80 氏名(生年月日) 本 籍
学位の種類
学位授与の番号 学位授与の日付 学位授与の要件学位論文題目
論文審査委員
(24) マツ モト ヒロシ本
博
博士(医学) 二二1370号平成5年5月21日
学位規則第4条第2項該当(博士の学位論文提出者)
糖尿病性ケトアシドーシス59例の病態生理学的検討および膵島免疫組織学的
検討 (主査)教授 大森 安恵 (副査)教授 小林 愼雄,小暮美津子論文 内 容 の 要 旨
目的 糖尿病性ケトアシドーシス(diabetic ketoacidosis: DKA)は糖尿病の急性合併症の中で最も重篤でその治 療法は生命予後を大きく左右するが,わが国ではまと まったDKAの病態に関する報告はみられない.発症 直後のインスリン依存型糖尿病(IDDM)における膵島 免疫組織学的検討をなし得た例と併せて,DKA症例 の病態を明らかにすることを目的とした. 対象および方法 対象は1965年から1989年までに入院したDKA 59 例,男性20例,女性39例の計66回で,病型はIDDM 41 例,インスリン非依存型糖尿病(NIDDM)18例である. 1965年から1974年までの15例15回はインスリン大量皮 下注法により,それ以後44例51回はインスリン少量静 脈内持続注入法により治療した.膵島の免疫組織学的 検討はDKAで死亡した2例の膵を用い,インスリン, グルカゴン,ソマトスタチンおよびHLA-DR抗原の 局在を酵素抗体法で検索した.HLA-DR染色は, mouse antihuman HLADRを用いた. 結果 1)DKAの発症は平均年齢38.6歳であり,DKAを 繰り返している例は特に若い女性に多かった.またDKAはIDDMのみではなく,59例中18例31%は
NIDDMであった.
2)誘因は急性上気道炎,インスリン自己中止の順 で,月別発生率は冬期に多い傾向がみられた. 3)DKA治療開始時の動脈血pHは6.75~7.30, HCO3は1.8~15.OmEq〃, HbAlclま7.3~17.2%で,血 中総ケトン体は370~35,215μmol〃であった. 4)インスリン大量皮下注法で24時間のインスリン 投与量は平均392.7Uで,インスリン少量静脈内持続 注入法では127。2Uであった.治療開始後3時問の平 均インスリン静脈内注入量は8.4U/hrであり,平均血 糖降下速度は98.6mg/dl/hrであった.5)DKAを来したIDDM 8例中5例においてis豆et
ceU antibodyが陽性であった. IDDM 6例のHLA抗 原ではIDDMの相対危険率の高いBw54, DR4, DRw9 のいずれかを認めた. 6)死亡した発症直後のIDDM 2症例での膵島組織 では,リンパ球浸潤は認められず膵B細胞は減少し, A,D細胞は膵島の周辺に散在性に観察された.また膵 島周囲の血管内皮細胞および膵島自体のHLA-DR抗 原は2例とも認められなかった. 考案 インスリン少量静脈内持続注入法では使用インスリ ン量が少なく,治療開始後3時間の平均血糖降下率は 比較的一定しており,血糖値をある程度予測できるこ とは治療上大きなメリットと考えられた.また若い女 性ではDKAを繰り返す症例がみられ,この年代に対 する対策が望まれる.膵島炎はIDDMの発症時における基本的な病理像
といわれているが,今回報告したIDDMの昏睡死亡2 例においては膵島炎は認められず,またIDDMの発症機構の一つとして検討した膵B細胞におけるMHC
一686一81 クラスII抗原の発現は認められなかった. 結論