東北大学大学院医学系研究科多発性硬化症治療学寄附 講座
特集免疫疾患の治療の進歩
総 説視神経脊髄炎(NMO)の治療をめぐって
藤 原 一 男Treatment of Neuromyelitis Optica
Kazuo FUJIHARA, M.D.
Department of Multiple Sclerosis Therapeutics, Tohoku University Graduate School of Medicine (Received February 28, 2012)
summary
Neuromyelitis optica(NMO) or Devic's disease is an in‰ammatory neurologic disease characterized by severe optic neuritis and transverse myelitis. Other features of NMO include female preponderance, higher onset age, severe functional disability, longitudinally extensive spinal cord lesions(longer than 3 vertebral segments), and oligoclonal IgG bands negativity. Brain lesions are not uncommon in NMO. The relation between NMO and multiple sclerosis (MS) has long been a matter of controversy, but since the discovery of anti-aquaporin 4 (AQP4) antibody (NMO-IgG), an NMO-speciˆc autoantibody, the clinical, MRI, and laboratory features that distinguish NMO from MS have been clariˆed. Anti-AQP4 antibody binds to the extracellular domain of AQP4, which is highly expressed in endfeet of astrocytes. Recent neuropathological studies, analysis of CSF-GFAP levels during relapse and experimental studies strongly suggest that NMO is an anti-AQP4 antibody-mediated astrocytopathic disease and that T cell-mediated CNS in‰ammation is necessary to develop NMO. Also, IL-6 is remarkably elevated in the CSF and appears to regulate plasmablasts to produce anti-AQP4 antibody. Therefore, from the therapeutic point of view, depletion of anti-AQP4 antibody, suppression of T cell response to trigger relapse and anti-IL-6 therapy seem to be pivotal. High-dose intrave-nous methylprednisolone is the ˆrst-line therapy for acute exacerbations of NMO. But plasma exchange should be started soon if corticosteroid is not e‹cacious. If untreated, AQP4 antibody-positive patients are highly likely to expe-rience relapses within a year. Thus, immunosuppressive therapy (corticosteroids, immunosuppressants, rituximab) should be initiated without delay. Preliminary results suggest that eculizumab, an anti-C5 monoclonal antibody, can also prevent relapse in NMO, Meanwhile, interferon-beta, a ˆrst-line disease modifying drug of MS, is not eŠective in NMO. Symptomatic therapy for pain, paresthesia, spasticity, dysuria and constipation which commonly occur in the chronic stage of NMO is also important to improve patients' quality of life.
Key words―neuromyelitis optica; multiple sclerosis; aquaporin 4; astrocyte, teratment
抄 録
視神経脊髄炎(Neuromyelitis Optica, NMO)は重度の視神経炎と横断性脊髄炎を特徴とする免疫性中枢神経疾 患であり Devic 病とも呼ばれてきた.NMO は女性に多く,重度の機能障害を遺し,脊髄病変は 3 椎体以上の長い 病変を呈する.脳病変もまれではない.NMO と多発性硬化症(MS)の関係は長い間議論されてきたが,NMO 患 者の血中には疾患特異的な自己抗体(抗 aquaporin 4 (AQP4)抗体,NMO-IgG とも呼ぶ)が発見された後,MS との相違点が明らかになった.脱髄疾患である MS とは異なり,NMO は抗 AQP4 抗体が補体を活性化してアスト ロサイトを破壊するアストロサイトパチーである.最近の研究結果からは,抗 AQP4 抗体の枯渇,再発のトリ ガーとなる中枢神経の T 細胞性炎症の抑制,抗 IL-6 療法などが治療上有効と考えられる.診療現場では,急性期 にはまずステロイドパルス療法を行うが,無効の場合はすぐに血漿交換療法を開始することにより臨床的改善が得 られることが多い.再発予防にはステロイドや免疫抑制剤,リツキシマブなどが有効であり,これにより年間再発 率は低下する.また抗補体療法であるエクリズマブも有効のようである.一方,MS の治療薬であるインターフェ ロンb は NMO では無効である.疼痛など慢性期の症状に対する対症療法も患者の QOL 向上の点から重要であ る.他疾患と同様に NMO でも早期診断,早期治療が重要であるが,今後その病態に基ずいた治療法が開発される ことを期待したい.
は じ め に
視神経脊髄炎(Neuromyelitis Optica, NMO)は, 重度の視神経炎と 3 椎体以上に及ぶ横断性脊髄炎を 特徴とする中枢神経疾患である.最近まで NMO は多発性硬化症(Multiple Sclerosis, MS)の亜型と もとらえられていたが,NMO 患者の血清中から脳 組織 に反 応する 疾患 特異的 IgG (NMO-IgG )が 2004年に発見され1),翌年にはアストロサイトの足 突起に高密度に発現する水チャンネル,アクアポリ ン 4(aquaporin-4, AQP4)がその標的抗原である こと,すなわち NMO-IgG は抗 AQP4 抗体である ことが報告された2)その後,NMO の特徴的な臨床 及び検査所見,病態と治療への反応性などが次々に 明らかになり,MS との相違が明らかになってき た.本稿では,NMO の治療そのもののみならず, 治療に結びつきうる臨床,病態に関する知見,また MS との治療方針の違いを含めて概説する. I. NMOに関する初期の記載3) NMO は Devic 病とも呼ばれる.1894 年にフラン スの医師 Eugene Devic が視神経炎と脊髄炎のみを 呈する 45 歳女性の剖検例と 16 文献例を合わせて解 析し,NMO の特徴を記載した.その Devic の名を 冠した疾患名が Acchiote によって 1907 年に提案さ れ,その後一般にも用いられるようになった.わが 国でも Devic より 3 年早く 1891 年に,青山胤道が 34歳男性例を報告しているが,青山の論文にもド イツ語圏で以前に報告された複数の同様の症例が引 用されている.なお Devic が報告した剖検例では視 神経と脊髄には高度の脱髄や組織破壊が見られた が ,脳 には 病 変が 見ら れ なか った . その ため 抗 AQP4抗体の発見以後脳病変もまれではないことが わかるまでは,NMO は視神経と脊髄の選択的障害 であり脳病変が欠如していることが MS とは異な る大きな特徴とも考えられてきた.しかし実際には, Devic と彼の弟子である Gault によるこの自験例に 文献例を加えた 17 例の解析では,3 例には脳症候 がみられていたことが記載されている.また単相性 の視神経脊髄炎を Devic 病と呼ぶこともあったが, この 17 例の中には再発例も含まれていた. II. NMOの臨床的特徴4) NMO はしばしば再発性であり,男性より女性に 多く発症年齢が 30 歳代半ばと MS よりやや高い. また種々の自己抗体や自己免疫疾患などを合併しや すい傾向がある.NMO の視神経炎と脊髄炎は共に 重症であることが多い. NMOの視神経炎は失明に至ることも多く,両眼 性で視交叉病変が見られることもまれではない.ま た水平性半盲も NMO に比較的特徴的である.Op-tical Coherence Tomography(OCT)検査では,網 膜神経層の厚さが NMO の視神経炎では MS に比 べて有意に薄く,より重篤な神経傷害であることを 示唆している5).視神経炎の再発が多いほど網膜神 経層の厚さは薄くなり視力や視野の障害も重くなる. 急性期の脊髄病変は,腫脹し病変の長さがしばし ば 3 椎体以上になる.慢性期には脊髄が萎縮し,軸 位断では主に脊髄中央部に信号変化がみられる6). 一方,MS の急性期脊髄病変は 1 椎体以下と短く, 慢性期病変は軸位断では白質(側索,後索)に存在 し,NMO と異なる.また抗 AQP4 抗体の発見以 後,抗体陽性症例の半数以上に脳病変がみられるこ とがわかってきた.MS と判別困難な脳病変もある が,難治性吃逆や嘔吐を伴う延髄の中心管周囲の病 変7,8),過眠症を呈する第三脳室周囲の両側視床下 部病変,広範な大脳白質病変,長大な脳病変9),大 きく浮腫性の脳梁病変10)など,比較的 NMO に特徴 的と思われる脳病変も知られている.このような臨 床,画像所見は早期の NMO と MS の鑑別診断そ して治療方針の決定に重要である. 髄液では,MS に比べて NMO では細胞数増多や タンパク濃度上昇が顕著である.また NMO では オリゴクローナル IgG バンドの陽性率は 10~20 と低いことも MS と異なる特徴である. III‚ 抗 AQP4 抗体検出の意義と診断上の注意点 抗 AQP4 抗体は NMO の診断に極めて重要であ る.NMO の診断基準として 2006 年に Wingerchuk らが発表した基準が用いられてきた11).この基準は 以下の項目を満たす症例を deˆnite NMO と定義し ている. 1) 視神経炎 2) 急性脊髄炎 及び 3) 以下の 3 項目のうち 2 項目以上を満たす 3 椎体以上の連続性の脊髄病変 Patyの脳 MRI 基準を満たさない NMO-IgG(抗 AQP4 抗体)陽性 しかし抗 AQP4 抗体陽性例の検討から,NMO の臨
図 1 抗アクアポリン 4 抗体症候群 図 2 NMO におけるアストロサイトパチーの病態 (三須建郎 原図) 床スペクトラムは単なる視神経脊髄炎よりも広い概 念であり,中には脳病変が初発症状である症例も存 在することがわかってきた(図 1).すなわち抗 AQP4抗体の発見により,NMO の臨床概念自体が 修正を迫られているわけである. AQP4 は 6 回膜貫通型タンパクであり,抗 AQP4 抗体は AQP4 の細胞外のループ状の 3 次元構造を 認識して結合することが知られており,ウエスタン ブロッティングでは検出できない.またヒトとげっ 歯類では AQP4 のアミノ酸構造が若干異なってい る.これらの事実を反映して最近発表された種々の 抗 AQP4 抗体検出法の比較解析では12),AQP4 を 細胞に発現させ液体中で抗 AQP4 抗体を反応させ る Cell-based Assay の感度が最も高く(73~77), これをあらかじめスライドガラス上に固定したもの (68)や,AQP4 全長を発現させたものを用いた ELISA(60),マウスの脳組織切片を用いた間接 免疫蛍光法などは感度(50程度)がやや低くなる. この検討では,特異度はいずれの検査も十分に高か った.したがって NMO の診断上は,検査結果が false negativeとなり見落としが出ることが治療方 針を決定する上で大きな問題であり,高感度である Cell-based Assay を 用いることが望ま しいといえ る.また,再発予防のための免疫抑制療法の結果, 抗体価が低下してある時点で検出限界以下になり, 陰性と判断される場合もある.さらには抗 AQP4 抗 体 が 陰 性 の NMO 症 例 も 一 部 あ る . 臨 床 的 に NMO が疑われる場合に抗 AQP4 抗体が陰性の場合 には,これらの事項を慎重に検討する必要がある. 抗 AQP4 抗体陽性の場合は無治療では再発する 可能性が高く,臨床症候や MRI 所見にかかわらず 免疫抑制療法の導入を考慮しなければならない. IV. NMOにおける免疫介在性アストロサイトパ チーと抗 AQP4 抗体の病原性 脱髄疾患である MS と異なり,NMO はアストロ サイトが主に破壊される疾患である(図 2).これ には以下のような 3 つのエビデンスがある13).
1. NMO 病変における AQP4, GFAP の広範な 欠失1416) NMO の剖検例における神経病理学的検討では, NMO病変は壊死性変化が強い.また血管周囲の硝 子様変化や血管壁の肥厚があり,多核球や単核球, マクロファージなどの浸潤を伴い,血管周囲に免疫 グロブリンや活性化補体の沈着が見られる.この病 変周 囲で は広範 に AQP4 の染色 性が欠 失し てお り,同部位ではしばしば AQP4 と同様にアストロ サイトのタンパクである glial ˆbrillary acidic pro-tein(GFAP)の欠失を伴っている.MS では,ミ エリンタンパクである myelin basic protein(MBP) の 染色 性低 下 を伴 う脱 髄 病変 が主 体 であ るが , NMO では AQP4 の欠失に比較して MBP の免疫染 色性は比較的保持される傾向がある(図 1)3).おそ らく NMO におけるミエリン傷害はアストロサイ トパチーによる 2 次的な現象と思われる. 2. 急 性 増 悪 期 の 髄 液 GFAP 濃 度 の 著 明 な 上 昇17,18) また NMO 患者の急性増悪期の髄液 GFAP の濃 度は,MS や正常対照と比較して著明に上昇(1000 倍程度)している.髄液 MBP 濃度も NMO のほう が MS より高いが,GFAP に比べればその差は小 さい. 3. 実験的研究における抗 AQP4 抗体のアスト ロサイト傷害性1924) In vitro では,抗 AQP4 抗体は培養アストロサイ トや AQP4 をトランスフェクトした細胞の表面に 結合し,補体介在性にこれらの細胞の壊死を引き起 こす5).また in vivo では,ラットに MBP で免疫あ るいは MBP 反応性 T 細胞を投与して実験的自己免 疫性脳脊髄炎(EAE)を誘発し,そこへ抗 AQP4 抗体陽性 NMO 患者血清由来の精製 IgG を投与す ると,NMO でみられるようなアストロサイトの傷 害が引き起こされるが,抗 AQP4 抗体陰性症例由 来の IgG ではそのようなアストロサイトパチーは 起こらない.またラットに EAE を惹起せずに抗 AQP4抗体陽性 NMO 患者血清由来 IgG のみを投 与すると,NMO 様の病変は見られなかった. また臨床例として NMO 発症の 10 年以上前から 抗 AQP4 抗体が陽性であった症例25)が報告されて おり,これと上記の EAE の研究を総合すると,抗 AQP4抗体は NMO の発症に必要であるが,この抗 体のみでは十分でなく,中枢に炎症を起こす T 細 胞が NMO の発症には必要である.したがって, 抗 AQP4 抗体を完全に除去すること,発症のトリ ガーとなる中枢抗原反応性 T 細胞を抑制するこ と,またいかにしてアストロサイトを保護するかと いうことが治療面で重要と考えられる. V. NMOにおける IL-6 の異常 NMOでは急性増悪期の髄液や血中で IL-6 の濃 度が著明に上昇していることが知られている26).ま た髄液 IL-6 濃度と髄液 GFAP 濃度は有意な相関が みられる.さらに実験的研究では,ラットの髄腔内 に IL-6 を注入すると脊髄障害が引き起こされるこ とが報告された.最近 Chihara ら27)は,NMO の末 梢血から分離した plasmablast を IL-6 で刺激して 培養すると抗 AQP4 抗体が産生され,逆に抗 IL-6 受容体抗体によりこの抗体産生が阻害されることを 報告している.これらの事実は IL-6 が NMO の病 態 に関 わっ て いる こ とを 強く 示 唆し てお り ,抗 IL-6療法の有効性が期待される. VI. NMO における妊娠,出産の再発への影響 NMOは女性に多いため,妊娠,出産がその臨床 経過にどのような影響を及ぼすかは治療上も重要な 点である.最近の国際共同研究により,NMO では 出産後 6 カ月間には妊娠前に比べて約 4 倍に再発率 が上昇することわかった28).一方,MS で観察され てきた妊娠後期の有意な再発率の低下は明らかでは なかった.産褥期の NMO の再発を防ぐかは今後 検討を要する重要な治療面の課題である. VII. NMO の治療の実際29,30) NMOの治療に関するエビデンスは十分とはいえ ない.無作為化プラセボ対照試験や,数百例の大規 模試験,10 年以上の長期投与試験などはいずれも 行われていない.しかし最近の研究により,NMO の急性期治療及び長期的な再発予防療法がこの疾患 の予後を改善することについては,多くの研究者の 意見が一致するところである. NMOの治療は急性期治療,再発抑制治療(表 1) と慢性期の後遺症に対する対症療法の 3 つに分けら れる. 急性期治療としては,まず早期にステロイドパル ス療法を行う.NMO の視神経炎における OCT 検 査の結果では,3 日以内に治療を開始したほうが,
表 1 NMO の急性期と再発予防の主な治療と副作用 治 療 標準的使用方法 副 作 用 急性期 副腎ステロイド大量療法 メチルプレドニゾロン 1 g/日,3~5 日間 浮腫,一過性胃腸障害,顔面紅潮,高血糖 血漿交換療法 1 回 2 リットルを 5 アルブミン液で置換, 2~3 回/週,最大 7 回 出血,血小板減少症,感染症 再発予防 経口プレドニゾロン 5~20 mg/day 骨粗鬆症,浮腫,副腎抑制,高血圧,高血 糖,肥満,白内障,胃潰瘍 アザチオプリン 2 mg/kg/日程度 発熱・悪寒,脱毛,紅班,血球減少,大球性 貧血,肝障害 ミコフェノール酸モフェチル 2 g/日 白血球減少,胃腸障害,リンパ増殖性疾患, 発がん,頭痛 リツキシマブ 375 mg/m2/週を 4 週間連続または 1 g を 2 週 おきに投与CD19 陽性細胞か CD27 陽性 B 細胞をモニタリングし,増加が見られたら再 投与 免疫グロブリン大量療法 ミトキサントロン 400 mg/kg, 5 日間,毎月12 mg/m2/月,全投与量 140 mg/m2を超えな い.日本人では 100 mg/m2以下のことが多 い. シクロフォスファミド 1 g/day,月に 1 回 脱毛,膀胱出血,骨髄抑制,口腔潰瘍,眠 気,嘔気・嘔吐,便秘,不妊症,発がん 遅れて治療するよりも網膜神経層の厚さが保持され たとの結果を得ている5). しかし NMO ではステロイドパルス療法が無効 であることもまれではなく,その場合は,血漿交換 療法(我が国では血漿吸着療法もしばしば用いられ ている.)を行うことにより半数以上の症例で臨床 的な改善がみられる31).再発からできるだけ早期に 血漿交換療法を開始したほうが高い改善率が期待さ れる.この血漿交換療法の有効性は,NMO の病態 における自己抗体,補体,サイトカインなどの液性 免疫の重要性を支持するものである.最近の米国神 経学会の免疫性神経疾患に対する血漿交換療法の有 効性に関するガイドラインでは,NMO を含めた中 枢神経の炎症性脱髄疾患における急性期の血漿交換 療法は possibly eŠective(エビデンスレベルは Class II)となっている32). NMOの再発予防には,ステロイドや各種の免疫 抑制剤(アザチオプリン,ミコフェノール酸モフェ チル,ミトキサントロン,シクロフォスファミドな どが用いられる.当科の治療成績としては,2000 年以降の NMO の年間再発率はステロイドの投与 率が高まるにつれて低下してきており,免疫抑制療 法の再発予防効果は明白である. 抗 CD20 モノクローナル抗体であるリツキシマブ を投与し末梢血 B 細胞を除去すると NMO の再発 が抑制されることが示されている33).この生物製剤 治療では,患者の末梢血の T 細胞の増殖性が低下 しており,B 細胞と T 細胞の相互作用が断ち切ら れることがその治療効果に関連しているものと思わ れる. また米国では補体 C5 に対するモノクローナル抗 体であるエクリズマブの臨床試験が行われており, 予備的な報告ではかなり高い再発予防効果があるよ うである34).前述の如く NMO の病理学的及び実験 的研究では活性化補体がアストロサイトの破壊に関 与していることが示唆されており,この抗補体療法 の臨床的有効性が期待される.またこのほか,免疫 グロブリン静注療法や血漿交換療法を定期的に行い 再発予防に有効だった症例の報告もある. NMO の治療は MS とは異なる.MS 例えば MS の再発予防の第一選択薬であるインターフェロン b は,NMO には無効でむしろ再発率を増加させる傾 向があり35),投与すべきではない.NMO では Th1 細胞が病態に重要な MS とは異なり,再発時の髄 液 IL-17 濃度が上昇しているとの報告がある36).ま た Axtell らの報告によれば,Th1 細胞で誘導した EAEではインターフェロン b 治療が有効だったが, Th17 細胞で誘導した EAE ではインターフェロンb 投与によりむしろ病態が増悪した37).これらの結果 から,NMO ではインターフェロン b による病態の 悪化に IL-17 が関与することが示唆された.また最 近 MS の初の経口薬として承認されたフィンゴリ モドも抗 AQP4 抗体陽性症例では早期の再発が起 こっており,注意が必要である.
上記の免疫学的な治療のみならず,種々の神経後 遺症に対する対症療法も NMO 患者の QOL 向上の 観点から重要である.疼痛やしびれ,痙性や便秘や 排尿障害などが治療の対象となる.NMO の脊髄炎 の慢性期に起こる有通性強直性けいれんにはカルバ マゼピン[200 mg/日程度]が有効であるが,その 他の痛みやしびれは難治性のことが多く,これが歩 行障害にも関与していることが知られている. お わ り に NMO は抗 AQP4 抗体が関与する自己免疫性疾患 であり,MS のような脱髄疾患でなく,免疫介在性 アストロサイトパチーと認識されるようになってき た.そして治療においても MS と異なる種々の面 が明らかになってきている.診療においては,抗 AQP4 抗体検査を含めて早期に NMO を MS から鑑 別し,治療を開始することが長期予後の改善のため に必要である. 文 献
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