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自立高齢者における歯牙欠損部の放置と

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Academic year: 2021

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博 士 ( 歯 学 ) 秋 野 憲 一

学 位 論 文 題 名

自立高齢者における歯牙欠損部の放置と      栄 養 摂 取 状 況 と の 関 連 性

学位論文内容の要旨

【緒言】

  高 齢 者の 低 栄 養状 態は, 免疫能を 低下させ 易感染性 を招き, 誤嚥性肺 炎等の感染 症の危 険因 子 と なる . ま た,さ らなる低 栄養状態 は,介護 状態の悪 化等を招 くなど,高 齢者の健 康状 態 に 深刻 な 影 響を及 ばしてお り,要介 護状態に 陥る前に 低栄養状 態を未然に 防ぐこと が求めら れている ,

  高 齢 者の 低 栄 養の 原因と しては, 加齢によ る消化・ 吸収能カ の低下に 加えて,身 体的,

社会 的 要 因が 関 与 してい る.なか でも,咀 嚼能カの 低下は, 身体的要 因の中で栄 養摂取に 直接影響 する大き たりスク 要因と考 えられる .

  口 腔 機能 と 栄 養摂 取の関 連につい ての先行 研究は幾 っか報告 されてい るが,栄養 摂取状 況に つ い ては 簡 便 な調査 法を用い て把握し たものが 多い.ま た,本来 ならば,個 々人のエ ネル ギ ー 所要 量 は ,性別 や年齢, 生活活動 強度によ り違いが あるので ,それらの 個々人の 要 因 を 考 慮 す る こ と が 必 要 で あ る が , 先 行 研 究 お い て は 考慮 し てい な い もの が 多い .   本研究で は,「残 存歯数が 同程度で あっても ,歯牙欠損部への補綴処置が成されていなぃ 場合 , 個 人の 生 活 強度に 応じたエ ネルギー 摂取所要 量を達成 していな い者が多い 」という 仮説 を 設 定し , こ れを検 討するこ とを目的 とした. また,エ ネルギー 以外の各種 栄養素の 摂取と補 綴状況と の関連に ついても 検討した .

【対象と 方法】

  調 査 期 間 は , 平 成16年11月1日 か ら30日 ま で と し , 被 調 査 者 世 帯 に お い て な る べ く 普通 の 摂 取状 態 に ある 日 に実 施 し た. 調 査地 区 お よび対象 者は,北 海道全域の 第2次保健 医 療 福 祉 圏 ご と に 層 化 無作 為 抽出 し た59地 区1460世 帯 の うち , 満1歳以 上 の 世帯 員 全員

(4,125名) を調査対 象とした .

  北海道保 健福祉部 が・作成 した調査 実施要領 に従い,全道同一の手順によって調査した.

調査 実 施 前に , 調 査員が 調査対象 となった 各世帯を 訪問し, 調査依頼 文書と自記 式調査票 を配 布 し た, 調 査 内容は ,身体状 況,栄養 摂取状態 ,生活習 慣に関す るものであ った,さ らに , 各 調査 地 区 の公民 館等の特 定された 場所にお いて調査 対象者に 集合しても らい口腔 内を 健 診 した . 歯 科健診 は,調査 会場への 来場者が 対象とな ることか ら,寝たき り等の要 介護 高 齢 者は 含 ま れず, 自主歩行 可能な比 較的健康 状態が良 好な自立 高齢者を主 な対象と した.質 問紙は健 診当日に 回収した ・

  解 析 には ,65歳 以 上の高齢 者のデー タのみを 用いた. 現在歯数 や未補綴 喪失歯数は 分布 に偏 り が ある た め カテ ゴ リー 化 し た. 未 補綴 喪 失 歯数が0本 ,すなわ ち「補綴処 置の必要 な欠 損 歯 が無 い 」 と歯科 医師によ って判定 された者 を補綴処 置不要者 群,補綴処 置の必要 な 喪 失 歯 を1カ 所 以 上 有 する 者 を 要補 綴 処 置者 群 と定 義 し た. 現 在歯 数 は ,O本,1〜10

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本,11〜20本,21本以上に分類した.

  まず,総エネルギー摂取量の記述統計,および,個人の生活強度を考慮した上で総エネ ルギー摂取量が所要量に達している割合を求めた.

  次に,性別,喫煙状況,飲酒状況,生活強度,現在歯数,要補綴処置者群であるか否か,

などのカテゴリー変数とエネルギー摂取との関連について検討した.エネルギー摂取が所 要量に達している群と達していない群との問で,カテゴリー変数についてのクロス集計を 行い,カイ二乗検定で関連を検討した,年齢,身長,体重,BMI,歩行数の連続変数とエ ネルギー摂取量との関連については,それぞれに相関係数を求めた.これらの説明変数を 用い,総エネルギー摂取量が所要量に達しているか否かを目的変数として,ロジスティツ ク回帰分析を行い,未補綴喪失歯数の有無との関係を調べた.その際,年齢,性別,現在 歯数,未補綴喪失歯の有無についてはモデルヘの強制投入を行い,生活強度,歩行数,喫 煙,飲酒,身長,体重,BMIの変数にっいてはバックワードステップヮイズ法による変数 選択を行った.

【結果】

  調査対象地区に居住する総計4,125名の調査対象者のうち,2,631名(回答率64%,65 歳以 上の者825名,男性377名,女性448名)から有効を栄養摂取状況を含む調査票の回 答を 得た.また,歯科健診には,1,412名(65歳以上の者468名,男性217名,女性251 名) が参加した.そのうち,両調査に参加し有効な調査回答を得た65歳以上の者352名

(男性168名,女性184名)の調査票と歯科健診結果を分析した.

  多重ロジスティック回帰分析による,総エネルギー摂取が所要量に達していないりスク を示す,バックワードステップワイズ法による変数選択の結果,年齢,性別,身長,現在 歯数,未補綴喪失歯数の各変数が最終モデルに残った.年齢,性別,身長,現在歯数を調 整した上で,未補綴喪失歯がなぃ者に比べて,ある者では総エネルギー摂取量が不足する オッズが2.205倍(p‑ 0.005)と有意に高かった.

【考察】

  今回,調査対象としたのは,歯科健診を行う会場まで自立歩行が可能た,比較的健康と 考えられる自立した高齢者であり,要介護状態にある高齢者は含まれていない,っまり,

今回の調査は,自立高齢者における口腔内状況と栄養摂取状況との関係を評価したもので ある・

  その結果,未補綴喪失歯があることが,エネルギー摂取量不足のりスクを有意に高めて いた(オッズ比‑ 2.205,p‑ 0.005).分析対象者の現在歯数は平均11.5本,未補綴喪失 歯数は平均2.1本であり,程度の差こそあれ,殆どが過去.に補綴処置を行ったか現在処置 を必要としている者である.本調査結果は,このような集団において,補綴処置を完了し ている者ほど総エネルギー摂取量が高い傾向にあることを表わしている.すなわち,高齢 者の補綴治療の完了率を高めるための治療介入が,エネルギー摂取改善にっながる可能性 が示唆された.

  高齢者の生活の質を確保する上で口腔が果たす役割は重要である.従って,地域住民に 対し口腔機能の重要性を普及啓発するとともに,介護予防事業において導入された口腔機 能向上サービスの一層の利用促進を図るなど,歯牙欠損を有する割合の高いなど歯科医療 の必要性が高い高齢者に対する早期の介入が必要である.

  今回の調査の問題点として,横断研究のため,因果関係を論じることが出来ない.従つ て,歯牙欠損部の放置が低栄養を生じるという因果関係を示すものではないかもしれない.

今後の因果関係の解明には,追跡可能な集団を対象に縦断調査を実施するなど,経年的を 調査の実施が必要となろう,

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【結論】

  352名の道内在住自立高齢者を対象に歯牙欠損部の放置と栄養摂取状況に関する調査を 行った.その結果,30%を越える高齢者が補綴治療の必要性を持っており,歯牙欠損部が 放置され,適切な補綴処置がなされていない者ほど,総エネルギー摂取量が低かった.以 上のことから,歯科治療による口腔内状況の改善が低栄養のりスクを減少させる可能性が 示唆された,我が国の介護予防事業の推進を図る上で,高齢者の低栄養状態と口腔機能と の密接な関連が改めて確認できるとともに,義歯等による歯科補綴処置の重要性を示唆し ていると考える.

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学位論文審査の要旨 主査    教授    横 山敦郎 副査   教授   井上農夫男 副査   准教授   本多丘人

学 位 論 文 題 名

自立高齢者における歯牙欠損部の放置と      栄 養 摂 取 状 況 と の 関 連 性

  審 査 は , 審 査 担 当 者 全 員 出 席 の 元 に , 申 請 者 に よ る 論 文 要 旨 の 説 明 後 , 説 明 内 容 と そ の 関 連 事 項 に っ い て 口 頭 試 問 の 形 式 に て 行 っ た , 以 下 に 論 文の 要旨 と審 査の 内容 を述 べる ..

論 文 の 要 旨

  高 齢 者 の 低 栄 養 状 態 は , 免 疫 能 を 低 下 さ せ 誤 嚥 性 肺 炎 等 の 感 染 症 の 危 険 因子 とな る ほか , 介 護 状 態 の 悪 化 を 招 く な ど , 高 齢 者 の 健 康 状 態 に 深 刻 な 影 響 を 及 ぼ し て い る , 低 栄 養 状 態 を 招 く 原 因 の ー っ と し て , 咀 嚼 能 カ の 低 下 が 報 告 さ れ て 摺 り , 栄 養 摂 取 に 影 響 す る 大 き を り ス ク 要 因 と 考 え ら れ て い る ,

  本 研 究 で は , 「 残 存 歯 数 が 同 程 度 で あ っ て も , 歯 牙 欠 損 部 へ の 補 綴 処 置 が成 され て いた い 場 合 , 個 人 の 生 活 強 度 に 応 じ た エ ネ ル ギ ー 摂 取 所 要 量 を 達 成 し て い な い 者 が 多 い 」 と い う 仮 説 を 設 定 し , こ れ を 検 討 す る こ と を 目 的 と し た . ま た , エ ネ ル ギ ー 以 外 の 各 種 栄 養 素 の 摂 取 と 補 綴 状 況 と の 関 連 に つ い て も 検 討 し た .

  調 査 対 象 は , 全 道 を 層 化 無 作 為 抽 出 し た59地 区1460世 帯 ( 満1歳 以 上 の 世 帯 員 全 員 4125名 ) で あ り , 栄 養 摂 取 状 況 及 ぴ 身 体 状 況 に つ い て は , 厚 生 労 働 省 が 実 施 す る 国 民 健 康 栄 養 調 査 , 口 腔 内 状 況 に っ い て は , 同 じ く 厚 生 労 働 省 が 実 施 す る 歯 科 疾 患 実 態 調 査 に 準 じ て 調 査 し た . 栄 養 摂 取 状 況 の 評 価 に っ い て は , 食 物 の 定 量 性 が 最 も 高 い 方法 とさ れ ,て い る 食 事 記 録 法 を 用 い , 個 人 の 年 齢 , 性 別 , 生 活 活 動 強 度 等 に 応 じ た 所 要 量 に 基 づ き 評 価 し た . こ れ ら の 調 査 の デ ー タ を り ン ケ ー ジ し , 照 合 で き た65歳 以 上 の 自 立 し た 高 齢 者352 を 分 析 対 象 と し た .

  エ ネ ル ギ ー 摂 取 量 が 所 要 量 に 達 し て い る か ど う か と 説 明 変 数 に っ い て , バ ッ ク ワ ー ド ス テ ッ プ ワ イ ズ 法 に よ る ロ ジ ス テ ィ ッ ク 回 帰 分 析 を 行 い , 未 補 綴 喪 失 歯 の 有 無 と の 関 係 を 解 析 し た . バ ッ ク ワ ー ド ス テ ッ プ ワ イ ズ 法 に よ る 変 数 選 択 お よ び 強 制 投 入 の 結 果 , 年 齢 , 性 別 , 身 長 , 現 在 歯 数 , 未 補 綴 喪 失 歯 数 の 各 変 数 が 最 終 モ デ ル に 残 っ た . 年 齢, 性別 , 身長 ,

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現在歯数を調整した上で,未補綴喪失歯数が0本の者に比べて,1本以上ある者では総エ ネ ル ギ ー 摂 取 量 が 不 足 す る オ ッ ズ が2.205倍(p=ニ0.005)と 有 意 に 高 か っ た .   以上のことから,自立した高齢者においては,歯牙欠損が放置され,適切な補綴処置が なされていない者ほど,総エネルギー摂取量が低いことが示され,歯科治療による咀嚼能 カの改善が低栄養のりスクを減少させる可能性が示唆された.

審査の内容

1.対象者の選択は全道にわたっているのか.

    本研究の対象者は,全道にわたっており,地域の偏りはない.しかし,調査に対し   て 非 協 力 者 は 対 象 者 と な っ て い を い た め , バ イ ア ス は 考 え ら れ る .

2. 食 事 秤 量 記 録 法 と 食 物 摂 取 頻 度 法 に は , 相 関 関 係 は あ る の か .     一般的にこのニっには相関関係は無い.本研究で行った食事秤量記録法が最も定量   性が高い方法と考えられる.

3.CaとFeの所要量達成者の割合が少なぃのはなぜか.

    このニつの達成者が少ないのは,北海道だけでなく全国的なことであり,所要量は,

  必要量とは異なり,必要量十標準偏差x2で表され,摂取してほしい量ともいえる.

4.現在歯数,補綴処置不要者数,要補綴処置者数,平均未補綴喪失歯数の間に有意差は   認められたか,

    サ ン プ ル 数 が 少 な い た め 統 計 的 な 有 意 差 は 認 め ら れ な か っ た . 5.現 在歯数と関 係,特に咬合支持の有無(アイヒナー分類B4やC)との関係はどうか     先行研究では関係があるとするものもあるが,本研究では,調査人数が少ないこと     もあり認められなかった.咬合支持の有無は重要と考えられるが,本研究では調査し   て紹らず今後の課題としたい.

  上記以外にも多くの質問がなされたが,申請者はいずれも適切かつ明快に回答し,今後 の研究についての方向性も示した.本研究は, 歯牙欠損が放置され適切な補綴処置がなさ れていない者ほど総工ネルギー摂取量が低いことを明らかにし,歯科治療による口腔内状 況の改善が低栄養のりスクを減少させる可能性を示唆した.これは,我が国の介護予防事 業の推進を図る上で,高齢者の低栄養状態と口腔機能との密接な関連を改めて確認すると ともに,義歯等による歯科補綴処置の重要性を示唆する優れた内容の研究であると思われ る.また,申請者は歯科行政の第一線において活躍しており,研究のさらなる発展も期待 さ れ る . よ っ て , 申 請 者 は 博 士 ( 歯 学 ) の 学 位 に 値 す る も の と 認 め ら れ た .

参照

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