Japanese Society for the Science of Design
NII-Electronic Library Service
Japanese Sooiety for the Soienoe of Design「
子
ども
の デ
ザ
イ
ン
」
か ら み え
て
く
る も
の
We
See
it
From
“Kids
Design
”大
泉 義
一
横 浜 国 立 大 学 教 育 人 間 科 学 部
OIZUMIYoshiichi
Yokohama
National
University
1.
本 稿
の位 置
本 稿 は
、
2012
年 度 に 開 催 さ れ た 「デ ザ イン教 育 研 究 会vol.
2
」 に お け る筆 者
の報
告 を基 に している1)。
当 研 究 会 は、
当 該 年 度 の テー
マと して 「基 礎 デ ザ イン 」 を 掲 げ、
会 員相
互 に よる研 究
協 議 を 行っ てき た。
す な わ ち 「基 礎デザイ ン」 の概 念 を 様々な 立 場 か ら と ら え 直 すことに よ り、
デ ザ イン教 育のあ り方 につ い て協 議してきたの であ る。
筆 者 は、
自 身 が 専 門 と している普 通教育
に お け る デ ザ イン教 育 の 視 点 か ら 「基 礎 デ ザ イン 」 を検 討
す る 報 告 を 行っ た。
以 下、
当 報 告 を概
説 する ことで、
子 ど も を 対象
に し たデザ イン教 育の今 後のあ り 方に関 する闊 達な議 論
を 待 ち たい。
2 .
「デザ
イ ン の基礎
」 と い う考
え 方「 基 礎 デ ザ イン」 という言 葉 に ある 「基 礎」
、
そ して 「デザイ ン」 と い うキー
ワー
ドは、
とも に その意 味 を 規 定 し難いもの で あ る。
あ る い は そ の規 定を どこまで も 追いもとめていく営み こ そが、
「基 礎
デザ
イン」 なのか も しれ ない。
そ も そ も 「基 礎デ ザイ ン」 と は’
basic
design
”
と訳 さ れ るの であるが、一
般 的
に 「基 礎 」 は“
foundation
(
>fundamentaD
”
であ り、
齟
basic
(<basis
)”
と は 「基 本 」 の こ と を指
す。
「基礎
デ ザ イン」 を 考 え る 際 に、
こ の語 義 に 対 する議論
を 避 けて通
ること はでき な い。
ち な み に、
『デザ イン教育 大事 典
』に は、
デザ
イン教育
の内 容
が、
次のよ う に 整 理し て 示 さ れ て い る2〕。
具 体 的な実用 目的 を 考 える デザイ ン と
、
教育
上 の 立場か ら行 わ れる基 礎 的 な 造 形 訓 練と し て の 構 成 (基 礎 デ ザ イン、
基 礎練 習
、
Basic
Design
な どとよ ば れるもの) とが 考え ら れ る。
こ の 立場に よれば、
「基 礎 デ ザ イ ン」 と は 造 形 性 を 強 調した 学習
である こ とが確
認でき る。 しか し当 該 書では 続 けて、
デザ イン教 育のねら い を 「創 造 性
を育
て る」 「造 形 的 な 秩 序 に 対 す る感 覚
を育
て る」 「基 礎 技 能
の訓練
」 で あ る と し、
こ のう ち特
に 「創 造性
を育
て る」 こ と、
とり わ け 「着 想j への教育
を 重視
して い る こと も 見 逃せない。 こ の 「着
想」 とは、
他でも ないデ ザ イン教 育の主 体である子 ど も た ち が、
自
分た ち の生 活 (これ は 習 慣 的 な もの でも ある)
の中
で、
新 鮮
で柔軟
な 見 方 や 考 え 方 がで きるよ う に なる こと を指
し て い る の であ る。 つ ま り 「基 礎 デ ザ イン/Basic
Design
」 が 「モ ノ」 の創 造
だけでな く、
そ れに囲まれて 生 き る 私 た ちの生活
=
「コト 」 に対 す
る ま なざ
し を も 包 含 するもの である こ とが 明ら か に なって く る。以 上のよう に
、
「基礎
デザイ ン」 とい う言 葉
に は、
「デザ
イ ン」 の概
念そ のもの の を揺
さ ぶ る契 機
を孕ん で い る よ う に見え る。森香 織
は、
こう し た本質 的 な命 題
に対 す
る 見解
として、
デ ザイ ン教育
に必 要な要素
と して次の2
つを提 示して い る3 〕。
す な わ ち、
「Basic
Design
/ 基礎
デザイ ン(
デザ
イン を支
え る造
形 基 礎 )」 と 「
The
Foundations
ofDesign
/
デ ザイ ン の基 礎(
デザ イン の成 立に必 要
な関連領 域 )
」 であ
る。
筆者
は基 本 的
に こ の考
え方
に同意
す ると とも に、
かつ今
後 の デ ザ イン教 育 を 考 え る 上で は、
と りわ け 「デ ザ イン の基 礎 」 に対 す る 注 視 が 必 須 では ないかと考
え ている。
現 代 に おいては デ ザ インと は単
な る 「モ ノ」 の問 題に と ど まるもの で は な くなっ ている。
ま たそれ は先
述した よう に デザ
イン教育
にお い ても 同 様であ る。
こ こに おい て、
森
の言う よ う な 「デザ インの成 立 に 必 要 な 関 連領
域」 として の 「デザイ ン の基 礎
」 と は、
「デザ インに 対 する メタ な 問い」 に集 約さ れ る の で は な い か と考え られる。
3
.
フィー
ド
バック
・
フィー
ド フォワー
ド に よ る 「デ ザ イ
ンに
対 す
るメタ な 問
い」先 述 し た よ う に 「デザイ ン の
基礎
」 とは、
デザ
インそ の もの を と ら え 直 す 営み でも ある。
そ の具 現と して、
平 成22
年 度 か らの2
年 間
に渡
り、科 学 研 究 費補 助 金
の時
限付
き 細 目 と して 「デザ イン学 」 が 設 定 され た こ と は記憶
に新しい。
こ こ で その申請
書 に 記 さ れて いる設
定 理由
をみ て みよ
う4}。従来
「デザイン 」 とい う名 称は 比 較 的 狭 い、
モ ノの機 能や形状に関 す る分 野 に 使 用 されてき た
。
たと えば 「工業
デ ザ イン」や 「建築デ ザ イン 」 とい う言い方 がそれである。 し か し な が
ら
、
近年
モ ノ・
コ ト・
場のデザイン、
つ ま り我々 の生活 環 境すべ て の事 象を デ ザ インす る と言 う 概 念 が 浮 上し
、
「デザイン」 は
非 常
に広
い意
味で用いられるよう にならそぎた
。
(傍 点筆者)
こ こ に 示 さ れて いる よ う に、
「 デザ イン学」 とい う学 術 分野 に おいては 「デザ イン に対 す
るメタ
な 問い」 そ の も の が 研 究 対 象である こ とがわ か る。
そして さ ら に その問いに は、
私 た ち 人 間 がこれ までに 「デザイ ン 」 と称
し てつ く りだ してき た 所 作・
産 物 に 対 する歴 史 的 省 察 が原点(
上 記文 中傍
点 箇 所の 「従 来 」)
と なっ てお り、
そこか ら現 在
の状況 分 析
がな
さ れ(
上 記 文 中 傍8
デ ザ イン学研 究 特集 号Special
lssue
ofJapanese
Seciety
forthe
Science
of
Design Vel
.
20弓 No.
792013Japanese Society for the Science of Design
Japanese Sooiet 二y for t二he Soienoe of DesignGoahead
_put
yOU
「
feet
up
図1「こ の ば かげた電 気 製 品 は
、
あ ると ころで つ く ら れ、
そ して よ く図
2
『ア
ー
ト ツー
ル・
キャラバ ン』大 泉 義一
研 究 室 売 れた。
」 Victor Papanek (第5
回・
2011
年 度 キッズデ ザ イン賞 受 賞 ) 点 箇 所の 「近 年 」)、
ひい て は 未 来の あ り 方に対 す る 展 望 (上 記 文 中傍 点 箇 所の 厂な っ てき た」)につ な がっ ていく。
つ まると こ ろ 「デザ インに 対 する メタ な問
い」 と は、
かのV
・
パ パネッ ク が、
近 代デザイ ン のあ り様 を 痛 烈に批 判し、
あるべ き デザイ ン の輪 郭 を 描 き 出 そ う と し た よ う に (図1
)、
過 去 か ら 現 在 に 至るまで の デザイ ン のあ り様 を 省 察 (フィー
ドバ ック ) する こ と か ら、
未 来のデ ザ イン のあ り 方 を 展 望(
フィー
ドブt ワー
ド)
する とい う、
「フ ィー
ドバ ック・
フィー
ドフ#ワー
ド」 に よ る俯 瞰
的な考察
に よっ て可能
と な る の で は な か ろ う か。
本稿
で は、
こうし た 「 デザ
イン に対
す るメタ な 問い」 に対し て、
筆 者が我 国の普通教 育に お け る デ ザ イン教 育の歴史 的 省 察(
フィー
ド バ ッ ク)
から見出
した 「子 ども の デザイ ン 」 と い う 概 念か ら み え て く る も の (フィー
ド フォワー
ド)につ い て考え て みたい。4 ,
「子
ども
」 と 「デ ザ イ
ン」 の関係 性
昨今
、
「 子 ども」 と 「デザイ ン」 を結
び付
け る動
きが活
発で あ る。
例え ば日 本デ ザ イン専
門学校
で は、
2010
年
に 「こ ど も デザイン学 科
」 を設 置し て い る。 そ の 理念
は次の 通 りである S) 。 こど も デ ザ イン で は、
純 粋で好 奇 心 に あ ふ れ、
もっ と も 人 間 的 で 魅力に 満 ち た こ ど も年代 に ター
ゲッ トを絞り、
日常の さ まざま な 場 面でのこど も 文 化 を 具 現 化 し ま す。
こ ど も 文 化 の キー
ワー
ドをテー
マ に、
未 来に生き る こども 達へ 夢の贈 りも の を 創 造 す る 企 画力や 表 現力につ いて 学 び ま す。
こ のよ う に、
本 学 科では 子 ど も を 対 象 と し たデザ イン の創 出 に関
する学 修
が行
わ れてい る ことが わ かる。
さ ら に 『キ ッズデザイ ン協 議 会 (特 定 非 営 利 活 動 法 人 )』が
2007
年
に設
立 さ れ、
「次世代
を担
う子 ど も た ちの健
や か な 成 長 発達につな が る社 会 環 境の創 出の た め に、
デザイ ン の チ カ ラ を役
立て よ う とする考
え方
であ り、
活
動」 を様
々に展 開
し て い る6〕。
その中で当 協 議 会 は、
その理 念 を 実 現 し普 及 するた めの 顕 彰 制 度 とし て 『キッズデザイ ン賞 』を 設 けて い る7 〕。
(図2
)ま た
、
NHK
教育
テ レビの子 ど も向
け番 組
『デザイ ンあ 』が、
2012
年 度にグッ ド デザイ ン大賞
を受賞
し て い る。
当番
組 で は、
デザ インを 「人 とモ ノ、
人 と 人 との関係
を 『よ り良 くつな げる』 ため の観 察・
思索・
知 恵・
行 動のプロ セ ス」 と し て と ら え、
未 来 を 担 う 子 ど も た ち に、
よ り よい社 会 をつ くるた め に 「デザイ ン 」 が持
っ て い る役割
に気
づい てもら う こと を 目指
し て い るs>。
海 外
に お い ても、
フィン ラ ンドの デザ イン・
ミュー
ジア ム の 『ファ ンタ ジー ・
デ ザ イ ン・
イ ン・
コ ミュ ニ テ ィ 』 とい う プロ ジェ クトが推
進さ れ て い る。 こ のプロジェ クト で は、
子 ども た ちが 「デザイ ン の力 」 によっ て自分たちの住む地 域 社 会の 課 題 を 解 決 する こと が 学 ば れて い る9)。
以 上のような 「子 ど も 」 と 「デザイ ン」 とを 結 び 付 ける関 係性
は、
大 き く次の2
つの方 向性
に 整 理 する こと ができる。一
つ は 「子 ども の た め の デザイ ン
/
Design
For
Kids
」 であ り、
もう
一
つは 「子ども が デザイ ンす る/
Kids
Design
a…
」 で あ る。
筆者
が用 い よ う と し て い る 「子 ども の デザイ ン 」概 念
と は、
後
者の方 向 性を普通教 育に お い て適用 し て い く試み である。
そ し て こ の概
念は、
戦
後におい て我国
の普 通 教 育に は じ め て位 置付
い た デザイ ンが 辿っ た歴 史 的 省 察 から浮 か び 上 がっ てき た 概 念 でも ある。
そ こ でま ず は、
こ の アブ ダ クショ ンと して の 「子 ど もの デザイン」 概 念 を明 らかにすること から始め て みたい。
5 .
「子
ども
のデ ザ イ
ン」概 念
(1
) 日本の デザイ ン運 動知っ て の通 り
、
戦 後にお ける我国
の デザ インは、
1960
年 代
の 日本デザイ ン 運動に よ っ て確 立さ れ推 進さ れ た。
こ の 運動 は、
次のような 活 動の方 向性
と してま と める ことができる。
す簾
Japanese Society for the Science of Design
NII-Electronic Library Service
Japanese Sooiety for the Soienoe of Designな わ ち 「デザイ ン教 育 」
、
「デザイ ン 研究」、
「グッド デ ザ イン」 という3
つ の方 向性
である。
そ して そ の具体 的
成果
として、
「デザイ ン教育
」 に関
し て は桑 沢デザ
イン研究
所の設 立が、
「デ ザイ ン 研 究」 に関し て は日 本デ ザ イン学 会の発 足が、
そ して 「グ ッ ドデザイ ン」 に関し て は東 京
・
松
屋 におけ る グッ ドデ ザ イン コー
ナー
の開 設が挙 げられ よ う。
ところで勝 見 は 桑 沢デザ イン研究
所の設立 メンバー
の一
人であ り中 心 的 な 存 在であっ た と同 時に、
川喜 田 煉七郎が バ ウハウス の予 備 課 程を基 盤にして っ く り上 げ た構 成 教育
の教 育
システムに触
れ、
桑 沢 デ ザ イン研 究 所の よ う な デ ザ イ ナー
養 成の み な らず、
普 通 教 育に おけ る 新 しい造 形教 育
のあり方
を学
んだ 人物
で も あっ た。
そ して そう し た 造 形 教 育 を 推 進 す る た めの造 形 教 育 センター
の設 立(
1955
年 〉の中 心 人 物でも あっ た剛。
よっ て、
上記 の 「デザイ ン教 育」 に 関 する成 果 に は、
こ の造 形 教育
センター
の設 立を加え る こ と ができるだろ う。
グロピ ウス の
来
日 と造形
教育
センター
の設
立1954
年、
『グロピ ウスとバ ウ八 ウス 展 』開 催の た め に バ ウ 八ウス の初 代 学長
、
V
・
グロピ ウスが来
日し、
建 築家
、
工芸家
、
教 育 関 係 者と交 流を もった。 そ の際、
彼は設立 されて間もない桑
沢デザイ ン研究所
を訪
問し、
そこ で日本
の織 物 に よ る 仕 事 着 の作品 を 見 て 大変に 興 味 を もっ た と 言 う。
さ ら にこ のグロピ ウ ス の来 日 を 記 念 して、
東 京 芸術
大学
正木 記念 館
におい て小
・
中
学 校、
高 校、
大 学の構 成 教 育による作品 展 示が 行わ れ た。
こ れ に は、
バウハ ウス で学 び 我 国で教 鞭 を 取っ た 水 谷 武彦
、
東京 教
育 大 学の高 橋 正 人、
そして勝見
勝らが中
心とな り、
東 京 芸術
大 学、
東 京 教 育 大 学、
千 葉 大 学 な どの構
成科
・
意
匠 科を は じ め、
附 属 小・
中 学 校 や、
都
内 公 立の小・
中 学校
、
高校
、
それに横
浜 国 立 大 学 を 中 心 とした神 奈 川 県か ら の参
加を加え て盛 大に行 わ れ、
好 評 を 博 した。
そ の評価
を受
け て、
戦前
か ら取り組まれて いる我 国の構 成 教 育の理 念 と技 術 を研 究す る こ と を主な 目 的 と 図3
造 形 教育センター
設立発会 式の スナップ (『造 形 教育センター
ニ ュー
ス』 第1号、
1955 年)10
デ ザ イ ン 学 研 究 特 集 号Special
lssueotJapanese
Socjetyforthe
Sclence
ot
Desig
[
VeP
.
20−
3 No.
79 2013 し た民 間 教育
研 究 団 体 「造 形 教 育セ ンター
」 が設立 され る 運び にな り、
同年
6
月18
日、
東 京
・
丸 善
に おい て 設 立 発会
式 が執
り 行 わ れ た。
(図3
) 造 形 教 育 センター
は、
当 時の世 論の後 押 し もあっ て、
戦 前か ら脈々 と続 け ら れてき た 我 国の構 成 教 育 に 関 す る 研 究・
実 践 に お け る 問 題の提 出 と整 理、
さ ら に は 今 後の 方 向 性の提 案 な ど を 推 し進 める必 然 性の中で設 立 さ れる に至っ たの であ る。
〔
3
) 造 形 教 育 センター
の活 動造 形 教 育センタ
ー
では、
絵画
や 彫 亥1」、
デザ インとい っ た すべ て の平 面・
立 体 を含めた 造 形 活 動 を 対象
と し、
そ れ ら を と お し た感 覚
や能
力の育成
、
さら に創 造 的な 人
間の育 成
を 目指
し た研 究が、
理論
面・
実
践 面の双 方か ら進め られて い っ た。
具 体 的 な活 動
と して は、
毎
月の 月 例 会 や 定 期 的 な 展 覧 会 を 開 催 すると と も に、
夏期 研 究 大 会 を 企画・
運営し、
熱心 な研 究 活 動を展 開し た。
勝
見勝
は、
美術
評論家
と しての立場
か ら、
その設立の趣 旨 につ い て次のよう に述べ ている1D。
筆者 が 厂造 形 教育セ ンター
」 の設立 な ど に参加 して、
子ど も の造 形 教 育の改 革 に 関心 を よせているのも、一
見 気 な が な 廻 り道のようである が、
威 勢の い いデザイン運動 よD
も、
は る かにデザ インの核 心 につ な がるものが あるからである。
つ ま り、
デザイ ン の本 質が、
よそゆき の造形よ り、
ふだん の造 形 に よるという考えを推し進めて い くと、
市民一
人一
人の デザ イン感 覚 が 問 題 に な り、
し た がっ て未 来の市 民である子 供の、
一
人一
人の デザ イン感 覚が、
決 定 的 な 役 割 を担う筈 だか らで あ る。
こ の言 葉か らも わかる よ う に、
造 形 教 育 センター
ではデザイ ンの専 門 家 を 育てる た めでは な く、一
般 教 育 と して 「教 育の中 の デザ イン」 のあ り方 が 探 究 さ れていた。
こ の こと は 造 形 教 育 セン ター
の設 立 が、
デ ザ イン意 識 を市 民 層 に 拡 大 し、
生 活 様 式 の創 造を目 ざ す 文 化 運 動と して の側 面 を 担 う ものであっ たこ と を明確
にあらわ して い る。
そ してこう した 考 え 方 は、
学 校 教 育 の あ り方を規 定 する当 時の学 習 指 導 要 領に大 ぎ な 影 響 を 与 える こと と なっ たの であ る。
(
4
)
昭 和33
年 学 習 指 導 要 領 の 改 訂昭 和
33
年
に告 示 さ れた学 習 指 導 要 領 は、
そ れ まで の 「試 案 」 で は な く、
は じ めて法 的 拘 束 性が打ち出 さ れたもの であっ た。
つま りこ こに おい て、
我 国 の 教 育 が 中 央 集 権 的 な 方 向 性 を 目指 すこ と と な る重 要な転 機を迎え たの である。
こ の 頃 は 「グ ッ ド デザイン制度
」 が制
定された とは 言 え、
ま だ ま だ 「デザイ ン」 と い う言 葉は一
般 的でな く、
ま た企 業によ る その 実 践 も 萌 芽 期 では あっ た。
し か しなが ら、
デ ザ イン こそ が 我 国の生 活 と産 業 を発 展さ せ て いく原 動力
であ るといっ た 確 信のも と に、
デ ザ イ N工 工一
Eleo ヒronioJapanese Society for the Science of Design
Japanese Sooiet 二y for the Soience of De$ignン の問 題は我 国の発 展の方 向 性に とっ て極めて重 要 な 関 心 事で あっ た
。
こう した社 会状
況 を 受 け た 学 習 指 導 要 領の改 訂 に おい て、
「デ ザ イン 」 という 文 言 は は じ めて我 国の教 育 課程
に 明 示 さ れること と なっ たの である12 }。
デ ザ イン教 育 批 判 上 述 し た よ う に、
戦 後 日 本の学 校 教 育 界 に一
見 華 々 し くデ ビュー
し た よ う に 見 える デザ イン教 育であっ た が、
学習
指導要
領 が 教 育 現 場で実 施 さ れるよう になると、
新しく位 置 付いたデ ザ インに対
する批 判
が 大 き く取
り上 げ られるよ うになっ た。当
時の小・
中 学 校にお ける デザイ ン学習
は大 きく 「基 礎 的な感覚
練習
」 と 「用途
を もつ デザイ ン」 とい う2
つ の側 面
に整
理され る が、
そ れ ぞ れ に対
す る批判
が噴
出し た の で あ る。
当
時の教育
雑誌
の記事
に記されて い た それら批 判
の要点
を以 下に示してみ た い13 )。
(
図4
・
図5
)
「基
礎的
な感 覚練 習
」 に対
して・
単
な る技術
の練
習と し て取 り上 げられて いる。・
子ど も の 生活と遊 離してお り、
そ の指 導に は根 本 的な子ど も 観、
教 材 観 が 欠 如 してい る。
・
用 途 を もっデザ イン へと 発 展 する系 統 性 が 欠 如 している。
す な わ ち 感 覚 練 習 だ け に 終 始 している。
・
目 新しい教 材と して の表 面 的 な 結 果、
つ ま り作 品 ばかりが 受 容 さ れ る 危 険 性 が ある。
単 なる パター
ン・
メ イ キング に 陥っ て いる。
「用 途 を もつデ ザ イン」 に 対 して
・
子 ど もの生 活 に 根 ざ した 必 要 感 (目 的 ) とな ら ず に、
お と なの価 値 観 を 押 しつ け たデザ インにな りが ちである。
・
お と なの模 倣 に 陥 る危 険 性 が ある。
・
当 時の社 会 状 況 を ま とも に 受 ける恐 れ が ある。
す な わ ち 商 業 主 義、
産 業 主 義 に流 れ る 恐 れ が あ る。
以 上の よ う に、
デ ザ インが普 通 教 育に導 入 さ れ る 経 緯に おい 図4
小 学 校 図 画 工 作 「基 礎 的 な 感 覚 練 習 1_、
_
−.
蔦 β』UE
.
黼
萠r
胃
轟
難
灘
・
■蟄● 齢●●、
、
図5
中 学 校 美 術 「用 途 を も っデ ザ イン (美 術 的 デ ザ イン)J ては、
造 形 教 育センター
のよ う に熱 心 な 推 進 運 動 体 が 存 在 して いた と 同 時 に、
そ の急 進 さ 故に、
教 育 現 場へ の定 着において誤 解 や拒 絶
も 存 在 して いたの であ る。「子 ど もの デザ イン 」
概 念
の浮
上 そ の後、
上 述した ような、
批 判 を 真 摯に受け と めつ つ、
普通 教 育 に お ける デザ イン の意 義 とそ の教 育 理 念 を 明らかにして い こうと する動 き が 生 ま れている。
そ の中
心は もちろ ん造形 教育
セ ンター
の 研究 活 動であっ た。
普 通 教 育に お け る デザイ ン と は どのような目的
・
内容
を もつ べき なのか、
そ し て それ
は当 時
の社
会に お い て はどの よ う な意 義
を もつも の な の か、
と いっ た課 題 がそ の後
も追 究
された の であ
る。 そ の際
に、
上述
し た批判
に 対 抗す る た め に 「子ど も の デ ザ イン」 とい う論 理 概 念が用いら れること となっ たの で ある。そ れで は
、
「子 ど も の デ ザ イ ン」 とい う概 念は、
ど の よ う な 主 張と して形
成さ れ た ので あろ う か。
こ こ では戦 後
の デザイ ン教 育
の史 料に記 さ れている 代表
的 な 言 説 を 基 に 析 出 してみ る。
生 活へのま な
ざ
し・
着 眼 東 京 都の小 学 校 教 師で造 形 教 育 センター
創 立 当 初の委 員の一
人であっ た 佐 藤 諒 は、
デザ イン学 習の有 効 性 につ いて次のよ う に 表 明 している14 )。
子ど もの生 活 (あそ び も含めて)の 中で の切 実な要 求 や云い 分 を 相 手に伝 える と か、
子どもの生 活にな くてはならぬ 必 要 な ものな ど を、
子ど も な り に造 形 的 手 段 や 方法 を通して、
具 体 的にどう解 決し ていくか ということである。
こ こ では、
子 ど も た ち に 理 解 可 能 な 経 験 (生 活 経 験 ) を 基 に、
彼ら の鋭 敏 な 感 覚 を 刺 激 して健 全 な 五 感の発 達 を 図ること が 必 要である こと が 述べら れている。
先 述 し たデザ イン教 育 批 判 に 対 して、
子 ど もの生 活へ の ま な ざ し・
着 眼の存 在 を 説い て いる のであ る。
感 覚 の 発 揮同 じ く東 京 都の図工専 科 教 諭であ り
、
造 形 教育
セ ンター
の 中 心 的 人 物であっ た西 光 寺 亮は次の よ う に述べ て い る15 〕。
現 在 行 わ れて い る デザイ ン教 育の一
端を省み ると、
街に みな ぎ る 新しい感 覚、
環 境と は遠くはな れ、
児 童た ちの生 活 や興 味と 何の つな が り も ない概 念 的な學 習が行わ れてはいないか・
・
・
…。
こ こでも 「子 ど も 」 と 「デ ザ イン」 と の 乖 離 が 指 摘 さ れてい る。
当 時の社 会に お け る 「子ど もの新 鮮 な 感 覚 」 に基づ くべ き であ る と して いる。
切 実 な 創 造 的 問 題 解 決造 形 教
育
センター
設立当初
の実
行 委 員メンバー
である林建
造 は、
基 礎 的 造 形 活 動と用 途を もつ造 形 活 動の う ち、
前
者のみが あ ま り に も 突 出 して取 り上 げられ すぎ
て いる傾向
を危惧
して い る。
そ して後 者 につい ても、
子 ど もの育 ち に 伴 う 必 然 性 が 存 在Japanese Society for the Science of Design
NII-Electronic Library Service
Japanese Sooiet 二y for the Soienoe of Designし ている こと を 訴え ている16〕
。
機 能 的 な 萌 芽 を 大 事に し て、
知ら せ る 目的のため に 子ど もは どん なこと を し ている の か を し らべ た な らば、
もっ と もっ と 切実な、
子 ど も と 結 びつ いたポス ター
が 考 え ら れ る はずで あ る。
『お砂 場の こ こはボ クが トンネルを 作 っ て いるのだか ら 入って は だ め』 といった も の が な ぜ知ら せ る デ ザ イ ン と し て 生き生き と 取 り 上 げ ら れ な い の で あ ろ う か。
こ の言 説か ら は
、
デザイ ン と い う営 為
が デザイ ナー
と いっ た専 門 家
の職 能
を意 味
する も のでは な く、
すべ て の子 どもが生
ま れ な が ら に もっ て い る原 初 的な能力で あ ること が 主張されて い る。
そ して子 ども に とっ て身 近
な生活
に お け る問 題解決
、
中
で も 「こ う し た い 」 と い う切 実
で創 造的
な 問 題解 決
の能 力
を重視
し て い る の で あ る。6 .
「子ど も
の デザ
イ ン 」概 念
によ
る デザ
イ ン に対
す る メタ 的 検 討
以 上、
デ ザ イン教 育の歴 史 的 省 察か ら浮 上 してき た 「子 ど も のデザ イン」 概 念の 構 造 を あらた めてま と めて みよう。
子どものデ ザ インとは……
子
ど
も の〈
生
活への ま なざ
し・
着
眼・
着
想〉
子 ど も の
〈
感 覚 の 発 揮〉
子 ど もの 〈切 実 な 創 造 的 問 題 解 決 〉……
か ら構 成 さ れ る こ の概 念を 「デザ イン に対 す るメタ 的 な 問い 」 の分 析ツー
ル として用いな が ら考 察 を 行ってい くことで、
子 ど も を 対 象 に し た デ ザ イン教 育の可 能 性 を探っ てみたい。
(
1
)
近代
デ ザ イ ン の省 察
と 「子どものデ ザ イン 」先
に述
べたよう に、
V
・
パ パネック は、
近 代デザ インのあ り様
に対
して声高
に警
鐘 を鳴
ら した 人 物であ る。
一
般 大衆は拯
味
も
なけれぽもあを
竟合
ける
自
ももたな い
1
ま
5
た く単 純な人 間と された ので あ る。
〈購 買 動機の調 査、
市 場 分 析、
販 売〉という俗っ ぽい三つ組が決める こ と な ら な んでも よい と受け と る よ う な、
知能 指 数七十 程 度の倫 理 的 虚 弱 者と いう 姿 が 想 定 さ れて いる のであ る。
(傍 点 筆 者 )こ の よう に
、
デザ
イン ユー
ザー
の 主 体性
の弱 体 化 を 過 激 な ま で に指
摘してい る17)。
さ ら にこ う し た状 況に対して、
デ ザ イ ナー
の社会 的
な責任
や彼
の倫
理観
の重
要性
を次
のよ うに主
張 す るle )。 デ ザ イ ナー
という ものは自分の デザ インし た製 品がマー
ケットで 受 けとられて いくことにつ いて責任 をもつ ものなのだ…
(中略 )…
かれの社 会 的、
道 徳 的 判 断は、
か れがデザインを は じ め る 以 前にすでに下 さ れて いるの でな けれ ば な らない。
(傍 点 筆 者 )さ ら に彼は デザ イン教 育につ い てもかく 述べ て いる19 ,
。
12
デザイ ン学研 究 特馬号Sp lal Issue otJapanese SDcletytortheSGienceot Design ) ol
.
20・
3No
.
792013 わ れ わ れ は学 生た ち に助言 を与え て、
デザインに 要求 さ れる衽会的:道徳的簀任
と いっ た ものを 育て る ことになるだろ う。
(
傍 点筆
者)
そ し て実 際の指 導の成果 と し て 「大 学 院 生による第三世界(
イ ン ドネシ ア)
のため に デザイ ンさ れ たラジ オ」を紹
介し て い る2e)。
(図6
)こ の ラジオ は、
ジュー
ス の空き缶で で き て お り、
電
力 源と し て パ ラ フィ ン と芯
を用い、
パ ラ フィンが なく なっ た ら牛
の糞
や紙
など燃え る も の で も代 替
で き る と い う製
造費
わず
か9
セン トの もの で あ る。
そしてその デザ
イン では、
イ ン ドネシ ア のユー
ザー
に とっ て切 実な問 題で あ る機 能 面につ い て の提案
が中心
課 題となっ て いるの に対
して、
彼
らが必
要と し て いない‘
」
造
形と して の魅 力
”
は提 案
さ れて いない。
その結
果、
パ パネッ ク は次の こ と が も た ら される と指 摘して い る。
まず
、
いわ ゆ る’
‘
よい趣 味”
の押 し付 けの回 避であ る。 こ こで 言 う“
よい趣 味”
とは西 欧の価 値 観 に基づいた‘
’
造 形の魅 力”
で あ る。
パ パネック は、
これ は イン ドネ シア の人 た ち に とっ て何 の意 味 も 持 た ない もの と判 断し ている。
さら に、
イン ドネシ ア の人 々に対し て、
デザイ ンを 本 当に自 分のもの にする チ ャン ス を凵
植 えつ け た”
として い る。
図5
を 見 れ ば わ かるよ う に、
ユー
ザー
であるイン ドネシ ア人 が 自分の (イン ドネシ ア の) 生 活 に 基づいた 感 覚 に し た がっ た 装 飾 を 施 している 様 子 か らその ことは容 易に 理解でき よう。
こう し た
、
いわ ゆ る 『パ パ ネ ック 理 論』 は、
わ が 国でもデザ インに 対 する考 察で度 々 取 り上 げられている。
戦 後デザイ ンを 牽 引 し た 佐 野 寛 は 「デザ インは、
これ まで、
ひた す ら 近 代の 『持 続 不 可 能 な 発 展 』 のた め に 働いてき た。
だ がこれ からは、
自ら進 む 方 向 を 転 回 させ て、
『持 続 可 能 な 発 展 』 のため に働く よ うにしな け れ ば な ら ない」 として、
人 間 活 動 に 対 する地 球の 許 容 量 が 限 界に近づいてい る こと から、
持 続 可 能 な 発 展へ と パ ラ ダ イ ム・
シフ トすべ き だ と 提 唱 して いる21)。
そ して そ のた 図6
「大 学 院 生 に よ って第三世 界 (インドネシ ア)のた めに デザイ ン さ れ た ラ ジ オ JVIctor
Papanek
N工 工一
Eleo ヒronioJapanese Society for the Science of Design
Japanese Sooiety for the Soienoe oE Designめ に は 「
教 育
的 手 段と して のデザ イン教 育 」 の可 能 性 を 提 起 し、
何
よ り も デ ザ イ ナー
に 正 しい価 値 観、
美 意 識 を も た せ るこ と が重 要だ と指 摘 して いる。
ま た 社 会 学 者である山 本 哲 士 が 紹 介 している 『福 井 宝 探 し運 動』 の事 例 も 興 味 深い22 〕。
こ の運 動 は、
1990
年の デザイ ン・
イ ヤー
に 福 井 県の地 域 おこしの一
環
と して取
り組
ま れ た プロ ジェ ク トである。
こ のプロジェ クトで は、
福 井
に住
む人
々 に とっ て の地 域の H 宝卩
’
と し て誇れ る も の が持ち寄
ら れ た。
当初
、
主催者
である青年 会議 所
のおと な た ち は、
集
まっ て くるで あ ろ う も の と し て、
自 然の 光景や 歴史的遺 産、
産業 的な 産物、
土着
の も のを想
定し て い た。 そ し て そ う し た も の を パ ッケー
ジ 化し て、
全 国に売り出す こ と を 企図し て い た の で あ る。
し か し実 際
に は、
『お母 さん のお弁 当
』 や 『私
の妹
』 とい っ た’
‘
わた し卩
’
に とっ て の’
個
の宝”
が、
と り わ け 子 ど も た ち か ら多く寄 せ られ
ること とな
り、
主宰 者
であ るお となたち は 涙 を流
してそ れ ら を 受 け と め た と 言 う。
こ の事 態 は、
経 済 や 産 業 を 中 心 と す る 社 会 や 文 化の価 値 概 念 と は まっ た く相 反 する価 値 が‘
’
子 ど も”
に よっ て見 出 さ れ た とい うこと を 意 味 して いる。
別の言 い方 を す れ ば、
’
‘
わ た し という個”
か ら”
社 会”
を とらえ 直 す きっ か け と して‘
’
デ ザ イゾ が 機 能 し、
さ ら に そこに“
子 ど も卩
’
とい う 存 在が重 要で あっ たことが 示 さ れて い る。
以 上のよ うに、
近 代デザ イン の省 察 と 「子 ど もの デザイ ン 」概
念 はいた く結
びつ いている。 す な わ ち、
「子ど もの デザイ ン 」 と は、
持 続
“
不”
可能
な 発展に加 担す る よ う な、
産業や市 場に対
する匿 名性
を帯
び た〈
ま なざし〉
で は な く、
”
い ま一
こ こ”
にお ける 〈感 覚の発 揮 〉 を 伴っ た 〈生 活へ のま な ざ し・
着眼・
着 想 〉 に 基づいた、
他でも ない個 と して の’
わ た し”
の 〈切 実 な 創 造 的 問 題 解 決 〉のプロセス としてデザ インを と らえ 直 す 営 為 な のであ る。
言 う までも な く、
「子 ど ものデ ザ イン 」 に よ る 近代
デザ インの省
察 に は、
デザ インが 克服
しな け れ ば ならない 命題が 提示 さ れ て お り、
こ こ に お い て 「デザイ ン に対す る メ タ な問
い」 に対
する フ ィー
ドフォワー
ドの契機
を孕
ん で い る の で は な か ろ う か。
現 代デザ イン の実 践 と 「子 ど もの デザ イン 」 そ れでは、
どのよ う なフィー
ドフォワー
ドが 構 想 可 能であ る か、
現 在 実 践 さ れてい る デザ イン との 関 連 か ら 検 討 して みた い。
深 澤 直 人 は、
自 らの デザ イン 実 践の原 理 と して 「withoutthought
」 を 掲 げている。
これは’
‘
デザインは存 在・
目的は達 成・
物 体 は 消 滅”
して いるよ うな、
デザ イン ユー
ザー
に’
無 意 識に”
意 味 付 けられる デザ インであ り、
「行 為に溶 ける デザイ ン」 と も 称 さ れている23 )。
こ の実 践 は 人 間 につ い て深 く知る こと か ら 始 める必 要 が あ り、
そ の点 に おいて近 年 求 められつ つ ある 「人 間 中 心の デザイ ン/Human
Centered
Design
(
HCD
)」 である と 言えよう。
「withoutthought
」 の実 践 原 理 は、
深 澤 がかつて所属 し て いたア メ リカのIDEO
社
メン バー
のJ
・
F
・
スー
リ が著
し た 『thoughtless
acts ?』 に詳 しく 紹 介 さ れて いる24 )。
こ の書に は、
デ ザ イン の きっ か けにな る 人 間の行 為 をと らえ た写 真が そ の行 為の カ テ ゴ リー
ごと に掲載
さ れて い るの であ る が、
こ こ で注 目し たい のは本書
の最 終 頁 に 掲 載 さ れ 図7
『thoughtless acts ? 』
Jane
Fulton
Suri
に 挿 入 さ れ て い る写 真 て いる あ る一
枚の写 真である25}。
(
図7
)
子 ど も が 遊 んで い る 様 子 を 撮 影したこ の 写真は、
彼 が 「withoutthoughtJ
の 原 理 を 発 見 する発 端 と なっ て い る。
それ は70
年
代の ス コッ トラン ド の市 街 地にある団 地で、
デザイ ンニー
ズに関 する イ ンタ ビュー
を して の帰 り道の ことであっ た という。
写 真の子 ど も は、
ア パー
トのボ イラー
室の ドアに乗
っ か り、一
緒 にいた 友 人 た ち は い ろ い ろな 力 加 減で ド ア の開け閉め を し て遊ん で い た。 スー
リ は、
こ の行為
が正式
に は公共 物破 壊 行 為
である と認識
しなが ら も、
実 践 的な デ ザ イ ン に何か関わ り が あ る と直 感し た とい う。 つ まり、
つ い先ほどま で彼
が調 査 を 行っ て い た団 地コミュ ニ ティの本 当のニー
ズは’
子 ども の遊び場”
で あ り、
そ う し た 二一
ズ は インタ ビュー
という調 査 方 法では 顕 在 化 さ れ な かっ た とい う 事 実である。
子 ど もの鋭 敏 な 〈感 覚の発 揮 〉 を 伴っ た 〈生 活へ の ま な ざ し・
着 眼・
着 想 〉 に 基 づい た、
他でも ない個 とし て のf’
わ たし”
にとっ て の〈
切実
な創 造 的問題 解決 〉
から 引 き出さ れ る行 為か ら、
本当
の デザイ ンニー
ズ が発見さ れ た の である。佐 藤
卓
は、
2007
年
に21
−
21Design
Sight
で開 催さ れ た 『water展』の デ ィレクシ ョ ンを 行っ て い る261
・
。
こ の展 覧 会 は、
’
‘
水”
というモチー
フを 通 して広 く環 境 問 題の解 決に対 して デザイ ン が な し得 る 可 能 性 を 提 案 している。
佐 藤 に よ れ ば、
多 くの環 境 問題に対 する アプロー
チ が 科 学 的・
倫 理 的 な ものに傾 倒 してい ること を 指 摘 し、
む し ろ その問 題 に 対 す る 〈感 覚 の 発 揮 〉 に 注 意 を 払 うべ き だ と主 張 している。
さ ら に はそ のた めには、
人 々 の関 心 を 高め ることが 最 重要 である と し、
例えば 環 境 問題 にお い て主 要 なモチー
フとな る’
L
水”
のもつ物 質 的 な 面 白 さ を 強 調 し てプレゼン テー
ションする装 置 を 展示 した。
人 々 がそ の装 置 に触 れ ること に よっ て、
”
水”
を 新 鮮 に と ら え 直 すこと につな が り、
ひいては 水 を 通 して環 境 問 題へ の関 心 が 高 まる こと を 企黼
驚
1
Japanese Society for the Science of Design
NII-Electronic Library Service
Japanese Sooiety for the Soienoe of Design図
し て い る。
こ う したアプロー
チ を佐 藤
は、
“
八 ッ ピー
な問 題解決
n
であ
るとし て いる が、
これ は ま さ に大 文字
では ない〈
切
実 な創 造 的
問 題解 決 〉
で あ る。
さ ら に佐 藤は、
そのアプ ロー
チ におい て デザ
イン に でき るこ と として次の3
つを 挙 げてい る27)。一
つ目 は 「可視 化
」 で あ る。
これは解 決 すべ き問 題を目
に見
え る カタ
チにして示 すこ と であ
り、
造
形 という営
為 を 通 し て可能
と な る。 二つ 目は 「既 知の未 知 化」 で、
私た ちの日 常 におい てあ りふれた ことの齟
有 難 ざ
を実 感
す ることである。
そ の た め に は〈
生活
へ の まなざ
し・
着
眼・
着
想〉
が不 可 欠であ る。 そ し て 三つ 目は 「参加
回路
のデザ
イン」 であ る。
この こと は先 述
した“
八 ッピー
な 問 題 解 決一
一
が 必 然 的 に 人 々の参 加 を 促 すこ と か ら も理 解で き よ う。
さ ら に 文 化 人 類 学 者であ る 竹 村 真
一
は、
こ の展覧
会 を 次のよ う に評 論して いる28)。
デ ザ インと は、
あ りふれた世 界 を新 た な 眼で発 見 する感 性の『窓 』 を ひ ら く営みで あ る
。…
(中 略 )…
世 界 をみ る 『解 像 度』 を高めて い く回 路 を、
学 校 も 社 会 も 提 供し て く れ ないな ら、
デ ザ インという 手段で それ を やるし か ない。
こ こには
、
学校
でも 社 会でも 実 現 し得 ない教 育 的可能性
がデ ザ インに 内 在 して いること が 示 されて い る。 もはや
、
デザ
イン と デザ イン教 育とが 互いに接 近し て い る状況 に あ る と言え る の で は な か る う か。
竹 村の言 う 「デ ザ インという 手 段で それ を や る」 と は、
ま さ し く デ ザ イン教 育の役 割のは ずであ り、
それ を 子 ど も を対象
に し た デザ
イン教 育
に おいて実 現 して いくことが 未 来 に 向 け たフィー
ド フォ ワー
ド と して重 要 なの では な かろう か。
教 育の変
容
と 「子
ど ものデザ
イン亅前 項 に おいて
露
わになっ た デザ イン とデ ザ イン教 育 との接 近 の様相
は、
現 代において変 容を 見 せ て い る教 育の様 相と無 関 係 で は な い。
次にこ の こ と につ いて検 討 を 加 えて みたい。1
・
イ リッ チ は、
学校
を、
よ き 社 会の構 成員
を育
成す る た め の教育
を 行 う制度
・
装 置 と して近 代 に おい て発 展
した もの と規
定 して いる29)。
し か しな がら、
い つ しか子 ども を”
学校
へ 通 わせ る こ とH が’
教育
す ること”
であ る と 混 同 し た ま ま受 容
さ れ る よ う に なった こ と によ り、
実 は 子 ど も が 学ぶ場である はず の学校
こ そが、
子 ども か ら学
ぶ“
主 体 性”
を 剥 奪 して い る こと を 暴いて み せた。
い わ ゆ る教育
の 「学 校 化 /Schooled
」 であ る。
こう し た 学
校
におけ る学
び に対
する主 体 性の弱 体 化 につ いて は、
言 語 学 者のH
・
ミー
八ンが教
室内
の教師
と子 ど もの会 話 を パター
ンづけている特 徴
とし て提
示した 「IRE
連 鎖」 に も あ ら わ れている30 }。
例えば、
以 下 の よ う な日 常 会 話がある とす る。
14
デ ザ イン学 研 究特 集 号Speciel
lssue
ofJapanese
Secietytorthe
Scienceof
Design Vol
.
20−
3No
.
792013あ なた :
今 何
時ですか ? わ た し:○ 時 ○ 分です。
あ な た :あ りが と う。
この会 話 が 教 室 に 持 ち 込 ま れ る と
、
次のよ う な パ ター
ンに変
質 す るという。
教 師 〔あ な た ):今 何 時です か ?生
徒 (
わ た し)
:○時
○ 分です。 教 師 (あ な た );正解です。
こ の
一
連の会 話 は 日常
的 な 会話
である にも か かわ
らず
、
凹
あ
な たn
がひと た び’
教 師”
とい う立 場になる な らば、
『今 何
時 です か ?』 とい う 「開 始 (
lnitiation
)
」 の機 能
か ら会 話
が始
ま り、
次い で“
生徒
”
である“
わ た しA か ら得られた 『○ 時 ○ 分 です』 とい う 「応答 (
Beply
)
」 に対
して、
『正解
です』 という 「評価 (Evaluation
)
」 に よっ て会 話を締め く く ろ う とす る よ う に なる。
つ ま り、
教 師
による 「 発 問・
説
明・
指
示」 な ど に よっ て会 話
が 「開始
」 され、
生徒
が そ れ に 「応
答」 し、
そ れ を教 師 が 「 評価
」 す る と いった パター
ン で コ ミュ ニケー
ションが 進 め られる様 態
と な る の であ る。 この様 態 は、
たいていの学 校で見 ら れ る独特
なコミュ ニケー
ショ ン様 態であ る と 言 う。
そ こ には教師
の 「権 力性
」 が 潜 在 してお り、
学校
に お ける子 ど もの立場
の弱 体 化 (’
‘
生 徒’
化 )、
ひいては 主体 性
の弱体 化
と いっ た問 題 を 孕んで い る。
そ して現 在で は、
こ のIRE
連 鎖の存 在 を 教 師 自 身 が 自 覚し、
そ こ か ら脱 却 する よ うな 教 育のあ り方 が模
索 さ れ て い る。以 上のよう に
、
現代
の教 育
に は、
権 威 者であ る 教 師 が 答 え を 教え る こ と で は な く、
子ども 自 身 が 主 体 的 に 答 え をつ く りだ し て い く こ とが求
め ら れて いる。
つ ま り、
これ まで学校
の内部
で 保 持さ れ て き た 「学ぶ こと/ 教 育 す るこ と」 に 対 する パ ラダイ ムの転 換 が要求
さ れて いるのだ。
そ のパ ラ ダ イ ムのキー
概 念 は 〈こた え 〉である。
かつ て は社会 の 「内
部」 に学ぶこ との 〈こた え〉
が 存 在 してお り、
そ れ が 教 育の目 的 と一
致
して いた。 しか し現 代に おいては 地 球 上の多 くの問い一
地球
温暖化
に しても、
サブ
プ ラ イ ム 問 題 に しても、
紛争 問
題 に しても一
に対
して スタ ンダー
ドな 〈こた え 〉 が 存在
し ている わ け で はな く、
学 校 の 内部
におい ても ま た 然 りである。
社 会にも 教育
に も 「 学ぶ こ と/教育
す る こ と 1 の 〈こた え 〉のない現代
に おい て は、
子 ど もと教師
とが、
岡
い ま一
こご の実 感 を 連 帯 させな がら〈
こ た え〉
を探
し てい く、
そ ん な創
造性
が教 育 に 求 め られている の である。
こ のような 教
師
と子ど も の協 働 的 な 関 係 を、
デザ イ ナー
と ユー
ザー
の関係
に 置 き換
え ること はで き ないだ ろ う か。先
に 我 々 がみたデザインと デ ザ イン教 育との接 近 に おいては、
もは や デ ザ イ ナー
は 定 められ
たく
こ たえ〉
を もっ てい るエキスパー
トという よ りも、
ユー
ザー
自らが〈
こ た え〉をつ く り だ すこと をいか にファシ1丿テー
トできるか とい う こ とが求
め られ る。
こ N工 工一
EleotronioJapanese Society for the Science of Design
Japanese Sooiety for the Soienoe of Designの点で