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博士(地球環境科学)佐々木 裕 学 位 論 文 題 名 Design and Application of Photo− Curable Oxetane System

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Academic year: 2021

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博士(地球環境科学)佐々木   裕      学 位 論 文 題 名

Design and Application of Photo − Curable Oxetane System

(オキセタニル基を有する光開始重合系の設計と光硬化材料への応用)

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  我々人類は地球上に生まれ、地球環境と密接に関わりを持って生活をしている。しかし ながら、産業革命の時代に蒸気機関とぃう新しい工業技術を手にしてから20世紀に至る まで、人類は主として自分達の生活環境を向上する技術のみを追い求め、その技術が地球 環境に及ぼす影響についてはほとんど注意を払ってきてはいない。近年、種々の地球環境 問題が顕在化してきており、その中でも、オゾンホー レや大気汚染等に代表される有機溶 剤による環境破壊が大きな問題となっている。

  有機溶剤を用いる材料系としてコーテイングや塗装などが広く一般に用いられている。

この有機溶剤の大気中への拡散による環境破壊を改善するための有用な技術として、本質 的に無害である水を溶剤として用いた水性樹脂材料と無溶剤型である光硬化(重合)型材 料が注目を集めている。しかし、水性樹脂の塗膜を得るためには、水の蒸発に多大なエネ ルギーが必要であり、また、有機溶剤型のものと比較すると、得られる塗膜の物性が劣る 場合が多い。無溶剤型である光硬化型材料iまその重合速度が速いため、硬化に必要なエネ ルギーは少なく、さらに、得られる塗膜の物性は一般的に優れている。これまで、光硬化 型材料として、主に重合性基としてアクリル基を有する重合系に関する研究が行われてき ている。しかし、重合様式がラジカル重合であるため、空気中の酸素により重合が阻害さ れること、また、最近アクリル基を有する材料が発ガン性を有することが明らかになり、

ア ク リ ル 基 に 変 わ る 新 規 な 反 応 性 基 を 有 す る 光 硬 化 材 料 が 求 め ら れ て い る 。   近年、オニウム塩の光分解反応による酸発生反応カミ非常に高い量子効率で進行し、その 発生した酸を利用するとオレフイン類や環状エーテル類がカチオン重合することが報告さ れ、光カチオン重合法として提案されている。これは前述のアクリル基を用いたラジカル 重合型の光硬化材料の欠点を改良できるものとして注目を集めているが、光硬化型材料に 要求される種々の要求特性(低毒性、速硬化、形成する塗膜の物性等)を満足する光カチ オン硬化型材料は未だ提案されていない。

  本研究は溶媒を使用しない光開始重合に適した重合性基の検索、適切な重合性基を有す る光開始重合系の設計と光硬化材料の開発を目的とした。

  本論文は7章から構成されている。

  第 1章 は 序 論 で あ り 、 本 研 究 の 背 景 お よ ぴ 目 的 に つ い て 述 べ た 。   第2章でiま環状エーテルの塩基性を分子軌道法により見積もった。カチオン開環重合に おいては、環状化合物の塩基性と環歪みエネルギーがその反応性に大きく影響するが、環

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状 化 合 物 の 塩基 性に つい ては、 簡便 な測 定法 はこ れま でに 提案 され てい ない 。本 研究で は 、環 状エ ーテルの塩基性の見積りが半経験的およびab initio分子軌道法を用いた計算機 化 学に より 可能 であ るこ とを 見出 した。 そして、本予測法に基づきオキセタンが重合性基 と し て 優 れ てい るこ とが 示唆さ れた 。そ こで 、3―エ チルー3― (フ ェノ キシ メチ ル)一 オ キ セ タ ン を 分 子 設 計 し 、 そ の 光 カ チ オン 重合 性をrealtimeFT‑IR法に より 検討 した結 果 、オ キセ タン が光 カチ オン 重合 に対し て計算予測通り高い反応性を有していることが明 ら かと なり た。

  第3章では 半経 験的 分子 軌道 法を 用い た計 算機 化学 によ り、 三員環 環状エーテルである オ キシ ラン と4員 環の オキ セタ ンの カチ オン 開環 重合 機構 を検 討した 。オキセタンのカチ オ ン重 合に おい て、 少量 のオ キシ ランの 添加によルオキセタンの重合が加速されることは 以 前に 報告 され てい たが 、そ の機 構につ いてはこれまでに明確にはなっていなかった。半 経 験的 分子 軌道 法を 用い た計 算機 化学に より 、オ キセ タン の重 合で はSN2反応に起因した 導 入 期 間 が 存在 する こと 、一方 、オ キシ ラン の重 合反 応は 競争 的なSN1とSN2反応 により 進 行す るこ とを明らかにした。また、この計算機化学に基ずく重合機構により、real time FT‑IR法を用 いて オキ シラ ンと オキ セタ ンの 反応 性を 比較 した 実験結 果が十分に説明でき た 。

  第4章では オキ セタ ンの 光カ チオ ン重 合に おけ るラ ジカ ル反 応関与 の高速重合について 検 討 を 行 っ た。 光カ チオ ン重合 にお いて は、 オニ ウム 塩を 光酸 発生 剤と して 使用 してお り 、こ の反 応機 構は オニ ウム 塩が ラジカ ル反応により分解し、酸を発生する機構が提案さ れ てい る。 本研 究に おい て、 窒素 中でオ キセタンの光カチオン重合を行った際、オキセタ ン の重 合速 度が大きく加速されることを見いだした。real time FT‑IR法を用いた反応性の 検 討、 およ び、 生成 ポリ マー の分 子量分 布の検討により、オキセタンの光カチオン重合に お いて ラジ カル 反応 関与 によ る光 開始剤 の分解反応(酸発生反応)が連鎖的に生じ、その 結 果、 オキ セタ ンの 重合 速度 が大 きく加 速されること、空気中の重合においては発生した ラ ジカ ルが 酸素 によ り失 活す るこ となど を明 らか にし た。

  第5章では オキ セタ ニル 基を 有す る多 官能 性オ リゴ マー の設 計につ いて検討を行った。

光 硬化 材料 の設 計に おい て、 良好 な物性 を有する硬化塗膜を得るためには重合性基の選択 の みな らず 、多 官能 性オ リゴ マー の主鎖 構造の選択が重要である。光カチオン重合による 光 硬化 材料 に適 した オリ ゴマ ーの 主鎖構 造を明らかにするため、主鎖中に種々の官能基を 有 する26種 類の オキ セタ ンオ リゴ マーを 合成し、real time IR法、ゲル化時間測定、およ び 光 DSCを 用 い て そ の 反 応 性 と 主 鎖 構 造 と の 関 係 を 明 ら か に し た 。   第6章では 側鎖 にオ キセ タニ ル基 を有 する 新規 反応 性ポ リマ ーの合 成とその光カチオン 重 合 性 に つ い て の 検 討 を 行 っ た 。3ー エ チル‑3一 (( オキ シラ ニル メト キシ )メ チル)

― オキ セタ ンの オキ シラ ン環 を選 択的に アニオン重合すると、副反応を生じることなく側 鎖 にオ キセ タニ ル基 を有 する 新規 反応性 ポリマーが高収率で合成できることを明らかにし た 。ま た、 生成 した 反応 性ポ リマ ーが光 カチオン重合に対して高い反応性を有しているこ と も見 出し た。

  第7章は、 本論 文の 総括 であ り、 各章 にお いて 得ら れた 重要 な結果 を簡潔にまとめた。

  本研 究で設計されたオキセタニル基を有する光開始重合系は無溶剤型の光硬化材料とし て有用であり、現在の有機溶剤問題を大きくクリアすることができる新規光硬化材料と.な り得ることを示した。

(3)

学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授

戸倉清一 西   則雄 横田和明 覚知豊次

     学位論文題名

Design and Application of Photo −Curable Oxetane System

(オ キセ タニ ル基 を有 する 光開 始重 合系 の設 計と光硬化材料への応用)

  有機 溶剤 を用 いる 材料 系と して コー テイ ングや塗装などが広く一般に用いら れ てい るが 、近 年有 機溶 剤の 大気 中へ の拡 散による環境破壊が問題視されてい る 。こ のこ とを 改善 する ため の有 用な 技術 として、本質的に無害である水を溶 剤 とし て用 いた 水性 樹脂 材料 と無 溶剤 型で ある光硬化(重合)型材料が注目を 集 めて いる 。水 性樹 脂の 塗膜 を得 るた めに は、水の蒸発に多大なエネルギーが 必 要で ある が、 無溶 剤型 であ る光 硬化 型材 料はその重合速度が速いため、硬化 に 必要 なエ ネJレギーは少ない。これまで、光硬化型材料として、主に重合性基 と して アク リル 基を 有す る重 合系 に関 する 研究が行われてきているが、重合様 式 がラ ジカ ル重 合で ある ため 、空 気中 の酸 素により重合が阻害されること、ま た 、最 近ア クリ ル基 を有 する 材料 が発 ガン 性を有することが明らかになり、ア ク リ ル 基 に 変 わ る 新 規 な 反 応 性 基 を 有 す る 光 硬 化 材 料 が 求 め られ て い る 。   この 様な 背景 にあ って 、本 論文 では 、計 算機化学を用いて無溶剤夕イプの光 開 始重 合に 適し た重 合性 基を 理論 的に 検討 し、更に、適切な重合性基を有する 光 開始 重合 系の 設計 を基 礎に 新規 な光 カチ オン硬化材料の合成について詳しく 議 論し てい る。 本論文は七章からなり第一章でiま光開始重合系の必要性や新し い 重合 性基 を用 いた 光硬 化材 料へ の応 用な どの背景、目的およびその意義につ い て述 ぺて いる 。

  第二 章で は、 これ まで 簡便 な測 定法 カ瀧 案されていなかった環状エーテルの 塩 基性 の見 積り が半 経験 的お よびabinitio分子軌道法を用いた計算機化学によ り 可能 であ るこ とを 見出 じた 。そ して 、本 予測法に基づきオキセタンが重合性 基 とし て優 れて いる こと が示 唆さ れ、 この ことをオキセタンの光カチオン重合 に り実 証し た。

  第三 章で は、 半経 験的 分子 軌道 法を 用い た計算機化学により、三員環環状エ ー テル であ るオ キシ ラン と4員 環の オキ セタ ンの カチ オン 開環 重合 機構 を検討

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した。半経験的分子軌道法を用いた計算機化学により、オキセタンの重合では 昂2反応に起因した導入期間が存在すること、一方、オキシランの重合反応は競 争的なSN1とSN2反応により進行することを明らかにした。また、オキシラン とオキセタンの反応性を比較した実験結果はこの計算機化学に基ずく重合機構 により十分に説明できた。

  第四章では、窒素中でオキセタンの光カチオン重合を行った際、オキセタン の重合速度が大きく加速されることを見いだした。real time FT‑IR法を用いた 反応性の検討、および、生成ポリマーの分子量分布の検討により、オキセタン の光カチオン重合においてラジカル反応関与による光開始剤の分解反応(酸発 生反応)が連鎖的に生じ、その結果、オキセタンの重合速度が大きく加速され ること、空気中の重合においては発生したラジカルが酸素により失活すること などを明らかにした。

  第五章では、良好な硬化塗膜物性を有する光硬化材料を得るために、オキセ タニル基を有する多官能性オリゴマーの設計を行った。主鎖中に種々の官能基 を有する26種類のオキセタンオリゴマーを合成し、光カチオン重合による光硬 化材料に適したオリゴマーの主鎖構造を明らかにした。

  第六章では側鎖にオキセタニル基を有する新規反応性ポリマーを合成し、こ のポリマーが光カチオン重合に対して高い反応性を有していることも見出した。

  第7章は、本論文の総括であり、各章において得られた重要な結果を簡潔に まとめた。

  以上のように、本論文で設計されたオキセタニル基を有する光開始重合系は 無溶剤型の光硬化材料として有用であり、現在の有機溶剤問題を大きくクリア する新規光硬化材料となることが大いに期待される。

  審査員一同は、これらの成果を高く評価し、また研究者として誠実かつ熱心 であり、大学院課程における研鑽や単位取得なども併せ申請者が博士(地球環 境 科 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 充 分 な 資 格 を 有 す る も の と 判 定 し た 。

参照

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