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抗リン脂質抗体症候群における血栓傾向病態の解明と

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 大 友 耕 太 郎

学 位 論 文 題 名

抗リン脂質抗体症候群における血栓傾向病態の解明と      血栓症リスクの評価法

学位論 文内容の要旨

く 第 一 部 冫 【 背 景 と 目 的 】 全 身 性 エ リ テ マ ト ー デス に し ぱ し ぱ合 併 す る 抗 リン 脂 質 抗 体 症候 群(APS)は 、 血 栓 性 疾 患 で あ る 。APSの 代 表 的 な マ ー カ ー 抗 体 で あ る 抗 カ ル ジ オ リ ピ ン 抗 体(aCL)と そ の 対 応 抗 原 の ロ2グ リ コ プ ロ テ イ ンI( ロ2GPI)がAPSの 病 原 性 に 強 く 関 与 す る 。 向 血 栓 傾 向 の 病 態 に お い て 単 球 に お け る 組 織 因 子(TF)の 発 現 誘 導 は 特 に 重 要 だ が 、aCLと 日2GPIの 向 血 栓 細 胞 活 性 化 はin vitroで は 培 養 液 中 の 血 清 濃 度 に 依 存 し て い た 。 血 清 中 に ロ2GPIと 結 合 す る 分 子 が あ り 、 こ の 分 子 が 単 球 系 のTF発 現 に 関 与 す る と 考 え 、 プ ロ テ オ ミ ク ス の 手 法 を 用 い て こ の タ ン パ ク の 同 定 を 行 い 、APSの 血 栓 病 態 を 明 ら か に す る こ と を 本 研 究 の 目 的 と し た 。

【 材 料 と 方 法 】 ロ2GPIに 結 合 す る 血 漿 中 分 子 を 検 索 す る た め 、 ま ずFLAGタ グ 付 き ロ2GPI Fusion proteinを 作 成 し た 。FLAG‑ロ2GPIvectorを 作 成 し 、HEK293T細 胞 に ト ラ ン ス フ ェ ク ト し 上 清 分 泌 タ ン パ ク を ウ ェ ス タ ン ブ ロ ッ ト で 確 認 し た 。 精 製FLAG‑ロ2GPIを ヒ ト 血 清 中 に イ ン キ ュ ベ ー ト し 、 抗FLAG抗 体 で ア フ イ ニテ ィ ー 精 製 した も の をSDS‑PAGE後 、 銀 染 色し た 。 ゲ ル 上 に 分 離 し た い く っ か の 候 補 蛋 白 をonline‑nano LC‑MS/MSお よ びnrNCBI database MASCOT algorithmに よ っ て 解 析 し 、82GPI結 合 蛋 白 を 検 索 し た 。

【 結 果 】 同 定 さ れ た 蛋 白 の う ち 、 血 清 中 蛋 白 はApoBl00 (APOB)の み で あ り 、 ほ か は 細 胞 内 シ ャ ペ ロ ン や 夾 雑 物 と 考 え ら れ た 。APOBと ロ2GPIの 直 接 結 合 はELISAで 確 認 で き ず 、 酸 化low density lipoprotein(LDL)中 に 含 ま れ る ロ2GPIのLigand(=Ox‑Ligl)を 介 し て 、 ロ 2GPIと 酸 化LDLが 血 清 中 で 結 合 し て い る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。 抗CL/ロ2GPI抗 体 の 単 球 に お け るTF発 現 に 酸 化LDLが 関 与 す る か 調 べ る た め 、 マ ウ ス 単 球 系 細 胞(RAW264.7) を 用 い 、WBCAL‑1抗 体 ( モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗CL/ロ2GPI抗 体 ) お よ び 酸 化LDLの 存 在 、 非 存 在 下 で の TF mRNA発 現 を RealtimeRT‑PCRで 検 討 し た 。 酸 化 LDLお よ ぴ WBCAL‑1抗 体 の 存 在 下 で 非 常 に 強 いTF mRNAの 発 現 亢 進 を 認 め た 。 こ の 発 現 亢 進 は 、 APS患 者(aCL陽 性 ) の 血 清IgGに よ る 刺 激 で も 確 認 さ れ た 。 ま た 、 こ のTFの 発 現 誘 導 は 酸 化LDLの 主 要 な レ セ プ タ ー で あ る ス カ ベ ン ジ ャ ー 受 容 体(SR‑A,CD36,LOX‑1)の 阻 害 抗 体 に よ り 有 意 に 抑 制 さ れ た 。

【 結 論 】 プ ロ テ オ ミ ク ス 解 析 か ら ロ2GPIの ヒ ト 血 清 中 に お け る 主 要 な 結 合 タ ン パ ク は 酸 化 LDLと 考 え ら れ た 。 酸 化LDLが 抗 リ ン 脂 質 抗 体 症 候 群 に お け る 血 栓 形 成 病 態 に 関 与 す る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た 。

く 第 二 部 冫 【 背 景 と 目 的 】APS患 者 に お い て 酸 化LDLJロ2GPI複 合 体 の 血 中 濃 度 が 健 常 人 に 比 し て 有 意 に 高 い こ と が 報 告 さ れ て い る 。 酸 化 LDL関 連 物 質 と し て Lipoprotein‑associated phospholipase A2(L´pPLA2)測 定 が 知 ら れ て い る 。 酸 化LDLが APS患 者 に 高 発 現 す る 理 由 に つ い て 遺 伝 子 学 的 手 法 を 用 い て 検 討 を 行 っ た 。

【 対 象 と 方 法 】 ま ず 酸 化.LDL関 連 物 質LpPLA2のAPS患 者 に お け る 活 性 を 測 定 し た 。 LpPLA2測 定 に はAPS 89名 ( 原 発 性APS (PAPS) 38名 、 続 発 性61名 )APSを 合 併 し て い な いSLE 14名 、 関 節 リ ウ マ チ11名 、 強 皮 症8名 、 健 常 人50名 の 血 清 を 用 い た 。 次 に 、 LpPLA2関 連GWASよ り 同 定 さ れ た5個 のSingle Nucleotide Polymorphism (SNP)に つ い て 解 析 し た 。SNP解 析 に はAPS 91名(PAPS 43名 、 続 発 性48名 ) 、APSを 合 併 し て い な い SLE 138名 、 健 常 人 378名 の 血 液 か ら 採 取 し た DNAを 用 い た 。

【 結 果 】LpPI亅A2活 性 は 、PAPSの 平 均 値 が240.1土76.9 IUIL、 続 発 性APSが226.2士103.9 IU/Lで あ り 、 こ ら ら は い ず れ も 健 常 人 と 比 較 し て 有 意 に 高 値 で あ っ た(PAPS:pく0.0001,

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お よ び 血 栓症 予 測 の 可 能 性に つ い て 評 価し た 。

方 法 :2つ の 自 己 免 疫 疾 患 の 患 者 グ ル ー プ を 研 究 対 象 と し た 。 第 ー グ ル ー プ は233人 で2009 年 のAPLプ ロ フ イ ー ル を 分 析 し た 。5つ の ル ー プ ス ア ン チ コ ア グ ラ ン ト(LA)検 査 お よ び 6つ のELISAC[gG/M抗 カ ル ジ オ リ ピ ン 抗 体 、Igく;/M antiロ2glycoproteinI抗 体 お よ び IgG/Mの ホ ス フ ァ チ ジ ル セ リ ン 依 存 性 ア ン チ プ ロ 卜 ン ビ ン 抗 体 ) の 結 果 を 用 い てaPL ̄ ス コ ア を 定 義 し 、 血 栓 症 お よ び 妊 娠 合 併 症 の 既 往 と 比 較 し た 。 第 二 グ ル ー プ は441人 で あ り 観 察 期 間 中 の 新 規 血 栓 症 の 発 症 とaPL. ス コ ア に っ い てRetro叩ec伽eに 評 価 し た 。296人

(72% ) が2年 以 上 フ オ ロ ー ア ッ プ さ れ 、 観 察 期 間 中 央 値 は68土15か 月 だ っ た 。

【 結 果 】 :第 一 グ ル ー プ では 、 血 栓 症 およ び 妊 娠 合 併症 を 持 っ た 患者 伍=46)のaPL. スコア が 有 意 に 高 値 で あ り (p=0.00001) 、ROC曲 線 下AUCは0.752だ っ た 。 第 二 グ ル ー プ で は32 人 の 患 者 が 新 規 血 栓 症 を 発 症 し た 。aPL. ス コ ア が30点 以 上 の 患 者 に お い て、 血 栓 症 発 症 の オ ッズ 比【95%C.uは5.27【2.32.n.95、pく0.0001] だった 。多変 量解析 で「aPL‐ スコア が 30点 以 上 」 は 、 血 栓 症 の 独 立 し た 危 険 因 子 だ っ た (ハ ザ ー ド 比 【95%CI]=3.144【1.383

・7.150J、p 0.006冫 。

【 結 論 】aPL. ス コ ア は 、APS診 断 の 定 量 的 マ ー カ ー と し て 有 用 で あ り 、 血 栓 症 リ ス ク の 予 測 マ ー カ ーと な り う る 。

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学位 論文審査の要旨 主 査    教 授    渥 美 達 也 副 査    教 授    畠 山 鎮 次 副 査    教 授    筒 井 裕 之

学 位 論 文 題 名

抗リン脂質抗体症候群における血栓傾向病態の解明と      血栓症リスクの評価法

   本論 文は、抗 リン脂 質抗体症 候群 (APS) における血栓傾向病態について解析した基礎 的検討、並びに、個々の患者における血栓症リスクを解析した臨床的検討に関する研究論文 である。

  APS は後天性の血栓症素因として重要であり、この疾患に存在する自己抗体(=抗リン 脂質 抗体くaPL)) がAPS の血栓 傾向病態 に強く関与する。本論文では多数のaPL 検査を―

元的に定量化する「抗リン脂質抗体スコア(aPL‑ スコア)」を作製した。296 人の膠原病患 者の aPL‑ スコアを算出し、血栓症の発症頻度にっいて後ろ向きに解析したところ、aPL‑

スコアが30 点以上の患者において、血栓症の発症頻度が有意に高まった。この検討から、

抗リン脂質抗体が複数および高力価で存在すると血栓症のりスクが高まることが示唆され た。

  aPL の代表的 抗体が抗カルジオリピン抗体(aCD であり、その対応抗原がロ2 グリコプロ テイ ンI ( ロ 2GPD であ る。血栓 傾向病態 において単球における組織因子(TF) の誘導は特 に重 要である 。無血清 状態で はaCL と ロ2GPI の単球細胞活性化が誘導されず、血清中に ロ2GPI 関 連タンパクが存在する可能性がある。本論文ではこのロ 2GPI 関連タンパクの検 索 を行 っ た。 FLAG タグ付き ロ2GPI Fusion protein をヒ卜 血清中 に混和し 抗FLAG 抗体 でア フイニテ ィー精製したものを質量分析を用いて解析したところApoBl00 (APOB) が同 定 さ れ た 。APOB は 酸 化 LDL の 担 体タ ン パ クで あ り 、ロ 2GPI と 酸 化LDL が 血清 中 で 結 合している可能性が示唆された。マウス単球系細胞において、WBCAL‑1 抗体(モノクロー ナ ル抗 CLIB 2GPI 抗 体 )お よ ぴ 酸化 LDL の 存 在 下で 非 常 に 強い TF mRNA の発現 亢進を 認 め た 。 以 上 よ ル ロ 2GPI の 主 要 な 結 合 タ ン パ ク は 酸 化 LDL と 考 え ら れ た 。   APS 患 者に お い て酸 化 LDL 関 連 物質 LpPLA2 のAPS 患 者に お け る活 性を測定 したと こ ろ 、 健 常 人 と 比 較 し て 有 意 に 高 値 で あ っ た 。 LpPLA2 関 連 の Single Nucleotide Polymorphism (SNP) に つ い て 解 析 し た と こ ろ 、 APOE (rs4420638 AJG) 、 LpPLA2 (rs1805017 A/T) の 2 個 の SNP が APS と 関 連 し て い た 。 APS 患 者 に 酸 化LDL が高 発 現 する理由のーっにSNP の関与が示唆された。

   本研 究に対し て副査 筒井教授 から@実 際に血 栓症を起 こした APS 患者の酸化LDL は高 いか◎APS 患者には静脈血栓症も多いがスタチンを使った場合にどの程度予後改善するの か◎APL スコアの研究では治療の関与がどの程度あるのか、といった質問があった。それ に対して、ぐD 現在そのデータは無く、既報もない@酸化LDL の多い患者を選択し適切に投 与すれぱ予後改善効果が期待できるのではないか◎治療について規定しない研究であり、実 際には高リスクとされる患者に何らかの抗血栓療法がおこなわれていると回答があった。次 に副 査畠山教 授から@ロ2GPI が三量体を形成することを実際に計測したのか◎スカベン ジャー受容体からの細胞内シグナルはどのような系を想定しているか◎SNP の存在で逆に LpPI 亅 A2 活性が高まるメカニズムはなにか、といった質問があった。それに対して、@サ ン ドイ ッ チELISA の手法 で測定 された既 報があ る◎主に MAPK 系が働 くとする 報告が あ

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り 、 同 様 の 経 路 を 想 定 し て い る ◎APOE関 連SNPはAPOEの 機 能 を 落 と しLDLの 代 謝 を 下 げ 、 血 中 にLDLが 滞 留 す る こ と で 酸 化LDLが 増 え る と い う 説 が 報 告 さ れ て い る と 回 答 が あ っ た 。 次 に 主 査 渥 美 教 授 か ら @APS患 者 に お い て 酸 化 ロ2GPIが 増 え る と す る 報 告 と の 一 貫 性 は あ る か ◎ 抗 リ ン 脂 質 抗 体 を 抑 制 す る 治 療 の 効 果 が 乏 し い の は な ぜ か 、 と い っ た 質 問 が あ っ た 。 そ れ に 対 し て 、 @ 酸 化LDLが 血 中 に 過 剰 に 存 在 す れ ぱ 一 部 の ロ2GPIは 結 合 し 、 一 部 は 酸 化 修 飾 を 受 け る 可 能 性 が あ る ◎APSの 正 確 な 病 態 解 明 に よ っ て 病 原 性 に 直 接 関 与 す る 分 子 を 局 所 で 抑 え る こ と が 重 要 で は な い か と 回 答 が あ っ た 。 最 後 に フ ロ ア よ り 小 池 隆 夫 北 海 道 大 学 名 誉 教 授 か ら 、 欧 米 で 若 年 性 ル ー プ ス の 動 脈 硬 化 が 知 ら れ て お り こ のSNPと 関 連 が あ れ ぱ 興 味 深 い と い っ た コ メ ン 卜 が あ っ た 。

  こ の 論 文 は ,APSに お い て 抗 リ ン 脂 質 抗 体 が 血 栓 症 の り ス ク で あ る こ と を 臨 床 検 討 か ら 明 ら か に し 、 基 礎 検 討 に よ っ て 血 栓 傾 向 の 病 原 性 に 酸 化LDLが 深 く 関 与 す る こ と を 見 出 し た 。 ま た 、APSに 酸 化LDLが 高 発 現 す る 原 因 の ー っ にSNPが 関 与 す る こ と を 初 め て 示 し た 。 こ れ ら の 研 究 は 今 後 のAPSの 病 態 解 明 や 新 規 治 療 の 開 発 に 役 立 っ こ と が 期 待 さ れ る 。   審 査 員 一 同 は 、 こ れ ら の 成 果 を 高 く 評 価 し 、 大 学 院 課 程 に お け る 研 鑽 や 取 得 単 位 な ど も 併 せ 申 請 者 が 博 士 ( 医 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 充 分 な 資 格 を 有 す る も の と 判 定 し た 。

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参照

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