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Three‑Alpha Resonance States in 12C      ( 12C に お け る 3a 共 鳴 状 態 )

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博 士 ( 理 学 ) 黒 河 千 恵

     学位論文題名

Three‑Alpha Resonance States in 12C      ( 12C に お け る 3a 共 鳴 状 態 )

学位論文内容の要旨

  有 限量子多体系である原子核の世界では、核子がお互いの間の核カによって一体場を形成し、

各々 の核子はその平均場の中を独立に運動するという描像がよく成り立つ。このようにして核子 軌道が成り立ち、シェル構造や魔法数が出現するという見方に基づいた理論的枠組(平均場模型)

とレて、シェル模型やハートリー・フオック模型などが発展してきた。一方、軽い原子核では、核 子相 関の効果が非常に重要となるため、平均場という枠組では理解できない現象が数多く観測さ れて いる。そのような現象を理解する上で重要となる性質としてクラスター構造がある。クラス ター 構造とは、4He原子核であるQ粒子や、160核などの強く束縛された原子核が部分系となり、

これ らが緩く結合しあった構造である。クラスター構造の描像は、各々のクラスター内の核子間 の結 合が比較的強く、クラスター間の相関が比較的弱い場合に初めて意味を持つ。簡約して述べ ると、 内部相関が強く、外部相関が弱い ということができる。そのため、クラスター構造を持 つ状 態は、系のエネルギーが構成要素となるクラスターに分解するシキイ値の近傍にあるときに 現れ 、その多くは多体の共鳴状態となる。これまでの安定核の研究では、共鳴工ネルギー領域に 多様 なクラスター構造が現れると期待されている。たとえぱ、本研究で対象とする12C原子核の 場合 は、励起状態の構造に3つのaクラスターが正三角形を作る配位や、一直線上に並んだよう な配 位が予言されている。しかしながら、こういった多体の共鳴状態として現れる構造を、現在 まで の理論分析のほとんどは束縛状態として、もしくは2体の散乱状態として扱うに留まってい た。 こういった枠組は、共鳴工ネルギーが小さく、幅が狭い状態には有効であるが、幅の広い共 鳴状態を扱うには限界があることが知られている。

  そ こで本研究は、3体系である 12Cにおける3a共鳴状態に注目して、これを多体の共鳴状態 とし て扱い、多体の非束縛工ネルギー領域におけるスペク卜口スコピーを始めて本格的に分析し たも のである。そこで、採用した方法は以下の2つである:1)複素座標スケーリング法、2) 析接 続法。どちらも、多体の非束縛状態を扱う上で優れた方法であり、共鳴状態のェネルギーの みならず、崩壊幅を同時に求めることが可能である。

  得 られた結果に基づいて、12C原子核の構造について詳しく見ていきたい。12C原子核は基底 状態 とそれに伴う回転帯は平均場的な要素が重要であることが指摘される一方、3aに解離するし きい 値近傍の状態は、シェル模型では記述が難しく、3aクラスター模型が再現に成功している。

その典型的な例がo+2状態である。0+2状態の存在は、最初に天体核物理分野でHoyleが予言し、そ れに 基づぃて実験で観測された。12Cは赤色巨星中でHe燃焼によって作られるが、Hoyleは観測 され る宇宙での炭素の組成比を説明するには、Er0.4 MeVの所に、0+状態が必要であると予 言し た。1970年代から盛んに行われた3a模型の解析によると、02構造は3つのaクラスターが ゆる く相互作用している状態として解釈されている。さらに、ごく最近では3aの凝縮状態である と い う 新 し い 解 釈 が 提 案 さ れ 、 新 しい クラ スタ ー構 造の 可能 性が 指 摘さ れて きて いる 。     これまでの3a模型に基づく理論計算では、02状態の励起状態として2才の存在が予言されて いた。しかしながら、この状態の候補とされる共鳴状態は実験的にスピンが確定されず、(0十)と いう 解釈にとどまっていた。3aクラスター模型の正当性を示すためには、このエネルギー領域の 状態 のスピンを決定することは大変重要である。これに対して、2003年に大阪大学の実験グルー プ が、 励 起工 ネル ギーEr911 MeVの領 域に0+2+状 態の2つ の 状態が存在していること     ―150

(2)

を確認した。見っかった2+状態に関しては、0+2状態の励起状態である可能性が極めて高い。さ らに、観 測され た0十 状態は3aのしきい 値より3MeVほど上に 存在し ているに も関わ らず、崩 壊幅が約2.7MeVと異常に大きい。この状態も3aクラスター構造をしていると考えられているた め、異常に大きな幅を作り出すメカニズムを解明することは12Cのクラスター構造を統一的に理 解する上で非常に重要となる。このように、幅の広い共鳴状態に関するクリアな実験データが得 られつっあるが、冒頭でも記述したように、幅の広い状態を従来の束縛状態近似の枠組で記述す ることは極めて難しい。

  そ こ で、 ま ず 、12C3ai共鳴 状態の 構造を半 微視的(OCM)3体模型 に複素 座標スケ ーリ ング法(CSM)を適用して調べた(1.参照)。本模型では、aクラスター間の相互作用には、有効 核子聞カとaクラスターの内部波動関数から微視的に計算されたものを用いる。この相互作用は、

2a系の散乱位相差を広いェネルギー範囲で再現する。また、12Cの基底状態とそれに伴う回転帯 は、3aではなく、それらが崩れ、一中心的配位になったシェル模型的要素が重要である。本研究 では、この点を3a模型空間の枠組の中で補うために、基底回転帯のエネルギー間隔を合わせるよ うな3体カを現象論的に取り入れている。次に、実験で確認された幅の広い0+状態の存在の可能 性を調ぺるため、解析接続法を採用した(2.参照)。

1 複素座標 スケーリング法による解析

観測された2+状態のエネルギー・幅を非常に良く再現する2才状態が理論的に求まり、この状態 が、連続状態:[8Be(0十)十a]との結合が強く、計算を収束させるには高い角運動量の配位が必要で あることがわかった。そして、従来の3Q模型の解析結果とコンシステントな描像、すなわち、2 状態は8Be核が0十状 態を持 ちその周りを残りのa粒子がD状態で運動していることから、0才状 (8Be 0+で 、 残 り の Q S状 態 で 運 動 ) の 励 起 状 態 で あ る と 考 え ら れ る 。   一方、12Cの長 年の問題 として 、3つ のaク ラスタ ーが正三角形配位をしている3一状態の励 起状態(4―、5‑)が実験で確認されていないことが指摘されていた。我々は、求まった共鳴状態の エネルギーと崩壊幅から、実験でスピンが確定されていない状態の中に、4―状態とみなせるもの が存在することを示唆した。この結果は従来の3a模型でも示されているが、今回は崩壊幅も評価 すること によっ て、正三 角形配 位が12Cに存在 する可能 性をさら に後押 しする結 論を得た。

2 より幅の広い状態を得るために‐解析接続の方法‐

複素座標スケーリング法(CSM)を用いた解析により、実験を再現する形で多くの3a共鳴状態を得 るこ とがで きた。し かしながら、22状態近傍に観測された幅の広いO十状態(Er〜3MeV、r‑3 MeV)のス ピン及 び構造に 関して は、言及 できな かった。 それは、 現在の 枠組の中でのCSM は、幅の広い状態まで精度良く追えなかったためである。そこで、幅の広いO+状態の存在の可能 性 を 迫求 す る ため 、 解 析接 続 の 方 法(ACCC)CSMを 組み 合 わ せた 、ACCC十CSMを用い た。

ACCCは、 束縛状 態のェネ ルギー領域で、ポテンシャルの強さの関数としてエネルギーの2乗根 を求め、それを非束縛状態の領域へ解析接続することにより共鳴バラメータを特定する方法であ る。また、ポテンシャルの強さの関数として求めるエネルギーの2乗根を共鳴状態まで広げるこ と に より 、 さ らに精 度良く状 態を特定 できる のが、ACCC+CSMである。 ただし 、元来ACCC 2体系の共鳴パラメータを探す方法として発展してきたため、強さを変えるポテンシャルは2 の相互作用が用いられて来た。しかしながら、これを3体系に適用した場合、サブシステムであ る2体系(8Be核)の性質を変えてしまうことになる。そこで我々は、強さを変えるポテンシャル として3体カを用い、この問題を回避した。

    上 記 のACCCCSMの方 法 を 用い た 結 果、3aの シキイ 値より1.66 MeV上に、幅1.48 MeV を持つ0+状態を得た。今後、この状態と観測された0+状態との対応関係や、大きな幅を作り出 すメカニズムを調べることは非常に重要な課題である。また、導入した3体カの強さに対する0+

状態 のエネ ルギーの 依存性を調べたところ、共鳴工ネルギーEr=4.6 MeVに存在する0+状態の 3体カに対する依存性が非常に小さいことがわかった。この状態の構造は、いくっかの理論解析 から、3つのaクラスターが直鎖状に並ぶ配位が多く含まれている可能性が指摘されている。今     151

(3)

回 の3体 カ に 対 す る 振 舞 い と 合 わ せ て 、 今 後 詳 細 な 分 析 が 必 要 で あ る と 考 え る 。   本 論文では、12Cにおける3cr共鳴状態のスベクトロスコピーの分析を、3体の非束縛状態と いう観点から行った。この分析は、今後、Na原子核(N:整数)の多クラスター構造を持つ状態を、

多 体 の 非 束 縛 状 態 の 枠 組 で 解 析 し て い く こ と へ の 足 掛 か り と な る と 考 え る 。

(4)

学位論文審査の要旨

主査   教授   加藤幾芳 副査   教授   藤本正行

副査   教授   岡部成玄(情報基盤センター)

副査   助教授    大西    明 副査   助教授    升井洋志

     、(北見工業大学情報処理センター)

     学位論文題名

Three‑Alpha Resonance States in 12C      ( 12C に お け る 3a 共 鳴 状 態 )

  

有限量子多体系である原子核は、原子核を構成する核子間に働く核カによって一体 場を形成し、その平均場の中を各々の核子が独立に運動し、シェル構造や魔法数を出 現するという描像に基づいた理論的枠組、すなわち、シェル模型やハートリー・フオ ック模型などでよく記述されると考えられている。一方、軽い原子核では、平均場と いう枠組では理解できない現象が数多く観測されており、そのような現象を理解する ためにシェル模型やハートリー・フオック模型とは異なるクラスター構造の考えに基 づい た研 究が 行わ れて きた 。ク ラス ター 構造 とは、

4He

原子 核で ある

a

粒子 や、

160

核などの強く束縛された原子核が部分系となり、これらが緩く結合しあった構造であ る。クラスター構造の描像は、¨内部相関が強く、外部相関が弱い¨ということで表現 される。従って、クラスター構造を持つ状態は、系のエネルギーが構成要素となるク ラスターに分解するシキイ値の近傍にあるときに現れると考えられ、その多くは多体 の共鳴状態となると考えられる。この観点から、軽い核における共鳴エネルギー領域 に多様なクラスター構造の存在について研究されてきた。例えば、本研究で対象とす る12C原 子核 の場 合は、 励起 状態 の構 造に

3

つ のaク ラス ター が正 三角 形を 作る配 位 や、一直線上に並んだ配位を持つ状態の存在が予言された。しかし、これまでの多く の理 論研 究で は、

3

つの

a

の 共鳴 状態 とし て現 れる構 造を束縛状態として、あるいは

2

体 の散 乱状 態と して扱 うに留まっている。従って、これまで研究は、共鳴工ネルギ ーが小さく、幅が狭い状態には有効であるが、幅の広い共鳴状態を扱うには限界があ ると指摘されてきた。

  

本 研究 は、

12C

におけ る3a共鳴 状態 を多 体の 共鳴 状態 とし て扱 い、 共鳴 幅が狭 い 状態だけでなく、幅の広い共鳴状態まで含めた多体の非束縛工ネルギー領域における

(5)

スベ クト 口ス コピ ーを始めて系統的に分析したものである。ここで、共鳴状態を解く ため に採 用し た方 法は、1)複素座標スケーリング法と2)解析接続法で、どちらも、

多体 の非 束縛 状態 を扱う上で優れた方法であり、共鳴状態のエネルギーのみならず、

崩壊 幅を 同時 に求 めることができる。本論文は、これの方法を用いて得られた結果に ついて、12C原子核の励起構造を詳しく論じたものである。

  Hoyle

は観 測さ れる宇宙での炭素の組成比を説明するには、共鳴エネルギーE,‑0.4

MeV

領域 に、

0+2

状 態が 必要 であ ると 予言 し、 その後 の実 験で 実際 に観 測さ れ、理論 的 に も そ の

0+2

構 造 は

3

つ のaク ラス 夕‐ がゆ るく 相互 作用 して いる 状態 とし て解 釈 され てき た。 最近 、こ の0゛

2

3a

の 凝縮 状態 である とい う新 しい 解釈 が提 案され、

新し いク ラス ター 構造 の可 能性 を示 すも のと して注 目さ れて いる 。一 方、

2003

年に 大 阪 大 学 の 実 験 グ ル ー プが 、 励 起 工 ネ ル ギ ー

Ex=9

11 MeV

の 領域 にO゛ と2+状 態 の2つの 状態 が存 在して いる こと を観 測し た。 観測された2゛状態に関しては、0+2状 態の 励起 状態 であ ると考えられ、これまでの理論予測とも一致するが、同時に観測さ れ た

O

+ 状態 は

3a

の し き い 値 よ り

3MeV

ほ ど 上 に 存 在 し て い る に も 関わ ら ず 、 崩 壊 幅 が 約

2.7 MeV

と 異 常 に 大きく 、こ れま での 理論 研究 には 全く ない 新た な状 態で あ った。

  

これらの問題に対して本研究では、3aのシキイ値より上に、従来のO十宀、2゛2状態の 存 在 を

3

体 共 鳴 状 態 と し て再現 し、 さら に、

1

66MeV

のエ ネル ギー に、 幅1.

48MeV

を持 つ新 たな

O

+ 状態の存在を予言した。この新たな幅の広いO゛状態は、大阪大学で 観測 され たO゛状 態に対 応す るも のと 考え られ 、問 題解 決の

1

っと なる もの と考えら れる。

  

ま た 、

12C

の 励 起 構 造 に関す る長 年の 問題 とし て、

3

つの

a

ク ラス ター が正 三角 形 配位をしている3一状態からの励起状態(4−、5―)が実験で確認されておらず、3Q模 型の 問題 点と 指摘 され てい た。 これ に対 し、 本研究 は、

3a

模 型か ら予 言さ れる共鳴 状態 のエ ネル ギー と崩 壊幅 から 、実 験で スピ ンが確定されていない状態の中に、4一 状態 とみ なせ るも のが 存在 する こと を論 じた 。この 解釈 は従 来の

3a

模 型で も論じら れてきたが、本研究で3体共鳴状態としてその崩壊幅も評価することを新たに加えて、

正三角形配位が12Cに存在することを結論したものである。

  

こ れを 要す るに 、申 請者 の研 究は 、12Cにお ける励起スベクト口スコピーの分析を

3a

共 鳴状 態の 境界 条件 を正 しく 取り 扱っ て行 ない、 従来 の理 論的 研究 をは るかに超 えた 信頼 性の ある 結諭を得ることに成功したものであり、原子核の構造の解明に貢献 するところ大なるものがある。

  

よって、著者は北海道大学博士(理学)の学位を授与される資格あるもの、と認める ものである。

参照

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