and blood glucose variability on outcome in critical illness. Crit Care 13:R91, 2009 19) Krinsley JS, Grover A:Severe hypoglycemia in criti-cally ill patients:risk factors and outcomes. Crit Care Med 35:2262-2267, 2007 20) Bellomo R, Egi M:Glycemic control in the intensive care unit:why we should wait for NICE-SUGAR. Mayo Clin Proc 80:1546-1548, 2005 21) Brunkhorst FM, Engel C, Bloos F, et al.:Intensive in-sulin therapy and pentastarch resuscitation in severe sepsis. N Engl J Med 358:125-139, 2008 22) Preiser JC, Devos P, Ruiz-Santana S, et al.:A pro-spective randomised multi-centre controlled trial on tight glucose control by intensive insulin therapy in adult intensive care units:the Glucontrol study. Intensive Care Med 35:1738-1748, 2009
23) NICE-SUGAR Study Investigators;Finfer S, Chittock DR, Su SY, et al.:Intensive versus conventional glu-cose control in critically ill patients. N Engl J Med 360:1283-1297, 2009
24) Griesdale DE, de Souza RJ, van Dam RM, et al.:Inten-sive insulin therapy and mortality among critically ill patients:a meta-analysis including NICE-SUGAR study data. CMAJ 180:821-827;discussion 799-800, 2009
25) Bellomo R, Egi M:What is a NICE-SUGAR for pa-400-402, 2009 26) Marik PE, Preiser JC:Toward understanding tight glycemic control in the ICU:a systematic review and metaanalysis. Chest 137:544-551, 2010 27) Egi M, Bellomo R, Stachowski E, et al.:Hypoglycemia and outcome in critically ill patients. Mayo Clin Proc 85:217-224, 2010 28) Scott MG, Bruns DE, Boyd JC, et al.:Tight glucose control in the intensive care unit:are glucose meters up to the task? Clin Chem 55:18-20, 2009 29) Finkielman JD, Oyen LJ, Afessa B:Agreement be-tween bedside blood and plasma glucose measurement in the ICU setting. Chest 127:1749-1751, 2005
30) Neely RD, Kiwanuka JB, Hadden DR:Influence of sample type on the interpretation of the oral glucose tolerance test for gestational diabetes mellitus. Diabet Med 8:129-134, 1991 31) D’Orazio P, Burnett RW, Fogh-Andersen N, et al.: Approved IFCC recommendation on reporting results for blood glucose(abbreviated). Clin Chem 51:1573-1576, 2005 32) D’Orazio P, Burnett RW, Fogh-Andersen N, et al.: Approved IFCC recommendation on reporting results for blood glucose:International Federation of Clinical Chemistry and Laboratory Medicine Scientific Divi-sion, Working Group on Selective Electrodes and Point-of-Care Testing(IFCC-SD-WG-SEPOCT). Clin Chem Lab Med 44:1486-1490, 2006 33) Dungan K, Chapman J, Braithwaite SS, et al.:Glucose measurement:confounding issues in setting targets for inpatient management. Diabetes Care 30:403-409, 2007 glucose testing:effects of critical care variables, influ-ence of reference instruments, and a modular glucose meter design. Arch Pathol Lab Med 124:257-266, 2000
35) Hoedemaekers CW, Klein Gunnewiek JM, Prinsen MA, et al.:Accuracy of bedside glucose measurement from three glucometers in critically ill patients. Crit Care Med 36:3062-3066, 2008
36) Tang Z, Louie RF, Payes M, et al.:Oxygen effects on glucose measurements with a reference analyzer and three handheld meters. Diabetes Technol Ther 2: 349-362, 2000 37) Kilpatrick ES, Rumley AG, Smith EA:Variations in sample pH and pO2 affect ExacTech meter glucose measurements. Diabet Med 11:506-509, 1994 38) Grey NJ, Perdrizet GA:Reduction of nosocomial in-fections in the surgical intensive-care unit by strict glycemic control. Endocr Pract 10(Suppl 2):46-52, 2004 39) He W, Zhang TY, Zhou H, et al.:Impact of intensive insulin therapy on surgical critically ill patients. Zhonghua Wai Ke Za Zhi 45:1052-1054, 2007 40) Bilotta F, Caramia R, Cernak I, et al.:Intensive insulin therapy after severe traumatic brain injury:a ran-domized clinical trial. Neurocrit Care 9:159-166, 2008 41) Bilotta F, Spinelli A, Giovannini F, et al.:The effect of intensive insulin therapy on infection rate, vasospasm, neurologic outcome, and mortality in neurointensive care unit after intracranial aneurysm clipping in pa- tients with acute subarachnoid hemorrhage:a random-ized prospective pilot trial. J Neurosurg Anesthesiol 19:156-160, 2007