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3次元ローレンツ・ミンコフスキー空間内の平均曲率 零曲面に関する研究

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

3次元ローレンツ・ミンコフスキー空間内の平均曲率 零曲面に関する研究

赤嶺, 新太郎

https://doi.org/10.15017/1931720

出版情報:Kyushu University, 2017, 博士(数理学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)

(様式6-2)

氏 名 赤嶺 新太郎

論 文 名 Zero mean curvature surfaces in Lorentz-Minkowski 3-space

(3次元ローレンツ・ミンコフスキー空間内の平均曲率零曲面に関す る研究)

論文調査委員 主 査 九州大学 教授 小磯深幸 副 査 九州大学 教授 勝田篤 副 査 九州大学 准教授 大津幸男 副 査 横浜国立大学 准教授 本田淳史

論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

3 次元ユークリッド空間内の平均曲率が至る所零の曲面は、面積汎関数の停留点として現れると いう変分法的な性質があり、シャボン膜の数理モデルとなる。そのような曲面は極小曲面と呼ばれ、

古くから研究されてきた。3 次元ローレンツ・ミンコフスキー空間においても、平均曲率が恒等的 に零の曲面(平均曲率零曲面と呼ぶ)は面積汎関数の停留点であり、幾何学のみならず数学内外の 他分野(特異点論、相対論などの理論物理学他)との関連においても重要である。また、ローレン ツ空間内の曲面には、因果的特性と呼ばれる曲面が時間軸に対してどのような配置をされているか、

という特性があり、それにより、曲面上には、リーマン計量、ローレンツ計量、あるいは退化計量 を持つ点がある。これらのうちの一種類の計量のみが入った曲面を、それぞれ、空間的曲面、時間 的曲面、光的曲面と呼ぶ。一般には、1 つの連結な曲面が空間的、時間的、光的のうちの2つ以上 の部分を持つ。1つの曲面内で因果的特性が時間的から空間的に変化することを、型変化すると表 現する。 空間的曲面は、ユークリッド空間内の曲面と同様に扱える性質を多く持ち、リーマン面上 の複素解析などの従来の極小曲面論的な手法を用いてよく研究されてきた。時間的曲面もある程度 は空間的な場合と同じく解析が可能であり研究が進んでいるが、空間的曲面ほどではない。他方、

曲面が光的な点を持つ場合は、その点で計量が退化してしまうため、従来の研究手法が使えず解析 が困難であるという側面を持つ。このような特異性を持った曲面に対しては、光的な部分の形を考

察したGu (1985)、Klyachin (2003) らの結果を踏まえ、近年、例の構成や特異性の現れ方に関す

る研究が始まったばかりで、まだわかっていないことが多い。

本学位論文では、3 次元ローレンツ・ミンコフスキー空間内の平均曲率零曲面の研究を因果的特 性に着目して行い、基本的な例の構成及び分類や、曲面の特異点の近傍での曲率の振る舞いの解析 などの重要な研究成果を得ている。以下に、本論文の各章の内容の概要を記す。

第1章では、研究の背景及び概要が述べられている。

第2章では、リーマン型平均曲率零曲面を研究し、因果的特性による分類、表現公式の導出、例 の構成を行っている。リーマン型平均曲率零曲面とは、19世紀にB. Riemannが構成した円の一径 数族によって構成されるユークリッド空間内の極小曲面をローレンツ・ミンコフスキー空間内で考 えたもので、曲面のうち最も基本的なものの一つである回転面の一般化である。ここで、ローレン ツ・ミンコフスキー空間内の円とは空間内の一つの直線を固定するローレンツ群による軌道をいい、

ユークリッド空間における通常の円、双曲線、放物線がこの意味での円になる。リーマン型平均曲 率零曲面は、因果的特性の型が変化しない場合の研究はなされていたが、一般の場合は解析されて

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いなかった。その理由は、曲面の径数表示が複雑な楕円積分を含む形で書かれているため、因果的 特性を全て踏まえた上で型の変化を正確に求めるのが困難であったからである。本論文では、型変 化する場合も含め全てのリーマン型平均曲率零曲面の分類及び型変化の特徴の解析を行っている。

さらに、その応用として、曲面の計量が退化する光的な点の集合が直線からなるという特異性を持 つ様 々 な平 均曲 率 零曲 面 の例 を新 た に構 成 し、 藤森-Kim-Koh-Rossman-Shin-高橋-梅原-山 田

(2012) により導入された指標と呼ばれる不変量を具体的に計算している。さらにまた、ベルンシュ

タイン型の問題(全平面上の関数のグラフについての一意性の問題)と関係して、放物線の一経数 族で構成される全平面上のグラフとなる平均曲率零曲面の新たな例を構成した。なお、最近、小林 曲面と呼ばれる曲面のクラスが藤森-川上-國分-Rossman-梅原-山田 (2016) によって構成され、本 研究で構成した全平面上のグラフの新たな例は、小林曲面の中に含まれる対称性の高い重要な例で あることが指摘された。

第3章では、平均曲率零の回転面の一種であるカテノイドの呼ばれる曲面についての境界値問題 を研究している。Rafael López 教授(スペイン、グラナダ大学)との共同研究で、「1つの直線に 対する回転で不変な2つの同じ半径の円を空間内に与えたとき、それを境界に持つ極小曲面の個数 はいくつか」という古典的な境界値問題をローレンツ・ミンコフスキー空間内の平均曲率零の回転 面に対して考えたもので、曲面の因果的特性と2つの円の位置関係に依存して解の個数がどのよう に変化するかを調べている。ユークリッド空間内では、このような2つの円で張られる極小曲面は 回転面であることが知られており、このような回転面はカテノイドと呼ばれて相似の自由度のみが ある。2つの境界円の間の距離が十分小さい時には解の個数は2であり、ある(既知の正数の)距 離だけ離れている時には解の個数は1、それよりも離れれば解は存在しないことが知られている。

一方、ローレンツ・ミンコフスキー空間内の平均曲率零曲面の場合には、ユークリッド空間の場合 と同様の状況もあれば、2つの円の距離に応じて任意の有限個数の解が得られる場合もある。本論 文では、2つの境界円の因果的特性とそれらの位置関係によって、解の個数を分類している。

第4章では、時間的平均曲率零曲面について、特異点とガウス曲率の挙動に関する研究を行って いる。時間的曲面が持つ性質であってユークリッド空間内の曲面やローレンツ・ミンコフスキー空 間内の空間的曲面と顕著に異なるものとして、曲面の主曲率と呼ばれる曲率が常に実数の範囲内で 取れるとは限らないという点がある。本論文では、極小面と呼ばれるクラスに属する、特異点を持 ちうる時間的な平均曲率零曲面のどのような性質が実数あるいは複素数の主曲率の有無を特徴付け るかを決定している。曲面が実数の主曲率を持つか複素数の主曲率を持つかは、それぞれ、ガウス 曲率が負、正であることに対応する。そこで、時間的な平均曲率零曲面上に現れる任意の非退化特 異点におけるガウス曲率の挙動を完全に分類した。具体的には、カスプ辺以外の特異点の近傍では ガウス曲率は零にはならず、ガウス曲率が負の値を持つか正の値を持つかは、それぞれ特異点上で 波面と呼ばれる特異点付き曲面の構造を有するか否かで決まることを証明した。さらに、カスプ辺 の近傍におけるガウス曲率はカスプ辺の特異曲率と呼ばれる不変量で完全に記述されることを証明 している。

以上の結果は、ローレンツ・ミンコフスキー空間内の平均曲率零曲面の研究において先駆的なも のであり、この分野において価値ある業績と認められる。

よって、本研究者は博士(数理学)の学位を受ける資格があるものと認める。

参照

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