著者 野田 勉, 出原 敏孝, 石田 美雄
雑誌名 福井大学工学部研究報告
巻 19
号 2
ページ 177‑182
発行年 1971‑09
URL http://hdl.handle.net/10098/4769
177
弱 電 離 プ ラ ズ マ 中 の 音 波 の 伝 播
野 田 勉 ・ 出 原 敏 孝 ・ 石 田 美 雄
Propagation of Acoustic Wave in Weakly Ionized Plasma Tsutomu
NODA, Toshitaka
IDEHARAand Yoshio
ISHIDA(Received Apr. 15, 1971)
A c o u s t i c wave g e n e r a t e d i n t h e r e g i o n o f n e u t r a l gas i s i n j e c t e d i n t o t h e r e g i o n o f weakly i o n i z e d p l a s m a . As t h e plasma d e n s i t y i s i n c r e a s e d a t t h e c o n s t a n t pre
部ureo f hackground n e u t r a l gas , t h e v e l o c i t y o f a c o u s t i c wave i n t h e l a t t e r r e g i o n i n c r e a s e s , and when t h e plasma d e n s i t y becomes 2 . 3 5
10~cm-3,i t i s l a r g e r than t h a t i n t h e former r e g i o n by 16%.
1 序 論
比較的低圧力〈圧力 P話10‑2To:町〉の気体中す,
グロー放電を用いてつくられたプラズマにおいては,
粒子の熱運動を介して伝播する波のモードとして,電 子気体の上を伝播する電子プラズマ波動と電子とイオ
γの混合気体上を伝播するイオン音波が存在すること が理論的に予想され
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また実験でも観測され,各々 の波のラγダウ減衰2)及び非線形項の効果として現わ れるエコーめの現象等興味ある現象が多くの研究者に よって研究されてきているo両者の波動は粒子聞の運 動量の輸送が近距離衝突によってではなしクーロン 力による遠距離衝突を介して行なわれることを除い てm中性気体中の音波と形式的に類似の波動である。手 立 ー /K中
中性気体中の音波か日産Vo=vー士主 (moは中性気
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体粒子の質量
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oは中性気体の温度,Kはポルツマ ン定数〉であるのに対して,電子プラズマ波動の位相/ K中ー
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度 ),イオン音波の位相速度は Vi=/~22pz V
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一方,高い圧力の気体 (P之1To町〉中でつくら れたプラズマは一般に弱電離ぐ電離度Xく10‑4) で
普応用物理学科
あり,荷電粒子の中性気体粒子との衝突が頻繁に起る ため荷電粒子系の上だけを伝播するこつのモードは大 きな減衰を受け,ほとんど伝播できないことが予想さ れ,実験の方でもP""1 Torrの気体中のプラズマに おいてはイオン音波は一波長も伝播しないうちに減衰 してしまうのが観測されているの。このような状況の もとで伝播可能な唯一のモードは電子気体,イオン気 体,中性気体の三種類の気体からなる混合気体の上を 伝播するそードであることが Ingard等によって示さ れた円彼等の理論は電離度の小さい場合にはこのそ {ドはほとんど中性気体中の音波と同じモードである が(このモードを以後 r音波f と呼ぶことにする〉三 種類の気体の中で通常最も温度の高い電子気体が系全 体の温度を高め,音速を大きくする効果をもち,また 電子の運動エネノレギーの一部が音波のエネノレギーに変 換され,音波の減衰度を少なくするだけでなく音波の 増巾も可能であることを示しているO
また,中聞の圧力領域(lO‑Z< Pく1To町〉では三 つモード〈電子プラズマ波動,イオン音波,音波〉が 混在すると考えられる。荷電粒子系の上を伝播する前 の二つのモードは電離度Xが小さくなった極限で、は消 えてしまうそードであり,音波はXが 1に近づく極限 ではイオン音波と一致するモードである。
われわれはここで,今までにほとんど研究されてい ない三番目のモード,即ち荷電粒子の存在によって変 更を加えられた音波についての研究を述べる。この波
動を研究する意義は 1) 音速が電子温度 Teと電離 度Xの関数として変化することから,プラズマの診断 の一方法として発展する可能性を秘めていること口特 に核融合を目ざす高温高密度のプラズマの診断の方法 として,レーザー光による診断と共にプロープ法をし のぐものになる公算もある。 2) 音波の減表の測定よ り荷電粒子系と中性粒子系の聞のエネルギー輸送の究 明が可能である。特に音波増巾はそのこと自身興味の ある課題である。
第2節に実験装置と実験方法を,第3節に実験結果 と考察を,第4節に本報告を通じての結論を述べる。
2 実験装置及び実験方法
われわれが用いた実験装置のプラズマ発生部は図1 に示すように内径Dが931414全長7001414のパイレックス
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図1 実験装置の概略;1) ガス流入口I2)傍 熱型陰極, 3) 陽極, 4) スピーカー,
5) マイク, 6) 円筒型プロープ
ガラス管でつくられた真空容器で,同じくD=95伽長 さ30014111の枝管を有するo(十字形になった部分の中心 を原点とし図に示すようにx軸 z軸をとり,紙面 に垂直にy軸をとる。〉傍熱型の酸化被閥塗極〈直径 25111111)と円板状の陽極〈直径60111111)が24011114の間隔を おいて置かれ,両者の聞に直流放電を行なってプラズ マを発生させる。用いた中性気体はアルゴンで,図の 左端から流量計を通して流し込み,流量計を調節して 管内の圧力を10‑1Torrから4Torrま で 変 化 さ せ るD また x方向に動きうる円筒型プロープ,スピー カー,マイクロフォγが枝管から挿入されている。発 生したプラズマの電子温度 Teはプロープを用いて測 定した結果 P=3.1 Torrの条件のもとで,放電電 流 Idが200mAのとき,原点の位置で8.3X1040K
であった口〈このとき放電維持電圧は 210Vで あ っ た。〉密度の空間分布は,密度に比例すると思われる イオγ飽和電流をプロープより検出し,プロープをモ ーターで駆動してx方向分布を測定する方法で実験的 に決定された。図2(a)にその分布の様子を示すoX軸 とY軸の尺度の違いに注意すれば,プラズマの密度分 布がほぼZ軸に関して軸対称であることがわかる。
この図で、縦軸に目盛った密度nの値はラγグミュア{
.プロープ法で、較正した値で、あるO
次に Iaを増加させれば, nは増加するがその様子 を図2(b)示す。ここで各曲線は Idをパラメーターと したy=z=O (x軸〉上の密度分布である。原点に おける。密度の変化を放電電流の変化に対してフ。ロッ トしたのが図2(c)であるD この図よりnとIaはほぼ 比例しているのがわかるo
一方,枝管の一つからダイナミック・スピーカーが 管軸から1901414の位置に挿入されており,ここで音波 を発生し,プラズマの存在する領域へ伝播させるO 枝 管の他の一つから挿入されたx方向に可動なダイナミ
ック・マイクで音波を受信し,ロックインアンプに入 れ,スピーカーをl駆動するための信号の一部をRefe‑ renceにして位相検波を行なうO マイクをx方向に駆 動してロックイγアンプの出力をxの関数として
XY
レコーダーに記録し,音波の伝播波形を測定する。す なわち,この測定系は一種の干渉計を構成する。音波 の周波数fが 10阻Iz以下では波長Aが容器の内径D と同程度になれ容器の内壁が音波の伝播に影響を及 ぼすことがわかったので、比較的壁の影響の少ない f::: 17KHz付近の周波数で実験を行なった。
3 実験結果及び考案
前節で述べた干渉計を用いて測定した音波の伝播波 形を図3に示す。図(a)はId(n)を一定に保って, yを パラメーターにして
x
方向へ伝属する音波の波形を 示し,図(b)はIaをパラメーターにして x軸上を伝 播する波形を示しているD 図(a)より各波形の同位相な 点を結べばx方向に伝播する音波の波面がえられるoここでは波形の山にあたる点を結んだ波面を図4に示 す。図中丸印で表わしたのが山の頂上の位置である。
図(a)は放電を行なわないとき,即ちプラズマが発生し ていないで,中性気体だけが存在する場合の波面であ るO平面波に近い音波が伝播しているのがわかるがス ピーカーの中心線上付近で位相が遅れているoこれは 用いたスピーカーの特性であると思われる。図(b), 図(c)は各々 Iaが60mAと180mAのときの波面を示
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図2
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図2Cc)プラズマの中心軸上におけるプラズマ密度 の放電電流に対する変化, Ar,P=3.1 Torr.
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図2Cb) x軸上のプラズマ密度分布, (1) Id = 10mA, 白)2伽nA,(3) 30mA, (4) 50mA, (5) 70mA, (6) 100mA, (7) 15白nA,(8) 2印m A,Ar,P
=3.1 Torr.
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にプラズマの密度分布図と同時に破線で示されてい るO また,このときy方向の音波の強度分布は図5に 示されている。この図よりスピーカーの直怪の範囲を はずれると急速に強度が減少し,スピーカーの指向性 のよいことがわかるo
しているoプラズマ密度の最も大きい付近 (x=y = Oの付近〉で波長が伸び,音速Vが大きくなった結 果,プラズマ領域を通過した後〈図の右方〉では図(a) に比べで波面の中央がふくらんでいるのがわかるoプ ラズマ密度の大きい領域で波長が伸びる様子は図2(a)
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Ca) x方向へ伝播する音波の波形Ar,P=
3.1 Torr. Id=OmA, f=17.01KHz.
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図 3
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図3 Cb) x軸上の音波の伝播波形Ar,P = 3.1 TOIT
f=17.02KHz
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Id=60mA Cb)
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図4
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方向へ伝播する音波の波面 Ar, P=4.1 Torr. f=17.02KHz.o
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以上の実験から,プラズマが発生して中性粒子の中 に荷電粒子が混在すると中性粒子だけの場合より,音波 の波長が伸びa音速が大きくなることが定性的にわか った。しかし図2からもわかるようにプラズ、マ密度n はx方向とy方向に一定でないため,音速Vも一定の 値をとらず各点のnに相当した局所的な値をとるもの と思われるD そこでプラズマの密度の変化に対する音 速の変化を定量的に調べる一つの方法として, x軸上 のプラズマ密度の分布〈図2(b))を管の直径D内に平 均化した値五を求め,また一方プラズマ領域を通過し た後の音波の波形のx方向へのずれ8を中性気体だけ の場合波形(曲線(a))と比較して求め,これより直径 D内の平均の音速
V
をv = 一一旦.‑. D‑f
Voの関係を用いて求める。ここで Vo(中性気体の音速与は図 3(b)の 曲線(a)より波長んを求め,これに音波の周波数f=
17.02KHzを乗じて, Vo=3.65X102mjsecと求めら
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これより,管内の中性気体〈アルゴン)の温 度 Toを計算したところでは.Toは陰極のヒーター で熱せられて 6.5X1020Kになっていることがわか る。〕かくして求められたVを瓦に対して描いたのが 図6である。中性気体中に混在するプラズマ粒子の割 合Xが増加するにつれてVが大きくなることがわか るoXが10‑8のオーダーであるにもかかわらずV
が162. ず号;.:干勾平均寄t.干 x
,
o' c",
・J)プラズマの平均密度の変化に対する平均音 速の変化.Ar. P=3.1 Torr, f=17.02KHz.
波長の伸びより, Id=25白nAのときプラズマの中心 部においてはTo匂 1.2XI080K.x=8cmではTo
=
6.5XI020Kになっていることになるが, このような 状況は実験に用いたような稀薄な気体中では考えられ ないことである。
以上の考察より中性気体中にプラズマが混在するこ との効果が系全体の温度を高めること以外にもあるの ではないかと考えられるoこのことについては現在検 討中である。
350
•
図6
4
~2 2
常 軌 掛S尚 昆 高 色 、 (Cl!I)
音波のy方向の強度分布
Ar,P=3.0Torr. Id=OmA. f=14KHz
Vz
図5
向日FMZ
冒
・
﹄
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v
円枠制前
e d鴨 占 伊
中性気体の領域で発生させた音波を弱電離プラズマ 領域へ入射し2 後者の領域で音波の伝播を調べたとこ ろ,音速が前者の領域より大きくなることを見出し た。中性気体粒子の密度を一定にし,プラズマの密度 を増加さすにつれて音速も大きくなれプラズマ密度 が2.35X 109cm‑8に達すると音速は中性気体中の場合 の値を16%もうわまわるのが観測された。これは既に 提出されている理論では説明されない。
最後に,実験において協力していただいた応用物理 学科学生,斉藤茂樹,二村剛,亀山太喜男,園田英 信,大盛勝,東浦孝雄の諸氏に感謝する。なお本研 究には,昭和44年度及び45年度の共同研究として,名 古屋大学プラズマ研究所より御援助いただいたことを 付記して感謝の意を表するo
結 論 4
%も増加することは驚くべきことである。
一方,プラズマ中の音波伝播の理論は Ingard等町 及びAnbrechtめによって提出され,プラズマが音速 を大きくする傾向にあることを示したO この理論によ ると,われわれの実験におけるように電離度Xが非常 に小さい場合においてはプラズマが混在することの効 果は電子温度が系全体の温度を高めることによって音 速が速くなるということである。即ちこの場合の音速 は
参 考 文 献
(1) T.H. Stix The Theory of Plasma Waves (Mc Graw‑HiU Book Company, 1962)
(2) ].H. Marmberg and C.B. Wharton : Phys. Rev.
Letters 6 (1964) 184 and 17 (1966) 175.
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で与えられるD実験条件は Te=8.3X1040K,To= 6.5XIQ20Kであるのでこの理論に従がうとすれば,
実験で観測された音速の変化16%はXの値が10‑8のオ ーダーに相当していなければならないことを意味して いるoこの値は図6に示されたように測定されたXの 値よりはるかに大きく,われわれの実験結果はこの理 論では説明しえないことになるO
音速を速める他の効果として考えられるのはプラズ マの存在によって中性気体の温度
T
oそのものが高く なることであるoしかし,この考えに従がうと各点のv=jJ1 ‑X)rKTo+XKTe mo
Phys. Rev. Letters 19 0967,' 219.
H.lkez ,IN. Takahashi and K. Nish;kawa Phys Fluids 12 (1959) 85:l
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U. Ingard and島1.Schulz : Phys. Rev. 158 (1967) 106.
(6) L. Aubrecht : Phys. Letters 27 A (1968) 526 and Czech. J. Phys. B 20 (1970) 694
(昭和46年4月15日受理)