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埼玉大学紀要 教育学部 ,5 7( 2 ):1 05 ‑1 21( 2 0 0 8)

虫 との関わ りが幼児の社会性の発達に与える効果について

山下 久美*・首藤 敏元**

虫の飼育は、幼児に 「 命への理解や思い 」 「 思いや り」を育む効果を持っていることが前研究 ( 山下・ 首藤, 2 0 0 5 ) で示された。社会性の発達援助は幼稚園 ・保育園において今 日的重要課題であるため、本研究は、虫 の飼育が社会性の発達を促す効果について再度検討を行った。その結果、子 どもと虫の関わりについて明確 なねらいを持って保育 している 5 3 人の保育者たちの観察事例によっても、それらを獲得 してい く過程が確認 された。さらに 「 仲間関係を育てる 」 「 子 どもの表情が活 き活 きして くる 」 「 責任感がつ く 」 「自尊感情が高 まる」についても、飼育経験効果が示唆される結果であった。特に 「 仲間関係を育てる」については顕著で あ り、幼児期の社会性の発達を促す効果は大きいと思われる。

キ ー ワー ド :幼 児教 育 、 虫、飼育 、社 会性 の発 達 、生命

Ⅰ 問題 と目的

現代 日本の抱 える問題 として、若者の思いや りのなさ ( 中里 ・枚井、1 9 9 7 )や、子 ども同士 のい じめの問題があ り、 これ らが クローズア ッ プされるようになってか ら久 しい。 また最近で は命 を軽視す る風潮 を、危倶す る声 も高 まって きている。 これ らに対 して様 々な角度か ら打開 策が試み られ、小 ・中学校 においては 「 命の大 切 さを知 らせ る」 また 「 思いや りを育む」ため の授業研究な ども盛 んに行われて きた。

これ らは必要不可欠なことではあるが、 もっ と低年齢か ら思いや りの気持 ちを持つ こと、つ ま り他者への視点取得 は可能であることが最近 の幾つかの研究か らあ きらかになって きている ( 首藤 、2 0 0 1 ) 。つ ま り幼児期 は、この ような社 会性の育 ち‑ の第一歩 を築 く重要 な時期であ り、

この年齢 における社会性 の育 ちについての研究

◆東洋英和女学院大学

事'埼玉大学教育学部乳幼児教育講座

が、今後、 さらに求め られてい くと思われる。

そ こで本論では、その具体的な援助方法 とし て、虫の飼育 について検討 を行 う。幼稚 園や保 育園における虫の飼育は、既 に前研究によって、

子 どもたちの生物概念形成の援助 となるだけで な く、「 命への思い」や 「 他者への思いや り」を 青 くむ ものである ( 山下 ・首藤 、2 0 0 5 ) ( 山下、

2 0 0 6 ) ことが示 された。 これ らは、幼児への直 接 のインタビュー調査 によって得た結果ではあ るが、子 ども達の園での成長の姿 を把握す る調 査では、なかったため、幼児が どの ように命 に ついて学んでい くのか、あるいは思いや りを獲 得 してい くのか、その過程 を明 らかにす ること はで きなかった。 しか し、幼稚 園や保育園の中 で、幼児 と虫の関わ りか ら、 この ような社会性 の発達 を実際に援助するときには、その過程や 子 どもの姿 を知 ってお くことが望 ましい と思わ れる。そのため本研究では、以下の二つのこと を目的に調査 を進める。

まず、前研究の中で示 された飼育経験効果が 実際の保育場面の中で観察 されているか を確認

‑ 1 0 5‑

(2)

すると同時に、子 ども達が どのように命への理 解や思いを深め、思いや りを育んでいるのか、

その成長の姿 を把握する。

第二 に、今 までの研究では明 らかになってい ない、その他の社会的な発達への影響 を知るこ とを目的 とする。すなわち保育現場 における虫 との関わ りが、幼児期の情緒的な成長にどのよ うな影響 を与えているのか、観察 されている姿 か ら、その飼育経験効果 を検討することとする。

Ⅱ 方法

1 調査対象

虫の飼育を保育計画の中に明確 に位置づけ、

目標 を持った活動 として行っている個々の保育 者、あるいは園全体で、 このような方針の下、

保育 を行 っているという保育者 を対象 に調査 を 行 う。なお、いずれ も保育経験年数が 3 年以上 の保育者 を対象 とする。

女性 は男性 より虫に対する苦手意識が強 く、

幼稚 園は若 い女性が多 い職場 であ るため ( 山 下 ・首藤 、2 0 0 4 ) 、このような条件 を満たす園、

または個人は、一般的ではないが、 2 つの保育 園 と 9 つの幼稚園か ら協力 を得て、計1 1園に在 職する5 3 人の該当者に対 して調査 を行った。

それぞれの園の地域、園数 と該当保育者数を 以下に示す。

国立市 ( 保育園 ‑ 2 園 、2 0 人)、国立市 ( 幼稚 園‑ 1 園 、 1 1 人)、府中市 ( 幼稚園‑ 1 園 、7 人)、杉並区 ( 幼稚園‑2 園、 6 人)、千代田 区 ( 幼稚園 ‑ 1 園 、3 人)、新宿区 ( 幼稚園 ‑

1 園 、 2 人)、豊島区 ( 幼稚園 ‑ 1 臥 2 人)、

三鷹市 ( 幼稚囲 ‑ 1 園 、1 人)、練馬区 ( 幼稚 園‑ 1園、 1人)

2 手続 きと調査時期

上記のように条件 を絞 り、該当園及び該当保 育者 を探 した。各園、 または個人に電話連絡の 上、手渡 し及び郵送 によってアンケー トを送 り、

郵送によって回収 した。回収率は 1 0 0 % であった。

調査は 、2 0 0 4 年 5 月 〜9 月に行 った。

3 調査内容

個々の保育者が、観察 した事例 によって、虫 の飼育が幼児に社会性や情緒の発達に良い影響 を与 えているか どうかの調査 を行 う。具体的に は以下のようなアンケー トによって、事例の収 集を行った。

○幼稚園 ・保育所 などでムシを飼育することに よって社会的 ・情緒的な発達に影響があると 思われますか。 もし以下のような事柄 につい て、ムシの飼育によって幼児 に良い影響があ ると感 じられたことが、あれば、それぞれの 項 目について、実際にあった事例 を ( 幼児の 年齢、飼育 したムシ、 どのようなことがあっ たかを)なるべ く具体的に、お書 き下 さい

・命への理解、思いを育む ( 命の大切 さに ついて知る)

・仲間関係 を育む

・思いや り ・や さしさを育む

・責任感 を持つ

・自尊感情 を高める

・子 どもの生活や表情が活 き活 きとする

・人の話が聞けるようにな り、落ち着 きが でて くる

・その他

上記の項 目については、前回までのアンケー ト調査結果 ( 山下 ・首藤 、2 0 0 4 ) か ら得た、園 で虫を飼育するね らいの項 目に、虫の飼育を日 常的に行っている園の保育者が、社会性の発達

に良い影響 を感 じると回答 した ものを付け加 え て設定 した。 この園の保育者数は 4名、全員ク ラス担任 を してお り、調査 はイ ンタビi一に よって行った。付 け加 えた項 削 ま 、 4 名全員が、

飼育経験効果を感 じると回答 した ものに限定 し

た。

(3)

Ⅱ 結果 と考察

今回の調査では 「 虫の事例」 を依頼 したが、

カエル ( オタマジャクシ)やザ リガニなどの事 例 も含 まれていた。 これ らの動物 を虫 と呼ぶか どうかは、定かではないが、 日本人の虫の概念 はもともと非常に暖味で、蛇 という漢字にも虫 偏がついてお り、昆虫類 は勿論のこと、 カタツ ムリのような貝類 を含んだ り、 ダンゴムシのよ うな甲殻類 も含 まれているため、本論では、こ れ らも虫 として扱 う。

回答 として、先に示 した 7 項 目に対 して全体 で1 5 4 の事例が挙げ られた。 これ らは、 調査者が カテゴリー化の判断をしたのではな く、回答者 自身の挙げた項 目に沿って行った。各事例 を詳 細に見てい くと、他の項 目にも関係 してお り、

必ず しもこの項 目だけに該当 しない と思われる もの もあったが、回答者の分類 を尊重 した。

また今回の回答の中には、調査者の求めた内 容の とお りではないもの も存在 した。調査依頼 の内容はⅡの 3に示 したように、子 どもの具体 的な事例であったが、記述 された内容の中には 具体性が全 くないものも含 まれていた。 これ ら は、 日々の保育の中か ら得た保育者一人一人の 実感であ り、経験智ではあるが、客観的に子 ど もの姿 をとらえるための資料 とはな りに くいた め、本論では除外 して考察を進める。

結果 として 「 仲間関係 を育む 」 「自尊感情 を高

める」の項 目には除外 された ものはなかったが、

「 命への理解や思い」26 例中 2 例、「 思いや りが 育つ」28 例中 6 例、「 子 どもの生活が活 き活 きし て くる 」2 5 例中 3 例、「 責任感を持つ 」1 7 例中 3 例が、具体性がな く、感想のみを記 した もので あった。ただ し、具体的な子 どもの言動につい て語 られていない ものについて も、保育者の働 きかけが読み取れるもの、また虫 と関わ りが、

何故子 どもの社会的発達に影響 を与えているの か、示唆 を与えるようなものについては、考察 の参考資料 とした。

今回は、事例の内容 を検討することが 目的で

表 1 社会的発達の効果項 目に対 してあげられた事例 数 と事例 を挙 げた保育者の割合

実数 割合 内容の分

3 4 6 4% 仲間関 類 係 を育む 2 4 4 5 % 思いや り .

や さしさを育む 2 2 4 2 % 令‑の理解 や思い .命の大切 さ重

みについて知る 2 2 42 % 子 どもの生活や

表情が活 き活 きし て く

1 1 4 4 2 2 6 6 % % 責任感 を持つ 自尊感情 を高める (自信がつ く) る 9 1 7 % 人

の話が聞けるようにな り、落ち 着 きが

でて くる

1 2% その他 一家族で共感で きる喜びを

育てる など あるが、事例数が多 く目撃

されているとい うこ とは、それだけその経験効

果が観察 されている ことで もあると考えて、各項 目の

事例数を表 1 に示す。 この表か ら分るように、

5 3 人中3 4 人以 上の保育者が 「 仲間関係 を

育む」 についての事 例 を挙げてお り、前回の調査

の中で保育者が最 も学んで欲 しい と感 じていた

「 命への思い」 と、

その次にあげ ら

れていた 「 思いや り」 よりも、

事例数が多い と

いう結果であった。

これは理由として、仲間

関係が育つ様子 は、

命への思いが育つ というよ

うな内面的な育ちよ りも、表面に現れ易 く、書

き止め易いというこ とが考えられるだろう。 し

か しこの仲間関係が 育つ

効果については、考察 を進める中で再度検 討 を加

えたいと考える。

以下、本論の 目的 1、 2 に

沿って、項 目別に あげ られた事例 を検討する。

この考察の中では、

代表的な事例 を 2‑ 3 例ず

つ挙げて、検討 を加 えてい く

が、その他の事例 も全て、本論の最後 に資料 とし

て添付する。

1 「 命への理解、思いを

育む」と 「 思いや りを 育む」に関する子ど

も達の観察 される姿 この 2 つの項 目について

は、既に子 ども‑の

直接的な調査により、飼育経験効果が認

(4)

もの成長の姿 を確認 し、 どのように育 まれてい るかについて把握する。

(1)「 命への理解、思いを育む」子ども達の姿と 保育者の働きかけ

塑 ユ 5 歳 児 。 密 H産着 をLで威 容L でいた アタン1 の励虚がサナデに7 ?っカが.超の虚 に勿 虜の犀に卵 をうみつけ られ て、サナギの中か ら 違 う勿 虐が でできて、 アダン1 に7 ?ら7 j T F かっ / i ‑ o

rど うL でをのか7 ?? J r か わいそ う‑Jという チビる7 1 ‑ちに 教 飾 るば Cめは虐 (分か らず:

虞 に詳 L , い超の教師に房 をノ 野いf Jom } / Eと英 に その房 を 願 い で・ ・ . rそん7 ?ことがあるのか. ? ! J と夢 Co アクツ、 に7 iる 摩 しぎを感 L : 名草 で、子 ど87 1 ‑ちる命のばか7 ?さ、̲ 憂さ、登 きることの 大変 さを感 C でい7 1 ‑ 0

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ケースか らB Lで資房 を L j 1 ‑ク腰 っ7 1 ‑ クL てい j l l o卵か ら赤 ちゃんダ ンゴム シが貯った呼にば 茸 で喜ん 卓盛んに月 てい7 1 ‑ 0 その うちに 暑さ

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密H 虜L ん で願ってい f J Z 拭 いつ るのよ うにダ ンゴムシを# ち1 げた ときに 秀ん でいること に克 づ● き 、倭 ん で る! Jと、磨 いた腰子で、ダ ンゴムシ を. 好 ク蕗とL jL ・ 0 そL で手 をダ/ っ道め、

思 そ うに好ん でいるダ ンゴム シを月 つめ、その タン ゴムシに枕 射 れ7 2(7 ?ったo そのことを, 適

L て、その子を クに三 好 を受 け止 め7 1 ‑ことが分 か っ7 1 ‑ o ij l ・ 今まで 粛L ん でい7 1 ‑ 時にば、轟か に命 を感 L :ていたのだ と知 っ/ i ‑ 0 こう L た経験 を 題L で倉と ; 好を感 Cる願 を L てい (のピ と 思 うo

上記の例か らも分るが、資料 も含め、 この項 目で挙げ られた事例全体 を見通す と、子 どもた ちは、む しろ虫の死 を通 して命 を感 じてい く ケースが多いようである。

事例 1 は、 自然界では、 日常的に起 こってい ることであるが、飼育者にとっては少 々ショッ キングな寄生虫によって死んで しまったアゲハ の例である。 また 2 は、命 を大切に感 じるだけ でな く、子 どもの死への恐れや、忌む気持ちが

表れている事例である。その死 を目の前 にした 子 どもの様子か ら、虫を命あるものだと感 じて いたことに、保育者 自身 も気づかされている。

この ように自然のいとなみの中で起 こる死に よって、幼児は命について学んでい くが、その ようなケースばか りでな く、その他の資料中の 事例か らは、 幼児であるがゆえに、 力加減を誤っ て死なせて しまった り (4、 5 ) 、あるいは興味 か ら意図的に乱暴 に扱い、 殺 して しまった り( 1 4 、 1 6 ) 、ということを繰 り返 し経験 していることが 分る。そ してこのような経験 を経て、命 に気づ いてい くことが観察 されている。

これが晴乳類や鳥類などであれば、その死 に 様 は人の心 に強い衝撃を与える可能性が高 く、

その意味で も動物 を乱暴 に扱 う幼児に対 して、

保育者は子 どもたちにその命 を預けきることは で きないだろう ( 藤崎 、2 0 06 ) 。 しか し虫は、藤 崎の指摘 にもあるように子 どもたちにとっては 自主的な関わ りを許 される存在であ り、それゆ えに虫の死や命について、幼児一人一人が 自分 自身の行動 と併せて考えざるを得 か 、 状況を作 り出す と言える。ある程度の年齢 に達 してか ら、

虫に対 しての自分の残酷な行動に自ら気が付い て、そのようなことをしな くなったと言 う人は 少な くない。

ただこの時に、保育者が子 どもの手に虫の命 を委ねているとは言って も、ただ漫然 とそれを 見ているわけではない。見守る保育者が持って いる役割 もまた非常に重要であると思わされる。

保育者たちは、幼児の虫に対する関わ りが不本 意であっても、強 く制止することはせず、子 ど

も達 自身が考えられる余地を残 しなが らも、 自

分の想いを伝 えることをしている。すなわち小

さな命ではあって も、大切 に扱って欲 しいとい

う思いを言葉や態度で示 しているのである ( 辛

例 9‑2 4) 。それは、虫 と関わる、子 ども達に対

して繰 り替えし送 られるメッセージである。そ

の意味において周囲の大人が持 っている命に対

する想いは、幼児にとって、非常に重要である

と思われる。

(5)

以上、幼稚園や保育所の中で虫 と関わ り、命 について どのように学んでいるのか、24の事例 か らその様子が明 らか となった。

(2) 「 思いやりを育む」子どもの姿と保育者の働 きかけ

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これ ら思いや りの事例か ら見えて くることは、

虫が、 自己中心的な世界観 を持 っている幼児に、

相手の立場 に立って物事 を見るきっかけを与え る存在 になっている、 ということである。多 く の大人にとっては、「 虫け ら」という言葉で表現

されるような存在ではあるが、幼児 にとっては、

命ある奥味深い対象であ り、飼育するときには、

飼お うとする虫が、 どのような餌や環境 を必要 としているのかを真剣に学ぼうとする。

事例 1 を見ると、子 どもたちが、 この虫を発 見 したのは偶然ではな く、それを目的に園外 に 出かけてい き、穴 を掘って、虫を取 り出 したこ とが伺 える。見つけた虫は、傷つけまいと、お そ らく細心の注意 を払いなが ら手か ら手へ と移 して観合 ったのであろう。幼児達がこの幼虫に

興味を持っていたことは、間違いない と思われ る。 しか し、「 いつ もの 『 持 って帰ろう』の声 は 誰か らも発せ られることはな く」 と言 う保育者 の記述か ら、虫を元の棲み処に戻 したのは、子 ども達の自主的な行動であったこと、そ してこ の子 ども達の反応 を保育者がやや意外 なことと して受け止めていたことが分かる。年中クラス の後半時期、おそ らく保育者は、 今 までになかっ た様子 を示す子 ども達の育ちを喜び、「 思いや り の」事例 としてここに記述 したのであろう。

事例 2 か らは、「 虫は自分の気持ちをお話 しで きないか ら」 という言葉がでた ということで、

子 どもたちが、 どのようにした ら虫に快適な環 境 を与えて飼育 し続けることがで きるのか、 自 分達な りに考えようとしている様子が見 える。

このように成長 してい く過程の中では、事例 3 か らも分るように、保育者の働 きかけが、 日々 あった と考えた方が 自然であろう。

資料中の他の事例 も同様であるが、虫に対す る子 ども達の自発的な気付 きと共に、その子 ど も達の背後に居て、思いや りの気持ちを育 もう と支えている保育者の姿見がえて くる。飼育 と いう機会を通 して、周 りの大人 ( 保育者)が、

子 どもには見 えていない虫 ( 他者)の視点を知 らせ るための言葉を頻繁にかけることの意味は、

小 さくないだろう。結果 として、子 ども達は、

他者の立場にたって物事 を見るよう促 され、思 いや りが育 まれてい くと推察 される。虫は保育 者のこうした働 きかけの、良い きっかけとなっ ていることが、見て取れる。

2 その他の社会的な発達への影響

前項 目において、幼稚園や保育所の中で虫 と 関わ る子 どもた ちの 「 命へ の理解 や思い」 と

「 思いや り」 を育んでい く様子が明 らか となっ たが、その他の社会的な発達への影響 について はどうであろうか。観察 された事例か ら、各項 目の効果について、以下に検討 を行 う。

(1)仲間関係を育むことへの影響

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(6)

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以上事例 1‑ 3 のように 「 仲間関係 を育む 」

効果 としては、虫を媒体 に人間関係が育 まれる というような事例が多かった。対象物が何であ れ、互いに興味や関心 を共有することがで きれ ば、交流が生 まれて人間関係が育つことは、想 像 に難 くない。その点で も虫は、 自ず と幼児の 興味を強 く引 き付 けるものであ り、今 まで関係 が無かった子 ども同士に、話 し合 うきっかけと、

共感の機会を与えている。

事例 1 では、保育園での 1 歳児 と3 歳児交流 が観察 され、幼稚園では最年少の 3 歳児が 、 1 歳児に対 して年長児の気遣いを示 している。た

とえ虫のような小 さな存在であっても命あるも のであることか ら、その命 を囲んで幼児の中に 会話が生 まれるときに、無生物 を媒体 とした交 流にはない、暖かな情緒的な関わ りが生 まれて くることが多いようである。それは資料中の事

例 2 0 にもあるように、「 子 どもたちが一緒 に気 に かける対象がいると、クラスに一体感が生 まれ て くる。 」というような質の ものであるといえる だろう。

さらに虫は、普段友達 とあま り関わ らない、

あるいは関わ り下手な幼児が、一人遊びの対象 として選ぶことがあ り、 この場合 にも事例 3 や 23 で観察 されるように、子 どもたちが共通の話 題にLやすい ものであることか ら、人間関係 を 広げる一助 となっている様子が伺 える。

この仲間関係 を育む効果は、資料中の事例内 容 を検討 した結果において も、保育者たちが感 じているように、充分効果のあるものだと言え るのではないだろうか。 また、 この項 目の事例 数の多 さは、単に事例内容が 目撃 されやすい種 類の ものであるというだけでな く、実際に仲間 関係 を育む効果が大 きいこととも関連 している

と考えられるだろう。

(2 )生活や表情が活き活きすることへの影響 壁 土 5 6 / I Eo カ ブj t ム シが成劇 =7 ?って m

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幼児が虫 と関わることによって活 き活 きして くる理由は、主に三つに分け られていた。

一つ 目は、完全変態する昆虫の劇的な羽化 を 目撃 して感動 したことか ら活 き活 きとした とい うような例で、事例 1 が代表するものである。

資料中の事例 4‑ 6 においても、命の不思議 さ

(7)

や 自然の仕組みの面白さに触れて、おおいに喜 び、 日を輝かせてルーペで虫を見入 る子 どもの 姿が観察 されている。幼児 にとって初めて見る 小 さな生 き物達の世界は、驚 きにあふれてお り、

様々な感動 を呼び起 こす ものだろう。

二つ 目は、虫 との関わ りか ら自信 を持つ こと がで き、人間関係が広がって、結果 として 日々 の生活が意欲的になったというケースである。

詳 しくは、この後に 「自尊感情 を高めること」

の項 目の中で考察するが、事例 2 や 3 に代表 さ れ 、7‑1 0 にも見 られるように、虫 との関わ り をきっかけに、子 どもの様子がそれ以前 とは変 化 していることが観察 されている。 これ らは、

先 に挙 げた 「 仲 間関係 を育 む こ と」 と、後 の

「自尊感情 を高めること」の中に、含めること もで きるような事例であるが、保育者は、結果 として幼児の生活が活 き活 きとして きたことに 注 目して、 この項 目の事例 としてあげたのだと 思われる。

三つ 目は、虫が子 ども達の愛情の対象 とな り、

子 どもの生活が活 き活 きとして くるというケー スである。事例 3 の 「 『 虫 さんにご飯 をあげる の !』 と、楽 しみにするようにな り‑=・ 」 とあ るように、人は幼児であって も、愛 されるだけ でな く、 自らも愛情 を注 ぐ対象 を求めるもので ある。ぬい ぐるみなどを愛着の対象 とする幼児 であるが、無生物 とは異な り、虫たちは、小 さ くても着実にその成長ぶ りを見せて くれる。そ れは幼児にとって、興味 と愛情 を持ち易い存在 だ と言えるだろう。事例11の、毎朝オタマジャ クシの水槽 を覗いて 「 今 日もお兄 さんになって るかな ?」 と言 う様子や、 また 1 2 ‑1 4 の育った 蝶 を逃がす ときの嬉 しそうな様子か らも、小 さ な生 き物‑愛情 を感 じていること、そ してそれ が子 どもたちを活 き活 きとさせていることが窺 える。

以上の内容か ら、虫 と関わる生活には、子 ど もたちが活 き活 きとさせる効果があることが、

見て取れる。

(3 )責任感を育てることへの影響

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バ ッタ を 囲 ってい7 1 ‑ チビるj きちと、府 謬 L 、金 屠H の犀園犀にば、B分7 きちでバ ッタを園庭に 遇がすことに L jro そL で 、i7 1 ‑ 月 曜H か らバ ッ タとクやG H ‑ g声を 発 L , ん 7 1 ‑ 1 1 0 こ う Lた虎 ク 避 L を、

1 ケ月半 (らい. 好 ク戯んだ ことで 、 B分7 1 ‑ちで 産着 をする東岸 ちが 穿っていっ7 1 ‑ 0

前項 目で挙げたように、幼児 は虫達に愛情 を 覚え、その世話 をすることに喜 びを感 じる。事 例 1 では日々大 きくなる幼虫に喜びを感 じなが ら、 自主的に餌 を毎 日持って くる幼児の姿があ る。事例 2 では、時には、世話 を忘れそ うにな る幼児に対 して、カマキ リの、「 ぺ っちゃんこに なる」お腹が、給餌 を思い出させて くれている ようである。事例 3 では、子 どもたちは保育者 のリー ドのもと、休 日の対処ついて考え、解決 策 を見出 して 、 1 ケ月半飼育を続けることがで

きたということである。

虫に興味を持つ、愛情 を感 じるということは、

幼児にとって世話 をするための最 も重要な動機 ではあるが 、 6‑ 8 の事例か ら分ることは 、 3 歳児 クラス、 4歳児 クラス時期 に年齢 に即 した 保育者の働 きかけがあって、 5 歳児の姿がある

‑ 1 1 1‑

(8)

ということである。「 継続的な世話ができる 」 「 責 任感を持つ」 までになるには、年齢 とともに、

こうした意識 を育てるための、時には失敗 を含 めた繰 り返 される体験が必要なのではないだろ うか。

動物 を飼育することによって、責任感が育つ という事例 は、一般によく耳にすることであ り、

多 くの人にとって異存のない ところだと思われ るが、以上のように、虫であって もその役割 を 果たす可能性 は高いようである。 また 「 命への 思い ・命の大切 さ」の項 目の中で も述べたが、

虫はその飼育の責任 を子 ども達 自身が任 される ことも多いため、幼児にとって、 より責任感 を 育む機会 を生み出 しているともいえるだろう。

(4 )自尊感情を高めることへの影響

量壁土 粛L をすることの少 をかっ7 1 ‑ 男児、庭 で厚顔 と虚 をみつ妖 テン i tウム シガ と教え て あらい 、 rこればテン i tウム シどよ / Jと、友だ ちにB せ7 1 ‑ 0床辞者 るr すごい / Jと褒め , r / p J テン i tクムシか、 名静 を粛ベ7 1 ・らお る L ろい ねJ

と 粛 L , 合 い,奇兵に名 静 を粛べ ていった0今 で ばク ラスの中で 佃 博士 ! J と呼 ば 才乙で、‑ どん と㍑/ B膚がついてい

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量 産旦 いつ も ば魔 かL が ク屋 、 願 さんの男 の子,友だ ちとるB分か ら澄ん でノ 野わる事 あを ( 、 4 劇 Eに7 ?ってあー , ^遊 びの A 君 でLj l ・ o 被の以外 を一 面、それば虜のことにをると屠 よ ク も Bを 輝 かL 、L H任にとびついて (ることで す。 そL で虚 をきっかけに、友だ ちと一m に潜 まえに行 った ク、エサを月 つけに行った ク、慶 にとって虐 ば、5分 を表粛 する めので L / L ・ 0

動物の飼育によって幼児の自尊感情が高め ら れた とする報告は、先行研究の中にも見 られる ものである ( Ende nbu r g, Ba a r da , 1 9 9 7 ) が、そ れ らは殆 どが晴乳類や鳥類の飼育事例である。

しか し虫において も、同様 な飼育経験効果があ るのではないか と、上記の事例や資料中の もの か ら推測 されるだろう。

ただ し自尊感情 を持つ経緯は、晴乳類や鳥類 の場合 と虫の飼育による場合 とでは多少異なる。

噛乳類などでは、飼育 している動物が飼育者に なつ き、人 と動物 との間に相互的な情の交流が 生 まれ、このことによる自尊感情への効果が大 きい とされている ( 中川 、2000) 。虫では、その ようなことは通常あ り得 ないが、「 子 どもの生活 や表情が活 き活 きして くる影響 について」の項 目の事例 にも挙げられているように、虫を 「 持 てるようになった 」 「 捕 まえ られるようになっ た」あるいは 「 虫のことに詳 しくなった」 こと が、幼児 に自信 を与 えているのである。 さらに

「 仲間関係 を育てる」の項 目部分で も検討 した ように、虫への関心 を友達 と共有することで、

人間関係が広がってい き、 さらに詳 し、 くなった 知識 を披露 して友達に一 目置かれ、結果的に自 尊感情が高まっていることが読み取れる。

それは、事例 1、 2 にあるように、友達 との コミュニケーシ ョンが うまく取れない幼児にも、

しば しば見 られる。 このことは、実際の保育場 面 において非常 に重要であろ うし、 コ ミュニ ケーション下手な幼児 に対 して、特 に注 目すべ き効果だ と考える。

「 責任感 を持つ 」 「自尊感情 を高める」につい ての事例数は 1 4 例ずつであ り 、5 3 人の 4 分の 1 強が事例 をあげたに過 ぎないが、内容で見る限

りは、 どちらについて も、その効果が充分に示 唆 される結果であった と考える。

Ⅳ ま とめ と今後 の課題

以上、子 どもが虫 と関わ り、 どのようにその 社会性の育ちを獲得 していっているか、その様 相 を掴 むことがで きた。

「 命への理解 と思い」、「 思いや り」を育む効果 については、前研究の結果 と、今回の事例内容 の検討結果か ら、その飼育経験効果は、十分に 認め られるものであった。「 仲間関係 を育てる 」

についても、事例内容 と事例数か ら、虫 と関わ ることによる効果が認め られたと言っても良い であろう。

ここで今回の事例内容 を再度検討 してみると、

(9)

保育者 自身の言葉がけや、指導の内容 を記述 し ているものが多 くあった。それ らを項 日ごとに、

幾つあったかカウン トしてみると、結果は表 3 のようであった。

「 命の理解や患いの育ち」の項 目には、保育者 自身の指導が、最 も多 く書 き込 まれていること が分かる。 この事例中の 7 7 % が、 自身の言動 を 書 き込んでいるものであった。命の理解や思い について、子 どもたちの成長 を語るときには、

自らの保育実践 を、語 らざるを得ない というこ とであろうか。命について理解 させたい、知 ら せたい とい う保育者の強い思いであるとも受 け 取れる。

2 番 目に保育者 自身の言動の記述が書 き込 ま れていたのは、「 思いや りを育む」の項 目であっ た。「 命について」と同 じように、飼育活動 を通 して特 に保育者が子 ども達 に伝 えたい と考えて いる事柄であ り ( 山下、首藤、2004) 、それだけ に、保育者の働 きかけが多 くなることも考えら れる。

反対 に、「 仲間関係 を育む」の項 目には保育者 の言動については、殆 ど記述がなかった。

つ ま りこの表 3 か ら言えることは、二つある のではないか と思われる。一つ 目は、仲間関係 の広が りは、虫 との関わ り J を通 して子 ども達の 中に自然発生的に生 じるのではないか というこ と、そ して二つ 日は、命の大切 さや、人への思 いや りについては、虫をきっかけとしなが ら、

保育者が子 ども達の中に育てていこうとするも

表 2 保育者の指導について記述 されている事例数 と その割合

保育者の

指導事例数 % 内容の分類 ( 全体の事例数 1 7 7 7% 命への思い .命の大 )

切 さ重み について知

る ( 2 2 ) 7 2 9% 思いや

りが育つ ( 2 4) 3 21 %

責任感 を持つ ( 1 4) 3 1 4% 子 どもの生活や表情が活

き活 きして くる ( 22 )

1 1% 自尊感情 を高める ( 1 4)

0 0% 仲間関係 を育む ( 3 4) のなのではないか、 ということである

。 どち らも、社会性の発達にとって、重要な

効 果であると思われるが、幼児 にとって、虫 と

の 関わ りが、 自然発生的に仲間関係 を育むもの

で あ り、 さらに事例中に見 られたように、人間

関 係が苦手な幼児にも、効果があるとす

れば、 こ のことは、大 きな意味を持つであろう

。 どのような園であろうと保育者が意識 さえす れば、虫 と関われるように環境設定することは、

さほど困難なことではな く 、 「 人間関係 をうまく 結べない」、「 社会性 に問題 を抱 えている」子

ど もが多い と言われる今 日、非常 に有効

な援助 と なる可能性が高い と言えないだろうか

。 また仲間関係が円滑になるということは、

当 然、その他の社会性の発達にも大 きな影響 を

与 えることが考えられるだろう。そこで、保育

者 が虫 とのかかわ りの中で育つ とした、この 6

項 目の関係 を考えてみたい。 もともと各項 目は

、 本論の事例内容その ものが示 しているように

、 何 に該当 しているか、判断すること

が非常に困 難なほど、互いに関係 し合 っている

。 これ らを図式化すると図 1 のようになるの

で はないだろうか。友達 との良好な関係 は、思

い や りを育むことにつながるであろうし、 また

そ の道の関係 も成 り立つ と思われる。そ うした

生 活の中か ら、 自尊感情や責任感が生 まれ、これ らの循環の中で、命 を大切 に思 う思いを実感 し

、 幼児の生活全般が活 き活 きとしたもの となっ

い くことが

(10)

内面の育 ちの循環であ り、 どの部分か ら始 まっ た として も、互 いに関連 して発達 してい くもの だ と思 われ る。

最後 に今後 の課題 として、今 回の研 究 は、保 育者 の観察事例 を元 に進 めて きたが、調査対象 者か らは、 この事例 の書 き込み は非常 に難 しく、

苦労 であった との感想が聞かれた 。 6 項 目の事 柄 に関 して、実際 には経験 していて も、それ を 具体 的な例 として、文章 にまとめ難 く、実態 に 見合 うようには、書 き込めなか った との意見 も 多 かった。

今後の課題 としては、調査者の直接 的な観察 に よって効果 を確認す る必要があ るだろ う。特 に調査 者 が幼 児 に対 して直接 イ ンタビュー を 行 ってい ない 4 つ の項 目 「 仲 間関係 を育 む」、

「日々の生活が活 き活 きして くる」、「 責任感 を 持つ」、「自尊感情 を高める」 に関 しては、何 ら かの直接 的な調査 を行 い、 これ らの効果 につ い て、確証 を得 ることが必要だ と思 われ る。

く 引用文献 )

・Ende nbur g. E . &Ba a r da . B . ( 山崎恵子訳) 人 と 動物の関係学 TheWa l t ha mBo o ko fHuma n ‑ Ani ma ll nt e r a c t i o n メディカルサイエ ンス 社 インターズー 1 9 9 7 年.

・藤崎亜由子 第 6 章 虫の命 について学ぶ子 ど もたち ( pp. 1 0 3 ‑ 1 2 1 ) 小動物 とロボットをめ

ぐる就学時前のコミュニケーション活動の 生態学的研究 平成 1 4 年度〜平成 1 7 年度科 学研究費補助金 ( 基盤研究 ( C ) ) 研究成果 報告書 ( 研究代表者 :麻生 武 課題番号 1 4 5 1 0 1 4 1 ) 全 1 2 2 頁.

・中里至正 ・松井洋 異質な日本の若者たち : 世界 の中高生の思いや り意識 ブレー ン出版 1 9 9 7 .

・中川美穂子 学校飼育動物のすべて 子供 とゆ と りあ る飼育 を楽 しむため に 株 式会社 ファームプレス p . 2 5 .

・杉原一昭監修 発達心理学の最前線 3 部 1 章 教育出版 2 0 0 1 p . 1 0 6 .

・山下久美 ・首藤敏元 幼児への動物教材 ( ムシ 類)の提供についての研究,埼玉大学教育学 部教育実践総合センター紀要第 3 号 ,2 0 0 4 , p p. 1 5 4 ‑ 1 5 5 .

・山下久美 ムシ飼育のね らいとその飼育体験効 果について一幼稚園 ・ 保育園におけるムシの 飼育の意味一 東洋英和女学院大学 人文 ・ 社会学論集第 2 3 号 2 0 0 6 ,p p. 7 9 ‑ 9 8 .

・山下久美 ・首藤敏元 ムシの飼育体験 とその保 育効果について ‑ 5 歳児 クラスでの飼育実 験か ら一 日本保育学会第 5 8 回大会論文集 2 0 0 5 .

( 2 0 0 8 年 3 月 3 1 日提 出)

( 2 0 0 8 年 4 月2 5 日受理)

(11)

( 資料)

命 へ の思 い を育 み ・命 の大切 さを理 解 した と思 われ る事例

5 歳児。毎 日世話 をして観察 していたアゲハの幼虫がサナギになったが、他の虫に幼虫の時に卵 をうみつけられて、サナギ の中か ら違 う幼虫がでてきて、アゲハにならなかった。「どうしてなのかな ? 」 「 かわいそ う‑‑・ 」 という子 どもたちに、教 師 もは じめは良 く分か らず、虫に詳 しい他の教師に話 を聞いた。幼児 と共にその話 を聞いて・ ・ ・ ・ ・ ・「 そんなことがあるのか? 日 と驚 く。アゲハになる難 しさを感 じる事で、子 どもたちも命のはかなさ、重 さ、生 きることの大変 さを感 じていた。

5 歳児。 ダンゴムシを飼育 していて、ケースか ら出 して世話 をした り触 った りしていた。卵か ら赤ちゃんダンゴムシが貯 っ た時には皆で喜んで盛んに見ていたOその うちに、暑 さで死んで しまうダンゴムシがいたo女児 A も、毎 日親 しんで触って いたが、いつ もの ようにダンゴムシを持 ち上げた ときに、死んでいることに気づ き、「 死んでる !」と、驚いた様子で、ダン ゴムシを取 り落 とした。そ して手 を引っ込め、恐そ うに死んでいるダンゴムシを見つめ、そのダンゴムシには触れな くなっ た。そのことを通 して、その子 な りに死 を受け止めたことが分かった。 また今 まで親 しんでいた時には、確かに命 を感 じて いたのだと知った。 こうした経験 を通 して命 と死 を感 じる経験 をしてい くのだと思 う。

元気のないムシを見ると心配 している。死んで しまっていた虫をみると、「 お墓に埋めてあげよう」と悲 しそ うにお話 をして くれる。

3 歳児。殻の中に入って しまったカタツムリをどうして も見た くて殻 を割 り、中か ら出そ うとした。 しか し、形の変わって しまったカタツム リを見て、 自分の したことに気づいたようだった。子 どもたちの気持ちが、変化 したことが感 じられた。

4 歳児。おたまじゃくしとの関わ りので、 日常か らおたまじゃ くしに興味を持 っていたため、他の子以上に手の上 に乗せた りとよく見て触 っていた。 しか し、力の加減を間違えて、尾 をちぎって しまい、翌 日死んで しまった。尾の切れたおたまじゃ くしに好 し、降園後、煮干 を母親 と買い行 き、 また園に戻 って きて、丁寧 に、煮干をちぎってあげていた。ちぎって しまっ た後、事の重要 さに気付 き、ほとんど口を開かず、表情 も暗かった。

4 歳児。アゲハの幼虫が ミカンの木の トゲに刺 さって死んで しまったことがあ りました。 また羽化の際にサナギか ら落下 し て羽を広げきれずにもがいているチ ョウを目の当た りにしたこともあ りました。そ うした出来事か ら、交通事故に合った人 のこと、障害を持った人のことに置 き換 えて、話 し合 ったことがあ りました。

自分 よりも小 さい虫への興味を持 ち触れてい く中で、指先でつぶ して しまった り‑・ ・ ・ とい う事が よくある。そ して、 こうい う場 に出会ってこそ命 とい うものに気付いていけるのではないか と思 う。

2 歳児。飼育 している小 さな生 きものに餌 をあげているうちに、お友達のように親 しくなって くることがあ ります。そんな 時にオタマジヤクシが死んで しまい 「 おたまじゃくしさん どこいっちゃったのかな ? 」「 バ イバ イしちゃったの ? 」と毎 日毎 日聞いて きました。

5 歳児。園庭のプランターの下か ら現れた大 きなカエルO男の子たちが手のひらにのせ、あっちへ こっちへ持ち歩 くOその うち取 り合いになる。その間にい じられす ぎたか ぐった りして しまった。慌ててバケツの中に入れて見るだけに したが死ん で しまった。皆で話 し合い、命があること、小 さい生 き物 も命 を持つ という意味では同 じだ ということを気付かせ、皆でお 墓 を作 った。

3 歳児。子 どもがかわいいと思って、ついついザ リガニ と遊んでいると、そのザ リガニを棒でつついて、背中に穴があいて しまった。そ して死んで しまった。「 みんなも棒でたたかれるとどうか・ ・ ‑・ か」や、小 さな生 き物 も、お友だちと同 じで、大 切 な命がある事 を伝 えた。

4 歳児。おたまじゃくしをもらい、カエルになって きたが途中で何匹か死んで しまった。そこで皆で話 し合いをし、 自然に いることが良いことだと納得 して子 どもたちと一緒 にかえ しにいった。

4 歳児。年中の子 どもがセ ミを捕 って と言 って きた。そこで、「 セ ミは長 く生 きられないか ら、出来るだけ逃が してあげよう ね」 と答えた。「 分かった」 と言いつつ も、セ ミとりに夢 中にな り、楽 しそうであった。

5 歳児。 カエルを飼っていましたが、やは り動 く虫 ( 生 きている虫) しか食べず、えさ探 しが とて も大変だが、大好 きなカ エルのために、毎 日毎 日えさをあげ、大切 にお世話 をしていました。 しか し、少 しずつやせて きて しまったので、みんなで どうしてあげるか話 し合いをしました。

5 歳児。みつけたアリを踏み潰 していた。「 君のせいで もう動けない し、おい しい もの も食べ られないよ。 」 と、話 した。

3‑ 4 歳児。食べ物 をあげた り、 しっか り世話 をしなければ、虫だって死んで しまうんだよ、 と数えました。虫 さんに、嫌 がる事 をしては駄 目なんだよ。力比べはいいけれ ど、い じめた らだめで、死んだ ら、 もう二度 と生 き返 らない、 という事 を 教えています。

1 歳児。てんとう虫に対 して 「 パ ン !」と手でたたこうとする子 どもがいた。「 いたい、いたいよ」 と促すが止めず、動かな くなって しまった。その様子 を他の子 どもたちも心配 して見ていたが動 き出 し、ホ ッとし、骨で逃が してあげた。

3 歳児。自宅の網戸 にいたカブ トムシを園に持って きた子 どもがいた。しば らく園で飼っていたが 2 週間余 りで死んで しまっ た。一人一人に、そのカブ トムシを見せ、「 長 くは生 きられない」ことや 「 死んで しまった ら生 き返 らない」ことを伝 え、み んなでお墓 を作 った。

ムシと関わっているとどうして も死に出会います。そ して 「 死ん じゃって、かわいそ う」 と、子 どもたちが言っているのを よく耳に します。

幼虫を羽化するまで育てたアゲハだったが、羽を広げる段階で、羽が破れて しまったため、うまく飛び立つ ことがで きなかっ た。それを見て、「こういうこともあるんだね」と、悲 しむ気持ちを表 している幼児がいた。その後、蜜を吸 えるように、花 の上に逃が してあげていた。

‑ 115‑

(12)

命 へ の思 い を育 み ・命 の大切 さを理解 した と思 われ る事例 ( つづ き)

2 0 園庭のプラン夕‑の脇 にか くれていたひき蛙oみp してか話すo もう離 してあげようと、そつと庭のすみ離 してあげたが、次の 日に死んでいた○生物に関わる時にどうした んなで触 った り、水 に泳がせた り、そのうち元気がな くな り、それはどう ら いいか菅で話 し合っ

2 1 3 歳児○カタツム リなどと関わっていて、子 どもによっては、力加減がわか らなか った り、手に持 っていて も、落 た○

として し まつた りする事 もあるo生 き物 なので、やさしく手にすることを声かけてい くように

している○

2 2 飼っていたザ リガニが、突然、次の朝ケースの中で死んでいたo脱皮に失敗か ? どうして死んだのか ?

死んだ らどこに い くの‑‑などクラスで話 し合 うo体は土にな り、心 は天国に行 くね‑‑. と

土に入れて祈るo 2 3 生物 とかかわるか らには必ず命や死 について直面する場面があるo事例の数はあげられないが、死 を

知るチャンスに、常 に 言葉かけを し

てい くようにしているo

2 4 小 さい子 はアリなど怖 さ半分で、足で踏み潰す ことが多いですが、アリさんか ら見た らみんなは怪獣に見えるよ. 怪獣に踏み潰 された らどうかな一、「イヤダー ! 」と必ずいいます○死ん じゃつた らお母 さん 、みんなも にも会えな くなるし‑‑ と、自 分 と重ねて分か りやす く

伝 えると、 しんみ り開いています○ 思 いや りや 、や さ し

(13)

仲 間 関係 に長

(14)

仲 間 関係 に良 い影 響 が あ る と思 わ れ る事例 ( つづ き)

子 どもの生活

(15)

責任 感 が育 つ

(16)

責任 感 が育 つ事例 ( つづ き)

自尊 感情 が高

(17)

Effect of Children's Relations

With Insects on Their Social Development

Kumi YAMASHITA and Toshimoto SHUTO

Keywords: Young children, Insects, Social Development

A previous study (Yamashita and Shu to, 2005) demonstrated that insect breeding in kindergartens Was effective in fostering children's "thoughtfulness for others" and "consciousness of importance of life". Because social development support is a contemporary problem in Japanese kindergartens, the effect of such development of the sociality was examined again. As a result, the observational examples by 53 teachers with precise objectives were able to corroborate the process of acquiring these effects. Furthermore, such comments as "fostering of friendly relationships", "the children's facial expressions became more lively", "they became more responsible", "their pride were elevated", are suggestive of the results of insect breeding experience. The comment that "friendly relationships are fostered" is especially outstanding and it is believed that the effect of promoting sociality in young children is marvelous.

-121-

参照

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