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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 環 境 科 学 ) 友 澤 森 彦

    学 位 論文 題 名

    Population History and MechanlSmSOf     POpulationGenetiCStruCturlngof

theLargeJapaneSeWOOdMOuSe  ウ 〇 匸 た 絖 Z偲 ゆ ぞCZ( 硲 Z岱 )

( アカ ネズ ミの 集団史 と集 団遺 伝学 的構 造の 創出 メカ ニズ ムに 関す る研 究)

学位論文内容の要旨

  遺伝的 多様 陸は 生物 多様 陸の 源である。従ってその創出維持過程を解明することは生 物 多様陸 の保 全や 生物 の進 化を 考える上で重要である。しかしながら野生集団で遺伝的 多 様陸が どの よう に生 まれ 、維 持されているのかにっいては未解明のプロセスが多く、

十 分に理 解さ れて いな い。 本研 究では日本固有の哺乳類であるアカネズミの野生集団に お いて様 々な 遺伝 子マ ーカ ーを 用いて遺伝的多様陸を精査することにより、進化的タイ ム スケー ルに おけ る遺 伝的 多様 陸の創出・維持に関わる機構を解明することを目的とし た 。遺伝 的多 様性 には 過去 ・現 在における様々な要因が影響すると考えられるが、本研 究 では第 四紀 の環 境変 動・ 島嶼 間遺 伝子 流動 ・染 色体 変異 の3つの要因に特に着目し、

解析を行った。

  まず、 第四 紀の 環境 変動 がア カネズミの遺伝的多様陸に与えた影響を把握するため、

日本全国から採集したアカネズミのミトコンドリア遺伝子((弘ろ)の全塩基配列(1140b p) を決定し、系統樹作製およぴ各種系統地理学的解析により過去の集団史の推定を行っ た 。その 結果 アカ ネズ ミに は島 嶼グ ルー プご とに 固有 の5つ のミトコンドリア系統(本 州 四国九 州・ 北海 道・ 伊豆 ・佐 渡・薩南)が存在することが判明した。それぞれの周辺 の 島嶼の 系統 (北 海道 ・伊 豆・ 佐渡・薩南)は最終氷期以前にほば同時に分岐している こ とから 、こ の時 期に 急激 に日 本列島全体にアカネズミが分布を広げたことが伺える。

ま た 、 中央 の島 嶼に 広く 存在 する 系統 はそ の後 (約13万年 前) に広 まっ たこ とが 示唆 さ れた。 これ らの 結果 より 、ア カネズミの集団史モデルを構築することができる。っま り 「一つ 前の 氷期 間氷 期サ イク ルに 対応 して 、1回 目の 系統 の拡散が起こり、その際周 辺 島嶼に も移 入し た。 その 後の 環境変動に伴って、現在の中央島嶼の系統が既に拡散し て いる系 統を 置き 換え なが ら2回日の 拡散 をし た結 果、 現在 の系統分布にいたった」と するものである(2段階拡散モデノレ)。

  従来ミ トコ ンド リア 系統 の分 布パターンは現在の遺伝的多様性から過去の集団史を推 定 する上 で重 要視 され てき たが 、近年ミトコンドリア系統の分布は必ずしも集団史を反 映 し栓い こと が指 摘さ れる など 、その信頼性は疑問視されている。そこで複数の核遺伝 子(Irbp: 1152 bp,Ragl: 1016 bp,Ghr: 664 bp)の系統分布パターンを明らかにすること

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で 上 記 の集 団 史仮 説 の 検証 を行っ た。その 結果、島嶼 問の系統 関係はミ トコンド リア系 統 の そ れと は 異な る も ので あった ものの、 周辺の島嶼 集団に独 自の系統 が存在す るとい う 傾 向 は共 通 して い た 。こ の結果 は周辺島 嶼集団が本 土集団か らほばぃ っせいに 分岐し た と い う、 上 記の モ デ ルを 支持す るもので ある。この ような遺 伝子間の 不一致は 、選択 や 細 み 換え と いっ た 核 ゲノ ム の 特徴 に よっ て も 説明 で きる が 、 その 影 響はR.ag膿 誑 好 を 除 き いず れ の遺 伝 子 にお いても 弱かった 。上記のよ うなマー カー間の 不一致を 生み出 す 主 な 要 因 は 祖 先 多 型 の 維 持 か 、 集 団 分 岐 後 の 遺 伝 子 交 流 で あ る と 考 え ら れ る 。   次 に島 嶼 分 断化 に よる 遺 伝的多様 化の影響 を調べるた め、マイ クロサテ ライトマ ーカ ー5遺 伝 子 座を 用 いて 詳 細 な集 団 遺伝 学 的 構造 を 推 定し た。そ の結果、 アカネズ ミには 7つの 遺 伝 集団 が 存在 す る こと が 判明 し 、 それ ら は ミト コンド リア系統 の分布と ほば一 致 し た 。ミ ト コン ド リ ア系 統の分 岐年代推 定によると 周辺島嶼 集団は少 なくとも 最終氷 期 以前に分 岐してい る可能性 が高いた め、最終氷 期に再度遺伝的交流が起きた可お旨陸が 高 い 。 この 仮 説を コ ン ピュ ータシ ミュレー ションを用 いて検証 した結果 、薩南諸 島にお い て の み最 終 氷期 に お ける 交流の 可能性が 示唆された 。一方北 海道では その可能 性は低 い こ と が 判 明 し た 。 こ れ ら の 結 果 は 地 質 学 的 な 証 拠 か ら も 支 持 さ れ る 。   さ らに 、 ア カネ ズ ミの 遺 伝的多様 陸を特徴 付けている 要素のひ とっに染 色体変異 があ る 。従来、 染色体変 異は遺伝 的分化に 重要な役割 を果たすと考えられてきた。特に近年、

染 色 体 変異 に 関わ っ た 染色 体上の 遺伝子が 分化するこ とで種分 化が生じ る可能陸 が論じ ら れ て いる 。 しか し な がら そ れ を実 際 に野 生 集 団で 示 した例 は少ない 。アカネ ズミは2 本の染色体の融合により本州中央の境界を境に東で2n二ニニ48、西で2n二ニ46と染色体数が異 を る た め、 染 色体 融 合 の遺 伝的分 化への影 響を把握す るのに適 している 。まず、 染色体 標 本 上 で特 定 の遺 伝 子 配列 の み を特 異 的に 染 色 するFISH法 を用 い て 、ア カ ネズ ミ に お い て融合し た染色体 上にある と予想される遺伝子価ゆカ,巧,ゑ厩朋繖2)の染色体上の位 置 を特定し 、それら の情報を 手掛かり にして融合 染色体上 に6遺伝子 座のマー カー(C協2

〇 R炉 田 ,勵 協 勵, 」 [ めJ仭惻を 設定した 。それらの マーカー およぴそ の他の染 色体 上 の 遺 伝子 を 用い て 、 東西 集団間 で遺伝子 流動量を計 った結果 、融合し た染色体 上の遺 伝 子 と その 他 の染 色 体 上の 遺伝子 の流動量 には大きを 差が見ら れをかっ た。この 結果よ り 染 色 体融 合 は融 合 し た染 色体上 の遺伝子 においても ほとんど 遺伝的分 化に貢献 してい な いことが 判明した 。これは ハイブリ ッド個体(2nニ47)において融合した染色体上で組 み 換 え が起 こ るこ と に よっ てほば 滞りなく 流動が起き ているた めと考え られる。 さらに こ の 結 果は ア カネ ズ ミ の染 色体変 異が、ミ トコンドリ ア系統の 地理的分 布パター ンがで き るより以 前にほば 中立的に 西日本全 体に広まっ たことを示している。これらの知見は、

染色体構造の進化を理解する上で有用である。

  以 上よ り 、 アカ ネ ズミ の 野 生集 団 の遺 伝 的 多様 陸 には 過去の2度の系統 の拡散と 島嶼 へ の 移 入・ 隔 離の 歴 史 およ び島嶼 問での制 限された遺 伝子流動 が大きな 影響を与 えてお り 、 染 色体 変 異は ほ と んど 影響し ていない ことが明ら かになっ た。これ ら一連の 結果は ア カ ネ ズミ の 集団 史 を 明ら かにし たという だけでをく 、ミトコ ンドリア の系統分 散は必 ず し も 集団 の 拡散 を 意 味し ないこ と、日本 列島のよう に比較的 浅し恟咲 で隔てら れた島 嶼 は 海 水準 の 変動 に 伴 う隔 離と接 続によっ てそこに生 息する種 の遺伝的 多様陸を 保つ働 き を 持 っこ と 、染 色 体 融合 は融合 染色体上 の遺伝子に おいても 障壁とな らないこ となど

(3)

を示したという点で重要である。さらにこれらの知見は今後種内の集団間に見られる様

々 な 表 現 型 の 違 い の 遺 伝 的 基 盤 を 解 明 し て い く 上 で も 有 用 で あ る 。

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学位論文審査の要旨 主査   准教授   鈴木   仁 副査    教授    木村正人 副査    教授    齊藤    隆

    学 位論 文 題 名

    Population History and MechanlSmSOf     POpulationGenetiCStruCturlngof

theLargeJapaneSeWOOdMOuSeし4ウ 〇 6を ヶ 銘 勿Sざ ゥ ¢ CZ〇S銘S)

( アカ ネ ズ ミの 集 団 史と 集 団遺 伝 学 的構 造 の創 出 メカ ニズムに 関する研 究)

  遺伝 的 多様 性 は生物 多様性の 源である。 従ってそ の創出維 持過程を 解明する ことは生 物 多様 性 の 保全 や生 物の進化 を考える上 で重要で ある。し かしなが ら野生集 団で遺伝 的 多 様性 が ど のよ うに 生まれ、 維持されて いるのか について は未解明 のプ口セ スが多く 、 十 分に 理 解 され てい ない。本 研究では日 本固有の 哺乳類で あるアカ ネズミの 野生集団 に お いて 様 々 な遺 伝子 マーカー を用いて遺 伝的多様 性を精査 すること により、 進化的夕 イ ム スケ ー ル にお ける 遺伝的多 様性の創出 ・維持に 関わる機 構を解明 すること を目的と し た 。遺 伝 的 多様 性に は過去・ 現在におけ る様々な 要因が影 響すると 考えられ るが、本 研 究 では 第 四 紀の 環 境 変動 ・ 島嶼 間 遺 伝子 流 動・ 染色体変 異の3つの 要因に特 に着目し 、 解析を行った。

  まず 、 第四 紀 の環境 変動がア カネズミの 遺伝的多 様性に与 えた影響 を把握す るため、

日本 全国から採 集したア カネズミ のミトコ ンドリア遺伝子(Cyt6)の全塩基配列(1140 bp) を決 定し、系統 樹作製お よび各種 系統地理 学的解析により過去の集団史の推定を行った。

そ の結 果 ア カネ ズ ミ には 島 嶼グ ル ー プご と に固 有の5つの ミトコン ドリア系 統(本州 四 国 九州 ・ 北 海道 ・伊 豆・佐渡 ・薩南)が 存在する ことが判 明した。 それぞれ の周辺の 島 嶼 の系 統 ( 北海 道・ 伊豆・佐 渡・薩南) は最終氷 期以前に ほば同時 に分岐し ているこ と か ら 、 こ の 時 期 に 急 激 に 日 本 列 島 全 体 に ア カ ネ ズ ミ が 分布 を 広 げた こ とが 伺 え る。

  従来 ミ トコ ン ドリア 系統の分 布バターン は現在の 遺伝的多 様性から 過去の集 団史を推 定 する 上 で 重要 視さ れてきた が、近年ミ トコンド リア系統 の分布は 必ずしも 集団史を 反 映 しな い こ とが 指摘 されるな ど、その信 頼性は疑 問視され ている。 そこで複 数の核遺 伝 子(Irbp: 1152 bp,Ragl: 1016 bp,Ghr: 664 bp)の系統分布パターンを明らかにすることで上 記 の集 団 史 仮説 の検 証を行っ た。その結 果、島嶼 問の系統 関係はミ トコンド リア系統 の それ とは異なる ものであ ったもの の、.周 辺の島嶼集団に独自の系統が存在するという傾 向 は共 通 し てい た。 この結果 は周辺島嶼 集団が本 土集団か らほぽぃ っせいに 分岐した と

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い う 、 上記のモ デルを支持 するもの である。 このよう な遺伝子 間の不一 致は、選択 や組 み 換 え とい っ た核 ゲ ノ ムの 特 徴に よ っ ても 説 明 でき る が、 そ の 影響はRagl遺伝子を除 き い ず れの遺伝 子において も弱かっ た。上記 のような マーカー 間の不一 致を生み出 す要 因 は祖先多 型の遺伝 的浮動に よる固定か、集団分岐後の遺伝子交流であると考えられる。

  次 に島 嶼分断化 による遺伝 的多様化 の影響を 調べるた め、マイ ク口サテ ライトマー カ ー5遺 伝 子 座を 用 いて 詳 細 な集 団 遺伝 学的構 造を推定 した。そ の結果、 アカネズミ には 7つの 遺 伝 集団 が 存在 す る こと が 判明 し、そ れらはミ トコンド リア系統 の分布とほ ぽ一 致 し た 。ミトコ ンドリア系 統の分岐 年代推定 によると 周辺島嶼 集団は少 なくとも最 終氷 期 以 前 に分岐し ている可能 性が高い ため、最 終氷期に 再度遺伝 的交流が 起きた可能 性が 高 い 。 この仮説 をコンピュ ータシミ ュレーシ ョンを用 いて検証 した結果 、薩南諸島 にお い て の み最終氷 期における 交流の可 能性が示 唆された 。一方北 海道では その可能性 は低 い こ と が 判 明 し た 。 こ れ ら の 結 果 は 地 質 学 的 な 証 拠 か ら も 支 持 さ れ る 。   さ らに 、アカネ ズミの遺伝 的多様性 を特徴付 けている 要素のひ とつに染 色体変異が あ る 。従来、 染色体変 異は遺伝 的分化に重要な役割を果たすと考えられてきた。特に近年、

染 色 体 変異に関 わった染色 体上の遺 伝子が分 化するこ とで種分 化が生じ る可能性が 論じ ら れ て いる 。 しか し な がら そ れを 実 際に野 生集団で 示した例 は少ない 。アカネズ ミは2 本 の 染 色体 の 融合 に よ り本 州 中央 の 境 界を 境 に 東で2n=48、 西 で2n=46と 染色体数 が異 な る た め、染色 体融合の遺 伝的分化 への影響 を把握す るのに適 している 。まず、染 色体 標 本 上 で特 定 の遺 伝 子 配列 の みを 特 異 的に 染 色 するFISH法 を用 い て、アカ ネズミにお いて融合した染色体上にあると予想される遺伝子価ゆヵ,ガ,あ甑Plxna2)の染色体上の位置 を 特 定 し、それ らの情報を 手掛かり にして融 合染色体 上に6遺伝 子座のマ ーカー(Cdh20, Rnfl52,Phlpp,Tsn,ヰ7pIO,Myog)を設定した。それらのマーカーおよびその他の染色体上の 遺 伝 子 を用いて 、東西集団 間で遺伝 子流動量 を計った 結果、融 合した染 色体上の遺 伝子 と そ の 他の染色 体上の遺伝 子の流動 量には大 きな差が 見られな かった。 この結果よ り染 色 体 融 合は融合 した染色体 上の遺伝 子におい てもほと んど遺伝 的分化に 貢献してい ない こ と が 判明 し た。 こ れ はハ イ ブリ ッ ド個体(2n=47)において 融合した 染色体上 で組み換 え カ跿Bこる ことによ ってほぼ 滞りなく流 動が起き ているた めと考えられる。さらにこの 結 果 は アカネズ ミの染色体 変異が、 ミトコン ドリア系 統の地理 的分布バ ターンがで きる よ り 以 前にほぽ 中立的に西 日本全体 に広まっ たことを 示してい る。これ らの知見は 、染 色体構造の進化を理解する上で有用である。

  以 上より、 アカネズ ミの野生 集団の遺伝 的多様J陸 には島嶼 への移入・隔離に伴う遺伝 的 浮 動 および島 嶼問での制 限された 遺伝子流 動が大き な影響を 与えてお り、染色体 変異 は ほ と んど影響 していない ことが明 らかにな った。こ れら一連 の結果は アカネズミ の集 団 史 を 明らかに したという だけでな く、ミト コンドリ アの系統 分散は必 ずしも集団 の拡 散 を 意 味しない こと、日本 列島のよ うに比較 的浅い海 峡で隔て られた島 嶼は海水準 の変 動 に 伴 う隔離と 接続によっ てそこに 生息する 種の遺伝 的多様性 を保つ働 きを持つこ と、

染 色 体 融合は融 合染色体上 の遺伝子 において も障壁と ならない ことなど を示したと いう 点 で 重 要である 。さらにこ れらの知 見は今後 種内の集 団間に見 られる様 々な表現型 の違 いの遺伝的基盤を解明してしゝく上でも有用である。

  審査委員一同は,これらの成果を高く評価し,また研究者として誠実かつ熱心であり,大学

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院博士課程における研鑽や修得単位などもあわせ,申請者が博士(環境科学)の学位を受ける のに充分な資格を有するものと判定した。

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