博 士 ( 薬 学 ) 小 林 博 幸
学 位 論 文 題 名
紫 外 線 損 傷 DNA に 対 し て 強 い 結 合 活 性 を 有 す る 一 本 鎖 抗 体 の 分 子 認 識 機 構 に 関 す る 研 究
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
序論
紫外 線の 照射 に より 形成 され る損 傷
DNA
が , 生物 の生 存に 多く の 影響 を与えることは知 ら れている1.紫 外線により形成された光産 物は,修復タンパク質等により修復される2亅.紫外線 損 傷DNA
と 親 和性 を持 っタ ンパ ク 質は ,こ れま で 数多 く報 告さ れて い るが4i
, その 損傷DNA
認識機構の詳 細は明らかにされていない.生体 内に 形成 さ れた 紫外 線損 傷DNAを 検出 ・ 定量 する ため に, 数 種類 のモノク口ーナル 抗 体
(MAb)
が 樹 立さ れた6.
. 筆者 は ,一 匹の マウ ス から 産生 され た数 種 類のMAb
の抗 原認 識機 構 に 注 目 し た8
. (6
一4
) 光 産 物 を特 異 的に 認識 する3
種 類のMAb
ー64M2,64M3
お よび64M5
− の可 変領 域の ア ミノ 酸配列は高 く保持されていた.しかしな がら,これらのmAbと(6−
4
) 光 産 物 の 相 互 作 用 の 解 析 に お い て ,64M5
は64M2
や64M3
と 比 較し 強い 結合 活 性を 示す 結果 が得られた.これらの(6.4)光産物特異的抗体の分子認識機構を調べるために,タンバク質工学的手法を用 い て抗 体の
VL
鎖 とVH
鎖 をポ リベ プチ ド リン カー で接続した一 本鎖抗体(scFv)を構築し, 結 合に関与する アミノ酸残基の同定を行った .さらにはニ本鎖DNA中に存 在する(6・4)光産物の 分子認 識機構の解析を行い,細胞内 への導入を目的としたscFvの構築を行ったので報告する ,(6‑4
】 光 産 物 ! ≦ 疊 異 的 聖 二 杢 鎧 抗 佳(64M5scFv)Q
撞 墓 と 量Q
結 金 活 性 堕 鰹 蚯9,10 64M5
のFv
領 域 の コ ン ピ ュ ー タ ー モ デ ル を 参 考 に ,VL
鎖 とVH鎖 をべ プチ ドリ ンカ ー で連 結 したscFv
を 構築 した .ま た この 際に ,タ ンバク質の精製および 再生を簡便に行うために,scFv
のC
―末端側にヒスタグを連結 した.64M5scFv
の 抗原 結合活性を比較する ために,(6‑4)光産物を含む 鎖長の異なるオリゴヌクレ オ チド を 合成 した .速度論的バラメー ターは,表面プラズモン共鳴 現象を利用したBIAcoreを 用 いて 算 出し た.(6‑4)
光 産物 に対 す る64M5scFvの結合活性は,64M5Fabフラグメントのもの と同等 でり,scFv分子の抗原結合 領域の構造が,天然型抗体の ものと同一であることが示され た,scFvの結合ialtは,鎖長依存 的に増加した,各鎖長間で結合速度定数(kass)には差がなかっ たが, 解離速度定数(Aoiss)に著し い差が観察された.64M2
,64M3
,64M5の アミ ノ 酸相 同性 は高 い にも 関わ らず ,そ の 抗原 結合 能は 大き く 異な る ,結 合 活性 に関 与す るア ミ ノ酸 を調 べる た めに ,64M3と64M5
の キメ ラ型scFv
,お よ び超 可変領 域のアミノ酸を置換した変 異体を構築し,その結合活性 を測定した.各キメラ抗体の結 合 速 度 測 定 の 結 果 ,64M5
のVL鎖がDNA
との 結 合に 大き く寄 与し て いる こと が明 らか と なっ た .さ ら にVL‑Y30,VL‑T50特にVL―R90が,強い結合活性に寄与し ていることが明らかとなっ た.64M5Q
表画 !ニ 位 置士 墨リ'Z
残 基 盤Q役 割II64M5scFv
のコ ンピ ュー タ ーモ デル 解析 によ り ,VH鎖に 正荷 電 領域(H62
,H64,H66,H68)―611―
が存 在す るこ と が明らかとな った.このりジンクラスタ ーの抗原DNAとの結合に寄与 する彳叟 割を 解析 する た めに ,各 リジ ン 残基 をア ラニン残基に越 換した4種の変興体,および
4
つのり ジン残基をすべてアラニ ンに置換した変異体を構築 した.各変異体のkdissは,天然型のものと 比較して若干変化したの みであった.これに対して,kassには著しい減少が観察された.また,イオン強度の影響を観察 したところ,kdissにはほど んど変化が観察されなかったのに対して,
高塩 濃度 条件 で のkassは低塩 濃度条件のものと比較する と約4倍低下した,すなわち ,両者が 結合する際には静電的な 相互作用が寄与しているこ とが示された.
64M5scFvQ
三 杢 鎖DNA
生 ! ニ 盒 童 担 墨 (6
〓4)
光 産 物量Q
恕 釦性 と量 堕 認識 捲撞 堕 盤盤64M5
は 一 本 鎖 お よ び ニ 本 鎖DNA中 に存 在す る(6‑4)光産 物と 結 合す る9.64M5は 損傷 を含 む 一 本 鎖DNA
を 免 疫 す る こ と に よ り 得 ら れ たMAb
で あ る . そ の た め64M5
の 二 本 鎖DNA
中 に存 在するエピトープとの結合 様式には興味が持たれる.ま た,このscFvを細胞内で用 いるた め に は, ニ本 鎖DNAと の結 合を 明 らか にす ることが必要で ある.そこで(6‑4)光産物を 含む二 本 鎖 オリ ゴヌ クレ オチ ド を合 成し ,64M5scFvの速度論的 バラメーターを解析した.さ らに,(6‑4)
光産 物の3fIT
の相補鎖側 にGが位置するフラグメント ,および螢光物質である2. アミノ プ リ ン(2‑AP)が位 置す る フラ グメ ント を合 成し,それら に対する結合速度の解析を行 った,64M5scFv
と 二 本 鎖DNA
のAass
は , 相補 鎖側 にア デ ニン が位 置す る場 合 が最 も高 く,2‑AP
やグ アニンの場合の約10倍であ った.この結果および融解温 度測定から得られた結果を 考察す る と .64M5scFvはよ り不 安定 な二 本 鎖DNA中 に存 在す る(6‑4)光産 物と よ り速 く結 合す ると い う こと が示 され た, さ らに ,2ーAPが持 つ螢 光特 性 を利 用し ,scFvのニ本鎖中に含 まれる(6‑4)
光産 物の 認 識機構を解析 した.二本鎖DNA中に存在す る(6‑4)光産物部分が局所的 に一本 鎖 と な り ,64M5scFv
が そ の(6‑4)
光 産物 部位 を特 異 的に 結合 して いる こ とが 示唆 され た.64M5scFv
堕DNA鎖 住長!ニ及!墨士影饗12紫 外 線に より 引き 起こされる変異の 原因として,DNA複製過程に おけるミスマッチ塩基の取 り込 み が考 えら れて いる . 紫外 線照 射に より 形成した(6‑4)光産物 部位におけるDNA複製を阻 害することができれ ば,このミスマッチ塩基対 の形成を阻止することが期待 できる,そこで,
DNA
複製時における64M5scFv
の鎖伸長に及ぽす影 響を調べた,(6‑4)
光 産 物 を1
箇 所 の み 含 む合 成DNA
を 鋳 型と し, 大腸 菌Klenow fragmentとDNAポ リメ ラ ー ゼd
,D
,6
を 用 い て 鎖 伸 長 反 応 に お け る64M5scFv
の 影響 を解 析し た .DNA鎖に 対 して1
等 量 のscFv
が 存 在 す る 場 合 ,明 らか に鎖 伸 長反 応は 阻害 され た .KF,pola,poip
お よびpoi6
に よ る 鎖 伸 長 反 応 は ,31
‐ ピ リ ミ ド ン の そ れ ぞ れ4,6,8
,8
塩 基手 前で 停止 し た.m vivoI
三堕彑る64M5scFvおよびランダ生変異 佳c活性大 腸 菌
AB1886
はDNA
修 復 因 子UvrA
欠 損 株 で あ り , 紫 外 線 感 受 性 が 高 い . こ れ を64M5scFv
の特定の超 可変領域にランダム変異を挿 入した遺伝子をコードする プラスミドで形質 転換すると,紫外線 に対して抵抗性を示すク口ーンが得られた.それらのプラスミドを抽出し,scFv
のア ミ ノ酸 配列 を比 較 した とこ ろ, ある 類 似し た配 列を 持つ こ とが 明ら かと な った .Riedoag, E C, WaIku, G C, & Siect, W. (1 995) LN4npainndr rucnesis., ASM ptess, Washingtone, EC Smar,A 0 996) Ann. Rev. Biochem 65,43‑81.
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学位論文審査の要旨 主査
副査 副査 副査
教授 教授 助教授 助教授
大 塚 栄 子 有 賀 寛 芳 井 上 英 夫 松 本 健 一
学 位 論 文 題 名
紫 外 線 損 傷 DNA に 対 し て 強 い 結 合 活 性 を 有 す る 一本鎖抗体の分子認識機構 に関する研究
申 請 者 は
(6‑4)
光 産 物 を 特 異 的 に 認 識 す る3
種 類 の モ ノ ク ロ ー ナ ル 抗 体 一64M2, 64M3
お よ び64M5
― の 分 子 認 識 に つ い て 研 究 を 行 っ て き た が 、 一 本 鎖 抗 体 の 遺 伝 子 の 構 築 と 発 現 に よ っ て 以 下 の 結 果 を 得 た .( ≦ ニ 虹 童 産 物 に 特 異 的 な ー 本 鎖 抗 体