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生きる力を育む学校教育の在り方に関する研究 : A中学校の実践事例を通して

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生きる力を育む学校教育の在り方に関する研究

-A

中学校の実践事例を通して−

田村靖ニキ

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TAMURA

キーワード:確かな学力豊かな心健やかな体アクティブラーニング、カリキュラムマネジメント 1 研究の目的 中央教育審議会一次答申(1996)では,これからの子どもにとって必要となる力は, 「自分で、課題を見つけ, 自ら学び,自ら考え,主体的に判断し,行動し,よりよく問題を解決する資質や能力J 「自らを律しつつ,他人 とともに協調し,他人を思いやる心や感動する心などの豊かな人間性」 「たくましく生きるための健康と体力J であり,この「生きる力」をバランスよく育むことが重要な教育の役割であるとした。そして,この現念は知識 基盤社会を生きる上で現行学習指導要領(2008)にも継承されており,学校教育では創意工夫を生かした特色あ る教育活動を展開することで,児童・生徒に「確かな学力j 「豊かな心」 「健やかな体」をバランス良く育成す ることとしている。 このことを踏まえ、滋賀県教育委員会第 2期滋賀県教育振興基本計画(2015)では,確かな学力を育成するた めに, 「授業改善」はもとより, 「個に応じたきめ細かな学習指導」 「家庭と連携した学習習慣の確立」を教育 目標の重点とし,豊かな心を培う観点からは, 「命の大切さや思いやりの心を育む道徳教育」 「子どもの規範意 識の醸成」 「豊かな人間性や人間関係を築く力を培う体験活動」を推進することとしている。また,健やかな体 を育む教育では, 「保健体育科の授業の充実」や「運動部活動の活d|主化等

J

「健康教育

J

「食育教育

J

「子ども の生活習慣の改善・向上」に向けた教育を重視している。 ここで,これらの教育思念や重点目標の実現は、学校で、の教育実践に待つ必要がある。校長は,リーダーシッ プを発揮し,自校の学校教育目標を職員に示す中で,教育の実践的専門集団として教員をまとめ, PD C Aサイ クルを展開させながら,学校力を高めていかなければならない。そして,実践の具体としての教育課程は,生徒 の心身の発達や授業時数との関連を図り,総合的・組織的に編制し,また,実施においては,生徒の実態や地域 の特性を十分に考慮し,生徒の学習に対する興味・関心・意欲を高めながら学力向上を図らなければならない。 また,教育活動には,教師と生徒の望ましい人間関係の構築が不可欠であり,その関係性は教職員聞や生徒間へ と広がりを見せるとともに,家庭や地域社会との連携へと発展させる必要がある。 そこで、,本稿では「生きる力Jを育む学校教育の観点からA中学校の実践事例を通して,全国学力・学習状況 調査や,全国体力・運動能力,運動習慣等調査,学校評価の基礎資料である生徒・保護者アンケートの結果をも とに,学校運営に対する成果や今後に改善すべき点について検証することとした。 牢大津市立打出中学校

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2 確かな学力の育成に向けた取組 2-1 実践事例 1 (学びの共同体の推進) 「確かな学力」の育成には, 「基礎的な知識・技能」 「知識・技能を活用し,自ら考え,判断し,表現する力」 「学習に取り組む意欲」の3つの力を育み,生涯にわたり学び続ける基盤を培うことが重要である。しかし,中 央教育審議会答申(2013)では,我が国の児童生徒の学力に関して,基礎的な知識・技能の習得においては一定 の成果が見られるとしているが,思考力・判断力・表現力等を問う問題や記述式の問題には課題があり,学習意 欲の面では,中学生の数学・理科に関する興味・関心は国際平均よりも低く,学校教育の現状に多くの課題を抱 えていると結論づけている。 橋田裕(2014)は,秋田県の授業について,始まりで学ぶめあてを知り,終わりで学びを振り返ることによっ て,子どもは「何を学ぶのかJを意識して学習する。そして,その繰り返しが学習意欲を向上させていると報告 している。また,

J.

T・ブルーアー(1997)は,あるべき学習環境は子どもたちがグ、ルーフ。で、あるいは自分自 身のベースで,あるいは援助的な役割を果たすグノレープのリーダーとともに様々な課題に自発的に取り組める場 でなくてはならないと述べている。また,佐藤学(2011)は,学びの質を決めるのは, 「課題・授業デザインj 「関係の中で学ぶ(対話と協同)」 「子どもの能動性(意欲・認知・感情)」であるとし,質の高い学びは,プ ロセスで生まれた疑問や学び、を深め,拡大する課題が必要であること,他者との学び合いの質が認知的発達の変 数になること,子どもの学びについて子どもが表現する中身を問い直すことが必要であるとしている。 A中学校では,平成24年度から佐藤学が提唱する「学びの共同体Jを導入し,全学級で、生徒の机の配列をコ の字型にし,男女千鳥型の座席配置にするなど, 「学びの共同体」による課題解決型の学習を進めてきたが,形 式的で,本質に十分に迫り切れていないという課題があった。また,学習のめあでや振り返りの時間を多くの教 師が意識することなく知識や技能の伝達に終始する従来型の教授法に頼っている教師の姿も見受けられた。そこ で, A中学校の校内研究部では,平成26年度から校内研究・研修主題を「共に学び合い,一人一人が学びを深 める授業の創造∼見通し・学び合い・振り返り∼」に設定して, ( 1) 全ての授業で「めあて」と「振り返り」を取り入れる (2) 「学びの共同体」を深め思考力・判断力・表現力の育成をめざし高度な学習課題を取り入れた授業の展 聞に努める (3) 「学ひ、の共同体jを通し,認め合う支持的な学習集団を育成し,生徒の自己肯定感や自尊感情を高める (4) 授業研究会では専門性の高い講師を招き,教員一人一人の意識改革を図り,チームA中学校として授業 改善に繋げる の

4

点を研究推進の手だてとし,授業改善に取り組んだ。表

1

は、校内研究部から全教員へ提示された授業改 善のガイドラインである。また表2は,校内研究部の活動概要を示したものである。この 2年間,授業研究会を 重視し,先進校見学や学識経験者等の指導を通して,教員がまず学び,実践力を高めることから校内研究をスタ ートさせた。 2-2 実践事例 2 (総合的な学習の時間の改善) 国立教育研究所(2013)は,学校の指導状況と教科の平均正答率の関係において, 「学級やグループロで、話し合 う活動J' 「言語活動に重点を置いた指導計画の作成J' 「総合的な学習の時間における探究活動Jを積極的に 行っている学校の方が,教科の平均正答率が高い傾向が見られると分析している。 一方,平成25年度までのA中学校の「総合的な学習の時間」は,各学年の発達段階に応じて学校所在市,近 隣市,修学旅行先での班別自主研修や職場体験学習,文化祭等との関連で実施されてきた。ところが,これらの 取組は,カリキュラム・マネジメントの上で,体験型の活動である「特別活動Jと課題解決型の「総合的な学習 の時間」の聞に明確な学習目的の違いを意識せず教育実践にあたっている教師の姿があった。 本来, 「総合的の学習の時間Jは,教科等の学習で培った基礎・基本を活用し,言語活動を充実することによ って思考力・判断力・表現力を伸ばすとともに,意欲的に学習に取り組む態度の育成をめざす教科横断的・総合

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的,探究的学習活動である。すなわち,生徒は,この時間を通じて,主体的に学習課題を見つけ,問題を解決す る資質や能力を育み,創造的,協同的な態度を高めていくこととなる。他方,特別活動は自主性や実践的態度を 育て,社会の一員としてのよりよい生活や人間関係を築く上で生き方の自覚を深め自己を生かす能力を養うため に行う集団活動である。ここに総合的な学習の時間と特別活動の学習目的に明確な違いが見られる。ところが, 総合的学習の時間が学校行事と同様の成果が期待される場合には特別活動に代替できることや,見かけ上で特別 活動に似た活動型学習であることから,学校によっては総合的な学習の時間の目的を十分に理解しないままで, 特別活動と同質の学習活動を展開する事例も少なくない。 表1 授業改善のガイドライン ( 1) 授業では, ・学習のめあて(何を学ぼうとしているのか) Jを明示する ・単元や題材の達成目標, 1時間ごとの授業のねらいをもって授業に当たる ・導入時等,何故を問う発問の工夫をする ・授業の最後は必ずその時間に学んだことを「振り返る時間(何を学んだか)」を確保する (2) 学び合いのルールでは, ・全学年コの宇型で,男女交互の千鳥の模様となる座席配列とする .机の高さを統一し身長等による調整は椅子の高さで行う ・鞄はロッカーか壁際に置き机の周辺には物を置かない .授業デザインに基づき授業に臨む ( 3) 学びの共同体の推進では, ・授業の展開は,前半に共有課題,後半にジャンプ課題から構成する .学習は, 4人グループてや構成した話し合し、(対話と協同)を活用する ・学習の目的は,グループ活動に置くのではなく,個人の学びの保障とする ・協同的な学び,協同し伝え合う喜びが感じられる授業に心掛ける .自分の思いや考えを書くことを重視する (4) 研究方法としては, ・各教科での指導力向上に向けてビデオ撮りも含めて授業研究会をもち,分析に当たる .学校公開日や保護者向け授業参観日,初任者教員による授業,教育実習生による授業などを活用し,教員は積 極的に授業参観に臨む ・学期に必ず 1回の研究授業を実施し,専門的な講師のもとで授業研究協議会を開催する ・授業観察は,支援を要する生徒の学習状況を中心に行い,次に示す観察記録を作成し,授業研究協議会に臨む 授業観察の観点 課題が生徒に意識されているか 生徒の考えが授業を動かす学習活動になっている か 課題追究場面がある学習活動となっているか 板書が学級共通の思考場面として生かされている か 個々の生徒の課題に対応し,個別指導が考慮され ているか ポイント 【めあての明示による学習の見通し] 【発問の工夫] 【学び合い] [情報の提示] 【個に応じた指導] 良かったことや 改善点(記入)

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学習を振り返り,整理する時間が確保できている 【きめ細かな指導】 力、 再びやってみたくなる課題・学習活動となってい 【意欲,家庭学習習慣への発展] たか 表2 校内研究部の活動概要 平成 26年度の取組 平成 27年度の取組 研究推進委員会及び研究協議会の 全9回(うち研究協議会3回) 全10回(うち研究協議会3回) 開催数 研究授業を実施した教科 3教科(社会・英語・理科)

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教科(国語・社会・数学・理科・ 英語) 4名(先進校校長,滋賀県教育委員 4名(先進校校長,学びの共同体スーハ。 学識経験者等を招鴨した回数 会指導主事,学びの共同体スーハ。ーハ

Y

ーハゃイずー,滋賀県教育委員会指導主 ずー) 事) 保護者等への公開授業 7回 1 0回 先進校見学 県内実践校への研修に

5

名を派遣 県外実践校へ研修に 2名を派遣 そこでA中学校では, 「総合的な学習の時間」に求められている学習の目的にそう教育活動となるよう,過去 に行ってきた活動の趣旨を生かしつつも,以下の

3

点について指導の改善に努めた。 ( 1) 学習内容は,教科等の横断的・総合的な学習であり,学習の目標や目的が明確であること (2) 学習では,生徒自らが学習課題を設定し,解決のための情報収集,整理,分析すること。 ( 3) 学習では,学習課題の解決に向け,生徒聞及び家族や地域など他者との協同的学びとなること なお,表 3は平成 26年度に実施した A中学校の 1年生の総合的な学習の時間の指導計画である。 表 3 総合的な学習の時間の指導計画(1年生) 1 対象学年 第1学年

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標題・時間数| 「我がふるさと・・市を探訪するJ (全16時間) 3 学習目標 ・テーマ(課題)を設定し,調べ学習や文化施設・文化財を訪問するという体験活動などを行 い,ガイドマッフ。等にまとめ発表するという一連の問題解決的学習の方法を知る。 ・一連の問題解決的学習を経験し,・・市のよさを再認識することを通して,自分たちが住ん でいるまち「我がふるさと・・市」を大切にし愛する気持ちを育む。 4 学習の目 ・・市の歴史・文化施設を訪問することで郷土への興味・関心を高め知識・理解を深める。 的 安全に学習が行えるよう時間や約束事を守り,グループで、協力して行動する力を養う。 適切な突通機関を選び,テーマに即したコースを計画・立案する力を身に付ける。 体験や見学したことをわかりやすくまとめ,他者に上手く伝える力を育む。 5 生徒に身 夏休みの課題, Webページ,図書から目的に応じて必要な情報を収集し整理する力。 に付けさせた −追究する価値あるテーマ(課題)を設定する力。 い力 −解決の方法や手順を考えて,適切な計画を立てる力。 −文化施設や文化財を訪ね,課題について聞き取ったり,班員と考えや思いを伝え合ったり話 し合ったりするコミュニケーション能力。 −調べ学習や体験活動によって得られた情報を分析・整理し,発信する力(表し方を工夫する 力)

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6 学習の流

10月7日 ガイダンス(校外学習の概要・レポート交流−・・市についての学習〉 10月10日 テーマ決定〈訪問地の決定・訪問パターン決定) 10月15日 行程の調べ学習①〈出発駅・アクセス方法・チェック場所の決定) 10月16日 行程の調べ学習②〈行程表の決定・班の役割分担決定〉 10月21日 見学施設の調べ学習・テーマの再考(施設調べ・知りたいこと〉 10月31日 校外学習当日 11月 6日・ 11日・ 18日 事後学習の取り組み「学級発表会」 11月28日 3・4校時学年「学習発表会」体育館にて 7 学習発表

I

(2組) 『こんなところにあった。滋賀の歴史物。』 (7組) 『歴史的建造物の魅力』 (4車副 会(司会:生徒)| 『市指定文化財。指定されるまでの背景を調べる。』 (3組) 『・・天皇と歴史ある建物との 関わり』 (6組) 『人物について詳しく調べる』 (5組) 『歴史にタイムスリップ』 (8組) 『有名なところツアー』 ( 1車ill.) 『建物と人物の関係を調べよう。』 (9組) 『近江八景と・・神社』 *講評 2-3 実践事例3 (習熟度別少人数指導の推進) 文部科学省(2013)は,習熟度別少人数指導について, 「習熟の遅いグループに対する少人数指導が児童生徒の 学力の底上げと関連があり,習熟の早いグループに対する発展的指導が生徒の学力を伸ばすことに関連があるJ と少人数での学習に効果が見られると分析している。しかし、教職員配置定数は, 「公立義務教育諸学校の学級 編制及び教職員定数の標準に関する法律」の定めに基づき,少人数指導について「きめ細かな指導工夫改善定数J での加配措置にとどまっている現状にある。また,滋賀県ではこの加配教員を活用した県独自の 35入学級編制 を実施でしており,学校はティームティーチングや少人数指導を充足できる教員数に至っていない状況である。 そこで A中学校では,基礎教科である数学科を対象に指導と評価の一体化を図り,入学後から 1年間の生徒の 学習状況の結果等を総合的に評価し, 2年生で習熟度別少人数指導を実施することとしている。 少人数指導の良さは,教員が生徒の成長している様子や何が課題で、困っているのかを把握しやすい学習環境に あり,学習支援の方法等に工夫できる状況が通常の学習環境よりも優れているところにある。従って,実施に当 たっては,どのような学習集団の編制が望ましいかが非常に重要な事項となる。 A中学校では,生徒の希望も考 慮、し,表4に示す基準を標準として弾力的に学習集団編制を行っている。なお,単元毎に希望を確認し,変更を したい場合は変更が可能であることも合わせて指導している。各コースとも「学びの共同体」を指導の基本とし ていることには変わりはない。 表4 習熟度別少人数指導の学習集団編制基準 高度な学習課題を中心に,答えを求めることを最終目的にするのではなく,解法上のプロセ たっぷりコース スを他の学習者に分かり易く伝えることを踏まえた学習能力や態度の育成を目的としている。 協働と対話が機能し,説明を聞く生徒の中からも多様な反応が伺えている。 「わからないJことは「わからない」と言える教室環境を重視し,互いにわかり合おうとする ゆったりコース 前向きな学習姿勢の育成を目的としている。このコースでは,分かることで得る自信や満足感 に繋がる生徒の育成が重視され親和的で支持的な学習風土が伺えている。 3 豊かな心を育む教育に向けた取組 3ー1 実践事例 4 (道徳教育の充実) 塩見能和(2007)は,道徳の時間の在り方に関して,児童生徒の興味・関心の低下の問題とともに,教材や授業 方法,教師の力量など検討すべき課題が多いと指摘している。文部科学省教育課程部会(2008)は,社会が変化

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する中で, 「生命尊重の心の不十分さ」 「自尊感情の乏しさ」「基本的な生活習慣の未確立」「規範意識の低下J 「人間関係を形成する力の低下」など,子どもの心の活力が弱っている傾向があると指摘し,発達に即した適切 な指導が行われるよう道徳教育を改善することが課題であると提言している。また,中央教育審議会答申(2013) では,規範意識や社会性などの育成には依然として課題が残っており,各学校段階における道徳教育の取組を強 化する必要があるとし,国では「心のノート」や「わたしたちの道徳Jの教材作成をはじめ,道徳の時間の教科 化など道徳教育の充実に向けて多様な施策を進めている。 A中学校では,開発的生徒指導の視点を取り入れる中で,平成 26年度から,道徳教育の要となる道徳の時間 の充実に向け、次の4点を改善のポイントとして授業改善に努めている。 (1)道徳教育推進教師は,学校全体における道徳教育の改善を図り,発達段階に応じた指導実践に向けて全校教 職員を牽引する。 (2)道徳の時間の目的を踏まえ,学年教師集団で教材研究を行い,担任に限ることなく授業者として指導が出来 る体制を構築する。 (3)道徳の時間を積極的に保護者や地域の人々に公開を行う。また指導主事や学識経験者を招鴨し,授業研究会 を実施する。 (4)基本的な指導過程は,導入(価値への位置づけ)一展開前段(価値の追求・把握)一展開後段(価値の内面 的自覚)ー終末(価値の整理・自己課題への意欲)とする。 なお,表5は道徳教育推進教師と校内研究部の共同提案で、実施された道徳の時間の授業改善に向けた取組の一 部である。 表5 道徳の時間の指導改善に向けた取組 公開授業のテーマ l年「し、じめの起こらない学級を 2年「かけがえのない命」

3

年「希望のビザJ (H26. 11実施) めざしてJ 世界の中の日本人 研究授業のテーマ 1年「自然に感動する心」 指導助言者:滋賀県教育委員会学校教育課指導主事 (H27. 1実施) 公開授業のテーマ 1年「運命を乗り越えてJ 2年「個性や立場の尊重」

3

年「希望のビザ」 (H27. 11実施) 世界の中の日本人 3-2 実践事例5 (朝読書の実施) 読書指導は生徒の心の発達にとって有効な教育的手段で、ある。生活綴り方運動の中心的役割を担った滑川道夫 (1959)は, 「読書指導とは自己の人生を読書により充実させ,現代社会に適応する読書力と読書による人間形 成を具案的,計画的に助成する指導であるJと述べている。また,近年朝 10分間の「朝読書jが生徒の心を育 て,学校を変える原動力となっている実例が数多く報告されている(林公 1999)。 A中学校では, 「朝の学級活動が落ち着いた静かな雰囲気の中で始められることJ' 「豊かな感性や他人の気 持ちを分かる心を育てることJ' 「読解力や言語力の向上を通じて集中力,思考力,判断力,表現力の育成に繋 がること

J'

「何よりも本を読む楽しさを体験し,読書習慣が培われること

J

の教育的効果を期待し,平成25 年度から朝の会の前 10分間を利用し,全校一斉読書を実施している。また,生徒とともに教師も表 6に示す「10 の約束Jに従って朝読書に取り組むこととしている。

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表 6 朝読書実施の「10の約束J ( 1)みんなでやる (2)毎日やる(1日 10分という短い時間でも,毎日行うことで生徒の読む力を育む) (3) 好きな本でよい(読む本を子ども自身に選ばせることは自分発見につながり主体性を育む(但し,マンガ と雑誌は除く) (4)ただ読むだけ(感想文や記録は求めない。本を読んでいるときの楽しく充実した思いを大切にする) (5)読む本は原則として生徒自身で用意する ( 6)学級文庫を設置することで,生徒の身近に本のある環境をつくる ( 7)文化委員や学校図書館ボランティアを通じ,新書本や推薦本の情報提供も含め,学校図書館の充実に努める (8)積極的な参加が望めない生徒への対応は,読書以外の時間帯に励ましの声かけをする ( 9)機会を通して,自分の読書体験や本の魅力について語る (10) 遅刻はその場で注意をせず,朝読書に参加させ,私語をしたり物音を立てたりする場合はすかざすに注意 を促す 3-3 実践事例6 (人権学習の推進) 法務省・文部科学省(2015)では,学校教育における人権教育の推進に関わって, 「教職員の資質の向上」「誰 に対しても差別や偏見を持たず,公正・公平にすること」 「法や決まりを守り,自他の権利を大切にすることJ 等を指導内容として示し, 「人権教育にも資する教育計画の指導充実jや「地域や学校での奉仕活動・体験活動 を通して,豊かな人間性や社会性を育む創意工夫ある活動Jを求めている。 そこで,A中学校では,表7に示した年間指導内容を定め,特に人権週間では人権学習の強調期間に位置づけ, 積極的な外部指導者の活用や人権擁護委員会との連携を図るなど,人権教育の推進に向けた多様な学びの提供に 努めている。 表7 人権教育に関する年間指導内容 学年 学年共通した学習 学年独自の学習 1年生

0

「特別支援学級で学ぶ仲間に 「読み物耕寸を活用した学習」 ついて理解しようJ 「障害者理解教育:バリアフリーの体験活動」

0

「世界人権宣言と人権強調習 「障害のある演奏家を招鴨した講話と演奏(外部講師2名)」 慣について:校長訓話」 「働くことと職業理解(地域関係者

9

名)」 2年生

0

「学校からいじめをなくす生 「職場体験学習向けた生き方講話(地域関係者

9

名) J 徒会の取組について:生徒会長 「高齢者理解教育: I口を活用した学習と装具による高齢者体験活 による放送J 動J

0

「し、じめについて考える IJ 人権擁護委員会とのタイアッフ。授業「ネット社会と人権(学識経験者

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「し、じめについて考える IIJ 等4名) J 「将来の進路と生き方:高校生活と特色ある学校(高校教員等18 名)」 「修学旅行事前学習:平和学習」 3年生 「修学旅行での現地指導者による平和学習及び民泊体験学習(地域関 係者20名) 「社会の一員としての地域や社会貢献の在り方J

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3-4 実践事例7(学校支援地域本部事業によるボランティア活動の推進) これまで学校教育を下支えしてきた家庭の教育力や地域の教育力の低下は,依然として学校教育を揺るがしか ねない深刻な教育課題である。文部科学省では,教員の多忙化の問題と重ね合わせて「子どもと向き合う時間の 確保Jに向けて学校地域支援本部事業やコミュニティ・スクールを立ち上げ,制度からの学校改革を目指してい る。 学校地域支援本部事業は,地域ボランティアの活用を通して, 「学校の求め」と「地域の力」の効果的なマッ チングを図ることで教員の多種多様な職務のスリム化に繋げることを目的としている。この学校と地域とのマッ チングに関して、これまでのA中学校では,地域人材を活用した教育活動や,学校施設開放や生徒の地域行事等 への参加などで小学校に比べ地域との関係づくりに消極的で、あった。 そこで、, A中学校では, 「地域とともにある学校Jを学校目標の一つに掲げ,平成27年度から本事業の指定 を受け,校内組織に地域連携部を創設し,担当教員を指名するなど,新たな教育活動に着手した。指定 1年目で は,地域ボランティアの活用に向け人材ノ〈ンクの登録を地域の方々に依頼するとともに,生徒が学習の場として 地域の奉仕活動や体験活動に積極的に参加するなど,学校と地域社会の双方向性の関係を築くことを目標として 取り組んで、いる。平成27年12月現在で、ボランティア登録者約50名,地域行事への参加生徒数は約250名に 上っている。表 8には A中学校が取り組んだ具体的な活動を示している。 表8 学校地域支援本部事業の内容 1. 地域行事への中学生ボランティア参加に向けた調整 2. 学校支援ボランティアリストの整備・活用による教育支援 3. 学校運営や学習活動等の支援 (ア)学校行事の運営支援(職場体験学習・人権教育・キャリア学習・国際理解・租税教室−・・市探訪) (イ)学習支援(特別支援教育・道徳・特別活動・補充学習) (ウ)部活動の支援(地域指導者バンク・高校や短大との連携) (エ)図書の整理(学校図書館ボランテイア) (オ)花壇や樹木の整備等の校内環境劉首 (カ)大学生(卒業生・教育実習生)によるボランティアパンク 4. その他学校の要望に応じた支援 5. 安全・緊急対応等に対する支援 (ア)年3回のあいさつ運動(パトロール) (イ)町補導委員会,青少年学区民会議,少年センターとの連携した長期休業中の街頭パトロール活動 (ウ)緊急時の児童,生徒の安全を守る支援活動 6. 地域への広報活動(学校だより・ホームページ・地域コーディネーターだより) 7. 子どもと自治会役員等地域関係者との懇談会 8. 地域と教員の交流を推進する懇談会 9. A中学校ブロック内の教職員が共通して取り組む体制の整備(保幼小中連携推進事業・ブロック人推教) 10.生徒と児童が一緒に取り組む活動の促進(子ども会議や部活動体験等) 4 健やかな体の育成 体力は,人聞が知性を磨き,知力を働かせて活動していく源であり,生活を営む上での気力の源であると言え る。この体力の問題に関して,中央教育審議会答申(2002)では, 「子どもの体力・運動能力は,昭和60年ごろ から低下傾向が続いており, 『生きる力』」を身に付ける上で悪影響を及ぼし,社会全体にとっても無視できな い問題jであると指摘している。そして,学校においては, 「始業前や休み時間の活用など学校教育全体で倉リ意 工夫をこらした体力づくりの取組jや「体育の授業の複数の指導者による指導」 「外部指導者の活用」が体力向

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上にとって効果的で、ある。また, 運動部活動については,子どものニーズに応えるため, 「外部指導者の一層 の活用」 「複数校合同運動部活動J 「総合運動部の推進」 「地域のスポーツクラブとの連携・融合」などが重要 であると示唆している。 A中学校では,このような背景をもとに子どもの体力の問題に関する課題に対して,保健体育科での授業改善 や体育的行事,運動部活動の創意ある取組を通して,生徒の体力・運動能力の向上に努めている。 4-1 実践事例8 (保健体育科の授業改善) 中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会(2005)では,体育の授業で留意すべき事項として,すべての 子どもが身に付けるべき体力・運動能力を達成するため,次の

3

点を示している。 ( 1) 全ての子どもが身に付けるべき内容を一人一人の子どもが身に付けているかどうかを常に把握すること (2) 達成していない子どもがし、る場合には,まずその「原因」を具体的に特定すること (3) 子どもに応じた指導方法の工夫・改善を行うこと そこでA中学校では,平成27年度から授業前のウォーミングアッフ。に5分間走やトラック5周のタイム測 定を導入し,基礎体力の育成をめざすとともに,上記(1)∼(3)の留意点を踏まえて,体育・保健体育科での授 業改善に向け,以下の

5

点について指導の充実に努めることとした。 ( 1) 生徒一人一人が学習に主体的に取り組むことができるよう「見通しJをもたせるために,手持ちサイズ のホワイトボードを活用し,毎時間必ず「めあて」を提示する。 ( 2)学習の「振り返り」を行う時間を確保し,時間的制約を受ける場合は,振り返りカードを提出させる。 (3)活動場所の確保に向けて各学年の年間指導計画や時間割を工夫し,協同・活動型授業を展開する。 ( 4)電子黒板を活用し,技術力向上に向けて視覚的な耕オを与えると同時に,ポイントとなる動作等の確認や 改善点のイメージ化に繋げる。 (5)学習に当たっては,補助プリントを活用し,個々の生徒の学習状況を把握し,指導の手だてとする。 また,この他,保健体育科教員を中心に中学生男子・女子駅伝大会への積極的な参加を生徒に促し,放課後や 週休日等を活用した自主練習や補充的な活動を実施した。また,体育祭の種目に,これまで個人が競う種目を実 施してこなかったことに改善を加え,平成26年度から学年の枠を超えた「個人対抗lOOm走Jを取り入れ競技種 目の活性化を図った。 4-2 実践事例9(運動部活動の活性化等の取組) A中学校では,全校生徒839名中641名(76.4%)が運動部に所属し,活動に励んで、いる。学校では,部活 動を教育課程外に計画された学校の重要な教育活動の一つで、あると位置づけ,表9に示した内規に基づき,指導 の充実に努めている。また,学校では平成27年度から,運動部活動を通して,生徒の体力の増進を図り,生徒 の充実した学校生活に繋げるため,運動部活動の活性化に向けて,表10に示した9項目について指導の改善に 努めた。 表

9 A

中学校運動部活動規則 部活動の目的 ( 1)生徒の自主的な態度・自治能力の育成を図り,生徒同士が友情や連帯感を深める。 (2)技能・競技力の向上を目標にしつつ,一人一人が努力する過程の大切さが実感できるよう にする。 (3)互いの能力・人格を認め合えるようにする。 (4)生涯スポーツの基礎・基本となる力を育てる。 (5)合理的・効果的な実践を通じ基礎体力や運動技能・精神力の向上を図り,心身の健全な育 成を図る。

(10)

運動部活動方 ( 1)生徒の人格形成を促す。 針 (2)教育課程内の活動だけでは発揮しきれない力を思う存分発揮し活躍できる場と捉える。 (3)顧問と生徒という立場で生徒指導を円滑に進める。 (4)共通の興味や関心を持つ生徒が,学年や学級の所属をこえた組織で取り組む教育活動とし て大切にしてし、く。 (5)教員全員が顧問として関わり,活動においては原則顧問の直接指導とする。 運動部顧問の ( 1)生徒に自主的・自発的に活動させていくための目標を持たせることが大切で、あり,活動の 役割に任務 ねらい,方法,時間,場所を明らかにし,保護者・地域への説明責任を果たす。 (2)部活動の経営や指導に従事し,大会,各行事などの生徒引率,生徒指導及び学級担任との 綿密な連携を図る。 表 10 平成27年度運動部活性化指針 ( 1) 指導体制を改善し,全ての運動部において専門的指導が可能な顧問を配置 (2) 引率等,指導経験を持たない教員も含めて,各部 3名以上の顧問体制の整備 (3) 小学校 6年生を対象とした部活動の見学時間や部活動紹介の実施 (4) 新入生へ部活動の見学週間を設け,全ての部活動の見学会の実施 ( 5) 体育祭で,競争部門と演技部門に分かれた部活動対抗リレーの実施。 ( 6) キャプテン会議の開催 (7) 夏季総合体育大会参加に向けた壮行会の開催 (8) 剣道部及び水泳部を対象とした学生指導者の導入。 ( 9) 専門家やトレーナー,卒業生などを招いた技術力向上教室の開催。

果 結

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数 日 表11 学力に関する調査結果 学校 全国(公立) 調査名 N Ave S D N Ave S D t値 国語A 241 26. 7 5. 1 1,016,451 25.0 6.0 4.39814榊 国語B 241 6.4 1.7 1, 016, 575 5.9 2.0 3.88071特 数 学A 241 26. 1 7.6 1, 016, 737 23.2 8.0 5.62691林 数 学B 242 7. 7 3.9 1, 016, 548 6.2 3.8 6. 13989神 理 科 242 14. 7 5.9 1, 016, 572 13.3 5. 7 3.82037紳 **・pく0.01 とに差があることが明らかになった。 次に, 89項目からなる学習状況調査について,本研究と関連がある質問項目に絞って,生徒が回答した「 1 当てはまる,

2

どちらかと言えば当てはまる,

3

どちらかと言えばあてはまらない,

4

当てはまらなしリの

4

つ 選択肢に対して,それぞれ

4

点,

3

点,

2

点,

l

点を与え数値化した得点を,国の類型(領域)ごとに学校平均 の和と全国平均(国・公・私立)の和を比較した。その結果「言語活動・読解力J' 「学習習慣J' 「数学への 関心等Jについて,学校平均の和が全国平均の和より高いことが分かった。また, 「生活習慣」 「自尊感a情」 「規 範意識」 「総合的な学習の時間への関心等J 「国語への関心等J 「理科への関心等Jについては,学校平均の和 より全国平均の和の方が高いことが分かった。

(11)

この結果を受け,各領域に関する質問項目ごとに学校と全国の平均の差を比較したところ,有意差が認められ る質問項目は16項目あり,その内容を表 12に示した(両側t検定)。なお, 「学習習慣」については,質問 項目に有意な差が認められるものはなかった。 表12 学習状況調査結果における学校平均と全国平均に差が見られた項目 I 領域名 質問項目 学校 全国(国・公・私立) t 11直 N Ave. S D N Ave. S D 生活習’慣 毎日閉じぐらいの時刻に起きる 241 3.35 0. 74 1,054,845 3.47 0.68 -2.84813** 自尊感情 難しいことでも,失敗を恐れないで 挑戦する 242 2. 71 0. 79 1,055,912 2.83 0. 77 -2.39259* 授業では自分の考えを発表する機 会が与えられている 242 3. 16 言 語 活 動 0.86 1,055, 752 3.29 0. 78 -2.49572* 読解力 授業では生徒間で話し合う活動を 242 3.38 0. 73 1,055, 718 3.08 0.82 5. 70305牢キ よく行った 規範意識 いじめは,どんな理由があってもい けない 242 3.55 0. 77 1,055,659 3.65 0.65 -2.21604キ 総 合 的 な 総合学習は普段の生活や社会に出 学 習 の 時 242 2. 77 0.84 1,054,291 2.94 0.84 -3. 15526本* 間 たときに役立つ 国語の勉強は好き 240 2.56 0.96 1,055,685 2. 71 0.96 -2. 46102* 国 語 へ の 国語の授業の内容はよくわかる 240 2.80 0.84 1,054,882 2.95 0.82 -2.69881ヰヰ 関心等 国語の授業で学習したことは将来 241 3. 15 0.81 1,054,926 3.25 0.82 -2.03346* 社会で役立つ 数 学 へ の 数学の授業の内容はよくわかる 241 3. 14 0.86 1,054,356 2.97 0.93 2.94079牢本 関心等 数学ができるようになりたい 241 3.52 0.85 1,053,948 3.63 0. 73 -2.22468* 理科の勉強は好き 241 2.50 0.99 1,054,001 2. 78 1.02 -4.25568牢牢 理科での学習を普段の生活の中で 241 活用できないか考える 2.33 0.96 1,052,930 2.47 0.99 -2.20802* 理 科 へ の 理科では理科室で観察や実験をや 241 3.55 0.62 1,051,028 3. 19 0.80 6.94234** 関心等 った 理科で自分の予想、をもとに観察や 実験計画を立てた 241 2.46 0.94 1,051,968 2.62 0.92 -2.68304** 理科の授業で観察や実験結果をも とに考察した 241 2.69 0.99 1,051,371 2.88 0.92 -3.01519牢* *:pく0.05,林:pく0.01, 次に,国が類型化していない質問項目について学校と全国との平均値に関して,有意な差が認められた質問項 目の結果を表13に示した。この結果, 「学級活動」 「保護者の学校行事等への関心Jに関する項目で学校平均 が全国平均を下回り, 「学習活動Jに関する項目で、は学校平均が全国平均を上回った。特に, 「学習活動」に関 する質問項目の「課題を立て,解決に向け情報を集め話し合いながら整理して発表する学習活動に取組んでいるJ 「授業のはじめに目標(めあて・ねらし、)が示された」 「授業の最後に学習内容を振り返る活動をよく行ってい た」 「授業で扱うノートは学習の目標とまとめを書いていた」の全項目で、全国平均を上回ったことは,学校が取 り組んだ授業改善に一定の成果が見られることが分かった。また, 「地域・社会への関心Jに関する質問項目で

(12)

は, A中学校の生徒は,全国の中学生に比べて地域行事に積極的に参加している状況が明らかになった。なお, 領域に記載した名称は,質問項目の内容から筆者が命名したものである。 表13 学習状況調査結果における学校平均と全国平均に差が見られた項目E 領域名 質問項目 A中学校 全国(国・公・私立) t値 N Ave. S D N Ave. S D 学級では友達同士で話し合って 学級活動 決まりなどを決めている 242 2.86 0.84 1,055,079 3.08 0.87 -3.91708** 学校行事 家の人は授業参観や運動会など 241 2.93 0.92 1,052,376 3.30 0.83 -6.99327** への関心 学校の行事に来る 課題を立て,解決に向け情報を集 め話し合いながら整理して発表 241 2.94 0.86 1,055,428 2.80 0.87 2.55029* する学習活動に取組んで、いる 授業のはじめに目標(めあて・ね 242 3.63 0.64 1,055,245 3. 16 0.86 8.53597*牢 学習活動 らし、)が示された 授業の最後に学習内容を振り返 242 る活動をよく行っていた 2.93 0.86 l, 055, 167 2.69 0.88 4.06399キ牢 授業で扱うノートは学習の目標 とまとめを書いていた 242 3.42 0. 76 1,053,500 3.04 0.95 6.27259*ヰ 今住んでいる地域の行事に参加 242 2.50 1. 02 1,055, 733 2.34 1. 06 2.26097* 地域・社会 している への関,

b

ニュース番組やインターネット 241 3. 14 0.92 1,049,914 3.29 0.85 -2.64412** でーュ スを見る *:pく0.05,**:pく0.01, 次に学習状況に関する調査について,昨年度に実施された調査結果を同様に数値化し,今年度の調査結果と比 較した結果,有意な差が認められ,昨年度の平均値を上回った項目を表 14に示した。昨年度に比べ改善が見ら れたと考えられる内容は, 「家庭での学習習慣Jに関するもの, 「総合的な学習の時間への関心等」に関するも の, 「地域・社会への関心等」に関するもの, 「国語への関心等」に関するものであった。 表 14 H26年度調査と H27年度調査の比較で改善が見られた項目 領域名 質問項目 平成 27年度 平成 26年度 t値 N Ave. S D N Ave. S D 家で宿題をしている 242 3. 57 0. 71 262 3.42 0. 77 2.32874* 学習習慣 家で予習をしている 242 2.24 0.97 261 2.06 0.92 2. 11552* 総合的な学習の時 総合学習で課題を立て情報を集め 整理して調べたことを発表する活 242 2.61 0.90 262 2.42 0.83 2.44576本 間への関,

b

等 動に取組んで、いる 地域・社会への 今住んで、いる地域の行事に参加し 2.50 2.26 242 1. 02 262 1. 03 2.55417* 関心等 ている 国語への関心等 国語の勉強は大切だと思う 240 3.34 0. 77 262 2.65 1. 02 8.50120牢牢 *:pく0.05,林:pく0.01,

(13)

ところで近年,学校は信頼が揺らぐ中で,保護者や地域社会に聞かれた学校の構築に向け,真撃な取組を進め ていくことが求められてきた。また,学校組織マネジメントとの観点から PDCAサイクルを機能することで学校 教育の質的改善を図ることが期待されている。そのため,学校では,自校の教育活動に対して説明責任を果たす とともに自己評価や学校関係者評価及び外部評価などを活用し,教育活動の改善に生かすことが必要とされてき た。 A中学校では学校評価(自己評価)を実施するにあたって,学校関係者評価とともに,生徒と保護者を対象に した17項目からなるアンケート調査を毎年11月に実施している。次に,学校が生徒・保護者を対象に実施し たアンケート調査を活用し,同校の教育活動について経年変化を検証することとする。 まず,この2年間に実施されたアンケート調査の結果をこれまで同様に数値化した後, 26年度のアンケート 対象者の1年生の生徒とその保護者の回答を現2年生の生徒とその保護者の回答と比較した。また, 26年度の アンケート対象者の 2年生の生徒とその保護者の結果と現 3年生の生徒とその保護者の回答と比較した。各質問 項目に対するアンケート調査のそれぞれの平均値を表15に示す。 平均値を単純比較によると,現2年生の生徒では16項目中11項目で,現3年生の生徒では16項目中15項 目で、評価が上がっていた。また,保護者についても,現2年生では16校項目中 13項目で,現3年生では16項 目中13項目で、評価が上がっていることが分かった。なお,数学科の習熟度別少人数指導では, 2年生に限って 実施しているため,経験変化による比較から除外しているが,平成26年度調査では3.27,平成27年度調査で は3.31とどちらも比較的高い評価となっていると言える。 表15 生徒・保護者アンケートの経年比較 生徒 保護者 H26 H27 H26 H27 質問項目 中1 中2 中2 中3 中1 中2 中2 中3 平均 平均 平均 平均 平均 平均 平均 平均 ①本校の校訓である「明朗・聞達」 「自主・力行」とい う二葉を知っている 2. 14 2.21 2.34 2.25 2. 76 2.97 2.96 3.09 ②「夢と志Jを大切にしながら,自ら学び,自ら考える ことが身についた 2. 76 2.81 2. 72 3.03 2.61 2.62 2.67 2.93 ③学校通信,学年通信,生徒指導通信,保健室通伝など 2.81 2.64 2. 73 をよく読んでいる 2.81 3.31 3.30 3.26 3.24 ④総合学習など教科以外の学習で多様な体験や色々な 考え方に触れている 3.09 2.98 3. 11 3.30 3. 14 3. 15 3.21 3. 13 ⑤先生の授業は,内容がわかりやすく,創意工夫されて 3.03 2.92 3.07 3.08 2.85 2. 70 2.89 2. 75 し、る。 ⑥先生は,学習内容等の質問に丁寧にわかるまで教えて 3.10 くれている。 3. 15 3.20 3.32 2.80 2.68 2.86 2.80 ⑦学校生活は楽しいと思っている。 3.28 3.33 3.34 3.50 3.28 3.29 3.31 3.37 ③文化祭,体育祭など学年行事や学校行事には,自ら進 3. 13 3.27 3. 19 んで参加している。 3.49 3.31 3.25 3.33 3.33 ⑨生徒会活動に積極的に参加している。 2.31 2.21 2.23 2.32 2.58 2.56 2.61 2.60 ⑮部活動に積極的に参加し,みんなと仲良く協力して活 動している。 3.48 3.40 3.28 3.40 3.55 3.42 3.36 3.37

(14)

⑪道徳の授業で自らの生き方を見つめることができて 2.86 2. 71 2. 74 2.97 2. 78 2.81 2.80 2.89 いる。 ⑫少人数学習は,学習内容の理解に効果的である。 (2年:数学) 3.27 3.31 3. 15 3.27 ⑬きまり(校則)は適切である。 3.20 3. 17 3.24 3.44 3.24 3.21 3.32 3.31 ⑭きまり(校員JJ)を守っている。 3.24 3.38 3.35 3.59 3.42 3.40 3.42 3.46 ⑬悩み事があるとき,学校の先生に気軽に相談してい 2.37 2.32 2.46 2.68 2.52 2.37 2.56 2.66 る。 ⑮災害や不審者にあった時の対応が,学校で指導されて 2.93 3. 12 3. 14 3.35 3.05 2.93 3. 12 3. 14 いる。 ⑪よりよい学習環境づくりに努力されている。 3.01 3.06 3. 13 3.35 3.07 3.02 3. 16 3. 11 次に,表15で示した各調査項目について, 両側t検定を実施したところ,表16に示す 19項目で帰無仮説が棄却された。 表16 経年比較で差が認められた項目 表16の結果から,現2年生では2項目で しか前年度の評価と差が見られなかったが, 現3年生では, 16項目中12項目で前年度に 比べ今年度の学校の取組を評価しているこ とが明らかになった。 また,現 2年生の生徒と保護者とも「部活 動で仲間と仲良くと協力できていなしリと部 活動に否定的な評価が高かった。 次に危機管理では,災害時の学校の指導に ついて,現2年生, 3年生の生徒で意識が高 まっていることが分かった。 なお,現3年生は部活動への参加を終えて おり,前年度の

2

年生の時の回答との差は認 められていない。 全国体力・運動能力,運動習慣等調査は, 毎年7月までに中学校2年生を対象に実施 することとなっている。 表17は,平成27年度に実施された全国 体力・運動能力,運動習慣等調査の体力と運 動能力に関するA中学校と全国の平均値に関 して男女別,種目毎に示したものである。両 側t検定を施した結果,中

2

男子では,学校 の平均値は握力テストで全国平均を下回る 中1→2生徒 中1→2生徒 中2→3生徒 中2-3生徒 中Z→3生徒 中2→3生徒 中2→3生徒 中2→3生徒 中2→3生徒 中2→3生徒 中2→3生徒 中2→3生徒 中2→3生徒 中2→3生徒 中1→2保護者 中1→2保護者 中2→3保護者 中2-3保護者 中2-3保護者 質問 項目 ⑩ ⑮ ② ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑪ ⑬ ⑭ ⑮ ⑮ ⑪ ① ⑩ ② ④ ⑤ 平成27年 度 N Ave SD 264 3.28 0.98 268 3.14 0.86 241 3.03 0.79 240 3.30 0.78 241 3.08 0.79 241 3.32 0.76 241 3.50 0.74 239 3.49 0.70 240 2.97 0.82 237 3.44 0.71 237 3.59 0.60 236 2.68 1.06 237 3.35 0.77 237 3.35 0.77 221 2.96 1.01 218 3.36 0.91 216 2.93 0.72 206 2.66 0.85 208 3.14 0.61 平 成26年 度 t値 N Ave SD 278 3.48 0.80 -2.52509* 250 2.93 2.64 2.63633柿 236 2.80 0.88 3.07526紳 237 2.98 0.82 4.44209紳 238 2.92 0.77 2.23001* 238 3.15 0.81 2.40257* 237 3.33 0.86 2.24064* 236 3.27 0.87 3.12485紳 236 2.71 0.88 3.38198柿 237 3.17 0.81 3.86095紳 237 3.38 0.72 3.59197林 237 2.32 0.96 3.59493林 236 3.12 0.84 3.18673林 238 3.12 0.87 3.85382紳 244 2.76 1.02 2.13251* 244 3.55 0.67 -2.59304* 226 2.62 0.74 4.47125林 219 2.37 0.86 3.50597榊 217 2.93 0.68 3.39293紳 *:pく0.05,**:p<O. 01,

(15)

結果で、あったが,反復横眺びと 2 0 mシャトルラン除く種目で全国平均を上回る運動能力が示され,体力点でも 全国平均より優れていることが分かった。また,中

2

女子では,握力テスト, 2 0 mシャトルラン,反復横眺びを 除く全ての種目で全国平均を上回る運動能力が示され,体力点でも男子同様全国平均よりも優れていることが明 らかになった。 表 17 運動能力テストに関する学校と全国の比較 中2男 子 中2女 子 調査名 A中学校 全国(公立) A中学校 全国(公立) t値 t 値

N Ave SD N Ave SD N Ave SD N Ave SD

握力 133 27.58 6. 07 507, 630 28. 93 7. 09 2.1957* 133 23. 2 4.18 484, 192 23. 68 4. 57 -1. 2616 上体起こし 136 32. 6 5.43 504, 138 27. 43 6. 08 9. 91539 紳 132 27. 6 4. 72 481, 550 23. 26 5. 75 8. 57109紳 長座体前屈 133 49. 26 9.84 504, 414 43.08 10. 41 6. 84561林 133 53. 2 8. 93 482, 784 45. 53 9. 8 9. 03673林 反復横飛び 136 51. 99 9. 24 501, 112 51. 62 7. 92 0. 54471 128 47. 2 6. 38 478, 790 46. 09 6. 64 1. 82292 持久走 134 375. 47 55. 64 257, 426 392. 63 63. 97 3.1046 特 131 276 38. 6 242, 271 290 44. 45 3. 6762林 20m川ト1i',iン 14 87. 43 23. 77 320, 721 85. 56 24. 33 0. 28758 5 64. 4 16. 8 304, 742 58. 06 20.19 0. 70216 50m走 137 7.83 0. 81 497, 739 8. 01 0. 85 2. 4783* 134 8. 6 0. 83 474, 271 8.84 0. 8 3. 4722** 立ち幅跳び 130 202. 49 26. 02 499, 866 194. 05 27.87 3. 45245林 131 179 23. 1 477, 959 167. 3 24. 65 5. 25548梓 ハンド投げ 135 21. 74 5. 25 499, 097 20. 65 5. 58 2. 26938* 133 13. 5 3. 58 477, 944 12. 83 4. 08 1. 80884 体力点 115 46.93 9. 99 463, 196 41. 89 10. 02 5. 39334 紳 124 55 9.8 443, 367 49. 08 10. 95 5. 97896林 *:p<O. 05, **:p<O. 01, 次に, 【18表]は保健体育の授業に関する生徒の受け止め方を調査している質問項目について,生徒が「1 当てはまる, 2どちらかと言えば当てはまる, 3どちらかと言えばあてはまらない, 4当てはまらない」の 4段 階で回答した結果について,それぞれに

4

点,

3

点,

2

点,

l

点を与え数値化し,学校と全国の平均差を両側t 検定で調べた結果である。この結果,女子生徒で「学習のめあての提示Jに関する項目は全国平均を上回ってい るが,その他の項目についてA中学校の生徒は

f

生別に拘わらず, 「保健体育の授業は楽ししリ 「振り返る活動を 行っているJ 「助け合い活動を行っている」と回答している生徒の割合は全国よりも少なく,加えて男子生徒で は, 「話し合い活動を行っているJについても全国平均より低いことが分かった。

(16)

表18 保健体育の授業に関する調査結果

中2男子 中2女子

A中学校 全国(公立) A中学校 全国(公立)

質問項目 t値 t値

N Ave SD N Ave SD N Ave SD N Ave SD

保健体育 授業は楽 143 3. 13 0.85 506,925 3.35 0. 77 -3.42869** 134 3.02 0.86 484,653 3. 17 0.81 -2.09756* しい 保健体育 の授業の 目標が示 142 3.35 0.80 505,449 3.32 0.84 0. 45611 134 3.58 0.65 483, 111 3.28 0.84 4. 15320** されてい る 保健体育 の授業で 振り返る 141 2. 78 0.97 504,444 3.00 0.97 -2.63257** 134 3.01 0.97 482,232 3.02 0.95 一0.02538 活動を行 っている 保健体育 の授業で 助け合い 143 2.86 0.86 504,631 3. 22 0.82 -5.21464** 134 3.07 0.85 482, 788 3. 32 0. 77 -3.84839** 活動を行 っている 保健体育 の授業で 話し合う 142 2.82 0.86 504,043 3. 18 0.85 -5. 13522** 活動を行 134 2.9 0.82 485,464 2.93 0.81 0. 10169 ってい る。 *:p<O. 05, **:p<O. 01, また表19は運動・スポーツに関する生徒の受け止め方について,上記と同様の数値化を図り,学校の平均と 全国の平均の差を比較したものである。この結果,

f

生別に拘わらずA中学校の生徒は運動やスポーツに好意を寄 せている割合が全国平均よりも高いことが分かった。また,女子生徒は「運動は大切である」と思っている割合 が全国平均を上回っていたが,男子生徒では「運動は大切である」とする割合が全国平均を下回った。 表19 運動・スポーツに関する調査結果 A中学校 全国(公立)

t

f

i

直 N Ave S D N Ave S D 中 運動・スポーツが好き 143 3.48 0. 71 509,675 3.11 0.67 6. 72957** 2 運動・スポーツが得意 143 2.87 0.89 508, 740 2.87 0.89 -1.56109 男 体力に自信がある 143 2.41 0.86 507,617 2.49 0.90 -1.01272 子 運動は大切 143 3.37 0.87 507,432 3.50 0. 75 -1.99589*

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中 運動・スポーツが好き 134 3.43 0.80 486,099 3.03 0.85 5.40729牢* 2 運動・スポーツが得意 134 2.59 0.87 485, 168 2.58 0.99 0.07698 女 体力に自{言がある 134 2.21 0. 78 483,801 2. 17 0.86 0.58088 子 運動は大切 134 3.43 0. 75 484,079 3.27 0.83 2.23613本 *:pく0.05,**:pく0.01, A中学校では,陸上部・水泳部・野球部・サッカ一部・女子ソフトボール部・女子バレーボール部・男子バス ケット部・女子バスケット部・男子バドミントン部・女子バドミントン部・男子卓球部・女子卓球部・男子ソフ トテニス部・女子ソフトテニス部・男子剣道部・女子剣道部の16の運動部活動がスポーツに励んで、いる。表2 0は,平成26年度と平成27年度の夏季中学校総合体育大会の成績について,地区大会から全国大会に出場した 種目別数と上位8位までの入賞した数をまとめたものである。結果から今年度の方が昨年度よりも活躍した運動 部が多かった。なお,陸上競技では地区大会は開催されず,直接滋賀県大会への参加となっている。また,上位 入賞者総数は種目により個人・団体の別があるため,出土加数と一致していない。 表20 H26年度とH27年度中学生夏季総合体育大会結果 地 滋 近 メゴへニ 賀 区 畿 国 区 県 主 な 成 果 大 大 大 駅 大

:

i

三b、 dコ~、 コt=』 伝 ~ 、 出場部数 15 9 3 1 2 卓球部男子団体:滋賀県大会準優勝近畿大会第

3

位 成平 1

3 2 全国大会へ出場 2位 9 1 陸上部男子: 800

m

走滋賀県大会第1位 26 :走り幅跳び滋賀県大会第1

34

9 4

3 1 1 1 :800

m

走近畿大会第4位 5位∼8位 7 12 1 出土郷数 15 13 5 1 2 学校対抗(滋賀県大会) :男子総合第

3

位 男 女 総 合 1位 12 3 第7位 平 2

9 2 男子バスケット:滋賀県大会優勝近畿大会準優勝 成 3 1 3 2 全国大会ベスト 16 27 4

5 5 サッカ一部:滋賀県大会準優勝近畿出場 年 卓球部男子団体:滋賀県大会優勝近畿出場 度 個人:滋賀県大会優勝近畿出場 5位∼8位 10 16 水泳部個人: 200

m

パタ:滋賀県大会第2 :近畿大 会第6位 6 考察と課題 子どもに知・徳・体にバランスの取れた資質と能力,体力を培うことは,日々の学校教育の積み重ねと,家庭 教育や社会教育の取組の総体に待たなければならない。全日本中学校長会(2013)は, 「学校からの教育改革Jを 提唱し「学校の教育力の向上

J

「家庭・地域社会との連携

J

「教育行政への期待」 「新しい教育システムの成果 と課題Jの視点から「10の提言」を行い,学校は提言の実践・具現化に努め,検証を経て更なる実践への取組 が重要あるとしている。一方,文部科学省では,先が見通せない時代においては「何を学ぶか」とともに「何が

(18)

できるようになるのか

J

が大切であり,そのため「どのように学ぶか

J

ということが重要な教育課題であり,次 期学習指導要領の改訂の柱としている。 まず「確かな学力」の育成に関して, A中学校では,生徒の問題解決型の資質・能力の育成に向けて, 「学び の共同体Jを導入し,生徒が主体的,協働的に学ぶことを重点に置いた「アクティプ・ラーニング」への移行を 図ってきた。その結果,平成 27年度の学力学習状況調査では,国語・数学・理科の各教科で「知識を問う問題」 「活用を問う問題Jとも全国平均を上回る成果が見られた。そして,学校が授業改善の重点とした「めあての提 示」や「振り返り活動」 「生徒聞での話し合い活動」 「探究型の学習への取組jに関する調査項目でも全国平均 より高い成果が現れた。これらのことは, A中学校が取り組んだ「共に学び合い,一人一人が学びを深める授業 の創造∼見通し・学び合い・振り返りjの実践は,教員の授業力の向上に繋げる有効な手立てであることが示さ れた。 次に, A中学校では, 「総合的な学習の時間」の実施にあたり,これまで学校が十分に学習の目的を捉えきれ ずに行っていたことへの反省から,その教育計画を見直し改善を図った。この点について, 「総合的な学習の時 間」が意図する「生活を改善する姿勢や,社会に対する有用感への欲求」に至るまでには生徒の意識を高めるこ とはできていないものの,全国平均や平成 26年度の調査結果との比較では,総合的な学習の時間が「探究型の 活動Jへと移行していると認識する生徒の増加が見られた。また,この傾向は 3年生に対する学校のアンケート 結果でも現れた。このことから, 「総合的な学習の時間」の学習に際して学校が志向した「カリキュラム・マネ ジメント」による取組は,一定の生徒の変容に繋がる可能性があることが示唆された。 一方, 「学習への関心等jでは,国語・理科で全国平均を下回り,全国平均よりも僅かに高い数学においても 「授業の内容がよくわかる」以外の質問項目で全国平均を下回る結果であった。学習への関心や意欲の醸成は, 生涯にわたり学び続ける力を培う基礎として学校に課せられた大切な役割の一つである。この結果から, A中学 校では,例えば授業者が学習者の知的好奇心を高め,分かる喜びゃ学ぶ楽しさにつながる適切な学習課題を与え てきたか,探究的欲求を満たす学習教材を提供したかなど,さらに指導過程に検証を加え,原因を明確にすると ともに,今後の授業改善に向け教員ひとり一人が研鐘を積む必要がある。 なお, 「生徒がノートの整理にめあでやまとめに留意して工夫していること」や,平成 26年度に比べ平成 27 年度において,重要な学習習慣である「予習や復習をしている」生徒が増えていることは,生徒の学習意欲向上 の表われと見て取れる。また,経年的比較の結果において, 「教師の指導姿勢に肯定的な回答Jをしている生徒 が増えていることは,教師と生徒との人間関係は良好な状況にあると解釈できる。 次に,数学で「授業の内容が分かる」と答えた生徒が全国平均を上回ったことについては,当該学年の生徒が 学校アンケートにも少人数指導の実施に肯定的な回答を寄せていることから,習熟度別少人数指導の効果である と考えられる。 第二に,豊かな心の育成に関わって, 「し、じめはどんな理由があってもいけないことだと思いますか」では, 全国平均より低い結果であった。

A

中学校では,この

2

年間, 「学校いじめ基本方針Jを定め,要としての道徳 の時間の充実や外部指導者を招いての創意工夫を生かした人権学習に取り組んできた。また,生徒会執行部によ る「し、じめ防止プロジェクトチーム」の立ち上げ,始業式や終業式,文化祭など節目となる学校行事や生徒会行 事でのいじめ防止に向けた取組,全学級での「いじめ防止行動宣言Jなど精力的な取組を展開している。また, 月一度のアンケート調査や幼稚園・小学校とのいじめ防止啓発ポスターの共同制作,生徒からの「ひとことノー ト」の活用など,きめ細かな生徒への対応を通して,いじめの早期発見や早期対応に努めている。

3

年生のアン ケート結果でも, 「学校は楽しい」 「道徳の授業で、生き方を見つめている」 「学校はよりよい学習環境づくりに 努めている」等,学校に対する肯定感は決して低くない。 しかし,いじめ問題が大きな教育課題の一つになっている今日,この結果を真撃に受け止める必要がある。ま

「生徒会活動への積極的な参加

J

や「部活動の充実

J

に関するアンケート結果では,一部で低い評価となっ ていることは,いじめ問題に限らず,生徒が主体的、能動的に活動できる学習の場の充実に加えて,一人一人の

(19)

生徒の人権が大切にされ民主的な学習の場になっているかどうかも含めて,今後引き続き生徒の活動の場の状況 を把握し必要に応じた改善に繋げる取組が必要であると言える。 また,自尊感情に関する質問項目として, 「困難なことにも挑戦する強い心」に関わって,全国平均より低い 回答結果となっている。自尊感情については, 「根源的なところで自己肯定できることが,他者を肯定できる」 としづ意味において人間形成上重要な要因であると言われている。 A中学校では,生徒の実態を踏まえ,今年度 から学校の教育目標を「夢と志を育む教育」から「自信と誇りをもち夢と志を育む教育Jへと改訂している。学 校教育目標の実現に向け更なる学校運営の改善が求められている。 学校が果たすべく役割の一つに,家庭と地域と連携を図り,充実した学校教育を推進することがある。しかし, これまで、A中学校に対して, 「中学生の地域行事等への参加が少なく,地域に協力的でないJとの声も少なくな かった。そこで,学校では平成27年度から「学校支援地域本部事業」を立ち上げ、 「地域とともにある学校J をめざし数多くの活動に取り組んでいる。今回の調査では「今住んでいる地域の行事へ参加していますか」の質 問項目に関し,平成26年度調査よりも 10%以上の割合で生徒の肯定的な回答が上昇し,また全国平均をも上回 る結果を示したことは学校の取組に一定の成果があったと言える。 最後に, 「健やかな体」の育成に関して,中学 2年生を対象に実施された全国体力・運動能力・運動習慣等調 査では,男女とも体力点で全国平均を上回る結果となり, 3年生の学力と併せてA中学校の実践は評価できるこ とが示された。しかし,授業に関する質問項目の検証から,国語や理科同様に生徒が「保健体育の授業が好きJ と答えた割合は全国平均を下回り,女子生徒が授業の「めあて」がしっかりと与えられていると回答したことを 除き, 「めあてJの提示, 「振り返りの活動J' 「助け合い活動」や「話し合い活動」など学校がめざす授業改 善に繋がっていないことが明らかになった。また,男子生徒や女子生徒双方とも「運動が好きである」と回答し ているにも拘わらず, 「運動が得意であるJ' 「体力に自信があるJと肯定的に回答している割合が全国平均を 上回る結果に繋がっていないことは,生涯スポーツへの基礎を育み意味からも教育方法の改善が求められるべき である。 一方,部活動では,中学3年生にとって最後の大会となる夏季総合体育大会の結果について,平成26年度と 平成27年度の比較を行った結果,平成27年度では学校別対抗で男子総合第3位,男女総合第7位に入賞を果た すなど,ボートやラグビーなど特定の運動部を持たないA中学校にとって画期的な結果であった。このことは, 常日頃からの指導者の努力と生徒の真撃な取組によるところであるが,全部活動で指導経験者導者を配置したこ と,顧問が指導者講習会等に積極的に参加し研績をつんだこと,競技会の大小やレベルの優劣に拘わらず優秀な 成績を収めた個人や団体には全校生徒の前での表彰を励行したこと,学校通信や生徒指導通信,学年通信などに 全ての競技成績を記載し保護者や地域に配布したこと等のチームA中学校の成果の表われであると考えられる。 また,ここ

2

年間,学校では,積極的に地域のスポーツ団体の活動を支援し大津市民体育大会の競技会場や 全国高等学校強化試合の練習会場等に学校施設開放を行っている。生涯スポーツに向け,生徒が暮らしの中でど れだけスポーツに親しみ,愛着をもてるかは重要な要素である。学校施設開放を通して,生徒が多種多様なスポ ーツと出会い,高度なプレイに触れることでスポーツに対する関心が高まる機会となっていることも見逃しては ならない。 7 おわりに 本研究は,中学校教育における学校運営という観点に立ち,今後求められるアクティブ・ラーニング、やカリキ ュラム・マネジメントの先導的取組を進めようとしているA中学校の実践事例を通して,その教育活動の成果と 課題を明らかにしようとしたものである。結果,学力や体力においては成果が見られ,生徒や保護者はA中学校 の教育活動に一定の評価を与えていることが明らかになった。しかし一方で,自らの生き方に自信と誇りを感じ, 他人を思いやるなどの豊かな人間性を育む教育や,主体的・能動的な学びを通して探究心を育む教育の観点から は,教育方法の改善に努める必要があることも明らかになった。また,保護者や地域社会と学校との関係性は良

表 6 朝読書実施の「1 0 の約束 J (  1 )みんなでやる (2 )毎日やる(1日 1 0 分という短い時間でも,毎日行うことで生徒の読む力を育む) (3)  好きな本でよい(読む本を子ども自身に選ばせることは自分発見につながり主体性を育む(但し,マンガ と雑誌は除く) (4 )ただ読むだけ(感想文や記録は求めない。本を読んでいるときの楽しく充実した思いを大切にする) (5 )読む本は原則として生徒自身で用意する ( 6 )学級文庫を設置することで,生徒の身近に本のある環境をつくる ( 7 )文化委
表 18  保健体育の授業に関する調査結果

参照

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