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食道静脈瘤の内視鏡学的研究

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33 ( 東 女 医 大 誌 第 時 第 間 ) 頁 1285~1295 昭和59年 12 月 特別掲載

食道静脈癌の内視鏡学的研究

林 東 京 女 子 医 科 大 学 消 化 器 病 セ ン タ ー 外科(主任遠藤光夫教授〕

ォ 男

川 恒 ( 受 付 昭 和59年9月20日〉

An Endoscopic and Histological Study of Esophageal Varices Tsuneo HAYASHI

M.D.

Division of Surgery, Institute of Gastroenterology (Director: Prof. Mitsuo ENDO)

Tokyo Women's Medical College

The purpose of this study is to predict the risk factors of variceal bleeding and outline histological characteristics. Two hundred and eighty patients with esophageal varices treated at our Institute since 1979 were analyzed usingc1assification based on the endoscopic findings of esophageal varices proposed by Japanese Portal Hypertension Society. The prevalence of“Red Color Sign" (R-C sign) of the varices increased in parallel with increase in the involved area and variceal size. The highest correlation was noted between variceal bleeding and the R -C sign, particular1y subtypes designated as“Cherry Red Spot" (C.R.S.) and “Hematocystic Spot" (H.C.S.) Case presentation was made regarding a patient with C.R.S. who had variceal bleeding a few days after endoscopy and one with H.C.S. who vomited blood one year later.Stereoscopic observation of autopsy specimens indicates that the R-C sign represents a direct ramification from the submucosal varix. Esophagitis (erosion) over the surface of varices may be a risk factor predicting, though less often, subsequent bleeding. 緒 自 食道静脈癌患者の多くは基礎疾患に肝硬変症な どの重篤な疾患を合併していることが多く,ひと たび,破綻出血するとしばしば致命的となる.一 方,門脈圧允進症の病態からみると食道静脈癌は 門脈血の側副血行路のーっとしての役割を有し, 出血さえ無ければ,破壊しない方が臨床的には有 利とも云える.従って,前もって,出血の危険性 を正確に予知把握することは臨床上,極めて有用 なことである.そこで,出血のriskfactorが何か, その成り立ちを内視鏡的,病理学的に明らかにす る必要がある. 近年,内視鏡検査法の発達はめざましく,本症 に対してもルチーン検査のみならず,緊急出血時 の部位確認や硬化療法など内視鏡下の治療にも積 極的に応用されている. 食道静脈癌の内視鏡所見については1980年に門 脈圧克進症研究会において記載基準が統一設定さ れた(表1). この基準に従って種々の報告がなさ れているが,正確な出血部イ立を考慮したものは少 ないのが現状である.本研究では上記記載基準に 従って出血との関連ある所見を整理検討し,更に 出血との関連性を強く示唆されている red color sign (以後 R-Csignと略す〉について内視鏡所見 を裏付ける病理組織像について対比検討を加え た.また,内視鏡的に経過観察中に, R-C signよ り出血した例も数例経験しており, R-C signを中 心に出血と関連する factor解明を試みた. 対象及び方法 1.食道静脈癌内視鏡所見記載基準に基いた検討 1285ー

(2)

表1 食 道 静 脈 癌 内 視 鏡 所 見 記 載 基 準 判 定 因 子 記 号 車田 分 基 本 色 調 C cCwB.青白色色静静脈脈癌 CColor 発 赤 所 見 R-C sign RRCC。②〈(+記

α

おけ〈ミ〉4〉事町、)〉債発発ズiEy

t

亦〈瞬

(

亦4斗r必汎+十所e霊)〉d見,宝儀毘叩減所緋をoを(見全叫認量t)様め(沼くR所認るe

d見め静官w嘱(なC民祖癌hいle町

Z

静でmZry脈la

rr矯下keid記nosgのto〉〉o如t)く細分する CRed-Color sign)

2

tHeblreman塞iectがasあiaれがば高附度記 で 静 脈 癌 上 に 這 い 上 っ た も の 及 び 栓 する 形(Form)態 F FFF231・直連結線珠節的状状拡静静脈張脈.癌癌蛇行した静脈癌 Li:。記下上中事部部部項食食食道道道1胃ま/に静3で及に脈認限ぶ癒め局静がる脈しあ静た癌れ脈静ば癌脈L癌E 占 居 部 位n) L Lm CLocatio Ls ※附 として附記する 随伴食道炎 E びらん,白苔などの明らかな所見があればEと略して附記する 対象は食道静脈癌内視鏡記載基準案がほぼ出来 上った昭和54年以降に内視鏡検査が施行された食 道静脈癌症例中,内視鏡所見の記載が明確な280例 である. 吐下血歴を有する出血例は120例で,このうち輸 血を要する顕出血例は87例である.非出血例は160 例であるが,内視鏡所見より,後に予防的食道離 断術を施行した症例も含まれている. 基礎疾患は表2の如く,肝硬変214例,肝癌合併 肝硬変39例,慢性肝炎 9例,門脈形成不全 5例,そ の他13例で,全体の76.4%を肝硬変が占めている. 検索対象280例について内視鏡所見記載基準に 表2 原 疾 患 出 血 症 例 数

十 肝硬変症 214{lU 10017U 114例 肝癒合併肝硬変 39 12 27 門脈形成不全 5 5 IPH 3 2 1 PBC 4 3 l 慢性肝炎 9 9 Budd-Chiari's Synd 3 2 1 肝前性門脈閉塞 l 1 その他 2 2 E十 280 120 160 -1286 門 脈 圧 充 進 症 研 究 会 示された占居部位(L),形態(F),基本色調(C), 随伴性食道炎 (E),R.C signの各因子について出 血との関連性を検討した. 次いで,検索対象中,内視鏡的にR.Csignから の出血を確認した症例を提示し, R.C signと出血 との関連性を検討した. 尚,内視鏡検査に使用している器種はオリンパ ス製食道ファイパースコープ, EF-B3, B2, P 3等 で,光源はCLX-Fを使用している.撮影フィルム はKodak製colorfilmで,色変換フィノレターを使 用し,肉眼色調に出来るだけ近い再現性を得るよ うに努めている. 2.内視鏡所見と食道静脈癌血管模型による対比 食道静脈癌患者の剖検例で,偶然に死亡直前に 内視鏡検査を施行した例で,剖検時にTechnovit を静脈層内に注入し得た例について, Technovit 注入食道標本の内視鏡検査を行ない生前の内視鏡 像との対比を行なった.次いで,Technovitにて固 定した静脈癌を残して食道組織を融解除去し,食 道静脈癌血管模型を作製し内視鏡像との比較対比 を行なった. 成 績 1.食道静脈癒内視鏡所見と出血との関係 1) 占居部位 (L) と出血率(図1)

(3)

食道静脈癌の拡がり,即ち,占居部位ではLi11 例, Lm 90例, Ls 179例で,全体の 63.9%は食道 上部にまで及ぶ高度のもの(Ls)であった.また, 胃噴門静脈癌は242{7U,86.4%に合併しており,こ のうち47.5%に出血の既応がみられた. 食道静脈癌の占居部位と出血率をみると, Li 18.2%, Lm26.7%, Ls52.5%と食道静脈庸の程 度が高度になるにつれ,著明に出血率は増加した. 特に顕出血例87例では69例, 79.3%は Lsであっ fこ 2) 形態 (F) と出血率(図 2) 食道静脈癌の形態ではFl 51例, F2 151例, F3 78例で, Fzが最も多かった. 出血率はFl17.6%, Fz 39.1%, F3 66.7%で, Fが増大するにつれ,出血率も上昇し,結節状隆 起を示すF3で、は 3分の 2を占めた. L, 11例 Lm 90伊j L, 179例 L

242"

協物

(471%ZZZ (864%) total 280例 - 出 血 例 図1 2j居部位(L)と出血率 total 280例 F, 51O1J F

151伊l F

78伊l - 出 血 伊l 図 2 形態 (F) と出血率 1287 Cw 188例 C

92" 35 total 280例 - 出 血 例 S;, = 32.9% Cw+C

図3 基本色調 (C)と出血率 顕出血例87例では Fl 5例, 5.7%, F243例, 49.4%, F339例, 44.8%と全体の 94.3%は Fz以上 の高度の静脈癌であった. 3) 基本色調 (C) と出血率(図 3) 食道静脈癌の基本色調, CB, Cwの判定には主 観的要素が入り易く,施設問での頻度差が著しく あり,従来より問題になっている.検索例でのCB の占める率は32.9%で,我々は CBをやや厳しく 判定している. 出血率ではCB38.0%, CM 45.2%と両者聞に 殆んど差は認められなかった.

4

)

随伴性食道炎

(

E

)

と出血率 検索対象280例中,食道静脈癌上にび、らんや潰蕩 が合併した例は僅かに9例, 3.2%に過ぎない.し かし, 9例中 6例, 66.7%は出血例であり, う ち

5

例は輸血を要する顕出血例であった. 頻度は極めて低いものの静脈癌に合併した随伴 性食道炎,特にびらんは出血の危険を示す重要な 所見である(写真1入 5) red color signと出血率(表 3) 基本となる数条の太い食道静脈癌の上を被う粘 膜面の発赤所見をredcolor sign CR-C sign) と 定義されている. 表3の如く,出血率は全体で42.9%であるが, R.C sign C +)では54.5%,R-C sign C -)では 14.6%と有意差をもって, R -C signC

+

)例に出 血率が高かった. 前述の如く,非出血例中には後で予防的食道離 断。I1

r

を施行した症例が多く含まれているが,手術

(4)

表3 Red color signと出血率 R-C sign 十 言十 出血例(出血率〉 108 (54.5%) 12 04.6グ) 120 (42.9グ) 適応、は主に内視鏡所見,特にR-Csignを中心に決 めている.従って, これらを手術iHさずに放置して おけば, R-C sign C十〉例の出血率は更に高度と なるものと考えられる. 内視鏡所見記載基準ではR-Csignを更に,表 l の如く 4型に分類している.各因子別に出血率 をみると表4の如くである.即ち, red wale mar-king

C

R.W.M.)では

C

+

)

で45.2%,(十十)~(十什〉 49.5%と余り差がないものの, cherry red spot (C.R.

S

.

)

では(+)54.0%, (十十)~(廿十)では 72.4% と(十十〉以上に特に高度であった. hematocystic spot (H.C.SJ は陽性例38例中27 例, 71.1%に出血がみられ, C.R.S. (十十)~C十件〉 と同様に高い出血率であった. diffuse redness (D.R.) については典型例が少 ないが, 46.9%に出血歴がみられた. fibrin塞栓像は確認された症例が 14例と少ない が,全例が輸血を要する顕出血例であり,出血直 後の像として重要な所見である.fibrin塞栓像は 本基準では付記事項であるがR-Csignに関連し た所見で,再出血の危険も高く注意すべき所見で ある. 以上,食道静脈癌内視鏡所見記載基準に基づい て各因子別に出血率を検討した結果, L.

F

.

及び

R

表4 R-C signと出血率 R-C sign R.W.M. 731列 95グ C.R.S 50グ 29か H.C.S

+

38グ D.R 十 3211 Fibrin塞 栓 像 + 14グ 出 血 率 33 一7一3一=45.2% 47 一9一5一=49.5% 27 50二54.0% 21 29=72.4% 27 -一一=71..1% 38 15 一一一=46.9% 32 14 一一一=100.0% 14 C signに高い出血率であった . Eに関しては症例 は極めて少ないものの陽性例には高率の出血がみ られ危険因子と考えられる R-Csignの中では特 にC.R.S. (十十)~(十仲), H.C.S. (+), fibrin塞栓 像などに極めて高率の出血がみられた. そこで,次に, L.F.C.各国子と R-Csignとの関 係について検討した. 6) L.F.C.各因子と R-Csignとの関係(表 5) 輸 血 を 要 す る 大 量 出 血 例87例 と 出 血 歴 の 無 い 160例についてL.F.C.各因子と R-Csign につき 比較検討した R-Csignについては H.C.S.(十〉 及びC.R.S.(十十)~(+汁〉をそれぞれ 2 点とし,他 表5 R-C signとL.F.C.と出血率 (顕出血例町 非出血例160例 R-C sign Ls Lm Li F3 F

F

Cw CB 十件 73例 (6136. 0%) (42.9%) /59 6/14 (64.5%) (55.0%) 20/31 22/40

/2 (59.1%) (60.0%) 26/44 18/30 十十 53グ 21/40 2/12 1/1 (52.5%) (9.5%) (6183./149%) (29.0%) 9/31 1/2 (47.1%) (35.3%) 16/34 6/17 十 50グ 10/29 5/21 (34.5%) (23.8%) (4l5./7%) (28.1%) 06.7%) 12 9/32 1/6 (27.8%) (35.7%) 10/36 5/14 71グ 3/27 2/35

/9 (11.1%) (5.7%) (0)

/1 (8.8%) ( 3/34 25.6%) /36 ( 9.1%) ( 4/44 3.7%) 1/27 ( )出血率 -1288ー

(5)

の各因子は 1点として R-Csignの総和として表 わしてある. LとR-Csignとの関係をみると, LsではR-C sign(十件〉以上59例, (→十)40例, (十)29例, (-)

2

7

例となり,R-Csignの高度な例が多いが,Lmで は (十什)14例, (十十)12例, (十)21例, (一)35例 とR-Csignはむしろ軽度ないしは陰性例が多い. 従って, R-C signはLが高度になるにつれて明ら かに増加している. 次に,出血率を加味してみると, LsではR-C sign(+什〉以上では61.0%, (十十〉では52.5%と高 率であるのに対し, (十〉以下では34.5%, (-) では11.1%と著しく低率となり, (一〉での出血例 は食道びらんと噴門静脈癌からの出血例であっ た.一方, Lmであっても R-Csign(廿十〉以上と 高度であれば42.9%と可成高い出血率であり, R -C signの軽度のものに比して高率である.

F

とR司Csignとの関係もLと同様に,

F

が高度 になるにつれ, R-C signも増加しているが,出血 率ではR-Csign~こよく相関した.即ち,

F

3

で、はR C sign(朴〉以上, F2で、も〔朴十〉以上に高い出血 率がみられ,逆に,

F

3

で、も R-Csignが(十〉ある いは(一〉では低率であった. 従って, Ls,

F

3

であっても R-Csignが軽度であ れば,静脈癌出血の危険性は少ないと考えられ, L,

F

よりも R-Csignがより静脈癌出血の危険性 を示す重要な因子である. C~こ関しては CB と Cw とで, R-C signの合併 頻度に殆んど差がなく,共にR-Csign(十朴〉以上 に高い出血率であった. 以上,食道静脈癌はその進行に伴ない

F

L

は 増大し,更に, R-Csignも著明になってくる例が 多いが,出血のriskfactorとしてはR-Csignと esophagitisであった.特に,

c

.

R

.

S.(十十〉以上と

H

.

C.

S

.

(+)例に高率であった. 次に症例jを提示する. 症例1 47歳,男性,肝硬変. Ls,

F

2

'

Cwで中部食道に

H

.

C.

S

を認める(写 真2-a). 1年後,同部より出血,内視鏡検査にて 静脈癌上にfibrin塞栓像を認め, Fも明らかに増 強している(写真2-b). 37 症例

2

41歳,男性.肝癌合併肝硬変. Lm, F2, Cwで食道下端にC.R.S.を認める(写 真3-a).数日後,同部から出血時のもので,静脈 癌より噴出している(写真3-b)

2

.

内視鏡所見(特に R-Csign)と静脈癌血管 構造 実際に内視鏡検査時に観察される R-Csignfi 生体の静脈癌構造のどの部分に当るかについて検 討を加えた. 写真 4は食道静脈癌出血にて死亡した症例で, 剖検時に静脈癌内にTechnovitを注入固定し,静 脈癌以外の組織を融解して作製した血管構造模型 である. 太く拡張蛇行した2本の静脈癌 (F2) とその聞 の交通枝がみられ,主静脈癌上には細かい静脈の networkが形成さわしている. 更に,実体顕徴鏡下に拡大,観察すると(写真 5 ),主静脈癌より樹校状にやや太い第l分校が食 道内腔に向け,立ち上り,表層には棚:犬の細血管 網を形成している. 写 真6-aはTechnovit注入固定後,組織融解 直前に撮影した内視鏡像でで、,

R

R

-

C signが静脈癌上に認認、められる. 写 真6-七bは木例の死亡数日前の内視鏡像でで、あ る孔.主静脈癌上にR U にこ近

f

似以した内視鏡{像象と考えられる. しかし, 実体 顕微鏡写真(写真 5) と比較して,細かな棚状の 細血管網は観察出来ず,主静脈癌から直接分枝し た枝,あるいは第

2

分枝基始部付近までの枝を内 視鏡的にR-Csignとして呼んでいたと考えられ る 写真7-aは別の Technovit注入症例の組織融 解前の内視鏡像である.やや注入圧が高過ぎR-C signは誇張されているが,典型的なR.W.M.の像 と考えられる.写真7-bはほぼ近似する内視鏡像 である. 考 察 近年の内視鏡検査法の発達は目ざましく,安全 かっ手軽に施行できるようになった.食道静脈癌 に対しても通常の検査のみならず,緊急出血時の 出血部位判定や内視鏡下硬化療法など治療にも積 1289ー

(6)

極的に応用され,更に,予防的手術適応の決定に は内視鏡所見が重要な役割を演じてし、る. 食道静脈癌は大出血の危険をはらむ一方で門脈 圧克進症における側副血行路のーっとしての役割 を有している.従って,静脈癌出血の危険性の有 無を正確に知ることは臨床上,極めて重要である. こ の 観 点 か ら 食 道 静 脈 癌 内 視 鏡 所 見 の 分 類 が Dagradj2),Conn3),多田へ瀬底5) 遠藤6) 三戸7) 熊谷8)ら,数多くの研究者によりそれぞれ独自に 試みられてきた.しかし,内視鏡所見の表現方法 がそれぞれ異なるため,共通の場での討論に困難 があり,表現方法の統ーが望まれてきた.1980年 になり, 日本門脈圧冗進研究会において食道静脈 層内視鏡所見記載基準1};1):設定された.本基準は 基本色調 (C),発赤所見 (R-Csign),形態 (F), 点居部位 (L)の 4判定因子と附記所見として,随 伴性食道炎 (E)より構成されている. その後,本基準に基づいた検討,評価がなされ たが9)-15) 個々の因子では若干差がみられるもの の最も出血と関連ある因子として R-Csignが重 要という点で意見は一致している.今回の280例の 検討において,食道静脈癌が高度になれば

L

F

も増強し,かつ, R-C signの出現頻度及び程度 も著明となることが判った.しかし,

L

.

F.とR.C signとの関係を出血率の面からみると,Lsあるい は

F

3

で、あっても R-Csign(-)あるいは(ト〉程 度であれば出血率は低率となり, R-C sign(十十〉 以上を比して出血率に著しい差がみられた.一方, 占居部位や形態が中等度のLmや

F

z

で、あっても R-C signが(+汁〉以上になると同様に高い出血率 を示し,出血には他国子よりも R-Csignがより密 接に関与しており,諸家の結果とも一致している. 主静脈癌上の発赤所見が静脈癌出血と関連してい ることを示唆するものとして, 1966年, Dagradi2 ) はCherry-redvarices or varices on the top of the varicesとして記載し,その後,遠藤6)16) 三 戸7),島田ら17)も静脈癌表面の発赤所見に注目し報 告している.1976年,熊谷らめは重積所見として分 類記載し64%の出血率と報告している. R-C signのうちでは吉田18)はH.C.S.(+), R. W.M.(十), C.R.S.(寸十〉以上に出血の危険性大と 述べており,桜本11)は同様にC.R.S.(斗十〉以上, H. C.S.(+), D.R.Vこ高い出血頻度をみたとしてい る. 白験例でもc.R.S.(十十〉以上, H.C.S.(十〉 に特に出血頻度が高く, これらは出血の危険を示 す重要な所見である.実際に症例lや症例2の如 く,経過観察中に

H

.

C.

S

.

やc.R.

S

.

からの出血を 確認しており,出血の既応の無い症例でも,これ らの所見があれば予防的手術の適応と考えてい る.しかし, R-C signは個々の因子がそれぞれ独 立して存在することは少なく,多くは混在してお り総和として考えるべきである.友田13)はR.W. M.又はC.R.S.の(+)の数の和が4を越すと出血 率は80%と非常に高くなるとしており, 自験例で もC.R.S.(十十〉以上, あるいはH.C.S.(+)以外 でも R汎T.M.,C.R.S., D.Rなど各因子の(十〉の 総和が3以上であれば手術適応と考えている.

D

.

R.については出血率が高いとの報告11)もあ るが,せいぜいoozing程度とする報告15)もみられ る.鎌田ら19)20)らはD.Rの近接拡大観察にて細か な樹枝状血管がnetworkを形成しているという.

D

.

R.の存在部位が上皮下か上皮内か不明である が,熊谷21) 山本ら22)は上皮内の細静脈癌の存在を 重視しており,我々も食道離断有t-

J

にて得られた食 道標本での検索で上皮内に拡張した細血管の増生 を認めている叫.向坂1川主上皮内静脈癌の存在は 非常に高度の門脈圧允進症による微小循環異常を 示唆しており静脈癌の発達した状態で、あろうとし ている.しかし内視鏡的にD.R.からの出血を思 わす内視鏡像を経験しておらず, D.R.単独からの 大出血の危険性は少ないと考えられる. 食道静脈癌出血を裏付ける所見として fibrin塞 栓像があるが,出血時あるいは直後に積極的に内 視鏡検査を行なえばしばしばみられる所見であ り,出血部位の同定,再出血の危険性を示す所見 として注意を要する14) 特に食道静脈癌に伴って 胃十二指腸潰壌やびらんなどの合併も多く24)お 出血部位の鑑別に重要な所見である. 食道静脈癒の基本色調 (C)については本基準の 中で,最も意見の食い違う部分である.向坂叫が指 摘する如く,撮影されたフィルム上での色調の再 現性には問題があり,また,観察時の肉眼所見に 1290ー

(7)

林 論 文 付 図

I

写真l 食道静脈癒上のErosion (a) (b) 写真2 症例l a:F

varix上の血マメ (hematocysticspot) b:1年後,同部よりH.l凶l,Fも明らかにJi'1大している. (a) 写真3 症例2 a:vanx上 に2個 のcherryred spotをみる. b:数日後,出血時の内

t

見鏡像 -1291 (b)

(8)

写 真4 音JI検 例 で のTechnovit注入 に よ る 食 道 静 脈 癌の血管構造 (a) 写真5 Technovit注入例 の実験顕微鏡像 写真6 写 真5の内視鏡像 ) L U ( a: Technovit注入直後の内視鏡{象 b:死亡数日前に偶然撮影された時の内視鏡像 (a) t‘〆 LU、ノ、 , 、 写真7 a. Technovit注入後の内視鏡 像 b.a Iこ近似する内視鏡像 (R.W.M及 びC.R.S.) 1292

(9)

-も客観性を欠くきらいがある.我々は遠藤2印 7)の 報告の如く,高輝度光源を使用し,撮影カメラに 色変換フィルターを装着して,観察時の肉眼色調 に近い色に再現するよう努めているが,フィノレ ター無しには撮影フィルム上での色の判定は不可 能である.CBと Cwの占める比率は施設問で差が 著しく,我々はCBをやや厳しく判定しているが, 出血率の面からは両者聞に差がなく, L.F.同様に R-C signの有無により密接な相関がみられた. 随伴性食道炎(E)については全体に占める頻度 は非常に低いものの出血の危険ある所見と考えて いる.白験例では9例中 6例に大量出血がみら れており,福田ら9)もびらんを伴った食道静脈癌 6例中, 5例に静脈癌破綻をきたしたとしている. ButlerZ8)29)は食道静脈癌は内部(傷つき易いもの〉 と外部(傷つき難し、もの〉に分けられ,上皮下及 び粘膜下静脈癌からなる内部食道静脈癌は壁が弄 薄となり,食餌の通過や胃液の逆流により粘膜が 損傷され出血し易くなると述べている.福田ら制 も肝硬変患者のL.E.

S

.

測定により胃食道逆流現 象が起り易くなり,逆流性食道炎が静脈癌出血の きっかけになっていると報告しており,熊谷ら8) も重積所見のある凹度食道静脈癌と共に逆流性食 道炎を静脈癌出血の原因としている. 次に,実際に内視鏡的にR-Csignとして観察さ れるものは食道静脈癌血管構造のどの部分に当る か,剖検例で検討した.R-C signの病理組織像に ついて最近では種々の工夫がなされ,内視鏡像と の対比が試みられている.しかし,生前の内視鏡 所見と剖検食道での部位的同定は剖検食道の短縮 などもあり,なかなか困難で,向坂15)の指摘する如 く,剖検時に静脈癌の存在すら不明のこともある. 向坂1へ 植 木31)らは剖検例で静脈癌内にゼラチン 添加バリウムを注入し, 自然の状態に近づけ,顕 微鏡下,あるいは実体顕微鏡下に観察,生前の内 視鏡像と対比している.我々はTechnovitを静脈 癌内に注入し,静脈癌標本を作り,まず内視鏡下 に観察,撮影し,死亡前後の内視鏡像の比較対比 を行なった.更に,周囲組織を融解除去し静脈癌 血管標本を作製し,実体顕徴鏡下に観察し,内視 鏡像と対比検討した.Technovitは鋳型作製に用 41 いられている樹脂で,静脈癌は細部まで檀色に染 め出され, 自然、に近い状態での観察が可能となっ た.部位的一致は不可能であるが,内視鏡でみる R-C signと粘膜下層にある主静脈癌を中心とす る血管構造の立体的観察対比が容易となった.粘 膜下層にある主静脈癌から上皮側に第1分枝が立 ち上り,更に,第2分枝を出し,棚状の細血管網 を形成している.主静脈癌聞には交通枝が密にみ られ,これらの一部はteleangiectasiaに相当する ものと思われる.Technovit固定標本の内視鏡像 では主静脈癌上に,所々,樹枝状あるいはミミズ 張れ様の重積せる発赤所見をみ,生前のものに比 べるとやや誇張されてはいるが,近似する内視鏡 像を呈している.従って,内視鏡的に観察される R-C signの大部分は主静脈癌より立ち上った第 1分校附近と思われる.高藤間及び小川33)は食道 静脈癌の病理組織学的検討から破綻した静脈癌は 粘膜下層のものより粘膜固有層の細い静脈癌が多 かったとしており,向坂1町工

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2,

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3

の静脈癌では 粘膜下層の静脈癌より多数の分校が粘膜筋板及び 粘膜固有層, ことに上皮下に分枝し,二重,三重 積をなし,一塊の癌として

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3

の静脈癌として 観察されると報告している.Technovit標本では 主静脈癌より多数の分校が立ち上っているが,実 際,生前の内視鏡像ではそれ程R-Csignは観察さ れてはいない.この理由は別府10)鎌田川,向坂15) 植木31)の報告の如く,上皮の弄薄化が伴って始め て, R-C signとして観察されるものと考えられ る.R.W.M.とC.R.S.との差はTechnovit標本や 内視鏡像から,友田13)や向坂15)の指摘する如く,固 有層に重積した静脈癌のうち連続性に観察される ものはR.W.M.,局部的にみられるものはC.R.S. とするのが妥当と思われる.H.C.S.の成因に関し, 鎌田20) 山本ら22)は静脈癌壁の薄くなった部位が 局所的に異常に拡張し,表層に突出したためとし, 向坂15)はc.R.S.,R.W.M., D.R.とは異なった血管 構造を有する cysticな血管もしくは血腫であろ うとしている.経過観察中に破綻出血した症例l をみると, fibrin塞栓像として明らかに1本の細 血管の突出を認め, cysticになった血管と考えら れ,突出が急なことより被覆上皮の弄薄化も著明

(10)

-1293-と 思 わ れ る . 植 木31)も ゼ ラ チ ン 添 加 バ リ ウ ム で の 検 討 か ら

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.

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.

は 分 枝 が 固 有 層 で の う 腫 状 に 拡 張 し た も の と 報 告 し て い る . D.R.に 関 し て 鎌 田19)20)は 近 接 拡 大 観 察 で 網 目 状 を 呈 し て い る と 述 べ , 植 木31)も上皮下静脈が軽 度 に 拡 張 し , 網 目 状 に 増 生 し た も の と し て い る . Technovit標 本 で も 棚 状 を 呈 し た 細 血 管 網 を 呈 し て い た が , 生 前 の 内 視 鏡 像 で は

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R.は観察され て お ら ず , 細 血 管 の 拡 張 う っ 滞 と 共 に 上 皮 の 弄 薄 化 が 必 要 条 件 と 考 え ら れ る . 結 語 食 道 静 脈 癌 症

1

7'U280例 に つ い て 門 脈 圧 允 進 症 研 究 会 の 内 視 鏡 所 見 記 載 基 準 に 基 づ き , 出 血 と の 関 連 性 に つ い て 検 討 し た . 更 に , 剖 検 例 で , 偶 然 死 亡 直 前 に 内 視 鏡 検 査 が 行 な わ れ て い た 例 にTe. chnovitを 静 脈 癌 内 に 注 入 し 血 管 標 本 を 作 製 し , R-C signに つ き 内 視 鏡 像 と 比 較 対 比 し , 以 下 の 結 論を得た. 1 ) 食 道 静 脈 癌 は 占 居 部 位 及 び 形 態 の 増 大 と 共 にR-Csignも著明となった. 2) し か し , 出 血 の risk factorと し て は R-C signが最も重要で, とくにC.R.S.(十十〉以上, H. C.S. (十), R-C sign各 因 子 の ( 十 〉 の 総 和 が 3以 上 に 高 い 出 血 率 で あ っ た . 3) 随 伴 性 食 道 炎 (erosion)も頻度は少ないもの の66.7%に 顕 出 血 が み ら れ た . 4) 内 視 鏡 で み る R-Csign,とくに C.R.S.やR. W.Mは 粘 膜 下 の 静 脈 癌 よ り 直 接 分 枝 し た 血 管 で , 上 皮 の 罪 薄 化 の 伴 っ た も の と 思 わ れ る . 5) H.C.S. は 粘 膜 下 静 脈 癌 の 分 枝 の う ち cystic な著明に拡張した細静脈で,上皮の非薄化の強し、 ものと思われる. 稿を終えるにあたり,直接御指導,御校閲を賜った 遠藤光夫教授に深甚なる謝意、を棒げます.また,症例 の提供,御教示を賜わった高崎健助教授に心から深謝 すると共に,消化器病センター食道研究班及び肝門脈 研究班の諸兄姉に感謝致します. 本論文の要旨は第18回日本消化器内視鏡学会〔昭和 55年10月〉及び第25回日本消化器内視鏡学会総会パネ ルディスカッション(昭和58年5月〉において発表し た 1294ー 文 献 1)日本門脈圧元進症研究会:食道静脈癌内視鏡所見 記載基準. 日消外会誌、 13 338~ 340 (1980) 2)Dagradi, A_E., et al.: Bleeding esophagogas tric varices. Arch Surg 92944~947 (1966) 3)Conn

H.O.

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表 1 食 道 静 脈 癌 内 視 鏡 所 見 記 載 基 準 判 定 因 子 記 号 車田 分 基 本 色 調 C  c C w B  .青白色色静静脈脈癌 癒 C C o l o r  発 赤 所 見 R ‑ C  s i g n  R R C C。 ② 〈 ( + 記 αおけ〈ミ 〉4 〉 事 町 、 ) 〉 債 発発 ズ i E y亦 t〈瞬 (亦4斗r必 汎 +十所 e霊)〉 d 見 , 宝 儀 毘 叩 減 所 を緋 oを ( 見全 叫認 量 t ) 様 め ( 沼 く R 所 認 る e ゐd見
表 3 Red c o l o r  s i g n と出血率 R ‑ C  s i g n  十 言 十 出血例(出血率〉108  (54.5%) 12  04.6グ)120  (42.9グ) 適応、は主に内視鏡所見,特に R‑Cs i g n を中心に決 めている.従って, これらを手術 i H さずに放置して おけば, R‑C s i g n  C 十〉例の出血率は更に高度と なるものと考えられる

参照

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