著者
野呂 忠秀, 島袋 寛盛, 上治 真也, 寺田 竜太
雑誌名
南太平洋海域調査研究報告=Occasional papers
巻
46
ページ
18-21
別言語のタイトル
On the Drift Seaweed Sargassum horneri Found
in the South of Kagoshima Prefecture, Japan
薩 南 海 域 の流 れ 藻 ア カ モ ク
野呂 忠秀、島袋 寛盛、上治 真也、寺田 竜太
鹿児島大学水産学部
On the Drift Seaweed
Sargassum
horneri
Found in the South of
Kagoshima
Prefecture,
Japan
NORO Tadahide, SHIMABUKURO Hiromori, UEJI Shinya, TERADA Ryuta
Faculty of Fisheries, Kagoshima University
Summary
A brown alga Sargassum horneri was collected
drifting near Uji Iss., south of Kagoshima Prefecture,
Japan. Released
eggs on the female receptacles
were cultured in ESP enriched seawater medium for three
months in 16 - 28 C, 4,000 lux, 12:12 hrs light and dark cycle. The optimum growth rate of the species
was 20 C at least in the juvenile plants.
は じめ に 鹿 児 島 大 学水 産 学 部 附属 練 習 船 南 星 丸 で2005年5月9-11日 に宇 治 群 島周 辺海 域 を航海 し, 大 量 の 「流 れ 藻(drift seaweeds)」 を採 取 した.こ の流 れ 藻 を住 処(す み か)と す る ブ リの稚 魚 モ ジ ャ コは4-5月 に薩 南海 域 で採 捕 され,鹿 児 島湾 や 東 町 の 生 篭 で養 殖 され ハ マ チ(ブ リ) とな るな ど,流 れ藻 の 生態 学 的意 義 は大 き い. この薩 南海 域 を漂 う流 れ 藻 は褐 藻 ホ ンダ ワラ属(Sargassum)が 主 な種 類 で あ り、九 州 沿 岸 や 宇 治 ・草 垣諸 島、奄 美 ・沖縄 な どの 沿岸 に生 え て い た種 類 が流 れ て くる もの と考 え られ て い る.
1.宇 治群 島 付 近 の 流 れ 藻 ホ ン ダ ワ ラ の種 類 と起 源
薩 南海 域 の流 れ藻 ホ ンダ ワ ラ属 の 中 に は,フ ィ リ ピンや 台湾,沖 縄 方面 に生 育 す る と推 察 さ れ る亜 熱 帯 性 褐 藻 の ホ ン ダ ワ ラ属 に混 じ っ て,九 州 や 本 州 で ご く普 通 に 見 か け る ア カ モ ク (Sargassum horneri)に 似 た 褐 藻 が 大 量 に混 じって い る(Fig.2).こ の種 は 、雄 性生 殖 器 官 の 形 態 が 日本 産 の ア カ モ ク と極 め て異 な り(島 袋 ・野 呂 2005),長 さ10mに もお よぶ 大 型 の種 で あ るが,雄 性生殖 器 官 の形 態 が本 邦産 ア カモ ク とは極 め て異 な る.こ の流 れ藻 は薩 南海 域 に 近 い岩 礁 地 帯 で成 長 し,海 流 に乗 っ て漂 流 して い る もの と考 え られ る が,そ の生 育 地 は未 だ に 不 明 で あ り,筆者 らは 当該 海 域 に近 い 中 国沿 岸 か ら流 れ て来 た もの で は ない か と想 定 してい る. 筆 者 らは 、雌1生生殖 器 官 を漂 流 中 の ア カモ ク か ら採 取 す る こ とが で き た。そ れ に よれ ば本 種 の雌 生 殖器 床(female receptacles,;Fig.3)は,日 本 沿 岸 に 自生 す る ア カモ ク のそ れ に近 似 す る もの の,粘 質 物 が極 め て 多 い こ とで本 邦 産 種 と様 相 を異 にす る こ とが分 か っ た.
Fig. 2. Drift S. horneri (left) and its
herbarium specimen (right)
collected near Uji Iss. Scale 10 cm.
筆者 らは、本 種が中国浙江省周辺 に分布 しているホンダ ワラ属 が東 シナ海 を越 えて漂流 して きた ものではないか と考 えてい る。今 回、宇治群 島の海岸 か らは この 「アカモ ク類似種」の打 ち上 げに混 じって漸 江省 や上海 のラベル のついた プラスチ ックゴ ミな ども打ち上げ られ てい た(長 嶋俊介教 授私信)。 魚類 の稚 魚を育む南 薩海域の流 れ藻 が、東 シナ海 を隔てた中国か ら流れ てきたものである こ とを証 明す る証拠 が、今 回の調査 でまた一つ得 られ た ことになる。 2.初 期発生 とその至適温度 また,こ の生殖器官 に付着 していた卵 を採取 し,2%ESP添 加滅菌海水 を入れた30mlガ ラス 瓶 で培養 した ところ,約一週 間で胚 とな り,一ヶ月後 には初期葉 をつ けた幼体 に発 達 した(Fig. 4). その際に培養温度 を16-28℃ で変化 させ て生長速度 を調べた結果がFig.5で ある.そ れ に よれ ば本 種の初期発 生速度 は水温20℃ で最 もかった.こ の最適水温 は初期発生 に適す る温度 であ り,さ らに大き くな る際の温 度につ いては更 な る研究 が必要 である.
Fig. 4. Embryo (left, one week old) and young plant (right, one month old) of drift
S. horneri cultured in 20 C, 4,000 lux.
Temperature (C)
Fig. 5. Effect of temperature on the growth of Sargassum cultured for two months.
引用 文 献
島袋 寛盛 ・野 呂忠秀(2005):鹿 児 島県 近 海 に漂 流 す る ア カモ ク の枝 内部 に形 成 され る雄 性生 殖 器 巣.藻 類.Jpn. J. Phycol. (Sorui)53:137-140.