• 検索結果がありません。

塩化物環境における構造用材料の腐食と防食に関する研究

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "塩化物環境における構造用材料の腐食と防食に関する研究"

Copied!
5
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

学 位 論 文 題 名

博 士 ( 工 学 ) 清 水 義 明

塩化物環境における構造用材料の腐食と防食に関する研究

学位論文内容の要旨

  塩化物は構造用材料の耐久性に深刻な影響をおよぼす。鉄鋼を基本材料とする構造物は自然 環境に多数建造されている。自然環境の多くは、腐食環境として考えるとき、大気および海洋 また土壌にしても中性水溶液環境と見なすことができる。中性水溶液環境における鋼の腐食反 応は電気化学的に進行し、溶存酸素の拡散により律速される。溶存酸素の拡散を律速とする鋼 の平均腐食速度はおよそ0.lrmr/yであり、同時に、この値t甜冓造材料の耐食性を判定する基準で もある。0 .1nmr/yの腐食速度は、鉄鋼表面に形成される醐圏珈や不働態皮膜の存在を前提とする。

  一方、塩化物は鋼の不働態皮膜を破壊するトリガーとして作用する。塩化物による不働態皮 膜破壊は鋼に割れおよび子し食など局部腐食を生じ、構造物に突然の破壊をもたらす。塩化物を 原因とする局部腐食発生メカニズムの解明および防止は、構造用材料の腐蝕与食に関わる最重 要課題である。自然環境において使用される構造用材料に関する塩化物を主因子とする腐食お よびその防食技術は、従来、系締拘に論じられたことがない。本論文は塩化物環境に用いられ る代表的構造用材料の腐食特性および防食技術を論じたものであり、緒言に続く3章の本文と結 言とから構成されている。以下に各章の主な威:果を要約する。

  第 2章 「 海 洋 環 境 に お け る 構 造 用 鋼 の 腐 食 」 は 2節 か ら 構 成 さ れ る 。 (1)海洋環境における構造用鋼の腐食特性および防食設計

実験室的再現が困難である海洋構造物の腐食特性をシミュレートするため、各種の防食施工 を施した鋼管杭を用い実海洋環境にステイションを組み立て、これに生じた腐食劣化の経年観 察および定量化を行ない、併せて有効防食システムの設計を試みた。汎用性の高い有機被覆の 耐食寿命は、塗覆膜に生じる損傷の有無により決定される。これら損傷の第一原因は衝撃作用 であり、衝撃抵抗を高めるには厚膜化が有効である。実用に供されている塗覆装を例として衝 撃カに対する必要最′J皹を計算することにより、海洋構造物の防食I‑£繕iである塗覆装膜厚 の合理的根拠を初めて明らかにした。補修は物理的損傷が不可避である有機被覆を用いた長期 防食殻計に不可欠であることから、飛沫帯および干満帯の補修法として開発したマスチック型 枠轤型工法を提案した。さらに、金属被覆と電気防食との組合せは、海洋構黝の長期防食シ ス テ ム と し て 最 も 優 れ て い る こ と を 防 食 条 件 と 共 に 明 ら か に し た 。 (2)マクロカソードの形成と低合金鋼の腐食特牲

(2)

    海水に浸漬された低合金鋼の腐食速度は、普通鋼より30%程度小さい。海水中における金属の   腐食反応は溶存酸素の拡散律速であり、その腐食速度は金属の種類および組織の影響を受けな     い筈である。従って、低合金鋼の低い腐食速度は、酸素還元反応効率の低下により説明されね     ぱならない。多くの浸漬試験の結果、低合金鋼にのみ形成されるマクロカソ―ドが腐食速度の   低下に寄与することを初めて見いだした。海水成分であるhg"やCa‑は、酸素還元反応により生     じたアルカりと反応しマクロカソード表面に沈澱析出する。沈澱析出の生じたマクロカソード ー表面 は酸素 還元反廊 功率が低下し、ー低合金鋼の腐食速度が減少することを明らかにした。

  第3章「塩化物環境におけるステンレス鋼勘iの発銹特性t

  ステンレス鋼建材に生じる主な腐食は、建築物の美感を損なう発銹である。ステンレス鋼の 発銹は、海塩粒子の作用より多数発生する子し食のコロニーである。表面粗度がlum以上である ステンレス鋼の発銹面積は、表面粗度に依存することを見いだした。ステンレス鋼薄板の製造 に際し、熱延スケールを除去するには中性塩電解および硝フッ酸酸洗を施す。酸洗翅甅賊の化 学分析ニおよびスケ―ルと母材の表面分析結果から、スケール生戯によるCr濃度低下層は粒界に 沿って形成されることを明らかにした。併せて、暴露試験によると、ステンレス鋼の発銹原因 となる子し食は、発生後しばらく時間を経過すると成長を停止するが、その理由はC「濃度の回復 による再不噸黼はこ基づくことを示した。

  ステンレス鋼の発銹は塩化物の作用する乾湿繰り返し環境により加速される。乾燥サイクル 時のステンレス鋼表面は、水分が枯渇し塩分が濃縮する。その結果、ステンレス鋼の電位は孔 食発生電位を越え、多数の孔食が発生し発銹を生じる。さらに、曝露試験および塩化物の作用 す る 種 女 の 乾 湿 繰 り 返し 条 件 をLt較 し、 ス テ ンレ ス 鋼 の発 銹 促 進彜 轍 を 提 案し た 。

  第4章は「塩化物環境による自動車鋼材の腐食」であり、3種類の構造材料を対象とし3節から 構成される。

  (1) Al基|mCの耐局部腐食性に関する考察

  合金中に第2相が存在すると、塩化物に対する合金の耐局部腐食特性は低下Iする傾向を示す。

6061およぴT075Al合金をぺ―スとするAl基|mICの耐局部腐食性は、母合金の耐食特性をほぼ引き 継ぎ、補強繍維の影響は小さいことを明らかにした。Al基 nIcの耐応力腐食割れ特性およびrfL 食 特 性 は 、 析 出 強f幽1合 金 と 同 様 に 時 効 熱 処 理 を 施 す こ と に よ り 醪 ビ 善 さ れ る 。   絶縁性であるSiCw繊維は、接する合金の溶解を僅かに促進する。TEMにより、極薄い反応層が Al合金およびSiCw繊碓界面に形成されることを見いだした。この反応層はAl合金に対し弱いカ ソー ド として 作爛し、 強イは 瑚睡に掻 するAl合 金の溶解 促進 される機 構を提 案した。

  (2)塩化物による塗装亜鉛めっき鋼板の腐食

  自動車用塗装亜鉛めっき錚瓶は、塩イヒ物による塗膜下.腐食がi轡予ずると穴明きに至る。塗膜 下腐食速度は、塗装下地であるめっき鋼板の電気化学特性に依存することをガルバニック電流 の計測から明らかにした。また、亜鉛めっき鋼板の塗装密着性および防錆性を改善するために 施す化成処理は、塩水中における塗膜下腐食のカソード反応抵抗を増大させることを交流イン ビーダンス測定により定量的に示した。

  (3)塩f瞬ワ環覽におけるCu−P系耐食鋼の腐食符陸

  自動車の足回り音材は、塩化物の作用する乾湿繰り返し環境で使用されるため、穴明き腐食 を生じる。この穴明き腐食は、さ弧層のEPMA輔斤の結果、さび層と鋼界面に塩化物ネストが形

‑130

(3)

成されることにより進行することを見いだした。耐食成分であるCuおよびPは、さび層の微細・

緻密化を促進する。微細・緻密化したさび層は、塩化物ネストヘの塩分輸送に対する抵抗とし て作用し、その効果は雰囲気湿度に依存する。雰囲気湿度が高くさび層の濡れ時間が短かけれ ば、緻密化したさび層は塩分の輸送に対する障壁として有効に作用することを明らかにした。

第5章は桔言であり、本研究を総括した。

131

(4)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

塩化物環境に摘ける構造用材料の腐食と防食に関する研究

  

鉄 鋼 を 基 本 材 料 と す る 構 造 物 は 自 然 環境 に多 数建 造 され てい る。 自然 環境 のう ち、

塩 化 物 環 境 は 構 造 用 材 料 に 孔 食 な ど の 局 部 腐 食 を 引 き 起 こ し 、 構 造 用 材 料 の 耐 久 性 に 深 刻 な 影 響 を お よ ぽ す 。 し た が っ て 、 塩 化 物 環 境 に お け る 局 部 腐 食 発 生 機 構 の 解 明 お よ び 局 部 腐 食 の 防 止 は 、 構 造 用 材 料 の 腐 食 防 食 に 関 わ る 最 重 要 課 題 で あ る 。 し か し 、 自 然 環 境 で 用 い ら れ て い る 構 造 用 材 料 に 関 し て 、 塩 化 物 を 主 要 因 と す る 腐 食 とその防食技術は、これまで系統的に論じられて いない。

  

本 論 文 は 種 々 の 塩 化 物 環 境 に お け る 各 種 構 造 用 材 料 の 腐 食 特 性 を 系 統 的 に 調 ベ 、 そ の 防 食 法 を 検 討 し た も の で あ り 、 そ の 主 要 な 成 果 は 次 の 点 に 要 約 さ れ る 。

  

海 洋 構 造 物 と し て 、 主 に 炭 素 銅 お よ び 低 合 金 系 耐 海 水 鋼 が

H

] い られ てい るが 、そ の 防 食 法 と し て 塗 覆 装 に よ る 重 防 食 が お こ な わ れ て い る 。 著 者 は 塗 覆 膜 の 被 損 傷 性 が 耐 食 寿 命 を 決 定 す る 最 も 永 嬰 な

pf

で あ り 、 衝 幣 か ら 構 造 物 を 保 護 し う る 鹸 覆 装 の 妓 小 膜 厚 を 衝 突 エ ネ 少 ギ ー の 計 錦 : より 推定 し、 塗 覆装 の膜 厚設 計の 合理 的根 拠を 叨らかにした。っぎに、有機被犢による長期防食 に不可欠な飛沫ヰ仔およぴ二fl.満Tliの 南

n

修 法 と し て、 マス チッ ク型 枠浄 嚠工 法を 提案 した 。 また 、海 洋構 造物 の長

jtJj

防食 シ ス テ ム と し て 、 金 属 被 榎 と 電 気 防 食 の 組 合 わ せ が 最 も 優 れ て い る こ と を 防 食 条 件 と ゴ

k

l

J

らか にし た。 これ らの 成果 は、 海洋 構造 物 のm防食 技術 とし て災 パj化 され ており、非常に尚く評価される。

  

さ ら に 、 海 水 に お い て 、 低 合 金 鋼 が 普通 鋼の

30

% モ 琶度 の低 い腐 食速 度を 示す 要因 と し て 、 低 合 金 鋼 に の み マ ク ロ

t

カ ソ ー ド が 形 成 さ れ る こ と を 新 し く見 いだ した 。マ ク ロ カ ソ ー ド 表 而 で は 、

Mg2

゛ や

Ca2

゛ が酸 素還 元反 応 によ り生 じた 水酸 化物 イオ ンと 反 応 し 沈 殿 析 出 す る た め 、 低 合 金 鋼 の 腐 食 速 度 が 低 下 す る こ と を つ き と め た 。 著 者 に よ る マ ク ロ カ ソ ー ド の 概 念 は 、 海 水 に お け る 低 合 金 鋼 の 腐 食 機 構 の 解 明 に 大 き く 寄与するものである。

  

火 気巾 で、 ステ ンレ ス鋼 建材 に生 じる ― キ. な腐 食は 、海 塩粒 子の もたらす塩化物 に

尾 川

三 三

瀬 石

成 商

授 授

授 授

教 教

教 教

査 査

査 査

主 剛

剛 剛

(5)

よ る発 銹で あり 、建 材の 美観 を損 なうことが問題になっている。著者は発銹の材料 側因子として、ステンレス鋼の薄板製造プロセスが関連していると考え、熱延スケー ル およ び母 材の 表面 分析 をお こな った。表面分析結果から、スケール直下にCr 濃度 低 下層 が粒 界に 沿っ て形 成す るこ とをっきとめ、このCr 濃度低下層が発銹の要因に な るこ とを 明ら かに した 。著 者の 研究成果から発銹の防止法として、Cr 濃度低下層 の 除去 、あ るい は、 Ci 濃 度の 高い 母材の使用が提案された。また、暴露試験と塩化 物 を含 む種 々の 乾湿 繰り 返し 条件 を比較することより、実環境における発銹の有無 を 短期 間で 評価 する こと がで きる ステンレス鋼の発銹促進試験を新しく開発した。

  CaCI :などの塩化物を主成分とする凍結融解剤は自動車の車体を腐食させ、深刻な ダ メー ジを もた らす 。著 者は 自動 車の構 造材 料と して 用い られ るAl 基MMC (複合材 料 )、 塗装亜鉛めっき鋼板、Cu‑P 系耐食鋼の3 種類について、塩化物環境における腐 食 特性 を調 べ、 防食 技術 の発 展に 不可欠 な基 礎的 知見 を得 た。 まず、Al 基MMC の耐 局 部腐 食性 は母 合金 の耐 食特 性を ほぼ引き継ぎ、強化繊維の影響が少ないことを明 ら かに した 。ま た、 Al 基 MMC の 耐応 力腐 食割 れお よぴ 耐孔 食性 は時効熱処理により 改 善さ れること、およびSiC 強化繊維と母合金の界面に融合層が形成され、融合層が カソードとして作用することを見いだした。

   自動 車用 塗装 亜鉛 めっ き鋼 板は 、塩化物による塗膜下腐食が進行すると穴明きを 生 じる 。著 者は 塗装 鋼板 の剥 離面 積および交流インピーダンスの測定より塗膜の劣 化過程およぴ塗膜下腐食を評価し、塗膜の剥離機構を明らかにした。また、亜鉛めっ き 鋼板 の塗 装密 着性 およ び防 錆性 を改善するために施すりン酸塩系化成処理は、塗 膜 下腐 食の カソ ード 反応 抵抗 を増 大させることを交流インピーダンス法により定量 的 に示 した 。さ らに 、塩 化物 環境 におけるCu‑P 系耐食鋼の高耐食性に関して、鋼に 含 まれ るCu やP が 錆層 の緻 密化 を促 進し 、緻 密化 した 錆層 が塩 分の輸送に対して有 効 な障 壁に なる こと を明 らか にし た。著者の得た新しい基礎的知見は、塩化物環境 に おけ る自 勁車 用構 造材 料の 防食 技術の発展に大きく寄与するものとして、高く評 filli される。

   これ を要 する に、 著者 は、 海水 、人気などの種々の塩化物環境における各種構造 J1 亅材料の腐食特t :を系統的に調ベ、海洋構造物の.弧防食法を確立するとともに、ス テンレス鋼の発銹防ll ..および1 とI 動市JH 構造材料の防食技術の発展に不可欠な新しい 魅 礎 的 知 見 を得 てお り、 腐食 防 fT 学の 進歩 に貢 献す ろとこ ろ大 なる もの があ る。

   よっ て、著者は、北海逆人学t や上(工学)の学他を授与される資格あるものと認

める。

参照

関連したドキュメント

主な成果

既往の研究において,鉄筋の表面が全長に渡って一様に 腐食している鉄筋を有する RC 部材に対して電磁誘導加熱

Kyushu University Institutional Repository.

このため、両者の電位差により土壌中の鋼管等がアノード、コンクリート中の鋼管等がカ

要旨:腐食生成物の一つである β-FeOOH は,塩化物イオンの共存した環境において生成され,他の生成物よ りも体積膨張倍率が

 鉄製遺物の安定性を決定する因子のひとつに、遺物の

腐食が進行した耐候性鋼材に対して炭酸ナトリウム による処理をおこなうにあたり,さび層に塩分が多量

耐候性に優れた Ni 系高耐候性鋼材が,国内の各鉄 鋼メーカーによって開発され,従来の耐候性鋼 (JIS 耐候性鋼 ) の適用限界 ( 飛来塩分