無水マレイン酸ー酢酸ピニル共重合体の粘性
著者 相田 博
雑誌名 福井大学工学部研究報告
巻 11
号 1.2
ページ 221‑225
発行年 1963‑03
URL http://hdl.handle.net/10098/5074
221
無水マレイン酸ー酢酸ピニル共重合体の粘性
相 田 博
Viscosity of Maleic Anhydride‑Vinyl Acetate Copolymer Hiroshi AIDA
The viscosities of maleic anhydride‑vinyl acetate copolymer in several kinds of solvents were measured at 250C by the use of an Ostwald type viscometer. The reduced viscosities in dioxane and tetrahydrofuran were proportional to the concentration
,
but those in polar sol vents such as acetone,
N,
N / ‑dimethylformamide and water decreased with the increase in concentration and had minimum values at critical concentrations. lt was found that this abnormal behavior was ascribable to an ionic structure of copolymer in polar solvent rather than the rate of shear and the absorption of copolymer on capillary walls.序
品ゐ.a
悶高分子物質の稀薄溶液の粘性については多くの研究がなされ還元粘度と濃度とのあいだに比例 関係が成立し,極限粘度は分子量および分子のひろがりと密接に関係していることはよく知られて いる九 しかし、溶媒の種類によっては比例関係が成立せず,稀薄なある濃度で還元粘度は極小を示 し,それより低濃度では濃度の滅少とともに還元粘度は増大するへ とくに高分子電解質水溶液で はさらに低濃度で極大のあらわれることが報告されている剖
‑h
マレイン酸共重合体の稀薄水溶液 の粘性については Ferryおよびその協同研究者出‑ h
物延4)らの報告があり,解離したカノレボオキi/)レ基に原因する静電気的相互作用によって粘性は著しい影響をうけることが示されたD 乙れに反 して有機溶媒中での挙動についてはあまり研究がなされていないように思われる口マレイ y酸共重 合体は飽和炭化水素系の搭媒に不溶であり,ベyゼユ/中では有限な膨潤をするだけであるが,多く の極性溶媒には可溶であることが経験されているへ そこで著者は種々の溶媒を用いて粘性を測定
し,溶液中における共重合体の挙動について知見を得ようとしたのであるo
2 . 試 料 お よ び 実 験 方 法 2 . 1
試 料0.25モノレの無水マレイY酸と0.25モノレの酢酸ピニノレを276gのべyゼシに溶かし, これに重合開 始剤アゾピスイソプチロニトリノレO.25gを加え700Cで3時間反応を行なわせた。ゲノレ状の反応生 成物よりベyゼ/'を除いて真空乾燥し,これをメナノレエナノレケトンに溶かし石油ベンジyで分別を 行なった。 A(15g) , B (15g) , C (12g)の三部に分け,このうちAを再度メチルエチノレケトシおよ び石油ベ/'i/ンで分別沈澱させ常温で真空乾燥して試料とした。
溶媒はアセト/',メチルエチノレケトY,i/オキサ/',テトラヒドロブラY,i/.Jナノレホノレムアミ ドおよび水で,常法81Iこ従い蒸溜して用いたロ
2 . 2
粘 度 計オストワノレドおよび傾斜型粘度計を用いた。オストワノレド粘度計の毛細管半径はO.248mmおよ びO.273mmである口傾斜型粘度計は和国的の考察した装置を用いた。毛細管半荏はO.209mmお
本 助教授
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よび0.340mmであるo最初に共重合体の濃厚溶液を作りとれをうすめて使用した。測定温度は25
土
O . l
OC
である。3 . 実 験 結 果 と 考 察 3 . 1
還元粘度と遣度オストワノレド粘度計で測定された相対粘度より還元粘度η(,p/C)を求め,濃度
C
との関係を示す と図1が得られるo比較のため水溶液の場合を図2に示すD テトラヒドロブラシ,1/オキサY溶 液1.6
1.4
1.2.
U 1.口
、
、
、
副
.
.
占広d
U¥ 号 骨
(ヰJ 0.2
o 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5,. 0.6
濃度C gj100ml
( 1 )
口印N‑N'
ジメチルホルムアミド (2) 0印 ジオキサン,テトラヒドロフラン (3) X印ア セトン 任)・印メチルエチノレケトン図1 ,J1p/Cと濃度
8
7 6
4
3
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1
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一ーーι一 一 一 」 ー
(21ー 一 一
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一 一 一 } す 一 一 一 一 ‑ " 一 一
企 (3)
0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.5
濃度C g/100ml
(1)水 (2)
N‑N'
ジメチルホJレムアミド (3)ジオキサン,テトラヒドロフラン図 2 7JBPjCと濃度 では比例関係が成立するoHugginsの式10)を用いて
η ,
p/C =C η J + k γ び yc
極限粘度〔η〕および溶質との相互作用を示す定数kを求めると表11と示す値が得られる。可提性高 分子の良溶媒中の
k '
は0.35で貧溶媒中ではこれより大きい値を示す傾向があるといわれているの で113,テトラヒドロブラシ,ジオキサyは貧溶媒に近いとみられるo
これに反してアセト γ, メチノレエチノレケト Y, ジメチノレホノレム アミドなどの極性の大きい溶媒中ではもp/Cは濃度の増加ととも に減少し,ある濃度で極小を示すようになるO η,p/Cが極小を示 す濃度は次の順序で大きくなっているD
表 1 極限粘度(甲〕と k'
溶 媒
i ω I
k'テトラヒドロフラン I0.50 I 0.50 ジ オ キ サ ン 10.4910.41 ジオキサシ,テトラヒドロブラyくアセトン,メチノレエチノレケト yく1/メチノレホノレムアミドく水 乙の順序は誘電率の大小のj聞になっているD すなわち250Cにおける誘電率はpオキサン(2.21)12), アセトシ (20.7)12), N, N' 1/ ;lチノレホノレムアミド (36.7)13), 水 (78.5)14)であるo
還元粘度と濃度とのあいだに比例関係の成立する場合を正常な挙動とみなすと,誘電率の小さい 溶媒では正常であるが,誘電率の大きい溶媒では異常性を示し,誘電率が大きい程高濃度で異常性 のあらわれる傾向を示している。乙の原因としてずり速度による二次構造の崩壊,毛細管壁への高
無水マレイン酸ー酢酸ピニノレ共重合体の粘性 223
分子の吸着,高分子鎖のイオン化,鎖のからみ合いなどが考えられるoそこではじめにずり速度の 影響を調べた。
3 . 2
還元粘度とずり速度ポ
P
アクD
ノレ酸などの高分子電解質は稀薄水溶液でも小さいずり速度によって二次構造の崩壊の 生ずる場合のあるととが報告されている15)。有機溶媒中でも二次構造の形成が考えられるので9)傾 斜型粘度計を用いて粘性を測定した。溶媒の密度と稀薄溶液の密度とは等しいと仮定すると,相対 粘度は次式であたえられるへη← 4/to
'1' ‑ 3/t十(l/to)/d (l/t
同
(l/to)乙乙にtoは容量Qの溶媒が毛細管を流出するに要する時間, tは溶液のときの時間である。さらに 毛細管壁におけるずり速度
r R
は次式であたえられるヘ九
4Q n π R 3 to叫ここに
R
は毛細管の半径である口還元粘度1)1f'l/Cとずり速度
r R
との関係を示すと図3および図4のようになるo i/オキチシ,テU
¥ ¥ o l
,
.
.
'.0
;::. 0. ...
0.2
(1 ) A...A.
品
(2)
200 <WO ‑‑660 800 1000 12.00
a at6Daι r ι (tJ
且'
。
υ
¥ ¥
(2 )
;::.句 0.4
0.2
200 400. 600 800 1000 1200
ずりi虫度sec‑1・ ずり速度sec‑1
(l)0.5g/100 ml (210.05g/100ml (110.05g/1ω ml (2) O. 5 g/100 ml 図3 118P/Cとずり速度
(テトラヒドロフラン溶液) 図4 'lJIfP/Cとずり速度(アセトン培技) トラヒドロブラシ,アセト γ,水のいずれの溶媒においても,ずり速度が 100‑‑1000sec.‑1の範囲 では還元粘度はずり速度によって著しく変化しないことがわかる。そこで次に毛細管壁への共重合 体の吸着の影響を調べた。 1.0
3 . 3
還元粘度と吸着高分子稀薄溶液において高分子が毛細管壁に吸着 0.8 するζとによって毛細管の半径が見かけ上減少し,
。
6そのため粘度に異常性の生ずることが指摘されていミ る16】口そ乙で半径の異なる毛細管を用いて粘度を測 ;::.
0'"
定した。還元粘度と半径との関係を図 5に示す口と れにより半径が減少すると還元粘度はわずかに増加 する傾向を示すが,半径が0.26mm前後では共重合 体の吸着によると考えられる還元粘度の濃度変化は すくないにとがわかる口従って異常性は高分子鎖の
0.2
2.0 2.2 2.4 2.6 2.8 3.0
毛細管半径cm
(1) 0.05 g/l00 ml 但.J0.2 g/l
∞
mlイオシ化ζl関係していると考えられる口そこでジメ 図5 'lJ8P/Cと毛細管半径(アセトン溶液) チノレホノレムアミド溶液および水溶液の電気伝導度を測定したD
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3 . 4
電気伝導度の測定交流ブリッジ法 (1000cps)によって電気伝導 度を測定した。電極には白金黒が付着しである。
溶液で測定した容器定数は 0.455cm‑1,純水の比 伝導度は 0.91x10‑6 ohm‑1 cm‑¥ N‑N' i/ sチ Jレホノレムアミドの比伝導度は, 2. 74 X 10‑6 ohm‑1 cm‑1 (文献値17】1.83 X 10‑6 ohm‑1 cm‑1)である。
測定温度は250C で あ る 口 純 溶 媒 の 比 伝 導 度 を Ko,溶液のを Kとし K‑K
o I
KoCと濃度Cとの 関係を示すと図6が得られる。 i/sナノレホノレムア ミド溶液では電導度は水溶液の場合の1/50位で あるが,濃度とともに著しく変化することがわか るO メナノレエチノレケトンの場合も純ケト yの比電 導度は1X 10‑7 ohm‑1 cm‑1程度であるが171,共重 合体を 0.5g/l00 mlを含む溶液では1.1X 10‑6 ohm‑1 cm‑1の比電導度をもつようになるo極 性 溶媒ではいずれも共重合体の存在によって電気伝 導度が増大する口水溶液の場合より類推して共重 合体はかなりイオy化の状態にあるものと推察される口4 . 結
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濃度C g/100 ml (1)水 位 )N‑N'ジメチルホJレムアミド
図6 電気伝導度と濃度
マレイシ酸ー酢│酸ピニノレ共重合体の粘性を測定しテトロヒドロブラY,i/才キナyなどの誘電率 の小さい溶媒中では正常な挙動を示すが,ケト Y,アミドなど誘電率の大きい溶媒中では異常性を 示す乙とをみとめたD 乙の異常性は二次構造の形成,管壁への吸着などに原因せず,共重合体のイ オy化によるものと推察されるD
なお共重合体はUメチノレホノレムアミド中で深紅色に発色する口発色現象と異常粘性,電気伝導度 との聞には深い関係があるものと思われるD この点については別に報告する予定である口
おわりにこの研究に対し柊始御懇切な指導を賜わった本学山田教授および試料調整に助力をいた だいた高瀬巌技官に感謝する。
(昭和37年10
月
5日高分子学会北陸地方大会発表)参 考 文 献
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