修 士 論 文
種数
4
の非超楕円的トロピカル曲線について首都大学東京 大学院理工学研究科 数理情報科学専攻 学修番号 16878326
中村拓也
1
導入コンパクトリーマン面Xに対し,XからP1へのd次の正則写像が存在するとき,Xは
d-gonalであるという.dの最小値をXのゴナリティと呼ぶ.ゴナリティは古典的な代数曲
線の分類における基本的な不変量である.種数3のコンパクトリーマン面X のゴナリティ は,Xが超楕円のとき2,そうでないとき3である.トロピカル曲線にもゴナリティが定義 され,種数3のトロピカル曲線Γ の安定幾何的ゴナリティはΓ が超楕円のとき2,そうで ないとき3であることが知られている([S17]).この結果から,種数3以下のトロピカル曲 線はコンパクトリーマン面の分類に沿って特徴付けられる.
種数 4 のコンパクトリーマン面 X は次の二種類に大別される.X は(a) 超楕円であ る,(b) 標準埋め込みによりP3 内の2次曲面F と3次曲面Gの完全交叉になる.(b)は さらに(b1) F が特異点をもつ場合,(b2) F が非特異の場合に分けられる.(b1) の場合,
F は2次錐であり,P1 への3次の正則写像は一通りしか存在しない.(b2)の場合,F は P1×P1 と同型であり,P1 ×P1 からP1 への二つの射影はGが3次曲面であることから,
π1, π2というXからP1への二つの異なる3次の正則写像を誘導する.X上の点pに対し,
{π−11(p)},{π−21(p)}は異なる二つの線形系である.
トロピカル曲線の場合,P1 には木が,定値でない正則写像には有限調和射がそれぞれ 対応する.そこで,本論文では有限調和射の個数に基づき種数 4のトロピカル曲線を上 の(a)(b1)(b2)に即して分類することを考える.(a) の場合は既によく知られているので
([Ch12]),(b1)(b2)に対応するトロピカル曲線が存在するかどうか調べる.(b1)に対応す る具体例を構成した.
主定理1 Γ を下図のトロピカル曲線とする.トロピカル改変を許しΓ から木への3次有限 調和射が一通りしか存在しない為の条件は正の実数a, b, cが真の三角不等式を満たすときに 限る.
a b c
主定理 1は上の形のトロピカル曲線が木への3次有限調和射を1通りしか持たない条件 を確定させたことになる.
次に(b2)に対応する例を挙げる.トロピカル曲線の場合,非特異有理曲線はP1とは限ら ず木になる.非特異有理曲線がP1になる場合は古典的な場合と同様に構成することができ る.一般の木はTP1 に埋め込むことができない.そこで,より高い次元の射影空間への埋 め込みを考える必要がある.それにも関わらず,古典的な場合と同じような描像が得られる 例を構成した.
主定理2 2部完全グラフK3,3で辺の長さが全て1で表されるトロピカル曲線をΓ とする.
v1
v3 v4
v5 v6
v2
このとき,超平面切断が線形同値でない有理写像Φ1, Φ2 : Γ → TP2 で像が木となるも のが存在する.また,これらは像への3 : 1 写像である.Φ1 ×Φ2 : Γ → TP2 ×TP2 と Ψ : TP2 ×TP2 → TP8 の合成は標準線形系の部分線形系Λ に付随する有理写像ΦΛであ る.Γ はΦΛによりTP8 に埋め込まれ,像はある3次超曲面に含まれる.また,Φ1, Φ2は Φ1×Φ2 を経由する.
トロピカル曲線の場合,1次元でも不確定点が現れる.古典的な代数幾何学の場合,異な る正則写像が2通り存在するとき,共通な不確定点除去が存在する.トロピカル曲線の場合 も同様の結果が成り立つことが期待される.
主定理3 2部完全グラフK3,3 で辺v2v5 の長さが1,その他の辺の長さは3で表されるト ロピカル曲線をΓ とする.このとき,Γ から木への異なる3次有限調和射が2通り存在し,
それら2つの調和性を保つようなトロピカル改変は存在しない.
v1
v2
v3 v4
v6
v5
この例から古典的な代数幾何学の類似が有限調和射のままでは成立しないことが分かる.
これは有限調和射の定義の改良が必要であることを示唆している.
謝辞
本研究を進めるにあたり,多大なるご指導ご助言を賜りました小林正典准教授に敬意を表 すとともに,厚く御礼申し上げます.また,日頃から様々な相談に乗ってくれた同じ研究室 のメンバーに感謝の意を表します.
2
準備2.1 トロピカル演算
定義 2.1.1. 実数全体の集合Rに対し,以下のように二つの演算⊕, ⊙を定義する.任意の
実数x, y に対し,
x⊕y:= max{x, y} x⊙y:=x+y
と定める.(R,⊕,⊙)は可換半環である.これをトロピカル半環と言い,Rtropと表す.
定義 2.1.2.
T:=R∪ {−∞}
x∈Tに対する−∞の演算を次のように定めることでTは半体となる.
x⊕(−∞) =x, (−∞)⊕x=x, (−∞)⊕(−∞) =−∞, x⊙(−∞) =−∞, (−∞)⊙x=−∞, (−∞)⊙(−∞) =−∞,
Tをトロピカル半体と呼ぶ.よってTでは(−∞)以外の元に対しては,⊙に関する逆元が 存在するが,⊕に関して逆元は存在しない.
以下,簡単のため x+y =x⊕y, xy =x⊙yと書く.
2.2 トロピカル超曲面 定義 2.2.1.
F(x1, ..., xn) = ∑
(i1,...,in)∈I
ai1…inxi11…xinn
= max{ai1…in +i1x1+…+inxn | (i1, ..., in)∈I}
をn 変数トロピカル多項式という.ただし,ai1…in ∈ R,I はNn の有限部分集合である.
I =∅のとき,F =−∞と定める.
定義 2.2.2. 上のn変数トロピカル多項式F に対し,
d= max
(i1,...,in)∈I
∑n k=1
ik をF の次数という.
定義 2.2.3. 項が一つ以上のn変数トロピカルd次多項式F に対し,
V(F) := {x∈Rn | F がxで少なくとも2項が最大値をとる}
をF で定まるd次トロピカル超曲面という.また,n= 2のとき超曲面を「曲線」という.
F が単項式である場合,V(F) =∅である.
2.3 トロピカル射影空間
定義 2.3.1. (x1, ..., xn),(y1, ..., yn)∈Tn, λ∈Tに対し,和とスカラー倍を (x1, ..., xn) + (y1, ..., yn) := ( x1+y1 , ..., xn+yn )
λ(x1, ..., xn) := ( λx1 , ..., λxn ) と定めると,Tnはトロピカル線形空間となる.
定義 2.3.2. x, y ∈Tn+1\ {(−∞, ...,−∞)}に対し,関係 ∼を次のように定める.
x∼y⇔あるλ∈R が存在して,x= λy 上の∼は同値関係になる.
定義 2.3.3. n次元トロピカル射影空間を
TPn :=Tn+1/∼ で定める.位相は自然な商位相を考える.
定義 2.3.4. F を−∞でないトロピカル同次d次多項式とする.
V(F) :={x∈TPn | F がxで少なくとも2項が最大値をとる,またはF(x) =−∞}
をd次トロピカル超曲面という.
定義2.2.3 と異なる定義だが,同じ記号を用いることに注意する.
2.4 セグレ埋め込み
定義 2.4.1. 古典的なセグレ埋め込みに対応する写像を以下で定める.
Ψn,m :TPn×TPm → TP(n+1)(m+1)−1
∈ ∈
(xi, yj)i,j 7→ ( xiyj )i,j Ψn,mは位相空間としての埋め込みである.
2.5 トロピカル曲線
定義 2.5.1. G = (V(G), E(G))をループや多重辺を許した有限連結なグラフとする.G
と写像l
l:E(G)→R>0
の組(G, l)を距離付きグラフという.各辺e∈ E(G)を閉区間[0, l(e)]と同一視してできる 距離空間Γ をトロピカル曲線という.また,(G, l)をΓ のモデルという.本論文ではトロ ピカル曲線の辺の長さは有限のもののみを考える.
定義 2.5.2. Γ をトロピカル曲線とする.Γ 上の点pに対し,その十分小さく連結な近傍を
Up ⊂Γ とする.Up\ {p}の連結成分の個数を点pの価数といい,val(p)と表す.Γ 上の点 で,価数が2でないものの集合をV とし,Γ \V の連結成分の閉包の集合をEとする.こ のV, Eに対し,Γ にはグラフの構造が入る.このグラフはΓ に対して一意に定まり,これ をΓ の標準モデルという.S1 と同相なΓ に対しては,標準モデルは考えないことにする.
2.6 トロピカル改変
定義 2.6.1. Γ を距離付きグラフ,a∈R>0とする.以下の3つの操作の有限回の繰り返し をトロピカル改変という.
(1)辺の途中に頂点を追加または削除する.
(2)半直線上の点0∈[0, a]とΓ の点vを同一視するように半直線をΓ に付け加える.
(3)価数1の頂点を含む辺を価数1の頂点も含めて削除する.
2.7 トロピカル曲線の射
定義 2.7.1. Γ, Γ′をトロピカル曲線とし,φ:Γ →Γ′を位相空間としての連続写像とする.
Γ, Γ′ に付随するグラフG, G′ として以下の条件を満たすものが取れるとき,φはトロピカ ル曲線の射であるという.
(1)Γ の頂点v ∈V(G)のφで写したφ(v)はΓ′ の頂点となる.
(2)Γ′ の辺e′ ∈E(G′)の逆像は,Γ の有限個の辺の和集合となる.
(3)Γ の辺eに対しφのeへの制限は非負整数倍の相似写像となる.
(3)の相似写像の倍率となっている整数をde(φ)∈Z≥0と書く.
2.8 調和射
定義 2.8.1. Γ をトロピカル曲線とする.p∈Γ に対し,Up を点pの近傍とする.集合Hp をUpの包含関係における射影極限で定める.すなわち,
Hp := lim
→Up
π0(Up\ {p}) Hp の元を点pの half edgeという.
定義 2.8.2. φ:Γ →Γ′ をトロピカル曲線の射とする.p∈Γ に対し,p′ :=φ(p)とし,p から出ているhalf edgeをh1, h2, ..., hn,p′から出ているhalf edgeをh′1, h′2, ..., h′mとする.
写像dUp :π0(Up\ {p})→Z≥0 を以下で定める.
dUp :π0(Up\ {p}) → Z≥0
∈ ∈
hi 7→ dei(φ)
ただし,eiとは,hi ⊂ei であるようなΓ の辺とする.写像dp :Hp →Z≥0を以下の図式が 可換になるように定める.
dUp :π0(Up\ {p}) → Z≥0
→ →
dp : Hp → Z≥0
任意のh′jで, ∑
hi7→h′j
dhi(φ)が一定とな るとき,φは点pで調和であるという.和をdp(φ) と書く.φが全射かつΓ 上の各点で調和であるとき,調和射という.このとき,φの次数 をdeg(φ) = ∑
p7→p′
dp(φ)で定める.
2.9 有限調和射
定義 2.9.1. 任意のΓ の辺eに対し,de(φ)>0のとき,φは有限であるという.調和射 φが有限であるとき,有限調和射という.
2.10 因子
定義 2.10.1. トロピカル曲線Γ 上の因子Dとは,Γ 上の点で生成される自由加群Div(Γ)
の元と定める.すなわち
D=a1x1+…+anxn (a1, ..., an ∈Z, x1, ..., xn∈Γ, n≥0, x1, ..., xnは相異なる)
である.また,Dの点xの係数をordx(D)と表す.Dの次数deg(D)を deg(D) :=a1+…+an
で定める.a1, ..., an≥0のときDを有効因子といいD≥0で表す.また,標準因子Kを K := ∑
x∈Γ
(val(x)−2)x (val(x) :=xの価数) と定める.
2.11 トロピカル有理関数
定義 2.11.1. Γ をトロピカル曲線とする.Γ 上のトロピカル有理関数f :Γ →R∪{±∞}
とは,f ≡ −∞ または,連続で区分的に線形でそれぞれの区分での傾きは整数である関数 をいう.ただし,f(x) = −∞となるのは長さが無限の辺の端点か,f(x)≡ −∞のときに 限る.以下,f ̸=−∞とする.
x∈Γ に対し,f のxにおける位数ordx(f)を
ordx(f) :=f のxでの外向き方向微分の和 と定める.
div(f) := ∑
x∈Γ
ordx(f)x
をf のΓ における主因子という.さらにトロピカル有理関数f は各xに対しordx(f)≥0 であるときトロピカル正則関数であるという.以後,トロピカル有理関数,トロピカル正則 関数を単に有理関数,正則関数と呼ぶ.
定義 2.11.2. Dをトロピカル曲線Γ 上の因子とする.
R(D) :={f :Γ 上の有理関数|D+ div(f)≥0} と定める.
定義 2.11.3. D, D′をトロピカル曲線Γ 上の因子とする.D, D′が線形同値であるとは,Γ 上のある有理関数f が存在して
D−D′ = div(f) を満たすときをいう.このとき,D∼D′と表す.また
|D|:={D′ ∈Div(Γ)|D′ ≥0, D ∼D′} をDに付随する完備線形系という.
定義 2.11.4. Dをトロピカル曲線Γ 上の因子とする.Dのランクr(D)を
r(D) := max{k∈Z≥0|deg(E) =kの任意の有効因子E に対し|D−E| ̸=∅}
で定める.
2.12 種数
定義 2.12.1. トロピカル曲線Γ の種数gを
g := dimRH1(Γ,R) と定める.
トロピカル曲線Γ のモデルの辺集合,頂点集合をそれぞれE, V とする.Γ の種数gは g = #E−#V + 1
を満たす.
2.13 有理写像
定義 2.13.1. f0, ..., fn ∈R(D)とする.x∈Γ に対し,Φ :Γ →TPnを Φ(x) := (f0(x) :f1(x) :…:fn(x))
と定める.φσ, φa,i:TPn →TPnをa∈R, i∈ {0,…, n},(x0 :x1 :…:xn)∈TPnに対し,
φσ((x0 :x1 :…:xn)) := (xσ(0) :xσ(1) :…:xσ(n)), φa,i((x0 :x1 :…:xn)) := (x0 :…:xi+a:…:xn)
で定める.Φ,Φ′ :Γ →TPnに対し,φ:TPn →TPn (ただし,φはφσ, φa,iの有限回の合 成)が存在して,Φ′ =φ◦Φが成り立つとき,ΦとΦ′ を同一視する.f0, ..., fnがR(D)の 極小生成系であるとき,ΦまたはΦ′ をΦ|D|と書き,Φ|D|を因子Dに付随する有理写像と いう.
3
主結果1
定理 3.1.
Γ を下図のトロピカル曲線とする.トロピカル改変を許しΓ から木への3次有限調和射が 一通りしか存在しない為の条件は正の実数a, b, cが真の三角不等式を満たすときに限る.
a b c
証明の方針. トロピカル曲線Γ から木への3次有限調和射が存在すると,Γ 上にそれに対応 した次数が3で階数が1以上の因子が存在する.逆は成り立たない.Γ 上の次数が3で階 数が1以上の因子を求め,それぞれの因子に対し,有限調和射が構成できるかを確認する.
証明
Γ の中心に位置するサイクルをC′とする.Γ のループを一つ選びCとする.CとC′ を結 ぶ辺をeとし,w:=C∩e, U :=C\ {w}で定める.
C′ w C U
e
証明で以下の補題を用いる.
補題 1. x∈U, y, z ∈Γ \U に対し,D:=x+y+zと定めるとr(D) = 0である.
補題1の証明
始めにx′, y′, z′ ∈Γ \U に対し,D′ :=x′ +y′+z′と定め,DD′であることを背理法で 示す.D ∼ D′ であると仮定すると,Γ 上のある有理関数f が存在してD−D′ = div(f) を満たす.f|U はxでのみ1位の零点をもつ有理関数であり,wに幾ら極があっても,fが 連続になることはない.よって,DD′である.つまり,Dはどんな線形同値な因子に取 り替えても,少なくとも一点はU に含まれる.Dの階数が1以上になる為には,残りの2 点でΓ \ {C∪e}上全てを動けないといけない.Γ \ {C∪e}は種数3のトロピカル曲線で あり,仮定からこれは超楕円ではない.よってr(D) = 0である.
補題 2. x, y ∈ U, z ∈ Γ \U に対し,D:=x+y+z とする.また,x+y 2wとする.
このときr(D) = 0である.
補題2の証明
種数 1 の曲線上の次数 2 の因子は Riemann Roch の定理より階数が 1 である.よって 線形同値な因子に取り替えることで x, y のうち一方を w に一致させることができる.
x+y2wより他方はU に属する.これは補題1に帰着された.
補題 3. x, y, z ∈U に対し,D:=x+y+zとする.また,x+y+z 3wとする.このと きr(D) = 0である.
補題3の証明
種数 1 の曲線上の次数 3 の因子は Riemann Roch の定理より階数が 2 である.よって 線形同値な因子に取り替えることでx, y, z のうち 2 点をw に一致させることができる.
x+y+z 3wより残りの1点はU に属する.これは補題1に帰着された.
補題1,2,3より,C′ 上に3点をもつ因子のみ考えればよいことがわかる.
定理3.1の証明
a, b, cのうち,最も短い辺の一つを aとする.a : b : cを考えればよいので,a
a : ab : ac = 1 : x : yとおく.すると,x ≥ 1, y ≥ 1である.また,x, y も真の三角不等式を満たす ので,x ≥ 1, x+ 1 ≥ y ≥ x−1である.また,上の領域はy = xに関して対称なので,
D={(x, y) | x+ 1 > y≥ x≥1}に属する(x, y)に対し,3次有限調和射が一通りしか存 在しないことを示せば十分である.
証明するにあたって以下のように頂点を定める.
P Q
R
1 x
y
種数1の曲線上の次数3の因子は階数が2なので,三角形 P QR上の次数3の因子Dを 線形同値な因子 2P +z′ に取り替えて考える.三角形 P QR の内接円を I とし,I と辺 P Q, QR, RP との接点をそれぞれp, q, rとする.このとき,D=p+q+rのみ木への3次 有限調和射を与える.z′ ̸=rであるようなz′ に対し,D= 2P +z′ から3次有限調和射が 構成できないことを背理法で示す.Γ から木への3次有限調和射φが存在すると仮定する.
z′が辺P Q上にあるとき,z′Qの長さをa(0≤a≤1)とおく.また,y=x+α(0≤α <1) とおく.
P Q
R z′
a
因子2P +z′ を線形同値な因子2Q+q,2R+rにそれぞれ取り替える操作を考える.この とき,加えるべきΓ 上の有理関数の傾き(ただし,三角形P QR上に制限したもの)を以 下の図で示す.
z′ z′
z′ 2
1
1
1 1
a+α
1 2
2Q+qに取り替える 2R+rに取り替える
x≥a+α x < a+α
1 z′
1
2 s
s t
s t′ P
P
R
P
R P
Q Q
Q Q
R R
有理関数の値が等しい箇所がφで同じ点に移ることに注意する.
2Q+qに取り替える図より,P からz′までの傾きは1なので,z′はP R上の点で,P から 1−a離れた点sとφで同じ点に移る.
2R+rに取り替える場合,x≥a+α, x < a+αの場合で加える関数が異なる.a̸= 0,1 のとき,z′ はP, Qどちらとも異なり,s はP, Rどちらとも異なる.x ≥ a+α の場合,
φ(P) = φ(z′),φ(R)に移る点はR のみなので,s は点Qを含む区間Z′Rの点で,z′, R と異なる点t とφで同じ点に移る.x < a+α の場合,Γ 上の1 位の極をR′ とおくと,
φ(P) =φ(z′), φ(R) = φ(R′)なので,sは点Qを含む区間z′Rの点で,z′, R′と異なる点t′ とφで同じ点に移る.よって,どちらの場合もΓ 上の異なる4点がφで同じ点に移る.
x≥a+αかつa= 1の場合,z′とP が一致するのでそれ以外の4点を考える.
z′
1 1
1 1 +α
2Q+qに取り替える 2R+rに取り替える
2 b
2b b 2b 4b
1 2b
辺P R上にP からの距離がb (0< b < 12)であるような点をbとする.2R+rに取り替え る図より,bは辺P Q上のP から2b離れた点2bとφで同じ点に移る.また,2Q+qに取 り替える図より,bはP Q上P から 12b離れた点 12b,2bはQに向かう方向にP から4b離 れた点4bとφで同じ点に移る.よって,Γ 上の異なる4点がφで同じ点に移る.
x≥a+αかつa= 0の場合を考える.
z′ 1 z′
1
1
2Q+qに取り替える 2R+rに取り替える
1 2
s s
R t R
辺P Q上にP からの距離が1であるような点をsとする.x > 1ならばs ̸= R.よって,
異なる4点がφで同じ点に移る.
x= 1のとき,P, Q, Rが同じ点に移ることが分かり,木への調和射を仮定していることか
ら,次数が6になる.
P
Q R
P
Q R
x < a+αかつa= 0は成立しない.
y= x+α ≥ 2のとき,辺QR上にQからの長さが1,2の点をそれぞれw′, w とする.z′ がQw′の間にあるとき,Qz′ の長さをa (0< a≤1)とする.
P Q
w′ w R z′ a
因子2P +z′ を線形同値な元2Q+q,2R+rにそれぞれ取り替える際に加えるべきΓ 上の 有理関数(ただし,三角形P QR上に制限したもの)を以下の図で示す.
z′ z′
z′
1 x
x+α−a
1 1
2Q+qに取り替える 2R+rに取り替える
x≥x+α−a x < x+α−a
z′ 1
2 1
1
1
1 P
Q
R R
R R
P
P P
Q
Q Q
2Q+qに取り替える図より,P Q, P R上の点でP から1−a離れたs, tとφで同じ点に移 る.2R+rに取り替える場合,x ≥x+α−a, x < x+α−aの場合で加える関数が異な る.x≥x+α−aの場合を考える.
2R +r の図で P Q, P R上の点で P からa −α 離れている点をそれぞれ u, v とする.
1−a = a− α のとき,s と u,t と v は一致する.また,このとき,P s = P t, Qs = Qz′, Rt=Rz′ が成立する.このとき,下図のようにトロピカル改変を与れば3次有限調和 射φを構成できる.
P Q
R
s t
z′
φ
1−a̸=a−αのとき,a̸= 1ならs, t, u, vは全て異なり,Γ 上の異なる5点がφで同じ点 に移る.a= 1のときはs=tとなるが,他は異なるので,Γ 上の異なる4点がφで同じ点 に移る.x < x+α−aのとき,0< a < 1であり,上の図より異なる4点が張り合う.
y=x+α ≥2のとき,z′ がw′wの間にあるとき,w′z′ の長さをa (0< a≤1)とする.
P Q
w′ w R z′ a
z′ z′
1 1
2Q+qに取り替える 2R+rに取り替える 1
2
1
1 s
R R
a ̸= 1とする.2Q+q に取り替える図より,φ(P) = φ(z′).2R+rに取り替える図で辺 P Q, P R上の点でP からの長さがa+ 1−αである点をs, tとする.sR= x+α−1−a であり,x+α ≥2なので,s̸=R.また,a+ 1−α >0よりt ̸=P, s̸=P.よって,異な る4点が張り合う.
a= 1のとき,x+α >2なら上と同様の議論で異なる4点が張り合う.(*)x+α= 2のと き2R+rに取り替える図で辺QR 上の点でR からの長さがa+ 1である点をuとすると φ(u) = φ(R).2Q+qに取り替える図より,φ(P) =φ(R).uはQ, R どちらとも一致せ ず,φ(P) =φ(R),φ(Q)に移る点はQのみなので,P R上の点でP, Rとも異なるv に対 し,φ(u) = φ(v).よって,異なる4点が張り合う.
z′ z′ 1
1 1
2Q+qに取り替える 2R+rに取り替える 2
u u v
y =x+α > 2のとき,z′ がwRの間にあるとき,wz′ の長さをa (0< a ≤x+α−2)と する.
z′
z′ 1
1
2Q+qに取り替える 2R+rに取り替える 2
1
1
x+α−a−2̸= 0のとき,上の図から異なる4点が張り合う.2Q+qに取り替える図より,
φ(P) =φ(z′).2R+rに取り替える図より,a=x+α−2のとき(*)と同様.
y=x+α ≥2のとき,z′ がP Rの間にあるとき,z′Rの長さをa (0< a < x)とする.
z′ z′
z′ 1
x
x+α+ 1−a
2
2Q+qに取り替える 2R+rに取り替える
x+α+ 1−a≥x x+α+ 1−a < x z′
1
2 2
1
1 1 1
1
1
b
2Q+qに取り替える 2R+rに取り替える
1 2b
z′
1
2b 12b z′
b
bをz′ から0< b <min{2(x−a), a,2}を満たすように取る.すると,2Q+qに取り替え る図からbはP Q上の点でP から 12b離れた点 12bと同じ点に移る.また,2R+rに取り替
える図からよって,異なる4点が同じ点に移る.
2> x+α≥1のとき,z′がQw′ の間にあるとき,Qz′ の長さをa (0< a≤1)とする.
z′ z′
z′
1 x
x+α−a 2
2Q+qに取り替える 2R+rに取り替える
x+α−a≥x x+α−a < x
z′ 1 1
1
1 1
1
1 P
Q
R
s t
2Q+qに取り替える図より,z′ はP Q, P R上1−a離れた点s, t とφで張り合う.a ̸= 1 とすれば,x+α−a ≥xのときは図よりφ(P) =φ(z′).よって,異なる4点で張り合う.
x+α−a < xの場合,1−a=a−αのとき3次有限調和射が存在するので,1−a̸=a−α とする.さらに,a̸= 1とすれば異なる5点が張り合う.a= 1のときはx+α−a ≥xは 不成立.
z′
2Q+qに取り替える 2R+rに取り替える
z′ 1 1
1 1
図より異なる4点が張り合う.
2> x+α≥1のとき,z′がw′Rの間にあるとき,w′z′ の長さをa (0< a≤1)とする.
z′ z′
x
2Q+qに取り替える 2R+rに取り替える 1
1
2 1
1
1
x+α−1−a̸= 0とすると異なる4点が張り合う.x+α−1−a= 0のとき,下の図より 異なる4点が張り合う.
2Q+qに取り替える 2R+rに取り替える
z′ z′
2> x+α≥1のとき,z′がwRの間にあるとき,z′Rの長さをa (0< a≤1)とする.
z′ z′
z′
x
2Q+qに取り替える 2R+rに取り替える
1≥x+α+a−1 1< x+α+a−1 z′
1 1
1
1
2 x+α+a−1
1 2
1
1 2
z′ からb離れた点をbとする.Qに2点を集める図からbはP から 12b離れた点 12bと張り 合うことが分かる.よって,異なる4点が張り合うことが分かる.
2> x+α≥1のとき,z′がP wの間にあるとき,z′wの長さをa (0< a < 2x+α−2)と する.
z′ z′
z′
x
2Q+qに取り替える 2R+rに取り替える
x≥2x+ 2α−a−1 x <2x+ 2α−a−1 z′
1 2
1 1
1
1 1
2x+ 2α−a−1 1
2
1 2
z′ からb離れた点bをとる.Qに2点を集める図より,bはP から 12b離れた点 12bと張り 合うことが分かる.よって,異なる4点が張り合う.よって,主定理が従う.
4
主結果2
定理 4.1.
2部完全グラフK3,3で,全ての辺の長さが1と表されるトロピカル曲線をΓ とする.
このとき,超平面切断が線形同値でない有理写像Φ1, Φ2 : Γ → TP2 で像が木となるも のが存在する.また,これらは像への3 : 1 写像である.Φ1 ×Φ2 : Γ → TP2 ×TP2 と Ψ : TP2 ×TP2 → TP8 の合成は標準線形系の部分線形系Λ に付随する有理写像ΦΛであ る.Γ はΦΛによりTP8 に埋め込まれ,像はある3次超曲面に含まれる.また,Φ1, Φ2は Φ1×Φ2 を経由する.
2部完全グラフK3,3で,全ての辺の長さが1と表されるトロピカル曲線をΓ とする.以下 のように頂点を定める.
v1
v3 v4
v5 v6
v2
Γ 上の因子D, D′をD:=v4+v5+v6, D′ :=v1+v2+v3とし,f1, f2, f3 ∈R(D), f4, f5, f6 ∈ R(D′)の傾きを以下で定め,
1 1
1
1
1 1
1 1
1
1
1
1
1 1
1 1
1
1
f1 f2 f3
f4 f5 f6
fi(vi) =−1 (i= 1, ...,6)とする.
Φ1, Φ2を以下のように定めると,像は木であり,Φ1, Φ2は像への3 : 1写像である.
Φ1 :Γ → TP2
∈ ∈
x 7→ (f1(x):f2(x):f3(x))
Φ2 :Γ → TP2
∈ ∈
x 7→ (f4(x):f5(x):f6(x)) Φ1(Γ),Φ2(Γ)は下図のようなTP2 内のトロピカル直線になる.
(−1 : 0 : 0)
(1 : 1 : 0)
(0 : −1 : 0) (0 : 0 : 0)
Φ1(Γ) Φ2(Γ)
(−1 : 0 : 0)
(0 : 0 : 0)
(0 :−1 : 0)
(1 : 1 : 0)
Φ1(v1)
Φ1(v2)
Φ1(v3)
Φ2(v4)
Φ2(v5)
Φ2(v6)
Φ1×Φ2 :Γ → TP2×TP2
∈ ∈
x 7→ ((f1(x):f2(x):f3(x)),(f4(x):f5(x):f6(x)))
で定めるとΦ1×Φ2は埋め込みになる.
Ψ :TP2×TP2 →TP8をセグレ埋め込みに対応する写像で定める.
Ψ◦Φを考えることで Γ をトロピカル射影空間TP8に埋め込む.
Γ 上のトロピカル有理関数gij ∈R(K)を
gij := fifj (1≤i≤3,4≤j ≤6) で定義する.
すると,TP8 内で以下の式を満たす.
g14g15g36+g16g24g25+g26g34g35 +g14g24g35+g15g25g36+g16g26g34
= g14g15g26+g24g25g36+g16g34g35 +g14g24g36+g15g25g34+g16g26g35 G:= g14g15g36+g16g24g25+g26g34g35 +g14g24g35+g15g25g36+g16g26g34
+g14g15g26+g24g25g36+g16g34g35 +g14g24g36+g15g25g34+g16g26g35 よって,像は3次超曲面V(G)に含まれる.
次にファイバーと3次曲線の交点が3点であること,異なる3 : 1写像が二通りあることを 考察する.Gに
(f4, f5, f6) = (−a,0,0)(ただし0≤a≤1) を代入すると,
G= −af12f3−af1f22−af2f32−af12f2 −af22f3−af1f32+ 0f1f2f3”
これを図示すると,a = 0のとき,ファイバーと3次曲線の交点が3点であることがわか る.
V(G) Ψ(TP2× {(−a,0,0)})
Ψ(Φ1(Γ)× {(−a,0,0)})