特 集 呼吸器
アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(真菌症)について
―
真菌と喘息,慢性咳嗽との関わりも含めて―
1)
イェテボリ大学医学部クレフティングリサーチセンター喘息・アレルギー研究部門
2)
昭和大学医学部内科学講座(呼吸器アレルギー内科部門)
鈴木慎太郎
1,2)
相良 博典2)
は じ め に
アスペルギルス( )はとても面白いカ ビ(真菌)である.イソップ童話に「卑怯なコウモリ」
と題したストーリーがある.コウモリはその外観と 身体機能から,鳥類と哺乳類どちらにも与し,結局 どちらからも仲間外れにされてしまう.まさしく はヒトの生体内でコウモリのような立場 の病原微生物といえよう.「感染症」と「アレルギー」
双方の病態を自由に行き来し,それらの発症,増悪 に寄与している.アレルギー性気管支肺アスペルギ ル ス 症(allergic bronchopulmonary aspergillosis:
ABPA)は,そんな の特徴を体現した 奇異な病態のひとつであろう.本稿では,ABPA/
ABPM を中心に,真菌と喘息や慢性咳嗽との関わ りについても概説する.
疾患概念
,
原因ABPA は 1952 年に英国の Hinson らが提唱した疾 患概念で
1)
,喘鳴,発熱,胸部 X 線上の一過性の浸 潤影,一部の症例では中枢性気管支拡張症,末梢血 好酸球増多を伴う.重症喘息や嚢胞性線維症患者に 見 ら れ る こ と が 多 く, 気 道 に 腐 生・ 定 着 し た に対する過敏性免疫反応を基盤とする病 態である.原因となる病原体としては,が 最 も 多 い が, 黒 カ ビ とし て 著 名 な や味噌や醤油の醸造に用いられるコウジカビ
( ), 属以外に
や なども ABPA と類似の病態を惹起す ることが知られるようになり,近年ではアレルギー 性気管支肺真菌症(allergic bronchopulmonary
mycosis:ABPM)と呼ばれている.本邦で報告の多 い原因真菌として,スエヒロタケ(
)が有名である. と
の両者が原因となった ABPM の症例報告もあり興味 深い
2)
.本邦のような多湿な環境では,自然界に真菌 が多く浮遊・存在しており,職業喘息として指摘・診 断されることもある.病 態 生 理
大気や室内環境などに浮遊する真菌を反復吸入・
曝露することで感作が成立する.本来,気道に到達 した真菌は気道上皮の線毛運動で体外へ排出される か,好中球,マクロファージなどにより速やかに処 理されるが,慢性の気道炎症性疾患などにより気道 上皮が傷害され,そのクリアランス能が低下する と,真菌が局所に定着し腐生・増殖しやすくなる.
なお, 胞子は直径が 2 〜 3.5 µm であり,
吸入されると中枢気管支までの領域でトラップされ やすいことが知られている.増殖した真菌への感作 の結果,真菌抗原特異的 IgE 抗体が産生され,続 けて同 IgG,IgA,IgM 各クラスの抗体が産生・誘 導され,真菌抗原―抗体免疫複合体が形成され,気 道 局 所 の 過 剰 な 免 疫 応 答 が 起 こ る. す な わ ち,
ABPM は Coombs and Gell 分類におけるⅠ型とⅢ 型アレルギーの双方が関与している.そのほか,Ⅳ 型アレルギーの関与や,真菌自身が産生する真菌毒 素やプロテアーゼによる組織傷害についても知見が 広がりつつあるが,いまだ病因については不明な部 分が多い.こうした病態は下気道だけではなく上気 道でも生じることが知られ,アレルギー性真菌性鼻 副鼻腔炎(allergic fungal rhinosinusitis:AFRS)
と呼ばれている
3)
.真菌と重症喘息との関わり
,
類縁疾患―SAFS
(
Severe asthma with fungal sensitization
) 喘息の基本病態ならびに重症喘息に関する記述は 他稿を参照されたい.喘息の気道炎症に関わる炎症 細胞には好酸球を中心に,好塩基球,マスト細胞,樹状細胞,リンパ球などが挙げられる.下気道への アスペルギルスの腐生・定着自体に CD4 陽性 Th2 リンパ球の活性化を増強する作用が知られてお り
4)
,また喘息や嚢胞性線維症の患者では遺伝的素 地として HLA-DR2gene の DRB1 * 1503 や DRB1* 1501 を有するなどアスペルギルス抗原に対する Th2 反応が生じやすい
5)
.その結果,Interleukin(IL)-5 や Granulocyte Macrophage colony- stimulating Factor(GM-CSF) の 産 生 が 亢 進 し,
好酸球性炎症と B 細胞の活性化に伴う IgE,IgG の 産生が促進する.
一方,前述した真菌が産生するプロテアーゼによ り気道上皮の障害を生じ,結果として真菌抗原の侵 入が容易になる.このように気道上皮細胞やマクロ ファージが活性化され IL-6 や IL-8 などのサイトカ イン,ケモカイン産生が生じ
4,5)
,好中球性炎症も 惹起される.上記のように通常の喘息において気道炎症の中心 的役割を演じている好酸球とリンパ球に加えて,好 中球による炎症が混在するため,真菌の下気道への 定着は喘息の重症化,難治化に寄与するリスクと考 えられている.重症・難治性喘息の 20 〜 25%で をはじめとする病原性真菌による感作 が皮膚テストで証明されており,喘息死との関連も 報告がある
6‑8)
.米国,欧州,豪州,新州で行われた調査では, や への感作
が重症・難治性喘息のリスク因子であることも知ら れている
9)
.さらに近年,真菌の関連した重症喘息 の一病型として真菌感作重症喘息(Severe asthma with fungal sensitization:SAFS)という概念に注 目が集まっている10)
.その臨床像として,①高用量 吸入ステロイドと長時間作用性吸入β2 刺激薬の併 用によっても症状が持続し,頻回または持続的な経 口ステロイド投与を要する患者であること,②原因 真菌に対して即時型皮膚反応または血清特異的 IgE 抗体が陽性であること,が挙げられており,③ABPA が除外されること,と明記されるように ABPA と非常に近似した病態・症状を呈す
10)
.ス テロイドの長期投与により,②は偽陰性となり,末 梢血好酸球の増加も見られないことも少なくないた め,後述する中枢性気管支拡張を伴わない血清学的 診断による ABPA (ABPA seropositive,ABPA-S)の除外診断は困難である.ABPA/ABPM と SAFS はそれぞれ独立した病態なのかどうか,抗真菌薬の 投与は果たして効果があるのかどうか,など議論が 尽きない.しかし,いずれも真菌の「感染症」では なく腐生・定着とそれに続発した「感作」が関与し ていることが大変興味深い点である.
疫 学
30 〜 40 歳台の患者が多く,性差はないとされる.
喘息のほかアレルギー性鼻炎や蕁麻疹など種々のア レルギー疾患をしばしば合併する.前述した通り,
重症喘息や嚢胞性線維症に合併しやすいことが報告 されており,欧米では喘息患者の 1 〜 2%,嚢胞性 線 維 症 患 者 の 2 〜 15 % の 頻 度 で 認 め る と さ れ
る
11,12)
.しかし,結核など他疾患に誤診されることもあり
13)
,実際にはもっと罹患者数は多いものと考 えられる.メタアナリシスでは喘息患者の 12.9%に 併発しているとする報告もある12)
.2006 年に本邦 で行われた疫学調査では,喘息患者の全年代で 1 〜 1.5%程度の頻度で ABPA が見られた,と報告され ている14)
.嚢胞性線維症の家系が希少な本邦では ABPA に先行する疾患として喘息が最も重要であ る.当教室でも肺結核の既往がある肺アスペルギ ローマから ABPA を発症した症例を経験しており,陳旧性肺結核など肺組織の破壊・虚脱が激しい患者 は気道クリアランスの低下など何らかのリスクを有 すると考えられるため,標準的な治療に抵抗する喘 息 を 含 む 慢 性 呼 吸 器 疾 患 の 症 例 を 診 た 際 に は ABPA を考慮すべきである.なお, に よる ABPM は女性に多く,喘息の合併頻度が低い とされている
15)
.臨床症状
,
診断主たる臨床症状は喘息である.しかし,喘息を伴 わない症例も存在し,発熱,倦怠感,咳嗽,血痰な どの症状にも注意を払う必要がある.長く標準とし て扱われてきた Rosenberg と Patterson が提唱し
た ABPA の診断基準を表 1 に示す
16)
.着目すべき は 粘 液 栓 子(mucoid impaction) で あ る.ABPA では,気管支を鋳型とした粘液栓を喀出したり,気 管支鏡で検出したりすることがときにあり,特徴的 な所見とされる.病理学的な診断基準を定義した Katzenstein らによれば,粘液栓内の菌糸や,気管 支中心性肉芽腫(bronchocentric granulomatosis)は本病態の代表的な所見とされ
17)
,とくに前者が得 られれば ABPA の診断は確定的とされる18)
.その 一方で,気管支鏡で得られた検体で上記の所見を満 たした症例は対象の半数もなく15)
,さらに典型的な 病理学的所見が得られなかった場合も ABPA が否 定されるわけではないとされる.病期が進んだ際に 認められる中枢性気管支拡張や肺線維化を呈する前 に,早期診断・治療ができないかどうかの検討・研 究が進み,従来の ABPA に特徴的な画像所見を不 可欠な項目とせずに 特異的 IgE や IgG など血清学的診断基準をもとに診断した ABPA-S と,中 枢 性 気 管 支 拡 張 を 伴 っ た ABPA central bronchiectasis(ABPA-CB)に分類したGreenberger の基準が 2002 年に提案された19)
.他にも Agarwal らの提唱した International Society of Human and Animal Mycology(ISHAM)の基準は判定が明確であり,臨床医が同病態を診断するのには有用と思 われる(表 2)
20,21)
.しかし,上記の診断基準には即 時型アレルギー反応,沈降抗体など自家では測定困 難な免疫血清学的検索が依然として含まれており,また, 属以外の真菌による ABPM にお いては診断を確定することは困難なままである.
よって臨床的に ABPM が疑われるが
に対する免疫学的反応が陰性の場合や組織で とは異なる形状の菌糸が認められる場合 は,他の真菌による ABPM の可能性を疑い原因菌 を検索する必要がある
22)
.より精密な診断を得るた めには など主要な病原真菌のリコンビ ナント抗原の作製およびそれらを用いた新たなアッ セイ,診断薬の開発が待たれる.臨床病期分類
,
治療表 3 は Patterson らが提唱している ABPM の臨 床病期分類である
23)
.画像,ステロイドへの反応,そして病勢をよく示すとされる血中 IgE 濃度にて病 期を分類している.Ⅰ,Ⅲ期は IgE 値が上昇してお り,ステロイドの反応は良好とされる.Ⅱ,Ⅳ期は 総 IgE 値が正常値を示すことがあるが,患者個々の ベースラインから倍増した際には浸潤・増悪の可能 性があり注意を要する.Ⅴ期では既にステロイドへ
表 1 Paterson (Rosenberg) criteria for diagnosis of ABPM
ABPA の診断基準 1 次基準
1 発作性の呼吸困難・喘息 2 末梢血好酸球数増多
3 抗原に即時型皮膚反応陽性 4 抗原に対する沈降抗体陽性 5 血清総 IgE 値上昇
6 肺浸潤影の既往(一過性または固定性)
7 中枢性の気管支拡張 2 次基準
喀痰中の の検出
褐色の粘液栓子の検出
に対する遅発型皮膚反応陽性 判定:1 次基準すべてを満たした場合,ABPA 確実例 1 次基準のうち 6 項目を満たした場合,ABPA 疑い
例とする.
2 次基準は診断の参考(満たせば確実性が増す)
文献 16)から引用,改変
表 2 Agarwal criteria for diagnosis of ABPM ISHAM の ABPA 診断基準
基礎疾患
喘息,嚢胞性線維症
Obligatory criteria(必須項目)
の即時型皮膚反応陽性または の特異的 IgE 抗体値が上昇(>0.35 kUA/l)
血清総 IgE 抗体値が上昇(>1,000 IU/ml)※
Other criteria(その他の項目,3 項目中少なくとも 2 項目 以上陽性)
に対する沈降抗体または 特異
的 IgG 抗体
ABPM に合致する肺画像所見※※
ステロイド非投与下で末梢血の総好酸球数 >500 cells/µl
※ その他の項目がすぺて満たされれば,<1,000 IU/ml で も可能
※※一過性の画像所見あるいは固定性の異常
文献 20,21)から引用,改変
の反応は乏しい状況といえる.ISHAM では喘息の 管理状況や粘液栓子の有無による臨床病期と,胸部 CT 画像所見を基にした画像分類を分けて提唱して いる
20)
.いずれの考え方においても中枢性気管支拡 張や肺線維化に移行する前に適切な治療を提供でき るように考えられ作成されている.蛇足であるが,これまで名前が挙がった Patterson,Rosenberg,
Greenberger はいずれも米国 Northwestern 大学の アレルギー科グループであり,ISHAM はインド Agarwal らが中心となるグループで,両者が本領域 の臨床を牽引する 2 大勢力である.
国際的に推奨されている治療,管理方法を抜粋・
改変したものを表 4 に示す
19,20,24)
.ABPM の治療 には, などの真菌による免疫反応を抑 制するステロイドの全身投与が第一に選択されてき た25)
. 現 在 も そ の 立 場 は ゆ る ぎ な い. し か し,ABPM には真菌の気道への腐生・定着が関与する
「感染症」としての側面があり,真菌の増殖を防ぎ 抗原量を減少せしめる目的から,抗真菌薬の使用が 検討されてきた.Itraconazole(ITCZ)をステロイ ドに併用すると, に特異的な IgE,IgG の産生が抑制され,呼吸機能の改善やステロイドの 減量効果が認められた
26‑28)
. ITCZ の単剤投与でも,気管支の粘液栓子が消失する症例の報告や
29,30)
, プ ラセボに比較して本症の呼吸機能を有意に改善し,抗炎症効果を有するなどの臨床的有用性が証明され ている
31)
.ITCZ に加え同じアゾール系に属する Voriconazole にも ABPM や SAFS などの病態への 有用性が知られている32)
.そのため, 2008 年の米 国感染症学会(IDSA)のガイドラインでは本病態 の治療にステロイドと ITCZ の併用療法が推奨され るようになった33)
.なお,本邦の深在性アスペル ギルス症のガイドラインでは,抗真菌薬の併用を推奨しているが,投与開始時期については明記されて いない
34)
.感作が成立している真菌と気道に定着 している真菌には解離が見られることも報告されて おり35)
,無条件に抗真菌薬を投与することに関して は懐疑的な意見も少なくない.また長期の抗真菌薬 の投与は耐性真菌を生じる可能性があり,真菌の培 養や薬剤感受性の確認は定期的に施行されるべきで ある.ステロイド依存性の症例,合併症や副作用が 問題となりステロイドが投与困難な症例,複数菌種 が原因として検出された症例では,抗真菌薬の併用 が考慮される.喘息のキードラッグである吸入ステロイド薬
(inhaled corticosteroid, ICS)は一部の症例に有効 であったと報告があるものの
15,36,37)
,主に寛解期に おける治療として位置づけられ,長時間作用性β2
刺激薬との配合剤も含め ABPM の急性期治療では 第一選択薬としては推奨されていない
25)
.とくに 全身ステロイドに代わる治療として高用量の ICS を使用することは,副作用の点からも避けるべきで あ る. し か し な が ら, 実 際 に 専 門 医 療 機 関 で ABPM に対して投与された治療内容(診断的治療 を含む)を調査した米国の疫学調査で,ICS は半数 以上の症例で使用されており,ABPM の喘息症状 を治療・管理するためには欠かせないのが現状のよ うだ38)
.最近では種々の生物学的製剤が臨床現場で利用可 能になってきたが,難治性アトピー性喘息の治療薬 である抗 IgE 薬 omalizumab による ABPM の治療 効果を検討した研究が成され,概して IgE 値が高 いにも関わらず,比較的良好な結果が得られている
ようだ
39,40)
.当教室でもリモデリングを生じた難治性喘息を呈した ABPM の症例に omalizumab を投 与し,一定の効果を示した症例を経験している
41)
.表 3 Stage of ABPM
病期 詳細 胸部画像における浸潤影の特徴 血清総 IgE 値
Ⅰ 急性期 上葉または中葉 著明に上昇
Ⅱ 寛解期 6 か月以上プレドニゾロンを服用しなくても浸潤影なし 上昇または正常
Ⅲ 再燃期 上葉または中葉 著明に上昇
Ⅳ ステロイド依存性喘息 浸潤影なし,または間歇的浸潤影が出現する 上昇または正常
Ⅴ 肺線維化終末期 線維化,気腫化または空洞性病変 正常のことが殆ど
文献 23)から引用,改変
まだ,ABPM に対する治療としては研究段階にあ る が IL-5 や IL-13 に 対 す る 生 物 学 的 製 剤 に よ る anti-Th2 治療や
42,43)
,最近ではビタミン D3
が嚢胞 性線維症に併発する ABPM の病態に効果がある,とする報告がある
44)
.ABPM の第一選択薬がステロイドの全身投与なの か抗真菌薬なのか,あるいは両者の併用なのか依然 として議論が続いており,抗真菌薬単剤療法とステ ロイド療法のランダム化試験の結果が待たれる
(NCT01321827).また,いずれの抗真菌薬がABPM の治療に最も有用なのかなどが今後の検討課題でも
ある.より優れた治療法の開発のためには一定の長 さの調査・観察期間を擁した多施設研究が進められ ることが望まれる.
近年のトピックス
2011 年 3 月に生じた東日本大地震のあとに慢性咳 嗽を生じた患者の一部では真菌の関与が示唆されて いる
45)
.患者から採取した喀痰を培養したところ,震災後の居住環境中から検出された真菌と同様の菌 種が同定された.fungus-associated chronic cough
( F A C C )と称される担子菌(
表 4 Recommended treatment of monitoring for control of ABPM 活動性の ABPM に対して推奨される治療,管理方法
《治療》
副腎皮質ステロイドホルモン(経口)
レジュメン 1 プレドニゾロン 0.5 mg/kg/day
×
1 〜 2 週 その後,隔日投与で×
6 〜 8 週2 週間毎に 5 〜 10 mg ずつ減量し,終了する.
レジュメン 2 プレドニゾロン 0.75 mg/kg/day
×
6 週 同 0.5 mg/kg/day×
6 週その後,6 週間毎に 5 mg ずつ漸減し,少なくとも 6 〜 12 週投与する.
追加が望まれる治療
抗真菌薬(経口);イトラコナゾールなど
200 mg
×
1 日 2 回×
少なくとも 16 週間投与する.吸入ステロイド 第一選択薬として用いられるべきではない.
全身ステロイド(プレドニゾロン)が 10 mg/ 日未満になれば,喘息の管 理のために使用してもよい.
《管理》
症状
喀痰を伴う咳,喘鳴,呼吸困難の出現は新たな浸潤を疑う.
血清 IgE 値
最初の 6 〜 8 週間は繰り返し測定し,その後 1 年間は 8 週毎に測定する.
ベースライン値から 100%以上の上昇時は無症候性増悪に注意する.
治療前値に比べて 25%以上減少し,症状の改善があれば治療が奏効していると考えられる.
胸部単純 X 線もしくは胸部 CT
肺の浸潤影が消失後 4 〜 8 週後に撮影する.
無症候性に新たな浸潤影が出現しないか注意する.
環境中の真菌のモニタ
暴露を避ける.換気や通気だけでは効果が乏しく転居を要することもある.
肺機能検査
定期的に実施し,ほかで説明がつかない呼気流量の低下があれば新たな浸潤のおそれがある.
合併症の診断・管理を十分に行う
アレルギー性鼻炎,副鼻腔炎,胃食道逆流症,COPD など
文献 19,20,24)から引用,改変
)という真菌が寄与する病態が原因として考 えられ,治療としては ITCZ が推奨されている
46)
. また,特殊な環境に限らず本邦は多湿な環境にあ り,容易に気道に曝露されやすいため生活環境中の 真菌が慢性咳嗽の原因のひとつとして考えられており,最近ではヤケイロダケ( )
が 関 与 す る ア レ ル ギ ー 性 真 菌 性 咳 嗽(Allergic Fungal Cough:AFC)という概念も提唱されてい る.非専門医療機関では上記の診断は困難であり,
seropositive な ABPM の部分症を見逃すおそれも あり,胸部画像検査や呼吸機能検査も併せて評価す ることが望まれる.非常にしつこい咳が特徴で,治 療に抵抗性を示す.日本のみならず南極を除く世界 中 に 繁 茂 し て い る ス エ ヒ ロ ダ ケ
に よ る ABPM の 報 告 が 増 え て い る
が
2,48)
,同菌は ABPM 以外にも肺炎や多発結節を生じることも知られている
49,50)
.注意を要する.は,一般の細菌培養検査では同定されな いため,本菌による ABPM の場合は真菌の病態へ の関与に気付かずに確定診断に至らない場合もある と考えられる.
結 語
モデル動物の作成が困難であることから,ABPM の病態や治療・管理に関する知見は臨床・疫学デー タに依存している部分が大きい.未知の原因真菌の 存在も考慮され,標準的な治療で改善が認められな い喘息様の症状を呈する患者を診療した際には本病 態を疑う必要がある.また, 以外の真 菌による ABPM に関しては検査法が十分確立され ておらず診断に苦慮することが多いため,今後の研 究課題のひとつである.
文 献