博 士 ( 理 学 ) 土 門 大 将
学位論文題名
Studies toward Total Synthesis of Ciguatoxin 3C ( シ ガ ト キ シ ン 3C の 全 合 成 研 究 )
学位論文内容の要旨
シガテラは、熱帯及び亜熱帯海域のさんご礁周辺に生息する毒魚によって引き起こされる食中 毒である。シガトキシン類はその原因物質であるが、天然からの供給量は極微量であるため、そ の生物学的研究のためには合成化学的供給が必須である。また、多数の中員環状エーテルがトラ ンス縮環しているという非常に特異な構造は、多くの有機合成化学者の興味を引き、魅力的な合 成標的と なって いる。申請者はシガトキシンの類縁体の一種である、シガトキシン3Cを全合成 研究の標的として研究を展開した。.
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シガトキシンのような巨大分子を合成する際には、分子をいくっかのフラグメントに分割し、
それらを合成後、連結していく収束的な合成が適している。申請者は、右側のフラグメントであ るIJKLM環部5の合成を行った(Scheme1)。tri‑〇‑acetyl‑D‑glucalを出発原料としてI環部2、L環 部3を合成した。続いて、両者をアシルアニオン等価体を用いるカップリング反応により連結し た 後、還元 的環化 反応によ り、K環を構 築して4ヘ導 いた。2回目の還元的環化反応と、M環の ラジカル環化を経て、IJKLM環部5の合成を完了した。
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次に、 左側フ ラグメン トのABCDE環部と 連結し 、分子の 中央部分FGH環を構築する方法論の 開発を行った。その際、anti‑lっ2−ジアルコキシ構造をどのように構築するかが課題となった。申請 者はIreland‑Claisen転位を用いてその問題を解決しようと考え、研究を行った。その研究途上で、
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2‑3‑alkoxy‑2‑propenyl alkoxyacetate6をIreland‑Claisen転位させると立体選択的にanti‑2,3‑ジアルコ キ シ エ ス テ ル8が 合 成 で き る こ と を 見出 した(Scheme2) 。さ らに 数段 階を 経 て、 トラ ンス 縮 環エ ー テ ル9に 導 い た 。 こ の 方 法 論 は シ ガト キシ ンの みな ら ず、 他の トラ ンス 縮 環ポ リエ ーテ ル 化合 物の合成にも応用 できると期待される。
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Scheme2.
次 に 、 申 請 者 は 左 側 セ グ メ ン トABCDEF環 部 と 右 側 セ グ メ ン トIJKLM環 部 を 連 結 し 、GH環 を 構 築 す る こ と で 、CTX3Cの 全 合 成 を 達 成 し よ う と 考 え た 。 そ の 際 、ABCDE環 上 に す で に 存 在 す るE環 にF環 を 増 築 す る 方 法 論 の 開 発 が 必 要 で あ っ た(Scheme3) 。
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10 11 Scheme3.
そ こ で 、 申 請 者 は 上 述 の 方 法 を 応 用 し て 、E環 にF環 を 増 築 す るこ と を計 画し 、モ デル 化 合物 19の 合 成 を 目 指 し て 研 究 を 行 っ た(Scheme4) 。12と13の 縮 合 に よ り14ヘ 変 換 後 、14の Ireland‑Claisen転位 によ り、 立 体選 択的 に15を合 成 する こと がで き た。15か ら数 段階でジェンヘ 誘 導 し 、 閉 環 メ タ セ シ ス 、 そ の 後 の 官能 基 変換 を経 て、E環 部16を効 率 的に 合成 する こと に 成功 し た。以上、lreland‑Claisen転位を応用してantiー1,2‐ジアルコキシ構造を立体選択的に合成し、エ ー テ ル 環 を増 築 する 方法 論の 有用 性 が確 認さ れた 。こ の 方法 論の さら な る応 用と して 、16を 転位 前 駆 体17に導 き、 再度Ireland‑Claisen転 位を 行う こ とで 、18が得 ら れる と考 えら れる。また、官 能 基変換、閉環メタセシス、側 鎖導入を経て、19ヘ導ける と考えられる。
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以 上 、 申 請 者 は シ ガ ト キ シ ン3Cの 全 合 成 研 究 の 一 環 と し て 、右 側 セグ メン 卜の 合成 を 完了 し た。 また 、不斉 転写型Ireland‑Claisen転位 を用いて、立体選択的にanti‑2,3‑ジアルコキシエステ ル を 合 成 す る 方 法 を 開 発 し た 。 さ ら に、 そ の手 法を 応用 して 効 率的 にE環部 を合 成し 、こ の 方法 論 が 環 状 エ ー テ ルの 合成 や、 すで に 存在 する エー テ ル環 への 別の エー テ ル環 の増 築に 非常 に 有用 で ある こと を実 証し た 。
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学位論 文審査の要旨 主査
副査 副査 副査 副査
教授 教授 教授 教授 准教授
鈴 木 孝 紀 及 川 英 秋 谷 野 圭 持 坂 口 和 靖 藤 原 憲 秀
学位論文題名
Studies toward Total Synthesis of Ciguatoxin 3C ( シ ガ ト キ シ ン 3C の 全 合 成 研 究 )
学 位 申 請 論 文 「Studies toward Total Synthesis of Ciguatoxin 3C」 は 、 熱 帯、 亜 熱 帯海 域 に 発 生 す る 食 中 毒 の 原 因 物 質 で あ る 巨 大 ポ リ エ ー テ ル 化 合 物 シ ガ ト キ シ ン の 全 合 成 研 究 に 関 す る も の で あ る 。 申 請 者 は 、 糖 を 出 発 物 質 と し て 得 たI環 部 及 びL環 部 エ ー テ ル の カ ッ プ リ ン グ と 続 く 還 元 的 環 化 反 応 を 利 用 し て 、 右 側 セ グ メ ン ト で あ るI JKLM縮 環 セ グ メ ン ト の 合 成 を 達 成 し た 。 す で に 合 成 が 達 成 さ れ て い るABCDEセ グ メ ン ト と の 連 結 に 必 要 なF環 部 分 の 効 率 的 を 増築 方 法 の開 発 の た め、Z−3−alkoxy―2ーpropenyl akloxyacetateを基 質としたIreland―Claisen 転 位 反 応 を 検 討 し 、 閉 環 メ タ セ シ ス(RCM)反 応 を 組 み 合 わ せ た 方 法 が ト ラ ンス 縮 環 エー テ ル 構築 に 有 効 で あ る こ と を 示 し た 。 本 方 法 論 は 、 環 構 築 後 の官 能 基 を手 が か りと し て 同反 応 を 繰り 返 す こ と で 、 連 続 し た 縮 環 構 造 構 築 が 可 能 で あ る と い う 特徴 を 持 ち、 シ ガ トキ シ ン のみ な ら ず他 の ト ラ ン ス 縮 環 ポ リ エ ー テ ル 合 成 に も 有 効 と 考 え ら れ る 。以 上 は 合成 有 機 化学 お よ び天 然 物 有機 化 学 分 野 に お い て 非 常 の 高 く 評 価 さ れ る 成 果 で あ る 。 よ って 著 者 は、 北 海 道大 学 博 士( 理 学 )の 学 位 を授 与 さ れる 資 格 あ るも の と 認め る 。