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微小血管吻合における組織血流動態に関する研究

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 関 堂    充

学 位 論 文 題 名

微小血管吻合における組織血流動態に関する研究 学位論文内容の要旨

形成 外科の歴史において先天的、後天的組織欠損の機能的・形態的再建は長い間未解決の 大き な課題であった。1970年代に入りHariiらなどのマイクロサージャリーによる微小血 管吻 合の臨床応用により遊離組織移植の技術が確立され、遠隔部位から大きな組織を微小 血管 を吻合することにより安全確実に移植することが可能になり、再建外科分野では飛躍 的な発達をとげた。本手技は現在では95%と高い成功率が報告されているが、移植された組 織血 流動態の経済的変化などに関する報告は極めて少なぃ。今回われわれは本施設におけ る組 織移植の成績と組織移植後の血流状態にっき、臨床的ならびに動物実験により行なっ た。

研究Iでは、微小血管吻合により 移植された遊離組織の血流動態の長期的な経過について 検討した。移植遊離組織の血管茎動脈血流(FVO)を超音波ドップラーを用いて測定した。症 例は23症例で、すべて頭頚部の再建であり、遊離空腸6、遊離前腕皮弁8、遊離前外側大 腿皮 弁4などであった。すべての症例で吻合血管の同定、血流測定が可能であった。術後1 日目 のFVOについて異なる移植組 織、異なる吻合動静脈、術前照射の有無について比較し た。23症例のうち17症例については術後1,4,7,14,21,28日目での測定を行い、術後の血 流変 化についても比較した。異なる吻合血管での1日目のFVOには有為な差異が認められ なか った。しかし、遊離空腸のFVOは他の皮弁と比較して有意に多かった。またFVOの経 時的な変化は術直後から術後7日目までは漸増し、以降28日目まで漸減する傾向を示した。

遊離 空腸の血流量は経時的にあまり減少しない傾向が認められた。術後28日で動脈閉塞の 症例 が見られたが、皮弁は完全生着していた。2症例において術後1日、1症例において術 後2日目に静脈血栓を認めた。静脈血栓時、超音波ドップラーで波形の変化、FVOの減少を みた。静脈血栓の除去、再吻合ですべての皮弁は救済され、ドップラー波形、FVOも回復し た。 この研究で超音波ドップラーは皮弁血管茎の血流測定のみならず、血栓の早期発見に も非常に有用であると考えられた。

また 血管茎からの血流が途絶していると思われる症例が存在し、同様の事象が長期的に起 こっ ている可能性があり、今後さらに長期的な血流量のフオローによる血流動態の評価が 必要と考えられた。

研究IIにおいては、有茎腸管移植における血管付加吻合の有用性にっき検討を行なった。

食道 癌などによる胸部食道切除後の再建には通常胃管が使用され、胃管が使用不可能な場 合に は有茎空腸、有茎結腸などが使用される。しかし、いずれの方法をもちいても再建臓 器口 側の血流不全による部分壊死、縫合不全が生じることがある。我々は同部位の血流不 全を 改善するため、微小血管吻合をもちいた血管付加吻合を行なってきた。過去11年間に 血管 付加吻合を行なった胸部食道切除後、食道全摘後、咽喉食道全摘後に血管付加吻合を

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行った食道即時再建82症例について臨床的な検討を行なった。

再建方 法は胃管7,延 長胃管6,有茎結腸26,有茎空腸43であった。口側の色調、血流が 不良の場合のみ、腸管の血管付加吻合を行なった。血管吻合はすべて顕微鏡下に9ーOまた は8−Oナイロンを用い、端端または端側吻合にて行なった。82症例中79症例は動脈1本、

静脈1本の計2本、 レシピ ェント血管との吻合を行なった。他の3例は動静脈のいずれか1 本のみ吻合した。すべての症例において血管付加吻合後移植腸管の色調、血流は著しく改 善した。術後の透視にて2例に瘻孔をみたが保存的に治癒した。2症例において移植腸管口 側の部 分壊死を認め、1例は保存的に治癒、1例は遊離空腸による再建を要した。2症例に おいて 表面の皮膚が壊死し、うち1例は植皮術を要した。経過観察中に術後狭窄等は認め なかった。

本研究により有茎腸管移植における血管付加吻合は再建臓器の口側血流不全の改善に非常 に有用であることが示唆された。

研究IIIにおいては、イヌを用いた有茎空腸モデルを作製し、血管付加吻合時の血流動態 について研究をおこなった。本研究ではレーザー血流計を用いて有茎腸管作製時、空腸動 静脈結紮時の血流変化を、また動静脈の腸管生着に関する優位性について検討した。  実 験には体重8ー10kgのメスNorthern Beagle Dogを用いた。  腹部を切開し、空腸を露出、

第1,2,3空腸動静脈を同定する。測定点は第1空腸動静脈流入端で腸管切断する予定点a, 第2空腸動静 脈の流入 点b,第1空腸動脈 と第2空腸動 静脈の 弧が交叉 する点をcの3点と した。 実験1では腸管切断前後および第2空腸動静脈結紮切断後の組織血流変化を以上の3 点で レ ー ザ ー血 流 計 を用 いて イヌ6頭にっ き測定し た。  実 験2で は実験1終了 後、有 茎空腸に連続した第1空腸動静脈を操作し1)動静脈を結紮切断したものN、2)動脈のみ結 紮切断し静脈のみ残したものV、3)静脈のみ結紮切断し動脈のみ残したものA、4)動静脈を 剥離の みしたものAVをそれぞれ1頭ずつ作製した。血行動態が安定した1時間後にa,b,c 点の組織血流を同様に測定し比較した。また術後24時間で作製した有茎空腸の生存域を計 測し、動静脈の腸管生存のための優位性について検討した。

  実験1では腸管切断前、腸管切断後、第2空腸動静脈切断後のa,b,c点の組織血流量に おいて各測定点間の血流量に有意差は認められなかった。また各測定点における組織血流 測定では有意な変化を認めなかった。

  実験2では第1空腸 動静脈 の操作後1時 間の各測 定点の組 織血流量においてN,Vでは血 流量はと著明な低下を示したがA,AVにおける血流量は大きな変化が認められなかった。術 後24時間の有茎空腸生存域はAV,Aが100%,Vが20y0,Nが21%であり、血管操作後1時間値 が5ml/min/100g以下の部位は壊死に陥っていた。本研究により有茎空腸において遠位部の 生着に毒ま動脈血の流入のほうが静脈血の流出よりも重要であることが示唆された。また静 脈 血 の 流 出 は 隣 り 合 う 血 管 の ア ー ケ ー ド を 通 じ て な さ れ る こ と が 示 唆 さ れ た 。 研究II,IIIより現在まで行ってきた血管付加吻合は動脈、静脈の両方を吻合していたが、

動脈のみで充分な症例もあると考えられ、今後各症例の評価により必要な吻合血管を見極 める必要があると考えられた。

‑ 86

(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

微小血管吻合における組織血流動態に関する研究

  組織移植の臨床成績と組織移植後の血流状態についての臨床的研究およびイヌを用いた空 腸血管付加吻合の検討を行った。

  研究Iでは微小血管吻合により頭頚部に移植された遊離組織の血流動態の長期的な経過に ついて 臨床的に検討した。移植遊離組織の血管茎動脈血流(FVO)を超音波ドップラーを用い て測定 した。術後1日目のFVOについて異なる移植組織、異なる吻合動静脈、術前照射の有 無について比較した。23症例のうち17症例については術後1,4,7,14,21,28日目での測定を 行うこ とができた。術後の血流変化についても比較した。異なる吻合血管、吻合血管での1 日目のFVOには有為な差異が認めら れなかった。しかし、遊離空腸のFVOは他の皮弁と比較 して有 意に多かった。またFVOの経 時的な変化は術直後から術後7日目までは漸増し、以降 28日目 まで漸減する傾向があった。遊離空腸の血流量は経時的にあまり減少しない傾向が あった 。3症例において静脈血栓を 認めた。静脈血栓時超音波ドップラーで波形の変化、

FVOの減少をみた。この研究で超音波ドップラーは皮弁血管茎の血流測定のみならず、血栓 の早期発見にも非常に有用であると考えられた。

  研究IIにおいては有茎腸管移植における血管付加吻合の有用性にっき臨床的検討をおこ なった。食道癌などによる胸部食道切除後の再建にて再建臓器口側の血流不全による部分壊 死、縫合不全が生じることがある。我カは同部位の血流不全を改善するため、微小血管吻合 をもち いた血管付加吻合を行ってきた。過去11年間に血管付加吻合をおこなった食道即時 鴛建82症働にりいて検討した。

再建方 法は胃管7,延長胃管6,有茎結腸26,有茎空腸43であった。口側の色調、血流が不 良の場合のみ、腸管の血管付加吻合をおこなった。血管吻合はすべて顕微鏡下に端端または 端側吻 合にて行った。術後2例に瘻 孔をみたが保存的に治癒した。2例において移植腸管口 側の部 分壊死を認め、うち1例は遊 離空腸による再建を要した。2例において表面の皮膚が 壊死し 、うち1例は植皮術を要した。本研究により有茎腸管移植における血管付加吻合は再 建 臓 器 の 口 側 血 流 不 全 の 改 善 に 非 常 に 有 用 で あ る こ と が 示 唆 さ れ た 。   研究IIIにおいてはイヌを用いた有茎空腸モデルを作製し、血管付加吻合時の血流動態に ついて研究をおこなった。本研究ではレーザー血流計を用いて組織血流変化を、また動静脈     ― 87―

男 樹

明 平

浪 原

三 杉

授 授

教 教

査 査

主 副

(4)

の 腸管 生着 に 関す る優 位性 に つい て検 討し た。 実 験で は腹 部を 切開 し 、空腸を露出した。測 定 点 は 第1空 腸 動静 脈流 入端 で 腸管 切断 する 予定 点a,第2空 腸動 静脈 の 流入 点b,第1空 腸動 脈 と 第2空 腸 動 静 脈 の 弧 が 交 叉 す る 点cの3点 と し た 。 実 験1で はa点 口 側 で 腸 管 切 断 前 後 お よ び 第2空 腸 動 静 脈 結 紮 切 断 後 の 組 織 血 流 変 化 を イ ヌ6頭 に っ き 測 定 し た 。 実 験2で は 実 験1終了 後、 有茎 空 腸に 連続 した 第1空腸 動静 脈 を操 作し1) 動静 脈を 結紮切断したものN、 2) 静脈 のみ 残 した ものv、3) 動脈 のみ 残し たも のA、4)動 静脈 を剥 離 のみ した ものAVをそ れ ぞ れ1頭ず つ 作製 した 。1時間 後にa,b,c点の 組 織血 流を 同様 に測 定 し比 較し た。 ま た実 験3で術 後24時 間で 作製 した 有 茎空 腸の 生存 喊を 計 測し 、動 静脈 の腸 管 生存 のた めの 優 位性 について 検討した。

  実 験1では 各 操作 前後 の各 測 定点 での 組織 血流 量 、異 なる 測定 点で の 組織 血流 量に 有 意差 は認めら れなかった。

  実 験2で はN,Vで は 組 織 血 流 量は 著明 な 低下 を示 した がA,AVにお け る組 織血 流量 は 大き な 変 化 が認 めら れな か った 。術 後24時間 の 有茎 空腸 生存 域 はAV,Aが100%,Vが20%,Nが21%

で あっ た。 本 研究 によ り有 茎 空腸 にお いて 遠位 部 の生 着に は動 脈血 の 流入のほうが静脈血の 流出より も重要であることが示唆さ れた。

  公開発 表にあたり副査近藤哲教授 より,1)臨床的にsuperchargeを行わない場合はどうか,ま たその経 験はあるか、2)動脈のみを 吻合した場合,臨床的な消 化器手術の場合においても静 脈 は辺縁静 脈を通じて還流するのが観 察されるが、静脈結紮した場 合、壁内のみの静脈還流で腸管 は生着す るかについて質問およびコ メントがあった。次いで,主 査三浪明男教授より,1) FVO はどの部 位で測定するか,2) FVOの計測で深度の影響などはあるか,3)臨床上付加吻合は動脈の みでよい のか,4)皮弁に対して血流 流入量の多すぎると思われる症例が臨床的にあるがどのよう に考える かについて質問およびコメ ントがあった。次に副査杉原 平樹教授より,1)皮弁と腸 管 のFVOの 違いは計測時点、血流変化の パターン、血流量について 異なるがその原因はどこから く るのか,2)動脈のみの付加吻合の適応,について質問およびコメントがあった。いずれの質問に対 し て も , 申 請 者 は 自 ら の 研 究 内 容 と 文 献 を 引 用 し , 妥 当 な 回 答 を し た 。   この論 文は大動物実験モデルにお ける有茎空腸付加吻合の血流 動態、動静脈の優位性に対する 研究を初 めて行い、動脈付加吻合が 静脈付加吻合よりも有茎空腸 遠位部の生存に重要であること を示した 点で高く評価され、今後臨 床面においての応用が期待さ れる。また移植遊離組織の血流 動態の長 期的変化を初めて報告し、 遊離腸管と遊離皮弁の違いを 明らかにしたことより、臨床的 な長期血 流観察の重要性を示唆し、 今後の研究に応用が期待され る。

  審査員 一同,これらの成果を高く 評価し,申請者が博士(医学 )の学位を受けるのに充分な資 格を有す るものと判定した。

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参照

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85 ︵O・も。替日pぎ貯9二母臼。宣濤お。。卜。\こ。F巳斤宕96三㌫。・戸旨 ぎ⇔H拐目︶ 謄嚢胃吻合術、臆嚢十二指腸吻合術、縛