神奈川大学大学院経営学研究科 F研究年報』第10号 2006年3月 57
■ 博士論文要 旨
神奈川 大学審査学位論文の要 旨
日本金型産業の競争力の源泉
一 知識集約型産業の確立 を目指 して ‑
TheCompetitiveEdgesofDieandMoldIndustryinJapan ThePa仇towardEstablishingasaKnowledgeJntensivelndustry
学 位 の 種 類 博士 (経営学) 学 位 記 番 号 博 甲 第82号 学位授与 の 日付 2005年9月30日
田 中 美 和
MiwaTanaka
I キー ワー ド
エ ンジニ ア リング ・フォース、 リレーシ ョナル ・フォース、 イ ンター フェイス ・フォース、情報力
1.研究の 目的および枠組み
本研究 の 目的は、 日本金型産業 の競 争 力の源泉 を追究 す ることにあ る。
こ う した 目的 を達成 す るために、本論文 では幾 つ かの キ ー概念 を用 いて、 日本金型産業 の競争優 位性 を明 らかに してい く。本論文 におけ るキー概 念 とは、第一 にエ ンジニ ア リング ・フォース (力) の構成 要 素 と して の エ ンジニ ア リング ・フ ァク ター、第二 に リレーシ ョナル .フォース (力) の 構 成要 素 と しての リレー シ ョナル ・フ ァク ター、
第三 にエ ンジニ ア リング ・フォースお よび リレー シ ョナル ・フォース を統 合す るイ ンター フェイス ・
フォース (力)、 さらに第 四 と して イ ンター フェ イス ・フォースの基盤 た る情報力1で ある。
次 に製造業 の なかで、 あえて金型産業 を取 り上 げ る理 由につ いて述べ る。第‑ の理 由は、 この業 界 が 自動車 や家電 な どを中心 に、戦後 日本 の高度 成長 を陰で支 えて きたか らで あ る。戦後 発展 した 大量生産 ・大量消 費社会 の なかで 日本 の産業界 に おける金型産業 とは、均一 な品質 の モ ノを安 く大 量 に生 産 す るた めの マ ザ ー ・ツ ール2を扱 う業 界 と して必要 不可欠 な存在で あった。 日本 の製造業 が国際的 な競 争社会 の なかでその地位 を築 いて き た理 由の一つ に、 こ う した金型 の高度化 が寄与 し て い る と思 われ る。 この点 につ いて は第1章 で取 1エンジニアリング.フォース、リレーショナル .フォース、インターフェイス.フォースと、キー概 念 となる3つについては,「力」となる部分の表 現 をフォ‑
スに統 一している。情 報 力についてもインフォメーション・フォースとすることは可能 であったが、本論 文 中における表現 のしやすさや他 のフォー スと比 較した際の位 置付 けが多少奨 なるという理 由により、あえて日本 語表 記のままとする。
2金 型 は同一種 類 の成 形 品を量 産 するための金 属 製 の 「母型 ‑マザー .ツール 」 であり、通 常 は雄型 と雌 型 との一対 の組 み合 わせ からなる.また、信 金 中央金庫 総合 研究 所 F産 業企 業情報15‑7「金 型 産 業 の現状 と今後 の方 向性」』 (2003年10月29日) には、
金型 がマザーツールと呼ばれる理 由について 「金型 が1つあれば同じ形状の成 形 品を多数作 れ、 金型の品JBfが成 形 品の形 状 品 質の 8‑9割をきめるため」 と指摘 している。
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り上 げている。
第二の理 由は、 日本金型産業 は、他の国にみ ら れ ない特徴 を有す るか らである。 それは、例 えば アメ リカの製造業の場合、金型 を内製化 している ことが通常の ことと考 えられている。 これに対 し 日本では、戦後金型が独立 した産業 として確立 さ れてお り、 日本独 自の産業発展 を遂 げている。 こ の点 につ いては第2章 で取 り上 げてい る。 日本 で はこうして金型 が独立 した産業 として発展 したこ とで、高 品質 なマザ ー・ツール、す なわち金型 が 存在す ることとなった。なぜ な ら、それぞれの金 型企業が得意分野や需要の見込める部分の特化に 努め、結果 として金型の種類や産業分野別の細分 化がおこったか らである。
1.1 日本の金型産業の特異性
以上 を踏 まえ、産業界のなかでの 日本の金型産 業の特異性 を述べ ると次の ようになる。 まず一つ には 日本の金型企業 が製作 ・製造 した金型 によ り、
顧客が求めるよ り高品質 なモ ノや部品 を大量に生 産す ることが可能 となっていると指摘で きる。次 いで、顧客か らの要求事項やそれに応 える金型企 業 サイ ドでの設計や開発ス ピー ドを重視 しなけれ ばな らない企業形態 と言 えるだろう。 この点につ いての具体的な内容 は以下の ようになる。
例 えば、自動車 メーカーに とっての顧客 は消費 者であるエ ン ドユ ーザーである。 自動車 メ‑カー がこうした顧客満足 の追究 を実現す るには、エ ン ドユ ーザ ーの徹底 調査 に的 を絞 り分析 やマ ーケ テ イングを行 うことで、よ り高い満足度 を顧客か ら得 ることが可能 となるのである。 この よ うに、
金型企業 における顧客 は、 ある製品に関す るモ ノ、
主 に部品 ・パ ーツを安定的にそ して大量生産す る 必要のある製造企業、 この場合 は自動車 メーカー となる。企業が継続 的に経営 を行 うには、顧客の 満足 を追求 し、それ を満 たす ことがで きることが 重要である。
1.2 これからの金型産業に求め られるもの 筆者 が上述 していることはマーケテ イングで言 うところの 「顧客成功」 に相 当す るため、 この概 念 について まず ここで取 り上 げてお く。 『サプ ラ イチ ェー ン ・ロジステ ィクス』 3の なかに、顧客 への対応 につ いて まとめ られてい る箇所 がある。
そこでの顧客満足 に関す る指摘 として 「長 いあい だ、顧客満足 (CS)とい うもの が、 マ ーケテ イ ングおよび企業戦略での基本概念 で あった」 4と しなが ら顧客満足 の限界 に触れてお り、その延長 として、企業 には もう1つ別の努力 が必要 で ある ことを指摘 してい る。筆者 は この箇所 につ いて、
本論文における リレーシ ョナル ・フォースの求め るものに近いと考 えている。顧客成功については、
本文 をその まま引用す る。
近年、 い くつかの企業 は、 もう1つ別の努 力があれば、 ロジステ ィクスのパ フォーマ ン スを通 して、真の競争優位 を獲得で きること を発見 した。 これは、企業の成長 と市場 占有 率 を伸ばす力は、 もっとも成功 した顧客 を引 きつけ確保す る能力いかんであるとい う認識、
これに基礎 をおいている。 とい うわけで、顧 客焦点マーケテ イングの真の鍵 は、組織が顧 客の成功 を高めるために、そのパ フォーマ ン ス能力 を用い ることにあるのだ0 5
こうした概念に金型企業 をあてはめて考 えてい くと、金型企業 にとっての顧客である製造企業の 満足追求 を実践す るだけでは十分 とは言 えないこ ととなる。 そ して ここでの金型企業 が とるべ き、
もう 1つ別の企業努力のポイン トは、金型企業 が、
顧客である製造企業の満足要求の内容 をどの程度 理解 ・認識 しているかによ り異 なる。仮 に、メー カー側 が欲す るモノを製作す ることができ、価格 ・ 納期 ・品質 といった製作技術の対応 さえ十分であ れば、顧客満足の要求 を満 た していると考 える金 型企業 に対 しては、 これだけでは不十分であると
3DonaldJ.Bowersox/DavidJ.Closs/M.BixbyCooper著 (訳者代表・松浦春樹/島津誠)『サプライチェーン・ロジスティクス』朝倉書店、
2004年3円 4前掲書、75ページ 5前掲書、82‑83ページ
日本金型産業の競争力の源泉 59
指摘 しなければな らない。なぜな ら、主 に部品を 供給す るための ツール を提供する金型企業 に、顧 客で ある製造企業 が要求す ることは、その先に存 在す るエ ン ドユ ーザー、すなわち完成品の購入者 である消費者の機能、デザイン、品質、価格、新 型のモ ノなどといった要求事項 までを満 た してい
る提案型の企業の存在 なのである。そ して これが、
先に指摘 した顧客成功 におけるパ フォーマ ンス能 力の尺度 となる。
この提案の中身は、① エ ン ドユーザーの動向 を 視野に入れた提案、①製造企業の開発期間短縮 に コ ミッ ト、(参技術 的側面 か らの検討事項 の明示、
具体的には軽量化への提言 としてパ ーツを縮小 し てはといった小型化へのア ドバ イスといったこと があげ られ る。 そ して これか らの金型企業 には、
製造企業か らエ ン ドユ ーザーまでを含め、 さらに メ‑カー側 と同 じ目的達成 に向かい共同作業 を行
うとい う視点が必要 となる。
製造業全体 をみ た場合、今後 は特 に消 費 ター ゲ ッ トや製造立地 を考慮 しなが ら10年20年先 の 社会 を見越 した経営 をす ることが求め られ る。そ
して、 こうした流れのなかでの 日本の金型産業 は、
結果 として試作、研究、開発などを中心 とする知 識集約型へ と移行す るだろう。
日本金型産業 における知識集約型企業 とは、顧 客の図面通 りに加工 を行 う受 け身的な活動か ら、
先に も指摘 したような製造企業の開発期間短縮へ のコ ミッ トメ ン トや技術的側面か らの合理化策お よび経費削減案 を顧客に提示 してい く提案型企業 として、自社価値 を提供 してい く企業である。 さ らに金型産業 が全体 として知識集約型の度合 いが 高 まることで、製造企業 と共 にエ ン ドユーザーの 満足追究 に向けての共同作業の色合 いが濃 くなる だろう。
1.3 本研究で検討する仮説
こうした流れの中で、今後 日本の金型産業 が、製 造業のなかで知識集約型の産業 としての牽引役 と なるための条件 として、次のよ うな仮説 を立てた。
まず、金型企業 が主 に製作や製造基盤 を中心 と して展開する企業努力の側面 が重要 であると考 え
る。そこでは例 えば、社 内蓄積 された既存技術 を 応用技術につなげてい く開発の追究 および強化 を 目指す活動が存在す る。筆者 は、金型企業がこう した開発追究 および開発強化 を目指そ うとす る企 業努力の競争力要因 を、仮説1 :エ ンジニア リン グ ・フォース、 と呼ぶ。
次にこれに並行 して、金型企業 に とっての顧客 との関係 を中心に、 もう一つ別の枠組みが必要で ある。それは具体的には、金型企業側の判断によ り 選出 された相手 (顧客 ‑製造企業)との間で構築 さ れた取引関係 を、 よ り強化 してい くことが求め ら れ るといった要素である。これは、金型企業 が顧客 側 の競争力強化のために積極的にコ ミッ トしてい くとい う意味であ り、相互の信頼感の確立 が不可 欠である。そ して、こうした金型企業 と顧客や取引 先 を中心 とした他 との結びつ きにつ いては、仮説 1が金型企業 における既存技術か ら開発へ向けた 取 り組み を中心に機能 していることに比べ、金型 企業 と顧客 との関係性 に重点が置かれていること となる。よって、顧客競争力の強化 に金型企業がコ
ミッ トし、 さらに影響 を与 えるよ うな企業行動 を、
仮説2:リレーシ ョナル ・フォース、 と位置付 ける.
ここまでの仮説 を基に、 これか らの金型企業 に 必要 な要因は、エ ンジニ ア リング ・フォースとリ レーシ ョナル ・フォースにあると指摘で きる。た だ し本論文では、 これ ら各 フォースだけでは不十 分 と考 え、第3の仮説の存在 につ いて も述べてい く。それは、エ ンジニア リング・フォース とリレー シ ョナル ・フォースを結びつ け、金型企業 を活性 化す るインターフェイス ・フォースの必要性 であ る.金型企業 におけるインターフェイス ・フォー ス とは、管理者 または経営者 が中心 とな り、エ ン ジニア リング・フォースと リレーシ ョナル ・フォー スを統合 す るために必要 な能力の ことである。 こ れ を仮説3とす る。
さらに仮説3の展開 を基 に、 このインターフェ イス ・フォースあるいは統合能力 を発揮す るため の基盤 を、仮説4 :情報力 と位置付 ける。
インターフェイス ・フォース と情報力の関係 を まとめると以下のよ うに説明で きる。 それは情報
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力 を基盤 とし、金型企業内にて組織学習が繰 り返 され、 インタ‑フェイス ・フォ‑スが蓄積 されて い く、 となる。
以上述べた、エ ンジニア リング ・フォース、 リ レー シ ョナル ・フォース、 イ ンター フェ イス ・ フォースおよびインターフェイス ・フォースを生
む基盤である情報力が、 日本金型産業の競争力の 源泉 を追究するにあた り、筆者が分析のために用 いた仮説的概念である。 これ まで4つの仮説 とし て説明 して きたこれ らの関連性 について、以下に その枠組みを提示する。
1.4 仮設的概念の枠組み
≪日本金型産業の競争力を支 える仮説的概念の枠組み≫
̀ 一 . ■ ■■ 一 一 ' 一 一 「
日 本 金 型 産 業 の 競 争 力 1 1
日本金型産業の競争力の源泉 61
1.5 研究手法
本研究の手法について述べ る。 まず最初 に行 っ た作業 は、金型企業発展 の歴史的視野のなかに現 在の金型企業 を捉 え返 し、現状の把握、すなわち 観察 を行 った。 こうした現状把握 の作業 を通 じ、
競争力 を持 った金型企業 で、エ ンジニア リング ・ フォ‑ス、 リレーシ ョナル ・フォースが満 た され てお り、 さらにインターフェイス ・フォースとし て、両 フォースを統合す る能力が働 いていること がみて取れたO加 えてインターフェイス ・フォー スあるいは統合能力の基盤 は情報力であることも 理解で きた。 ここまでの流れは具体的事例 か ら一 般法則 を導 きす、帰納法 を用いたこととなる。
そ して この4要素 を本論文の仮説的概念 と位置 付 けた。続 けて、先行研究や事例研究 を基 に、 こ の4つの要素の検証 およびそれに基づ いた分析 を 加 え、金型産業 さらには 日本製造業の発展の条件 までを導 き出す。仮説的概念 か ら現場、観察結果 に焦点 をあて る流れは、一般法則か ら具体的な事 例 を導 き出す演揮法 を用いたこととなる。
これ らのプロセスを経て最終的に妥当性の高い 発展の条件が導 き出 されたことで、先の4つの要 素 は仮説的概念 にとどまらず、今後金型研究にお ける有効 な分析 ツール とな りうると考 えている。
こうした研究方法 は結果 として、ア リス トテ レ スが今 日で云 う生物学 ない しは生態学の研究の方 法 として採用 し、成功 しその後彼の科学の方法 と
して定式化 した「帰納演揮法」に通 じるもの となっ た6。
2.各章要約 と目次
ここでは、 まず本論文の各章にて述べ られてい る内容 を短 くまとめ、次に目次の主要項 目を添付 している。
2.1 要約
第1章 日本金型産業の特徴 と課題
第1節では、 日本金型産業の特徴について、過
まか ら現在 までの枠組み と して捉 えなが ら、以下 の内容の考察 を行 ってい る。 日本の金型産業 は、
その特徴 として第3章で も取 り上 げ るが、成形材 料の種類や成形方法などによ り事業内容 が細分化 で き、多様性 を持つ ことである。 さらに小規模企 業経営がその大半 を占め、下請受注性 な らびに中 小企業の ウエイ トが高い業種 である。なぜ このよ うな特徴 を持つ ことになったのか、 また金型産業 がこうした企業形態 を特徴 として きたことにより、
日本の製造業 にどのような影響 を与 えたのかを分 析 した。第2節では、前節の過去か ら現在 までの 流れ をうけたかたちで、 日本金型産業の特徴 を現 在 か ら未来 とい う枠組みで捉 えてい る。 そ して、
これか ら金型産業 が製造業のなかで知識集約型企 業 としての牽引役 となるために不可欠な、エ ンジ ニア リング ・フォース、 リレーシ ョナル ・フォー ス、 インターフェイス ・フォ‑スそれぞれについ て概念分析表7を用 いて解説 し、 さらに情報力の 定義付 けを行 っている。
第2章 :日本金型産業研究の変遷
ここでは、 日本 で金型産業 に関す る研究 がどの よ うにス ター トしたか を中心 に取 り上 げた。第1 節では、 日本金型産業研究 がどのよ うに行われて
きたかにつ いて、研究調査 が行 われ た時期 か ら、
その変遷 をみてい る。具体 的 には1990年代以前 の金型研究 と、1990年代 に入 って か らの研究 の 流れ をみ る。第2節では、業種別金型産業 の研究 の変遷 をみてお り、 プレス金型 とプ ラスチ ック金 型 この2つの研究発生要因について まとめた。第3 節は、研究者主体でな く、金型関連団体による調 査研究の変遷 をみてお り、各調査機 関が実施 した 調査 内容の特徴分析 を行 った。第4節 は、今後の 日本金型産業研究 がどうあるべ きかについて考察 してい る。 その際、2000年 以 降の研究特徴 につ いて分析 し、今後の研究領域 とその可能性 につい ての所見 を簡単に記述 した。 ここで指摘 され る今
6JohllPriceI』see、 『科学哲学の歴史一科学的認識とは何か‑』 (常石敬一訳)、紀伊国屋書店、1974年11月 7項 目別の概念分析表 は、本稿の最後に資料‑1として掲載している。
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後の研究領域 につ いては、序章 と第1章 にて仮説 および定義付 け されたエ ンジニア リング ・フォー ス、 リレーシ ョナル ・フォース、イ ンターフェイ ス ・フォースの活用によるバ ランスの とれた経営 を行 うことの必要性 と同 じ流れ となる。
第3章 :金型産業の概況
前章 までは、本論文の分析 アプローチを中心に 取 り上げている。 ここでは、実際に金型 がどのよ うなモ ノであ り、金型産業の現状 はどうなってい るかについてみている。金型 につ いては、主 にそ の種頬や特徴 を取 り上 げた。現在金型 は、成形材 料の種洋や成形方法 などによ り細分化で きるが、
経済産業省の機械統計では用途によ りプレス用金 型 ・プラスチ ック用金型 ・ダイカス ト用金型 ・型 鍛造用金型 ・ゴム用金型 ・鋳造用金型 ・ガラス用 金型 ・粉末冶金用金型の8種類 に区分 されている。
第1節ではこれ らが どの よ うな製品に用い られ る かを中心にまとめ、次いで金型の製造工程 と機械 装備 について金型設計 ・製造がどのように進め ら れ るかにつ いて述べてい る。第2節では金型産業 の現状 と題 し、その出荷額や事業所数、そ して経 営状況などについてまとめた。 さらに工業統計な どのデータを基本 とし各数値 か ら読み取れ る金型 産業の特徴についての分析 を加 えている。
第4章 :日本金型産業の歴史的発展
前章では金型や金型産業 について、その現状 を 述べている。次に、 日本金型産業 について研究 を 進 めるには、 まず この業界 がどのような歴史的発 展 を して きたかを踏 まえておかなければな らない。
本章 では、第1節 にて 日本金型産業の歴史 を、形 成期初期の 日本金型製造業の流れ をつかみなが ら 述 べ てい る。 日本 におけ る金型製造業 の始 ま り は、1871年 に先進工業国 としての英国か ら、金 ・ 銀貨幣製造用 に貨幣製造機 とともに金型 が輸入 ・ 使 用 され た ことで あ り、 い ま一つ は、1880年 に 東京砲兵工廠 が ドイツ人技 師 を招 いて講習 を受 け、葉菜 の製造 を開始 した ことで あ る。 この19 世紀 か らの流れについてはい くつかの資料 ・文献
を中心にまとめた。戦前か ら戦中、戦後にかけて は、金型 関連企業2杜の社史 を参考 に読み取れ る ことを中心 に まとめた。第2節 は、戦後 に発足 し た金型工業会の役割について、工業会のあゆみ と、
1956年 に機 械工業振興 臨時措置法 が施行 され た ことにより金型産業の位置付 けがどのように変化 したのかを分析 している。
第5章 :事例研究
ここでは、本論文の仮説である応用技術 による 開発強化型 (エ ンジニア リング ・フォース)と、顧 客競争力強化へのコ ミッ トメ ン ト型 (リレーシ ョ
ナル ・フォース)、 これ ら2つの要素 を車の両輪 と 位置付 け、3つ 目としてインターフェイス・フォー スによって両輪のバ ランスを保つために情報の収 集 ・蓄積 ・発信などの作用が繰 り返 されてい る企 業 を、事例研究 の対象 と して個別分析 してい る。
第1節 は こうした個 別企業 の選定理 由につ いて、
上述 した3つの要素 および知識集約型 といった両 方 の視点か ら明 らかに してい る。第2節 は、具体 的に金型企業 がどのよ うな手法で、エ ンジニア リ ング ・フォース、 リレーシ ョナル ・フォース、 イ ンターフェイス ・フォースを保有 しなが らバ ラン スの とれた経営 を行っているかを基本 に、その競 争力の中身 を企業別 に取 り上 げてい く。第3節 で は、それ までの事例研究 を基に本章の総括 として 企業別 に競 争力の中身の確認 を行 った。 その際、
企業 がどのよ うなバ ランス感覚 を保有 しているか について、各 フォースの項 目にあてはめなが ら視 覚的に もわか るように図表 を描 いている。 また事 例研究か ら得 られた競争力の内容確認 を一本化す るために必要 な作業 は、第7章 にて行っている。
第6章 :情報力の必要性
本章では、 日本の金型産業 が今後 も競争力 を維 持 しなが ら生 き残 ってい くために必要 なことを、
情報 をキーワー ドとして位置付 け、分析 した。 ま ず第1節では、金型産業 におけ る情報力 とは具体 的に どの よ うなモ ノで あるかにつ いて取 り上 げ、
その重要性 について述べてい る。 その際、第1章
日本金型産業の競争力の源泉 63
の2節で定義 した情報力 を基 に、 ここで は総合 的 な情報 力 とは何 かにつ いて も言 及 してい る。第2 節では、金型企業 が影響力 ある情報力 を構築す る には どの よ うなことが必要 かにつ いて、情報力 と 金型企業の従業員数の適正幅の関係 および 情報力 と他社 との共 同開発の関係 とい う2つの視点か ら の分析 を行 った。第3節 は、 それ までの情報力 に 関す る内容 をよ りブ レイクダウンさせ る作業 を行 ってい る。 そのために、経営者 ・設計部門 ・製造部 門 とい う項 目別 に分 け取 り上 げてい る。第4節 に て、情報力の活用法には どのよ うな ものがあるか につ いて、金型製作現場 における場合 と、金型企 業 と取引先企業 における場合 とに分 けて分析 した。
第7章 :日本製造業の発展の条件
ここでは、 日本製造業 が今後 も発展 してい くた めに必要 な条件の確立 につ いて述べている。 まず 第1節で は これか らの 日本 の金型企業 が ど うあ る べ きか を取 り上 げた。 またここでの作業 は、本論 文 の序章 にて立 てた仮説的 シナ リオ、すなわち 日 本 金型 産業 の競 争 力の源泉 は、エ ンジニ ア リン グ ・フォース、 リレーシ ョナル ・フォース、 イ ン タ‑フェイス・フォースおよび イ ンターフェイス ・ フォースの基盤 と しての情報力の保有 にある、 と い うことが どの よ うに現実の もの とな り活用 され るかにつ いて述 べてい る。第2節で は、取 引先企 業 の海外移転や他の アジア諸国 との国際競争 によ り、特 に1990年 以 降受注 量 お よび事業所 数 の減 少 に直面 してい る日本の金型企業 につ いて、今後 日本金型工業会 が どの よ うな役割 を果 たすべ きか につ いて意見 を述べ た。第3節 で は、 日本 金型企 業 および金型工業会 の役割のなかで取 り上 げた発 展条件 を踏 まえ、 日本製造業 の今後のあ り方 につ いてその方向性 を示 してい る。
そ して終章 にて、 これ までの内容の総括 として の結論 をまとめた。
2.2 目次 一主要項 目一
以下 に、本論文 の 目次の主要 な項 目を記載 した。
序 章 研究 目的 研究手法 論文構成
第1章 日本金型産業 の特徴 と課題
第1節 過去 か ら現在 における 日本金型産業の特 徴
1 多様性 2 下請受注性 3 中小企業性
第2節 今後の 日本金型産業 の方向性
1 エ ンジニ ア リング ・フォース と リレー シ ョナル ・フォースのバ ランス
2 項 目別概念 分析
3 知識集約型産業 について 第2章 日本金型産業研究 の変遷 第1節 調査 時期 か ら見 た変遷
1 研究 の動向 と特徴 2 1990年代 以前の金型研究
3 外国人研究者 による 日本 プ レス金型 メー カー研究
第2節 業種別金型産業の研究 の変遷 一研究者 に よるもの ‑
1 自動車 開発支援型産業 と してのプ レス金 型
2 プ ラスチ ック金型産業 3 研究 発生要 因
第3節 金型 関連団体 による調査研究の変遷 1 調査機 関につ いて
2 調査 内容 の特徴
第4節 今後の 日本金型産業研究 1 2000年以降の研究特徴 2 今後の研究領域 とその可能性
3 分析領域
4 研究者別の金型研究比較表 第3章 金型産業の概況
第1節 金型 について 1 金型 とは
2 金型 の種類
3 金型 の製造工程 と機械装備 第2節 金型産業 の現状
64 神奈川大学大学院経営学研究科 『研究年報』 第10号 2006年3月
1 出荷額 2 数量 と単価 3 事業所数
第4章 日本金型産業の歴史的発展 第1節 目本金型産業の歴史
1 産業形成期初期の 日本金型製造業 2 金型の種類別 にみ る歴史的発展 3 個別企業の歴史 :黒田精工株式会社 4 個別企業の歴史 :株式会社オギハ ラ 第2節 金型工業会の発足 とその役割
1 金型工業会の あゆみ
2 機械工業振興 臨時措置法 (機振法)の 目的 3 機振法の評価 および意味
第5章 事例研究
第1節 事例企業の選定理 由 第2節 事例研究
1 プラスチ ック射出成形用金型 ‑P社‑
2 精密金型製造 ・プ レス部品加工‑S社‑
3 精密 プ レス金型 ‑K社‑
4 精密金型製造 ・金型 とプレス機 の組み合 わせに特化‑0社一
第3節 事例企業別競争力の確認 1 P社 における競争力 2 S社 における競争力 3 K社 における競争力 4 0社 における競争力
5 概念分析表の関連図によるⅠ社の分析 第6章 情報力の必要性
第 1節 情報力の確認 1 情報力の必要性
2 遺伝子的役割の情報 と企業文化の違い 3 情報力の位置付 け
4 総合的な情報力の定義
第2節 影響力 ある情報力の構築へ向けて 1 情報力 と金型企業の規模の関係 2 情報力 と他社 との共同開発の関係 第3節 情報力の基本構造 とそのブレイクダウン
1 経営者 に必要 な情報力 2 設計部門に必要 な情報力 3 製造部門に必要 な情報力
第4節 情報力の活用法
1 経営者 における情報力の活用法 2 金型製作現場 における情報力の活用法 3 金型企業 と取引先企業 における情報力の
活用法
第7章 日本製造業の発展の条件 第1節 これか らの 日本の金型企業
1 エ ンジニア リング ・フォースの充実 2 リレーシ ョナル ・フォースの充実 3 イ ンターフェイス ・フォースの活用 (情
報力 を基盤 として)
第2節 今後 の 日本金型産業 一金型工業会 の果 たす役割一
第3節 今後の 日本製造業 終 章 結論
3.結論 と展望
3.1 今後の 日本製造業 との関連性
製造業のなかであえて金型産業 を選択 した理由 について、序章の冒頭 にて、 この業界が自動車や 家電産業 を中心に戦後 日本の高度成長 を陰で支 え て きたことにある、 と述べてい る。 しか しこの表 現の裏には、陰で支 えなが らも、共同作業の相手 であるこれ ら自動車や家電 などのメーカーに、開 発 リー ドタイム短縮や技術的側面か らの合理化策 の提案 といった競争力強化へ向けた高 い貢献度 に より、絶対的な影響力 を与 え続 けている金型企業 の底力 を取 り上 げたい とい う筆者の考 えがあった。
日本の金型産業 は、論文 中にて指摘 しているが、
現在国内事業所数の激減や他のアジア諸国の追随 による受注量の減少 といった問題 に直面 してお り、
こ うした現状 の解決策 を模索 中で あ る。 そ して 主 に1990年代以降、 この状況 を打破す るために、
海外金型企業 との比較研究や、技能 ・技術に焦点 をあて ることで現場作業の改善 および技術力向上 を図 るといった研究 が行われて きた。筆者 はこう した研究 を踏 まえ、今後 日本の金型企業 が先に述 べた共同作業 の相手 に効果的な刺激 を与 え、 さら にそれ ら相手 の競争力強化に金型企業 が加担す る
日本金型産業の競争力の源泉 65
ことで製造業全体の牽引役 とな り、 これ まで以上 に産業 としての存在感 を示 してい くにはどうすれ( ばよいかを考 えて きた。
ここで、 日本の金型産業が総体的に競争力 を保 有 してい くことが、 日本製造業の発展 に与 える効 果 について、確認作業 も含め指摘 してお く。基本 的に本論文で取 り上げて きた金型企業 における顧 客 とは、ある製品に関す るモ ノ、主 に部品 ・パ ー ツを安定的にそ して大量生産す る必要のある製造 企業である。 さらにここでの製造企業 とは、完成 した製品をエ ン ドユ ーザーへ届 けることか ら、完 成品メーカーと呼ぶ。そ して筆者の仮説的概念 を 現実社会にて活か している金型企業は、顧客であ る完成品メーカーの満足要求事項 を、単 に依頼金 型の製作 ・価格 ・納期 ・品質 といった理解 または 解釈 にとどまらず、次の内容 を含む認識 を行って いる。それは、完成品メーカーにとっての顧客で あるエ ン ドユ ーザ‑の動向、または機能、デザイ ン、品質、価格 などについての要求 まで もを視野 に入れた提案 を行い、 さらに完成 品メーカ‑の開 発 リー ドタイム短縮 にコ ミッ トした り、技術的側 面か らの検討による部品軽量化の提言、部品小型 化へのア ドバ イスなどを積極的に実践 していると いった内容であった。
具体例 としては、 日本の自動車産業や家電産業 を中心 とす る完成品メーカーが、筆者の指摘 して きた競争力ある金型企業 と共同作業 を継続 してい くことにより、上述 した金型企業側か らの提案事 項 お よび貢献 内容 を取 り入れ ることで、エ ン ド ユ ーザーの満足要求に、よりス ピ‑デ ィに応 えて い く体制が構築 されてい くのである。そ して、 こ うした金型企業 と完成品メーカーの共同作業的な 協調関係や市場要求 を的確 に読み早急 に対応 して いける構造 こそが、今後 も日本製造業が競争力 を 維持 あるいは強化 させなが ら発展 してい くための 条件 となるのである。
3.2 知識集約型産業への発展 に向 けて さらに、大量生産 を陰で支 えて きた金型の存在 が、今後知識集約型産業の発展のためにいかに寄 与 してい くかについて、筆者の提示 した仮説的シ
ナ リオか ら明 らかになった内容 を踏 まえなが ら意 見 を述べ る。
第1章、2節の最 後 で も指摘 してい るが、今 後 の金型産業 は、試作、研究、開発などを中心 とし なが ら、顧客 に対 し積極 的に提案 してい く力 を兼 ね備 えた知識集約型へ と移行す ることとなる。具 体的には、顧客か ら与 えられた図面通 りの加工 を 行 う受 け身的な経営か ら、 どの ような方法で合理 化や経費削減が図れ るかなどの内容 を検討 し顧客 に提示 してい く提案型企業 として、 さらには自社 価値 を市場や顧客へ提供 してい くことがで きるよ
うな積極型企業 となることを意味す る。
そ して、知識集約型への移行 を果 たすためのプ ロセスとして、例 えば技術一辺倒 の経営 を行 うな どのかたよった手法ではな く、 まずは本論文 にて 指摘 して きたよ うなエ ンジニア リング ・フォース と リレーシ ョナル ・フォースの 中身 をきちん と 理解 す ることか ら始 め ることが望 ま しい。次 い で、 それ らを結びつ けているインターフェイス ・ フォースを通 じ、その基盤 となる情報力 を活用 し なが ら、両輪 である各 フォースのバ ランスの とれ た経営 を行 うことが重要 となってい く。
さらにこうして金型産業全体の知識集約化への 道す じが明 らか となったことで、 日本製造業全体 の知識集約化構想 について も言及で きる材料 がそ ろったこととなる。
これか らの金型産業 は、上述 したような主 にエ ン ドユ ーザーを顧客 として捉 える完成 品メーカー との共同作業 による結びつ きを強めてい くことと なる。 そ して こうした完成 品メーカーは、 これか らの金型産業同様 に、知識集約化のアクシ ョンを 実践 してい る製造業群 なので ある。 なぜ な ら、1 章 の2節で も取 り上 げたが、知識集約型の産業構 造については知的活動の集約度の高い産業 を中核 とした産業構造 を指す とされ、 この知的活動の中 身は研究、開発、デザイン、専門的判断、各種 マ ネ‑ジメ ン ト等の他 に高度の経験 に支 えられた技 能 も含 まれ ることか ら、研究や開発か ら製品抽出 に到 るまでの一貫体制の確立 されているこうした メーカー群 は十分知識集約型産業 と位置付 け られ
66 神奈川大学大学院経営学研究科 F研究年報』 第10号 2006年3月
ることとなる。
筆者 の仮説的概念 に基 き、知識集約化への構想 が定 まった金型産業 は、 これか らの金型企業 にお ける主要顧客 となってい くで あろ う知識集約型産 業 と してのメーカーに対 し、以下 に指摘 す る関係 性構築へ向か うこととなる。 それ は、開発期間短 縮への コ ミッ トメ ン トや技術的側面 か らの検討 に よ り、合理化策 および経費削減案の積極 的な提案 型発信力の特徴 を保有 し、産業 としての価値 を高 度化 させ ることとなるだろ う。 そ して、知識集約 型 の金型産業 が、同 じ知識集約型要素 を含む顧客 メーカー との共 同作業体制 を強めてい き、影響力 を発揮 してい くことが、 日本製造業の総体的な知 識集約型産業 の発展の実現へ向けた現実 的な取 り 組み に値 す るのである。
3.3 結論
本研究 は、 日本金型産業の競争力の源泉 を追究 す るとい う目的によ り開始 された。 その問題意識 は、国際的な競 争社会 のなかで 日本の製造業 がそ の地位 を築 くことがで きた理 由は、 こ うした製造 業 を陰で支 えて きた金型産業 の存在 があったか ら こそ可能 となった、 とす る認識か ら生 まれ た もの で ある。
そ して金 型産 業 に求 め られ る21世紀 型 の競 争 力の源泉 をタイプ分 けすれば、応 用技術 による開 発追究 ・強化型 (エ ンジニ ア リング ・フォース) と、顧客競争力強化への コ ミッ トメ ン ト型 (リレ‑
シ ョナル ・フォース) が あ り、 これ ら2つ が まず 車 の両輪 と して位 置付 け られ る。 そ して3つ 目と して、両 フォースを結びつ け、金型企業 を活性化 させ る働 き と しての イ ンター フェ イス ・フ ォー スの存在 で ある。 さらにこの イ ンターフェイス ・ フォースあるいは統合 能力 を発揮す るための基盤 と しての情報力の4つ となる。 また この情報力に よ り、両輪 のバ ラ ンス を保つ ために情報の収集 ・ 結合 ・蓄積 ・発信 などの作用が繰 り返 され ること で、バ ランスの とれ た企業経営 が継続 して行 われ てい ることが明 らか となった。
これ はまたエ ンジニア リング・フォース、リレー シ ョナル ・フォース、 イ ンターフェイス ・フォー
スのそれぞれ が、競争力の源泉 と して位置付 け ら れ ることを意味 している。 さらに最 も望 ま しいか たちは、現在 ではまだ少数派で あるが、 これ らの 要素 が (企業 によ りある程度 の配分の差 はあるが) 三拍子 そろった金型企業 となることである。
ただ し、現状 がエ ンジニ ア リング ・フォースあ るいは リレーシ ョナル ・フォースのいずれか一方 だ け とい う場合 で あ って も、何 の特 徴 も兼 ね備 えて い ない と ころ と比 べ れ ば、今 後弱体 部 分 の フォース を充実 させ るな どの処置 によ りバ ランス の とれ た企業 と して発展す る改善余地 はある。 ま た、 インターフェイス ・フォースに特徴 ・長所 が あると思われ る金型企業 に とっては、それ な りの エ ンジニ ア リング ・フォースお よび リレーシ ョナ ル ・フォース を保有 してい るはずである。 よって このケースでは、 イ ンターフェイス ・フォースを 基 に しなが ら、両輪 となる各 フォースを充実 させ てい く作業 に努 めれば よい こととなる。
こ うした事実 を踏 まえ、特 に今後の方向性 を見 失 ってい る金型企業 は、 自社の企業活動 における エ ンジニ ア リング ・フォース、 リレーシ ョナル ・ フォース、 イ ンタ‑フェイス ・フォースの掘 り起 こ し作業 を行 ってみ ることが先決で あると言 える。
そ して この作業 によ り、 自社の金型企業 と しての 能力が どの程度 で あ るか を確認 す ることがで き、
さらにどの部分が弱体であるか、強化策が必要 な 箇所 を知 ることも可能 となる。
こ う した過程 を経 て、5章 の事例研究 で取 り上 げて きた4杜 の よ うなバ ラ ンスの とれ た金型企業 が増 えてい くこ とが、7章 で も指摘 してい るが 日 本の金型産業 の活性化へ とつ なが ることになるの で ある。 またそれ は、顧客競争力強化へ積極 的に コ ミッ トす る金型企業 が これ まで以上 に増加す る とい うことで あ り、金型企業 に とっての顧客 とな る他の製造業、す なわち完成 品 メーカーの競争力 向上 に貢献す ることまで をも意味す るので ある。
今後 日本 の金 型産 業 は、 エ ンジニ ア リング ・ フォース、 リレーシ ョナル ・フォース、 イ ンター フェイス ・フォースをバ ランスよ く取 り入れ るこ とがで きた企業 が知識集約型 と して、金型産業 に
日本金型産業の競争力の源泉 67
限 らず製造業 をも牽引 してい く役割 を担 ってい く こととなる。 さらに、 この仕組み を理解す ること は、特 に消 費 ター ゲ ッ トや製 造立 地 を考慮 し10 年20年先 の社会 を見越 した経 営 を しなが ら、 自 社 の生 き残 り対策 をどの よ うに行 って い くべ き か、その方 向性 がみいだせない金型企業 に とって の指標、あるいは ヒン トとして活用 されてい くこ とになるだ ろ う。具体的には、 自社の位置付 けが 開発追究型 の リレ‑シ ョナル ・フォースに重点的 で あったか、 あるいは顧客の競争力強化 にのみ コ ミッ トし過 ぎていないか、 もしくはインターフェ イス ・フォースの幅が小 さく、収集 ・蓄積 ・発信 などの作用が全 くされていないなどとい った分析 が可能 となる。
日本 に存在す る多 くの金型企業 が、 自社の金型 企業 としての能力の確認 あるいはエ ンジニ ア リン グ ・リレ‑シ ョナル ・イ ンターフェイスそれぞれ の フォースの組み合 わせ によるバ ランス感覚の現 状認識 によ り、補強すべ き箇所 も確認 で きるとい うことであ り、 こうした作業 を経 た うえで、各企 業 に即 したその後の方 向性 を提示 してい くことが 可能 となる。
本 論 文 で 明 らか に した エ ン ジニ ア リ ング ・ フォース、 リレ‑シ ョナル ・フォース、 インター フェイス ・フォ‑スの3つの力、 さらには情報力 が、 自社の位置付 けを認識す るツール と して活用 す ることが可能 であることが明確 となった。 また 金型企業 における顧客 との共同作業 といった関係 性構築へ向けた取 り組みについては、金型産業の 活性化 につ なが るだけでな く、金型企業 が顧客で あるメーカーに対 して行 う開発 ・製造 リー ドタイ ム短縮 ・技術的側面の検討 ・コス ト削減 に関す る 提案 などの コ ミッ トメ ン トによる貢献か ら、製造 業全体の競争力強化に深 く結びつ いてい ることも 明 らか となった。
68 神奈川大学大学院経営学研究科 挿升究年報』第10号 2006年3月
資 料‑1 項 目別 概 念分 析 表
1.エ ン ジ ニ ア リ ング .フォース (の構成要素 と してのエ ンジニ ア リング .ファクター力) 2.のサ ブ的要素エ ンジニ ア リング .ファクター 3.サブ的要素 の実現 に必要 な活動内容
固 研究 基礎研究、応用研究新領域、異 分野金型 これ まで に培 って きた金型技術 の確 認や検 討 を行 い、重要 . 不要 に限定 しない 自社技術 の再認識作業 を徹底 的 に行 う○ さ
らにそ うした作業 を基 に別 の発展 を模索す るo
開発 加工方法、 自社 オ リ 特化型技術 を利 用 して新分野へ の参入 を目指 し、追 随企業 かジナル、特許、共 同 らの さらなる引 き離 しを行 うo または 自社蓄積 されてい る技 開発 術 を改善 .改 良す ることによ り、競合他社 との差別化 を目指す
設計 CAD′CAM活 用、 図 製造 コス トの低減 や リー ドタイム短縮 へ向 けた取 り組 み を継 面 作 成、 図面 構 想、 続 的 に実践す るために、設計段階 か ら製造方 法 を見直 し、工 コ ンカ レン トエ ンジ 数 の削減 などを検討 してい くO さらに顧 客 とな る完成 品 メ‑
ニ ア リング (設計 . カーな どの取 引先 と、製 品構想 に関す るコ ミュニケー シ ョン 有 生 産 間 の 関 係 見 直 の簡素化 .スムーズ化 を図 る手段 と して、情報機器 に も精通 技
柿 し) す ることが望 ま しいo
加 工 (金 型 の 高 自作、 自前加工技術 よ り付加 価値 の高 い微 細 で精 密 な金型 を手 掛 け るに は、 こ れ まで に な い 材 料 を 自社 で 調 合 す る とい っ た 作 業 が考 え られ るo 加 えて材 料 に関連 して言 え る こ とは、微 細 .精 密 を追 究 す る だ け で な く、 これ まで に な い よ うな金 型 の 強 超精密加工、微細加 度 を求 め た りす る こ と も あ げ られ るo これ に よ り、 耐 久 度専門技術) 工、耐久性、高速性 時 間の延長 や シ ョッ ト数 を高 め る とい った可能性 が広 が るo
また完成 した金型 の精度 を計測す るためには、 その精度 以上 の測定器 も必要 とな るo さらに微調整 や仕上 げ を行 う作業環 境 を一定 に保つ には、各作業現場 に適 した設備 の高度 化 も行 わなければな らないo
坐 管 理 技 術 (の高度専門知識) コス トダウ ン、生産 開発期 間や工程管理 を検証す ることで、統合 で きる箇所 や今金 型 性、納期短縮 、適正 後 は必要 ない と思われ るよ うな箇所 を検討 しなが ら、経費削 価格、適正利潤 減対策 を見極 めてい くO さらに過度 の価格競争 は行わないo
技 能 の伝 承 .標 磨 き、仕上 げ、組立試作、調整 これ らを熟練 の技 とあがめ るのではな く、全作業者 の共有 の 産 財産 で あ る とい った共 通認識 と して現場 に位置付 けてい くo 技術 さらに熟練技能 の独 占禁止 の雰 囲気作 りや、公開 を徹底 的 に
準 化 (マ ニ ユ ア 行 う. また こうした雰 囲気作 りをスム‑ズ に実践す るため に
ル ) は、熟練 の技 を保有 し十分 な経験 を積 んで きた作業者 に、各 企業 がで きる範 Bilで優遇措置 を与 えることな ど も有効 な手段 で ある○
技 柿
管 情報管理 (蓄積) 承認図、貸与図、 コ 記録や仕 分 けを きちん と行 うため に、記録方 法の確立 や記録 ンピュー ター .プ ア 者 の認定作業 を重 視す るo さらにそ うす ることによ り、責任 イル、材料 の所在 が明 らかにな り、作業 もスムーズ化 され るo
情 報 収 集 (製 作 ス キル、 内部 研 修、 現場作業 の吸 い上 げ を行 う○ また作業者 の教育訓練 と意識改 哩 外部研修、競合他 社 革 を目的 に、社 内 あ るいは外部施 設や機 関 な どで、技術習得 情報) 技 術、他 分 野 技 術、 を 目指すo 自社製 品 に関連 の あ りそ うな技術情報 を入手、 あ
日本金型産業の競争力の源泉 69
1. リレー シ ョナル .構成要素 としてのフォース (ファクターリレー シ ョナル .刀)の 2.ファクターのサブ的要素リレーショナル.3.サブ的要素実現に必要 な活動内容
対 収集 (市場情報 .営業活動、取引先訪 ここでの目的は、積極的な社外活動 を行 うことにより、政治 . 問、外注先訪問、引 社会 .国家 .国際社会の流れ、進 もうとしている方向性、対 社 会 情 報 .環 境 合い先訪問、海外視 策 などの 「外の感覚」 を経験 として掴み取 ることが重要 であ 情報) 察、異業種訪問、同 るo さらにこうして掴み取 った流れか ら、 自社に有益 にな り
業種誌問 そうな箇所 を探 ってみ るo
加 工 (付 加 価 値
転換材料) 同業者交流、異業種交流、産 官学交流、関自治体、国、国際機 他社で まだ行われていないようなこと、 あるいは他が気付い ていないことを先行活動的に実践す るo あるいは他社で既 に 行われていることで も、 自社 な りの付加価値 を加 えられ るよ
社 うな発想が思い浮かぶな らば、即実践 に結び付けてい くo こ
会 うした先行活動や付加価値活動 をきっかけとして、 自社の営
業範囲の拡大 に役立てた り、 自社の認知度 を高 めてい く場 と す るo
発信 講演活動、研究発表学会発表、工業会主催事業、自治体主催事業 自社技術、 自社製品の市場拡大の可能性 を探 るために、適材 適所で発表 .解説 .質疑応答 といった発表 の機会 をみつ ける 企業努力が必要である○例 えば、各機会 によ り聴講す る側 に も知識や技術情報 に温度差 があることなどを配慮 し、 よ り分 か りやすい資料作成 を心がけることも有効で あるo
対 個 別
企 情報)収 集 (有 力企 業 技術力、度、企業特徴、歴史人材ビス、知名度、認知販売力、サー 過去の取 り引 きや その顧客 に対す るそれ までの記録 .データ (自社に対す る対応力や技術力 も含む)や社会的指標 (メデ イ ア論評や業界紙 など) を基 に分析 を行 うo社内ではこうした 記録の管理作業 を重視 し、加 えて蓄積デー タの公表 も行 うo 特 にデータ公表す ることは、社員の共通認識への きっかけと な り、 さまざまな視点か らの企業分析がで きる可能性 がある あるいは有力顧客 との長期取引がで きていることo
加 工 (材料)取 引判 断 市 場、 時代、流 行、社会構 造 (少子 化、 顧客か らの引 き合 い内容 をヒン トに しなが ら、 さらにその顧 莱 高齢化)、社会方 向 客 の先 にあるエ ン ドユ ーザーの指向 にまで想像力 を働 かせ、
(ド (環境、意思決定)資源)、スピー 現代の特徴 を掴むためのアンテナを張 り巡 らせてお くo
発信 (情報提供) ニーズ、場、人、組織 需要のある相手 に対 し、 自社技術の説明 をあ らゆる角度か らフォローしてい くo また将来的に顧客 と見込 め る相手 に も自 設備\ 自社保有技術 社技術のアピール を行 うo例 えば、展示会への出展や技術発
表で きそうな機会 を積極的に探 してい くo
社内 体
刺 加工 (情報選定) 取 引先 条件、信頼、愛着、人脈、経験年数 対外向 きに積極的な協力姿勢 を示す努力 をす ること○ あるい は他 をひ きつけるために、技術面や経営者のカ リスマ性 を引 き出 しなが ら、魅力的な金型企業 を目指す0時には強気に出 た り、はった りをさかせ るo
発信 (対外戦略) ネ ッ トワーク構 築、協 力 体 制 (計画、短期決断、政策、方針ナーシ ップ)、長 期パー ト社外へ向けて、積極的な協力姿勢や、 自社の 目指す方向性 を
70 神奈川大学大学院経営学研究科 F研究年報』 第10号 2006年3月
1. インターフェイス構成要素フォース (力) の.2.サブ的要素イ ンタ‑ フェイス .フォースの
3
.サ ブ的要素 の実現 に必要 な活動 内容技
術 協働 によ る創発 特技技術分類術、化術型提携特許技術、旧型技、、共 同開発技術指導 自 社 技 術 の 評 価 や 技 術 分 類 な ど の 分 析 を 行 い、 利 益 見 込 み の 可 能 な 自 社 技 術 分 野 を 模 索 す るo 次 い で その技 術 ニ ーズ の有 無 や 市 場 の 開 拓 を始 め るo また他社技術 との融合 によ り、双方 が得 られ るメ リッ トに気 付 くことがで きた場合 には、速やかに可能性 を模索 してい くo
技術の方 向性 顧客要求、将来顧客 エ ン ドユ ーザ ーの望 む もの を掴 み取 り、直接 の顧客 で あ る取
シー 引先 か らの要求 を満 たす には、 まず 自社 にそのモ ノを製 品化
ズ に結びつ ける ことが可能 な 自社技 術 あるいは製作パ ワーが必
罪 要 で あるO また どの方 向 を 目指すか は、技術力強化一辺倒 で
描 要求 、国内社会ニ ー な く、常 に国策や国際状況 も視野 に入れ ておか なければ な ら ズ、国際社会 ニ ーズ ないo メデ ィアや関連機 関か ら、意見や発言要求 の機 会 が あ れば、 自社 に有利 とな りそ うな提案 も行 うo例 えば 自社技術 を利 用で きそ うな分野 の活性 化 を唱 えるとい った ことが上 げ られ るo
顔客 信頼 関係醸成
( ‑
機密保持、守秘義務 これ までの取引の なかか ら、顧 客 に関 して得 ることがで きた 相手側 の意向 .思惑 な どの管理 の徹底 や顧 客満足 の追究 を実 顧客 フル .コ ミツ 取 引条件、 自社価値 施 し続 け る○ さらにそ うした経験 .方 法 を、 あ る企業 のみ に トメ ン ト) 提供 限定 した もの と捉 えず、他 の取 り引 きに も活 用 させ なが ら応ー
ズ充 用 してい くo
顧客満足追求 提案 、改 良提案、 コ場 開拓デザ イ ン提案、改善ス トダ ウン提案、市 自前加工技術 を利用 し、顧 客 に とって有利 に働 くよ うな部分 .
足 競争力の強化 につ なが るよ うな部分 の検討箇所 をみつ け る努
力 を し、提案 .フォロー .サポー トを実践 してい くo
社内 融
∠口 情報共有ゝ 公開 (公表)、発言 力 社 員がスムーズ に意見 を述 べ ることがで きる雰 囲気 をつ くり だす には、仕事 に対 す る意識 の高 い人材 を大切 に してい く環 境づ くりに心が けなけれ ば な らないo またそ うした向上 心の 責任、蓄積デ ータ ある社員、厳選 された杜貝 か ら発せ られ る意見 に、経営 の トツ プが耳 を傾 けてい る姿勢 を示 す ことが、環境 づ くりの スムー ズ化へ とつ なが るo
組織学習 企業 内全体交流 、設計部門内交流 、製造部門内交流 、設計 お企業外交流、よび製造部門間交流 自社 および 自身が何 をすべ きか を考 える手段 と して、企業 の なかで考 えを述 べ るこ とは大切 で あ る○ また機 会 をみつ け、
企業 の外 にでて人 や他企業 の意見 を聞 き、 そ こか ら得 られ た
日本金型産業の競争力の源泉 71
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『科 学 哲 学 の歴 史一 科 学 的認 識 とは 何 か』常石敬一訳 、紀伊 国屋書店、 <旧版 >A1974年 、 <復刻版>2001年