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研究ノート
資本費概念の研究
井 上 勝 人
Ⅰ 序
現代企業における経営者の基本的職能の−つとして、投資政策の合理化・計画化が要請 されていることほ周知の通りである。このことほひとり企業自体の問題としてのみならず
(1)
社会経済的影響の大なる面から考えても,それの追求は重要な意義を香しており,こ.こ紅 投資水準の如何を決定する要ともいうべき資本費についての解明を,現段階におし、て到達
した範囲内において整理し定義づけようとすることが本稿の試みである。
思うに経営の最高意思決定問題に関して,最も復雑にして−煩項な課題ほ資本投資に関連 して生ずる諸問題であるといっても過言でほなかろう。資本投資の問題にほ.期間的配慮,
それ紅基づく人的考慮(労働問題)などのさまざまな広汎なる要因を含蓄せしめねばなら ず,往往にして最高意志決定の方向を誤らしめる可能性を潜在するからである。ビジネ
ス・,エコノミックスと・一般に称せられる一番の人々の研究においてほ,この問題を資本予
(2)
算制度なる一・の企兼内事務的計数的統括手段としてその体系化が試みられているが,その
(S) 基盤となる資本費紅ついての解釈ほ.未だ成熟した定義がないようである。資本費ほ∵応留
(1)近代経済学の投資理萄の説くところ紅よれほ,投潜水準の如何が,所得の増加,高度 の雇傭を確保する鍵であり,景気変動を左右する規定的要因であるところから,企業の
投資政策の計画化・合理化は強い社会経済的関心の対象ともなるのである。
(2)J.Dean;Capital Budgeting,ManagerialEconomics.Spencer and Siegelman;
ManagerialEconomics.H.Bie工man,Jr.and S‖Smidt;The Capital Decisionリ etC 資本予算(CapitalBudgeting)とは,将来の山L定期間において」予測される資本支出
の需要量と供給量を・討慮し,−・定の客観的な収益率によって,採用すべき投資提案を選 別決定して企業経営全体の投資計画を立案し,更にその実施過程においてほ,この予算 に基づいて投資活動を統制せんとする管理手段である。(岡本康雄,資本予算と私由資 本形成の合理化,金融経済48号)拙稿「経済管理の展望」(香大経済論叢35巻3一号)
(3)企業の資本調達にほいろいろな方法があり,その場合それぞれの源泉から定義される 資本費概念は慈恵的であり,気まぐれなものである。
H・ビャ−マン/S・レユ.ミット著 染谷恭次郎/鎌田信夫訳「資本予界の決定方法」
116頁〜140頁参照9
資本費概念の研究 ー95・−
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(4) 保利益の機会原価として定義され,しかも拒否率の基準として投資提案選別の絶対的機能
を付与されているが,なおそれだけに資本費自体の究明が若干蔑しろに過ぎているよラに 思われる。ここにおいてわれわれは資本費自体の考察を主としてSpencerandSiegelman・
ManagerialEconomicsによりながら掘りさげるこ.とによって,企菓の投資政策乃至私的 資本形成の依るべき基盤を開明たらしめることを目的とするものである。
∬ 資本費概念の混乱
l.い
資本費ほ投資提案の適jf:拒否率(optimum cut off rate)乃至受諾基準(acceptance
(6)
cIi佃・ion)として.機能することほ先学の芋張するところであるが,しからばそれを経営の 現実により接近して考察する場合,具体的には如何なる方法によってそれを測定し,具体 的に何を資本費として把握するかが問題となろ。企業の資本供箪の源泉としてほ留保利 益,普通株,優先株およぶ支払手形を含むあらゆる利付債務が含まれるが,それらが資本費 乃至搾否率として活用されるが如き統−・的包供的測定概念が存在し得るであろうか。
伝統的経済理論の説くところによれほ,需要・供給なる鋏の両刃の二要因によって均衡
(7)
価格が成立するとされ,資本形成においてもその例外をなすものでほ.ないとされる0即ち 予測資本利益率の高低紅従って整序された提案(to be ar工ayedin descending oIde工 accordir)g tO theiIeStimated rates ofIeturn)とそれ紅対比する資本供給総額とが得
られるならば,資本需要表(demand sphedule for capital)を作成することが可能とな り,しかして資本供給総額と需要総額とが対応されて,その交叉点において望ましい投資
(8)
額が決定される。しかしながらこの理想的な決定方法ほ,現実にほ容易には活用でき得る ものではない。何となれば,拒否率として機能する点即ち常に周じ産模に於て:需要線と交 叉する唯叫・つの供給線を画くことほ極めて困難であるからである。換言すれは,資本供給
においてほ配当政策,資産ならびに負債構造,過去になされた資本投資,現在の収益力な ど多様な要因が資本供給表に顕在的潜在的に影響を及ぼし,このこ・とほての問題に関して
し4)J.Dean;ManagerialEconomics,p 574
(5)Spencerand Siegelman;ManagerialEconomics,plr398,p・400・正確にほ.,基本的 最低率(basicminimumIate)として将来の資本費を目安として設定され,収益率の 最低下限を確保する。J.Dean;CapitalBudgeting,ppl65−75
(6)J。Dean,ibid.,pp.585−599
(7)その代表として,Alfred MaIShall;Principlesof Economics・
㈲ Spencer and Siegelman,ibid・,prP399・
第36巻 軍2号
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資本費というものが,論理的な−・般原理をそのまゝ容認し得ない複稚性を内包しているこ とを意味するものである0従って贋本理論に関する文献におし
に或いほ慈恵的紅使用されているという認識がさし当って重要である。
Ⅲ 機会原価として.の資本費
.丁・Deanによれぼ,資本費の役割ほ,企業の資金を資本市場へ投資して得られる収益,即 ち留保利益が企業外に投資された場合紅あげるであろう基準収益を示すことに.よって留保
(9)
利益の俄会原価(OPpOrtunity cost ofIetained eaInings)を表現することにある,と して:いる。このことは企業の利益留保政策にとって蚤要な役割を果すことは首肯し得る が,資金の外部調達に関連しての資本費概念に関係づける場合にほ更に考察を必要とする。
(10) (】1)
Spencer and SiegelmaIlほVlLutz の借入率(borrowing rate)と貸出率(1ending Iate)の区別に及んで資本費概念の究明に踏み入っている。即ちこ.の両者の区別の混同ほ
資本費概念混乱の−一・原因を形成することを強謝して∵∵応両者の相違を重視するのである。
資金の調達にあたってたれが如何なる手段であれその借入率は新資本紅対して支払われる と予期される金額の近似的尺度を表わし,危険の度合によって変化するものであり,貸出 率は予憩される将来の資金の流れを現在に割引いたものとして授資選択の近似的尺度を表 わすものであって,資本市場における完全競争下匿おいては−・定である。資本費概念の構
成には両者ほ密接不可分の関係にあるとしても両者の漫然たる混同ほ絶対避けるべきであ り,時に前者を用いたり,また後者を用いたりして益々その曖昧さを増して−いるのであ る。そしてさらに借入率・貸出率なるもののそれ自体の櫨雑性,即ちN・・般紅 theinterest I−ate なる概念の不明確がその模糊性を加重しているといえる。
(12)
利子率乃至投資の利回りというものはSpencerによれほ,たゞ単−・なものとして存在 するのでほなく,利回りの型乃至構造(a patternor structureofinterest rates)と して存在するものである。実際において資本市場紅おいてほ満期,発行者,保護的便益
(protective convenants),優先権など紅よって,個々の利B]りが存在するが,しかしそ れらは一−・体として利子率の複雑な構造を構成しているのであり,また加えて利子では.ない
(9)J.Dean,ibid.,ph574.
(10)Spencer and Siegel皿ar,ibid.,p.403.
(11)F.and VLutz;The Theory ofInvestment of the Firm.
u2)Spencerand Siegelman,ibid.,p403,pp413−420.
資本費概念の研究
2二三9 − 97叫
配当を受ける権利を萌する多数多様な株式が参加してその後雑性に拍車をかけていると云 える。しからば劇体これらをどのように整理し明瞭ならしめることが可能であろうか。資 本費の概念が正しく役に立つように定義されなければ,われわれは投資基準としての拒否 率を実際に使凧することほできない筈である。
Ⅳ 未来所得
問題の鍵ほ未来所得(expected earnings yield)の概念を媒介として資本費に接近す ることにある。経営者は内部と外部のふたつの源泉から資本を調達することができるが,
これら両者の関連は極めて−密接である。
前述したように種々の投資機会を選別し,投資者(企共著)にとっての企尭外への投資 利益率がIendingIateであった。従ってこれにほ株式,権利などの取得を包含するが,
投資者の直面する投資機会の利益率はまた,経営体内部の多数の選択可能な投資琴案の配 列表における択一酌投資機会として内部投資の利益率を構成する。何となれば,それぞれ の投資機会ほあらゆる程度の危険,非金銭的利益不利益を包含して小るから単純にもっと も有利な利益率ほこれであると選別するわけ紅ほいかないからである。寧ろ必要なのほ利 益率の全体の・一層造のうち,いかなるものが当該企業にふさわしい投資機会の配列を提供
するかということと,経営体内部の投資機会が厳密にほ,同程度の危険をもった外部の投 資機会とのみ比較可能であるということのこ点を認識することである。産業から産業への 資金の流れの自由ほ,経営体内外部の同程度の危険の機会が存在することが暗示されるも のであり,それらの利益率の比較考塁を可能にするものである。
かくしで機会原価率(外部投資率)ほ内部投資を経済的に健全な基礎に立脚させるので あると考えられる。
この機会原価率を正しく測定しようと試みるに当って,もっとも論理的方法,所謂普通 株の「未来所得高(expectedearningsyield)」法があげられる
する理由ほ次の2点紅存する。
1.投資利益率が,その投資を可能にする斬らしい資金のコストより上回るならば,株
主に対する未来所得は,その投資を受諾することによって一層増加するものであり,会社
が株主の利潤追求をその最終的目標とするならば,このような株主の所得力の改善ほ投資 行動に対して必要な条件でもある
2.新賢金のコストは,現在の株価ではなしに,予灯される将来の所得率で公正に測定
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,,・・・−・9ざ・−l
されなけれほならない。現在の叫妹当りの株価は株券の売却によっ・て得られる金額を表わ し,予想される将来の所得ほ,企業の現在の資本における期待生産性を表わしている。か くして,普通株式の資本費は普通株主が希望する将来の配当を普通株の現在の株価と比較
(13)
することによって測定されるのであり,現在の資金と同等あるいはそれ以上の増分所得
(incrementalearnings)を鎮まなければ1棟当りの所得は減少する。ここにおいて明ら かな如く,上述の新しい資金とほ,普通株を売却することによって得られる資金を仮定し ているが,資金の調達ほ株式の売却のみによって尽きるものでほなく他の諸源泉,即ち留 保利益,長・短期負債,優先株の売却などによつも弄らされる。従ってそれら全般にわた
る相互の関係を解明しなければ問題ほ解決し得ないのである。しかし,ここに這いてLれ らの多様な資金源泉とそれらのコスト紅関係する基本的要素は,予想未来所得としての機 会原価であり,上述の様々な資金猟泉間に存在する関係を説明することほ,借入率と貸出 率概念とのもつれあった組み合わせを正当化するものとなるであろう。これらの点につい
て前者については,第Ⅴ茸で,後者についてほ第Ⅵ章,第Ⅵ正章でさらに考察を続けよ・う。
Ⅴ 留保利益
(14)
企業資本の完全なる支配を確立するためにほ,利益の洩れ(1eakages)を防止して全利 益を配当金として分配し,経営者にとって会社拡張が必要と琴められる場合には,その程 度に応じて新株を発行して必要な資金を獲得すれはよい,との理想主義的な主張が多くの 経済学者によってしばしば唱えられたことがあったが,この主張ほ様々な実際的な理由紅 よってナンセンスであることほ自明の理である。しかし財務的内部拡張に要する適当な資 金の獲得という点に関してのみ.については論議の立脚点を提供している,とみ.ることがで きる。
(15)
Bierman and Smidtによれば,利益が会社内部に留保されるならば,株主ほその利益か ら支払われたほずの当期の配当を失うが,この留保利益が,L会社の将来の利益を増加する ために荷役潜され,その結果として会社の株式の価値が高まれば,株価の騰葺は当期の配 当が低かったことを埋め合わせてあまりあろう。もしそうであるとすれば,株主ほ,投資 那)H・ビャーマン/S・ンユミット著,染谷恭次郎/鎌田信夫訳「資本予算の決定」117−
118黄。
(14)Spencer and Siegelman,ibid。,p405 u5)Ibid.,pp405−406・
資本費概念の研究 ー 99 − 231
が却下され,現金配当をもらう場合よりも有利になる,と言っているが,要するにこのこ とは,予想される将来の配当紅よって測定される機会原価率が留保利益のコスト決定に多 大の役割を果すことを物語るものである。
また,留保利益の洩れ,その主要なものほ税金であるが,最高税率が適用される株主か ら税金の全く課せられない(財団とか大学など)株主まで,その何れを対象とするかによ って資本費ほ全く変って−くる。即ちもし30%の税率が課せられると仮定した場合,全資金
が留保利益によって調達されると当該投資計画の収益ほ70%であり,新株発行による調達 の資本費が12%であるとするなら,留保利益による調達の場合ほ,8・4%となる。これに ょって資本費の問題は税率をどこに求めるか,最高税率と無課税の中間に求めるか或いは 株を持たない低所得者層を若干上回る率を適用するか,などの容易に解決の出来ない問題 を含んでいるこ.とがわかる。しかし,何はともあれ,留保利益によるか,新株の発行によ るかほ,将来予想所得として−の機会原価率如何にかかっているといえよ・う。
Ⅵ 長期負債
(16)
Spencerによれば,長期資本調達のための手段として社債券・銀行借入れ・優先株な どを使用することは,財務理論に言うところの「望ましい借入れ」(tIading on equity)
なる概念と関係する,として−trading−On−equityなる考え.方と資本コストについて,実 際的にほ.tIadi正g−On−equityは,資本コストを考え.る場合にほ全く逆の結論が得られるこ
とを指摘している。即ち負債が資本構造のなかに含まれてくると,その組み合わせによっ て,trading−On・equiti理論が無視或いは意識しなかった不可思議な作用が働らくことに ょって,負債導入が財務的に挺の役割(levetaged effecF)を果たすことになり,予想さ れる一株あたりの利益を増加させろ性質を有してくるのである。しかしその反面,破産の 危険と株主資本利益率が不安定になるということ,さらに経営者の自由を制約するという 不利益を負うことほ免れ得ない。かくして企菜の資本構造は資本コストに重大な影響を及 ぼし,経営者ほ最低費用の実現を目途して財務政策を考慮することが必要となり,実質負
(付言)
俵コスト(realcbst of borrowing)と持ち分コスト(cost of equity)との間には均等 の関係が存在する傾向が看取されのである。そし、てこの均等性のために,これらのコスト
を測定する最良の方法としてほ,株式に対する所得高を観察することであるということに
(161Ibid・,p406.
一封冗トー 第36巻 第2号 232 なる。菰し株式の所得高ほ客観的に測定t・摘旨であり,笑貿負偵コストは主観的で容易にほ
測定し嫌いからである。このことは,更紅最適資本構造の問題として解明されねばならな いが,負債と持ち分との相膏交渉の意義を認識することが最も重要である。
ⅥⅠ最適資本構造
(17)
実質負債コストが主観的であるこ.との意味は,Spencerによれば,ある経営者にとって 適切なコスト(moderate cost)と考えられるものでも,他の経営者にとって−ほ極端に重 荷となる場合がある ことを言っている。このことほ,次のことを緒果として招来してく
る。先づ第1に,限界実質負債コストと限界持ら分コストを均等ならしめる点を求める努力 を・試みても,負債と持ち分の組み合わせを客観的紅説明することほ不可能であること。第
2にそれにも抱らず経営者ほ常に何らかの方法でこれらの均衡を計ろうと努力していると いうことを示して:いる。即ち企業の資本費は,借入資本及び株式資本の費用牢依存すろの みでなく,実に企業が資本を調達する場合に,どのような種類の資本を・湘.合わせるかに大 きく依存しており,この適正な組合わせが基本的軋重要なのである。
しかしながら具体的な指針を僑求する経営者濫とっては,上述の帰結ほ新古典主義の教 戒として規範的な目的論的性質を有するものとして,実際的にほ疑わしいものと映ずるの
(18)
ではなかろうか。事実Spencer も言うように,限界負債と限界持ち分の均等ほ時として どうにか或る企業に生起することがあり得るとL・ても,この概念は実用的にほ経営者の指 針として有用でもないし,達成できそうにもないものなのである。しからば経営者にとって
の実際に活用可能な解決方法は何かというに,それほ非人格的な資本市場の命令(impeI−
SOnaldictates of the market)に耳をかすことなのである。しかし,それにも抱らず,
資本市場の命令ほ,後に示すように,依然として最適資本構造の構成を要求しているので あるが。
資本市場にお的る普通株の評価はそれがそのま1負債コヌトに反映する。然して,この 場合負債コストほ,必ずしも額面の現金支出利子(nominaIout−Of・POCketinterestch−
aI・ge)以上の現実のコストを考察の対象にしなぐてもよい。即ち長期負債の資本コストは その企業の長期債券に対する現在の債券に記徹されている利率である。もしその負債が,
(171Ibid、p407
(1鋸9)Ibid・,p408,
資本費概念の研究 ー叫JOノー−
233
少くとも普通株の所得力と等しい率の所得を鐘むことが期待され,かつ負債総額の占める 割合が資本構造の中で極めこ少いならば,資本市場ほ企業の所得が資本化される率を繍ず ることによって負債の導入を歓迎することになる。かくして実彗負債コストは実際に利子 より低いことが明らかになる。即ち,企業内における新規投資が株主に対して今期の配当 を増加するのと同じだけの効果が期待されるとき,負偵を増加させることが許容されるの である。このことほ,資本市場の要請することとして」他人麿本が株主資本に対して挺の 役割を巣たすと同時紅負潰比率の」朗ロは,債務不履行の危険(the riskofdefault)を増 加せしめ,資本市場化應いて株式資本紅影響し企業の収益力を反映するという意味におい
で,暗に.最適資本構造の存在を物語るものである。
、資本構造における負債対持ち分の最適割合は産米毎,また同じ産業内にあっても企業毎 に相当の範囲にわたって変化する。この最適構造の変化性は,最適朗番線造を構成するに 足る指針として役立つ基準を確立する問題を・一層複雑にするものである。その結果として 基準の正確度を計るということよりも,むしろ一・般的に芸当する原理の確立をもって満足
すべきであり,加えでこの一腰理でさえも現在なお存在するとみられる資本投資問題の空 所を埋めることにおいて大いに役滋つことは疑脚の余地がない。
(19)
Spenserによれば,この間題に対してほ,株式資本の所得高紅反恢することの意味を解 明することが問題接近の核心的方法であるとしている。即ち,年間平均未来所得(aveIage future annualeaInings)と故近.の平均株価の関係をみる場合に,棟々な評価可能乃至不 可能な要因が作用していることを指摘する。しかし長期的にはあらゆる重要な要因ほ,確 実性不確実性を闇わず,それら要因自身が所得と配当の記録の申に反映してノいると推論す
るのは誤りでほなかろう。従って,企業における経営者の能力,人的関係,競争上の地 位,新製品の開発鼠労働能率などの如き,比較的評価の困雉な要素を考慮しようと試み ることほ不必要でると主張できる。しかし,これらの要因は実際すべて重要な因子であ り,所得の型の決定を説明するためには大いに役立つものであって,未来所欄と配当の効 果に対して我々の必要とする資料を提供するもである。
以上示したように,或る企業の資本費は,数個の変数の函数であり,これらめ多くが農 本費画数の水準に措響壕あたえるのである。
\Ⅶ 書本塑概念の定弄
この稿のはじめにおいて,われわれは将来所得高(expected earnings yield)という
第36巻 第2号
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言葉で単純に栗本費を考察してJきたが,これほ適当でないことが今や判明した。企業が潜 本市場において如何なる割合が,良く均衡のとれた資本構造であるかを判断するとき,さ らに熱した概念とし七∴持ち分贋金のコストとしての資本費が鮮明になるのである。かく の如き贋本構造においてはじめて.,限界実質負債コストと限界持ち分資金とが等しいとい
うことが仮定されるのである。′もし企業が負債による棲端な挺作用を受けている場合に は,それが普通株所有の危険を含むために,限界実質負債コス=儲眼界持ち分資金コスト を超えることになり,当該企業はあまりにも保守的慎重に資本化すぎると判断され,また 付加負債ほ持ち分資金に要求されるであろうより低いコストを含むべきであると推透され る。即ち理論的にほ,株主贋本に代えて負債を導入することによって普通株の株価が下落 する点に,叔適資本構造が求められ,この負債を導入する垣前の資本構造が最適資本構造
(gO)
である。
新らたに資本調達をする場合,その調達手段として負債であろうと持ち分増加であろう と,選択的方法(alternative method)によってこそ眼界資本コストに影響を与えること ができると期待される。例えば,もし付加的に負債を導入するとすれば,すでに余り に多
く挺入れされていると考えられる企業においてほ,限界持ち分資金コストを増加させる。
それに反して,当該企業が持ち分財務によって普通株による資本調達をおこなうならば,
眼界実質負債コストは減少するであろう。これを要するに,資本を調達する場合の資本構 成如何によって,未来所得の額が相違し,資本費の水準は影響を受けざるを得ないと結論
(21)
することができる。
実際に企業の資本費に諺哲を与える資本構造を考慮した上で,当該企業の資本費を決定 するに際して,なお解決されるべき多くの問題がある。その第1ほ,最適資本資造の標準 を確立することであり,第2ほ.,特定企業の資本費がこの最適標準から逸脱する要因を説 明するに足る最適構造の可変性を究明する手段の解明である。資本費概念の実践的活用に とって,これら標準と手続きの精緻な組織を確立することほ,必要でほあるけれども,現 段階においてほまだ不可能である。可能であるならこの手続きを確立することによって資 本投資の合理化科学化ほ−・段と促進されるであろうが,この問題は極めて困雉な仕事であ る。しかしながら,この間題はこれまで考察してきたことを勘案することによって以前に
朗 染谷恭次郎ibid・,138頁
G21=Dean,CapitalBudgetings;pp 50−55.矢島基臣著「管理価格論の展開」163頁。
栗本費概念の研究
235 ′ ーヱ03′一
比して上手をこ処理することができる。兢々の関心ほ,資本費の測定に有用な便利なカ法を
発見しそれ紅到達することであり,この要求から資本市場の人気(tastes)と志向態度を勧 察しそれに適用させることが必要と考えてきたのである。資本市場の人気と志向態度の正 確な測定は必要であるが,あまりにも意味深長な行動を過ぶ必要はない。資本市場の動向 を通して資本彗発見の手がかりをつかむと共に,資本構造が最適の状態にあるかどうかを 決定するとき,現段階においてほ経営者ほある程度事情をよく知って−いる人々の直観的判 断に頼らざるを得ないのである。
Ⅸ 結
われわれは以上において資本費概念の究明を試みてきた。それは陰に陽に企業の資本釘 画を通じて織り込まれるものであり,それ故に重大な意義を有するものである。そして資 本計画領域における経営者の意思決定問題に関連することにのみ問題の焦点が絞られるこ
とほ貿本費問題に内在する必然性であるが・それだけに資本コスト概念の複雑軋怒温性 の前に厚い壁を感ずることを免れ得ない0しかし企業の内部投資政策に対して正しい指針 を得るためにほ,資本コスト概念は充分に検討されなけれほならずまがりなりに.もわれわ れの到達した結論ほ,巌適贋本構造に基づき,未未来所得によって測定される持ち分資金 コスト(the costof equity funds)としての資本コスト
衛する為に.ほ,資本■市場が最適贋本構造として稚魚するもの,即ち或る特定の企業にとっ て如何なる割合が最適贋本構造であるかむ丹念に確かめて炭ることである。このことほケ hス毎に奥本費の型(CaPitalcost patterns)を調査し,投資態度を認識することによっ
て−,更に企業の資本費の評価を公正ならしめることを必要ならしめるのである。
まことに投資の選択ほ,企業の将来の発展に影響するものであり,経営者にとってほ戦 略的な意思決定を意味する。ここに於て異本コスト概念が役にユいつように定義されること ほ焦眉の急であり,更にその研究が掘り下げられることが期待されるのである。
(付 言) equity概念は,広義には企業財塵叱対する資本卓および磁極者の権利また ほ請求権と解せられるが,法律上,持ち分という場合には,株式会社における株式を指 す。(会計学辞典 P・44 佐藤孝一う
本稿におけるequit.yは,法律上の解釈紅おける株式と解するのが妥当である。