59 はいずれも2年後まで経時的に改善した. 考案:自己リハビリ中断群では,継続群と同様に運 動能力の改善,double productの増加を認めたが,他 の2群に比して有意な酸素摂取量の減少が見られた. またリハビリ終了後2年間の長期経過観察では,高齢 老でも非高齢者と同じく日常生活に十分な運動能力が 保たれていた. 6.スポーツ時の鼓膜外傷における物理学的考察 (耳鼻咽喉科) 黒田 令子・山本 信和・石井 哲夫 スポーツによる鼓膜穿孔の成因を力学的に検討し た.対象は1984年目ら1990年に当科外来を受診したス ポーツを原因とする鼓膜穿孔例の28例28耳で,全例片 側の受傷であった,原因となったスポーツの種類は球 技14耳,水泳4耳,サーフィン4耳,スキュー・ミダイ ビング3耳,ボクシング1耳,剣道1耳,空手1耳だっ た.28平中25耳は外来における保存的治療で穿孔が閉 鎖したが,3耳には穿孔が残存した. スポーツにおける鼓膜穿孔の発生機序を力学的に考 察した.薄膜応力理論から鼓膜が円筒に膨らみ生じた 引張応力(σ)が破断限界に達すると穿孔が発生する. このσは σ=Pρ/t …・・…………・……・…………・・……(1) (t:鼓膜の厚さ,ρ:曲率半径) の計算式で算出できる. スポーツにおいて鼓膜にかかる外圧力を,①準静的 負荷:単純な外圧変化による,②衝撃的負荷:物体の 耳への打撃によりとじこめられた空気による,と分類 した.①はスキューバダイビングの潜降時に相当し, もしいわゆる耳抜きが全くできないと仮定すれぽ,水 面下3.3m沈降した時点で鼓膜穿孔が生じるといえ る.スポーツにおける鼓膜穿孔の多くは②の衝撃的負 荷による.外耳道をまっすぐな筒で鼓膜が垂直に張っ ていると仮定し,空気の圧縮を考えないとし,時速100 kmの速さでボールが耳に短時間(0.01秒)であたった 場合を想定した.外耳道に空気が最大限流入し鼓膜を 押す力(F)は F=γQv/g=6.12(gf) (γ:比重量,Q:流入量, v:速度) となり,この時生じる応力(σ)は(1)式より7.44gf/ mm2である.一方ヒト鼓膜の破断限界(σB)は山本ら の計測によると1,000gf/㎜2で,このFのみで臓膜 穿孔は起こらない計算になる.従って実際の鼓膜穿孔 を生じる要因として鼓膜の予引張りによる張力や外耳 道にとじこめられた空気の圧縮力があると考える. 7.加齢,脂質代謝および性差要因に伴う筋エネル ギー代謝と血管内皮機能の動的解析 (産婦人科,*母子総合医療センター) 村井加奈枝・井口登美子・角田 新一・ 塩田 真理・中林 正雄*・武田 佳彦 筋収縮,回復過程の筋エネルギー代謝の変動が末梢 循環機能に相関することは既に報告されている.今回, 末梢循環を規制する血管内皮機能との関連を性差,加 齢,並びに動脈硬化性病変に特異的な脂質代謝異常に ついて検討した.対象は,健常女性44名,23歳から62 歳で,男性は21名,22歳から47歳.対象を動脈硬化指 数(AI)3以上のものをAI高値群, AI3未満のものを 40歳未満,40歳以上に分け,若年群,高年群とした. 方法は,駆血前に左肘静脈から採血,ついで右上腕 を平均血圧で駆血.安静2分後に15kgの右手掌二二運 動を2秒毎に2分間行い,5分間安静の後駆血したま ま駆血二二静脈から採血した.リン31核磁気共鳴スペ クトロメトリー(31P−MRS)を用いてin vivoのPi, Pcr,細胞内pHを測定した.負荷前後にtissue plas− minogen activator(tPA)とthrombomodulin(TM) をELISA法にて測定し,以上の結論を得た. (1)31P−MRSを用いた躯血運動負荷による細胞内 pH,無機リン,クレアチニン二値の解析から,末梢循 環効率の評価が可能であった.末梢循環効率は,加齢, 脂質代謝異常により低下した.(2)血管内皮機能,線 溶系機能を示す,tPA, TMの基礎値は,男性が高く, 負荷による予備能は女性が高く,性差が見られた.(3) AI高値群は,血管内皮機能,線溶系機能に性差を認め ず負荷に対する反応性も二進しており,これらの機能 と末梢循環効率との間に関連が示唆された. 8.水泳中の心電図の記録方法と応用について (第二病院小児科) 浅井 利夫・橋本 景子・伊藤けい子・ 李 二二・村田 光範 水泳中に心性突然死したり心性突然死のニアミスを 起こす小児や成人は少なくない.しかし,水泳中の循 環動態の変化に関する知見がほとんどなく,心性突然 死の原因は解明されていない.さらに,日常診療では 学校心臓検診で発見された軽症心疾患児童・生徒が, 水泳授業に参加させてもらえないこともしぼしぼあ る.そこで,水泳中に心電図を記録し,水泳中の循環 動態の変化を解明すると同時に水泳の安全性を確認す る必要が出てきた. 一927一
60 演者は,非侵襲的に,確実に,きれいに小児から成 人までの水泳中の心電図を記録できるシステムを開発 した.今日,演者の開発した水泳中の心電図記録シス テムを用いて水泳中の循環動態の変化に関する研究を 行っている.結果,健康小児や成人に水泳中や潜水中 のみに不整脈の出現する水泳誘発性不整脈が高頻度に 見られた.さらに,潜水に特異な循環動態の変化とし て,健康小児や成人でも潜水性徐脈がみられた.潜水 性徐脈は,潜水前の心拍数の約1/2に減少した. 今回,水泳中の心電図記録システムを紹介し,その 応用と研究の現況について述べた.水泳中の心電図記 録システムの応用としては水泳中の循環動態の研究な ど基礎的研究への応用ばかりでなく,水泳愛好者の健i 康管理や水泳選手のトレーニング計画にも応用が可能 である.実際に,水泳愛好者の健康管理では,突然死 の可能性が高い心室頻拍がみられた熟年者も発見し た. 9.インスリン依存型糖尿病患者における運動負荷 後の尿中アルブミン排泄率と罹病期間との関係 (糖尿病センター) 小川百合子・大谷 敏嘉・児玉 公二・ 富岡 光枝・内潟 安子・平田 幸正 目的:安全な運動療法の基礎研究として,インスリ ン依存型糖尿病(以下IDDMと略)患者を対象に運動 負荷試験を行い,運動負荷前後の尿中アルブミン排泄 率(以下AERと略)を測定し,罹病期間との関係を検 討してみた. 対象と方法;通常の定性法で蛋白尿を認めず,非肥 満の30名の若年発症IDDM患老(男性14名,女性16名) と,健常者15名(男性7名,女性8名)に運動負荷試 験を行った.IDDM患者は罹病期間からA群(<1年) 7名,B群(1∼5年)8名, C群(5∼10年)15コ口 3群に分類した.対象の調査時年齢は19.7∼23.5歳で,