Generic に添加された Lusin 集合
藤田 博司
(Hiroshi Fujita) 2004
年10
月6
日1 Lusin 集合と Sierpi` nski 集合
定義
1.
疎集合イデアルとLebesgue
零集合イデアルを,それぞれM
とN
で 表す. いかなる疎集合とも高々可算な交わりしかもたないような,実数の不可 算集合のことをLusin
集合という. いかなる零集合とも高々可算な交わりし かもたないような,実数の不可算集合のことをSierpi` nski
集合という.¤
注意2.
連続体仮説が成立すれば, Lusin集合およびSierpi` nski
集合が存在す る. オリジナルの定義では,これらの集合は連続体の濃度をもつことを要請さ れていたが,後の議論の便宜のため,ここでは不可算であることにまで条件を 緩めてある.¤
定義
3.
数直線上のイデアルI
に対して,• add(I)
とは和集合がI
に属さないようなI
の部分族の最小濃度.• non(I)
とはI
に属さない集合の最小濃度.• cov(I)
とは和集合が数直線全体となるようなI
の部分族の最小濃度.• cof(I)
とはI
において包含関係の意味で共終な部分族の最小濃度.¤
注意
4. (Cichon
図)以下の図式は, 矢印の元にある基数が先にある基数を超えないことが, ZFCで証明できることを意味する:
cov(N ) −−−−→ non(M) −−−−→ cof(M) −−−−→ cof(N ) x
x
x
x
b −−−−→ d
x
x
x
x
add(N ) −−−−→ add(M) −−−−→ cov(M) −−−−→ non(N )
ただし,
b
およびd
はそれぞれ,ω
ω の“eventual dominance”
順序≤
∗ に関 する非有界集合と共終集合の最小濃度をあらわす.¤
この図の下段右と上段左の矢印は, Rothbergerの定理として知られている.
以下の議論で重要であるので,次にこれを証明する.
定理
5. (Rothberger
の定理)cov(M) ≤ non(N ).
(1)
cov(N ) ≤ non(M).
(2)
[証明] (1)
と(2)
の証明はほとんど同じなので, (1)だけ証明する. 補集合が
Lebesgue
零集合であるような疎集合が存在する.A
をそのような疎集合の一つとする.
Y
を, Lebesgue零集合でない任意の集合とする. このとき,R = S
y∈Y
(A + y)
となることを証明する.x
を任意の実数とするとき,A + x
の補集合はLebesgue
零集合であるからY
を含むことはない. したがって(A + x) ∩ Y 6= ∅
である. そこでこの共通部分の要素y
をとると,−x + y ∈ A
したがってx ∈ A + y
となる. こうしてR = S
y∈Y
(A + y)
となり,R
を|Y |
個の疎集合の和で表すことができる. これはcov(M) ≤ |Y |
を意味する.¤
補題6. Lusin
集合X
が存在すればnon(M) = ω
1 かつ|X | ≤ cov(M)
であ る. Sierpi`nski
集合Y
が存在すればnon(N ) = ω
1 かつ|Y | ≤ cov(N )
であ る. Lusin集合X
とSierpi` nski
集合Y
が存在すれば,|X | = |Y | = ω
1 であ る.¤
2 Generic な Lusin 集合の添加
定義
7.
半順序L
を次のように定義する.L
の要素p
は,実数の可算集合A
pと,疎集合であるような
Borel
集合M
p の対p = hA
p, M
pi
である.p ≤ q
と なるのは,A
p⊇ A
q& M
p⊇ M
q& (A
p\ A
q) ∩ M
q= ∅
となるときである. 上記の定義で
“疎集合 M
p”
を“Lebesgue
零集合N
p”
に 置き換えて得られる半順序をS
とする.¤
L
およびS
は, genericオブジェクトとしてそれぞれLusin
集合およびSierpi` nski
集合を添加するために構想された半順序である. 実際,G
をL
のgeneric
フィルターとするとき,X = [
{ A
p: p ∈ G }
とおけば,
X
はLusin
集合となる. また,S
のgeneric
フィルターG
から同様 の構成で集合Y
を作ると, それはSierpi` nski
集合である.定義
8.
上記の構成に対応したX
の自然なL-名前を X ˙
とする. 同様に,Y
の自然なS-名前を Y ˙
とする.¤
補題
9. L
およびS
は, 次の意味でweakly homogeneous
である. たとえばL
について言えば, 任意の2
要素p
とq
に対して, ある順序自己同型写像h : L → L
をh(p)
とq
が両立可能である(共通下界をもつ)
ようにとれる.¤
この補題の証明には, さらに次の補題が必要になる.
補題
10.
数直線R
の二つの疎集合M
1 とM
2 に対して,次の性質を持つ写 像f : R → R
を構成することができる.f [M
1] ∩ M
2= ∅,
かつf
は疎集合イデアル
M
を(両方向に)
保つBorel
自己同型写像である. 疎集合の代わりに
Lebesgue
零集合についても同様のことがいえる.[証明]
数直線R
を次の条件を満たす集合A
i, B
i, C
i(i = 1, 2)
に分割でき る. (1)A
i はBaire
の無理数空間ω
ωと位相同型でR
において稠密なG
δ 集 合である. (2)B
i およびC
i は疎集合であるような不可算なF
σ 集合である.(3) M
i⊆ B
i である. (4)A
i, B
i, C
i のどの二つも互いに交わりがない.これらの集合に対して,
α : A
1→ A
2 を(任意の)
位相同型写像とし,β : B
1→ C
2 およびγ : C
1→ B
2を(任意の)Borel
同型写像であるものとする.以上の準備のもとで
f = α ∪ β ∪ γ
とおけば, このf
が求めるものである.¤
[補題 9
の証明] 疎集合A
p∪ M
p とA
q∪ M
q に対して, 補題10
にいうような
Borel
同型写像f
を考える. すると,f
によりL
の順序自己同型写像h : hA
s, M
si 7→ hf [A
s], f [M
s]i
が誘導される.r = hA
h(p)∪ A
q, M
h(p)∪ M
qi
によってr
を定めれば,h(p)
とq
の共通下界となる.¤
注意
11. L
がweakly homogeneous
であるということから, ground modelに 依存したパラメータを含まないような集合論のセンテンスϕ (たとえば CH
など)については,かならずL k− ϕ
あるいはL k− ¬ϕ
となる.¤
定義
12.
次の半順序W
を,Anti-Cohen
半順序という.W
の要素p
は,可 算順序数dom(p)
から数直線R
への写像である.p ≤ q
は, dom(p)≥ dom(q)
かつp ¹ dom(q) = q
となることを意味する.¤
補題
13. W
はσ-closed
で,W k− CH. ¤
補題
14. Anti-Cohen
半順序W
はweakly homogeneous
である.[証明] W
の2
要素,p
とq
が与えられたとする. 各可算順序数i
について,f
i をR
からR
の上への1
対1
写像とし,とくにi < min{dom(p), dom(q)}
のときは
f
i(p(i)) = q(i)
となるように選んでおく.W
の任意の要素s
について,
h(s)(i) = f
i(s(i)) (i ∈ dom(s))
で定まるh(s)
を対応させること によって写像h : W → W
を定義すれば, これは順序自己同型写像であ り, dom(p)≥ dom(q)
あるいはdom(p) ≤ dom(q)
の各々の場合に応じて,h(p) ≤ q
あるいはh(p) ≥ q
となる.¤
補題
15.
数直線R
を次のような集合族{ Z
r: r ∈ R }
の和集合に分割できる.各
Z
rは疎集合でもLebesgue
零集合でもなく,またr 6= s
ならばZ
r∩Z
s= ∅
である.[証明]
まず数直線の疎集合M
で,補集合N (= R \ M )
がLebesgue
零集合 であるようなものをとっておく. 疎集合であるようなBorel
集合はちょうどc
個あるので,それらをX
β(β < c)
と並べておく. 同様に, Lebesgue零集合で あるようなBorel
集合はc
個あるので,それらをY
β(β < c)
と並べておく.連続体濃度
c (の始数)
までの超限再帰によって, 実数x
αβ とy
αβ をα ≤ β < c
なるα, β
に対してとってゆく. 再帰の第β
番目の段階では,N \ X
β(これは必ず連続体の濃度をもつ)
から,β
以下のすべての順序数α
に対する実数
x
αβ を,これまでのx
α0β0 として選ばれた実数のどれとも重複しないよ うに,また, 異なるα
に対応する実数が互いに重複しないようにとる. 同様 に,M \ Y
β から,実数y
αβ を,それ以前の選択および今回の他の選択と重複 しないようにとる.こうして
α ≤ β < c
なるすべてのα, β
にしてx
αβ とy
αβ が選ばれたら,Z
α= { x
αβ, y
αβ: α ≤ β < c}
とおく. このZ
α は疎集合ではない. もしも 疎集合であれば,あるX
β に含まれるはずだが,x
αβ の取り方を考えると,そ のときはβ < α
でなければならない. したがってそのようなβ
はc
個より 真に少ない. ところが, どのX
β も連続濃度個の相異なるX
β0 に含まれるは ずであるから, これは不合理である. したがって,Z
α は疎集合ではありえな い. 同様にZ
α はLebesgue
零集合でもありえない.あとは
c
とR
の間に存在する1
対1
写像をもちいて,添え字をつけかえれ ばよい.¤
補題
16.
L k− | X ˙ | = c.
(1)
S k− | Y ˙ | = c.
(2)
[証明]
補題15
により, ground modelにおいて,R
の要素r
と一対一に対 応して, 互いに交わりのない非-疎集合Z
r がとれる.L
によるgeneric
拡大 は, ground modelにない実数を添加することはないので, 疎集合であるよう なBorel
集合が新たに添加されることもなく,したがってZ
r はL-generic
拡 大においても,依然として非-疎集合である. さて,L
の部分集合D
rをD
r= { p ∈ L : A
p∩ Z
r6= ∅ }
によって定めよう.
Z
r が非-疎集合であっていかなるM
p にも含まれること がないので, このD
r はL-稠密集合である.
したがって,L-generic
なLusin
集合X
は,Z
r と交わりを持つ.Z
r たちどうしは互いに交わりがないので, 実数r
にX ∩ Z
r の要素を対応させる写像はR
からX
の中への1
対1
写像 である. こうして|X | = c
となることがわかる.S-generic
なSierpi` nski
集合Y
についても同様である.¤
注意
17.
この補題の論法により,L-generic
なLusin
集合X
は, ground model に存在した非-疎集合(それは generic
拡大においてもやはり非-疎集合である) すべてと交わることがわかる. もちろん,X
がgeneric
拡大におけるすべての 非-疎集合と交わるといっているわけではない. それはX
の補集合を考えて みればすぐわかる.¤
補題
18.
実数を付け加えないgeneric
拡大にさいして,次のもの(概念および
事態)は保存される.(1)
集合R.
(2)
基数ω
1.
(3)
等式non(M ) = ω
1(が成立しているという事態.) (4)
等式non(N ) = ω
1(が成立しているという事態.) (5)
実数の集合X
がLusin
集合であるという事態.(6)
実数の集合Y
がSierpi` nski
集合であるという事態.(7)
連続体仮説CH
が成立しているという事態.¤
注意
19.
上記の(3), (4), (7)
にいう事態の否定は,実数を付け加えないgeneric
拡大で保存されるとは限らない. 実際, anti-Cohen半順序W
は,実数を付け 加えずにCH
をforce
するので, (3)および(4)
をもforce
する.定理
20. Ground model
においてnon(N ) = ω
1 であれば,L k− CH
となる.また, ground modelにおいて
non(M) = ω
1 であれば,S k− CH
となる.[証明]
定理5,
補題6,
補題18
による.¤
Ground model
におけるCH
を,実数を付け加えずに破ることはできないのは当然のことである. いっぽう,この定理