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100%酸素6時間曝露に対するモルモットの反応 : 血液,気管支肺胞洗浄液の生化学,気管支肺胞系の形態および気道過敏性の検討

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(1)

原  著 〔東女医大誌 第62巻 第12号頁1579∼1585平成4年12月〕

100%酸素6時間曝露に対するモルモットの反応

一血液,気管支肺胞洗浄液の生化学,気管支肺胞系の

形態および気道過敏性の検討一

ニガウリ

苦瓜

ヤマ ノ 山野 〆  東京女子医科大学 衛生学公衆衛生学教室 ヨウコ   オジマ   ヒロシ タニグチ  ヨシエ   トクタケ

洋子・尾島  博・谷口 由枝・徳武

ユウコ  イシハラ  ヨウコ  ナカダテ  トシオ   カガワ

優子・石原 陽子・中館 俊夫・香川

      同 第一内科学教室      ナガ   イ    アツ   シ.

     永 井  厚 志

(受付 平成4年8,月18日) トモ コ ロ

智子

ジユン  順.  Effect of Exposure to 100(灰}02 for 6 Hours in Guinea Pigs: Study of Blood and Bronchoalveolar Lavage Fluid Biochemistry,        Lnng Morphology and A且rway Respollse Yoko NIGAURI, Hirosh玉OJIMA, Yoshie TAMGIUCm, Tomoko TOKUTAKE,       Yuko YAMANO, Yoko ISHIHARA, Toshio NAKADATE       and Jun KAGAWA      Department of Hygiene and Public Health, Tokyo Women’s Medical College       Atsushi NAGA耳         Department of Medicine I, Tokyo Women’s Medical College   、   The effect of exposure of guinea p孟gs to 100%02 for 6 hours was assessed how acute hyperoxic exposure affects the blood and the bronchoaiveolar lavage fluid(BALF)b孟ochemistry, h三sto豆ogy and a1「way「esponse・   Concerning airway respons孚, airway reactivity(△R)and airway sens量tivity(PC200)to the inhalation of histamine aerosol were evaluated by a s量ne wave oscillation method.   No biochemical changes in both blood and BALF were found, except that the O2 exposed group had higher blood GSH values than the control group. Histological changes in the bronchoalveolar system of the exposed group were not observed. No significant differences were detected in tQtal respiratory flow resistance(RTR−B), PC200 and△R of both groups.   The above findings suggested that exposure of guinea pigs to 100%02 for 6 hours might not affect the blood and the bronchoalveolar lavage fluid biochemistry, lung morphology and airway response.          緒  言  酸素に対する感受性は,動物の種類とその幼若 により異なるD.成熟動物では平三下で100%の濃 度におけるLD5。を引き起こす曝露日数はおよそ 3日から5日で,肺水腫や無気肺などの病理学的 所見を呈し,呼吸不全で死亡する2).これらの変化 に先だってウサギ3)やラット4)では,致死量のおよ そ半分以上の曝露時間で,血管内皮細胞の透過性 の充進や空胞化などの肺傷害が認められている. 一方,肺に明らかな変化が現れる以前に,健常人

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表1 血液およびBALF生化学検査項目

Blood biochemistry

GOT

91utamiC oxalOaCetiC tranSaminaSe Alb albumin

GPT

glutamic pyruvic tranSaminase

BUN

blood urea nitrogen

ALP

alkaline phosphatase

UREA

urea

ChE cholinesterase V.C vitamic C

CK

creatine kinase V.E vitamin E

LAP

】eucine aminopeptidase SOD superoxide dismutase

CHO

tota蓋cholesterol α1・AT alpharantitrypsin

PL phospholipid LPO lipid peroxidation

GLU

glucose 6PGD 6−phosphogluconate dehydrogenase

SIAL sialic acid GSSG−Red glutathione reductase

CRE creatinine G6PDH glucose・6−phosphate

TP

tota至prote三n dehydrogenase

GSH 91utathione

BALF biochemistry

UREA

urea SOD superoxide dismutase

BUN

blood urea nitrogen PL phospholipid

TP

total protein PC phosphatidylcholine

GSH

91utathione で100%酸素の吸入により被検者の50%に8時間 から24時間で気道の刺激症状や肺活量の低下が出 現し5),ラットを用いた実験では,100%酸素8時 間曝露後に呼気中の炭化水素の増加が認められ た6)という報告がみられる.しかし高濃度酸素曝 露に際して,曝露早期に生体にどのような影響が 現れるかについては十分に明らかではない,われ われはモルモットを用いて100%酸素を6時間曝 露し,高濃度酸素の曝露早期の生体への影響を, 血液と気管支肺胞洗浄液(BALF)の生化学,気管 支肺胞系の形態学,全呼吸気流抵抗,気道過敏性 および気道:反応性について検討した.          実験方法  1.実験動物

 50匹のHartley系SPF雄性モルモット約7週

齢(平均体重375±14g)を,曝露群と対照群に分 け,各群15匹を血液生化学検査用に,10匹を肺機 能検査に使用した.血液生化学検査用の15匹のう ち,10匹は気管支肺胞洗浄液(bronchoalveolar lζvege Huids,以下BALF)生化学分析に用い, 5匹は形態学的検討に使用した.表1に生化学検 査項目およびその略名と正式名を示した(表1).  2.曝露条件  容積481(縦×横×高さ,60cm×40cm×20cm) のプラスチック製チャンバーの一端から100%酸 素を20∼251/min(換気率約0.5回目min)で送気し, 反対側から自然排気を行い,チャン・ミー内の酸素

濃度(テレダイン漏壷02モニターTED200)を

96%以上とし大気圧に保持した.対照群は室内空 気を用い,同チャンバー内酸素濃度は20%であっ た.丸心とも曝露期間中のチャンバー内二酸化炭 素濃度(オメダ社製CO2モニター5200)は0.3%以 下,温度20∼25℃,湿度30%であった.  3.血液生化学的検査  曝露終了後ただちに腹腔内にpentobarb童ta1(50 mg/kg)を投与し,開胸後,心腔穿針して右心室 より採血を行った.  血球算定(RBC, WBC, PLT, Hb, Ht)は東 亜医用電子社製Sysmex Microcell Counter F− 800で測定した.白血球分画の算定は,スライドガ ラスに血液を塗抹しWright−Giemsa染色を行っ たものを標本とし,白血球数200個を観察して行っ た.  G6PDH(glucose・6−phosphate dehydro− genase),6PGD(6−phosphogluconate dehy・

drogenase)およびGSSG−Red(glutathione

reductase)測定用の赤血球は,採血後速やかに生 理食塩水で3回洗浄後,遠心し赤血球数を300×

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104/mm3前後になるように生理食塩水で浮遊調整

したものをsampleとした.6PGDおよびGSSG−

Redは比色法7)で測定し, G6PDHはべーリン ガー・マンハイム山之内(BMY)社製分析用キッ トを用いて前処理しオートアナライザー(チバ コーニング社製550EXPRESS)で測定した.また 全血中のGSH(glutathione)は,総チオール化合 物の値を定量するBeutler法8)を用いた.  血清は3,000rpmで10分間遠心し,その上清を 測定時まで一20℃以下で保存し,血清中のGOT (glutamic oxaloacetic transaminase), GPT (glutamic pyruvic transaminase), ALP(alka− 1ine phosphatase), ChE・(cholinesterase), CK (creatine kinase), LAP(leucine aminope− ptidase), CHO(total cholesterol), PL(phos− pholipid), GLU(glucose), SIAL(sialic acid), CRE(creatinine), TP(total protein), Alb (alb㎜in), BUN(blood urea nitrogen)および UREA(urea)はオートアナライザー(チバコ一 画ソグ社製550EXPRESS)を用いて測定した. LPO(lipid peroxidation)およびSOD(superox・ ide dismutase)は和光純薬社製分析用キットを使 用した.V.C(vitamin C)9)およびα、一AT(alpha、一 antitrypsin)10)は比色法で, VE(vitamin E)は HPLC法11)で測定した.  4。BALFの採取法および生化学的検査  曝露終了直後に麻酔下にて溶血死させたモル モットの気管にテブロンチューブを挿入固定し た.37℃に加温したヘパリン添加(2,000単位/100 ml)生理食塩水を体重100gあたり4m1,20cmH20 階下で注入した.同一洗浄液で注入排出操作を3

回繰り返した後ガーゼでろ過した液をBALFと

した.BALFは10分間1,500rpmで冷却遠心を行 い,上清を生化学的な検:索に用いた.  BALF中の細胞数は白血球カウンター(東亜社 製)で測定し,細胞分画は遠心後の沈渣を生理食 塩水に再浮遊させたものをサイトスピン(ダイナ テヅク社製)を用いてスライドガラスに付着させ, Dif£Quick染色12)を行い顕微鏡下で観察した.  BUN, UREAおよびPLは,血液の測定に用い たのと同様のオートアナライザーにより測定し,

SODおよびLPOは血液と同様の和光純薬社前

分析用キットを用いて測定した.TPはLowry

法13)を用い,BALFのGSHは, GSHとGSSG

(oxidized glutathione)を含めた総グルタチオン を5,5ノーdithiobis一(nitrobenzoic acid)法(DTNB 法)14)で測定した.PC(phosphatidylcholine)は Chen15)のHPLC法を参考にして測定した.  5.形態学的検査法  麻酔下にて脱血死させ,開胸したモルモットの 気管にテフロンチューブを挿入し,2.5%のグル タール固定液を25cmH20圧で注入し肺の拡張固 定を行った.48時間以上固定した後,左肺下葉矢 状断と気管分岐部より1cm上の気管輪状断を作 り,それぞれH−E染色とPAS染色を行い,光顕 的に以下の点について検討を行った.①気管輪状 断では,線毛細胞の剥離,杯細胞の肥大および粘 液分泌の増加,基底細胞の増大,粘膜下組織の細 胞浸潤,②下葉矢状断では,肺胞腔の細胞浸潤と フィブリノイドの析出,1型およびII型肺胞上皮 細胞の変化,肺胞中隔の肥厚および細胞浸潤,肺 内気管支の杯細胞の変化の有無について比較検討 した.  6.全呼吸気流抵抗,気道過敏性および気道反応 性の測定  全モルモットについて,サイン波加圧法16)によ り,全呼吸気流抵抗(RTR−B)の測定と,ヒスタミ ンエーロゾル吸入試験による気道過敏性(PC200) および気道反応性(∠R)の測定を,曝露開始1週 前と曝露直後に行った.ヒスタミン吸入試験の手 順と気道過敏性(PC2。。)および気道反応性(∠R) の算定は,前回報告した48時間曝露の際に用いた 方法と同様の方法17)で行った.  7.統計学的検討  生化学検査の両群の平均値の比較にはt・検定を 行い,全呼吸気流抵抗,気道過敏性および気道反 応性の結果はt検定およびpaired t一検定を行い, いずれもp<0.05を有意差ありとした.          結  果  1.血液生化学検査  GSHが曝露群で対照群に比し有意に上昇(p〈 0.05)した以外は,血液生化学の各検査および血

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表2 100%酸素6時間曝露群と対照群の血液生化学  検査値の比較 対照群(n〒15) 曝露群(n=15) GOT(U/L) 77±16 71±13 GPT(U/L) 37±5 40±5 ALP(U/L) 238±28 226±32 ChE(IU/L) 4,234±546 4,370±629 CK(U/L) 533±163 428±114 LAP(IU/L) 970±54 1,016±77 CHO(mg/dD 44±7 38±16 PL(mg/d1) 30±:4 32±3 GLU(mg/dl) 185±27 195±42 SIAL(mg/dl) 23.2±4,1 23.7±4.4 CRE(mg/dl) 0.48±0.06 0.48=ヒ0.06 TP(9/d1) 5.8±0.3 5.9±0,5 Alb(9/dl) 3.8±0.2 3.8±0.3 BUN(mg/dl) 23±4 25±3 UREA(mg/dl) 50±8 54±7 V.C(mg/dl) 1.0±0.2 1.2±0.3 V.E(ng/dl) 1.5±0.4 1,6±0,4 SOD(unlt/ml) 18.6±1.8 17.9±1,7 α1・AT(μm・1/min/ml) 11.1±2,1 11.3±0.9 LPO(ng/m星) 4.5±1.2 5、0±1.2 血球酵素 6PGD(U/1010RBC) 2,45±0.30 2.34±0.20 GSSG−Red(U/1010RBC) 2.66±0.27 2.56±0,22 G6PDH(mUノユ09RBC) 210.7±ユ9.7 217.0±12.5 GSH(mg/dlRBC) 95.1±8,2 !00.4±5,4* 傘p〈0.05 mean±SD 算で有意な変化を認めなかった(表2).  2.BAL、F生化学検査

 BALFの回収率は対照群と曝露群の間に有意

差はなく(表3),BALF中のUREAも前群間に

差はみられず(表4),両群ともほぼ同じ程度に気 管支肺胞領域が洗浄されたものと考えられた.両 一間で,細胞数,細胞分画に変化はみられず,TP, 抗酸化酵素およびPしなどの生化学検査にも有意 な差はみられなかった(表4).LPOは両面とも定 量限界以下であり測定不能であった.  3.形態学的検査  光顕的観察では曝露群の気管,.気管支および肺 胞領域に,対照群に比し特記すべき変化は見られ なかった.  4.全呼吸気流抵抗,気道過敏性および気道反応 性.  曝露群と対照群の曝露開始1週前の各測定値に 表3 100%酸素6時間曝露群と対照群のBALF回収  率,細胞数および細胞分画 対照群(n=10) 曝露群(n=10) 回収率(%) 71±15 70±8 全細胞数(103/mD 442±79 378±83 細胞分画(%)macrophage 97±2 95±4 eosinophU 2±1 4±4 neutrophil 0 0 1ymphocyte 0 0 mean±SD 表4 100%酸素6時間曝露群と対照群のBALF生化  学検査値の比較 対照群(n=10) 曝露群(n=10) urea(mg/dl) 5.5±0.9 6.1±0,6 BUN(mg/dl) 2.6±0.5 2.9±0。3 TP(mg/dl) 18.5±3.0 20.3±3..2 GSH(μM/1) 1,1±0.4 1,1±0.2 SOD(unit/ml) 4.9±1.3 4,2±1.1 PL(mg/d1) 10.6±0.3 8.8±0.2 PC(μ9/m1) 39.5±8.3 43.4±7.3 mean±SD 表5 100%酸素6時間曝露群と対照群の全呼吸気  流抵抗(RTR・B),気道過敏性(PC2。。)および気道  反応性(」R)の比較 曝露1週前 6時間曝露後 RTR・B 対照群(n=10) 0.355±0.032 0,356±0.064 (cmH、0/ml/sec) 曝露群(n=10) 0.337±0,064 0.337±0.035 PC、。。(%) 対照群(n=10) 0.824±0.388 0,927±0.576 曝露群(n;10) 0,850±0.558 0,691±0,398 ∠R 対照群(n=10) 2.211±LO92 1.441±1,128 曝露群(n;10) 2.072±2.002 2.178±2.161 mean±SD 有意な差はなかった.また各群の曝露前後の各測 定値にも有意差はなく,酸素曝露による全呼吸気 流抵抗,気道過敏性および気道反応性の変化はみ られなかった(表5).          考  察  高濃度酸素曝露下で生じる臓器の病変は,生体 内に過剰に発生した活性酸素が生体膜の脂質やタ ンパク質を傷害して引き起こすと推測されてい る18).灌流台や灌流肝を用いた実験では,高圧酸素 下で器官内の酸素濃度の上昇に伴い脂質過酸化が 促進されたという所見が得られている19).しかし

(5)

1気圧以下の酸素濃度でも生体内で脂質過酸化が 充血するのか否かは明らかではなく,曝露のより 早期に肺組織や血中の過酸化脂質が一定の傾向で 変動を示したという報告はみられない.脂質の過 酸化反応は極めて複雑で,一連の酸化生成物であ る過酸化脂質の定量に適した測定法は確立されて いない.その中で,検体中の酸化二次生成物であ るアルケナール,アルカジエナール,ヒドロペル

ナキシド,マロンアルデヒドなどを測定する

TBA(thiobarubituric acid)法20)は感度がよく簡 便であるという理由で,一般に多く用いられてき

た.本実験ではTBA法により血中およびBALF

中の過酸化脂質の測定を行ったが,100%酸素6時 間曝露後に有意な変動はみられなかった.Habib ら6)はラットに100%酸素を8時間曝露後に脂質 の過酸化生成物であるエタンが呼気中に増加して いることを報告しており,平圧下の酸素曝露早期 においても,生体内で過酸化脂質が増加している 可能性を示唆した.しかし曝露早期の過酸化脂質 の変化はおそらく軽微であることから,我々の 行った測定法では検出できなかったものと考えら れた.  また本実験で行った血液生化学検査では,曝露

群に認められた変化はGSHの上昇のみであっ

た.GSH, GSSG・Red,6PGD, G6PDHはグルタ チオン界ルオキシダーゼと共に過酸化水素と有機 ヒドロペルオキシドの消去機構を形成する21).

GSH以外の血球酵素に有意な変動はみられな

かったが,これらの活性酸素に対する防御系が曝 露早期に賦活されてGSHが上昇した可能性が考

えられる.一方本実験では,GSHをDTNB試薬

を用いたBeutler法8)で測定した.この方法は

GSSGとその他の非蛋白性チオール化合物も含

めた総チオール化合物の値を反映する22)が,酸素

曝露に際しGSHとGSSG以外のチオール化合

物が増加したという報告もみられる23).今後は酸 素曝露によるGSHの変動について検討する際,

本実験方法に加えて,GSHおよびGSSGの特異

的な測定法を併用する必要があろう.  BALF生化学検査では,曝露群でGSH, SOD, TP, PしおよびPCに変動はなく,また形態学的 な検査でも,気管支および肺胞の変化は光顕的観

察では認められなかった.しかしKonradova

ら24)は,90%酸素2時間曝露により電顕所見では ウサギの気管支上皮,杯細胞の空胞化や線毛細胞 の浮腫を認め,田代25)は,健常人で90%酸素吸入後 3時間で粘液輸送速度の低下を報告しており,こ れらの結果から,高濃度酸素が肺胞レベルでの変 化が現れるより早期に,気管支上皮に影響を及ぼ す可能性が考えられる.またこれまでの報告では, 高濃度酸素曝露による気道反応性の変化について の見解は一定していない.Szarek26)はラットを用

いた実験で,85%酸素を7日間曝露後に5−

hydroxytryptamine投与による気道収縮が充進 ずることを認め,勝又ら27)は,ネコを用いた実験 で,キサンチンおよびキサンチンオキシダーゼを 吸入させることにより局所で産生された外因性 スーパーオキシドが,気道収縮ならびにアセチル コリンに対する反応性の充進を引き起こす可能性 があることを示唆した.一方Becketら28)は健常 人に100%酸素を12時間吸入後,肺活量の低下はみ られたが気道反応性の尤進は認められず,福島 ら29)はヒツジに100%酸素を曝露後72時間以降に 著明なdynamic complianceの低下を認めたが, 気道反応性の充進は認められな:いと報告してい る.われわれはモルモットを用い,本実験と.同様 の実験系において,100%酸素48時間曝露後に,曝 露群に気道過敏性の充進を示唆する所見を得た17) が,6時間曝露においては全呼吸気流抵抗,気道 過敏性および気道反応性のいずれにも有意な変化 は認められなかった.  以上の結果から,成熟モルモットへの100%酸素 6時間曝露では,血液および気管支肺胞系の生化 学的分析と形態学臨検:査では明らかな変化は認め られず,全呼吸気流抵抗,気道過敏性および気道 反応性にも曝露による影響は認められなかった。 酸素吸入に際して,30∼40%以下の酸素濃度では 酸素中毒はまず発症しないと考えられている30} が,吸入濃度と吸入時間の安全な範囲については 明確ではない.高濃度酸素曝露の早期に,血中や 気管支肺胞系にどのような影響が現れるかを知る ことは,酸素中毒の発症を予防する上で有用であ

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る.今後は酸素の曝露濃度と時間を種々に設定し, 酸素曝露の生体への影響について検討する必要が あると考えられた.       結  論  モルモットに100%酸素を6時間曝露し,曝露早 期の影響を,血液とBALFの生化学,気管支肺胞 系の形態学およびヒスタミン吸入に対する気流抵 抗の変化について検討し,以下の所見を得た.  1.曝露群で対照群に比し,血中GSHの上昇が 認められたが,その他の血液およびBALF中の生 化学検査の結果は,両罰間に有意な差は見られな かった.  2.気管支肺胞系に両群間に明らかな形態学的 変化は認められなかった.  3.両部とも曝露前後で全呼吸気流抵抗,気道過 敏性および気道反応性に有意な変化はみられな かった.  以上の結果から,成熟モルモットへの100%酸素 6時間曝露により,血液および気管支肺胞系に明 らかな生化学的,形態学的変化は認められず,全 呼吸気流抵抗,気道過敏性および気道反応性にも 曝露による影響は認められなかった.       文  献  1)Frallk L, Bucher JR, Toberts RJ: Oxygen    toxicity in neonatal and adult animals of vari−    ous species. J Appl Physiol 451699−704,1978  .2)Balentine JD l Review of the pathology of    oxygen toxicity.加 Proceedings of the 6th    International Congress on Hyperbaric Medi・    cine(Smith G ed)pp3−7, Aberdeen University    Press, Aberdeen(1977)  3)Crapo JD, Baπy BE, Foscue HA et a1:    Structural and biochemical change in rat lungs    occuring  during  exposure to  lethal and    adaptive doses of oxygen. Am Rev Respir Dis    122 :123−143, 1980  4)]M【atalon S, Egan EA: Effects of 100% 02   breathing on pe㎜iability of a】veolar eplth−   eliu卑to solute. J Appl Physiol 50:859−863,    1981  5)山村秀夫監訳:中毒ハンドブック第11版.pp485    −486,廣川書店,東京(1990)  6)Habib MP, Exke監son C, Katz MR:Ethane   production rate in rats exposed to high oxygen   concentration. Am Rev Respir Dis 137:    341−344, 1987  7)三輪史朗:臨床検査技術書3 血液検査,pp305   −3ユ0,医学書院,東京(1976) 8)北村元仕,三輪史朗,三輸谷俊夫ほか編:臨床検   査マニュアル.p434,文光堂,東京(1988)  9)日本ビタミン学会編:ビタミン学実験法II. pp31   −32,東京化学同人,東京(1985) 10)Diez AA, Rubinstein HM, Hodges I、 et al:   Measurement of alpha l antitrypsin in seruln,   by immunodiffusion and by enzymatic assay.   Clin Chern 20:396−399, 1974 11)阿部皓一,勝井五一郎:血清トコフェロールの蛍   光定量.栄養と食糧 28:277−280,1975 12)藤森 勲,小沢享史,佐藤和文ほか:尿沈査カラ∼   アトラス.p26,近代出版,東京(1991) 13)1.owry OH, Rosebrough NJ, Farr AI、 et al:   Protein measurement with the Folin phenoI   reagent. J Biol Chem 193:265−275,1951 14)平井秀松,坂本幸也編:Glutathione in Medicne.   pp84−92,診断と治療社,東京(1972) ・15)Chen SS, Kou AY: High・perfonnance liquid   chromatography of methylated phspholipids. J   Chromatogr 232二237−249,1982 16)香川 順:サイン加圧波(オシレーシ・ン法)に   よる全呼吸気抵抗の原理とその医学研究における   応用.日衛誌 21:424−436,1967 17)苦瓜洋子,尾島 博,中館俊夫ほか:高濃度酸素   48時間曝露によるモルモットの気流抵抗および   気道過敏性への影響.東女医大誌 62:605−608,   1992 18)二木悦雄,島崎弘幸編:活性酸素.p184,医歯薬   出版,東京(1987) 19)Nish鑑i K, Jamieson D, Oshino D et al:   Oxygen toxicity in七he uperfused rat hver and   lung under hyperbaric conditions, Biochem J   160 :343−355, 1976 20)菊川清見:過酸化脂質測定の最:近の進歩,ファル   マシア 25:1246−1252,1989 21)二木悦雄,島崎弘幸編:活性酸素.p69,医歯薬出   版,東京(1987) 22)東胤昭:グルタチオソの分離定量法.蛋核酵   33:1370−1381, 1988 23)Beehler CJ, Simchuk M上, Toth KM et al:   Blood sulfhydryl level increases during hypeト   oxia:Amarker of oxidant lung injury. J Appl   Physiol 67:1070−1075, 1989 24)Konradova V, Janota J, Sulova J et a1:   Effects of 90%oxygen exposure on the ultra・   structure of the tracheal epithelium in rabbits.   Respiration 54:24−34,1988 25)田代典夫:気道の粘液線毛クリアランスにおける   高酸素及び低酸素の影響.北海道医誌 63(4):   597−606, 1988

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26) Szarek JL: In vivo exposure to hyperoxia increases airway responsiveness in rats. Am Rev Respir Dis 140I942-947, 1989

27) Katsumata U, Miura M, Ichinose M et al: Oxygen radicals produce airway constriction

and hyperresponsiveness in anesthetized cats. Am Rev Respir Dis 141 : 1158-1161, ・ 1990 28) BecketWS,WongND: Effectofnormobaric

hyperoxia on airways of normal subjects. J Appl Physiol 64I1683-1687, 1988

29) Fukushima M, King LS, Kang K et al : Lung

mechanics and airway reactivity in sheep

ing development of oxygen toxicity. J Appl Physiol 69:1779-1785, 1990

30) NlilliEvaa3 1 me$whtX. ppll-47, igaseeeietr, M

R (1991)

参照

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