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アラビア語チュニス方言における名詞 ʃ ay 《もの》の用法の階層性

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アラビア語チュニス方言における名詞 ʃ ay 《もの》の用法の階層性

熊 切   拓

Usage Hierarchy of the Noun ʃ ay ‘thing’ in the Arabic Dialect of Tunis

Kumakiri, Taku

In an Arabic dialect spoken in Tunis (Tunisia), the noun Say, which is cognate with Say- thing of Classical Arabic, has both syntactic and semantic pecu- liarities in comparison with ordinary nouns of the language. In some environ- ments, it denotes thing, and nothing with negative particles, but in others, it still means nothing even without negative particles. In this paper, fi rstly I describe the entire range of usages of this Say, based on data collected in sev- eral fi eld work researches. e description includes some phenomena which have not been reported in previous literatures of North African Arabic dialec- tology. Secondly, entire data are analyzed in regard to (1) typicality as a noun, and (2) the syntactical relationship with other components within a sentence.

According to the analysis, its usages are categorized into fi ve levels: (1) speci- fi ed Say, (2) unspecifi ed Say, (3) dependent negative Say, (4) dependent nega- tive Say with omitted negative particle, and (5) independent negative Say. In level (1) and (2), Say always appears in a positive context and denotes thing. It shares almost the same properties as a typical noun in this language. But Say of level (3) and (4) loses the noun typicality and syntactical relationship to a greater degree until it means nothing. In the fi nal level, as the nominal char- acter and ability to build a syntactical relationship disappeared, Say becomes like an interjection which negates a situation and forms a one-word sentence. It is concluded that these fi ve levels compose a hierarchy in which the typicality as a noun and syntactical relatedness decrease as usage goes from level (1) to (5). Finally, I argue these phenomena in regards to grammaticalization.

Keywords: Arabic Dialect, Noun, Negation, Syntax, Grammaticalization キーワード : アラビア語方言,名詞,否定,統語論,文法化

* 本稿は,「ことばのミステリー研究会」での発表「アラビア語チュニス方言におけるayの文法化」

(2009年2月28日)を新たな構想のもと発展させたものである。研究会において有益なコメントを くださった参加者のみなさん,また,草稿の段階で有益な助言をくださった湯川恭敏先生と若狭基 道氏に感謝を申し上げる。

(2)

1. はじめに

アラビア語文語の名詞ay-《もの》に対応する語は,アラビア語方言において独自の発達 を遂げ,とりわけ西方言(エジプト・スーダン方言,マグレブ方言,マルタ語)では否定,疑 問,数量表現にかかわる重要な働きを担っている。

チュニス方言におけるこの語の対応形はayと-/-iであり,後者は①一般的な否定文を作 るさいに義務的な要素のひとつとして,②疑問詞の構成要素として,③随意的な疑問標識とし て用いられる。なお,他のいくつかの方言で報告されているような《いくつかの》という不定 の数量を示す修飾語としての用法はチュニス方言にはない1)。以下は,この-/-iが,否定要 素(1-1),疑問詞の構成要素(1-2, 1-3),疑問標識(1-4)として用いられた例である2)。なお,

1. はじめに 2. 導入

 2-1. アラビア語チュニス方言  2-2. 先行研究

 2-3. 資料 3. 形態

 3-1. アラビア語文語との対応  3-2. 形態音韻的解釈

4. ayの用法  4-1. 性と数  4-2. 人称接尾辞  4-3. 被修飾語となるay  4-4. 限定的用法  4-5. 修飾語としてのay  4-6. 単独で用いられるay  4-7. 非限定的用法 5. ayの否定的用法  5-1. 非独立的否定的用法

 5-2. 否定辞ma-と共起する非独立的否定 的用法

 5-3. 否定辞laと共起する非独立的否定的 用法

 5-4. 否定辞の省略された非独立的否定的 用法

 5-5. 独立的否定的用法

 5-6. 否定辞の省略された非独立的否定的 用法と独立的否定的用法との違い  5-7. 補足1

 5-8. 補足2

6. ayと-/-iとの関係  6-1. 交換可能性

 6-2. 非独立的否定的用法のayのもつ名 詞的性質

7. 名詞性という観点からの分析

 7-1. 意味的側面からみたayの名詞性  7-2. 統語的側面から見たayの名詞性  7-3. 否定的用法のayの非典型性 8. 統語的関係性という観点からの分析  8-1. 統語的関係性

 8-2. 統語的関係性からみたayの用法の 階層性

9. 文法化との関係 10. 結論

1) 例えば,モロッコ方言において不定冠詞(Indefi nite Articles)に分類されている次のような用法 である(Harrell 2004: 147)。

i-rael ‘a man, some sort of man, some man or other’

2) アラビア語チュニス方言の音素は次の通り(表記はほぼIPAに従う)。/b, f, ð, ð, , d, t, t, z, s, s,

, , g, k, , x, q, , ħ, , h, m, n, l, l, r, r, y, w, v, p, a, a, i, i, u, u, /。

また本稿のグロス等で用いる略号は次の通り。

1, 2, 3:1人称,2人称,3人称 SG:単数 PL:複数 M:男性 F:女性 DEF:定冠詞 

AP:能動分詞 PP:受動分詞 PERF:完了形 IMP:未完了形 IMPR:命令形 NEG:否定辞

(3)

(1-1)のように一般的な否定はma-(否定辞)と-の共起によって作られる。

(1-1) lbaraħ ma-mit- l- l- xidma.

昨日 NEG-行く1SG.PERF- 〜に-DEF-仕事

「昨日わたしは仕事に行きませんでした」

(1-2) a 3) yaml?

何 する3SG.M.IMP

「彼は何をするの?」

(1-3) qadda umr-k?

いくら 年齢-2SG

「あなたは何歳ですか?」

(1-4) tħbb-i ħaa uxra? 4) [102]5)

欲しい2SG.IMP- i もの ほかの

「ほかのものが欲しいのですか?」

いっぽうayは文語と同じく名詞として用いられるが,通常の名詞とは異なる特徴を持つ。

また否定表現においても特別な役割を持ち,この役割と関連して名詞としての機能を越えた独 特の表現性を獲得するにいたっている。本稿ではこのayを取り上げ,まずその用法の全体像 を記述する。この記述には,チュニス方言のみならず他のマグレブ方言においても明確に記述 されたことのない特殊な用法も含まれる。

ついで,これらの用法について,名詞としてのどれだけ典型的か(名詞性),あるいは文に おいて他の語と統語的に結びつく選択肢が多いか否か(統語的関係性)という観点から分析を 行い,ayの用法に全体として階層性があることを指摘する。

さらに末尾においてはこの言語現象と文法化との関連について若干の考察を加える。

2. 導入

2-1. アラビア語チュニス方言

本稿で扱う言語であるアラビア語チュニス方言(以下チュニス方言)は,北アフリカの国,

チュニジア共和国の首都チュニスを中心に話されているアラビア語方言である。チュニス方言 は,チュニジアの他のアラビア語方言とともに,アラビア語マグレブ方言に含まれる。マグレ ブ方言は,大リビア・アラブ社会主義人民ジャマーヒリーヤ国,チュニジア,アルジェリア民

3) a《何》は,a-と分析でき,語源的には文語のayyu ayin「どんなもの」に対応する。次の(1-3)

のqadda《いくら,どれくらい》は名詞qadd《大きさ,サイズ》にこのaが接尾されたもの。なお,

方言的な疑問詞の構成要素としての-については,Holes 1995: 155-157において論じられている。

4) -iを-に代えても意味は変わらない。また,この疑問標識の-がなくてもイントネーションによ

り疑問は成立する。

5) 例文末尾のブラケット内の数字については,2-3を参照のこと。

(4)

主人民共和国,モロッコ王国,モーリタニア・イスラム共和国の5カ国に代表される北西アフ リカ地域で話されるアラビア語方言の総称である(中野1989: 477-479)。

チュニス方言の一変種として,チュニスのユダヤ人社会のアラビア語方言が報告されている

(Cohen 1975)。その意味では,ここで扱うのは,それとは異なるチュニスのムスリム社会の アラビア語方言である6)。さらに生粋のチュニス住民が用いる言語(Singer 1984)というより も,チュニジアの他の地域からの移住者を含むチュニスの住民全体が共通に理解し,またチュ ニジア全体の共通語として認識されているコイネーを対象としている7)(Gibson 2009)。

2-2. 先行研究

ayの 用 法 に 関 し て も っ と も 詳 細 に 記 述 し て い る の は,Takrouna方 言 を 扱 っ た 辞 書,

Marçais et Guîga 1959: 2123-2127である。Takrounaはチュニスから100キロほど離れた村

(中部チュニジア)であり,その方言にはチュニス方言と共通する点も多い。

また,チュニス方言の包括的記述文法であるSinger 1984: 283-285にもayの一部の用法に 関して若干の記述が見られる。

チュニス方言以外の方言においても,このayに対応する形に関する記述は多い。本稿におい てはそれらのすべてについて挙げることはせず,議論に必要な場合にのみ言及するにとどめる。

精粗の差はあれ,これらの研究の関心は,ayの意味的な分類,並列的な例示にあり,この 語が全体としてどのような用法をもつものとして理解されうるかについて論じたものではな い。本稿で試みるのはこれであり,ayの意味とそれが現れる統語的環境とがどのように関係 しているかに着目してその全体像を記述する。

とはいえ,用例の分類・記述であるとしても,Takrouna方言のそれ以上に詳しい研究は存 在せず,本稿における調査・分析の出発点となった。

2-3. 資料

本稿で用いる資料は,2種に分けられる。

①筆者がチュニス方言話者を対象に聞き取り調査によって集めた資料。

②チュニス方言による物語集ħkayat l-Arwi『アル・アルウィーの物語集』(al-Arwi, A.

[1989] al-Dar al-Tunisiya li-l-Nar. Tunis)第1巻(全4巻)から取られた資料。同書は作家・

コメンテーターであるAbd al-aziz al-Arwi(1893-1971)がラジオやテレビで語った物語 をアラビア文字表記で出版したものであり,その言語は古典的なチュニス方言とみなされてい る8)。ただし,アル・アルウィー自身の肉声を記録した録音資料が入手できなかったため,ア ラビア文字では表記されない母音等の解釈に関しては,チュニス生まれの男性,Wacel Krir さん(1969年生まれ)による朗読に依拠した。『物語集』からの文例には末尾にそのページ数 を記してある。なお,本文中において同書に言及する場合は「物語集1」と呼ぶことにする。

①と②のいずれの資料とも,1998年から2009年までの間に断続的に行った現地調査で記録 6) しかしながら,ユダヤ人の方言が記録された1956年以降のチュニスのユダヤ人社会がいかに変容 したか考慮に入れると(Cohen 1975: 3-4),ムスリム社会とユダヤ人社会を現在,言語的に分ける ことが有効かどうかは不明である。

7) ただし,チュニジアの公用語とされているのはこの方言ではなく,文語アラビア語である。

8)「古典的」というのは「いかにもチュニス方言らしい・伝統的な」という意味においてである。こ れはまた「懐かしい,古き良き」という評価をも含む。しかし,現代の若い人には理解できない古 い表現を除けば,統語的には「現代的な」チュニス方言と同じものとみなすことができる。

(5)

したものである。

資料の性質の違いについていえば,①が主として筆者の質問によって得られた資料であるの に対し,②は物語テクストからのものである。資料の性質の違いを考慮して,用例を選ぶさい には,この双方に同様の例が見いだせる場合にはできるだけその双方の例を挙げた。しかし,

①の用例しかない場合でも,その用法が物語テクストには現れない,と判断することは現時点 ではできない。ゆえに,本稿で取り上げた用例すべてがひとつの言語事象に同等に関わりがあ るという想定のもとに論を進めている。すなわち,テクストによる差は本稿では考慮しない。

3. 形態

3-1. アラビア語文語との対応

チュニス方言では文語の声門閉鎖音はほとんどの場合消失し,また二重母音-ay-は-i-となる。

(3-1) 文語 チュニス方言 ras ras 《頭》

layl- lil 《夜》

この点からすると,ayに対応する形としては,-iのほうがayあるいは-より規則的な 形式であるといえる。

また,意味の点からの対応についていえば,以下に見るようにayが特殊な役割を担うよう なったため,《もの》を意味する語として,文語において《必要なもの》を意味するħaaが その代わりに用いられるようになった(その他のマグレブ方言,マルタ語などでも同様)。

3-2. 形態音韻的解釈

チュニス方言においては単独に発音された場合に(C)VCという構造を持つ語は,たいてい の場合,形態音韻的に(C)VCCであると解釈できる。この解釈は,接尾辞のついた形や複数 形によって確証される。

(3-2) 単独形 接尾辞のついた形 複数形 [yd] /ydd/ ydd-i yddin

《手》 《私の手》

[um] /umm/ umm-i ummat

《母》 《私の母》

そこで,形態音韻的に/ay/とすべきか/ayy/とすべきかという問題が生じる(Talmoudi 1981: 121,Cohen 1975: 144では二重子音とする解釈が採用されている)。(3-2)と同じ解釈 を取るならば,/ayy/となる。しかし,後で述べるように,この語には接尾辞がつかず,ま た複数形も存在しない。つまり,/ydd/や/umm/とは異なり,2番目の子音が二重になって 出現する場合は存在しないのである。この点を考慮し,本稿では/ayy/ではなく/ay/とい う表記を採用する。なお,後段で論じる語,ħadを/ħadd/とは解釈しないのも同様の理由か らである。

(6)

4. ayの用法

4-1. 性と数

チュニス方言において名詞は男性か女性かの性を持ち,ほとんどの名詞が単数と複数の2 種(あるいは単体名詞と集合名詞と複数名詞の3種)の区別を持つ。ayは男性名詞であるが,

単数形以外の形を持たない。これは中部チュニジアの都市,スーサで話されるスーサ方言でも 同様である(Talmoudi 1981: 120)。ただし,Takrouna方言では複数形の例が報告されている。

4-2. 人称接尾辞

この言語においては,名詞は所有者を表す人称接尾辞(1人称単数・複数,2人称単数・複数,

3人称男性単数,3人称女性単数,3人称複数)をともなうことができる(3-2を参照)。 しかし,ayにはいかなる人称辞も接尾することはできない。

(4-1) *ay-na *ay-i

-1PL -1SG

この点はTakrouna方言も同様である。なお,ayに対する所有関係は,(4-4)にあるよう

に前置詞mta《〜の》によって示される。

4-3. 被修飾語となるay

Takrouna方言では,ayが文語と同じく《もの》という意味をもち,他の名詞と同じく,

定冠詞や形容詞などによって修飾される例が報告されている。チュニス方言にも同様の例があ る。(4-2)は形容詞に修飾されている例,(4-3)は定冠詞が付き,さらに指示詞によって修 飾されている例,(4-4)は定冠詞と前置詞句に修飾されている例,(4-5)は定冠詞と動詞句 に修飾されている例である。関係節に修飾されている例に関しては,後段の(5-8)を参照さ れたい。

(4-2) haða ay bahi. haða ay did.

これSG.M もの 良いSG.M これSG.M もの 新しいSG.M

「これは良いものです。これは新しいものです」

(4-3) - ay haða m-l-yaban.

DEF- もの このSG.M 〜から-DEF-日本

「これ(このもの)は日本製です」

(4-4) - ay mta-i mu bahi.

DEF- もの 〜の-1SG NEG 良いSG.M

「わたしのものは良くない」

(7)

(4-5) and - i - ay ynasb-k9).

所有の前置詞-1SG DEF- もの 似合う3SG.M.IMP -2SG

「わたしはあなたにぴったりなものを持っています」

4-4. 限定的用法

上の節で扱った例において,ayは《もの》という意味で用いられているが,すべての場合 においてその《もの》は具体的な指示対象をもつ。つまり,これらが発話された時には,話者 も聞き手もその《もの》が何であるかについては了解しているのである。例えば(4-2)の《良 いもの》とは,ブティックで試着中のジーンズについていわれているのであり,話し手は聞き 手に対して今自分が試着しているジーンズを指差しながら,「これは良いものだ」と語ってい る。(4-3)では話者と聞き手の前に何かの日本製品が置かれていることが想定できる。(4-4)

はたとえば話者は自分がもらったプレゼントについて語っているのかもしれない。そして,

(4-5)は,ブティックでの顧客と店員とのやりとりを念頭に置いて発せられた文である。

このように,具体的な事物を指し示すay,あるいは,何を指し示しているのかが,状況に より話者と聞き手に了解されているayを,対象が限定されているという意味で限定的に用い られたayと呼び,またこのような用法をayの「限定的用法」と呼ぶことにする。

4-5. 修飾語としてのay

修飾語としてayが現れる場合として,今のところ2種の例が存在する。まず,名詞kull《す べて》を修飾してkull ay《すべてのもの》(文字通りには《もののすべて》)となる例があり,

これは非常に頻用される組み合わせである。(4-6)はkull ayが動詞の目的語として,(4-7) では主語として現れている。

(4-6) arft kull ay. [290]

知る3SG.F.PERF すべて(目的語)

「彼女はすべてを知っていた」

(4-7) wfa kull ay. [46]

終わる3SG.M.PERF すべて(主語)

「すべてのことが終わった」

もうひとつの例は,比較級aqall《より小さい(もの)》を修飾して,aqall ay《些細なもの》

となるもので,これが前置詞la《〜の上に》と組み合わされて,laqall ay (<la-aqall ay)

《些細なことで》という意味になる。

9) 文語や他の方言と同じく,チュニス方言でも「〜には〜がある」「〜は〜をもっている」という所 有表現は,前置詞and《〜にある》を用いた以下のような構文によって作られる。

(所有者) + and−所有者に呼応する人称接辞 + 所有されるもの

(8)

(4-8) laqall ay, haða kassru-lu kraym-u10). [255]

些細なことで これSG.M 壊す3PL.PERF-3SG 背骨-3SG

「些細なことで,彼ら(王たち)は彼(人民)の背骨を叩き折った」

4-6. 単独で用いられるay

ayが定冠詞や修飾語を伴わずに単独で用いられることもある。

(4-9) ay yfaddd. [229]

うんざりさせる3SG.M.IMPF

「うんざりだ」(文字通りには「ものがうんざりさせる」) また,これに似た例に次のようなものがある。

(4-10) ay li-llah11). 〜に-神

「神への捧げものを(施しを求める言葉)」

(4-10)でayは前置詞句li-llahに修飾されている。その点では,すでに挙げた(4-4)と 似ている。しかし決定的な違いは(4-10)のayには定冠詞がついていないということである。

定冠詞がayにもたらす影響に関しては,後段でさらに触れる。

4-7. 非限定的用法

(4-6)から(4-10)までの例において現れたayの指し示すものは,限定的用法のayに比 べると具体性あるいは特定の度合いにおいて乏しく,漠然としている。ayのこのような用法 を,すでに定義した限定的用法と対比させ,指示対象が限定されていないという意味で「非限 定的用法」と呼ぶことにする。

非限定的用法のayのひとつの特徴は,出現する環境が決まっていることである。kullと

aqallと共起する表現,あるいは(4-9,4-10)のような定型表現においてしか,このayは現

れない。

5. ayの否定的用法

すでに見たように,ayの用法を指示対象の性質によって限定・非限定の2つに区分するこ とができた。これに対し,ayが指示対象を失う場合がある。否定環境において用いられた時 がそれであり,そのときayは「何も・ひとつも(〜ない)」という意味になる。これを「ay の否定的用法」と呼ぶことにする。

否定的用法は,その統語的環境によりさらに3つに下位区分することができる。

10) kassru-luのluは動詞の行為の対象ではなく,方向を示す。すなわち「彼(人民)に対して」。ま

たkraymはこの方言においては《うなじ》を意味するが,ここではその意味が拡大されて《背骨》

を表す。

11)名詞allaːh《神》が前置詞li-の後に来た場合,母音/i/の影響でlは非咽頭化音となる。

(9)

(1) 否定辞と共起する否定的用法。これを「非独立的否定的用法」と呼ぶことにする。

(2)否定辞の省略された否定的用法。「否定辞の省略された非独立的否定的用法」と呼ぶこ とにする。

(3) 否定辞を伴わない否定的用法。「独立的否定的用法」と呼ぶことにする。

5-1. 非独立的否定的用法

非独立的否定的用法は共起する否定辞がma-かlaのどちらかであるかによって2つに分け ることができる。

5-2. 否定辞ma-と共起する非独立的否定的用法

すでに(1-1)で見たように,チュニス方言の一般的な否定は,ma-と-/-iの共起によっ て形成される。しかし,ayが用いられて全面的な否定(もしくは強調された否定12))を表す とき,この2つの否定要素のうちの後部要素である-/-iは出現しない。

(5-1) ana ma-klit ay.

1SG NEG-食べる1SG.PERF

「わたしは何も食べなかった」

(5-2) ma- af ay fi -ð-ðlam. [344]

NEG -見る3SG.M.PERF 中で-DEF-暗闇

「暗闇の中,彼は何一つ見えなかった。」

(5-1, 2)ではayが動詞の目的語となっているが,主語もしくは前置詞の補語となること もできる。(5-3, 4)は動詞の主語の例であるが,前者では動詞の前に,後者では動詞の後に 置かれている13)。(5-5)では前置詞b-の補語となっている。

(5-3)ay ma-fad. [324]

NEG-役に立つ3SG.M.PERF

「何の甲斐もなかった」

(5-4) bda ybi ba yakl ħatta

始める3SG.M.PERF 売る3SG.M.IMPF ために 食べる3SG.M.IMPF まで

12)「なにも〜ない」という表現がつねに論理的にゼロを意味するわけではない。例えば(5-1)は本当 にまったくなにも食べていない事態と少しは食べたが話者にとってはゼロに等しい事態の双方を意 味しうる。また(5-2)では,論理的にいえば「暗闇」は見えている(つまり「暗闇以外なにも見 えなかった」)。もっとも,これは日本語の同様な表現でも同じである。

13)アラビア語とその諸方言における語順,ここではSVOとVSOの違いに関しては,Holes 1995:

203-214およびDahlgren 2009を参照されたい。

(10)

ma-tbaqqa-lu ay. [267]

NEG-残される3SG.M.PERF-3SG.M

「食べるために(財産を)売りはじめ,ついに彼には何一つ残らなくなった」

(5-5) ma- nt b-ay?

NEG-気がつく2SG.PERF 〜に-

「何も気がつかなかったの?」

ħatta《〜まで,〜さえ》がayの前に置かれると,全面的否定がさらに強調される。以下

の例において,(5-6)は(5-1),(5-7)は(5-5)に対応している。

(5-6) ana ma-klit ħatta ay.

1SG NEG-食べる1SG.PERF

「わたしはなんにも食べなかった」

(5-7) ma- nt b-ħatta ay ?[55]

NEG-気がつく2SG.PERF 〜に-

「なんにも気がつかなかったの?」

ところで,否定文においてayが現れても,そのayがつねに否定的用法であるとは限らない。

次の(5-8)では限定的に,(5-9)では非限定的にayが用いられている。

(5-8) ma-tutlub- ay lli ma-ttul-u- [308]

NEG-求める2SG.IMP- 関係詞 NEG-届く2SG.IMP-3SG.M

「お前の手の届かないものを求めるんじゃない」

(5-9) ma-klit- kull ay.

NEG-食べる1SG.PERF- すべて

「わたしはすべては食べなかった」

この2例においては,ma-と-の2つの要素が共起する否定形式が取られている。これに よれば,否定文において-と共起できないのは否定的用法のayのみに見られる特徴であり,

他の用法ではそうではないということがわかる。

5-3. 否定辞laと共起する非独立的否定的用法

否定辞laが反復して用いられ「〜も〜もない」という意味を表す構文において,構文の締 めくくりとなる最後のlaの直後にay(あるいはħatta ay)が置かれる。

(5-10) la amma la sid-ha la ħatta ay. [24]

NEG 存在の副詞 NEG 主人-3SG.F. NEG

「彼女の夫も誰もいない」

(11)

(5-11) u waħd-u ma-amma ħad la akkaya, la ba ħamba, la

そして ひとり-3SG.M. NEG存在の副詞 だれも NEG 訴人 NEG(役人の名称)

ay.[160]

「そして彼ひとりだけで,訴人もバーシュ・ハーンバも誰もいないのだった」

次のように,同じような構文であるものの否定辞laがħatta ayの前に現れない場合もある。

これは,次節に述べる否定辞の省略された非独立的用法とみなすことができる。

(5-12) ana la-ni ustað, la-ni tbib, ana ħattaay.

1SG NEG-1SG 教師 NEG-1SG 医者 1SG

「わたしは先生でも医者でもなんでもない」

ちなみに,同様な構文においてayの代わりにwaluが用いられる例が「物語集1」に1例 だけある。

(5-13) ra-ni la ħatt fi - ha la sla la walu. [424]

のだ14)-1SG NEG 置くSG.M.AP 〜の中-3SG.F NEG 品物 NEG

「その中にはわたしは品物も何も入れていないのです」

意味としてはayの場合と同じである。このwaluはアルジェリア方言,モロッコ方言にお いてチュニス方言のayとほぼ同義で用いられる語であり,チュニス方言では通常用いられな い(アルジェリア方言ではGrand’Henry 1972: 164, Marçais, Ph. 1956: 592,モロッコ方言で はHarrell 2004: 153,154)。チュニス方言のテキストにこのwaluが現れた理由を考察するに,

この発言者が異国のスルタンであることが関係しているようだ。すなわち,話し手は外国人の 発言に他方言の要素をあえて取り入れることで,その異国性を強調したのであろう。

5-4. 否定辞の省略された非独立的否定的用法

否定辞を省略されてayはそのまま,あるいはħattaとともに用いられて否定的な返答とし て用いられる。

(5-14) A: kla-i ay15)? B: ay.

食べる3SG.M.PERF-疑問 もの

A「彼は何か(ものを)食べた?」 B「何も」

14) ra-は動詞ra《見る》に由来する不変化辞。人称辞を常に伴って文の先頭におかれ,その文が話

者にとって間違いのない事実であることを表すモダリティ表現を作る。ここでは訳として「〜のだ」

を充てた。

15)このayは非限定的用法。

(12)

(5-15) A: klit ħaa? B: ħatta ay.

食べる2SG.PERF もの

A「君は何か(ものを)食べた?」 B「何も」

(5-14, 15)のBはぞれぞれ次の文が省略されたものと考えることができる。

(5-14-a) ma-kla ay.

NEG-食べる3SG.M.PERF 「彼は何も食べなかった」

(5-15-a) ma-klit ħatta ay.

NEG-食べる1SG.PERF 「わたしは何も食べなかった」

同様な例を以下に挙げる。

(5-16) a waqt l- ur, ma-abu ay16). 来る3SG.M.PERF 時間 DEF-昼食 NEG-持ってくる3PL.PERF

qalt-lha ay ya-mm-i.[152]

言う3SG.F.PERF-3SG.F. 〜よ-母-1SG

「お昼の時間が来たが,彼らは何も持ってこなかった。彼女は言った。『何にもよ,お母さん』」

(5-17) qal ay, ma-nnam ay17).[55]

言う3SG.M.PERF NEG-できる1SG.IMP

「彼はいった。『なんにも,なんにもできない』」

この2つの例では,返答としてのayに何を補足すべきかがその前(5-16)とその後(5-17)

に明瞭に示されている。

この用法のayは,すでに見た非独立的否定的用法のそれと同様にħattaで強調することが できる。

(5-18) A: and-i-i alta? B: ay. / ħatta ay.

所有-1SG-疑問 間違い

A「わたしにまちがいがある?」 B「ぜんぜん」

次は「物語集1」から取られた例だが,この返答をħatta ayと変えることも可能だという。

16)このayは否定辞ma-と共起する非独立的否定的用法。

17)このayは否定辞ma-と共起する非独立的否定的用法。

(13)

(5-19) ma-ħassit ay fi -l-lil? qal-lu : ay. [55]

NEG-感じる2SG.PERF 〜に-DEF-夜 言う3SG.M.PERF-3SG.M

「夜に(人の気配を)何にも感じなかったのですか? 彼は答えた。『何にも』」

上記のような否定辞の省略された非独立的否定的用法に由来するとみられる用法に,「何で もないもの,つまらないもの」を意味するものもある。

(5-20) huwwa ħatta ay.

3SG.M

「彼はつまらないヤツ(もの)だ」

5-5. 独立的否定的用法

否定辞の省略された非独立的否定的用法と同じく返答に用いられるが,この用法のように否 定辞,動詞,名詞などで補うことのできない独特なayの用法がある。これを独立的否定的用 法と呼ぶことにする。典型的な例は次のようなものである。

(5-21) daru bi-ha, laħlħu bi-ha. qalt: ay. [37]

取り囲む3PL.PERF 〜に-3SG.F. 懇願する3PL.PERF 〜に-3SG.F 言う3SG.F.PERF

「(水を求めて)彼らは彼女を取り囲み,懇願したが,彼女は『ダメ』といった。」

この例におけるayは訳で示したように相手の懇願に対する拒絶を表し,「何もなかった」「何 も〜しなかった」という形でこれを補うことはできない。あるいは,彼女は「いかなる許しも 与えなかった」「まったく同意しなかった」「ひとつも承諾しなかった」等々,さまざまに解釈 することができ,その意味で,ひとつの解釈しか許さなかった否定辞の省略された非独立的否 定的用法とは異なる。すなわち,このayは否定辞の省略を前提とするayとは異なるay な のであり,言い換えれば単体で否定を表すayなのである。この独立的否定的用法は,少なく ともチュニス方言では稀ではないにもかかわらず,これまでの研究で明確に報告されてはいな いようである。したがって,この用法が特殊な例外的なものではなく,ひとつの用法として扱 えることを示すため,同様な例を複数挙げる。

(5-22) xalli-ni lxxra ntammam-lu ars mta-u

させる2SG.IMPR -1SG せめて 完遂する1SG.IMP-3SG.M 結婚式 所有-3SG.M

laxir. qal-lu: ay. [360]

首尾よく 言う3SG.M.PERF-3SG.M

「『せめて彼の結婚式をわたしに首尾よく終えさせてくれ。』だが,彼は言った。『ダメだ』。」

(5-23) ya wld-i kifma ab-k rabb-i

〜よ 息子-1SG 〜のように 持ってくる3SG.M.PERF-2SG 主-1SG

(14)

fi -s-swab, l-marrat l-uxrina yib-k

中に-DEF-正しさ DEF-回PL DEF-別のPL.F 持ってくる3SG.M.IPM-2SG

fi  haði. qal: ay. [423]

中に このSG.F 言うP3SG.M.ERF

「『おお,あんた (わが息子よ[ここでは夫に対する呼びかけ]),神様があんたを 正しく導いてくださったように,これからも導いてくださるよ』(という妻に対し て)彼は言った。『黙れ』」

(5-24) qalt-lu wlid-i ana ħabbit.

言う3SG.F.PERF-3SG 息子-1SG 1SG 好む1SG.PERF

qal: ay, wallah ma-ysir-ha18). [283]

言う3SG.M.PERF 決して NEG-起きる3SGIMP-3SG.F

「 (自分の息子に自分を奴隷市場で売りに出させているところをおじに見られて) 彼女は彼に言った。『ああ,あんた(わが息子よ[ここではおじに対する呼びかけ]), わたしが望んだのよ』。彼(おじ)は言った。『ありえない。決してあってはなら んことだ』」

(5-25) qal-lu: barra ya xu-ya lli and-k

言う3SG.M.PERF-3SG.M さあ 〜よ 兄弟-1SG 関係詞 所有の前置詞-2SG

yakfi -k, takl b-l-marfa w 十分である3SG.M.IMP-2SG 食べる2SG.IMP 〜で-DEF-スプーン そして

ma-yufa-. qal-lu: ay. [215]

NEG-終わる3SG.M.IMP- 言う3SG.M.PERF-3SG.M

「 (富のありかを教えろとしつこく尋ねるどん欲な)彼(兄)に向かって彼は言っ た。『さあ,お兄さん,あなたが持っているもので十分です。スプーンで食べても 無くならないほどある』。彼(兄)は彼に言った。『黙れ』」

いずれの場合においても,このayは相手の意見や要求を言下に否定・拒絶する表現として 用いられている。

おそらくこの返答としての用法に由来するものであろうが,この独立的否定的なayはまた,

情景の描写に用いられて,事態がまったく進展しないことを表す。これもまた,否定辞や動詞 で補うことができない。

18) wallah ma-《神にかけて〜ない》という強調的な否定構文においては,否定の後置要素-は現

れない。また,3人称単数女性人称接辞-haはこの例文においては状況を表している。

(15)

(5-26) ðhur-lu yfayyq-u, ya naym, ya naym, 思いつく3SG.M.PERF-3SG.M 起こす3SG.M.IMP-3SG.M 〜よ 眠るSG.M.AP

l-axr ay, baqi yxr.[345]

DEF-他のSG.M 〜のままSG.M.AP 鼾をかく3SG.M.IMP

「彼を起こそう,と彼はひらめいた。おい,寝ている方,おい,寝ている方よ。

ところが相手は全然。高鼾のまま。」

この例においてayは相手(寝ている人)の態度がまったく変わらないことを表している。

「まったく返事をしなかった」とも「まったく身じろぎしなかった」とも「ぜんぜん起きなかっ た」のいずれにも,そしてそのすべてにも解釈でき,ひとつの否定文に置き換えることができ ない。同様な例を挙げる。

(5-27) yalqa-h msakkar, wquf

見つける3SG.M.IMP-3SG.M 閉めるSG.M.PP 立つ3SG.M.PERF

mtħayyr, awd dazz, farks

考えるSG.M.AP 再びする3SG.M.PERF 押す3SG.M.PERF 探す3SG.M.PERF

ba yħll, ay, l-bab msakkar. [62]

〜するための何か 開く3SG.M.IMP DEF-ドア 閉めるSG.M.PP

「彼はそれ (ドア)が閉まっているのに気がついた。立ちすくんで思案し,もう 一度押し,開けるための手段を探しまわったが,ダメ。ドアは閉まったままだ」

(5-28) mnudwika rat, ki if, rat-lhum

翌日 戻る3SG.F.PERF 同じ 戻る3SG.F.PERF-3PL

and l-ul, f-l-iyya ay. [173]

〜頃に 正午 〜に-DEF-夕方

「翌日彼女は戻ってきたが,相変わらずだった。お昼と夕方に彼らのところに戻っ てきたが,何も(新たな動きは)なかった」

5-6. 否定辞の省略された非独立的否定的用法と独立的否定的用法との違い

否定辞の省略された非独立的否定的用法と独立的否定的用法の違いについては,前節で後者 のayを否定文に置き換えることができないこと,そして意味の面からいえば後者のayには 多様な解釈が成り立ちうることを述べた。

これ以外にも重要な違いを2点指摘することができる。ひとつは意味に関するものである。

否定辞の省略された非独立的否定的用法ではayは《何でもないもの》という否定的な形では あるが,それが何かの《もの》を指し示していた痕跡が残されていた。それが明瞭にうかがえ るのは(5-20)の例である。しかし,独立的否定的用法のayからはそのような指示性は跡形 もなく失われてしまっている。これを別の観点から言い直すならば,否定辞の省略された非独

(16)

立的否定的用法のayはかろうじて名詞であるとみなすことができるが,独立的否定的用法に おいてはその名詞としての性質も失われてしまっているようにみえる。

2番目の重要な違いはひとつ目のものに比べてずっと明示的なものである。否定辞の省略さ れた非独立的否定的用法では,ayはħattaによって強調されることができた(5-18, 19)。し かし,次の例で示したように独立的否定的用法のayの前にはħattaを置くことはできないの である。

(5-29) A: ça va19), tawwa? B: ay. B: *ħatta ay.

大丈夫 今

A「(コンピュータの調子を尋ねて)もう大丈夫?」 B「ダメ」

同様に例えば(5-27)のayにħattaを付けると,それは非文となる。

(5-27-a) *yalqa-h msakkar, wquf mtħayyr, awd dazz, farks ba yħll, ħatta ay,

l-bab msakkar.

5-7. 補足1

waħd《ひとつ,ひとり》と語源を同じくするħadは,ただひとつayとよく似た振る舞 いをする語である。名詞として《ひと,あるひと》を表すほか,否定文では《誰も〜ない》と いう表現を作る。

(5-30) ma-rit (ħatta) ħad.

NEG-見る1SG.PERF

「わたしは誰も見なかった」

ħadはayと同じく否定辞の省略された非独立的否定的用法ももつが,ayのように単独で は用いることはできず,つねにħattaとともに用いられなくてはならない。

(5-31) A: kun a? B: ħatta ħad. *ħad 誰か 来る3SG.M.PERF

A「誰か来た?」 B「誰も」

また,ħadには独立的否定的用法もないようである。

5-8. 補足2

アルジェリアのDjidjelli方言を記述したMarçais, Ph. 1956: 601にはayとħadに対応す る語による省略された非独立的否定的用法が記されているが,独立的否定的用法にあたる例の 記載はないようである。

19)フランス語からの借用。

(17)

6. ay-/-iとの関係

すでに述べたようにayと-/-iは語源を同じくしている。そのため方言によっては両者が 異形態の関係にあるものとみなせる場合もあるようである。しかしながら,チュニス方言にお いてはこの両者はまったく別の語として機能している。

6-1. 交換可能性

チュニス方言においてayは,同根語である-/-iと互いに交換することはできない。

(6-1) ma-amma ħattaay. *ma-amma ħattai. NEG-存在の副詞

「なんにもない」

(6-2) ma-kla-. *ma-kla ay20). NEG-食べる3SG.M.PERF

「彼は食べなかった」

しかし,マルタ語とモロッコ方言では事情が異なる。

まずマルタ語から見ると,ayに対応するマルタ語語彙はxejn [eyn]21)であり,-にはx[]

が対応している。Aquilina 1987: 1538, 1557, 1568-1569の記述によれば,マルタ語において はxejnは否定においてしか用いられず,またxと交換可能であるという。

(6-3) ma kielx (= ma kiel xejn) He did not eat. (マルタ語) kiel 食べる(完3男単)「彼は食べなかった」

Harrel et Sobelman 1966:150によれば,モロッコ方言においてもayは否定とともにしか

用いられない。そして,その用法には2種あり,そのうちひとつはチュニス方言と同じく「何 も〜ない」という構文を構成する。だが,もうひとつの「否定辞の-, -iの強調形」という用 法はチュニス方言にはない。次のような例が記されている。

(6-4) ma a ay (He didn’t come) (モロッコ方言)

aは動詞「来る」の完了形3人称男性単数。すなわち「彼は来なかった」

同じ表現をチュニス方言でも作ることはできるが,その意味はモロッコ方言のそれとはまっ たく異なる。

20)「彼は食べなかった」ではなく「彼は何も食べなかった」を意味するのならば非文とはならない。

21)語末の-nは,かつての格語尾(タヌウィーン)の名残り。

(18)

(6-5-a) huwwa ma-a ay.

彼 NEG-来る3SG.M.PERF

「あいつは使いものにならなかった(文字通りにいえば,彼はどこにも来なかった)」

(6-5-b) huwwa ma-a-.

彼 NEG-来る3SG.M.PERF-

「彼は来なかった」

すなわち,チュニス方言におけるayが動詞のなんらかの補語22)として理解されているの に対して,モロッコ方言のayは--やiと同じく補語としてはみなされていないのである。

これはマルタ語とモロッコ方言のayが,否定の後部要素の-と同様に文法化され,名詞的 性質を失っていることに起因している。

ここでチュニス方言を例にとり否定後部要素の-が文法化されて,名詞的性質を失ってい ることを示す。すなわち,以下の例に見られるように,通常の否定文において,後部要素-

は目的語の有無にかかわりなく用いられるのである。

(6-6) ma-klit-.

NEG-食べる1SG.PERF-

「わたしは食べなかった」

(6-7) ma-naraf- wh-u kifnnu. [263]

NEG-知る1SG.IMP- 顔-3SG.M どのようか

「わたしは彼の顔がどのようだか知らない。」

ところが,チュニス方言のayはモロッコ方言とマルタ語の対応語とは異なり,名詞的性質 を保持していると考えられる。限定的用法と非限定的用法においてはこの点は自明であるが,

否定的用法,より正確にいうならば非独立的否定的用法についても少し詳しく見てみよう。

6-2. 非独立的否定的用法のayのもつ名詞的性質

チュニス方言のayは,これが動詞の目的語として用いられた場合,他の目的語とともには 用いることはできない。

(6-8) ma-klit ay.

NEG-食べる1SG,PERF

「わたしは何にも食べなかった」

22)動詞a《来る》は,対格人称接辞がついた場合,目的地を表す。

a-ni nuːm 「わたしは眠い(文字通りには,わたしに眠気が来た)」

-sg 眠気

 (6-5-a)におけるayが動詞の目的語として解釈できるかどうかは,現時点でははっきりせず,

ここでは「動詞の補語」と曖昧にしておく。しかし,(6-5-a)のayが単なる否定表示ではないこ とは(6-5-b)との比較により明らかである。この違いは後に見るようにayのもつ名詞的性質に 起因すると考えられる。

(19)

(6-9) *ma-klit-hum ay.

humは3PLの対格接辞

「〜をまったく食べなかった」という場合は次のような表現となる。

(6-10) ma-klit-hum- b-l-kull.

NEG-食べる1SG.PERF-3PL- まったく

「わたしはそれらをまったく食べなかった」

さらに,自動詞文においてもayを用いることはできない。

(6-11) *ma-rawwaħ ay.

(6-12) ma-rawwaħ- be-l-kull.

NEG-帰る3SG.M.PERF- ぜんぜん

「彼はぜんぜん帰らなかった」

すなわち,否定文において動詞の後に用いられるayはあくまでも目的語としての働きを失 わないのであり,そのため既に目的語がある場合(6-9)や,自動詞の場合(6-11)には現れる ことができない。これは非独立的否定的用法のayが名詞的性質をもっているからなのである。

7. 名詞性という観点からの分析

これまで論じてきた通り,ayの限定的用法,非限定的用法,否定的用法のうち非独立的用 法(否定辞の省略された非独立的用法も含む)においては,ayを名詞として認定することが 可能である。しかしながら,その指示内容や統語的特性においてこれらの3つの用法のayは 通常の名詞と異なっており,またこの3つの用法の間でも違いがある。そこで,名詞性という 観点から,これら3つの用法を詳しく調べてみることにする。

この名詞性とは,より具体的にいえば名詞としての典型性のことであり,この典型性には意 味的側面と統語的側面との2つの側面がありうる。

まず,意味的側面から見た名詞の典型性は,その名詞の指示のありように関わるものであり,

典型的な指示のありようから外れる名詞は,その名詞性(名詞としての典型性)が低いと考え られる。

いっぽう,統語的側面から名詞の典型性は「ある言語において名詞が典型的に持つ諸指標が あり,ある名詞がそれらの名詞的諸指標を多く共有すればするほど,名詞としての典型性は強 まり,その特徴が欠ければ欠けるほど,その典型性は弱まっていく」と定義できよう。

7-1. 意味的側面からみたayの名詞性

すでに行った用法の分類のうちに,それぞれのayの指示のありようが示唆されている。す なわち,限定的(用法),非限定的(用法),否定的(用法)というのがそれで,限定的用法の

ayは話者と聞き手の双方が了解している限定された具体的個別的な事物を指し示している。

(20)

いっぽう,非限定用法のayはもの一般を漠然と指し示しており,限定的用法のayのように 限定されていない。

通常の名詞が具体的個別的な指示内容をもつことを考えれば,限定的用法のayのほうが非 限定的用法のそれよりも,名詞としての典型性が高いとみなすことができる。

いっぽう,否定的用法のayはすでに具体的な指示対象を失っており,あえてそれを表現す るならば《何でもないもの》を指示しているとしかいえない。ゆえに,意味的側面からいえば 名詞性はほとんど失われており,3つの用法の中でもっとも名詞性が低いといえる。

7-2. 統語的側面から見たayの名詞性

 チュニス方言において名詞は典型的に次のような6つの統語的指標をもつと考えられる。

①性 男性・女性どちらかの性をもつ。

②数 単数形と複数形の区別をもつ。あるいは単体形,集合形,複数形の区別をもつ。

③接辞 人称接尾辞が付加される。

④冠詞 定冠詞を付加される。

⑤被修飾語 被修飾語となる。

⑥修飾語 修飾語となる。

限定的用法,非限定的用法,非独立的否定的用法の3つの用法について,それぞれの用法で どの指標が満たされているかを表にしたのが次の表1のBである。なお,Aは7-1で論じた 意味的側面からみたayの名詞性の違いを併せて表にしたものである。

これをまとめると,ayは限定的用法,非限定的用法,非独立的否定的用法の順に意味的,

統語的な名詞性を失っていくということになる。

要するにayの用法はその名詞性の強弱に連動している。これを如実に示すのが既出の(5-8)

の例である。この例においてはayが関係節に修飾されている,すなわち限定的用法であるた め,否定文にあっても否定的用法とは解釈されずに否定後部要素-とともに現れているので ある。意味的側面と統語的側面によって定義された名詞性の高低によって,ayの3つの用法 ははっきりと境界づけられているといえよう。

1(+はその特徴の存在を,−はその逆を表す)

指標 典型的な名詞 限定的用法 非限定的用法 非独立的否定的用法

A 名詞性 高い 典型的な名詞より 低い

限定的用法より

低い もっとも低い

指示対象 具体的・個別的 限定的 非限定的 なし

B

①性

②数

③接辞

④冠詞

⑤被修飾語

⑥修飾語

(+)

 +23)

23)例文(5-3, 4)において男性名詞として動詞と呼応している。

(21)

7-3. 否定的用法のayの非典型性

名詞としての典型性の高低がayの用法の違いに関わっているのならば,そのayの用例の 中には名詞としては非典型的で,ay特有の特徴があってもおかしくはない。名詞としてはもっ とも非典型的な非独立的否定的用法のayにそのような用例がある。

非独立的否定的用法のayがħattaによって強調されうることを(5-6)と(5-7)で述べた。

このħattaはまた,否定文において普通名詞の前について《ひとつも〜ない》という表現を

作る。なお,この場合も否定後部要素の-は現れない。

(7-1) ma-nakl ħatta ħaa. (= ma-nakl ħatta ay.) NEG-食べる1SG.IMP もの

「わたしは何も食べない」

(7-2) ma-fhmt ħatta klma.

NEG-わかる1SG.PERF 言葉

「わたしにはひと言もわからない」

しかしながら,否定的用法のayとは異なり,この2例においてhattaを省くことはできな い(なお,Harrell 2004:154によればモロッコ方言では次の(7-1-a, 7-1-b)のような否定文 は非文とはならず,その名詞の表す範疇すべてを否定する範疇否定[Categorical Negative]

を作るという)。

(7-1-a) *ma-nakl ħaa.

(7-2-a) *ma-fhmt klma.

さらに,普通名詞を否定辞を省略した否定的用法で用いることもできない。

(7-3) A: fhmt? B: ħatta klma la. *klma la.

わかる2SG.PERF 言葉 NEG

A 「わかった?」 B「ひと言も(わからなかった)」

すなわち,否定的用法のayは,一般の名詞とは異なる振る舞いをするのである24)8. 統語的関係性という観点からの分析

ここでは独立的否定的用法を取り上げ,この用法と非独立的否定的用法との違いが統語的関 係性にあることをまず述べる。さらに,この統語的関係性という観点から,他の用法をも含め 24)興味深いことに,マルタ語ではmkien《場所》がayと同じように非独立的否定的用法で用いられる。

Imkien ma ġġarraf. (Borg and Azzopardi-Alexander 1997: 91) nowhere neg. was-destroyed-3m.sg.

‘No place was destroyed’

(22)

たayの用法の全体的な階層性を示す。

8-1. 統語的関係性

独立的否定的用法のayの特徴は,それがいかなる語とも結びつかず,まったく単独で用い られることにある。いっぽう,否定辞の省略された非独立的否定的用法のayは少なくとも

ħattaと結びつきうる。すなわち,両者の用法の違いをayの拡張性に求めるならば,非独立

的否定的用法のayは独立的否定的用法のそれに比べて拡張性に富んでいると表現することが できる。

ここでいう拡張性とはある語が他の語と結びつく可能性の大小を指し,他の語との統語的関 係に置かれるという意味で,統語的関係性ともいうことができる。とはいえ,この統語的関係 性とは,単なる語的拡張のみを指すのではなく,文においてどのような統語的機能を担いうる か,どのような文において現れうるか,などの統語的関係の選択肢の幅をさす。

そこで,この統語的関係性という概念によって否定的用法のayを次の表2のように整理す ることができる。

8-2. 統語的関係性からみたayの用法の階層性

統語的関係性といっても,否定辞の省略された非独立的用法と独立的否定的用法のと違いで

はħattaの有無でしかないが,比較をayの他の用法にも拡大してみると,この統語的関係性

という概念がさらに有用であることがわかる。

すなわち,独立的否定的用法が統語的関係性をまったくもたないのに対して,限定的用法,

非限定的用法,非独立的否定的用法のayは,否定辞の省略された非独立的否定的用法と同じ くそれをもつが,ayの統語的関係性,ayが他の語と結びつく統語的自由度は用法ごとに異 なっているのである。

限定的用法においては,ayはほとんどあらゆる語と自由に結びつくことができるようであ り,また主語や目的語,あるいは被修飾語としての役割を担うことができる。その点からいうと,

その自由度は高い。それに比べて非限定的用法ではayが結びつくことのできる語は非常に限 られ,またその関係も限られたものとなる。これは自由度が低下したということであるが,別 の言い方をすれば,表現の定型性が増したということでもある。非独立的否定的用法になると さらにその定型性は強まり,ayは否定辞ma-とlaを除けばħattaとしか結びつかなくなり,

それと同時に肯定文において現れるという重要な選択肢を失うのである。とはいえ,それ以前 の2つの用法と同じように,主語あるいは目的語,前置詞の補語としては統語的関係に置かれ うる。

そして,この否定辞が省略された非独立的用法ではayと結びつく可能性があるのはħatta

一語のみとなり,それがもつ主語あるいは目的語としての統語的関係性も,否定辞の省略に伴っ て動詞などの他の文要素が省略されることによって潜在的なものとなる。そして,最後の独立 的否定的用法に至って,ついにいかなる語も結びつきえなくなり,統語的関係性を一切失うの

2

否定辞の省略された

非独立的否定的用法 独立的否定的用法

ħattaの付加 できる できない

統語的関係性 有 無

(23)

は,すでに見た通りである。

そこで,この統語的自由度(あるいは統語的関係性の選択肢の幅)にしたがって,これまで 述べたayの用法を次の表3のようにまとめることができよう。

この表3,そして表1からも明らかなように,ayの用法は,一元的に記述できるようなま

とまった統一体としてあるのではなく,①統語的意味的に定義される名詞性の度合いと,②統 語的関係性の有無もしくはあり方によって特徴づけられる5つの用法に分けられる階層性を有 している,ということになる。これが本論文の結論である。

9. 文法化との関係

独立的否定的用法のayは,それが名詞性を失い,またいかなる語とも結びつかずに単体で 発せられるほかないという点で,品詞でいうならばすでに名詞ではなく,一種の感嘆詞26)と みなすことすらできる。そこで,品詞という観点からayの5段階の用法に従って次のような 分類も可能である。

普通名詞(限定的用法と非限定的用法) 否定名詞(非独立的否定的用法) 感嘆詞27) (独立的否定的用法)

本稿で述べた5つ用法の階層は,あくまでも共時的な資料をもとに論理的に構成したもので あり,これをそのまま通時的に解釈すること,つまり,これらの階層の順序がayの実際の通 時的発展段階を反映し,文語のay-がこの方言において独立的否定的用法のayへと連続的・

一直線に発展したと考えることとは別物である。

また,すでに3-1で触れたように,文語のay-のチュニス方言における対応形としては-i

のほうが規則的であり,ayは例外的な形式である。そして,名詞としてのayがこのような 例外的な形式を保つべき特別な理由もない。そこで,この音韻的な不規則性ゆえに,このay が文語もしくは他方言から借用されてきた語であるという可能性もやはり考慮に入れる必要が ある。この可能性には否定名詞としてのayの借用という場合も含まれ,したがって,普通名 詞>否定名詞>感嘆詞という通時的発展については,少なくとも本稿で利用した資料のみでは 十分に確証はできない。つまり例えば否定名詞として借用されたayが文語の影響により普通 名詞としても使われるようになったという可能性は今のところ否定はできないのである28)

しかしながら,否定名詞>感嘆詞という発展に関しては,後者の用法が前者のそれを前提と

3

限定的用法 非限定的用法 否定的用法25)

非独立的 省略・非独立的 独立的

統語的関係性 有 有 有 有 無

統語的自由度 自由度高い 表現の定型性増す 否定辞とħattaのみ ħattaのみ なし

25)非独立的否定的用法と省略された非独立的否定的用法との間には本質的な違いはない。

26) Singer 1988: 723-738ではAusrufとしてさまざまな感嘆詞が集められている(ただし,ayは含ま れていない)。

27)感嘆詞がひとつの文法範疇をなしうるか,という問題に関しては後段の議論を参照されたい。

(24)

していることから,論理的にも通時的にも前後関係にあると見ることができる。すなわち,こ の発展においては,名詞から感嘆詞という文法的範疇にかかわる変化が生じているのであり,

こうした観点において,このような範疇的変化をひとつの特徴とする文法化(grammaticaliza-

tion)との関連についても論ずる必要が出てくる。

文法化とは次のように定義される。

[G]rammaticalization as the change whereby lexical items and constructions come in certain linguistic contexts to serve grammatical functions and, once grammaticalized, continue to develop new grammatical functions. (Hopper and Traugott 2003: xv)

そして,この現象に関しては次のような4つの動きが指摘されている(Heine and Kuteva 2002: 2)。

(a) desemanticization (or “semantic bleaching”) - loss in meaning content, (b) extension (or context generalization) - use in new contxts,

(c) decategorialization - loss in morphosyntactic proparties characteristic of lexical or other less grammaticalized forms, and

(d) erosion (or "phonetic reduction") - loss in phonetic substance.

さらに,この文法化のひとつの典型として次のような文法性の変化傾向cline of grammaticality

(Hopper and Traugott 2003: 7)があることが指摘されている。

content item > grammatical word > clitic > infl ectional affi x

つまり,総じていえば,文法化とは語彙的な意味内容を持つ語が,語彙的な意味を失ういっ ぽう文法的な意味を獲得し(desemanticization,Hopper and Traugott 2003: 98も参照),そ れとともに使用域が拡大し(extension),また本来属していた主要な文法範疇から副次的な文 法範疇へと移行する過程であり(decategorialization, Hopper and Traugott 2003: 107も参 照),それにともなって音形が縮小する過程である(erosion)。

文法化をこのような定義において理解する場合,ayの否定名詞>感嘆詞という発展がただ ちにこれに当てはまらないということがわかる。音形の減少が起きていないことは除外すると しても(また,これらの条件のすべてを満たす必要もないので),ayの否定名詞>感嘆詞と いう発展においては,もしこれを文法化と認めるのならばayがいったいどのような文法的意 味を獲得し,どのように使用域を拡大し,どのような文法範疇へと移行したのかがはっきりと

28)例えばフランス語のrienに本稿で言う限定的用法と非限定的用法,つまり普通名詞としての用法 が存在しないことも,普通名詞としてのayの位置づけにおいて考慮に入れるべきかもしれない。

しかしながら,ラテン語のrem(rēs《もの》の対格>rienという発展を,ayのそれと並行するも のとして捉える見方(Rubin 2005: 51)は,rienとチュニス方言のayの用法が一部でしか重なり 合わない以上,少なくともこの方言においては部分的にしか当てはまらないのではないかと思われ る。なお,rienとの並行関係に関してRubin 2005: 51で触れられているOblerの研究,Refl exes of the Classical Arabic šay’un ‘ ing’ in the Modern Dialects: A Study in Patterns of Language Change. Ph.D. diss. University of Michigan(1975)は未見である。

参照

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