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氏 名 吉 田 俊 平

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Academic year: 2021

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斎藤喜博の授業観における政治性の検討

専 攻 人 間 教 育 専 攻 コース 人間形成コース 氏 名 吉 田 俊 平

研究の目的

斎藤喜博 (1911‑1981)は群馬県佐波郡 島村立島小学校における実践を代表とし て戦後の日本の教育実践と授業研究に大 きな影響を与えた人物である。彼は教師時 代、校長時代と合わせて 39年間、教育実 践家として活躍した。現場引退後も全国の 小学校、中学校、高校で授業実践を行い、

さらに「教授学研究の会Jの設立、運営に 携わりJ、くつかの大学で学生の指導にあ たる等、その生涯を通じて教育の発展に全 力を尽くした。斎藤の教育者人生は時代の 学校教育が抱える問題を克服し、人々を啓 発するように奮闘し続けるもので、あった。

斎藤喜博はある時期において日本の教育 界の第一人者であった。幅広い支持を得て いた存在であり、戦後日本の教育界に与え た影響は多大である。そのため彼自身を直 接取り上げた先行研究は数多く存在する。

そこで本研究では、斎藤の授業観とその政 治性との関係に着目する。斎藤は時にはそ の時代の政治や権力に対して反発したり、

時には飲み込まれたりしながら自身の教 育思想を作り上げていった。そのため斎藤

指 導 教 員 梶 井 一 暁

の授業観はある種の政治性を帯びていた と言える。本研究ではそのような斎藤の授 業観とその政治性に着目し、斎藤自身の著 作からその相互の影響関係を明らかにし てし1Oまた斎藤の実践が教育運動の中で、

どのような役割を果たしたのかを解明し ていく O

各章の要点

第一章では、斎藤喜博の仕事と生涯につ いて概観してみることで、斎藤の仕事や実 績について一般的な理解や基本的な事項 を確認し、まとめた。

第二章では、斎藤喜博の授業観を表す、

いくつかのキーワードをもとに、斎藤の授 業観にはどのような特徴があったのかを みた。斎藤の目指した教育は、「固定され た到達点」を否定し、子どもに「無限の可 能性Jがあるという子ども理解に基づき、

「見えないものまで引きずりだす」という 教育であった。その際、問題となるのは教 師の資質であり、子どもの可能性が引き出 されない場合は教師の教育の方法が間違 っているとされた。教師の資質において重 要なことは「みえる」ということであった。

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「みえる」においては、授業の中で、反応 としての子どもの思考や感情を把握する ことと同時に、子どもの状態に対して即座 に対応することのできる状態が「みえてい る」ということで、あった。

斎藤に独自の教育観として、芸術的教育 観と教育の演出を取り上げ解読した。

また、斎藤は教師が実践をせずに、政治 活動に従事することを批判した。教師は実 践に深く沈潜し、独自の実践を作り上げる べきであると主張する。教師が政治と対峠 するには、政治活動に依らずに授業実践に よって、政治を超えるような仕事をするべ きであるとした。

第三章では、斎藤の授業観と政治との関 係を考察した。斎藤がなぜ、政治活動では なく実践によって政治を超える仕事を目 指したのか。そこには、実践を伴わない中 身のない政治活動に対する批判とともに 教育を「無力ではかないもの」と認識して いた斎藤の現実的な政治感覚があったと 思われる。斎藤にとって、政治は教員が片 手間で行うようなデモ活動でたおせるほ

ど弱いもので、はなかったのである。実践に 入り込み、独自の実践を生み出すことで、

教育を政治の影響力から守ろうとしたの ではないか。教育から政治の影響力を取り 除くために、斎藤は政治から隔離された教 室の中での実践を通して、様々な教育実践 や理論を打ち立てていった。そして、その

ような教育実践や理論は表面上、政治活動 的な色合いを排されているが、戦略的に政 治の影響力を教育から遠ざけるように徴 密に練られたものであった。斎藤の打ち出

した数々の教育実践や理論は革新派の教 員たちの活動を支え援護するものにもな った。教育現場の中で、政治からの影響力 を拒否する形で独自に教育実践を積み重 ねることにより、教育に固有の価値を生み 出した。それは斎藤においては例えば、子

どもは無限の可能性を持っているという 子ども観で、あった。教育に固有の価値を足 場にすることで、外の政治を際限なく批判 できる。この構造は教育を政治の影響力か ら守りつつ、教育と政治の距離をとること のできる、かなり有効な戦略で、あったと考 えられる。斎藤の教育理論の根幹には、常 に現状の批判から出発するとし、う構造が あっiたために、このような斎藤の授業観や 教育理論が生まれたとも言える。

今後の課題

今後の課題としては、解読と分析にあた り、その大部分を斎藤喜博自身の著作を使 用したので、客観性が十分に担保されてい るのかどうかという問題がある。斎藤喜博 の著作だけでなく、同時代に生きた第三者 の斎藤に関する評価、評伝、批判、論争等 を分析に使用し、より深い理解を深めるこ とが今後の課題である。

参照

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