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学 位 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

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Academic year: 2021

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((別紙様式第 9 号)

学 位 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

氏 名 Mohammad Minnatul Karim

審 査 委 員

主 査 阿座上 弘行 ◯ 副 査 赤壁 善彦 ◯ 副 査 會見 忠則 ◯ 副 査 川向 誠 ◯ 副 査 小崎 紳一 ◯

題 目

Studies on the relationship between quorum sensing and biofilm formation of Eikenella corrodens

Eikenella corrodensのクオラムセンシングとバイオフィルム形成の関連

性に関する研究)

歯周病の原因であるデンタルプラークは約 500 種以上の口腔細菌から形成されるバイオフィルムコ ミュニティーである。デンタルプラークは典型的なバイオフィルムの一例であり、浮遊細菌が歯面や 歯周組織に付着して、マイクロコロニーを形成し、成熟したバイオフィルムを形成する。口腔細菌は、

デンタルプラーク中でお互いにコミュニケーションしながら、バイオフィルムを形成すると考えらて いる。微生物はオートインデューサーと呼ばれるシグナルを使ってお互いにコミュニケーションして おり、このシグナルを介して菌密度依存的に集団で遺伝子制御するしくみをクオラムセンシングと言 う。多くのバクテリアにおいて、バイオフィルム形成を含めた病原性がクオラムセンシングによって 制御されていることが報告されている。

Eikenella corrodens は歯周病患者の病変部から頻繁に分離され、無菌ラットへの単一感染により

重度の歯周病を惹起する歯周病関連細菌の一つである。近年、本菌が GalNAc 特異的レクチンに依存し てポリスチレン表面にバイオフィルムを形成すること、また AI-2 と呼ばれるオートインデューサーを 対数増殖期の中期から後期に生産することが明らかとなった。さらに、この AI-2 シグナルが本菌のバ イオフィルム形成に影響を与えることも報告されている。しかしながら、AI-2 がどのようにしてバイ オフィルム形成や病原性に関わっているのかは不明である。

本研究は、E. corrodensのクオラムセンシングと病原性との関わりを調べたものである。定常期で の AI-2 活性の減少に関与する因子を同定するために、E. corrodensから AI-2 を精製し、その性質を 調べた。また、バイオフィルム形成を含めた病原性に及ぼす LuxS 依存的シグナルの役割を明らかにす るために、E. corrodensのバイオフィルム形成に対する精製 AI-2 の効果を調べた。さらに、フロー

(2)

セルシステムや種々の顕微鏡技術を使って、野生株とluxS欠損株のバイオフィルム性状を比較した。

第 1 章では、E. corrodensの定常期における AI-2 活性の減少のメカニズムについて研究を行った。

このメカニズムを調べるために、対数増殖期中期の培養上清から AI-2 を抽出、精製した。また同時に、

定常期の培養上清を硫安沈殿により分画した。それぞれの画分を精製した AI-2 または MHF とインキュ ベーションしたところ、30%硫安画分により AI-2 活性、MHF 活性ともに減少した。このことは、AI-2 と MHF が同じ機構で不活性化されたことを示唆している。30%画分の熱処理およびトリプシン処理を 行ったところ、この画分による AI-2 の不活化を完全に停止させることはできなかった。したがって、

部分的に熱安定なタンパク質が AI-2 の不活化に関与することが示唆された。さらに、この酵素が MHF を別の形に変換することを観察した。これらの結果から、E. corrodensは AI-2 の不活化酵素を生産 し、AI-2 はこれによって分解または修飾されることが示唆された。

第 2 章では、E. corrodensのバイオフィルム形成における AI-2 の役割を調べた。AI-2 分子がバイ オフィルム形成に直接影響を与えるかどうかを調べるために、精製した AI-2 をE. corrodensのluxS 変異株と野生株に添加し、静置系のバイオフィルムアッセイによりバイオフィルム形成を比較した。

その結果、AI-2 の添加により、E. corrodensのバイオフィルム形成が増加した。さらに、走査型電子 顕微鏡や共焦点レーザー顕微鏡を用いて、luxS変異株と野生株がフローセルシステムで形成したバイ オフィルムを比較した。luxS変異株のバイオフィルムでは野生株のものと比較して、生菌数が著しく 減少し、疎らな構造が見られた。このことから、AI-2 がバイオフィルムの成熟に関与することが示唆 された。一方、共焦点反射顕微鏡を用いた解析では、野生株のバイオフィルムはluxS変異株のものと 比べてより早く成熟し、時間とともに薄く疎らになっていくことが示された。これらの結果から、LuxS

酵素はE. corrodensにおいてバイオフィルムの成熟と剥離を促進することが示唆された。

以上のように、本論文では、E. corrodensが AI-2 の不活化酵素を生産し AI-2 の分解または修飾を 行うこと、AI-2 を介したクオラムセンシングが本菌のバイオフィルムの成熟と剥離を促進することを 明らかにした。よって本研究により、E. corrodensのクオラムセンシングを介した定着機構やその制 御法を提案するとともに、微生物学の基礎的な知見のみならず、バイオフィルム感染症の予防や治療 など臨床分野への応用にも大いに貢献できる結果をあげていると判断した。

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