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ディーゼル噴霧における混合気形成と燃焼の解析

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Academic year: 2021

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ディーゼル噴霧における混合気形成と燃焼の解析

1. はじめに

 ディーゼルエンジンはその高い熱効 率から,大型から小型の自動車や定置,

オフロードさらに船舶動力源として広 く用いられており,さらなる高効率化 と低エミッション化を目指して研究・

開発が進められている.近年,とりわ け自動車の分野において,エンジンよ り排出されるスモークをとらえるため のトラップ,排気中の未燃成分,窒素 酸化物を取り除くための触媒等が広く 用いられるようになってきているが,

依然としてエンジン筒内における燃焼 によってこれらの排出成分を低減する ことが急務となっている.もちろん,

このときに高い熱効率を犠牲にしては ならない.このため,燃焼を制御する 必要があるが,そのためにはまず,い わゆるディーゼル燃焼と呼ばれている 燃焼過程を理解・把握することが重要 である.

 本稿では,筆者らが近年行ってきた 実験的および理論的研究に基づき,

ディーゼル燃焼過程における自着火燃

焼現象について解説する.なお,ここ では主に自動車用程度の大きさのエン ジンを対象とする.

2. ディーゼル噴霧の自着火燃焼 過程

 近年のディーゼルエンジンでは,高 温・高圧に圧縮された空気中に液体燃 料を 2 000 気圧程度の非常に高い圧力 で,0.1mm 程度のノズルから噴射し 噴霧を形成する.これが,蒸発の後,

周囲の空気と混合して,混合気を形成 するが,その後,1ms 程度の時間遅 れの後,自着火燃焼に至る.図 1は この様子を基礎的に調べるために定容 容器中につくった高温・高圧雰囲気で エンジン筒内を模擬して,そこに燃料 を噴射して燃焼に至る様子をシャドウ グラフにより観察したものである.な お,ここでは燃料として n-heptane を 用いている.また,図下には熱発生率 を併せて表示している.ここではノズ ルは容器上部に取り付けられており,

図中の1において燃料噴霧が見られ る.ここでは液滴として存在している

のはおよそノズルから 25mm 程度で あり,それより下流では,燃料は蒸気 となっている.1.2ms 後の領域 a では 局所的に温度が上昇している様子が観 察され,このあたりから着火を開始し ていることが推定できる.さらにその 後,この高温領域は強い自発光をとも なって広がるとともに,噴射終了まで 続く.このような自着火が生じるメカ ニズムについて考察するために,高温 にさらされた燃料―空気混合気が自着 火にいたる過程について検討する.一 般にこのような直鎖高級炭化水素混合 気が高温にさらされると,ある程度の 時間ののち,急激に熱発生し,平衡に 達する.このときの時間遅れのことを 着火遅れ時間と呼ぶが,この着火遅れ 時間τの当量比φに対する変化を図 2 に示す.混合気の温度が一定の場合,

図に示された当量比の範囲では,当量 比が高いほど着火遅れ時間が短くな る.しかし,実機では高温の空気中に 比較的低温の燃料を噴射するために,

当量比が高くなるにつれて温度が低下 する.これを考慮すると,この条件で は図のようにおよそ当量比が 1 程度で 着火遅れ時間が最も短くなる.

 さらに,レーザ誘起蛍光法により燃 料噴霧中の燃料濃度分布を計測した結 果を図 3に示す.若干雰囲気条件は 異なるものの,これによると,噴霧先 端の外縁部において当量比 1 程度の混 合気が形成されており,着火遅れが最 も短くなる当量比に対応している.一 般に化学反応は混合形成と同時に進行 するためにいちがいには言えないが,

当量比が 1 から 2 程度となる領域にお いて急激に着火遅れが短くなるため に,その領域から着火にいたる.

3. おわりに

 以上,ディーゼル噴霧の自着火燃焼 過程についての解析結果の一例を示し た.このような計測および解析結果に 基づいて,燃焼制御の指針について考 察できるようになるとともに,たとえ ば CFD(Computational  Fluid  Dy- namics:数値流体力学)における燃 焼モデルの構築等にもデータを提供で きる可能性がある.

(原稿受付 2010 年 9 月 24 日)

〔川那辺洋 京都大学〕

Nozzle

t = 0.3 ms 20 mm

1

1.2 ms a 2

2.8 ms 3

8.5 ms 4

15 14 13 12 11 10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 1

p7= 4MPa, Ti= 900K, rO2= 21%

mf= 39.0mg, pinj= 120Mpa

t(ms)

dq/dt MJ/s

00

0 0.1 0.2 0.3 0.4

10

2 3 4

h (V)

図1 ディーゼル噴霧の自着火過程

0 2 4 6

0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5

τ( ms )

T= 856K 802K

731K

T= const. (900K)

p= 4MPa

φ

図 2 n-heptane の着火遅れ時間τの 当量比φによる変化

t=0.6ms 1.0ms

0 f

0 1 2 3 4

0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 20

30 40 50 60

xmm

φ

図 3 噴霧内の当量比分布

68 日本機械学会誌 2011.1 Vol.114No.1106

─ 68 ─

参照

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