第5章スピーチレベル・シフト:談話レベルからの分析
「スピーチレベル・シフト」は、発話文末の「です/ます」体と「司且[hayyo]/曾 月叶[hapnita]」体のような「敬体(P)」のスピーチレベルから「だ/である」体と「司
[hay]/尋亡}[hanta]」体のような「常体(N)」のスピーチレベルへ、あるいは、その逆 の方向への切り替えのことを指す。 「スピーチレベル・シフト」という談話レベルか
ら捉えたスピーチレベル選択の動きについて分析することによって、ディスコース・
ポライトネスという観点からの敬語・スピーチレベル使用と「スピーチレベル・シフ ト」という動きの機能がより明らかになると考えられる。
本章では、5.1節で「スピーチレベル・シフト」の分析項目について述べ、5.2節で は、 「スピーチレベル・シフト」の分析項目に対する筆者とセカンドコーダーとの
「評定者間信頼性係数(Cohen s Kappa)」の結果を示す。次の5.3節では日本語と韓国 語それぞれ、べ一スの性別、対話相手の性別・年齢という要因別にその分析結果を示
し、考察を行う。最後に5.4節で本章のまとめをする。
まず、以下の5.1節でスピーチレベル・シフトの分析項目を述べる。
5.1スピーチレベル・シフトの分析項目
ここでは「スピーチレベル・シフト」と「ポライトネス効果」という2っの観点か
ら分析する。
5.1.1スピーチレベル・シフト
「スピーチレベル・シフト46」は、発話文末のスピーチレベルで判断する。その際、
談話におけるスピーチレベルの基本状態を同定した後、有標行動に着目してコーディ ングを行う。例えば、社会人初対面会話のように、スピーチレベルにおいて「敬体
(P)」が無標行動である場合、有標行動であると見なされる「常体(N)」が発話文末 に表れたところに着目し、その前後を見て、 「敬体(P)」から「常体(N)」へのシフ
トは「Downシフト(D)」として、また「常体(N)」から「敬体(P)」へのシフトは「U pシフト(U)」としてコーディングを行う。また、 「常体(N)」から「常体(N)」への ものについても「Noシフト(N)」としてコーディングを行う。一方、親しい友達同士 の会話のように、スピーチレベルにおいて「常体(N)」が無標行動である場合には、
有標行動であると見なされる「敬体(P)」が発話文末に表れたところに着目し、その 前後を見てコーディングをすることになる。その際は、 「敬体(P)」から「敬体(P)」
46「スピーチレベル・シフト」の分析項目の内容は、筆者も関わった宇佐美研究室の博 士課程共同プロジェクトの一環として作成したものから抜粋してまとめてある。
へのものを「Noシフト(N)」としてコーディングを行う。
「スピーチレベル・シフト」のコーディングをする際、有標行動となるスピーチレ ベルの前後のスピーチレベルが「敬体(P)」や「常体(N)」ではなく、 「丁寧度を示 すマーカーのない発話(NM)」が出る場合がある。 「丁寧度を示すマーカーのない発 話(NM)」は、文字通りに丁寧度を示すマーカーがなく、そのスピーチレベルが分か
らないため、シフトの対象とせず、該当の有標行動となるスピーチレベルともっとも 近い「敬体(P)」や「常体(N)」をシフトの対象とする。なお、実際のコーディング の際には、その前後のシフト関係を、シフトされた発話が「相手(lnterlocutor)」の発 話からのシフトか「自分(Self)」の発話からのシフトかという観点も取り入れられる。
「スピーチレベル・シフト」は大きく「Downシフト(D)」、 「Upシフト(U)」、
「Noシフト(N)」の3つの分析項目に分けられ、細部的には「相手からのDownシフト
(DI)」、 「自分からのDownシフト(DS)」、 「相手からのUpシフト(UI)」 「自分か らのUpシフト(US)」、 「相手からのNoシフト(NI)」、 「自分からのNoシフト
(NS)」の6つの分析項目に分けられる。 以下の表44に日本語と韓国語における「スピ ーチレベル・シフト」の分析項目をまとめる。
表44「スピーチレベル・シフト」の分析項目
分析項目 日本語 韓国語
D
DI: 「です/ます」体の「敬体(P)」から 「司皇[hayyo]/ 脅L}τ斗[hapnit Down−shift from Interlocutor 「だ/である」体の「常体(N)」へのシ a]」体の「敬体(P)」から「司[ha フトで、当該のシフトが相手の発 y]/尋叶[hanta]」体の「常体(N)」話からのシフト へのシフトで、当該のシフトが相手
の発話からのシフト
DS: 「です/ます」体の「敬体(P)」から 「司L且[hayyo]/ 草}斗t斗[hapnit Down−shift from Self 「だ/である」体の「常体(N)」へのシ a]」体の「敬体(P)」から「司[ha フトで、当該のシフトが自分の発 y]/亘}1斗[hanta]」体の「常体(N)」
話からのシフト へのシフトで、当該のシフトが自分
の発話からのシフト
u
UI: 「だ/である」体の「常体(N)」から 「司[hay]/量亡}[hanta]」体の Up−shift from Interlocutor 「です/ます」体の「敬体(P)」への 「常体(N)」から「司皇[hayyo]/シフトで、当該のシフトが相手の発 脅L1叶[hapnita]」体の「敬体 話からのシフト (P)」へのシフトで、当該のシフトが
相手の発話からのシフト
US: 「だ/である」体の「常体(N)」から 「司[hay]/尋叫[hanta]」体の Up−shift from Self 「です/ます」体の「敬体(P)」への 「常体(N)」から「司皇[hayyo]/
シフトで、当該のシフトが自分の発 曾月し}[hapnita]」体の「敬体 話からのシフト (P)」へのシフトで、当該のシフトが
自分の発話からのシフト
N
NI: 「です/ます」体の「敬体(P)」から 「司皇[hayyo]/ 草}L1亡}[hapnit No−shift from Interlocutor 「敬体(P)」へ、「だ/である」体の a]」体の「敬体(P)」から「敬体(P)」「常体(N)」から「常体(N)」へ、とシ へ、「司[hay]/重}1斗[hanta]」体 フトがなされていないもので、当該 の「常体(N)」から「常体(N)」へ、と
のものが相手の発話からのもの シフトがなされていないもので、当 該のものが相手の発話からのもの NS: 「です/ます」体の「敬体(P)」から 「司且[hayyo]/ 豆}⊥→τキ[hapnit No−shift from Self 「敬体(P)」へ、「だ/である」体の a]」体の「敬体(P)」から「敬体(P)」
「常体(N)」から「常体(N)」へ、とシ へ、「司[hay]/尋叫[hanta]」体 フトがなされていないもので、当該 の「常体(N)」へ、とシフトがなされ のものが自分の発話からのもの ていないもので、当該のものが自
分の発話からのもの 以下では、「スピーチレベル・シフト」について日本語と韓国語それぞれの言語によ るコーディングの説明をしてから、その例を示す。
(1)日本語における「スピーチレベル・シフト」のコーディング
以下では、日本語における「スピーチレベル・シフト」のコーディングの説明をして から、その例を示す。
①DI:Down−shift from lnterlocutor
「です/ます」体の「敬体(P)」から「だ/である」体の「常体(N)」へのシフトで、
当該のシフトが対話相手の発話からのシフトである。
発話文 話者 番号
発話内容 発話文末の スピーチ
スピーチレベル レベル・シフト
[OρO
Quつ0 JYFO1 〈あああ、〉{〉}そうなんですか。
JBMO2 ええ.。
P
M
N
78∩コ OOり03
40
JYFOl JYFOl JBMO2
JYFO1
ふ一ん。
はい。
実家は、あの一、実家はっていうか、吉祥寺、と いうか三鷹市、育ちなので〈笑い〉。
あそうなんですか。
W…N
P
DI
UI
②DS:Down−shift・from・Self
「です/ます」体の「敬体(P)」から「だ/である」体の「常体(N)」へのシフトで、
当該のシフトが自分の発話からのシフトである。
発話文 話者 番号
発話内容 発話文末の スピーチ
スピーチレベル レベル・シフト 60
ρOρ06
JBMO2
JYFOl JBMO2 JBMO2
そうですね、昔は畑ばっかりだったんですけどね
(あそうなんですか)、今は家ばっかりですよね。
〈あ一〉{〈}。
〈畑〉{〉}ばっかりっていうこともないかな。
畑があったんだけどな。
P
剛NN
DNSS
③UI:Up−shift from Interlocutor
「だ/である」体の「常体(N)」から「です/ます」体の「敬体(P)」へのシフトで、当該 のシフトが対話相手の発話からのシフトである。
発話文 話者 番号
発話内容 発話文末の スピーチ
スピーチレベル レベル・シフト
910
11 12 13
45
111⊥
JBMO2 JOFO1
JBMO2 JOFOl JBMO2
JOFOl
JBMO2
〈山偏の〉{〉}「漢字2」で。
「漢字1」は、あの、「漢字1を含む言葉」の「漢字
1」です。
あ一一。
はい。[かすれた声で]
私は初めて聞くお名前だな、rJOFO1姓」さんて
いうと。
あくそうですか〉{〈}。
〈そうですか〉{〉}。
M
N
P
醐蜘N
PP
DI
UI
④US:Up−shift from Self
「だ/である」体の「常体(N)」から「です/ます」体の「敬体(P)」へのシフトで、当該 のシフトが自分の発話からのシフトである。
発話文 話者 番号
発話内容 発話文末の スピーチ
スピーチレベル レベル・シフト 12
13
JBMO2
JYMO1
JBMO2 JYMOl JBMO2 JYMO1
いや一、後で書くときに(はい)わすれ、わす、忘 れちゃいけないなと思って。
え一、あの一、あの一もし、さっきの方もそうだっ たんですけども、名前一が、何だっけ、NN??
「姓」、「姓」さん、NN??。[人名とその一部を繰り 返している]
あ一。
あの一一。
漢字は〈想像〉{〈}つかないですね。
〈漢字は〉{〉}。
N
NM
…醐p醐
US
⑤NI:No.shift from Interlocutor
「です/ます」体の「敬体(P)」から「敬体(P)」へ、 「だ/である」体の「常体(N)」
から「常体(N)」へ、とシフトがなされていないもので、当該のものが対話相手の発 話からのものである。ただし、実際のコーディングの際は、談話の基本状態を同定し た後、有標行動に着目してコーディングを行う。例えば、社会人初対面会話のように、
スピーチレベルにおいて「敬体(P)」が無標行動である場合、有標行動であると見な される、 「常体(N)」が発話文末に表れたところに着目し、 「常体(N)」から「常体
(N)」へのものをNIとしてコーディングを行う。
発話文 話者 番号
発話内容 発話文末の スピーチ
スピーチレベル レベル・シフト 97
98
99−1
100
99−2 101
JYFOl JYFOl JYFOl JBMO3 JYFOl JBMO3
〈あ一いいですね〉{〉}。
はい。
え?降るよりは降らない、え?=,,
ええ。
=降らない、〈降るよりは降らない〉{〈}。
〈いや、や、や、やっぱり〉{〉}天気のほうがいいか
P醐/醐NN
/
DNSI
102 103
な。
JYFO1 あ天気のほうがいいですね。
JYFO1 断然天気のほうがいいですね。
PP UI
⑥NS:No.shift from Self
「です/ます」体の「敬体(P)」から「敬体(P)」へ、 「だ/である」体の「常体(N)」
から「常体(N)」へ、とシフトがなされていないもので、当該のものが自分の発話か らのものである。ただし、実際のコーディングの際は、談話の基本状態を同定した後、
有標行動に着目してコーディングを行う。例えば、社会人初対面会話のように、スピ ーチレベルにおいて「敬体(P)」が無標行動である場合、有標行動であると見なされ る、 「常体(N)」が発話文末に表れたところに着目し、 「常体(N)」から「常体(N)」
へのものをNSとしてコーディングを行う。
発話文 話者 番号
発話内容 発話文末の スピーチ
スピーチレベル レベル・シフト
33−1
34 35 36 33−2
780」O QJ∩δ34
4⊥41⊥りム
OFO1
JBMO3 JBMO3 0FO1 0FO1
JBMO3 0FOl JBMO3 JBMO3
OFOl JBMO3
私もあの人の名前を(え一)書かなくちゃいけない 仕事をしてるので、(え一え一)ときどき指摘される ことがあるんですくけど〉{く},,
〈あ一〉{〉}なるほど。
〈ええ〉{〈}。
〈ええ〉{〉}。[かすかに]
「崎」を「大」 だい 書くと立っだって(え一)言わ れたり、(え一)あの、吉田の吉が下が短いとか〈言
われたりね〉{〈}。
〈あ一なるほど〉{〉}。
う一ん。
ええ。
まあ私の場合はとりあえずまそんなに字自体間 違えられることは、/沈黙2秒/こないだあったな。
〈笑い〉。
あの一、雨が「漢字1訓読み」なんですけど(え一)
なんか、え一とたまにですね、あの一、雨が「漢字 1訓読み」のはずなのに一、(え一)なんかここの さ、肝心なところがなんか「漢字3訓読み」になっ
/
醐醐…N
W醐WN
…N
/
DS
NI
NS
てて、(ほ一)あ、あの「姓」じゃないんだけど〈笑い ながら〉。
43 0FO1 あ、たか、あ一、〈「人名」の「漢字4」ですか〉{〈}。 P UI 44 JBMO3 〈あの「人名」の、ええ、ええ〉{〉}。 NM
(2)韓国語における「スピーチレベル・シフト」のコーディング
以下では、韓国語における「スピーチレベル・シフト」のコー一一・ディングの説明をして から、その例を示す。
①DI:Down.shift from lnterlocutor
「6n B−[hayyo]/菅月τ![hapnita]」体の「敬体(P)」から「剤[hay]/尋叫[hanta]」体の 「常体(N)」へのシフトで、当該のシフトが対話相手の発話からのシフトである。
発話文 話者 発話内容 発話文末の スピーチ 番号 スピーチレベル レベル・シフト
6
7
8
9
KOFO1
KBFO2
KOFO1
KBFO2
10 KOFO1
11 KBFO2
Oj q入}刃1皇?.
(お住まいはどこですか。)
。L xl 9.?
(あ、わたくしですか。)
叫.
(はい。)
但習苦。1且.
(シンリム洞です。)
叫,望司神皇頚司く早λ}9昊{}〉,
(お、遠くからいらっしゃったね〈二人で笑い〉。)
酔立升 剖司 司フ1斗η},〈妾旦マ閤〉 ユLま 司苦01司句銀(『9,
(学校が元々ここだから、〈笑いながら〉ま、慣れて ます。)
P
P
NM
P
N
P
DI
UI
②DS:Down.−shift・from・Self
「6n B.[hayyo]/書月叶[hapnita]」体の「敬体(P)」から「甜[hay]/司叶[hanta]」体の
「常体(N)」へのシフトで、当該のシフトが自分の発話からのシフトである。
発話文 話者 番号
発話内容 発話文末の スピーチ
スピーチレベル レベル・シフト 185 KBFO2
186 KBFO2
187 KBFO2
188 KBFO2
189 KYMO1
香司号,司1斗ユ司o}司叫,香司号司01書
o}9?〈OOフこ「Er〉.
(ちょっと積極、なんと言えばいいのか、ちょっと積 極的ですよね〈笑い〉。)
入}ell o)司1且〈ooフご〒デ〉.
(人々が気が強いですね〈笑い〉。)
ユ司司判誓01零刈斗屯,神音。‖音芒田
・1る・平§刈言ドヨ司。1司望,,召入1亡} ,剖
01司司旦呈叫6}9rp}〈音01臭{≧〉,
(それで何かをこうすると、ソウルの人はなんかこ れをどうすればいいって、というと 行きましょう な んかこういうふうにするから〈二人で笑い〉。)
ユ司マ]τ斗音袖摺袖摺01司干,(o口)已司,
言目忘….
(そしたらみんな何もいえず、(うん)あの、とにかく
…。)
、旦01入1旭刊}i二胡{≡ヱユ司入1]三フ『o‖且?.
(みんなお集まりになったらなんか歌聞いたりなさ るということですか?。)
P
P
N
NM
P
DS
UI
③UI:Up−shift from lnterlocutor
「司[hay]/む叶[hanta]」体の「常体(N)」から「司皇[hayyo]/曾斗u}[hapnita]」体の
「敬体(P)」へのシフトで、当該のシフトが対話相手の発話からのシフトである。
発話文 話者 番号
発話内容 発話文末の スピーチ
スピーチレベル レベル・シフト 240
241
KBFO1
KOFO1
〈s吾〉{〉}(≧]到合}頚(オ9?.
(〈結婚〉{〉}早くされたんですか?。)
oH 9,△昔oiタせ(引尋蚊(司9.
(いいえ、26歳に生みました。)
P
P
242
243
244
245
246
247
248
KBFO1
KOFO1 KOFO1
KOFO1
KBFO1
KBFO1
KOFO1
o},ユ間曽叫司一頚番叫皇.
(あ、だって早くされたんですよね。)
叫吾司せ,刈フ}(O}一).
(44歳、わたくしが(あ一)。)
モ}司,叫η}剋司音Oj1吐吐但刊目01骨,ユ,
ユ甚書君廿叫神但勺唱王1唱ぎ}殻司.
(でも、さきほど会った先生と、あの、あの方は教 師を1年なさったそうだけど。)
ユ司ノ『ユ甚せ司壬但王書01世殼亡司,
(oト)E音01書01i穀(1.
(それであの方からアドバイスもたくさんもらったけ ど、(あ一)すごく助かったよ。)
o}一, 「KBFO2 社却 01吾」9?,
(あ一、「KBFO2フルネーム」ですか?。)
xl召芒…,
(わたくしと同じ…。)
叫叫,喫o}且.
(はい、そうです。)
P
NM
N
N
P
NM
P
DI
NS
UI
④US:Up−shift from Self
「司[hay]/琶亡}[hanta]」体の「常体(N)」から「胡皇[hayyo]/菅月叫[hapnita]」体の
「敬体(P)」へのシフトで、当該のシフトが自分の発話からのシフトである。
発話文 話者 番号
発話内容 発話文末の スピーチ
スピーチレベル レベル・シフト 213 KYMO1
214
215
KBFO1
KBFO1
216 KYMO1
〈ユ司王71甚〉{〉}且晋L}7}書。}9,
〈14000組(こ1フ}〉{<}.
(〈それでも基本〉{〉}料金がかかるでしょう、〈140 00ウォンなのかな〉{〈}。)
〈ユ司刈〉{〉}萱01叶.
(〈そう〉{〉}ですよね。)
ユ1)叫沓番叫皇〈Ooフご〒デ〉.
(それがもったいないですよね〈笑い〉。)
o}召}孟/忍号4茎/.
P
N
P
P
DI
US
(もったいないですね/沈黙4秒/。)
⑤NI:No−shift from Interlocutor
「司且[hayyo]/菅」叶[hapnita]」体の「敬体(P)」から「敬体(P)」へ、 「司[hay]/
尋叶[hanta]」体の「常体(N)」から「常体(N)」へ、とシフトがなされていないもの で、当該のものが対話相手の発話からのものである。ただし、実際のコーディングの 際は、談話の基本状態を同定した後、有標行動に着目してコーディングを行う。例え ば、社会人初対面会話のように、スピーチレベルにおいて「敬体(P)」が無標行動で ある場合、有標行動であると見なされる、 「常体(N)」が発話文末に表れたところに 着目し、 「常体(N)」から「常体(N)」へのものをNIとしてコーディングを行う。
発話文 話者 番号
発話内容 発話文末の スピーチ
スピーチレベル レベル・シフト 226 KSFO1
227 KBFO1
228 KSFO1
229−1 KBFO1
230 KSFO1
229−2 KBFO1
231−1 KBFO1
232 KSFO1
231−2 KBFO1
〈モ子 vl1,〉{〉} yLn ec e 廿ス}7} 望呈 (〜}
甘殼司叫干皇.
(くでも、〉{〈}いい男があまり残ってないんです ね。)
叫.
(はい。)
ユ司<7}X) iL>{〈}.
(それ〈で〉{〈},,)
〈t斗一〉{〉}季{≧A}昔e,,
(〈みんな一〉{〉}いい人は,,)
升褐く毅司〉{<},
(相手がくいたよ〉{〈}。)
<}二iLZ>{〉}71p7 } 銀て三1モ斗:〒L.
(〈だれ〉{〉}かがいたよ。)
室1干暑王,,
(友達も,,)
音一.
(うん一。)
ユA}昔司干号王旦PtL,〈叫銀ヱ〉{<},,
(あの人の友達を見ると、〈みんな相手がいるし
〉{〈},,)
P
NM NM
/
N
N
/
NM
/
/
DS
NI
/
/
233 KSFO1
231−3 KBFO1
234 KSFO1
231−4 KBFO1
235 KSFO1
236 KBFO1
237 KSFO1
〈ユ月η}…〉{〉}.
(〈だから…〉{〉}。)
叶ol杢}る},香想司0101杢}斗小斗,
(〈昊告〉)司唱01〈〜}苦司L}01旦入}至}{≧,,
(みんなへんな、ちょっと性格がおかしいとか、(〈
笑い〉)仕事がよくないとかこんな人は,,)
ユ司月舛〈♀}普里フ『。}〉{<}.
(だから〈売れなかったわけなんだ〉{〈}。)
〈廿○}銀・1,〉{〉}o}司η}刈.
(〈残っている、〉{〉}まだ。)
ユ零司i斗干(o口).
(そうだよね(うん)。)
皇司司甘ス}9・1璽包(o口)暫司叫音 妻芒力召・R.
(むしろ男のほうがもっと(うん)はやく相手をさがす みたい。)
ユ零蚤?.
(そうでしょう?。)
NM
/
N
N
NN
P
/
NI
NI
NI
NI
UI
⑥NS:No.shift from Self
「司皇[hayyo]/書月叫[hapnita]」体の「敬体(P)」から「敬体(P)」へ、 「司[hay]/
量c}[hanta]」体の「常体(N)」から「常体(N)」へ、とシフトがなされていないもの で、当該のものが自分の発話からのものである。ただし、実際のコーディングの際は、
談話の基本状態を同定した後、有標行動に着目してコーディングを行う。例えば、社 会人初対面会話のように、スピーチレベルにおいて「敬体(P)」が無標行動である場 合、有標行動であると見なされる、 「常体(N)」が発話文末に表れたところに着目し、
「常体(N)」から「常体(N)」へのものをNSとしてコーディングを行う。
発話文 話者 番号
発話内容 発話文末の スピーチ
スピーチレベル レベル・シフト 214 KBFO1 判 ・是 7とe 71 01旦 71 司(芒La フ『 モ砦01
叫旦望,01零オ1ヨ刃101尋対1碑叫司ヱ,
〈暑01神臭音〉甚せ01到旦oJ oj 9〈臭音〉.
(パウダーみたいなものをたくさん塗ると、こう大き
P UI
215 KOFO1
216 KBFO1
217 KOFO1
218 KOFO1
219 KOFO1
220−1 KBFO1
221 KOFO1
220−2 KBFO1
く拡大されて、〈二人で笑い〉分散してるようにみ えるそうですよ〈笑い〉。)
ユ零ぐ干『し}〉{〈}.
(そう〈なのね〉{〈}。)
〈ユ零〉{〉}τ斗干….
(〈そう〉{〉}だと…。)
ユ司神但剋音司÷干⊥斗(o口).
(それで日焼けをするのね(うん)。)
吐朗6}9ユ殼句.
(わたしはなぜ日焼けをするかと思った。)
斗9}司早升叫讐剋司,朗6}9,ユ殼司司.
(白い肌がいいのに、なぜするかな、としたけど。)
里01却王音司フ}91叶書芒◇‖音{≧叫叫
印♀1司司1乱,
(またこう細かいほこりがあんまり多い人たちは肌 を黒く日焼けすると,,)
叫.
(はい。)
♀}旦吋,をol零刈音OL}9呈]三を昔噛・9
?}旦01書叫皇.
(よく見えない、目ではよく見えないでしょう。)
N
NM
N
N
N
/
NM
P
DI
NS
NS
NS
/
UI
5.1.2ポライトネス効果
「ディスコース・ポライトネス理論」(宇佐美1998;2001a;2001b;2002;2003b;
Usami1999;2002等)によると、ある特定の「談話」の「基本状態」からの離脱や回帰 という言語行動の「動き」により、実質的な「ポライトネスの効果」が生み出される。
スピーチレベルという言語行動においては、本研究のように、敬体(P)が無標ポライ トネスである初対面会話では、常体(N)を使うこと、つまり、Downシフトすること が「有標行動」と捉えられる。
ここでは、 「ディスコース・ポライトネス理論」の観点から、敬体が無標ポライ トネスである本研究のスピーチレベルにおいて「有標行動」であるDownシフト(D)
を取り上げ、談話の中における「ポライトネス効果」を宇佐美(2008)に従い、 「プラ ス・ポライトネス効果(PP)」、 「ニュートラル・ポライトネ効果(NP)」 「マイ
ナス・ポライトネス効果(MP)」の3つに分けてコーディングする。以下の表45に 分析項目をまとめる。
表45ポライトネス効果の分析項目
PP:Plus politeness effects プラス・ポライトネス効果:心地よい、丁寧だと感じ 驍ニいう効果
NP:Neutral politeness effects ニュートラル・ポライトネス効果:強調や話題転換な ヌのように、特に丁寧と感じるわけでも不愉快でも ネい効果:言語的談話効果等
MP:Minus politeness effects マイナス・ポライトネス効果:不愉快な、失礼だと感 カる効果
以下の5.2節では、以上の「スピーチレベル・シフト」と「ポライトネス効果」の 分析項目に対する分析の信頼性を確認するため、 「評定者間信頼性係数(Cohen s Kappa)」の結果を示す。
5.2分析の信頼性
以上の「スピーチレベル・シフト」と「ポライトネス効果」のコーディング項目に 基づいた会話データの分析、発話の分類が単に筆者の主観によるものではなく、信頼 性のあるものであることを確認するために、セカンドコーダー(第2認定者)を立てて 筆者との「評定者間信頼性係数(Cohen,s Kappa)」を測った。ここでは、セカンドコー ダーにコーディングの定義を熟知させた上で、 「スピーチレベル・シフト」の分析項 目についてコーディングをしてもらい、 「評定者間信頼性係数(Cohen,s Kappa)」を算 出した。
以下では、 「スピーチレベル・シフト」と「ポライトネス効果」のコーディングの 評定者間信頼性係数(Cohen,s kappa)だけを表46に示すが、詳しい内訳に関しては、資 料集を参照されたい。
表46日本語と韓国語におけるスピーチレベ・シフトのコーディングの評定者間信頼性係数(Cohen s Kappa)
言語 ェ析項目
日本語 韓国語
スピーチレベル・シフト 1,000 1,000
ポライトネス効果 0,819 0,767
以上の結果より、日本語と韓国語における「スピーチレベル・シフト」のコーディ ングは、全ての分析項目についてK>0.70で、信頼性があると判断された。
以下の5.3節では、 「スピーチレベル・シフト」の分析結果を示し、考察を行う。
5.3スピーチレベル・シフトの分析結果と考察
本研究における「スピーチレベル・シフト」は、発話文末の「敬体(P)」から「常 体(N)」へ、発話文末の「常体(N)」から「敬体(P)」 へのスピーチレベルの切り替 えである。両者の間には「丁寧度を示すマーカーのない発話(NM)」が現れている場 合もある。5.3.1節では、 「スピーチレベル・シフト」の使用様相について分析結果を 示し、考察を行う。次に、5.3.2節では、本研究のスピーチレベルの有標行動である Downシフト(D)のポライトネス・効果について述べる。
5.3.1スピーチレベル・シフトの使用
ここでは、まず、 「スピーチレベル・シフト」の全体像が分かるように、日本語と 韓国語におけるべ・一一一一スの総発話文数に占める全体のスピーチレベル・シフトの「Dow nシフト(D)」、 「Upシフト(U)」、 「Noシフト(N)」の使用割合の平均値と使用頻度
を、以下の図39に示す。
12.0
10D
8.0
6.0
4.0
2.0
0.0
國
図39スピーチレベル・シフトの使用割合の平均値と使用頻度
図39から分かるように、日本語に比べ韓国語のスピーチレベル・シフトの使用割合 が、Downシフト(D)、 Upシフト(U)、 Noシフト(N)の全ての項目において高くなって いる。これは、韓国語の方が日本語に比べ、常体(N)の使用が多かったことに起因し ているのであろう。なお、分散分析の結果、日本語と韓国語の間にDownシフト(D)、
とNoシフト(N)の使用に有意差が見られた(Downシフト(D):F値=5.504、 p<0.05、 No シフト(N):F値二27.748、p<0.001)。また、日本語においては、 Downシフト(D)より、
Upシフト(U)の使用割合が低いが、韓国語においては、 Downシフト(D)より、Upシ フト(U)の使用割合が高い。この結果からは、第4章のスピーチレベルの項でも検証 されたように、韓国語においては、発話文末のスピーチレベルの使用によって対話相 手との関係、つまり、本研究においては上下関係、を規定する度合いが高く、発話文 末のスピーチレベルの使用に敏感であり、Downシフト(D)されたらすぐに無標スピー チレベルである敬体(P)に戻ろうとする傾向が日本語に比べて強いことが窺える。
以下に、日本人同士と韓国人同士の会話の中で、男性べ一スと年下の男性との会話 の例の一部を挙げ、 「スピーチレベル・シフト」の使用状況を述べる。
日本人同士の会話例(男性べ一スと年下の男性との会話)
発話
カ番
発話
カ終
ケ
話者 発話内容
発話
カ末
スピーチ
激xノレ・
Vフト 154 * JYMO4 〈学校多い〉{〉}ですよね、なんか。 P
155 * JYMO4 で小学生が多いんですよね、要するに。 P
156 * JBMO3 あ一。
NM
157 * JYMO4 あ、多いっていうかあの一(うん)僕が乗る時間の電車には q笑いながら〉小学生、暴れまくるわ、あ、けんかはするわ 黶Z
N DS
158 * JBMO3 あ別にその一(うん)なんか遠足に行くとかっていうん〈じゃ ネくて、普通の…〉{〈}。
NM
159 * JYMO4 〈あ一じゃないですよ、普段の〉{〉}あの(あ一)私立の学校 iあ一)なんですかね一、(う一ん)分かんないですけど。
P US
160 * JBMO3 確かあれですね、成城だかのおぼっちゃん学校あるんじ 痰ネかったかな、あのあの一(うん)中央線沿線に。
N DI
161 * JYMO4 あ何かあるんですか、(うん)やっぱり〈笑い〉。 P UI 162 * JBMO3 あったような(うん)気がするんだけど。 N DI
163 * JBMO3 あ一ちょっとこれもううろ覚えなんで(〈笑い〉)。 N NS
164 * JYMO4 でもあれですね一、だからいっつもやっぱりその子たちも ィんなじ一顔ぶれなんですよね(う一ん)。
P UI
165 * JYMO4 みんないっつも一緒にいて、(うん)あ一仲いいな一とか思
N
DSって。
166 * JBMO3 あれがだんだんだんだん大人になってくるにくつれて憎た
轤オくなってくるっていう…〈笑い>>{〈}。
NM
167 * JYMO4 〈そうこんなになっ、こんなに〉{〉}なってきちゃうんですよ〈2 lで笑い〉。
P US
168 * JYMO4 そうなんですよね一。 P 169 * JYMO4 そうさっき時間を計ってなくて、(え一)す一こい話してて、
ネんかたぶんどのくらいでしょうね、倍くらい話したかも(え 黶jしれないですね。
P
この会話は、年下の対話相手のJYMO4が毎朝出勤する時、電車に学生が多いことに 関して話している場面である。JYMO4は、発話文番号154、155で、この会話の無標ス ピーチレベルの敬体(P)を使い、年上に当たるべ一スのJBMO3への配慮を表している が、発話文番号157で常体(N)を使い、Downシフト(D)している。
JYMO4の常体(N)へのDownシフト(D)に対し、 JBMO3は発話文番号158で丁寧度を示 すマーカーのない発話(NM)を用いている。無標スピーチレベルの敬体(P)への回帰を
していない。年上に当たる自分が、年下のJYMO4の常体(N)の発話から無標スピーチ レベルの敬体(P)へ回帰させることを避けたとも解釈できよう。その次の発話文番号1 59のJYMO4の発話では、敬体(P)へUpシフト(U)し、無標スピーチレベルに回帰して
いる。
その次の発話文番号160ではJBMO3が独り言のような発話で常体(N)を使い、 Down シフト(D)をしているが、その発話に対しJYMO4は発話文番号161で敬体(P)へUpシフ ト(U)し、無標スピーチレベルへ回帰している。JBMO3は発話文番号162で、常体(N)
へDownシフト(D)し、発話文番号163でも常体(N)を使い、 Noシフト(N)になってい る。常体(N)を使い、対話相手への心的距離感を縮めようとしている。JBMO3の常体
(N)が続いた発話に対し、発話文番号164でJYMO4は無標スピーチレベルの敬体(P)へ Upシフト(U)している。その次の発話でJYMO4は自分から常体(N)へDownシフト(D)
している。ただ、常体(N)を使い、対話相手への心的距離感を縮めようとしながらも 発話文末に「〜とか思って」という表現を使い、断定を避けて発話内容を和らげてお り、対話相手への配慮を表していると考えられる。このJYMO4の常体(N)へのDownシ フト(D)に対し、JBMO3は発話文番号158と同じく、発話文番号166で丁寧度を示すマ ーカーのない発話(NM)を用いており、無標スピーチレベルの敬体(P)へ回帰をしてい ない。同じように年下のJYMO4の常体(N)の発話から年上に当たる自分が無標スピー チレベルの敬体(P)への回帰を避iけたとも解釈できよう。その次の発話文番号167のJY
MO4の発話では、敬体(P)へUpシフト(U)し、無標スピーチレベルに回帰している。
「ディスコース・ポライトネス理論」(宇佐美1998;2001a;2001b;2002;2003b;Usami19 99;2002等)の観点から見ると、この会話では、常体(N)へのDownシフト(D)は、実質的 な「ポライトネスの効果」を生み出す有標行動となる。 「ポライトネスの効果」に関 しては、次の5.3.2節で詳しく述べるが、この会話では常体(N)へDownシフト(D)する ことで、発話文番号157では電車の中の学生たちの生き生きとした様子を、発話文番 号160では、独り語的な感じを表しており、特に丁寧と感じるわけでも不愉快でもな い効果の、ニュートラル・ポライトネス効果(NP)を生み出していると考えられる。
また発話文番号162、163、165ではDownシフト(D)することで心的距離感を縮めよう とするが断定などを避ける表現をともに使うことで、発話内容を和らげて対話相手へ の配慮を表しており、心地よい、丁寧だと感じる効果であるプラス・ポライトネス効 果(PP)を生み出していると考えられる。
韓国人同士の会話例(女性べ一スと年上の男性との会話)
発話 発話 発話 スピーチ
文番 文終 話者 発話内容 文末 レベノレ・
号 了 シフト
114 *
KBMO2
叫と苦力レ阻司1且,司音(召日17}?. P(とちらにいらっしゃるんですか、今の業態が?。)
115 *
KYMO3
ス1音苦,刊叶ヱユ司叶司司??,△王逐司ユ旦 P苦句1殼旦」η}ユ旙召司1升叡(司且=.
(いま、ちょっとなんといったらいいだろう??、スポーツなん かその方にいまからまあ行けるところがないです=。)
116 *
KBMO2
=△王逐且?. P(=スポーツですか?。)
117 *
KYMO3
叫.NM
(はい。)
118 *
KBMO2
と王茎吸ルス1等芒叫月全1刀(〈妾モ}〉)<妾,鯉1入1 N DS<召暑日1>{<}.
(スポーツマッサージの方ではなさ(〈笑い〉)〈笑いながら〉〈
そうだけど〉{〈}。)
119 *
KYMO3
妾旦望神〉〈叫斗叫且,ユ司〉{〉}等書(〈妾告〉)叫月 P UI司L且.
(〈笑いながら〉〈いいえ、そっちの〉{〉}方では(〈笑い〉)ありま せん。)
120 *
KBMO2
△王三叫剤瑠ユ枠♀1升皇?. P(スポーツマーケティングその方ですか?。)
121 *
KYMO3
叫,判,叫剤用一芒叫月干,ユtま璃 Olせ尋司(¶ P皇.
(ま、なんかマーケティングではなく、まあ、なんか変なとこ ろです。)
この会話は、年上に当たるべ・一一一一一スのKBMO1が対話相手のKYMO3の職業を聞く場面 である。KBMO1とKYMO3は発話文番号114、115、116で、この会話の無標スピーチレ ベルの敬体(P)を使っているが、KBMO1が発話文番号118で常体(N)へのDownシフト
(D)をしている。常体(N)を使い、また笑いを伴うことで、雰囲気を柔らかくし、対話 相手への心的距離感を縮めようとしていると考えられる。その次の発話文番号119のK YMO3の発話では、敬体(P)へUpシフト(U)し、無標スピーチレベルに回帰している。
ディスコース・ポライトネス理論(宇佐美1998;2001a;2001b;2002;2003b;Usami1999;2 002等)の観点から見ると、この会話における発話文番号118のDownシフト(D)は、心 地よい、丁寧だと感じる効果であるプラス・ポライトネス効果(PP)を生み出している
と考えられる。
(1)ベースの性別による「スピーチレベル・シフト」の比較
べ一スの性別による「スピーチレベル・シフト」の「Downシフト(D)」、 「Upシ フト(U)」、 「Noシフト(N)」の使用割合と使用頻度を表47と図40に示す。
表47ベースの性別ごとのスピーチレベル・シフトの使用割合と使用頻度
話者 Vフト
JBF
JBM KBF KBM
D
5.0(79) 6.6(103) 10.0(190) 7.2(137)u
5.1(80) 3.9(61) 11.0(209) 9.7(185)N
0.8(13) 1.6(25) 2.5(48) 1.6(31)*()内は、頻度
12.0
10.0
8.0
6.0
4.0
2.0
0.0
圏
図40ベースの性別に応じたスピーチレベル・シフトの使用割合
べ一スの性別ごとに、 「スピーチレベル・シフト」を見ると、Downシフト(D)とN oシフト(N)の使用割合は、日本語は男性べ一スが、韓国語は女性べ一スが高い。な お、分散分析の結果、韓国語においてはDownシフト(D)の使用に女性と男性間に有意 差が見られた(F値=6528、p<0.05)。一方、 Upシフト(U)は日本語と韓国語ともに女性 べ一スの方が使用割合が高い。これは、スピーチレベルの項で見たように、日本語は 男性べ一スの方が、韓国語は女性べ一スの方が常体(N)の使用割合が高かったことに 起因するであろう。
ここで興味深いのは、日本語・韓国語ともに女性べ一スは男性べ一スに比べ、Down シフト(D)とUpシフト(U)の使用割合の差が少ない点である。これは、女性ベースは 男性べ一スに比べ、一方的にDownシフト(D)やUpシフト(U)を多く使わず、対話相手
とのバランスが取れた会話を交わしていると解釈できよう。
(2)対話相手の年齢による「スピーチレベル・シフト」の比較
それでは、 「スピーチレベル・シフト」の「Downシフト(D)」、 「Upシフト(U)」、
「Noシフト(N)」が対話相手の年齢に応じてどのような分布を示しているかをべ一ス の性別という要因と合わせて調べてみる。
以下では、まず、べ一スの性別ごとに、対話相手の年齢に応じた「全体のスピーチ レベル・シフト」の「Downシフト(D)」、 「Upシフト(U)」、 「Noシフト(N)」の使 用割合と使用頻度を表48と図41に示す。
表48対話相手の年齢に応じたスピーチレベル・シフトの使用割合と使用頻度
会話 Vフト
JBF
JBM KBF KBM
0
SY 0
SY 0
SY 0
SY
D
3.6i19)
4.3
i21)
6.9 i39)
4.4 i23)
5.6 i28)
9.8 i52)
6.0 i32)
10.5 i73)
12.9 i85)
5.3 i30)
8.3 i56)
7.6 i51)
u
8.3i44)
2.9 i14)
3.9 i22)
2.3 i12)
4.6 i23)
4.9 i26)
13.6 i73)
11.5 i80)
8.5
i56)
7.6 i43)
10.5 i43)
10.6 i71)
N
0.8i4)
0.8 i4)
0.9 i5)
1.3
i7)
1.2
i6)
2.3 i12)
1.7
i9)
3.2 i22)
2.6 i17)
0.4 i2)
1.9
i2)
2.4 i16)
*()内は、頻度
16.0 1 4.0
12.0 10.0
% 8.0
6.0 4.0 2.0 0.0
s−− −. −e
量 −
、、◆
一
●、 ■一・・■
一一一一一一一 、、
。
一一一一一一
@声・・1 一一一一一
一一一一一@一
+小
DUN[ t
v−一、(一…一
詩がボぷが
会話
図41対話相手の年齢に応じたスピーチレベル・シフトの使用割合
べ一スの性別ごとに、対話相手の年齢に応じた「スピーチレベル・シフト」の使用 を見ると、日本語の場合、Downシフト(D)は、ベースの性別と関係なく、年下、同年 齢、年上の対話相手の順に使用割合が高く、対話相手の年齢に反比例している47。日 本人女性は、目下が目上に敬語を使うことによってではなく、目上が目下に常体を使
うことで上下関係をマークしているとの宇佐美の結果(宇佐美1995;2001a、 Usami1999 等)が、日本人男性の場合にも検証された。つまり、現代日本語では、宇佐美(2001a 等)の指摘のように、対話相手との力関係を顕著に反映しているのは常体の使用、こ
47べ一スの性別を分けないで分析した場合、日本語のDownシフト(D)の使用においては、
年上と年下の間には統計的に有意差が見られた(F値=3.850、p<0.05)。しかし、べ一スの 性別ごとに分析したら、ベースの性別を分けないで分析した場合とDownシフト(D)の使 用傾向は同じであったものの、有意差は見られなかった。
こではDownシフト(D)であることが分かる。
Upシフト(U)は、女性べ一スは年上にもっとも使用割合が高く、男性ベースは年下、
にもっとも使用割合が高い。また、Noシフト(N)はべ一スの性別と関係なく年上の対 話相手に対してより年下の対話相手に対して使用割合が高い。
日本人女性の場合は、年上の対話相手に対してはDownシフト(D)したら、 Upシフ ト(U)し、無標スピーチレベルである敬体(P)に戻ろうとする傾向が相対的に強いが、
年下の対話相手に対しては、Downシフト(D)したら、そのまま、常体(N)を続けて使 うNoシフト(N)の使用割合が相対的に高い。同年齢の対話相手に関しては、 Upシフト
(U)の割合が年下の対話相手より数値上低い。しかし、Downシフト(D)の割合と絡め て考えて見ると、Downシフト(D)してUpシフト(U)しなかった割合は、年下の対話相 手に比べ同年齢の対話相手に対してより低いことが分かる。
次に、韓国語の場合を見ると、Downシフト(D)は、女性べ一スは年下、同年齢、年 上の対話相手の順に使用割合が高く、対話相手の年齢に反比例している。なお、分散 分析の結果、女性べ一スはDownシフト(D)の使用に、年上と同年齢の間、また、年上 と年下の間に有意差が見られた(年上と同年齢:F値二15.343、p<0.001、年上と年下:
F値=15.343、p<0.001)。それに対して、男性べ一スは同年齢、年下、年上の順に使用 割合が高い。男性べ一スの場合、同年齢との会話においてDownシフト(D)の使用割合 が高いことは、男性同士の同年齢同士の全ての会話において軍隊の話題が出ており、
「軍隊話」が共通話題となり、共感が生まれ、お互い心理的距離感が縮まったのがDo wnシフト(D)の増加につながったと解釈できよう。 Upシフト(U)は、女性ベースは年 上、同年齢、年下の対話相手の順に使用割合が高く、対話相手の年齢に比例しており、
年上の対話相手に対してはDownシフト(D)したら、 Upシフト(U)し、無標スピーチレ ベルである敬体(P)に戻ろうとする傾向が相対的に強いと考えられる。それに対して、
男性べ一スは、年下、同年齢、年上の対話相手の順に使用割合が高く、対話相手の年 齢に反比例している。Noシフト(N)は、べ一スに性別に関係なく、年上の対話相手に 対してより年下の対話相手に対して使用割合が高い。なお、分散分析の結果、男性べ 一スにおいてはNoシフト(N)の使用に、年上と年下の間に有意差が見られた(F値=5.0 58、p<0.05)。男性べ一スの場合、 Upシフト(U)は、使用割合から見て年上の対話相手 に比べ同年齢と年下の対話相手に対してより高いが、Downシフト(D)とNoシフト(N)
の割合と絡めて考えて見ると、年上と同年齢の間、また年上と年下の間のUpシフト
(U)の割合の差よりDownシフト(D)とNoシフト(N)の割合の差が大きいことが分かる。
年上に対しては、Downシフト(D)とNoシフト(N)の割合の合計よりもUpシフト(U)の 使用割合が高く、Downシフト(D)した主体が自分だとしても、相手だとしても、 Dow nシフト(D)されたらすぐに無標スピーチレベルである敬体(P)に戻ろうとする傾向が
強いことが窺える。
このように、日本語・韓国語ともに、細かい部分ではべ一スの性別によってばらつ きが見られる。しかし、全体的な傾向として日本語と韓国語ともに、べ一スの性別 と関係なく年上の対話相手に対して、 「Downシフト(D)」の使用割合がもっとも低い こと、また、 「Noシフト(N)」は年上の対話相手に対してより年下の対話相手に対し て使用割合が高いこと、などから年上に対してより丁寧な言語行動をしていることが 窺える。さらに、日本語・韓国語ともに、女性べ一スは「Upシフト(U)」の使用割合 が年上の対話相手に対してもっとも高く、年上の対話相手に対しては無標スピーチレ ベルである敬体に戻ろうとする傾向が男性べ一スに比べ強いことが窺える。
以上のことから、日本語・韓国語ともに年上の人に対してより丁寧な言語行動をし ており、他の条件が一定の場合、力(power)の大きい順にポライトな言語行動をする であろうというBrown and Levinsonのポライトネス理論(1987)の予測に従っていると 言えよう。つまり、日本語と韓国語ともにこのように対話相手の年齢という上下関係 がスピーチレベル・シフトという言語行動に表れていることが分かる。
また、ポライトネス理論の観点から考えて見ると、Downシフト(D)やNoシフト(N)
は、対話相手との心的距離を縮めようとする一種のポジティブポライトネス・ストラ テジーと捉えられるし、Upシフト(U)は、基本状態の無標スピーチレベルの敬体(P)
に戻り、対話相手との心理的距離をある程度保とうとする、つまり、初対面の会話に おける「社会的規範」を守ろうとする一種のネガティブポライトネス・ストラテジー と捉えられるだろう。このようなスピーチレベル・シフトは、対話相手のネガティ ブ・フェイスを脅かすことを避けると同時に、ポジティブ・フェイスを満たし、より 円滑なコミュニケーションのためのポライトネス・ストラテジーとして機能している と考えられる。このようなスピーチレベル・シフトの機能は、文レベルでは捉える ことのできないものであり、談話レベルから見ることによって初めて明らかになるこ とと言えよう。
それでは、スピーチレベル・シフトは行われた時、それが自分の発話からのシフト か、それとも対話相手からのシフトかという誰からのシフトかという観点から「スピ ーチレベル・シフト」の使用様相はどのようなものであるか。以下の図42に誰からの シフトかという観点から見た対話相手の年齢に応じた「スピーチレベル・シフト」の 使用割合を示す。
12.0
1:::
1::
:::
蚕略■べぷが ぷせぎ〆ぽが
十Dl
−一。一一DS→一一u1
十US
… X− 一・NI−一怦黶E・一 NS
図42誰からのシフトかの観点から見た対話相手の年齢に応じたスピーチレベル・シフトの使用割合
スピーチレベル・シフトは行われた時、それが自分の発話からのシフトか、それと も対話相手からのシフトかという観点から、べ一スの性別ごとに、対話相手の年齢に 応じた「スピーチレベル・シフト」の使用を見ると、日本語・韓国語ともに、Down シフト(D)はそれが自分の発話からのシフトか、それとも対話相手からのシフトかと は関係なく、年下に多く使われる傾向が見られる。ただし、韓国人男性の場合は同年 齢に対して自分からのDownシフト(DS)の使用割合がもっとも高く、これは「軍隊話」
という共通話題で、お互い心理的距離感が縮まり、Downシフト(D)が多くなったのが 1つの原因と考えられる。
また、Upシフト(U)に関しては、日韓両言語の女性べ一スは、相手からのUpシフト
(UI)の使用割合が対話相手の年齢に比例しており、女性は、年上の対話相手からのD ownシフト(D)を、自分でUpシフト(U)し、無標スピーチレベルである敬体(P)に戻ろ うとする傾向が男性べ一スに比べ強いことが窺える。しかし、自分からのUpシフト
(US)は日本語と韓国語ともにべ一スの性別とは関係なく、年上より年下の対話相手 に使用割合が高い。なお、分散分析の結果、日本語の女性べ一スにおいては、相手か らのUpシフト(UI)の使用に年上と年下の間、また自分からのUpシフト(US)の使用に 同年齢と年下の間に有意差が見られた(相手からのUpシフト(UI):F値=6.834、 p<0.05、
自分からのUpシフト(US):F値=4.987、 p<0.05)。宇佐美(1995、2001a等)では、日本 人女性べ一スの以上のようなUpシフト(U)の傾向に関して、 「Downシフト(D)が多か った目上の話者が、自らスピーチレベルを基本状態に戻していることを示唆してい る」としているが、これは韓国人女性べ一スの結果においても説明できよう。ただし、
男性べ一スの場合は、日本語・韓国語ともに相手からのUpシフト(UI)の使用割合が 年上の対話相手にもっとも低く、これは、年上の対話相手が自らUpシフト(U)し、基
本状態に戻していると解釈できよう。
(3)対話相手の性別による「スピーチレベル・シフト」の比較
次に、 「スピーチレベル・シフト」の「Downシフト(D)」、 「Upシフト(U)」、
「Noシフト(N)」が対話相手の性別に応じてどのような分布を示しているかをべ一ス の性別という要因と合わせて調べてみる。
以下では、べ一スの性別ごとに、対話相手の性別に応じた「スピーチレベル・シフ ト」の「Downシフト(D)」、 「Upシフト(U)」、 「Noシフト(N)」の使用割合と使用 頻度を表49と図43に示す。
表49対話相手の性別に応じたスピーチレベル・シフトの使用割合と使用頻度
会話
Vフト
JBF
JBM KBF KBM
F
M
FM
FM
FM
D
6.1(49) 3.8(30) 7.3(62) 5.8(41) 10.0(94) 10.1(96) 7.5(76) 6.8(61)u
5.8(46) 4.3(34) 5.1(43) 2.6(18) 15.8(149) 6.3(60) 9.8(99) 9.6(86)N
1.0(8) 0.6(5) 2.0(17) 1.1(8) 3.7(35) 1.4(13) 1.8(18) 1.4(13)*()内は、頻度
16.O ll:1
%i戟Fl
l::
;:1
がボ 〆が 〆バ 〆バ
圏
会話
図43対話相手の性別に応じたスピーチレベル・シフトの使用割合
べ一スの性別ごとに、対話相手の性別に応じた「スピーチレベル・シフト」の使用 を見ると、韓国語の女性べ一スのDownシフト(D)を除くと、日本語・韓国語ともに、
Downシフト(D)、 Upシフト(U)、 Noシフト(N)の全ての項目において、男性の対話相 手より女性の対話相手に対して使用割合が高い。なお、分散分析の結果、韓国語の女 性べ一スは、Upシフト(U)とNoシフト(N)の使用において、女性の対話相手と男性の