• 検索結果がありません。

「学ぶこと」と「教えること」の共鳴(4年次):「真の学び」を創造する

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "「学ぶこと」と「教えること」の共鳴(4年次):「真の学び」を創造する"

Copied!
6
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

「学ぶこと」と「教えること」の 共 鳴

レゾナンス

(4年次)

― 「真の学び」を創造する ―

1 「教えること」と「学ぶこと」のとらえ直し 『「学ぶこと」と「教えること」の 共 鳴レゾナンス』をテーマに研究を重ねてきて,本年度で4年目を迎える。1 年次は『確かなる知を創り出す授業づくり』をサブテーマに,「確かなる知」を創造する状況を教科ごと に設定し,その具体を授業の中に見出そうとしてきた 1)。これは,正統的周辺参加論の「状況に埋め込ま れた学習」を理論的な背景としている。この理論的な枠組みは,新たな学習論だけでなく,教育に対する 新たな視座をも呈している 2)。その視座に立って,新たな教育モデルを創出し,「教えること」をとらえ 直そうとしたのが2年次である。 その2年次では,『かかわりと,その意味や意義から「教えること」をとらえ直す』をサブテーマに, これまでの教育観や教育モデルを「栄養士モデル」「工業生産モデル」と批判し,新たに「かかわり重視 の教育モデル」を提案した。この教育モデルは,かかわり,すなわち関係性から,これまでの「思考・判 断」「技能・表現」「知識・理解」を再定義したものである。そして,各教科で実践を通して,その具体を 追究してきた。その結果,「教えること」を,①リアルな単元主題を設定すること,②かかわりそのもの に介入すること,③コーディネーターとしての働きかけ,④表現活動を組み込むこと,⑤レトリカルな指 導言と,とらえ直した3) 3年次は,2年次までの研究を継続しながら発展させていった。「教えること」をより明確化し,そこ から新たな「学ぶこと」を見出そうとしたのである。ここでは,単元の流れに即して,「教えること」を ①社会や文化に参加させること,②その子なりのものの見方や考え方を持たせること,③コーディネート の内実としての「うながす」「つなぐ」「もどす」こと,④多声性を活用すること,⑤意味づけ・価値づけ ること,⑥社会や文化で実践すること,の6点に整理した。そして,新たな「教えること」として,子ど もの主体性や関係性にかかわる内容をつけ加えるとともに,「学ぶこと」を教科ごとの知識やものの見方 や考え方などの観点からとらえ直した 4)。さらに,その中にエモーショナル・インテリジェンスを位置づ け,グェン・ドティの五つの観点を含み込もうとした5) 2 これまでの研究の成果 以上のような研究で,実践を通して検証されたことがらがいくつかある。それらを整理して,以下にま とめて示すこととする。 ●研究概要

(2)

(1)状況を視座とすること 状況を「学ぶこと」と「教えること」が共鳴するための視座としたことで,教師個人の問題や子ども個 人の問題から脱却することができた。状況は,意図的に創出される場合もあるが,無意図的に偶然に現れ ることもある。いずれにせよ,出現した状況が「学ぶこと」と「教えること」を共鳴させているかどうか という見方や考え方は,実践の「いま―ここに」が重要となってくる。 もちろん,その状況の中に教師も子どももいて,それぞれに問題を抱えている場合がないわけではない。 それらは,反省的に振り返り,調整や修正をする必要があるかもしれない。しかし,それも状況を構成す る要素でしかなく,状況を共鳴させるものとしてどのように機能していたかという見方になる。つまり, 個人個人というよりは,それぞれの関係性が重要なのである。 (2)関係性に着目すること 子どもや教師,教材,環境との関係性に着目することは,それぞれの相互作用を重視することに他なら ない。したがって,それぞれの関係においてどのような相互作用があり,よりよい関係にするには相互作 用をどのようにしていくのがよいのか,などが重要な視点となる。 また,相互作用であるから,どちらかからの一方的な作用は考えられない。また,相互に作用するとい う特質から,どちらもが主体となり客体となる。その意味からは,相対的な位置関係・政治的関係となる。 この考え方は,子ども像をとらえる新たなとらえ方となるだろう。つまり,ここに即興の徒弟制が成立す るのである。さらに,相互作用を重視する立場からも,新たな教育モデルである「かかわり重視の教育モ デル」が創出される。 (3)かかわり重視の教育モデル この教育モデルでは,前述の通り,従来の「思考・判断」「技能・表現」「知識・理解」を新しくとらえ 直し,次のように定義する。 思考・判断…多様な表現を通した多面的なものの見方や考え方。 表現・技能…社会や文化という共同体で実践すること。 知識・理解…社会や文化という共同体に参加していくという関係性の中で創出・産出されるもの。 そして,単元レベルでも,社会や文化とかかわることや多声性,伝え合い・分かち合いなどをキーワー ドに新たな単元モデルを創出しようとしている。さらに,「方法の重視」や「言語化の重視」など,授業 レベルでも,これらが有効であることを実践的に検証してきたのである。 (4)学習の意欲や主体性への関与 これまで,学習意欲は,子どもと教材との関係性において考えられたり,教師の指導技術の問題として 考えられたりすることが多かった。つまり,子どもたちが意欲をもつように,教材を工夫したり,指導の

(3)

工夫をしたりしてきたのである。それらが重要であることはもちろんだが,意欲や主体性を新たな「教え ること」や「学ぶこと」に組み込むことで,教師と子どもの関係,子どもと子どもの関係,空間や環境の 影響などを視野に入れることが可能となった。そして,これらの関係や影響などを工夫したりよりよいも のにしたりすることで,子どもたちの意欲や主体性が変わることも明らかとなった。 さらに,EI(emotional intelligence)の要素も組み込むことで,学習の意欲や主体性は伸びる。それ は,子どもの意志の力が高まるからである。この子どものたくましい意志を育てることが,「人間として 生きぬく力」という本校の教育目標を達成することに直結していく。 3 「真の学び」を創出する これまで研究を積み重ねてきて,以上のような成果を得たわけであるが,課題もある。まず,「教える こと」と「学ぶこと」を見つめてとらえ直していくとき,とらえ直されたものが「教えること」なのか 「学ぶこと」なのか,どちらとも言えたり,不分明であったりした。また,「学ぶこと」と「教えるこ と」を授業の要素として考え,2項対立的にとらえているようにも見られかねない。 「教えること」というのをカリキュラム論,授業論から取り出したのは,研究当初に「学び」が曖昧で ありながら偏重されていたという背景があった。また,学級崩壊や学力低下など深刻な社会的な問題もあ った。そこで,今一度,「学び」を定義し直し,そこへ「学ぶこと」と「教えること」を関係づけようと したのである。 そして,「学ぶこと」「教えること」を明確化し,関係づけてきた結果,新たな「学び」,言い換えると 「真の学び」が見えて来つつある。例えば,「学ぶこと」と「教えること」が共鳴し合っている状況にお いて「真の学び」が創出されること,相互作用や関係性を重視しなければ「真の学び」が創出されないこ となどである。また,「真の学び」は,「学び」の新たな観点とその定義,学習の方法や方略,EIをも含 み込むものなのである。 別の言い方をすると,これまで研究をしてきた,「学ぶこと」や「教えること」は,「真の学び」を多面 的,多元的に見ようとしたとも言える。つまり,「真の学び」の姿を,「学ぶこと」や「教えること」,そ れらの関係性という窓を通して眺めてきたのである。また,「教えること」や「学ぶこと」を授業の要素 として,それらを詳しく理解して,全体を理解したつもりになっているわけではないのである。それより は,常に新たな窓を見出し,そこから新たな発見をしているのである。そうすることで,「真の学び」は, 常に更新され,育まれていくものとなる。 以上のような考察を経て,「真の学び」を創出する具体の一つとして,「真の学び」単元モデルを提案す る。これは,これまでの研究で明らかとなったことから設定したものである。それは,「社会や文化との 出会い(触れること・浸ること)−多声性の萌芽−伝え合い・分かち合い−意味づけ・価値づけ−社会的・ 文化的実践」となる。以下に,それぞれについて簡単に説明する。

(4)

①社会や文化と出会う(触れること・浸ること) 子どもたちの周りには,様々な社会や文化が存在する。それらは,大小関係,疎近関係,古新関 係,量質関係,学情関係など,様々な関係性をもとに分類される。それらに出会うことから,単元 を出発させるのである。あるいは,実際にそれらと触れ合うこと,そこに浸ることなどを,単元の 始まりとする。 ここでは,直接的な出会いだけでなく,間接的な出会いも含み込む。常に直接的な出会いばかり を模索していては,単元のあり様も限られてしまう。大切なことは,学習が社会や文化とつながっ ていることを,子どもたち自身がきちんと意識しているかどうかということである。これは,単元 全体を通して言えることであり,「真の学び」は社会や文化の中に埋め込まれているのである。 ②多声性の萌芽 これは,社会や文化と出会った子どもたちが,最初に思うことやこだわることである。子どもた ちは,これまでの経験をもとに,社会や文化と出会う。したがって,その時に子どもの内面では, 様々な声がしているはずである。この様々な声を多声性と呼び,個人レベルでは個人的な多声性が あり,集団レベルでは集団的な多声性がある。ただ,個人と集団は互いに影響し合っているので, 両方を一括して多声性と呼び,画一的ではなく多様に生まれてくることから萌芽と呼ぶのである。 ③伝え合い・分かち合い 多声性をもつ子どもたちが,互いに影響し合う姿として,言語的はもちろん非言語的なものも含 み込みつつ,「伝える−受容する」という関係性を成り立たせるものとして考える。ここで重要なの は,関係性である。関係性に着目することの利点は,前述の通りである。また,伝えないこと・分 かち合わないことも,その関係性の姿の一つとして,しっかりと視野に入れるべきである。 このとき,即興の徒弟制を活用することも重要である。これは,これまでも提案してきているが, 常に教師が師で子どもが弟という師弟関係ではなく,それらが子ども同士の中に生まれてもかまわ ない。この即興の徒弟制が,「真の学び」を創出する場や状況における,固定化しがちな関係を柔軟 にする。そして,そこでは教師の身体性や多声性も重要となってくる。 ④意味づけ・価値づけ これまでも重視してきたように,学びっぱなしでは「真の学び」にならない。学んだことの意義 や価値を,子どもが理解するようにしなければならない。そうすることで,子どもの内発的動機が 高まり,自主的・自律的な学びへと転移させることができる。 このとき,学んだ内容を意味づけ・価値づけるだけでなく,学んだ方法や方略も意味づけ価値づ けることが重要である。「学び」は,どちらかというと,何を学んだのかという内容を重視しがちで ある。もともと学んだ内容と方法は切り離せない。また,学んだ方法は他の学ぶことに転移する。 したがって,「真の学び」では,学んだ方法も意味づけ・価値づけするのである。

(5)

⑤社会的・文化的実践 学んできたことを,社会や文化で実際に行動することである。つまり,表現活動であるが,この 表現を矮小化してとらえないようにしたい。子どもの身体そのものや,生活に返すこと,環境にア クセスしていくこと,文化を創造することなど,様々に考えてとらえるようにする。そして,これ は評価の問題とも関連し,パフォーマンス評価やポートフォリオ評価などを可能にするものでもあ る。さらに,評価との関連で言えば,保護者や地域とのかかわりであるカンファレンス(検討会) なども,評価の方略としても必要なだけでなく,社会的・文化的実践の一つだと考えている。 4 教育実践の中に「真の学び」文化を創造する 以上のような教育モデルや単元モデルにのっとって,日々の教育実践を積み重ねていきながら,「真の 学び」を創出していく。この連綿とした,真摯な活動である実践の中にこそ,われわれのめざす新たな学 校文化があるものと考える。この実践の中には,モデルのように一般化,法則化できることもあるし,で きないこともある。どちらかといえば,できないことの方が大切である。なぜなら,子どもそのものは一 般化・法則化できるものではないからである。しかしながら,モデル化するのは,そうすることで一般 化・法則化できないものを抽出するためなのである。 そして,われわれは社会的・文化的な子ども,個性的・個別的な子どもの前に立ち,「真の学び」をと もに創出していく。このとき,重要となるのは,積み重ねと連続,つながりである。学校や教室という社 会・文化は,1単位時間だけで更新したり止揚したり,新たに創造されたりということは,難しいからで ある。このつながりの中には,1年間における単元と単元のつながり,1時間と1時間のつながり,学年 を越えたつながりなど,様々な関係性が考えられる。大切なことは,このつながりを教師も子どもも意識 し,「真の学び」として織り込んでいくのである。 以上のようにして,「真の学び」文化を創造していくのであるが,教科ごとにあるいは領域ごとに,ま たそれらを関連づけながら,以下の点に留意しながら研究を進めてきた。その具体的なことは,各教科の 提案で示すとして,ここでは,それらについて簡単にまとめることとする。 ①共鳴している状況の生成 今一度,1年次の研究テーマに立ち返り,「学ぶこと」と「教えること」が共鳴している状況を明 らかにしてきた。つまり,「真の学び」から,共鳴している状況を見つめ直したのである。その結果, 4年前と同じものもあるし,新たな状況や場が見えた教科もある。また,それらが生成される条件 や要件なども視野に入れてきた。 ②状況の中の関係性の把握 教育関係論の視点から,状況の中の関係性をより具体的に見出してきた。単に相互作用というだ けでなく,その相互作用にはどのような種類があるのか,その関係性はどのようなものか,またど

(6)

のように関係しているのかなどを研究してきた。このとき,重要になるのが,関係性にかかわる言 語である。言語化することで,関係そのものや関係のあり方が生成されるからである。ただ,関係 にかかわる要素に細かく記述するだけではなく,多面的・多元的なとらえ方も重要となる。 ③かかわり重視の教育モデルの教科個別化 この教育モデルは,教科を特定せず,教育全般を視野に入れて構想したものである。では,教科 に特化して考えると,「思考・判断」「表現・技能」「知識・理解」は,どのようになるのか研究して きた。教科によっては,各観点の関連や統一なども問題となった。ただ,全てを明らかにすること を目的としたのではなく,教科の特性に応じるようにした。 この三つの観点は,現行の指導要領から抽出したものである。したがって,全く異なる観点が導 出されてもこれらの観点のとらえ方も変容しても構わないこととした。 ④EIを含む学習意欲の教科個別化 このEIをどのように各教科で「真の学び」とするのかということは,まだ研究の緒についたば かりである。学習内容や指導言はどうなるのかといった問題から,教科ならではのEIとは何かと いう問題まで,多岐にわたる。 具体的には,学習活動の中に,自己決定・選択場面を取り入れる,伝え合い・分かち合いを自他 認知と自他受容として解釈する,自己責任を発揮できる活動を組み込む,などを行ってきた。 ⑤つながりの生成とその要件 一つは,学校教育全体として,何がどのようにつながっていくのかという問題がある。これは, それぞれの教科での知見を総合化・統合化することになる。一方,教科固有のつながりは,何がど のように生成されるのかという問題である。各教科で実践を検討し,個別化・固有化して追究して きた。例えば,国語科では,レトリックに着目する力や基礎的な認識の力が教材を超えてつながっ ていることを見いだしてきた。 参考・引用文献 1)兵庫教育大学附属小学校(2006)『平成 17 年度提案要項・学習指導案集 「学ぶこと」と「教えるこ と」の共鳴(1年次)』

2)J. Lave and E.Wenger (1991) Situated Learning Legitimate Peripheral Participation( 佐伯 胖 訳『状況に埋め込まれた学習 正統的周辺参加』産業図書) 3)兵庫教育大学附属小学校(2007)『平成 18 年度提案要項・学習指導案集 「学ぶこと」と「教えるこ と」の共鳴(2年次)』 4)兵庫教育大学附属小学校(2008)『平成 19 年度提案要項・学習指導案集 「学ぶこと」と「教えるこ と」の共鳴(3 年次)』 5)Gwen Doty (2001)松村京子 監訳『「こころの知性」を育む 幼稚園児から中学生までの教育』東信堂

参照

関連したドキュメント

今回の授業ではグループワークを個々人が内面化

ところで,このテクストには,「真理を作品のうちへもたらすこと(daslnsaWakPBrinWl

などに名を残す数学者であるが、「ガロア理論 (Galois theory)」の教科書を

このように、このWの姿を捉えることを通して、「子どもが生き、自ら願いを形成し実現しよう

C. 

最愛の隣人・中国と、相互理解を深める友愛のこころ

[r]

活用することとともに,デメリットを克服することが不可欠となるが,メ