資本主義と農業問題(1.)
漆 原 緩
序
現在帝国主義の支配強化のもとで,資本主義をめぐるあらゆる矛盾が極度に 尖鋭化しているが,「資本主義のもとでの農業における諸矛盾の総体」としての 農業問題もまた深刻化の一・途を辿り,極めて−複雑な様相をおぴてきている。こ のような状況のもとで,前向きに問題を解決する立場から,この深刻で複雑 な農業問題を理論的軋正しく解明・把擾することが強く要請されている。′J\稿 の意図は.,資本主義紅特有のものとしての農業問題の諸側面について考察を試 み,筆者なりにこのような要請の−・瑞に応えようとするものである。
いうまでもなく,農業問題についてはすでにマルクスやカクツキ−やレーニ ンなどがあれこれの著作の申で,断片的に.あるいはややまとまった形で,意見 を表明している。そこでこれらの古典的諸著作を基底としつつ筆者なりに農米 問題についての理論的な整序・再構成を試冬,上匿のぺた実践的要請の−・端に 応える努力をしてみたいと思うのである。
なお,論述の過程で聾者が疑問と考える諸論者の見解に.ついては,本文ない し脚注に・おいて簡単に・紹介のうえ批評を加え/ておいた。
Ⅰ 農業生産力の相対的低下と「都市による農村の搾取」
1
ブルジョア社会のもとで農業生産力ほ飛躍的な発展向上を示した。農業生産 の規換拡大,手道具から機械利用への・自給肥料から人工肥料への転換,効率 的な土地利用や栽培方法の導入,土地所有からの農業経営の分離,中世的・身 分的隷従関係からの農民の自立化等が進行した。
しかしながら,ブルジョア社会における農業生産力の発展向上には,メダル
_.1_._、...血∴ここ∴二.__ニー
第45巻 寛3号 292
− 2 −
にほ襲があるように,つね軋暗黒面がつきまとっている。この社会では,農業 生産力の前進の行く手には,いつも非常に強大な諸因難が立ちふさがって/い る。農業生産力が向上すればするはど,その反対傾向としての諸困難もまた増 大する。工業においても,何らかの生産力向上にとっての諸因難が存在してお り,それはブルジョア社会でほさけられないことである。大衆の消費の制限 性,生産の集中に必然的につきまとう生産の分散・分裂,市場価格のたえざる 変動,利潤の変動等々ほ工業でも生産力の順調な展開をさまたげる。しかし農
●●●●●●●●●●
共にほ,これら工業にもみられる共通の困難のほかに・独特の,、はるかに強大な
●●●
諸因難が存在している。
農業生産力が向上すればするほど,工業よりもはるかに強大な諸因難が増大 することは,農発生産力がいつも工業にくらべてひどく立ち遅れているこ.とを 患味している。ユ共にくらぺると農業の生産規摸ほまだ非常にノJ\さくて零細経 営が広汎に存在しており,機械化の程度も遅れている。また,土地や機械や役 畜などの生産諸手段の合理的科学的な取り扱い方などの面でも劣■っている。農
●●●■● ●●●●●
米生産力は絶対的収は向上するが相対的に.ほますます低下する。マルクスは
『剰余価値学説史』の中でくり返しくり返しこのことを指摘している。 「農業
●●●●●
は,たとえ絶対的にはより生産的になったとしても,相対的に腰より不生産的 紅なったのである。このことほ,単紅ブルジョア的生産のまったく奇妙な発展
(1)
と,それに固有な諸矛盾を示しているにすぎない」「農業でほ相対的に手仕事 がなお墓きをなしでおり,また農業よりも製造工業を急速に廃展させることが
(2)
ブルジョア的生産様式紅特有なものだからである。」「農業はプル汐ヨア的基礎
●●●●●●●●●●●
のうえでほ,エ英よりも相対的紅より不生産的紅,またほ,よりゆっくりと労
(3)
働の生産力を発展させるだけである。」レ−ニンも同様のことをのべている。「農
(1)KarlMayX−Friedrich EngelSWerke,Band26,2Teil,Instituteftir Marx−
ismus−Leninismus beim ZK deISFD,Diez Verlag,Berlin,1967,SS.12−13。ド イツ社会主義統十・党中央委員会付属マルクス・レーニン主義研究所編,時永淑訳『㌧マ
ルクス・エンゲルス全集.』第26巻第2分冊,大月書店,1970年,8ぺ一−ジ。
(2)1bid,Sい87い同上雷,111ぺ一汐。
(3)1bid,S…88… 同上竃,112ぺ−ジ。
293 資本主義と農業問題(1) ー β −
業は発展が工業にたちおくれている。−これは,すべての資本主義国に.固有 の現象であって,しかもこの現象は,国民経済の種々の部門間の釣合の破壊や
(4)
,恐慌や物価騰貴のもっとも奥深い原因の一・つを成すものである。」
●●●●●
われわれは資本主義のもとでの農業生産力の発展向上の全過程をつねにその
…=○●●●○…●○●●●
二面性において,弁証法的関係に・おいてのみ把握する。農業生産力の発展向上 とその諸因難の増大とを機械的に切り離して理解することは出来ない。諸困難 の増大のために・全く農業生産力は停滞してしまうとか,農業生産力の向上のも とでは何らの諸因難もないというように考えるこ.とはとうてい出来ないことで
(5)
ある。諸困難の増大は合理的農業の発展をさまたげるが,他面ではそれはたえ
(4)ソ同盟共産党(ポリシェダイキ)中央委員会付属マルクス・エンゲルス・レー・ニン 研究所編,マルクス・レ−ニン主義研究所訳『レ㌧−ニ∵ン全集』算22巻,大月書店,19 69年,101【102ぺ一汐。
(5)周知のよう紅現在日本において農業問題の特異な把握を試鼻ているものとして,い わゆる「宇野理論」がある。宇野弘蔵教授ほ次のよう紅のぺている。「わが国紅おけ る農業問題ほ,資本主義の金融資本の段階に,多かれ少かれあらゆる国々に共通に現
われる農業問題の,特殊形態といってよい。それは端的にいえば,資本主義社会紅あ って,その商品経済に支配せられながら,農業自身は資本主菜的経営をなしえ.ないと いう点にある。いい換えれば資本主義的紅解決しえないということに.問題があるので ある0資本主義の発展による分解自身も,たしか
い。しかし農村の分解が資本家的経営に結果する限りでほ,それ自身は資本主義匿と って解決しえない問題ではない。一応は解決される尚題である。」(宇野弘蔵『農業問 題序論』青木書店,1965年,194ぺ−・ジ)。また大内力教授ほこれとはば同じようなこ とをいっている。「どこの資本主義国でも,その資本主義の生成の段階=資本の原始 的蓄積の段階とその自由主義的な発展の段階では,多かれすくなかれ農民層が両極に 分解しつつ資本家的農業経営が発達してゆくが,帝国主義段階になるとかえって資本 家的経営は発達しなくなるのみでなく解体さえしはしめ,小農経営が拡大されるよう になる0」(大内力『農業史』く日本現代史大系>東洋経済新報社,1960年,10ぺ一汐)。
「資本主義が帝国主義段階にはいったのちにおいてはどこの国でも,そしてイギリス においてさえ,農業が資本主義化する傾向はみられなくなるという事実をもう一度指
摘しておかなければならない。なぜそういうこと紅なるかについては,日本の事実と の関連においてのちに明らかにされるであろうが,きわめて−・般的紅いえばそれは,
この段階では資本主義が純粋化する傾向を失い,かえって独占を形成するようになる
ということと対応した動きなのである。こうした事実はヨ一口ツパでは十九世紀末か らあらわれているし,日本やアメリカでもニ○世紀にはいってからみられるようにな
る。そしてそれはかっては,資本主義は小生産者的中間屑をたえず分解し,社会をプ
ル汐ヨアジ−とプロレタリアートという二大階級の対立に整理をしてゆく傾向をもつ という,マルクスの命題にたいする修正主義者のひとつの論拠として利用された事実
でもある。もちろん修正主義者のように,資本主義の特定の段階,しかもそれが変質
算45巻 第3考 294
−・4 −
ざる農業生産力の発展向上を前提とし1てのみ生ずる。それほ,しばしば,反対 に作用して−農業生産力の発展向上に刺激をさえ与える。「合理的農業の完全な発
●●●●●■●●●
展にたいする『障害』となると同時に,資本主義的農業の発展に刺激をあたえ
● (6) る『困難』がある。」
農業生産力の発展向上とその諸困難の増大という資本主義のもとでの農業に のみ特有のこの矛盾の拡大,そのあらわれとしての農業生産力の絶対的向上と その相対的低下の問の矛盾の拡大ほ,農業問題の第一・の主要内容を,しかもそ の最も基本的な内容を構成している。(この農業生産力の運動における矛盾は,
農民層の分解の金運動や農業の不均等発展と農業恐慌など紅おいて:そのより具 体的か展開された姿をあらわす。農民層の分解や農業の不均等発展と農業恐慌
しつつある段階に.あらわれる現象をもって,マルクスが資本主義のもつ一・般的傾向と して明確紅した命題を否定することは誤りというしかない。しかしその事実の拇摘そ のものは正しかったのである。そして日本においてもこの段階で明確になってくるい わゆる申虚標準化傾向や自作化傾向は,このよう紅塵実の資本主義化の展望が失われ たところに生ずる現象なのである。/そこで,固有のいみ紅おける農業問題が発生する のも,このような条件のもと紅おいてのことである。もともと小農民といった存在形 態ほ.,資本主義経湊には適合しえないものであるから,それが資本主義のなか紅まき
こまれればそ・とから矛眉が生ずるのはとうぜんのことである。しかし資本主義がなお 農民層を分解し,農業をも資本家的生産によって支配しうる展望をもつかぎり紅おい てほ.,この矛盾は資本主義にとって解決しえない矛眉ではない。だが,小農民の存在 をもはや資本主義ほいかんともしえ.ないということになれば,この矛盾は資本主義の 解決しえない虚業問題ということにならざるをえないであろう。」(大内カ『農業史』
14−15ぺ−・ジ)。このように「宇野理論」に.よれば,農業が資本主義化しないところ に,それが非資本主義的な部門としてとり残されているところに農業問題があるもの とされている。(このことは,農業生産力たは一定の限度があって,結局は停滞してしま うことを意味している。
う紅なるということは,農業生産力がある程度以上は絶対に伸びないことを意味する からである。)しかし,われわれほ,資本主義に固有のものとしての農業問題を農業が 非資本主義的な部門としてとり残されるという点紅おいてではなぐて,農業がますま す資本主義化されて:ゆく限り紅おいてのみ,また,農業問題軋,農業がますます資本 主義化してゆくのに比例して大きくなり深刻化してゆくものとしてのみ理解する。す なわら,虚業生産力がたえず発展向上してゆくところに.おいてのみ,またそれ紅比例 してのみ農業問題が生ずるのであると考える。なお「宇野理論」においては,農業問
題は帝国主義の段階においてはじめて本格的に登場したとしているが,われわれは農
業問題はすぐあとでみるよう紅,資本主義の確立=大工業の登場ととも紅本格的に登 場したものと考える。
(6)『レーニン金魚』第4巻,1969年,157ぺ一汐。
資本主義と農業問題(1)
295 − 5 −
などは.,農業問題の第ニ,算三の主要内容を構成している。)
農業生産力の発展向上における矛盾ほ,より古い私有制度としての土地所有
(その経済的表現としての地代の増大や土地価格の騰貴など)をのぞけば,資 本主義的生産関係それ自体に根ざしている。資本主義的諸関係が−・方でほ農業 生産力の飛躍的な発展をもたらしてきたとすれば,同じこの諸関係が他方では 農業生産力の順調な発展向上に対して工某とほ.くらぺものにならないはどに強 大で多種多様な諸困難を提供してきたのである。(土地所有が提供してきた諸困 難については,あとで別にとりあげる。)より具体的にいえば,それは,資本主 義のもとでの都市(エ業)の二重の役割から,都待と農村との関係に.おける二 つの側面から生ずる。都市(エ共)こそが,一身でほ.農村に刺激を与えて農業 生産力の飛躍的な発展向上をもたらしてきたとすれば,この同じ都市(エ業)
こそが,他方では農業生産力の順調な発展向上に対して−・の強大な困難を提供 し,農業生産力の相対的な立ち遅れをもたらしてきたのである。(なお,資本主義 そ・れ自体に鹿因をもとめるという場合に,それをマルクスが『資本論』で展開
したいわゆる拡大再生産の法則と結びつけ,−・般に.消費手段生産部門に.くらべ て生産手段生産部門のカがより急速に発展するから虚業ほエ業生産力に立ち遅 れるととく見解が広く行なわれている。たとえばいう。「ところで資本主義のも
とでほ,生産ほ個別的であり,利潤追求を行動の基準にして,自分のしらない t 市場めあてに生産しているのだから,正常な関係はたえず破壊され無数の恐慌 の可能性の下に.ある。均衡がとれることがあるとすれほ,むしろ偶然である。
社会の総生産物の実現ほ困難と動揺のなかで行われる。それほ資本主義の発展 につれてはげしくなる。/そのさい,とくに患要なことは.,資本主義生産の拡 大,国内市場の形成が消贋物資の生産の増大紅よるよりも,生産手段の増大に
よっでおこなわれる,という事情である。生産手段の生産部門では,個人的消 費資材の生産部門よりも急速に生産力が高まる。総生産物のうち消費物資は相 対的にますます′J\さな地位をしめるようになる。これを工業と農業との不均衡
(r)
発展という。」あるいほまたいう。「一・般に.,資本主義の発展とともに.資本の有
(7)近藤康男編『農業政策』背林書院,1959年,9ぺ・−ジ。
貨45巻 第3弓 296
−・6 −・
聯的構成の高度化が要請されるが,それとともに虜Ⅰ生産産部門の第‡Ⅰ生産部 門に対するたえ.まなき優位性とその拡大化が進む。それほいうならば,資本主 義的経済のもと.での国内市場の発展が第ⅠⅠ部門より帝王部門の生産の拡大を通
じて一行なわれること,すなわち国内市場の成長が個人的消費よりもある程度独 立して−,生産的消費の増大によって行なわれることを意味するものである。し かるに農業ほ主として/第ⅠⅠ部門に属するために,資本主義のもとでは農業にお ける資本蓄積は相対的にたちおくれ,この面からも農業でほ資本主義的発展
し8)
が,ヨリ緩慢なテンポ紅ならざるをえないのである。」たしかに,農業ほまだ今 までのところほ主として消費手段生産部門に属しているとほいえ.る。だから,
農業は急速に発展する部門(生産手段生産部門)にくらべると,相対的に立ち 遅れる部門(消費手段生産部門)の方に属しているこ.とになる。しかし,いえ
ることはそこまでである。同じく社会的に.ほ立ち遅れる部門の中に.も工業と農 業とがあって,しかもその内部でも農業の発展は工業にくらべて格段に立ち遅 れている。このような見解でほその根拠までほ説明できない。要するにこのよ うな見解でほ,工業にくらべての農業生産力の立ち遅れの問題ほ説明できな い。花田仁伍氏ほ,次のようにのべている。「農業部門ほ.,原料等の不変資本諸 要素を生産するとはいえ,それも主として消費手段用原料であり,圧倒的役割 ほ食料農産物の生産にある。そういう部門として二部門分割でいえば,主とし て消費手段生産部門に属する。だから,消費手段生産部門(とくに労働者用部 門に典型的)を−・般的に支配する拡大再生産過程における発展の相対的たらお
くれの法則ほ,この部門の一分野としての農業部門をも支配することになろ う。だがこれは消費手段生産部門としての−・般的規定であるから,この部門の なかでもとくに農業が非農業(工業)に.たちおくれるのほ.なぜかほ.まだなに.も
(9)
分らない。」そして氏は結局,「資本の有機的構成の高度化や労働生産力の発展紅 おいて,農業をとくにエ業紅比してたちおくらせる根拠は,右のような事情に でほなくて,まさに.農業(資本主義的農業)内部に求める以外紅ない。農業内
(8)川上正道・上原信博『農業政策論』有斐閣,1967年,49ぺ」−ジ。
(9)吉村正晴・都留大詣郎編『経済発展と小農法j弧』御茶の水書房,1968年,51ぺJ→ジ。
資本主義と農業問題(1) ー 7 一 297
部におけるその特殊的な根拠は,資本主義的土地所有そ・のものである。(広く土 地所有一・般といってもよいが,純粋な資本主義を想定してし、るから,一応はそ の適合的形態として成立するとしても,まさに近代的大土地所有制=資本主義
(10) 的土地所有・そのものである)。」とのべて,−せよに問題を土地所有の圧迫に帰
着させる。栗原百寿民も,同様に次のようにのべて.,直ちに土地所有の圧迫に 農業生産力の立ち遅れの原因を帰着させている。「資本主義的発展の不均等性の 典型としての農業における資本主義的発展の相対的立らおくれほ,より深く,
資本主義本来のメカニズムにおいて規定されなければならない。/その一・つは,
資本主義の拡大再生産過程において,農業が主としでそこに含まれるところの 消費手段生産部門が,生産手段生産部門にたいして,必恋的紅相対的に立ちお くれてゆくという関係である。すなわち,資本主義的拡大再生産のためには,
いわゆる再生産表式におい七,Ⅰ(Ⅴ+M)二>ⅠICでなければならないという関係 である。/しかし,こ.れは消費手段生産部門一・般につうじることであって,とく に虚業の不均等発展を規定するものでほない。/資本主義的農業のとくに不均等 な相対的立らおくれを規定するものほ,実把農業がユ業にくらべてとくに,資 本主義とほ本来異質的な土地所有と密接不可分に関係し,土地を主要な生産手
(11)
段としているという事実にもとづくものである。」他方われわれは資本主義の特 質を看過することなく,土地所有の圧迫のはかに,資本主義それ自体にも原因 を求めるべきことが可能であること,すなわち資本主義の歴史的に特定された 生産関係に,具体的にいえば,都市と農村との関係に求めるべきことを主張す
る。)
2
いうまでもなく,社.全的生産力が一・定の段階に達するとともに農村(農業)
からの都市(工業)の分離(社会的分業の基礎としての二大分業)がはじまっ た。この過程の進行は,いいかえれば,古い土地所有や封建的生産関係などか
(10)同上審,53ぺ−ジ。
(11)栗原百寿『農業問題入門』有斐閣,1961年,2】8ぺ−ジ。
籍45巻 貨3号
− β − 298
ら商品経済や資本主義が分離して都碕のエ共において独自的に発展をとげて−ゆ く過程のことであるとみなすことができる。「都市と地方の分離はまた資本と土 地所有の分離としてもとらえることができるのであって,資本−すなわちたん に労働と交換のうちに.の魂土台をもつような所有−が土地所有とは独立常存在
(12) し展開していく発端とも解しうる。」(だから都市やエ業の本贋は資本であり,
都市や工業は資本がとる一山つの物質的な形態にはかならない。あるいほもっと いいかえれば,都市やユ業というものほ,資本の存在の基礎としての,資本 の運動の前提としての商品や貨幣が,そ・の独自的な発展をとげてゆくために.と る物質的な存在形態であるとみなすことができる。)このような農村からの都 席の分離は,私有財産,交換,家族,階級,国家,国民などの発生とともに.発生
した。そして,農村から分離した都市(工業)こそが,同時に農村に刺激を 与え,多様な方法を通して農業生産力の発展を促進することになったのであ
る。
(とはいえ工業生産力がまだマニュファクチュア一段階にあった頃までほ,農 村からの都市の分離とその独自的発展はそれはど大したものでほなかった。本 来のマニュファクチュア、−の時代においてほ,この分離ほ部分的で断片的に.進 行したのにすぎない。「とほいえ,本来のマニュファクチコ.ア時代に.は根本的な 変化は.な紅も現われない。人々の記憶にあるように,この時代ほ国民的生産を 非常に断片的に.征服するだけで,つねに都鴇の手工業と家内的・農村的副業と
(13)
を広い背景としてこれに支え.られているのである。」だから当時はまだ社会の主 要な産業ほ農業であり,人口の圧倒的な部分ほ農村に.住み,農村では家内工業 やマニュファクチュアーが広汎に存在した。資本主義が作り出した大工業こそ
●●●●
が,農村家内工業や農村マニュファクチュアーを徹底的にかい威させ,大畠の 農村人口を都市に引きぬくことなどによって,農村と都箱の分離を完成し,農
(12)勒γゑβ,Bd..3,1958,S‖50..旗下信一・・藤野渉・竹内良知訳『マルクス=.エンゲル ス全集』第3巻,1969年,47ぺ−汐。
(13)■晰紆鮎,Bdい23,1962,Sn776.岡崎次郎訳『マルクス=・エンゲルス全集』弟23巻第
2分冊,1968年,976−977ぺ−ジ。
299 資太主義と農業問題(1) 一 夕 ー・
村に・くらべての都市の著るしい発展をもたらしたのである。都市ほ.農村から分 離する度合紅応じて■農村を(商品交換などを通して)都市に結びつけ,農業発 展を促進するが,大工業がこの過程の基礎である両者の分離を完成させるので ある。「大工業がほじめて機械によって資本主義的農業の恒常的な基礎を与え,
巨大な数の農村民を徹底的に収奪し,家内的・農村的工業−紡績と織物−の
(14)
根を引き抜いてそれと農業との分離を完脱するのである。」)
都市は多様な方法で農業を発展させた。まず第一・に.,今ものぺたように.,都市 ほ農村との間での商品交換を発展させることを基礎として農業生産力を向上さ せた。大工共は農業に対して食料やエ共用原料の市場を提供し,自動体系によ って・近代的に装備された機械体系によって作り出された大患の農業用の生産 手段(農業機械や人工肥料などの)や生活手段を農村紅供給した。都市と農村 の問の商品交換ほたえず拡大したが,その基礎は大工業が作り出した都市人口
の増加とエ選生産力の発展,農村人口の減少と農村工業のかい滅であった。都
市ほますます農村からの食料やエ業用原料の購入を増加させ,農村にますます 多くの農業機械や人工肥料などを提供した。農業生産力の飛躍的な発展向上が ほじまった。農村と都市の間の商品交換の拡大はまた,工共におけると同様に 農業内部にも社会的分業と,したがって商品交換の関係一種々の作日間や農 共地方間や各国間に‥おける−をもちこむことによって農業生産力の発展を促 進した。「いうまでもなく,さきに述べたような採取産業からの加エエ其の分
離,農発からの製造工業の分離は,農業そのものをもまた産業に,すなわち商
品を生産する経済部門に,転化する。生産物加工のいろいろの種類をたがいに 分離して産業部門の数をますます多くつくりだしていく専門化の過程ほ,農業 にも現われ,・そ・れぞれの農業地帯(および農業経営方式)を専門化していき,
こ.うして農業生産物とエ米生産物とのあいだばかりでなく,農其の種々の生産
(15)
物のあいだにも,交換をよびおこす。」(だから都市と農村の間での商品交換
(14)Ibid,SSl776−777・・『マルクス=エンゲルス全集』第23巻算2分冊,977ぺ一汐。
(15)『レ−エソ全集』籍3巻,1970年,14ぺ−ジ。
鱒45巻 築3弓 300
・−JO−
ほ,さらに都市や農村のそれぞれの中での商品交換を生み出し拡大せさるので あって−,こ.れらの商品交換の総体としての国内市場形成の基礎過程をなしてい る。マルクスほ次のようにいっている。「じっさい,小農民を賃金労働者に転化 させ,彼らの生活手段と労働手段を資本の物的要素に転化させる諸事件ほ,同 時に資本のためにそ・の国内市場をつくりだすのである。以前は,農家は生活手 段や原料を生産し加工して,あとからその大部分を自分で消費していた。これ らの原料や生活手段は今では商品になっている。大借地農業者がそれを売るの であり,彼はマニュファクチュアに自分の市場を見いだすのである。糸やリン ネルや粗製毛織物など,一その原料をどの農家でも手狂人れることができて客層 家によって自家消費のために.紡がれ織られて−いた物叫このようなものが今で ほ.マニュファクチコア製品にされでしまって,まさにその農村地方そのものが それらの販売市場になるのである。これまでは自分の計算で労働サーる多数の 小生産者紅依存していた多数の分散した買い手が,今では集中されて,産業資 本によってまかなわれる一・大市場償なるのである。このようにして,以前の自 営農民の収奪や彼らの生産手段からの分離と並んで,農村副菜の破壊,マニュ
ファクチュアと農業との分離過程が進行する。そして,ただ農村家内工業の破 壊だけが,一・国の国内市場に.,資本主義的生産様式の必要とする広さと強固な
(i6)
存立とを与えることができるのである。」またレ」→ニソもいう。「商品経済の基礎 は,社会的分共である。加工工業が採取産業から分離し,そ・して,それらの おのおのは,さらに小さな種や亜種に細分され,それらの種や亜種が,それ独 自の生産物を商品という形態で生産し,それらの生産物を他のあらゆる生産部 門と交換する。こうして,商品経済の発展ほ,個々の自立した産業部門の数を 増加させるようになる。この発展の傾向は,各個々の‡ ̄巨産物の生産ばかりでな
く,生産物の各個々の部分の生産さえ.をも,−また,生産物の生産ばかりでな く,生産物を消費するよう紅.準備する個々の業務さえをも,独自の産業部門に 転化させる,ということにある。現物経済のもとでは,社会は多くの同種の経 済単位からなりたっていた(家父長制的農民家族,原始的な農村共同体,封建
(16)勒7加,Bd.23,SS.775−776−′『マルクス=、エンゲルス全集』第23巻第2分冊,976
ぺ・−ジ。
・−JJ−・
資本主義と虚業問題(1)
301
領地)。そして,このようなおのおのの単位は,いろいろな種類の原料を採取する ことから,それらを消費するように最後的に準備サーることまでの,あらゆる種 類の経済偏動を行って、いた。商品経済のもとでは.,種々の経済単位がつくりだ
され,個々の経済部門の数が増加し,同一・の経済的機能を行う経営の数は減少 する。社会的分業のこ.の累進的成長こそ,資本主義のための国内市場の創出過
(17) 程における基本的な契機である。」また,いうまでもなく国内席場の形成は.世界
市場の形成の過程を伴なって.いる。大工業ほ国境を出て世界の全ての地方を単
一・の商品交換の関係で結びつけるからである。こうして大工業こそが,他方で ははじめて兵の意味での世界史を生み出したのである。「このかぎり,それこそ
(18) が世界歴史を生みだしたのである。」)
第二に。農村からの都市の分離ほ,先にみたように封建的等々の古い土地所 有からの資本の分離の過程としてもとらえることができる。(従ってそれは,土 地所有者からの資本家の独立,封建的生産様式からの資本主義的生産様式の生 成の過程でもある。)しかし,土 ̄地所有から分離して都市において独自的に発展
した資本ほ,農村紅侵入することによって古い土地所有を単なる土地私有とし ての土地私有に作りかえる。かつて−,古い土地所有が多かれすくなかれ直接生 産者に対する土地所有者の身分的支配の手段であり,土地所有者の政治的・社 会な地位の象徴であり,したがって「土地」が土地所有者の人格の延長として 土地所有者とは切り離し得ないものであったとすれば,今や古い土地所有がお びていた全ての政治的・社会的な飾りものや混じりものほ.捨てさられ,土地を所
有することほ単に土地を所有するだけのこ・と以上のものではなくなり,純粋に 経済的な形態を受けとることになる。資本主義は農業の商品経済化,資本主義 化を通して土地所有やさらには土地の占有権の商品化をもたらし,こうして土 地所有をますます近代的な資本主義的な土地所有紅転化させるのである。
近代的な資本主義的な土地私有の発生は,それ自身農業生産力発展の⊥・大前 提をなした。土地所有の近代化に伴なう農民の自立化は農業生産払おける農民
(17)『レ・一ニソ全集』第3巻,13−14ぺ一汐。
(18)I侮7■点β,Bdu3,S60小『マルクス=エンゲルス全集』第3巻,56ぺ−ジ。
築45巻 寛3号 302
−−J2−
の創意.工夫の発揮を可能紅し,農民たちの間での経済競争を作り出すことによ って農業技術の改善をうながした。土地所有の商品化ほ.,−・方では,古い大土
地所有を出来るだけ分割・細分することに・よって土地への資本投下を容易なも
のにし,農業生産力の発展をうながした。それ自体近代的な制度としての均分 相続制度は,本来的に封建的な制度としての長子相続制や一・子相続制をできる だけこわすことによって,この古い大土地所有の分割・細分を助長した。反対 に,他方でほ.この古い土地所有の分割・細分や土地所有の商品化は土地の集中 をうながすことによって農業経営の大規模化の前提を作り出した。
(資本主義ほ古い大土地所有を近代的,資本主義的な土地私有紅転化させる ことによって農業生産力発展の−・大前提を作り出したばかりでなく,それは土 地私有制皮自体の不合理性をも明らかにする。資本主義は結局は土地所有を労
働条件としての土地から分離させることによって−それを社会にとっての寄生的
な存在たらしめる。今や土地所有者ほ自分の土地はスコットランドにあるのに 生産をコン.スタンチノ−プルで送ることができるはどまでに,両者の関連ほ切
り離されてしまうのである。「∵方でほ農業の合理イヒがほじめて農其の社会的 経常を可能にしたということ,他方でほ・土地所有の不合理を示したというこ
(19) と,これは資本主義的生産様式の大きな功績である。」ノ
●●
第三に。農村からの都市の分離ほ,農村の古い高利貸や南米資本がかい滅し
て近代的な金融業や商業資本が都市にもっぱ声集中せしめられる過程である0
都市のエ英ほ,近代的金融機関や近代的商業資本を生み出し,ますます農村に
おける旧来の前期的な高利賀や商業資本をかい威させる。都市は農村から工業
を分離して都市に集中させるとともに・,農村の古い金貸資本や商業資本を打ち 亡ぼして,これらの資本機能をも都市に集中させたのである。こうして今や都 市と農村は,近代的な信用の関係で結合されるようになり,都市は農村に・資本 を供給することによって農業の発展を促進したのである。「色々の事情がまだ遅 れてゐる間は,農民はその最も近い周囲で彼に金を出してくれる人々を求めざ
(19)Ⅳβγ烏β,Bd.25,1964,SSい630−631い岡崎次郎訳『マルクス=エンゲルス全集』籍
25巻弗2分冊,1968年,796ぺ−ジ。
資本主義と農業問題(1) ーーヱβ−
303
るを得ない様になっていた。彼の債権者は,ただに村の高利貸,穀物商人や家 畜商人,小売商人,酒屋の主人だけでなく,極めてクリスト数的な大農もさう であった。この後者も,前の人々と全く同じ様軋高利をしぼることを心得てい る,だが,発展の進行と共に.,借金が次第に,下手な経営や,不時の事故を原 因とする偶然的なる行為,即ちそれが常に・窮迫せることを恩はしめるものであ るがために.,出来るだけ秘かに約定せんとする−・の行為であることをやめ,次 第紅生産過程自身の必然的なる一・駒となり,且つ次第に都市と農村との間の商 品交易が発展するに従って,それだけ,原始的な秘かな高利制ほ,特別な制度 に.よって追はれる。こゝでは信用取引が明らさま紀行ほれ,正常の行為であっ て,決して絶望の行為でないことを示し,従ってそれほ強奪利子でなく,正常 の利子を要求する。か1る諸制度は,だが,最初から都市的なもので,銀行や 多くの協同組合等々か,又は,それらが必要とする資本を都市の資本家から借
(ごP)
出して−ゐるものである。信用制度のか」る変化は−・の必然的なる発展である。」
都市の金融機関ほまた,土地抵当制度を通して土地所有から農業経営を分離さ せ,土地所有の近代化を促進した。
第四に.。都市でほ最初から商品生産が行なわれているが,その発展から金納 租税が必然的に.発生する。都市は農村地方に.も金納租税を押しつけることによ って,農業の商品経済化を促進する。「都市匿於いては,生産は最初から主と して商品生産である。そしでその発展から金納租税も発生する。農村地方に・於 いては生産,殊に比較的小なる経営のそれは,今日に於いてもなは主として自 家用のための生産である。都市の発展は農村地方に.金納租税をおしつける。そ れは,農村地方の生産形態に.発生するものでなく,元来これに.矛盾するもので
あるが,このことによってこの生産形態の変革の有力なる因子となるものであ る。金納租税は,農村地方に於いてほ,自家用の生産から商品生産への発展の
(20)KaI1Kautsky,か∠βAg仰ノン〃卵;茸紘ヲ班物5∠虎f如海′成♂rβ〝dβ乃g♂乃d♂γ
∽〃dβγ・矧紺〜エ道外成肌7わCゐ〃./才〟犯d dよβ Agγ・α㌢・か沼≠∠烏d紺ふ犯烏漬ね椚扉机おβ,Stut−
tgaIt,1899,Verlag vonJりh.w..Diez Nacht,S.208。カクッキー,向坂逸郎訳
『農業問題』上巻,岩波書店,1961年,356−357ぺ−ジ。
第45巻 第3号
・−−ヱ4− 304
(21)
原動力の一つである。」この過程は(農業資本主義化の初期においてではあった が)明らかに農村の近代化をいさ1かなりとも促進した。「マルクス主義者ほ,
これらの方策の若干の(貧弱であるとはいえ)利益を,すなわち,それが勤労 者に.たいして−,彼らの状態の若干の(貧弱であるとほいえ)改善をもたらしう
ることを,けっして∵否定するものではない。それほ,とくに立ちおくれた資本 形態,すなわら高利貸や債務奴隷,等々の多くの死滅を促進し,それらがヨー
ロッパ資本主義なみの,より近代的で人間的な形態へ転化することを促進す
(22)
る。」
このように都市の工業が引きおこした農業の商品経済化や資本主義化は,都 市への農村人口の大患吸収,エ業による近代的農業技術の提供,農業に対する たえず拡大する規模での市場の提供,農業内部での社会的分業と商品交換関係 の展開,農民層の間への競争関係の導入などを通して農業生産力の著しい発展 向上をもたらした。資本主義ほ歴史的に.限定されたそれに特有の生産関係−
商品経済や競争やもうけのための経営などの−を通しでではあったが,これ までのどの社会もなし得なかった−・大変革を農業にもちこみ,巨大な農業生産 力の体系を生み出したのである。
3
農村から分離して独自的に着るしい発展をとげた都市の工業ほ.,農業をまっ たく新らしい関係一商品交換などの−を通して都市と結びつけ,農業生産 力の飛躍的な発展向上をもたらしたが,この同じ都市の工業が(したがってま た,工業の派生吻としての商業や金融業などが),必然的に農村を搾取すること
によって農業生産力の発展に対して.−・つの困難を提供する。すなわち,ブルジ ョア的諸関係のもとでほユ業ゐ著るしい発展が農業の飛躍的な発展をもたらす とはいえ,土地所有の圧迫のはかに.,「都市による農村の搾取」(DasAusbeut・
ung des Landes durch die Stadt)が不可避的に.増大するので,結局ほ農業
(21)Ibid,Sい209一・
.
資本主義と農業問題(1) ーヱ∂ − 305
生産力を工業生産力の水準にノまで引きあげることば/できないし,反対にますま す両者の問の生産力の差は大きくなる。−・般に農産手段の私的所有を前提とす
る商品経済や資本主義のもとでは,生産手段の独占的所有者と直接生産者の間 だけでなく,一朝のものの問に搾取という形態が刻印されることは自明のこと である。経済的にす」んだものや優れたものは,遅れたものや劣ったものから,
富や労働や生産手段などをとり上げる。他の計画的社会でならば嘩紅富や労働 力や生産手段の一・部面から他の部面への物的な移動として行なわれるものが,
ここでは,互いに∴独立した人間の問での,−・方に・よる他方の搾取という形態をと る。商品経済や資本主義社会は,一画でほ,生産手段の私的所有や社会的分業 や商品交換などを発展させる。生産手段は分割きれて諸個人によって私的に独 占され,人間ほ.独立した生産諸部門に分裂せしめられ,こうして互いに商品交 換などの関係でとり結ばれることになる′。しかし,商品経済や資本主義社会 は,同時に他面でほ.,このことを通して一層による他者の搾取を生み出すので ある。商品経済や資本主義のもとでは,当然人びとの問で激しい利害の対立が 生じ経済競争が演じられるのだから,−・方が他方を市場から駆逐したり破産さ せたりなどして搾取,つまり富や労働や生産手段をとり上げることが不可避的 に.つきまとうのである。このような搾取関係は,大企業と小企業の間,発展し つつある産業とそうでない産業の間,先進国と後進国の問などであらわれる が,農村と都市との間にも例外なく適用される。「 農村からの都市の分離,両者 のあいだにおける対立と都市による農村の搾取−これは,発展しつつある資
(2∋)
本主義がどこにでもつれていく同伴者なのだ」(だからすでに.独占資本主義の 登場以前においても,工業製品が農業に.対しては独占価格で売られ,農業生産
●●●●●●●●
物がエ共によって安く買いたたかれるという傾向がすでに.契機として,萌芽的 な形で存在している。)都市ほ一・方では農村をますます都市との商品経済や資本 主義的関係の中に月lき入れるとともに,他方でほ,その度合いに応じて,農村 への搾取を強めてきたのである。
(23)『レ−エソ全集』欝2巻,1969年,221ぺ一汐。
第45巻 第3号 306
−一丁ざ−
都市と農村とが商品経済や資本主義的諸関係で結合されていること,すなわ ち両者が搾取関係で結合されていること,−】−こ1に一山つの都満と農村の利害 対立が生ずる物質的基礎がある。マルクスほ,都市と農村の対立が,私有制のも
とで,すなわち社会的分業や商品交換などの存在するとこ.ろでは必然的に生ず るものであることを指摘している。「都市と地方の対立は野蛮から文明への,部 族利から国家への,地方から全国への移行とともに始まって,文明の全歴史を今
日(反穀物法同盟)にん、たるまで貰いている。−都市ができると同時に.行政,警 察,租税等々,約言すれば共同体組織,したがって−また政治一・般がいやおうな
しに必要となる。まずこ1に,労働の分割と生産用具に直接もとづくところ の,人口の二木階級への分割が現われた。都市はすでに人口,生産用具,資本,
享楽,必要物の集中の事実を示しているのにたいして,地方は一その正反対の 事実,離隔と孤立をあらわしている。都市と地方の対立はたゞ私的所有の内部 でのみ存在しうる。それは個人が労働の分割下に編入され彼に押しつけられた 特定の活動に釘づけにされている状態のきわめてあざやかな表現であって,そ のような状態ほ一方の人間を偏狭な都市動物,他方の人間を偏狭な地方動物た
(24) らしめ,両者の利益の対立を日々に.新しく生みだす」のである。スターリンは次
のようにのべている。「この対立の経済的基礎は,都市に.よる農村の搾取であ り,資本主義のもとでのエ業や商業や信用制度の発展の全行程に.よる農民の収 奪であり,農村住民の大多数の零落である。それゆえ,資本主義のもとでの都 市と農村との対立ほ,諸利益の対立としで見なければならない。これを基盤に
して,都市に.たいする,また一・般に.『都会人』にたいする,農村の敵対的な態
(25) 度が,発生したのである。」大工業が農村と都市をほじめて本格的紅商品経済と
資本主義的関係によって結びつけたとすれば,同じ大工業こそが,都市による
農村の搾取を本格的なものとし,ますますそれを増大させるのである。
(1)農村人口の収奪
(24)坪セγゑg,Bdい3,S.51,.『マルクス=エンゲルス全集』第3巻,46ぺ一汐。
(25)スタ−リン,スタ・−・リソ全集刊行会訳『ソ同盟における社会主義の経済的諸問題』
大月雷店,1965年,33ページ。
資本主義と農業問題(1) ーーj7−
307
資本主義の発展につれて,必然的紅塵村人口を犠牲としての都市人口の増加 が進行する。それほ,資本主義の発展につれてますます農業からエ業が分離
●●●●●●●
するこ.と,農米では一・定の土地部分の耕作に必要な可変資本が一・般的紅いって
●●●●●
絶対的軋も減少することにもとづいている。「農村人口の減少に.よる都市人口
(−・般的に.は工業人口)の増大ほ,現在だけの現象でほなく,資本主義のはか
ならぬ法則を表現す・る−・般的現象である。この法則の理論的な基礎づけは私が
はかの箇所で指摘したように,第一・に.,社会的分業の成長はますます多くの工 業部門を原始的な農業からきりはなすこと,第二に,−・定の地所の耕作町必要 な可変資本は,(大体に.おいて)減少すること・・にある。われわれがすでに.注 意したように,個々?ばあいや個々の時期に偲一定の地所の耕作に必要な可変 資本の増加がみられるが,し申し,このことは一般的法則の正しさを動揺させ
(26)
るものでほない。」
● ● ● (27〉
こういうわけで,「農業ほ.その労働力をも奪ほれ」ることになるので農業労働
●●●●● カが不足する結果となる。とくに,農業労働力の不足は,時期的に・曙,農繁期
●●●●●
や産業循環に.おける繁栄期に.おいて着るしく,階層的に」は上層の大規模経営は
●●●●●●●●●●●●
ど著るしく,また,労働力の質的構成の面では「もっとも強健で椅力的な,しか
P8) も教養ある労働者」の層において深刻である。このような農業労働力の不足
は,一・面では人工肥料の投下や農業の械械化や農業生産の合理化をもたらすこ
(29) とに.よって農業生産力を向上させるが,他面でほ農業生産をもっぱら婦女子や
老人に委ねることに.よって農業労働力の質を低下させるばかりでなく,農繁期 などに.おける農業賃金を高騰させることによって農業生産力のより以上の順調 な発展をさまたげる。
とはいえ,農業労働力の不足傾向もまた,他のブルジョア的経済現象と同じ
●●●●●●
ように.,
(26)『レ−・エソ全集』第4巻,163ぺ−ジ。
(27)Agγαγノン・〃gβ,S..214.カクツキ−『農業問題』上巻,366ぺ・−ジ。
(28)『レ−ニソ全集』第4巻,164ぺ・−ジ。
(29)同上杏,157ぺ−ジ。
第45巻 第3考 308
−Jβ−
する。資本主義化紅つれて,上紅みたよう軋農業では過剰人ロが,マルクスのい う潜在的過剰人口の大群が作り出される。都市ほ∵■面でほ農業労働力を奪い去 るこ.とによってその不足をもたらすが,他面では農業内部に大患の過剰人口を 作り出す。だから農業でほ労働力の不足と労働力の過剰とがともに併存してい
るのであり,農業労働力の不足は,そのたえざる過剰化傾向の中でのみ進行す る。とりわけ,過剰化は,婦女子や老人層,産業循環に・おける恐慌や不況時や 下層の農業経営において集中的にあらわれる。それほまた,農閑期において−
般化する。マルクスほ農繁期に農業労働力が不足するとすれば農閑期でほそれ が過剰化することをイギリスの農業を例にとりながら明らかに・している。「農村 は,その恒常的な『相対的人口過剰』にもかかわらず,同時に、人口不足であ る。これほ,都席や鉱山や鉄道工事などへの人間流出があまり紅も急激紅起き る地点でたゞ局地的に現われるだけでほなく,収穫期紅も春や真にも,非常に念 入りで集約的なイギリスの農業が臨時の人手を必要とする多くの時期にどこで
も見られることである。農村労働者ほ,農業の中位の要求に・たいしてはいつでも 多すぎるのであり,例外的またほ−・時的な要求にたいしてはいっでも少なすぎ るのである。それゆえ,公的な文書のなかでも,同じ場所で同じ時紅労働不足
(30)
と労働過剰という互いに・矛属する苦情が記されてあるのを見いだすのである。」
さらに.,農業労働力の過剰化傾向ほ,局地的に.集中的に.あらわれる。農村の地 表面での人間排出に.伴なって−農村に.散在するあれこれの小村落や市場町では人 口密度が異常に高まる。「一・つの地域の人間が減れば減るはど,その地域の『相 対的過剰人口』ほ.ますます大きくなり,この過剰人口が雇用手段軋加え.る圧力
も居住手段を超過する農村住民の絶対的過剰もますます大きくなり,したがっ て農村では局地的過剰人口と最も悪疫培養的な人間の詰めこみがますますひど くなるのである。散在する小村落や市場町での人間集団の密度の増大ほ,農村
(31) の表面でのむりやりの人間排出に対応している。」そして都市ほ農業労働力の不
(30)酌γゐ♂,Bdい23,SS。.72ト722い『マルクス=エンゲルス金魚』第23巻第2分冊,905
ぺ−ジ。
(31)Ibid,SS.721−722い 同上雷,904ぺ−汐。
309 資本主義と農業問題(1) −ヱクー 足をきたすことによって−農業生産力の発展向上に一・の困難を提供するだけでな
く,農業内部に・このような種々の形態の潜在的過剰人口の大群を作り出すこと によってもまた農業生産力の順調な発展をさまたげる。これら種々な形態での 潜在的過剰人口の形成ほ.,農業賃金の−・般的水準を低くしておくことに.よつ
て,1−・方でほ農業での資本主義的経営の出現と発展の一・支柱となるが,他方で は土地の細分をひどくし,土地価格や地代を高ぐするなどして農業生産力の順 調な発展紅とっての死重となるのである。
(2)地力の収奪
魂市が農村人口を収奪することは,ますます多くの農業生産物が商品化され て都市に・よって購入・消費されることを意味している。だから農業生産物に∴含 まれた土地の栄養分ほ都市に運ばれてしまい再たび土地に還元されない結果と なり,本来的なこの自然の代謝過程一土地からの栄養分の吸収と土地へのそ
の還元岬が捜乱されることに.なる。マルクスほ『資本論』の中でこ.のことを
指摘している。「資本主義的生産ほ,それによって大中心地紅集積される都市人
口がますます優勢に.なるにつれて,−・方では社会の歴史的動力を集積するが≠他
方では人間と土地とのあいだの物質代謝を撹乱する。すなわち,人間が食料や衣 料の形で消費する土壌成分が土地に.帰ることを,つまり土地の豊穣性の持続の
・.エコ、 永久的自然条件を,按乱する。」レ−エソも同様のことを指摘してし、る。「商品
農業の成長は,農業の発展に㌧力強い刺激をあたえたが,しかし進歩の一渉一・歩 ほ.,新しい科学的農業のいっさいの生産力の利用を不可能にするような諸矛眉 の発生を伴った。資本主義ほ,大規模生産と競争を生みだすが,これらは土地 生産力の略奪を伴う。都市への人口の集積は,人口稀薄な土地を生じさせ,正常 でない物質代謝を生みだす。土地の耕作は改善されないか,そうでなくとも,
(き3) 当然なされるべきはどに償改善されない。」「土地の利用と土地の卿巴とのあい
だの均衡が資本主義によって破壊されるということほ,疑う余地がない(農村
(32)揮わ烏β,Bd..23,1962,S.528.岡崎次郎訳『マルクス=エンゲルス全集』常23巻 第1分冊,1970年,656ぺ−ジ。
(33)『レ−ニン全集』第6巻,352ぺ−汐。
第45巻 第3号 310
−20−
(3ヰ) からの都市の分離の役割)。」これに対処するための人工肥料の投下などは,地力
● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ●
● ● ● の一層の増強や改善のためでほなくて,むしろ辛うじで地力の消耗の人為的な
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
補填のため匿.,より一層地力を吸いつぐすために使われているのである。「資本 主義的農業のどんな進歩も,たゞ労働者から略奪するための技術の進歩である だけでほなく,同時紅土地から略奪するための技術の進歩でもあり,一雇期間 の土地の豊皮を高めるためのどんな進歩も,同時にこの豊庶の不断の源泉を破 壊することの進歩である。ある国が,たとえば北アメリカ合衆国のように.,そ の発展の背景としての大工業から出発するならば,その度合い紅応じでそれだ けこの破壊過程も急速に.なる。それゆえ.,資本主義的生産は,たゞ,同時紅い っさいの富の源泉を,土地をも労働者をも破壊することによってのみ,社会的
(35) 生産過程の1技術と結合とを発展させるのである。」「助成肥料ほ,せいぜいで土
地の一億の素材を豊富にする任務を有するにすぎずして,その減退に対応する
(38) 任務をもつものでほなくなるであろう。」しかも,その費用はますます多く負担
(37)
として農業にのしかかってきている。まさに,ブルジョア社会では,農業は,
●●●●●● 都市による搾取の結果としての土地掠奪農業なのである。
(3)近代的信用制度を通しての搾取
都市の銀行やその他の近代的な信用制度は,農村に.信用を与え.ることに.よっ て,農村で作り出された価値や剰余価値を利子の形態で吸収する。「それは個々 の農民に・とって,全く有用なるものではあるが,全体として見て,それほ都市 に.対する農村の貴納義務の増大であることを示している。農村で作り出される 価値の不断紅増大する部分は,対価に′より補償されることなしに,都市に.流入
(38) する」のである。しかも,土地抵当制度が伴うところでは,都市の銀行などほ
(34)同上審,352ぺ−汐。
(35)Ⅴ陀γ点β,Bd.23,S.529.『㌧マルクス=エンゲルス全集』第23巻第1分冊,657ぺ一−
ジ。
(36)Agrαγノンαgβ,S,.211..カクツキ−『農業問題』上巻,362ぺ一−ジ。
(37)Ibid,S.211..同上督,362ぺ−汐。
(38)Ibid,S.208.同上啓,357ぺ−汐。ここで,われわれが人工肥料の意義と役割を 全く否定しようとするならば,それは誤まっている。人工肥料そのものは,一方でほ
農業の科学化をおしすすめ単一手段となっているが,プル汐ヨア社会でほ同時紅地力
を吸いつくす手段となっているということにすぎないのである。
資本主義と虚栄問題(1) 一2J−
311
債務不履行を理由として土地を農村から収奪する。都市は土地の栄養分を収奪
… =(39)
= … するばかりでなくて,土地そのものを収奪する。こ.のような近代的信用制度に
よる農村の富や土地の収奪は,前期的高利貸とは異なり,今や近代的の放をも って,公然と行なわれるのである。
(4)金納租税による搾取
和税もまた,信用制度と同じ役割を果す。租税の形態で吸収される農村で作 られた価値や剰余価値の大部分は,農村地方の発展のためにではなくて,兵営,
大砲銃砲工場,内閣,裁判所,弁護士,中,高等学校,大学,博物館,等々の
しI11) 都市諸施設のため紅用いられる。
(5)家畜および植物の疫病
カクッキーほ,家畜や植物の疫病がエ其の農業への侵入,農業のブルジョア化
とともに,次第に・農業を襲うようになるとのべて.いる。「葡萄鹿やコラド甲鹿,
(41j 口内癌や蹄爪病,豚丹毒や豚疫病等々による荒廃を思え。」かかる疫病の増大の
主原因は,「改点種」,すなわち人工陶汰の生産物によって,原生的な用畜や有用
(42) 植物が追われたことにある。すなわち,「自然陶汰は種の保存のために最も適当
なる個性の選択と繁殖に.至らしめるものであるが,資本主義的社会に.於ける人
(39)もちろん,都市紅よる土地の取得は,土地鑑当制度紅よるだけでは.ない。都市のブ ルジョア汐−は農村で土地を購入し,工場用地や住宅地や別荘地などに転用すること
によって,農業生産を抑圧する◇だから,「都市に於ける剰飴慣値の増大すらも,地 代の増加や,相繚機と同じ様に,農業に対して有害なる傾向を作り出す」(Ag7α′・・
ノンαgβ,S.207小カクツキ−『虚業問題』上巻,355ぺ一汐)のである。のちにみるよ う紅,地代ほ土地所有が農業を搾取するための主要な手段であるが,ブルジョア社会 の進行に.つれて,ますますそれは事実上都市による農村の搾取の一手段となる。都市 のプル汐ヨアジ−は土地を買い集めて地主となり,地代を通して,虚業を収容するか
らであり,他方では,地主たち(とく紅大地主たち)も交通の便利さもあって1年のは とんどを都市ですどし,農村から地代を徴収して蒼移生活を営み,しばしば地代を工 業に投下したりして:資水家をかねているからである。それだけでなく,農村に.住む地 主も,地代をもっぱら都会からのぜいたく品や蒼珍品の購入にあてたり株式投資や預 金などにあてたりしてこ都会に向けて支出しているからである。(かれらは事実上,農
村で作り出された価値を都市に送りこむところの農村紅おける都市の出張員となり,
農村に住む都会人となるのである。)
(40)Ibid,S.209.同上霹,359ぺ−汐。
(41)1bid,S..212.、同上沓,363ぺ−汐。
(42)Ibid,SS.212−213.同上番,364ぺ−iy。
貨45巻 第3号
−ヱゴー 312
エ陶汰はか」る要素を全然顧みない。この社会にとっては,出来るだけ高い利 益の得られる,出来るだけ少い費用を要し,早熟であり,且つそれらのものの 利用し得る部分が最も大であり,利益にならない器官が出来るだけ退化してゐ る様な個性の選択と繁殖とが問題であるのである。かくの如くして『改良』種 は,原生的の程より遥かに高い利潤を潜らす。だが,その生存力と抵抗力とほ
し・lこミ\