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仙尾部奇形腫の1例

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Academic year: 2021

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ACase of Sacrococcygeal Teratoma

 Shizuka NAKAJIMA and Aldra田DANO

Department of Dermatology(Director:Prof. Akira HIDANO)      Tokyo Women’s Medical College   Sacrococcygeal teratoma is a congenital tumor, with an incidence of only one in 35,000 to 40,000 1ive births.   Teratomas are embryonal neoplasms that contain tissue from all three germ layers(ectoderm, endoderm and mesoderm)and are derived from totipotential cells. We report a one month old female case of sacrococcyeal teratoma. The tumor. was predominantly retrococcygeal and one portion contained a precoccygeal component(Altman type II). There were no bowel, bladder or lower limb symptoms. Alpha・fetoprotein was 700 ng/mL Polydactyly of the left toe Was also present. The tumor was completely resected w亘en she was 64 days old.   Histopathological findings revealed a benign mature teratoma.   The postoperative course was uncomplicated and the patient was discharged 42 days later.          はじめに  仙尾部奇形腫は小児に特有な腫瘍で,奇形腫の

中では頻度が高いが,その発生頻度は出生数

35,000∼40,000に対して1例の割合とされてお り1)2),かなり稀な疾患である.今回われわれは仙 尾部奇形腫の1手術例を経験したので報告する.          症  例  症例:1ヵ月女児.  主訴:仙尾部の腫瘤.  家族歴:特記すべきことなし.第2子.  現病歴:母親は34歳で妊娠経過に異常なく,三 胎38週3日,正常分娩にて出産.患児は夷弓時体 重3,100g, Apgar score 10点であったが,生直後 より仙尾部に腫瘤が認められたため,当科受診と なった.  現症:哺乳力良好,便通も正常.仙尾部のほぼ 中央に35×45mmの弾性軟の皮下腫瘤あり.腫瘤 のやや右寄りに小指頭大の硬い皮下腫瘤を2個含 んでいた.腫瘤全体の硬度は不均一で一部に波動 を触れ,腫瘤上方部の皮膚は暗紅紫色調を呈して いた.その部位に一致して有毛であった.左5趾 は2白あり多油症を呈していた(図1).  入院時現症:体重4,780g,心電図,脳波ともに 異常を認めず.血算,生化学検査は正常.LDH 383 1U/1,α一fetoprotein(AFP)700ng/ml.肛門内指 診では狭窄や腫瘤との間に癒着は認めない.腹部 単純X−Pにて腫瘤内に大豆大の石灰化像2個が あった.』静脈性腎孟造影法では腎臓の位置や尿管 の走向に異常はない.注腸造影にて直腸の狭窄は ないが圧排像が認められ,腫瘤は骨盤腔内外に存

在することが確認された.エコーでの陰影は

cysticな楕円形で,尾骨部では中隔様形成があり, 腫瘤内にエコー反射を認め,異物の存在を示す所 見があり,尾骨に接して腫瘤があるが骨との関係

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左:背部,     図1 嬰児外観 中:患部,右:左5趾は2本あり多汗症を呈す, ははっきりしなかった.以上の所見より仙尾部奇 形腫と診断し,第二外科赤羽根講師の助力を得て, 生後64日目に手術を行った.  手術所見:腹臥位で骨盤高位(マホメット体位) とし,膀胱内に留置カテーテルを挿入し,直腸内 にはワゼリソガーゼを挿入した.尾骨部を頂点に 逆V字型に皮膚を切開し,メスと剥離用ハサミで 止血しつつ腫瘍周辺を剥離した.この時右下部で cystを破り水様液が出た.側方は容易に指で剥離 できた.尾骨が見えるようになったら,上方ノ側 方の剥離を十分に行ったところで,今度は腫瘤下 端にV字型に皮膚切開を加え,大轡筋,中智筋は できるだけ温存するように,腫瘤の側方底部は指 で鈍的に剥離した.剥離する際に一部小嚢胞が破 れ,中から淡黄色水様物が流出した.polycysticな ため一部が破れても他部には内容物が残存してい た.次に腫瘤前方上部(ここにX−Pでみた骨離塊 がある)と尾骨が癒着していたため,一塊として 仙骨からメスで切除した.ここまでで腎部(骨盤 外)腫瘤を全摘出した.次に仙骨前面をみると, 骨盤腔内に腫瘤の進展があるため,仙骨を筋鈎に てできるだけ持ち上げて視野を広くし,仙骨前面 から剥離を試みたが,cystの壁がもろく破け水様 内容物がドッと流出した.吸引を十分に行いなが ら,cystの壁をひっぱりはがすような要領ででき るだけ除去した.直腸後面からは指で容易に剥離 できた.以上で骨盤腔内腫瘤も全摘した.腫瘤は promontriumの位置まで進展していたが,中等大 以上の血管の流入はなかった.大,中轡筋の欠損 部はできるだけ00−catgutで縫い合おせ,ペンロー ズ3本を入れ,絹糸で皮膚縫合し手術を終了した. 出血量145ml,輸血200mlであった.  病理組織学的所見:三胚葉の組織(2個の表皮 嚢腫,骨,筋,神経,脂肪織,腸管上皮など)(図 2)から成っており,未熟な組織像は認められず, 成熟型と診断した.  術後経過:全身状態は良好で神経学的異常や排 便,排尿異常はなく,AFP 146ng/mlと生理的範 囲になり,術後42日目に退院した.          考  案  奇形腫は小児腫瘍の3.9∼9%を占める腫瘍で, 生殖腺,仙尾部,後腹膜,前縦隔,頭頸部などの 正中線に沿う部位に好発する3).Billmireら4)の報 告によれぽ142例の小児奇形腫中,仙尾部は84例 (59%),卵巣・精巣はそれぞれ15例(11%),縦隔 は14例(10%),後腹膜は7例(5%),その他が 7例(5%)であり,欧米では仙尾部の頻度が圧 倒的に高い.それに対し,本邦では,中川原ら5)の 統計によると,480田中,睾丸奇形腫の頻度が最も 多く,全体の29.6%を占め,次いで,卵巣(25.8%),

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       図2 病理組織像 上 骨組織,中 2コの表皮嚢腫と脂肪組織,下 腺 上皮からなるCyst様構造の部分. 仙尾部(20.6%),後腹膜(138%),縦隔(3.8%), 頭頸部(1.9%)の順に多くなっている.

 性別頻度は,男女比1 3ないし1 4と圧倒

的に女児に多くみられる1)5)6),  仙尾部奇形腫は,totlpotential cellを起源とす る三胚葉性の組織構造からなる混合腫瘍である が,多くは外胚葉,中胚葉成分が主体をなし,中 にはほとんどが一胚葉成分から構成されているも 図3 Altmanの分類12) のもある3).発生原因には諸説があるが,胎生期に おける結節性生殖腺原器(reproductive gland anlage)とHensen結節(primitlve knot)の遺残 に由来するとの説b3)7)が有力である.仙尾部にお けるtotipotential cellから分化したgerm cellか らなる結節性生殖腺原基の形成は,男児では 31∼34日を要するのに対し,女児では39∼50日と 遅れ,卵巣の分化過程が睾丸のそれに比して遅い という発生学的事実8>から,生殖腺原基の残遺に 起因する仙尾部奇形腫は,男児に比して女児に多 くみられるのではないかと推測されている.一方, 体節形成にあずかるHensen結節は,もともと内 胚葉起源で,胎生期の2∼3週に外胚葉の中に線 状に肥厚し,しだいに外胚葉と内胚葉の間に増殖 する.その末端のprimitive streakはしだいに尾 側に移動し,尾仙部の前面に位置するようにな る8).したがって,この残遺が本症の発生に原因し ていると推測されている.  また本腫瘍に他の合併奇形を伴っている例が多

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 AFP ng/ml lOOO,000 1OO,000 10,000 1,000 100 20 ユ0 ユ NORMAL RANGE    30 60 9G 120 150180210240270300330 1 2 3 4  5 6 7 8  9 1011 12131415        AGE IN DAYS       AGE IN YEARS 図4 新生児,乳児期のAFP値の正常範囲(Tsuchida14)による)と本症例のAFP値 く9),Lahdenneら10)によると45例中35例に仙骨奇 形やspina bi丘daなどの脊椎奇形を認めたとい う.その他尿道閉鎖11),重複子宮5),水頭症5),肛 門直腸2)の奇形などが報告されており,本症例も 多趾症を合併していた.  町回分類にはAltmanら12)の提唱する1∼IV型 がある.すなわち1型:骨盤外腫瘍,II型:若干 の骨盤内進展を伴う骨盤外腫瘍,III型:腹腔内進 展が強度で骨盤外にも腫瘍のみられるもの,IV 型:前仙骨型腫瘍,である.このうち1,II型が 圧倒的に多く約80%を占める.本症例は腫瘤が骨 盤腔内外の双方にあり,II型に属している(図3).  病理学的には成熟型,未熟型,悪性の3つに大 別され1)12)13),それぞれの割合は66,14,20%とい

われている.悪性頻度はAltmanの1型では8%

であるが,III, IV型ではそれぞれ35%をこえて認 められる.悪性の主たるものはyolk sac tu皿orで あるが,その発生には年齢依存症があるときれて いる.すなわちGrosfeldら6)によると出生時に発 見された症例のうち悪性はわずか2.4%であるの に対し,生後1ヵ月以降には71%を占めるという. 同様の傾向は他の多くの報告にもみられる.Don− nellanら13)は本症103例の検討から,全症例中の約 1/3が悪性であり,卑下時に発見された79例では悪 性例が8例(10.1%)であったのに対し,2ヵ月 以後に発見された24例では22例(91.7%)が悪性 であったことから,生後2ヵ月を悪性転化の時期 としている.これらは,生後極めて早期に奇形腫 が悪性化することを示唆しており,従って新生児 期に根治手術をすべきであるという説の根拠と なっている.本症が出生早期に診断される頻度は 65∼80%とかなり高いが6)7),その多くは1型で仙 尾部の腫瘤として発見される.しかしながらIII, IV型では外見からだけでは診断を下すことは困難 で,排尿,排便障害,落丁,下肢の浮腫,神経障 害などの臨床症状から発見されることが多く12), このような症例では悪性例が多い.本腫瘍の良性 か悪性かの生物学的運命が,白下時すでに決定さ れているものなのか,あるいは生後日時の経過と ともに元来良性であったものが悪性化するものな のかは明らかではない.良性仙尾部奇形腫には終 始良性の経過をとるものと,腫瘍のあるelement がある時期から突然悪性発育し遠隔転移する2種 類があることが,Grossら7)により指摘されている が,後者の中には手術操作や不完全な切除などに より遺残した腫瘍組織が悪性化するものがあると されている.  従って本症の治療としては,外科的に摘除する

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 また,4−fetoprotein(AFP)値が本症の臨床経 過とよく相関するといわれており14),特に悪性の 場合には高頻度で陽性となることが知られてい る..また良性腫瘍からはAFPが産生されないこ とより,良悪の診断の上では非常に利用価値が高 いが,本症の多くが診断される新生児期には,肝 臓や消化管からもAFPが産生され生理的に高値 をとるため15),術後の経時的な経過観察が重要で ある.Tsuchidaら14)によると正常な新生児の出生 直後のAFPは100,000ng/ml以上の高値を示す が,日時の経過とともに急減し,生後1年で10ng/ m1以下になるとされている(図4).本症例は術前 (生後60日目)は700ng/m1であったが,術後20日 (生後86日目で178ng/m1,術後30日(生後96日)で 146ng/m1と漸減しており,腫瘍摘出の結果とい うよりは生理的減少と考えた.          結  語  稀な新生児仙尾部奇形腫の1手術例を,若干の 文献的考察を加え報告した.  本稿は福山幸夫主任教授の御定年を記念し,これを 棒げるものである.  なお,本症例は,1976年6月,第540回日本皮膚科学 会東京地方会で発表した.       文  献  1)Dilland 8N, Mayer JH, McAhster WH et al:   Sacrococcygeal teratoma in children. J pediatr   Surg 5:53−59, 1970  2)Havranek P, Hedlund H, Rubenson A et al:  Analysis of 85 patients. Surgery 80:297−305,

 1976

7)Gross RE, Clatworthy HW, Meeker IA:  Sacrococcygeal teratomas in infants and chil−  dren;areport of 40 cases。 Surg Gynecol Obstet  92:341−350, 1951 8)岡本直正:臨床人体発生学一先天異常理解の為に  一.pp297−300,南江堂,東京(1983) 9)E聾・Qarmalawi MA, Saddik M, Hadi FE et al:  Diagnosis and maロagement of fetal sacrococ−  cygeal teratoma. Int J Gynecol Obstet 31:  275−281, 1990 10)Lahdenne P, Heikinheimo M, Jaaskelainen J・  et al:Vertebral abnormalities associated  with congenital sacrococcygeal teratomas. J  Pediatr Orthopathol 11:603−607, 1991 11)吉野 薫,谷風三郎,上岡克彦ほか:仙尾部に合   併した先天性女児尿道閉鎖の1例.日小児外会誌  26:1306−1309, 1990 12)Altman PP, Randolph IG, Lilly JR:Sa・  crococcygeal teratoma量n children;American  Academy of Pediatrics Surgical Section   Survey・1973. J Pediatr Surg 9:389−398, 1974 13)Donenan WA, Swenson O:Benign and  malignant sacrococcygeal teratomas. Surgery   74:834−846, 1968 14)Tsuchida Y, Hasegawa H:The diagnostic  value of alpha−fetoprotein in infants and chil・  dren with teratoma;aquestionnaire survey in   Japan. J Pediatr Surg 18:152−155, 1983 15)Johnston PW:The diagnostic value of   alpha−fetoprotein in an infant with sacrococ・   cygeal teratoma. J Pediatr Surg 23:862−863,   1988 一E371一

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