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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 山 本 敏 央

     学位論文題名

    Genetic studies of quantitative traits ln rlce (Oryza sativa 工 ・ ) by using DNA markers (DNA マーカー利用によるイネの量的形質に関する遺伝学的研究)

学位論文内容の要旨

  量 的形質の遺伝学的基礎としては、効果が小さく、環境の影響を受けやすい、多くの 量的 形質遺伝子座(quantitat晝vetrmtlociニQIL冫が関与していると考えられている。

DNAマ ー カ ー を 利 用 し た 量 的 形 質 遺伝 解析 (Q1L解析 )は 、そ れ以 前の 古典 的な 統 計 遺伝 学による量的形質遺伝解析と比ぺて、遺伝 子座の位置を意識した解析であると い う点 で 大き く異 なる 。個 々のQrLの染色体上で の位置が明らかになることで、既報 の 主働 遺 伝子 やQILと の異 同、 多面発現や密接連 鎖について座乗位置からの判断が可 能 に なっ た 。こ のこ とはDNAマー カー を 用い て希 望の 遺伝 子型 を持 った 組み 換え 個 体 を 積 極 的 に 選 抜 、 淘 汰 す る と い うDNAマ ー カ ー 選 抜 育 種 (rnarkePassis旭d Selection;MAS)が質的形質だけでぬく量的形質 に関しても理論的に可能であること を 意 味 し て い る 。 ま た 密 接 連 鎖 したDNAマ ーカ ーを 起点 にし た飢L関与 遺伝 子の 単 離 (map由Sedclomng) も 理 論 的 に 可 能 で あ る こ と を 意 味 し て い る 。   著 者は イ ネに おい て飢Lの マー カー 選 抜育 種や 関与 遺伝 子の 単離 への 足が かり を つ くる ことを目的に本研究を開始した。対象形質 としては、実用農業形質でありかつ 生 物 学的 に も重 要な 形質 であ る出 穂性 (第2〜4章、 第6章 )と 稈形 質( 第5、6章 ) に着 目し、その遺伝的基礎を明らかにすることを試みた。

  解析 集団は農林水産省農業生物資源研究所で養 成された日本型イネ品種日本晴とイ ン ド 型イ ネ 品種Kasむathの戻 し交 雑後 代集 団を 主に 用い た。 日本 晴 とKasぬthのF2 集 団 はHaIusMmaet酊 ぺ1998) が2275個 のRFIPマ ー カ ー か ら な る 高 密 度 連 鎖 地 図 を作 成し、また、Yanoet甜.(1997)がその遺伝子型情報を利用して出穂性に関する飢L 解析 を行った集団である。

  第2章 で は 、F2集 団 の 飢L解 析 で検 出 され た出 穂期 関連QIL,剛I,Hd2 Hd3に つ Iゝ てRnP連 鎖地 図上 への 位置 づけ を試 みた 。日 本晴 を反 復親 にし てKasa】athと の 間 でBC3F1ま た はBC3F2集 団 を 作 成し た 。そ の中 からRFLPマー カー を用 いて 対象 と す る飢L周辺 領域 がへ テ口 、か つ他の染色体領域 ができる限り日本晴型ホモの個体を 選 抜 し た 。 こ れ ら の 個 体 を 各 飢Lに 関 す るFl個 体 と 考 え 、F2集団 でRFIPマ ーカ ー の 遺伝 子型と出穂日の調査、F3系統で出穂性に関 する後代検定を行った。その結果、

Hdj,Hd2 Hd3の 遺伝 子型 の判 定が可能となり、 通常の連鎖分析によってそれぞれ第 6染 色 体動 原体 付近 、第7染色 体長 腕末 端お よび 第6染 色体 短腕 に主 働遺 伝子 とし て マ ッピ ン グす るこ とが でき た。 すなわちQILを推 定領域ではなく連鎖地図上のーつの

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点として同定した。

  第3章 で は 、 各QTLに 関 す る 準 同 質 遺 伝 子 系 統(Qn′Nn´ ) をMASに よ り 作 出 し、自然条件下および日長を制御した条件下で反復親である日本晴とともに栽培した。

その 結果Hdl,Hd2 Hd3は日 長条件によって発現程度が変 化する感光性遺伝子座であ る こ と を 明 ら か に し た 。 ま た 各QTL‑NIL同 士 を 交 雑 し たF2集 団 のQTL解 析 やQTL 集積 系統 の比 較栽 培に より 、HdlはH.d2お よび ・Hd3に 対して、またHId.2はHd3に 対し て上 位的 に働 くこ とが 明 らかとなり、出穂期関連qIL問の相互作用を統計的にで はなく表現型の違いから証明した。

  日 本晴 とKasalathの 戻し 交 雑後 代の ー集 団に おい て、F2集 団のQTL解 析で は検 出 され なか った 新た な出 穂期 関 連QTLが 検出 され た。 第4章 では このQIL(H・dみに つ い て 調 査 を 行 っ た 。Hd6はF2集 団 の よ う なHmやHd2が 分 離 す る 条 件 下 で は 統 計 的に 有意 差が 認め られ ず飢Lとして検出できなかったが、 一部の戻し交雑後代集団の よう に、 これ らQILが分 離し ない条件下では主働遺伝子並 の強い作用カを示した。第 1章と 同様 のマ ッピ ング を行 い、Hd6を 第3染色 体長 腕に 主 働遺 伝子 とし て位 置づ け た。 またqrL′N凡 の比 較栽 培 によ りHd6に つい ても 感光 性 遺伝 子で ある こと を明 ら かに した 。さ らにHId6がF2集 団で 検出 され なか った 主要 因は 、感 光性 遺伝 子Hd2と の間 の相 互作 用に 起因 する こ とを明らかにした。Hd6につ いての一連の実験から、い わ ゆ るpnmaぴp0.puぬHonの 飢L解析 のみ では 量的 形質 の 遺伝 変異 を全 て説 明し き れ な い 危 険 性 を 示 し 、 戻 し 交 雑 後 代 の Q1L解 析 の 重 要 性 を 示 し た 。   第5章で は、 日本 晴とKasalathの戻し交雑後代の一集団 において、主働遺伝子様の 表現 型分離が観察された株開帳性に関して調査した。同集 団の親個体のグラフ遺伝子 型に おいてへテロ型を示す染色体領域について、集団内のRFIPマーカーと表現型の分 離を 調査し株開帳性に関わる遺伝子のマッピングを試みた 。その結果、株開帳性遺伝 子蹴(t)は第9染色体長腕に位置づけられ 、親品種(KaSa]atmやF2集団で明瞭でない 草型関連形質についても主働遺伝子支配の 例を見出した。

  第6章 で は 、 日 本 の 基 幹 品 種で ある コシ ヒカ りの 遺伝 的背 景にKasmath染 色体 断 片 を 導 入 し たBClF3集 団187個 体 に つ い て116の 融uマ ー カ ー を ぃ ゝ て 連 鎖 地 図 を作 成し た。 出穂 期、 稈長 、 穂長および節間長の飢L解析 を行い、出穂期については 4個、 稈長 につ いて は6個、 穂 長に つい ては4個 、節 問長 については上位節問(第1、 2節 間 ) と 下 位 節 間 ( 第3、4、5節間 )で それ ぞれ6個、11個 のQnー(PくO.001) を検 出し た。 既報 のQILと座 乗位置および作用の方向を比 較した結果、異なる品種間 で 検 出 さ れ る 共 通 の 飢Lの 存 在を 示唆 した 。ま た出 穂期 関連 飢Lと 下位 節間 伸長 に 関わ るQILのよ うに 、形 質問 で相 関を 示し 、か つ一 部の 飢Lが連鎖地図上でクラスタ ー を 形 成 す る 例 を 見 い だ し 、 節 間 伸 長 の 発 育 機 構 に つ い て の 考 察 を 行 っ た 。   本研究における一番の工夫は量的形質の遺伝解析を効率よく進めるために、戻し交雑 後代 集団 を育 成し 、DNAマー カーを用いて遺伝的背景を積 極的に均ー化したことであ る。 量的形質の遺伝解析の成否を決定づける最も重要なポ イントは形質の評価方法お よび 評価に耐えられる解析材料の養成であると考えたから である。イネの出穂性およ び稈 形貿 につ いて は、 戻し 交 雑後代の解析を行うことによってqILの本質に迫ること がで き、当初の目的であったqnーのマーカー選抜育種や関 与遺伝子単離のための有用 な情 報および材料を提供することができた。形質によって 困難度合いは異なるだろう が 、 結 論 と し て 、DNAマ ー カ ー利 用に よる 舛L解析 が、 単 なる 表現 型領 域の 推定 手

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段 のみではなく、未知の遺伝子の本質に迫っていく手段として有用であることが証明 で きた。

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学位論文審査の要旨

     学位論文題名

    Genetic studies of quantitative traits ln rlce ( 〇 り 堵 口 sativa 己 . ) by using DNA markers (DNA マーカー利用によるイネの量的形質に関する遺伝学的研究)

  本 論 文は 、図22、 表6、107ベ ージ から な る英 文で 、別 に5編の 参考 論 文が添えられ ている。

  農業上重要な形 質の多くは量的形質である。一般に量的形質遺伝子座(quantitative trait locl;

QTL)は 、 個 々 の 遺 伝 子 座 の 効 果 は 小さ く、 環 境の 影響 を受 け やす い。DNAマー カー を利 用 し た量 的 形質 遺伝 解析(on解析 )は 、 動植 物の 複雑 な 遺伝 形質 を理 解す る ために有効で あること が明 ら かと なっ てき た 。こ のこ とはDNAマー カー を 用い て希 望の 遺伝 子 型を持った組 換え個体 を積 極 的に 選抜 ・淘 汰 する とい うDNAマ ーカ ー選 抜 育種 が量 的形 質に 関 しても理論的 に可能で あ り 、 また 密接 連 鎖し たDNAマ ーカ ーを 起点 に したQTL関与 遺伝 子の 単離 も 可能 であ るこ と を 意味 す る。 本研 究は 、 イネにお いてQTLのマーカ一選抜育種 や関与遺伝子の解明を目的 とし、実 用農 業 形質 であ る出 穂 性(第2〜4章、第6章)と稈形質(第5、6章)に着目し、その遺 伝的基礎 を明らかにした。

  第1章では、RFJ̲Pマーカーを 用いた作物連鎖地図の展開お よびその育種学的利用につ いて最近 の動 向 を概 説し た。 イ ネで は、 日本 晴とKasalathのF2集団 において2275個のRFLPマー カーから なる 高密度連鎖地図が農林水産 省農業生物資源研究所で作成 され、その遺伝子型情報を 利用して 多様 な育種形質の詳細な解析が 可能となった。本研究は、複 雑な遺伝構成をもつ形質の 解析精度 を高 めるために、日本型イネ品 種日本晴とインド型イネ品種Kasalathの戻し交雑後代集 団を主に 用いて解析を行っ た。

  第2章 で は 、 日 本 晴 とKasalathのF2集団 のQTI解 析で 検出 さ れた 出穂 期関 連QTL,Hdl,Hd2 Hd3につ いてRFJ̲P連 鎖 地図 上へ の位 置づ け を試 みた。日本 晴を反復親にしてKasalathとの間で BC3F1また はBC3F2集団 を作 成し た 。そ の中 からRFJ.Pマ ーカ ー を利 用し て対 象と す るQTL周 辺 領域 がへテ口で、それ以外の染 色体領域ができる限り日本晴 型ホモの個体を選抜した。 これらの 個体 の 後代 から 、RFIPマーカー の遺伝子型と出穂日を調査 して出穂期関連QTLの解析を 行った。

    ‑ 259―

雄 也

芳 義

野 本

佐 島

授 授

教 教

査 査

主 副

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その結果、H.cj,Hd2,Hd3の遺伝子型を明瞭に判定することが可能となり、それぞれ第6染色体 動原体付近、第7染色体長腕末端および第6染色体短腕部に主働遺伝子としてマッピングすること が で きた 。 す なわ ちQTLを 推 定領 域 で はな く 連 鎖 地図 上 の ーつ の 点 とし て 同 定し た。

  第3章では 、各QTLに関す る準同 質遺伝子 系統(QTL‑NIL)をRFIPマーカーを利用して作出 し、自然条件下および日長を制御した条件下で反復親である日本晴とともに栽培した。その結果 Hdl, Hd2,Hd3は日長条件によって発現程度が変化する感光性遺伝子座であることを明らかに した。また各QTL‑NII同士を交雑したF2集団のQTL解析やQTL集積系統の比較栽培により、Hdl はHd2#‑3よびHd3に対して、またHd2はHd3に対して上位的に働くことが明らかとぬり、出穂 期 関 連 QTL間 の 相 互 作 用 を 統 計 的 に で は な く 表 現 型 の 違 い か ら 証 明 し た 。   第4章では、日本晴とKasalathの戻し交雑後代の一集団において、F2集団のonc解析では検 出されなかった新たぬ出穂期関連QTLが検出されたので、このQTL(//d6)について調査を行った。

Hd6はF2集団のようなHdlやH|d2が分離する条件下では統計的に有意差が認められずQTLとし て検出できなかったが、qn」(Hd6)は、他のQTLが分離しない条件下では主働遺伝子並の強い作 用カを示した。Hd6を第3染色体長腕に主働遺伝子として位置づけるとともに、QTL‑Nnーの比 較栽培によりHd6についても感光性遺伝子であることを明らかにした。また、Hd6がF2集団で検 出されなかった主要因は、感光性遺伝子Hd2との間の相互作用に起因することを明らかにした。

Hd6についての一連の実験から、F2集団のQTL解析のみでは量的形質の遺伝変異を全て説明し きれない危険性を示し、戻し交雑後代のQTI解析の重要性を示した。

  第5章では、日本晴とKasa亅athの戻し交雑後代の一集団において観察された単純劣性遺伝する 株開帳性について遺伝解析を行った。分離集団において、RRPマーカーと表現型を調査し株開 帳性に関わる遺伝子のマッピングを試み、株開帳性遺伝子S pばt)が第9染色体長腕に位置づけら れることを見い出した。親品種(Kasaぬth)やF2集団では、明瞭な草型変異が観察されなっかった の で 、 草 型 関 連 形 質 に つ い て も 戻 し 交 雑 後 代 の 解 析 が 重 要 で あ る こ と が 判 っ た 。   第6章では、日本の基幹品種であるコシヒカルの遺伝的背景にK:aぬth染色体断片を導入した 187個体から なるBClF3集団を 作成し、116のRRPマーカーを用いて連鎖地図を作成した。出 穂期、稈長、穂長および節間長のqn解析を行い、出穂期にっいては4個、稈長については6個、

穂長については4個、節間長については上位節間(第1、2節間)と下位節間(第3、4、5節間)

でそ れぞれ6個、11個のQ1Lを検出した。既報のQ1Lと座乗位置および作用の方向を比較した 結果、異なる品種問で共通のQ1Lが存在することを示唆した。また、出穂期関連qILと下位節間 伸長に関わるQ1Lのように、形質問で相関を示し、かつ一部のQ1Lが連鎖地図上でクラス夕一を形 成 す る 事 例 を 見 い 出 し 、 節 間 伸 長 の 発 育 機 構 に つ い て の 考 察 を 行 っ た 。   以上のように、分子マーカーに基づく高密度連鎖地図を利用して、イネの出穂性およぴ稈形質 に関するぜILを明らかにし、gILのマーカー選抜育種や関与遺伝子単離のための有用な情報を得 た。この成果は,学術的・実用的に高く評価される。よって審査員一同は,山本敏央が博士(農

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学)の学位を受けるのに十分な資格を有するものと認めた。

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