口腔内の基本味および 温度の刺激は顔の皮膚血流に特異的な応答をもたらす [ PDF
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(2) ⅳ)統計解析:. すべてのデータは平均値±標準誤差. で示した.主観的な嗜好度に対して,繰り返しのある 一元配置分散分析を行なった.主効果が得られた場合, Bonferroni の検定を用いて対照との比較を行なった. 顔の皮膚血流は安静時に対する相対値の差で表し,刺 激前と刺激後の平均値を paired t-test にて検定した. 主観的な嗜好度と顔の各部位の皮膚血流の関係性は, Pearson の相関係数を用いて分析を行った.有意水準は 全て危険率 5%未満とした.. 3)結果: 主観的な嗜好度は,中濃度および高濃度の甘味投与 で増加し,高濃度の塩味,および全ての濃度の苦味投 与で低下した(Fig 2) . 甘味とうま味の刺激では,瞼の皮膚血流と主観的な 嗜好度との間に有意な正の相関関係を示した.苦味の 刺激では,鼻の皮膚血流と主観的な嗜好度との間に有 意な正の相関関係を示した(Fig 3).酸味と塩味の刺. Figure 3. 甘味,うま味および苦味刺激に対する顔の皮膚血流イメ ージ(左)と,各味覚刺激に対する嗜好度と血流応答との関係(右). ージ(左)と,各味覚刺激に対する嗜好度と血流応答との関係(右).. 激では,皮膚血流と嗜好度との間に有意な相関関係を 甘味(a)およびうま味の投与に伴い(b),瞼の皮膚血流が増. 示さなかったが,頬の皮膚血流の増加を示した. 加し,苦味(c)の投与に伴い,鼻の皮膚血流が低下した.瞼の 皮膚血流(甘味,うま味)と鼻の皮膚血流(苦味)は,主観的嗜. 4)考察: 好度との間に有意な相関関係を示した(右) .. 本実験では,基本味の刺激に対して顔の皮膚血流が 特異的に変化するのか否かを検証した.甘味,うま味. 5)備考:. の刺激では,嗜好度が高まるにつれて,瞼の皮膚血流. 本研究の内容は,PLoS ONE 誌に発表済みである.. が増加し,苦味の刺激では,嗜好度が低下するにつれ. Hideaki Kashima and Naoyuki Hayashi (2011) Basic taste. て,鼻の皮膚血流が低下した.酸味と塩味の刺激では,. stimuli elicit unique responses in facial skin blood flow.. 嗜好度とは関係なく,頬の皮膚血流を増加させること. PLoS ONE 6: e28236.. が示された. 本実験は,顔の皮膚血流が味覚や味覚に伴う嗜好度. 本実験は,やずや食と健康研究助成の協力にて行われ ました.ここに記し,感謝申し上げます.. に伴って特異的に変化することを示した. 3.温度の刺激は顔の皮膚血流に特異的な 3.温度の刺激は顔の皮膚血流に特異的な 応答をもたらす(実験②) 応答をもたらす(実験②). 1)背景: 温 度 は 味 覚 や 嗜 好 に 影 響 す る ( 5 ). 温 度 感 覚 は Transient Receptor Potential (TRP)に属する特異的な 受容体の活性化によりもたらされる(6).一方,カプサ イシンやメントールもまた,特異的な TRP 受容体を活性 化すると報告されている(6).例えば,43℃以上の温度 とカプサイシンの刺激は同じ受容体の TRPV1 受容体を 活性化し,28℃以下の温度とメントールの刺激は TRPM8 Figure 2 各味覚刺激の主観的嗜好尺度値(平均±標準誤差). 各味覚刺激の主観的嗜好尺度値(平均±標準誤差).. 受容体を活性化する.したがって,同じ受容体を刺激す. -5(最も不快) ,0(変化なし) ,+5(最も快) .l:低濃度, m:. る温度および刺激物質を口腔内に投与した場合,共通の. 中濃度, h:高濃度.*p<0.05 vs 水.. 顔の皮膚血流応答を引き起こす可能性がある..
(3) を用いて,刺激前との比較を行なった.主観的な嗜好度. 2)目的: 温度,カプサイシンおよびメントールの刺激に対し. と顔の各部位の皮膚血流の関係性は,Pearson の相関係. て顔の皮膚血流応答が特異的に変化するのか否かを検. 数を用いて分析を行った.有意水準は全て危険率 5%未. 証する.. 満とした.. 3)方法:. 4)結果:. ⅰ)被験者: 健常成人 17 名(男性 10 名,女性 7 名,. 主観的な温度感覚は,対照に比べ,43℃および 60℃. 年齢 26±5 歳)とした.実験①と同様の手順で実験を. の水で有意に増加した.主観的な快不快感覚は,60℃の. 行った.. 水および高濃度のカプサイシン溶液で有意に低下した. 主観的な痛み感覚は,60℃の水および高濃度のカプサイ 被験者には,顔の位置を安定させる. シン溶液で有意に増加した.主観的な温度感覚は,対照. ために顎と額部を台に固定して,20 分間安静を保たせ. に比べ 5℃の水で有意に低下した.主観的な快不快感覚. た後,5 種類の異なる温度溶液,2 種類の濃度のカプサ. は,高濃度のメントール溶液で有意に低下した.主観的. サイシンおよびメントールの溶液をストローから口腔. な痛み感覚は,高濃度のメントール溶液で有意に増加し. 内へ 1ml 投与した.温度の刺激として,5℃,20℃,30℃,. た.. ⅱ)実験手順:. 43℃および 60℃を,カプサイシンの刺激として,5μmol. 30℃,43℃および 60℃の水を投与した時,瞼の皮膚. (低濃度)および 150μmol(高濃度)を,メントール. 血流は主観的な温度感覚(Fig 4a)および快不快感覚. の刺激として,0.4 mmol(低濃度)および 20 mmol(高. (Fig 4b)との間に有意な相関関係を示した.60℃の水で. 濃度)を用いた.対照は 30℃の水とした.口腔内を刺. は,鼻の皮膚血流と主観的な快不快感覚との間に有意な. 激して 20 秒後,口に含んだ溶液を吐き出させ,刺激前. 正の相関関係を示した(Fig 4c).5℃,20℃および 30℃. の状態に戻るまで,口の中を 30℃の水で濯がせた.そ. の水では,鼻の皮膚血流と主観的な温度感覚との間に有. の後,温度,快不快,痛みの主観的感覚を,LMS スケ. 意な正の相関関係を示した(Fig 4d).高濃度のカプサイ. ール(labeled magnitude scales) を用いて測定した.. シンの刺激では,主観的な感覚とは関係なく,顔全体の. 主観的な温度感覚と快不快感覚は,-100mm(とても冷. 皮膚血流が増加した.高濃度のメントールの刺激では,. たい,とても不快),0(変化なし) ,+100mm(とても. 主観的な感覚とは関係なく,鼻の皮膚血流が低下した.. 熱い,とても快)の 200mm スケールにて測定し,主観 的な痛み感覚の変化は,0(変化なし)から+100mm(と ても痛い)の 100mm のスケールにて測定した.各試行 はランダムな順序で行われた.ただし,カプサイシン およびメントールは長時間口の中に辛味,爽快味およ び痛み感覚が残ることが予備実験により分かったため, 最後に投与した.各溶液の温度は 30℃に保った. ⅲ)測定項目:. 顔の皮膚血流を実験1と同様に測定. し,額,瞼,鼻,頬,上唇,下唇の皮膚血流を算出し た.一回の計測時間は 15 秒間とした.主観的な温度感 覚,快不快感覚,痛み感覚の変化は,口腔内の刺激終 了後,口を濯いでから記入させた. ⅳ)統計解析:. すべてのデータは平均値±標準誤差. で示した.主観的な温度感覚,快不快感覚および痛み 感覚に対して,繰り返しのある一元配置分散分析を行. Figure 4. 温度の刺激は,顔の皮膚血流と主観的感覚との間に有. なった.主効果が得られた場合,Dunnett の検定を用い 意な相関関係を示した. 意な相関関係を示した.. て対照との比較を行なった.顔の皮膚血流は安静時に 高温度の刺激に対する瞼の皮膚血流と主観的嗜好度(a)と主観. 対する相対値の差で表し,刺激前と刺激後 5 秒,10 秒 的温度感覚(b)との関連,60℃の刺激に対する鼻の皮膚血流と. および 15 秒の平均値を繰り返しのある一元配置分散分 主観的嗜好度との関連(c) ,および 低温度の刺激に対する鼻の. 析を行なった.主効果が得られた場合,Dunnett の検定 皮膚血流と主観的温度感覚との関連(d)を示した.全て p<0.05..
(4) シンの刺激では,主観的な感覚とは関係なく,顔全体の 皮膚血流が増加した.高濃度のメントールの刺激では,. 5)考察: 本実験では,口腔内への温度,カプサイシンおよび. 主観的な感覚とは関係なく,鼻の皮膚血流が低下した.. メントールの刺激に対して顔の皮膚血流が特異的に変. これらの結果から,温度,カプサイシンおよびメントー. 化するのか否か検証した.30℃,43℃および 60℃の水. ルの刺激に対して,顔の皮膚血流は特異的に変化するこ. を投与した時,瞼の皮膚血流は主観的な温度感覚およ. とが示唆された.. び快不快感覚の両者との間に有意な相関関係を示した.. 本研究は,口腔内の基本味および温度の刺激が顔の皮. 瞼の皮膚血流の増加が,嗜好度の低下,あるいは温度. 膚血流に特異的な応答をもたらすことを明らかにした.. 感覚の増加のどちらを反映しているのかは明らかでは. また,顔の皮膚血流が主観的な感覚に伴って変化したこ. ない.しかし,実験①では,瞼の皮膚血流の増加が嗜. とから,顔の皮膚血流分布と,血流の変化率を観察する. 好度の増加を反映したため,高温度の刺激に対する瞼. ことで,個人が感じた味覚を客観的かつ定量的に評価で. の皮膚血流の増加は,嗜好度の低下ではなく,温度感. きる可能性が示された.. 覚の増加に伴う応答であると考えられる.60℃の刺激 5.今後の研究 今後の研究課題 研究課題. では,嗜好度が低下するにつれて,鼻の皮膚血流が低 下した.この結果は,実験①の結果と同様の結果であ. 今後の課題は,視覚,嗅覚および複合味覚の刺激に. ることから,鼻の皮膚血流が,口腔内の味覚や温度刺. 対する顔の皮膚血流応答について検討することである.. 激に伴う嫌悪感を反映する可能性が高いと考えられる.. 食べ物のおいしさは,視覚や嗅覚情報にも影響され,実. 5℃,20℃および 30℃の水では,主観的な温度感覚が低. 際の食べ物の味には,基本味のような純粋な味のみを含. 下するにつれて,鼻の皮膚血流が低下した.鼻の皮膚. んだ食べ物が実在しないからである.. 血流の低下は,主観的な低温度感覚を反映する可能性 6.本研究の応用性 .本研究の応用性. が示唆された. 本実験は,温度,カプサイシンおよびメントールの. 顔の皮膚血流は身体から無意識に表れる応答である. 刺激に対して,顔の皮膚血流は特異的に変化すること. ことから,臨床や介護場面において,意思疎通の困難な. を明らかにした.. 者(例.重症筋萎縮硬化症患者)の味覚を客観的に判定 し,嗜好に合った食事を提供することができると考えら 4.まとめ. れる.. 本研究の目的は,口腔内への基本味,温度,カプサ イシンおよびメントールの刺激に対して,顔の皮膚血. 7.主要引用文献 主要引用文献. 流が特異的に変化するのか否か明らかにすることであ. 1) Ekman P, Friesen WV (1975) Unmasking the Face:. った.実験①では,基本味の刺激に対して顔の皮膚血. A Guide to Recogniz-ing Emotions from Facial. 流応答が特異的に変化するのか否かを検証した.甘味,. Clues. Englewood Cliffs, NJ: Prentice Hall.. うま味の刺激では,嗜好度が高まるにつれて,瞼の皮. 2) Darwin C (1899/2007) The Expression of the. 膚血流が上昇し,苦味の刺激では,嗜好度が低下する. Emotions in Man and Animals. BiblioBazaar, New. につれて,鼻の皮膚血流が低下した.これらの結果か. York.. ら,基本味の刺激に対する顔の皮膚血流は,味覚に伴. 3) Steiner JE (1987) What the neonate can tell us. う嗜好度および,味覚それ自体に関連して特異的に変. about umami. In: Umami: A Basic Taste (Kawamura. 化することが示唆された.. Y, & Kare MR, eds.), Marcel Dekker, pp. 97–123.. 実験②では,温度,カプサイシンおよびメントール. 4) Medina F et al. (2002) Parallels between. の刺激に対して顔の皮膚血流が特異的に変化するのか. cerebellum-and. 否かを検証した.30℃,43℃および 60℃の水を投与し. conditioning. Nature Rev. Neurosci. 3: 122–131.. た時,主観的な温度感覚が増加するにつれて瞼の皮膚. 5) Zellner DA et al. (1988) Effect of temperature. 血流が増加した.60℃の刺激では,主観的な嗜好度が. and expectations on liking for beverages.. 低下するにつれて,鼻の皮膚血流が低下した.5℃,20℃. Physiol Behav. 44:61–8.. および 30℃の水では,主観的な温度感覚が低下するに つれて,鼻の皮膚血流が低下した.高濃度のカプサイ. amygdala-dependent. 6) Tominaga M, Caterina MJ (2004) Thermosensation and pain. J Neurobiol 61:3–12..
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