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急勾配水路における流れと河床変動の数値解析に関する研究

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Academic year: 2021

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博 士 ( 工 学 ) 西 本 直 史

学 位 論 文 題 名

急勾配水路における流れと河床変動の数値解析に関する研究 学位論文内容の要旨

  本 論 文 は 、 流 れ の 遷 移 が あ る場 での 流れ と河 床変 動の 数値 解析 、及 び 、掃 流砂 が 卓 越 す る 場 で の2次 元 河 床 変 動 計 算 法 と 現 地 へ の 適 用 につ いて の研 究 であ る.

  河 川 の 整 備 に 関 す る 検 討 に おい ては こ流 れや 河床 変化 の適 切な 予測 が 不可 欠で あ る . 治 水 の 観 点 か ら は 、 流 下能 カの 確保 や堤 防等 の河 川管 理施 設の 洪 水流 に対 す る 安 全 性 確 保 の 検 討 の た め に、 少な くと も洪 水時 の水 位、 流速 の適 切 な予 測が 必 要 で あ る . さ ら に 、 河 道 掘 削後 や取 水堰 等の 横断 工作 物の 改築 後に は 、河 床高 変 化 や 砂 州 移 動 な ど の よ う に 、河 川の 維持 管理 に影 響を 及ぼ す現 象が 懸 念さ れる た め 、 事 前 の 河 床 変 動 予 測 が 重要 とな る. 河川 環境 の観 点か ら、 河道 掘 削後 に瀬 と 淵 な ど の 多 様 な 河 床 形 状 が 再形 成さ れる かど うか 、再 形成 にど れく ら いの 期間 を要 する かと いっ た河 床変 動予 測も 必要 で ある .

  流 下 能 カ の 評 価 に は 一 般 に1次 元 の 不 等 流 計 算 が 用 い られ 、通 常、 常 流を 前提 と し て 下 流 か ら 上 流 に 計 算 が 進め られ る. 途中 、落 差工 のよ うに 射流 の 生じ る箇 所 が あ る と 、 そ の 直 下 流 に お ける 跳水 の発 生の ため 微分 可能 を前 提と す る水 位追 跡 は で き な く な る . こ の た め 、落 差工 地点 の水 深を 限界 水深 で置 き換 え 、上 流側 へ の 水 面 勾 配 に 制 限 を 加 え て 再び 上流 ヘ計 算を 進め る. この よう な便 法 は、 急勾 配 河 川 の 洪 水 時 の よ う に 、 流 れの 遷移 が随 所に 現れ る場 合に は無 意味 で ある .こ の た め 流 れ の 遷 移 も 対 象 と し た適 切な 水位 予測 が必 要で ある が、 実用 的 な予 測法 はい まだ に確 立さ れて いな い状 況に ある .

  こ の 水 位 予 測 に は 、 航 空 工 学の 分野 で用 いら れて いる 衝撃 波捕 獲法 が 有用 であ る . そ の ー つ のMacCormack法 ( 予 測 子 ・ 修 正 子 法 ) は 既 に 開 水 路 流 れ に 応 用 さ れ て い る が 、 擾 乱 の 伝 播 特 性 を正 しく 表し てい ない ため 、理 論的 に明 快 で、 河床 変 動 解 析 へ の 発 展 も 期 待 で き る衝 撃波 捕獲 法を 応用 する こと によ って 、 実用 的な 水位 予測 法を 確立 する 必要 があ る.

  ま た 、 河 道 掘 削 や 堰 等 の 改 築に よる 河床 への 影響 は、 長区 間か つ長 期 間に 及ぷ こ と か ら 、 そ の 予 測 に は 一 般 に 擬 似 定 常 を 仮 定 し た1次 元河 床変 動計 算 が用 いら れ る . し か し 、 こ の 計 算 は 、 流れ の遷 移が 随所 に現 れる 場合 には 適用 で きな い・

適 切 な 水 位 計 算 が 困 難 で あ る だけ でな く、 流砂 の連 続式 に対 する 風上 差 分に 問題 が 生 じ る た め で あ る . 流 れ の 遷移 が随 所に 現れ る場 合の 河床 変化 の予 測 では 、擬 似 定 常 の 仮 定 を 取 り 払 っ て 河 床擾 乱の 伝播 機構 を適 切に 評価 し、 その 伝 播機 構を 反映 でき る河 床変 動計 算法 が必 要で ある が 、現 段階 では そのような計算法はない.

  一 方 、 長 区 間 の 縦 断 的 な 河 床変 動予 測だ けで はな く、 弯曲 部や 砂州 前 縁線 の局 所 洗 掘 、 瀬 と 淵 の 再 形 成 の よ うに 局所 的か つ平 面的 な河 床変 動予 測も 維 持管 理や 河 川 環 境 の 面 で 重 要 で あ る 。 こ れ ま で に 、2次 元 浅 水 流 モ デ ル や3次 元 流 れ の モ デ ル に よ る 主 に 掃 流 砂 を 対 象 とし た河 床変 動計 算に つい て研 究が なさ れ てき てい る が 、2次 元 浅 水 流 モ デ ル に よ る 河 床 変 動 計 算 は 実 用 的 で、 実河 川の 河 床変 動を 容 易 に 予 測 で き る 手 法 と し て 期待 され る。 さら に、 急勾 配の 河川 では 、 平均 年最 大 流 量 程 度 の 流 量 規 模 で も 局 所 的 に 砂 州 頂 部 が 水 面 か ら 露 出 す る こ と が あ る た

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め 、 水 深 方 向 に 格 子 網 の な い 浅 水 流 モ デ ル に よ る 計 算 が 有 利 で あ る 。   ただ し、浅水流モデルによる計算では、本来3次元的な現象を水深方向に積分 したモデルに取り込むことから、河床底面近傍の流速を適切に算定する必要があ る。蛇行流路ではらせん流の適切な評価が必要となるが、その評価法が確立され ていない。また、急勾配で掃流砂が卓越する実河川にどの程度適用できるのかが 明らかでなしヽ。

  以上のように、急勾配の河川においてより良い河川整備を検討して提案するた めには、洪水時の水理特性や河床変動特性を評価するための技術がまだまだ不足 し て い る 状 況 に あ る 。 こ の よ う な 状 況 に 鑑 み 、 本 研 究 を 行 っ て い る 。   第1編では、流れの遷移のある場における流れと河床変動の数値解析法を理論 的に明らかにするとともにその実用化を図るため、衝撃波捕獲法のーつで風上ス キー ムのFDS法を 流れと河 床変動の 数値解析 に適用した 。開水路流れの解析に ついては、解析法の詳細や境界条件の設定法を理論的に明らかにした上で、ダム 破壊流れ、常射流混在流の計算を行った結果、本計算モデルにより段波や遷移す る流れが適切に表されることが分った。

  河床変動解析にっいては、流れが河床変化に影響を及ぼすと同時に河床変化も 流れに影響を及ぼすという相互干渉を組込んだ解析法を構築した。この解析では、

流砂 があると 常に下流 と上流そ れそれの方向に伝播する特性波があるためFr=l という特異点は取り除かれて、問題なく限界流や流れの遷移を扱えることが分っ た。そして、河床変動計算を行った結果、限界流や流れの遷移がある場合にも本 解析 は有効であることが分った。さらに、本解析では3次方程式を解く必要があ るので、計算効率を上げるため、本理論に基づき準定常解析(流れの基礎方程式 に流砂の連続式を単純に加えた解析)を合理的に利用する河床変動計算法を提案 した。これらの成果は、今までになかった新しい計算法を提示するものである。

  第2編では、掃流砂が卓越する急勾配の河川における平面的な河床変動予測の 実用 化を図るため、浅水流モデルを用いた2次元河床変動計算法にっいて検討を 行った。まず、流砂量算定に大きく関係するらせん流の評価法が確立されていな いことを踏まえ、蛇行流路を対象として洗掘深、洗掘位置および全体的な河床形 状の予測精度の向上を図るため、らせん流の評価に着目して検討を行った。らせ ん流による河床近傍の流速として曲率に比例する式形を採用し、この算定に流路 の曲率や流線の曲率を用いた場合の再現計算精度を考察した結果、らせん流強度 式に流線の曲率を用いると、洗掘深、洗掘位置、波高さらには全体的な河床形状 の再現性が良くなることが分った。その要因は、洗掘部における主流線の曲率を 流路曲率よりも大きく評価していることと、主流線の曲率のピーク位置が蛇行水 路形状に対して位相差をもつことにある。

  次に、急流河川の一形態である網状河川を対象とする河床変動計算の再現性に つい て検討された例がないことを踏まえ、2次元河床変動計算の実河川への適用 性を調べるため、今もなお河床上昇傾向にあり網状流路が形成されている安倍川 を対象として検討を行った。既往大出水にっいて河床変動の再現計算を行い、洗 掘と堆積の平面分布および横断形状の再現性を検討した。その結果、平均河床高 や最深河床高の縦断分布および大局的な洗掘・堆積の平面分布の特徴を再現でき ることが分った。また、高水敷造成および河床掘削による周辺河床への影響につ いて予測計算を行った結果、この河道改修が下流部の河床変動に大きな影響を与 えることが予想された。以上の検討によって、本計算モデルの実河川への適用が 可能であることが示された。

  これ らの知見 は、急勾 配の河川 において河川整備を検討するにあたり、有用 となるものである。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

急勾配水路における流れと河床変動の数値解析に関する研究

  本 論 文 は 、 急 勾 配の 河川 にお ける 治 水と 河川 環境 が調 和し た河 川整 備検 討を 容 易 にす るこ とを 目的 とし て、 流れ の遷 移が ある 場での流れと河床変動の数値解析、

お よ び2次 元 河 床 変 動 計 算 法 の 実 用 化 に 関 す る 研 究 を 行 っ た も の で あ る 。   第1編 は 、 流 れ の 遷 移 が あ る 場 で の 流 れ と 河 床変 動の 数値 解析 に関 する 研究 で あ る。

  急 勾 配 河 川 で は 洪水 時に 流れ の遷 移 が随 所に 現れ るが 、こ れを 対象 とす る実 用 的 な 水 位 計 算 法 は 確立 され てい ない 。 この 理由 は、 従来 の水 位計 算モ デル が水 理 量 の 伝 播 特 性 を 適 切に 表し てい ない こ とに ある が、 伝播 特性 を適 切に 表す 計算 モ デ ル を 構 築 す る こ とは 容易 では ない 。 さら に、 一般 に用 いら れる 擬似 定常 を仮 定 し た河 床変 動計 算法 は、 流れ の遷 移が 随所 に現 れる場合に適用できない。これは、

水 位 計 算 が 困 難 で ある だけ でな く、 流 砂の 連続 式に 対す る風 上差 分に 問題 が生 じ る か ら で あ る 。 こ のた め擬 似定 常の 仮 定を 取り 払い 、河 床擾 乱の 伝播 機構 を適 切 に 反映 する 新た な計 算法 が必 要で ある 。

  こ れ ら2っ の 問 題 点 を 解 決 す る た め 、 本 編 で は衝 撃波 捕獲 法の ーつ で特 性帯 の 理 論 に 基 づ くFDS法 を 開 水 路 流 れ に 適 用 し て い る 。 そ し て 、 開 水 路 に お け る 理 論 を明 らか にし 、1次 元計 算モ デル を構 築し てい る。

  流 れ の 計 算 に つ いて は、 特性 速度 の 方向 に応 じて 流束 差を 配分 する 解析 法の 詳 細 や 境 界 条 件 の 設 定法 を理 論的 に明 ら かに し、 実験 水路 にお ける ダム 破壊 流れ や 常 射 流 混 在 流 の 計 算を 行い 、モ デル の 適合 性を 検証 して いる 。河 床変 動計 算に っ い て は 、 流 れ と 河 床変 化の 同時 的な 相 互干 渉を モデ ルに 組込 むこ とに よっ て、 フ ル ー ド 数Fr=lの 特 異 点 が 取 り 除 か れ 、 問 題 な く 流 れ の 遷 移 を 扱 え る こ と を明 ら か に し て い る 。 と くに 、河 床変 動計 算 モデ ルで は今 まで にな かっ た新 しい 計算 法 を 提示 して いる 。

  第2編 は 、 浅 水 流 モ デ ル を 用 い た2次 元 河 床 変 動 計 算 法 の 実 用 化 に 関 す る研 究 で ある 。

  弯 曲 部 や 砂 州 前 縁線 の局 所洗 掘、 瀬 と淵 の再 形成 のよ うに 局所 的か つ平 面的 な 河 床 変 動 予 測 も 維 持 管 理 や 河 川 環 境 の 面 で 重 要で ある 。浅 水流 モ デル を用 いた2 次 元 河 床 変 動 計 算 は実 用的 で、 実河 川 の河 床変 動を 容易 に予 測で きる 手法 とし て 期 待 さ れ る 。 急 勾 配の 河川 では 、平 均 年最 大流 量程 度で も局 所的 に砂 州頂 部が 水 面 か ら 露 出 す る こ とが ある ため 、水 深 方向 に格 子網 のな い浅 水流 モデ ルに よる 計 算 が 有 利 で あ る 。 しか し、 この 計算 で は流 砂量 算定 に関 係す る河 床近 傍流 速を 適

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興 浩

博 男

   

倉 伯

田 木

授 授

授 授

   

   

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切に算定する必要があり、その算定法が確立されていないため精度の高い河床変 動予測が困難である。また、2 次元河床変動計算を実河川にどの程度適用できる かが明らかでない。

  

本編では、まず計算精度の向上を図るため蛇行水路を対象とし、らせん流の評 価に着目した検討を行っている。その結果、らせん流による河床近傍流速として 流線の曲率に比例する式形を用いると、局所的な洗掘、堆積や全体的な河床形状 の再現精度が向上することを示している。この要因として、洗掘部における主流 線の曲率が流路曲率よりも大きくなることと、そのピーク位置が蛇行水路形状に 対して位相差をもつことを明らかにしている。

  

さらに、本計算モデルの実河川への適用性を調べるため、今もなお河床が上昇 傾向にあり網状流路が形成されている安倍川を対象として検討を行っている。既 往大出水についての再現計算を行い、洗掘と堆積の平面分布および横断形状の再 現性を検討した結果、平均河床高や最深河床高の縦断分布およぴ大局的な洗掘・

堆積の平面分布の特徴を再現できることを示している。また、高水敷造成および 河床掘削が周辺河床に与える影響について予測計算を行った結果、これらの改修 が下流部の河床変化に大きな影響を与えることを示している。これらの検討によ って、本計算モデルの実河川への適用が可能であることを明らかにしている。

  

本研究の成果により、従来困難であった流れの遷移がある場での水位と河床変 動の予測が可能となり、さらに、精度の高い2 次元河床変動予測の実河川への適 用が可能となった。これらの知見は、急勾配の河川において河川整備を検討す るにあたり極めて有用である。

  

よって著者は、北海道大学博士(工学)の学位を授与される資格あるものと認 める。

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参照

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