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血流動態モデルによる血管状態推定シミュレーション

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Academic year: 2021

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(1)

愛知県立大学情報科学部 平成

27

年度 卒業論文要旨

血流動態モデルによる血管状態推定シミュレーション

情報科学科 浅見 直弥 指導教員:神山 斉己

1 はじめに

日本人死因の第二位を占めている循環器系疾患の発症原因は,

動脈硬化症であることが知られている.動脈硬化症の初期段階 では,血管内皮細胞による機能低下が起こるとされ,この段階の 発見であれば内皮機能の回復が期待される.内皮機能の評価方 法として,

FMD(Flow-Mediated Dilation)

検査がある.

FMD

検査では,駆血操作によって生じる血流速度上昇に伴う血管拡 張反応

(FMD

反応

)

から内皮機能を評価する.

FMD

反応時の血管状態は,血管内皮細胞から産生される血管 拡張物質

NO

によって,安静時より血管弾性率が低下している という報告がある

[3]

.この知見は,血流や血圧波形に影響を与 えると考えることができ,

FMD

反応時の血圧波形を解析するこ とで内皮機能を評価できることを示唆している.

そこで,本研究では,計測融合シミュレーションの技術を導入 し,

Avolio

らによって提案された血流動態モデル

[1]

に血管動 態機序を加えたモデルを構築することで,

FMD

反応時の血流動 態から血管状態の推定を行った.

2 モデルの構成

Avolio

らが提案した血流動態モデルは,動脈を単純な厚肉円

筒管とし,血圧

P

を電圧

V

,血流

Q

を電流

I

として考え,

2

入 力

2

出力の電気回路で全身動脈系を近似的に表現している.こ のモデルは全身動脈系を

128

個のセグメントで表現し,血流速 度及び血圧の基本的な特徴を再現できるが,各セグメントを単 純な円筒管で表現しているため,

FMD

反応のような動的な血管 状態をシミュレーションすることはできない.

この問題を解決するために,計測融合シミュレーションの技 術を用いる.

FMD

検査で得られる血流速度及び血管径変化の 測定データにシミュレーション結果を漸近させる

[2]

.図

1

は血 流動態モデルに血管動態機序を組み込んだモデルの概念図であ る.本研究では,フィードバック則として

PI

制御を用いてお り,フィードバック関数

fx

は,

fx(∆y(t)) =KP x·∆y+KIx·t 0

∆y(τ)dτ (1)

となる.この時,

∆y

は偏差,

KP x

は比例ゲイン,

KIx

は積分 ゲインになる.

循環器系には,一般に動脈圧を一定に保つための広範な制御 機構が備わっていて,

FMD

反応時も血圧値は一定であると仮定 し,提案したモデルでは血圧によるフィードバックを行う.こ の時の目標値として,

FMD

検査時に左上腕部で得られる血圧値 を用いる.

1 23

4 5 6

7 8

9 10

11 12 13

14

15 16 17

18 19 20

21 22

23 24 25 26

27 28 29 30 3132

33

34 35 36 37

38 39 40

41 42 43 44 45

4647 48

49 50 51 52 53

54 5556

5758 59

60 61 6362 6564 66

67

6869 7071

72 73 74

7576

77 78 79

8081

82 83 84

85 8786 88

90 89 91

92 94 93 95

97 96

99 98

101 100 103 102 104 105

106 107 108 110 109 111

112 113 115 114

116

117 118

119120

121 122

123

124

血管径・血流速度・血圧値 測定データ

誤差 フィードバック則

モデルに適応 シミュレーション結果

右腕セグメント

1

モデル概念図

3 血管状態推定シミュレーション

血流動態モデルでは,血管弾性率をヤング率として定義して いるため,

FMD

反応時の血管弾性率低下をヤング率を調整する ことで再現する.血管弾性率低下と血管径変化は

NO

によって

誘発される現象であると考えることができ,ヤング率

E(t)

は飽 和構造を持つシグモイド関数と血管径変化

D(t)

から算出した.

FMD

反応時にヤング率を

10%

20%

30%

40%

低下させた ときの血管径変化

(

)

とヤング率変化

(

)

を図

2

に示す.この 時,最大拡張血管径時の右上腕部にあたるセグメントから得ら れる血圧波形を図

3

に示す.

0.37 0.375 0.38 0.385 0.39 0.395 0.4

vessel diameter [cm]

150 200 250 300 350 400 450 500 550

200 250 300 350 400

Time [sec]

Young’s modulus [kPa]

駆血中 駆血開放

2

血管径変化とヤング率変化

490 490.2 490.4 490.6 490.8 491 85

90 95 100 105 110 115 120 125

Time [sec]

blood pressure [mmHg]

小 大

3

右上腕血圧波形

シミュレーション結果から,ヤング率の低下が大きくなる に従って,心臓からの駆出波で構成される第一ピークが下が り,反射波で構成される第二ピークが高くなる傾向が確認で きる.この結果を定量的に評価するために,

br-AI(brachial- Augmentation Index)

という指標を提案する.

br-AI =

第二ピークの血圧値

第一ピークの血圧値

(2)

ここで,シミュレーションで得られた血圧波形の

br-AI

とヤ ング率の低下率に関して単回帰分析を行った結果が図

4

になる.

0 10 20 30 40 50 60 70 80

0.96 0.98 1 1.02 1.04 1.06 1.08

Decrease in Young’s modulus [%]

br−AI

y=0.001x+0.978 R2=0.9957

4 br-AI

と血管弾性低下率の関係

単回帰分析の結果,ヤング率変化の寄与率は

0.9957

となり,

br-AI

の変化に関与している事が分かった.また,

Sato

らは

FMD

反応時の血管弾性率を超音波を用いて測定しており,橈骨 動脈における血管弾性率は安静時に比べて最大

40%

の低下を確 認している

[3]

.これらは,安静時と

FMD

反応時の血圧波形を

計測し

br-AI

の差を算出することで,血管弾性率を推測できる

事を示唆している.

4 まとめ

本研究では,

FMD

反応時の血流動態を評価するために,血流 動態モデルに血管動態機序を加えたモデルを構築した.その結 果,

FMD

反応時の上腕血圧波形を取得し

br-AI

を算出すること で,血管弾性率を評価できる事が示唆された.また,この検査手 法は,カフによる血圧計測のように容易に実施できると考えら れ,動脈硬化症の早期発見への応用が期待される.

今回行ったシミュレーション解析の結果は,

FMD

反応時の血 圧波形には内皮機能の情報が含まれていることを示唆している.

今後,内皮機能を具体的に評価する手法を確立するため,弾性率 の低下具合と内皮機能に関する検討が必要と考えられる.

参考文献

[1] A.P.Avolio(1980)

Medical & Biological Engineering &

Computing

18

709-718

[2]

近藤 洋平

(2014)

,平成

26

年度修士論文.

[3] M.Sato

H.Hasegawa and H.Kanai

Japanese Journal of Applied Physics 53

7S

07KF03

2014

参照

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