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脂質代謝、糖代謝における

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 渥 美 敏 也

学 位 論 文 題 名

脂質代謝、糖代謝における

マ クロ ファ ージ 遊阻止因子の役割 学位論文内容の要旨

1.緒言

  現在、日本人の死因の第一位は悪性腫瘍である。第二、三位は脳血管障害と心疾患であ り 肥満、高血圧、糖尿病、高脂血症などの成人病がその発症に深く関与している。低比重 リ ポ蛋白(low density lipoprotein: LDDが動脈内膜に移行すると血管内皮細胞やマクロ フ ァ ージ など によ って フリーラジカルが放出されLDLが酸化される。マクロファージ は TNF‑a、IL‑1などの炎症性サイ トカインを産生し、血管壁を構成する血管内皮細胞や平滑 筋 細胞を活性化する。特に酸化LDLはこれらの生物活性の高い分子の産生を刺激しマクロ フ ァ ージ の増 殖も 誘導 する 。ま た動 脈硬 化巣 には 酸化LDLのような変性LDLを、特異 的 レ セ プ タ ー を 介 し て 取 込 ん だ マ ク ロ フ ァ ー ジ ( 泡 沫 細 胞 ) が し ぱ し ぱ 存 在 す る。

    マクロファージ遊走阻止因子(macrophage mig弧tioninhibit0珂血ctor:MIF)は炎症 や 細胞増殖に関与する多機能分子として知られている。最 近MIFが動脈硬化巣で強く発現 し ていることが報告され、動脈硬化症におけるMIFの役割が注目されている。本研究では マ ク ロフ ァー ジに おけ るMIFの 発 現に 対す る酸 化LDLの 影響 お よび 酸化LDLの取り込 み と 分解に対するMIFの作用につ いて解析した。

    また糖代謝異常も動脈硬化の発症と密接に関与している。MIFの糖代謝における役割を 解 明するため、主要な糖利用器官である骨格筋のストレス刺激における糖代謝亢進に対す るMIFの役割を検討した。

2.方法

  細 胞 は マ ウ ス マク ロフ ァー ジ様 細胞 株(RAW 264.7)を用 いた 。LDLは超 遠心 法で 健 康 成人 空腹 時血 漿か ら分 離精 製し た 。酸 化LDLは 得ら れたLDLをCuS04く5いvDと37゜C で24時 間反 応さ せ調 整し た。 酸化LDL (io〜so UgimDでRAW 264.7を刺激し、MIF mRNA 発 現量 をノ ーザ ンブ ロッ ト法 で解 析 した 。ま たRAW 264.7のMIF分泌 に対する酸化LDL の 影響 を検 討す るた め、 培養 上清 中MIF濃度 をELISA法 で測 定し た。 さらにMIFの生物 学的機能を解析するため、培養液を無血清培地(Cos medium: C08mo Bio、東京)に変更後 MIFを 添 加 し48時 間37℃ で 培 養 し 、1251標 識酸 化LDLを添 加後37℃ で4時 間培 養し 放 射 活 性 を 測 定 す る こ と に よ り 、 酸 化LDLの 取 り 込 み 、 分 解 能 を 解 析 し た 。

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  骨格 筋の解糖 系に対 するMIFの役割 を検討す るため、 ラットL6筋芽細胞を筋管細胞に 分化させ、MIF刺激時におけるFructose‑2,6‑bi8ph08phate (F2,6BP)量と乳酸産生量を測 定した。F2,6BPは解糖系の強カな刺激因子であり、その濃度の測定は糖代謝を知るうえで 非常に有用である。またF2,6BPの合成を触媒する6‑ph08phofirict0・2.bna艶QFK.2)遺伝 子の 発現も同 時に検討した。さらに、TNF.aの解糖系亢進作用とMIFの関連を検討するた め 、L6筋管細胞 をTNF.aで 刺激し培 養上清 中Mm濃度を 測定し た。またTNF.aによ る解 糖系亢進作用に対する抗MIF抗体の影響を検討した。

3.結果

  酸 化LDLはRAW 264.7のMIF mRNAの 発 現 量 を 濃 度 依 存 性 に 増 加 さ せ た 。 し か し native LDLはMIF mRNA発 現 量 に 変 化 を 与え な か っ た。 ま た 酸化LDLに よ るMIFmRNA の発現は 時間依存 性に増加し、12時間で最高に達し、その後発現量は減少した。MIFの培 養上清中への分泌は酸化LDLの濃度依存性(10.50pg′mDに増加し、nati、reLDLは培養上 清 中MIF濃 度 に 影 響 を 与 え な か っ た 。 さら に 、MIFはRAW264.7に おけ る 酸 化LDLの 取込み、分解を増加させた。

  MIFはL6筋管 細 胞 にお け るF2,6BP量 を 濃 度依 存 性 (5・100nめm)に増 加させた 。 またMIFはmu闘lePFK.2遺伝 子 の 発現 を 増 加 させ た 。 さら にMIFはL6筋管 細胞に おけ る乳酸産 生の増加 作用を有することが確認された。またI佑筋管細胞をTNF‐aで刺激する と培 養 上 清中MIF濃 度 が 増加 し た 。同 時に 細胞内のMIF量は 減少し 、細胞内 のMIFプー ルがTNF.aの 作用で 細胞外に 分泌さ れることが示唆された。またTNF.aはL6筋管細胞の MIFmRNAの 発現 を 時 間依 存 性 に増 加 さ せた 。 ま たTNF.aの 解 糖 系亢進作 用は抗MIF抗 体によって抑制された。

4.考察

  動 脈硬化の 初期病 変におい てマク ロファー ジは極め て重要 な役割をしている。MIFは RAW 264.7におけ る酸化LDLの取 込みを 増加させ ること が明らか になった 。酸化LDLは MIFのオー トクラ イン、パ ラクライ ン作用を通して酸化LDL自身の取込みを刺激している 可 能性があ る。そしてMIFは泡沫細胞の形成を助長し、白色線条の形成、不安定プラーク の 形成、ア テローム硬化の進展に寄与すると考えられる。MIFは炎症反応のみならず、細 胞 分化・増 殖にも関与することが知られている。MIFは血管内皮細胞、動脈中膜平滑筋細 胞 にも発現 し、マクロファージに発現するMIFとともに血管平滑筋の増殖にも関与するこ とが考えられる。

  ま た骨格筋 におけ る解糖系 活性化 の機序にMIFが関 与する ことも示唆された。骨格筋 は 生体内に おける 糖代謝に 極めて重 要な役割を果たす。MIFやTNF‑aによる解糖系活性化 機序とインスリン作用の関連を解明することが.、インスリン抵抗性、肥満、糖尿病などの 成人病の新たな治療法の開発にっながる可能性がある。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

脂質代謝、糖代謝における

マクロファージ遊走阻止因子の役割

  動 脈硬化巣 には酸化LDLの ような変 性LDLを、特異 的レセ プターを 介して取 込んだ マ クロファージ(泡沫細胞)がしばしば存在する。マク口ファージ遊走阻止因子(macrophage migration inhibitory factor: MIF)は炎症や細胞増殖に関与する多機能分子として知られ てい る。本 研究では マクロ ファージ におけ るMIFの 発現に対 する酸 化LDLの 影響お よび 酸化LDLの 取り込み と分解 に対するMIFの 作用につ いて解析 した。 また成人 病と関 連が ある糖代謝とMIFの役割についても検討した。

  酸 化LDL (10〜50 ygimDでマウ スマク 口ファー ジ様細 胞であるRAW 264.7を 刺激し、

MIF mRNA発 現 量 と 培 養 上 清 中MIF濃 度を 測 定 した 。 さ ら にRAW 264.7に お ける 酸 化 LDLの取り 込み、分 解能に 対するMIFの役割についても検討した。また解糖系の強カな活 性化因子であるFructose‑2,6‑bisphosphateくF2,6BP)に関して、ラットL6筋管細胞のMIF 刺 激 時 に お け るF2,6BP量 と 乳 酸 産 生 量 を 測 定 し 、F2,6BPの 合 成 を 触 媒 す る 6‑phosphofructo‑2‑kinase (PFK‑2)遺伝子の発現も同時に検討した。さらに、L6筋管細胞 をTNF‑aで 刺激 し 培 養上 清 中MIF濃度を 測定し た。またTNF‑aに よる解糖 系亢進 作用に 対する抗MIF抗体の影響を検討した。

  酸 化LDLはRAW 264.7のMIF mRNAの 発 現 量 を濃 度 依 存性 に 増 加さ せ た 。ま た 酸 化 LDLに よ るMIF mRNAの 発現 は 時間依存 性に増 加し、12時 間で最 高に達し 、その 後発現 量は 減少し た。MIFの培養 上清中への分泌は酸化LDLの濃度依存性に増加し、native LDL は 培 養上 清 中MIF濃 度 に影 響 を与えな かった 。さらに 、MIFはRAW 264.7に おける 酸化 LDLの取込み、分解を増加させた。

  糖代謝との関連では、MIFはL6筋管細胞におけるF2,6BP量を濃度依存性に増加させた。

ま たMIFはPFK‑2遺伝 子 の 発現 を 増 加さ せ た 。さ ら にMIFはL6筋 管 細 胞に お け る乳 酸 産生 の増加 作用を有 するこ とが確認 された 。またL6筋 管細胞をTNF‑aで刺激すると培養 上 清 中MIF濃 度が 増 加 した 。 同 時に 細 胞 内のMIF量 は 減 少し 、 細 胞 内のMIFプ ー ル が TNF‑aの 作 用で 細 胞 外に 分 泌さ れること が示唆 された。 またTNF‑aはL6筋管 細胞のMIF

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夫 博

隆 正

池 香

小 浅

授 授

教 教

査 査

主 副

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mRNAの発 現 を 時間 依 存 性に 増 加 させ た 。TNF‑aの 解 糖系 亢進作用 は抗MIF抗体に よっ て抑制された。

    動脈硬化の初期病変においてマク口ファージは極めて重要な役割をしている。MIFは RAW 264.7に お け る酸 化LDLの取込 みを増加 させるこ とが明 らかにな った。 酸化LDLは MIFのオ ートクラ イン、 パラクライン作用を通して酸化LDL自身の取込みを刺激している 可 能性がある。そしてMIFは泡沫細胞の形成を助長し、白色線条の形成、不安定プラーク の形成、アテローム硬化の進展に寄与すると考えられる。また骨格筋における解糖系活性 化 の機序にMIFが関与することも示唆された。骨格筋は生体内における糖代謝に極めて重 要 な役割 を果たす 。MIFやTNF‑aによる解糖系活性化機序とインスリン作用の関連を解明 することが、インスリン抵抗性、肥満、糖尿病などの成人病の新たな治療法の開発にっな がる可能性があることが示唆された。

  質 疑 応答 に お いて は 副 査石橋教 授から 、生理的 酸化LDLでの検 討、TNF‑aやMIFの刺 激で好気的解糖ではなく嫌気的解糖が促進する理由についての質問があった。次いで副査 浅 香教授から、動脈硬化症におけるMIFの役割に対する炎症反応の関連、動脈硬化症にお け る炎症のメカニズム、MIFの解糖系亢進作用と糖尿病との関連、糖尿病患者において血 中MIFが 高い理由 につい ての質問があった。次いで主査小池教授から、RAW 264.7以外の 細胞における検討、マク口フ.アージの泡沫化の測定、炎症反応と動脈硬化症に関して慢性 関 節リウ マチなど の炎症 性疾患における動脈硬化との関連、TNF‑aやMIFの動脈硬化にお ける生理的機能と病因としての役割についての質問があった。最後に副査浅香教授から、

TNF‑a抗体 の治療へ の応用 、MIFノックアウトマウスでの検討に関する質問があった。い ずれの質問に対しても、申請者は概ね適切に回答した。

  本論分における検討から、今後糖尿病や動脈硬化症におけるMIFの役割を明らかにし、

臨床医学への応用が期待される。審査員一同は、これらの成果を高く評価し、申請者が博 士 ( 医 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 充 分 な 資 格 を 有 す る も の と 判 定 し た 。

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参照

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