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また カスタムメイドの 1Fr 電極カテーテルを用いて in vivo で心臓電気生理学検査を施行し His 束心電図記録を行った さらに ex vivo の検討として 摘出心を Langendorff 還流し 電位感受性色素 (di 4-ANEPPS) および高速 CMOS カメラシステムを用いて

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Academic year: 2022

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学位論文の内容の要旨

論 文 提 出 者 氏 名 小泉 章子

論 文 審 査 担 当 者 主査 下門 顕太郎

副査 荒井 裕国、吉田 雅幸

論 文 題 目 Genetic defects in a His-Purkinje system transcription factor, IRX3, cause lethal cardiac arrhythmias

(論文内容の要旨)

<要旨>

心室細動は心臓突然死(SCD)の最も主要な原因であり 1000 人に1人の割合で起こるといわれ ている。SCD は冠動脈疾患の際出現する心室細動(VF)に伴うことが最も多いが、5-10%の症 例でSCDやVFが正常心機能心で出現し、特発性心室細動(IVF)といわれる。IVFの機序はい くつかの特殊なケースを除いて殆ど知られていない。心房は上位から下位へ電気的シグナルが伝 播するが、心室の電気的シグナルは心尖部から心基部へと上昇する。心室には特別な伝導ネット ワークであるHis-Purkinje系があり、心臓不整脈およびSCDに関係している可能性が示唆され るが、His-Purkinje系とVFの機序や遺伝学的関連は知られていない。

Irx3はIroquois homeobox転写因子の一員で、心臓ではHis-Purkinje系に選択的に発現し、

その遺伝的欠損により正常心筋において His-Purkinje 系の機能不全を起こすことが報告されて いる。我々はIrx3ノックアウトマウス(Irx3-/-)を用いてその不整脈原性について検証した。Irx3-/- マウスには心機能は正常であったが、Irx3-/-マウスが特に交感神経活動の高い時に高率に心室性 不整脈および房室伝導障害を示すことを発見した。そのメカニズムとしてHis-Purkinje系におけ るギャップジャンクションチャネルであるCx40と、NaチャネルであるScn5aの発現が低下し ていることが示された。さらにIVF患者130例におけるIRX3遺伝子のスクリーニングを施行し た。その結果、2例にIRX3の新規遺伝子変異を認め、これらの症例はいずれも運動中にVF 発 作を生じていた。臨床例で認められた遺伝子変異をマウスIrx3を用いて作成し、心筋細胞に遺伝 子導入すると、野生型Irx3の遺伝子導入ではCx40とScn5aの発現が誘導されたのに対し、変 異型Irx3では発現誘導が減弱していた。以上より、IRX3/Irx3の機能異常はHis-Purkinje系の 伝導障害を来し、IVFに関連することが明らかとなった。

<方法>

・マウスにおけるin vivoおよびex vivoの検討

野生型(WT)マウス、Irx3+/-、Irx3-/-マウスにおいてイソフルレン麻酔下に体表心電図および 心臓超音波検査を施行した。また、テレメトリー送信機を植え込み、通常活動時・水泳による運 動負荷・Isoproterenol投与・心筋梗塞作成後、の種々の条件で経時的に心電図記録を行った。

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また、カスタムメイドの1Fr電極カテーテルを用いて、in vivoで心臓電気生理学検査を施行し、

His束心電図記録を行った。さらに、ex vivoの検討として、摘出心をLangendorff還流し、電位 感受性色素(di 4-ANEPPS)および高速CMOSカメラシステムを用いて膜電位の変化を観察す る、オプティカルマッピングを施行した。また、マウス心室組織より定量的 RT-PCR、Western blotting、免疫組織染色を施行した。

・患者設定および突然変異の検出

IVF、Brugada症候群(BS)、早期脱分極症候群(ERS)、Short QT症候群(SQTs)を含む、VFを 経験した患者130名のゲノムDNAを血液サンプルより分離後、PCR施行した後にダイレクトシ ークエンスを行い、IRX3の遺伝子変異の検索を行った。健常対照者としてVFの既往のない250 名からも同様にIRX3のシークエンスを施行した。

・In vitro解析

マウス心房細胞由来の細胞株である HL-1細胞、および新生仔マウス心室筋細胞を使用した。

マウスIrx3の野生型(WT)、および作成した変異体を、pcDNA3.1+ベクターあるいはアデノウィ ルスベクター(pAD-CMV-DEST)にサブクローニングして上記細胞に遺伝子導入を行った。遺伝子 導入2日後の細胞を回収し定量的RT-PCRを施行した。

<結果>

・不整脈原性がIrx3-/-マウスにおいて増加する

Baseline の解析では、Irx3-/-マウスは WT に比してQRS 幅の有意な延長を認めた。また心臓 超音波検査では解剖学的異常や心機能の異常は見られなかった。

テレメトリー送信機をマウスに植え込んで活動時の心電図を記録したところ、Irx3-/-および Irx3+/-では夜間に高度房室ブロックや心室性期外収縮、心室頻拍が認められた。これらは WTで は見られなかった。この不整脈イベントは、マウスの活動時間帯である夜間に多く出現したこと から、交感神経亢進に関連して不整脈が出現していると思われた。次に交感神経亢進を来しうる 状況下で記録を行った。β 受容体刺激薬である isoproterenol(0.05mg/kg,i.p.)投与・水泳によ る運動負荷では、Irx3-/-にのみ心室頻拍・房室ブロックが記録された。さらに、急性期心筋梗塞 モデルを作成すると、発生から24時間以内にIrx3-/-マウスでのみ持続性心室頻拍が見られた。

Ex vivoでランゲンドルフ還流心を観察すると、心外膜における興奮伝播はWTマウスと比べ

Irx3-/-マウスで著明に遅かった。Isoproterenol(10nM)を灌流液に投与すると、Irx3-/-マウスでは 心拍数の上昇に伴って房室ブロックが出現し、その後心室頻拍が認められた。

これらの表現型の分子メカニズムを探索したところ、Irx3-/-おいて左室心内膜直下での Cx40

および SCN5a の発現低下が mRNA およびタンパクレベルで認められた。免疫組織染色では、

WTはPurkinje線維に一致する、左室心内膜直下の層でCx40の発現が見られたのに対し、Irx3-/- ではCx40 の発現はほとんど見られなかった。固有心室筋に発現するCx43 の発現には差は認め られなかった。

・IRX3遺伝子欠損がIVF患者において見られた

次にヒトIRX3遺伝子変異と欠致死性不整脈との関連を検討した。IRX3遺伝子のエクソンのシ ークエンス解析を、IVF、BS、ERS、およびSQTsの発端者130例、コントロールとして健常人

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250例を対象に施行した。

IVF群の2家系において、IRX3遺伝子に2種類の新規突然変異が発見された。この2家系に おいて、既知のBrugada関連遺伝子として報告のある13遺伝子(SCN5A、GPD1-L、CACNA1C、 CACNB2、KCNE3、SCN1B、SCN3B,KCNJ8,MOG1、HCN4,KCND3、KCNE5、SLMAP) におけるエクソンのシークエンス解析を施行したが、変異は認めなかった。家系 1 の発端者 51 歳男性は、アイススケート中にVFが発症した。本症例では、IRX3遺伝子に1262G>Cの点突然 変異を認め、アミノ酸では 421 のアルギニンがプロリンへ置換された(R421P)。同症例は心電 図ではtype1のBrugada型心電図波形を呈し、同じ遺伝子変異をもつ父親に完全房室ブロック、

息子に完全右脚ブロックが見られた。一方、母親と娘において同変異は認めず、心電図所見は正 常であった。家系2の発端者は15歳男性、通学中にVFを発症。心電図でBrugada型心電図や 早期再分極などの心電図所見はなかった。発端者、祖母、母において 1453C>A の点突然変異を 認め、485 残基のプロリンがスレオニンに置換する変異(P485T)を認めた。祖母は原因不明の 失神の既往があるも、父、母、姉、兄には SCD や VF、失神のエピソードはなかった。R421P およびP485Tの突然変異は健常者250例には認めず、既知の1000ゲノムデータベースにおいて も報告はなかった。

・IRX3突然変異はCx40およびScn5aの発現低下を引き起こす

続いて我々は臨床例で認められた IRX3の突然変異体の機能を検討した。ヒトIRX3遺伝子と マウスIrx3遺伝子の配列は高度に保存され、突然変異部位もマウスでも保存されていた。マウス Irx3におけるR426P(ヒトでR421Pに相当)、P491T(ヒトでP485Tに相当)の変異体を作成し、

アデノウィルスまたはpcDNA3発現ベクターを用いて、HL-1細胞および新生児マウス心筋細胞 に遺伝子導入を行い、Cx40とScn5aの発現を、Irx3発現量で規格化して定量評価した。WT Irx3 を遺伝子導入したところ、Cx40とScn5aの発現は著明に増加した。しかし、R426PおよびP491T の変異体Irx3を導入したところ、Cx40とScn5aの発現誘導はWTに比して有意に小さかった。

<結論>

IVFなどによるSCDは正常機能の心臓でも出現し、予測が困難である。我々はIVF患者にお いて、転写因子であるIRX3の遺伝的欠損を発見した。IRX3はHis-Purkinje系に特異的に発現 する転写因子であり、Irx3-/-マウスは心臓の解剖学的異常や収縮力異常を伴わず心室の fast

conductionの障害のみを来し、主として交感神経活動亢進時に心室頻拍が出現した。現在までに、

少なくとも13種類の遺伝的欠損が、Brugada症候群や早期再分極症候群を含めたIVFに関連す ると報告されている。今回明らかとなったIRX3/Irx3の遺伝的欠損は、His-Purkinje系に特異的 に伝導障害を来す点で、既存の報告とは異なる。心臓の転写因子の遺伝的欠損と心臓不整脈の関 連は、Nkx2.5やTbx5が心臓奇形を伴い報告されているが、IRX3/Irx3突然変異は形態的な異常 なしに電気生理学的特性にのみ影響を与えているという点が特徴的である。よって、IRX3 突然 変異は正常機能の心臓におけるVFおよびIVFを引き起こす遺伝的危険因子といえる。

Irx3-/-マウスのScn5a、Cx40 の発現低下、および心室伝導系障害によるQRS間隔の延長はす でに報告されている。しかし Irx3-/-マウスにおける不整脈原性は今回が初の報告となる。Irx3-/- マウスの不整脈は主に夜間活動時に出現し、さらに β 刺激薬であるisoproterenol 投与下、運動

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中、心筋梗塞急性期において観察された。臨床例でも夜間睡眠中などではなく、日中活動時にVF が生じており、マウスにおける所見と矛盾はない。Irx3機能異常による不整脈は交感神経活動亢 進下でのみ出現するといえ、運動に関連する突然死を説明することができる。

Irx3はCx40とScn5aの発現を増加させる。Irxファミリーは通常、負の制御因子として働く。

そのため Irx3 の直接のターゲットが未知の負の制御因子である可能性は否定できない。Cx40、 Scn5a のmRNA発現がIrx3-/-で低下することからも、発見された2種のIRX3/Irx3突然変異が loss-of-functionとして働くことを示唆している。

結論として、IRX3の遺伝的欠損およびそれに起因するHis-purkinje系の機能障害は、IVF発 症に伴う著明な遺伝的リスクであると言える。一見正常に見える心臓で特に交感神経緊張状態に おいて、心臓突然死のリスク管理や予防的治療を今後改善させることが期待される。

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論文審査の要旨および担当者

報 告 番 号 甲 第 号 小泉 章子

論文審査担当者 主 査 下門 顕太郎

副 査 荒井 裕国、吉田 雅幸

(論文審査の要旨)

1. 論文内容

本論文は His-Purkinje 系に特異的に発現している転写因子 IRX3の遺伝子異常が致死性不 整脈を引き起こすことを、同遺伝子の欠損マウスを用いた研究および特発性心室細動を起こ した患者の遺伝子検索により明らかにしたものである。

2. 論文審査

1) 研究目的の先駆性、独創性

心臓突然死の主要な原因である特発性心室細動(IVF)の機序は殆ど知られていない。心室 の刺激伝導系であるHis-Purkinje系とIVFの関係が示唆されているものの詳細は不明であ る。申請者は、His-Purkinje系に特異的に発現する転写因子IRX3に注目し同遺伝子とIVF の関係を明らかにしようとしたもので、先駆的な研究といえる。

2) 社会的意義

本研究の主要な成果は以下のとおりである。

(1) Irx3-/-マウスが特に交感神経活動の高い時に高率に心室性不整脈および房室伝導 障害を示すことを発見し、そのメカニズムが、His-Purkinje 系におけるギャッ プジャンクションチャネルであるCx40と、NaチャネルであるScn5aの発現の 低下であることを示した

(2) IVF患者130例におけるIRX3遺伝子のスクリーニングを施行し、2例にIRX3 の新規遺伝子変異を認めた。

(3) 臨床例で認められた遺伝子変異をマウス培養心筋細胞のIRX3遺伝子に導入し、

IRX3の遺伝子変異がCx40やScn5aの発現低下をきたすことを確認した。

基礎研究で得られた知見を実際の臨床例でも確認した研究で、学問的価値も臨床的価値 も極めて高いと考える。

3) 研究方法・倫理観

電気生理学的手法、免疫組織学的手法から人の遺伝子解析さらには遺伝子導入まで、研 究目的遂行のため必要な幅広い研究方法が用いられており、極めて正統的な研究と評価 できる。研究倫理的な面でも問題がない。

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( 2 ) 4) 考察・今後の発展性

申請者は IRX3の遺伝的欠損およびそれに起因するHis-Purkinje 系の機能障害はIVF のリスクであり、本研究結果が心臓突然死のリスク管理や予防的治療法の開発に有用で あると考察している。今後の臨床的な展開とともに、類似の機序の発見につながると期 待される。

3. 審査結果

博士(医学)の学位授与に値する論文であると判断する。

参照

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