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女子大学生バドミントン選手の心理的競技能力に関 する縦断的研究

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(1)

女子大学生バドミントン選手の心理的競技能力に関 する縦断的研究

著者 竹内 雅明, 畝中 智史, 水落 文夫, 升 佑二郎

雑誌名 北翔大学北方圏生涯スポーツ研究センター年報 

巻 10

ページ 25‑27

発行年 2019

URL http://doi.org/10.24794/00002957

(2)

─  ─ 25

2020年3月 March,2020 北翔大学北方圏生涯スポーツ研究センター年報 第10号

Bulletin of the Northern Regions Lifelong Sports Research Center Hokusho University Vol.10

(25〜27)

女子大学生バドミントン選手の心理的競技能力に関する縦断的研究

A Longitudinal Study on Psychological Competitive Ability of Female College Badminton Players

竹 内 雅 明

1)

  畝 中 智 志

1)

  水 落 文 夫

2)

  升   佑二郎

3)

T

AKEUCHI

Masaaki

1)

  U

NENAKA

Satoshi

1)

  M

IZUOCHI

Fumio

2)

  M

ASU

Yujiro

3)

Ⅰ はじめに

 バドミントン競技は,いろいろなストロークを正確に,

かつ攻撃的に継続して打つことによって,対戦相手にエ ラーをさせるように仕向ける競技

1)

である。ストローク の打ち合い(以下ラリー)の中で対戦相手のエラーを仕 向けるストローク,つまり有効打を打てるように努めな ければならない。近年,わが国のバドミントン競技は目 覚ましい活躍を見せている。2016年リオデジャネイロ五 輪の女子ダブルスでの金メダル獲得をはじめ,2019年世 界選手権男子シングルスでは連覇を達成するなど男女と もに世界トップレベルに君臨している。一流の女子選手 であれば,スマッシュ初速が250km/h程度で,シャト ルは約8m飛行して,レシーブ時には50㎞ /h程度に減 速し,その間はわずか300msである

2)

とされている。さ らに,ラケットなどの用具の改良も影響し,2013年に実 験的に計測されたスマッシュのシャトル初速度493㎞ /h が2015年度版ギネス世界記録に認定されている。人間の 光刺激に対する反応時間を考慮すれば,ラリーは非常に 厳しい時間的制限下で行われており,このような環境に あるバドミントン選手の知覚運動制御は極めて高度なも のと考えられる。高速で展開されるラリーの中で,有効 打を打つためには,シャトルが打たれてから素早く動作 を行うための身体的・運動的側面だけではなく,相手の 動作などから次に打たれるコースを予測するような知覚 的・知的側面も重要になってくると考えられる。これま でバドミントン競技における研究は,スマッシュの動作 解析

3)

や2006年のラリーポイント制へのルール変更に伴 うゲーム分析

4)

などがある。指導書においては,元一流 選手による練習方法や打ち方,動き方

5)

,トレーニング

に関する情報

6)

など身体的・運動的側面に目を向けたも のが多く,知覚的・知的側面に着目したものは少ない。

 そこで,本研究では女子大学生バドミントン選手の心 理的競技能力を縦断的に比較することによって,バドミ ントン選手の知覚的・知的側面を明らかにするための基 礎資料を作成することを目的とした。

Ⅱ 方法 1.対象者

 対象者は,北海道学生リーグ1部に所属する女子大学 生バドミントン選手10名(平均年齢19.6歳±0.5歳,競技 歴11.1年±2.0年)であった。なお,対象者には事前に質 問紙調査について説明し,同意を得た。

2.調査方法

 本研究では,徳永らが開発した心理的競技能力を測る 質問紙DIPCA.3

7)8)

を用いて質問紙調査を行った。この 質問紙は,スポーツ選手がパフォーマンスを発揮するた めに必要な心理的競技能力を測定するものである。心理 的競技能力を測定する48項目と検査の信頼性を測定する Lie Scale 4項目の合計52項目からなる。48項目は12の 尺度からなり,5つの因子に分類される。尺度と因子は,

表1の通りである。

1)北翔大学生涯スポーツ学部スポーツ教育学科 2)日本大学文理学部体育学科

3)健康科学大学健康科学部理学療法学科

表1 DIPCA.3の因子および尺度

因子 尺度

競技意欲 忍耐力・闘争心・自己実現意欲・勝利意欲

精神の安定・集中 自己コントロール能力・リラックス能力・集中力

自信 自信・決断力

作戦能力 予測力・判断力

協調性 協調性

(3)

─  ─ 26

女子大学生バドミントン選手の心理的競技能力に関する縦断的研究

 項目の評定は,①ほとんどそうでない(0 〜 10%),

②ときたまそうである(25%),③ときどきそうである

(50%),④しばしばそうである(70%),⑤いつもそう である(90〜100%)の5件法である。Lie Scaleは合計 得点が12点以下の場合,検査の信頼性が乏しいと判定さ れる。なお,本研究の対象者でLie Scaleの合計得点が 12点以下だったものは0名であった。調査は2018年7月 と2019年10月に実施した。

3.分析方法

 各質問項目を得点化し,尺度,因子,総合得点の平均 値と標準偏差を算出し,平均値の比較を行った。平均値 の差の検定には,対応のあるt検定を用いた。統計処理 にはSPSS Statistics 24(IBM社製)用い,有意水準は 危険率5%未満とした。

Ⅲ 結果

 因子,尺度,総合得点の平均値および標準偏差を表2 に示した。2018年と2019年で対応のあるt検定による比 較を行ったところ,因子では「競技意欲」で2018年より も2019年が有意に高い値を示した。尺度においては「忍 耐力」と「闘争心」で2018年よりも2019年が有意に高い 値を示した。

Ⅳ 考察

 本研究では,女子大学生バドミントン選手の心理的競 技能力を縦断的に比較することによって,バドミントン 選手の知覚的・知的側面を明らかにするための基礎資料 を作成すること目的とした。2018年と2019年の因子,尺度,

総合得点の平均値を比較したところ,因子では「競技意 欲」で2018年よりも2019年が高い値を示した。尺度では,

「競技意欲」の下位尺度である,我慢強さやねばり強さ,

苦痛に耐えるといった内容を含む「忍耐力」と大試合や

表2 2018年と2019年の心理的競技能力の平均値および標準偏差

2018年 2019年

N 10 10 t値

平均値 標準偏差 平均値 標準偏差

因子

競技意欲 60.50 ± 5.54 64.50 ± 5.66 2.80* 精神の安定・集中 32.30 ± 10.70 33.50 ± 8.85 0.86

自信 18.90 ± 3.78 20.40 ± 4.93 1.17

作戦能力 20.10 ± 4.18 19.80 ± 6.09 −0.20 協調性 17.80 ± 2.57 17.40 ± 2.80 −0.47 総合得点 149.60 ± 19.36 155.60 ± 17.68 1.35

尺度

忍耐力 13.1 ± 2.28 15.30 ± 2.31 3.09*

闘争心 15.5 ± 3.03 17.20 ± 2.30 4.02**

自己実現意欲 16.8 ± 1.55 16.80 ± 2.15 0.00

勝利意欲 15.1 ± 3.57 15.20 ± 2.86 0.12

自己コントロール能力 10.9 ± 4.18 12.10 ± 3.18 1.91 リラックス能力 8.9 ± 3.38 9.10 ± 3.03 0.36

集中力 12.5 ± 3.50 12.30 ± 3.27 −0.28

自信 9.6 ± 2.50 10.20 ± 2.82 0.87

決断力 9.3 ± 1.64 10.20 ± 2.70 1.27

予測力 10.6 ± 2.22 9.50 ± 3.27 −1.28

判断力 9.5 ± 2.22 10.30 ± 3.06 0.91

協調性 17.8 ± 2.57 17.40 ± 2.80 −0.47

:p<0.05  **:p<0.01

図1 2018年と2019年の尺度別プロフィール

(4)

─  ─ 27

北翔大学北方圏生涯スポーツ研究センター年報 第10号

大事な試合での闘志やファイト,燃えるといった内容を 含む「闘争心」で2018年よりも2019年が有意に高い値を 示した。継続的なトレーニングは,「競技意欲」を向上 させる要因となることが示唆された。日本バドミントン 協会(2003)は,国内大会に参加した選手とオリンピッ ク代表選手の心理的競技能力を比較し,自己コントロー ル能力,リラックス能力,自信,予測力,判断力において,

国内大会に参加した選手よりオリンピック代表選手が優 れていたことを述べている。精神の安定や集中力はメン タルトレーニングである程度強化できるが,状況判断能 力や予測力はすぐに強化できるものではない

10)

として心 理的競技能力向上のために認知的トレーニングの必要性 を示唆している。本研究対象者の心理的競技能力(図1)

は,「競技意欲」,「協調性」は高く「精神の安定・集中」,

「自信」,「作戦能力」が低い。「精神の安定・集中」,「自 信」,「作戦能力」では,2018年よりも2019年が有意に高 い値を示していないことからも,知覚的・知的側面に着 目した認知的トレーニングを継続的なトレーニングの中 に位置付けていく必要性が示唆される。

Ⅴ 今後の課題

 バドミントン選手の心理的競技能力は,競技レベルに よって差が認められており

9)10)

,競技力の高い選手が高 い値を示している。認知的トレーニングの必要性が示唆 されているが,具体的なトレーニング方法は提示されて いない。本研究の結果からも認知的トレーニングの必要 性が示唆されたことから,今後具体的なトレーニング方 法を明らかにしていくことが求められる。本研究の対象 者は,北方圏の一部の女子学生選手であった。現在,日 本のバドミントン競技は目覚ましい活躍を見せており,

ジュニア世代からシニア世代まで幅広い世代が世界で活 躍している。今後は様々な世代を対象に横断的かつ縦断 的な比較を行い,世代ごとの心理的競技能力の変化を明 らかにすることで,より有意義な基礎資料となり,バド ミントン選手の知覚的・知的側面の研究や指導,育成に 寄与することが期待できる。

付 記

 本研究は,平成30度北方圏生涯スポーツ研究センター・

センター選定事業として実施した。

利益相反  申告すべき利益相反なし。

文 献

1) 日本バドミントン協会:バドミントン教本基本編.

ベースボールマガジン社,東京,2001.

2) 佐 々 木 正 人: 時 速250 ㎞ の シ ャ ト ル が 見 え る.

pp.17-27,光文社新書,東京,2008.

3) 湯海鵬,阿江通良:バドミントンのスマッシュ動作 における腕運動のメカニズム.バイオメカニズム学 会誌,12:73-84,1994.

4) 蘭和真:ロンドンオリンピック大会におけるバドミ ントン競技のゲーム分析.東海学院大学紀要,6:

17-23,2012.

5) 藤本ホセマリ:バドミントン最新式・基礎ドリル.

pp24-84,ベースボール・マガジン社,東京,2015 6) 片山卓哉:片山卓哉のバドミントンボディ革命.

pp8-24,ベースボール・マガジン社,東京,2015 7) 徳永幹雄,橋本公雄:心理的競技能力診断検査用紙

(DIPCA.3,中学生〜成人用).トーヨーフィジカル,

2000.

8) 徳永幹雄:スポーツ選手に対する心理的競技能力の 評価尺度の開発とシステム化.健康科学,23:91- 102,2001.

9) 竹内雅明,水落文夫,升佑二郎:女子大学生バドミ ントン選手の心理的競技能力について.北翔大学 北方圏生涯スポーツ研究センター年報,9:71-73,

2018.

10) 日本バドミントン協会:バドミントン教本応用編.

ベースボールマガジン社,東京,2003.

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