集団ロールシャッハ・テストの多次元尺度構成 : 因子的真実性の原理による項目分析
その他のタイトル Construction of multidimensional scales of Group Rorschach Test : item analysis by the principle of factor‑trueness
著者 辻岡 美延, 寺嶋 繁典
雑誌名 関西大学社会学部紀要
巻 16
号 2
ページ 71‑100
発行年 1985‑03‑30
URL http://hdl.handle.net/10112/00022739
集団ロールシャッハ・テストの多次元尺度構成
—因子的真実性の原理による項目分析—
辻 岡 美 延 ・ 寺 嶋 繁 典
Construction of multidimensional scales of Group Rorschach Test : item analysis by the principle of factor‑trueness.
Bien Tsujioka and Shigenori Terashima Abstract
Correlation matrix of 32 scales of hexis level from the Group Rorschach Test was factor‑analysed e Ii mi nating the "Acquiescence Factor'; which used to be introduced in the rating type of the Test by means of the partial correlation method.Thirty‑
two hexis scales were derived from two steps of the principal component analyses of corre I at ion matrix of 400 item responses of four‑point rating sca I e type of the test obtained from male and female university students. Six intrinsic Rorschach factors of the primary factor level:Analytical Attitude, Inner Control, Emotional Stabi‑
lity, Interperson~I Sensitivity, Abstract Thinking and Suppression for Sexua I Drive beside Acquies~ence Factor were extracted. Primary factor scales were construe‑
ted according to the above factor‑analytic study by the principle of factor‑true‑
ness proposed by Cattel I and Tsujioka using a Fortran program written by Shimizu.
Acquiescence Factor was divided into two scales: Positive and Negative Acquies‑
cence Scale.
Second‑order factor : Inte 11 ectua I Potent i a Ii ty, Inner Sta bi Ii ty and Secondary Function indicate a meaningful structure among primaries by which we shall be able to expect not only the re I evant va Ii di ty to the indexes of i ndi vi̲dua I method but also the practical or clinical vaJidity in the future study.
key word : Group Rorschach Test, factor analysis, item analysis, university student test construction, factor validity, factor trueness, acquiescence
抄 録
評定法形式の集団ロールシャッハ・テストに混入しやすい黙認•黙殺傾向因子を偏相関法によ って除去し,それによって得られた32の習性水準尺度間の剰余相関行列が因子分析された。上記 32の習性水準尺度は,男女大学生に4件法で評定させた400個の反応項目の項目間相関行列に対 する 2段階の主成分分析の結果を基にして作成されたものである。
一次因子水準の実質的なロールシャッハ因子である分析的態度,内的統制力,情緒安定性,対 人的感受性,抽象的思考,性衝動抑制の6因子と黙認・黙殺傾向因子が抽出された。そしてさら に,キャッテルと辻岡の因子的真実性の原理による項目分析によって,一次因子尺度が清水のフ オートランプログラムを用いて構成された。なお,黙認・黙殺傾向因子だけは,黙認傾向と黙殺 傾向の 2尺度に分割された。
知的潜在力,内的安定性,高次精神機能の3因子からなる二次因子構造は,一次因子間の明解 な構造を示しており,それは今後の研究の中で我々が,個人法の諸指標との関連的妥当性だけで はなく,実際的妥当性や臨床心理学的妥当性をも期待できるような有意味な構造であった。
キーワード:集団ロールシャッハ・テスト 因 子 分 析 項 目 分 析 大 学 生 テ ス ト 構 成 因 子 的 妥当性,因子的真実性,黙認傾向
‑ 71 ‑
関西大学「社会学部紀要」第16巻第2号
〔 問 題 〕
R o r s c h a c h
の創案以来,ロールシャッハ・テストは,元来, 個人検査法として実施されてき たものであり,投影法の諸検査の中にあって,検査結果の数量的,客観的評価について最も綿密 に検討されてきたものの一つである。そのような中で,ロールシャッハ・テストを集団法として 用いようとする試みは以前からかなり数多く行われてきた。その中で,Munroe ( 1 9 4 4 )
やHarrower ( 1 9 5 1 )
の自由記述法( f r e e w r i t t i n g m e t h o d ) , Harrower ( 1 9 5 1 )
の多肢選択法( m u l t i p l e c h o i c e m e t h o d ) , Eysenk ( 1 9 4 5 )
の順位法( r a n k i n gmethod)
などがその代表的 なものである。この中で,
Munroe
やHarrower
の自由記述法では,スクリーンに映写されたインク像に対 し,被験者が口答で応答するかわりに,反応を記録用紙に自由に記入していくという方式を採用 し,後段での質問段階は省かれた。この方式は,テストの実施時間の短縮という点では一応の成 果をあげたが,整理と解釈に要する時間や検査者の熟練度の必要性という点では従来の個人法の 場合とほとんど変わらない。これに対し,
Harrower
の多肢選択法においては,各図版ごとに各群1 0
項目からなる3
群の選 択肢があらかじめ用意され,被験者はスクリーンに映写されたインク像に対して,被験者にとっ て最もよく似ていると思われる項目を各群から 1個ずつ選択させる方式を採用している。したが って,被験者は各図版に3
個ずつ,合計3 0
項目を選択することになる。なお,各群の1 0
項目の選 択肢のうち, 5項目は精神障害者に多く生じる反応が,残りの5項目は正常者に多く見受けられ る反応が用意されている。その際,彼女は,結果の整理と解釈に要する時間の短縮とその客観性 を考慮して以下のような方式を採用し,各選択肢を個人ロールシャッハ・テストの記号化を基に した1 0
個のキー・ナンバー(KeyN o . )
に置き換えている。このうちKl
からK5
までは適応状 態にある人に生じやすい反応であり,K6
からKlO
までは不適応状態にある人に生じやすい反応 である。そして,全反応中に不良反応(K6 KlO)
の占める割合を算出し,その結果を基にし て不適応状態にある者をスクリーニングしようとした。彼女は,不良反応を選ぶ率が60%
以上に なると異常であり,40% 60%
が境界にあると述べている。わが国でも高橋清彦( 1 9 5 4 )
がこの 方式の項目の一部を変更して追試し,この方式が,精神分裂病者のスクリーニングに特に有効で あると述べている。また,高橋・武田( 1 9 7 2 )
は,この方式によるパーソナリティ診断を試みて いる。Eysenk
の順位法は,Harrower
の選択肢のA
群から「何にも見えない」という項目を除いた9
項目を各図版ごとに設定し, 被験者には, これに対して最もよく似ていると思うものから順 に,1
から9
までの順位を付することを求め,4
個の不良反応に被験者が付けた順位数をそのま ま合計し,それをその被験者の得点とするものである。したがって,最も適応状態にある者は論‑ 72 ‑
理的に不良反応を後の方,すなわち
6
番目から9
番目に順位付けると考えられ,この順位を合計 したもの(6+7+8+9=30)
が一つの図版に対する得点となる。同様にして求めた1 0
枚の図版の 得点の総合計点によって,不適応状態にあるものをスクリーニングしようとするのである。した がって, 適応状態にある者ほど得点が高く(最高3 0 0
点), 不適応状態にある者ほど得点が低く(最低
1 0 0
点)なることが期待される。この方式の追試として,村上・江見( 1 9 5 6 )
は,精神分 裂病群,非行少年群,正常群の三群にこれを実施し,それぞれ,1 9 9 . 9
点,2 1 2 . 6
点,2 3 4 . 2
点と いう平均得点を得ており,大まかなスクリーニングが可能であると述べている。このように,従来の集団ロールシャッハ・テストの3方式ー自由記述法,多肢選択法,順位法 について,その実施法や結果の整理及び解釈について概観したが, これらの方式は, 実施,整 理,解釈に要する時間の短縮と検査者の熟練度の軽減という観点からは一応の目的を達成してい るように思われる。しかし,これらの方式は,被験者の概括的なスクリーニングを目的にしてお り,そこに含まれる尺度は個人法の経験的な知識に基づく総括的な適応度の良否を表示する一次 元的なものにすぎず,尺度の信頼性,妥当性の観点からの充分な検討を経たものといえない。
ところで,因子分析によって個人法のロールシャッハ・テストの指標を分析した研究は過去に いくつかみられる
( A l t u s & Thompson 1 9 4 8 , Cronbach 1 9 4 9 , Wittenborn 1 9 5 0 , Coan 1 9 5 6 , Murstein 1 9 6 0 , Geertsma 1 9 6 2 , Ewert
&Wiggins 1 9 7 3 , S h a f f e r , Duszynski
&Thomas 1 9 8 1
など)。この中で,Geertsma( 1 9 6 2 )
は正常者のロールシャッハ・テストの2 0
の指 標について因子分析を行った結果,色彩反応因子,知覚の正確さの因子,人間運動反応因子,濃淡 反応因子,統合能力因子,通景因子という6
次元構造を見出している。同じ<,S h a f f e r
ら( 1 9 8 1 )
は,総反応数,全体反応,人間運動反応,統制された色彩反応対濃淡反応,動物反応,普通部分反応 対異常部分反応,色彩の優勢な反応という7
因子を見出している。これらの結果はいずれも,ロ ールシャッハ・テストの内容が多次元構造であることを示しており,集団ロールシャッハ・テス トも単なる一次元構造としてではなく,多次元構造の尺度を構成することも十分に可能であると 考えられる。そして,この事実は,今後の工夫如何では,集団ロールシャッハ・テストを人格の 様々な側面をとらえる多目的な人格検査として発展させ得る可能性があることを示唆している。このような観点から,高橋・西尾
( 1 9 8 2 , 1 9 8 3 )
は,順位法を双対尺度法によって分析し,そ の結果,順位付けの過程に働く心理的次元として「知覚の正確さ」と「情緒の安定性」という二 つの次元を明らかにしている。そして, 「知覚の正確さ」の次元への重みに基づく選択肢を新た に作成し,その次元における個人得点の算出を試みている。さらに,得られた個人得点に基づい て,正常群と精神分裂病群に判別分析を行い,順位法がかなり高い判別能力のあることを証明し ている。このように,彼らは,順位法をより実証的に検討し, 「知覚の正確さ」の次元における 妥当性の高いスクリーニングを試みている。これより先に石川
( 1 9 5 7 )
は,同様の観点から,反応形式に評定法という全く新しい方式を採 用し, 因子分析的手法による集団ロールシャッハ・テストの多次元尺度構成を試みている。彼‑ 73 ‑
関西大学『社会学部紀要」第
1 6
巻第2
号は,高橋清彦の多肢選択ロールシャッハ・テストの
3 0 0
項目を用い, そこからHarrower
のKey N o .
や個人ロールシャッハの指標などによる2 1
の仮尺度を作成し,2 1
尺度の内的整合性信 頼性や独立性の検討結果から 5尺度を排除し,残り1 6
尺度についての相関行列を求めて因子分析 を行っている。その結果,次のような3
次元構造を明らかにしている。そのうち,A
因子は,一 般因子であり,項目選択数 (R)に最大の負荷を持ち, 「反応流暢性」あるいは「自由な反応機 能」を示す因子であり,第2のB因子は,運動反応 (M)に関係があり, 「内的統制力」を示す 因子である。さらに,C
因子は,C ,CF
という色彩反応とF
ーで代表される不良形態反応に関 係があり, 「情緒的興奮性」と 「知的並びに情緒的統制能力の欠如」を示す因子であるとしてい る。ここで明らかにされた3
次元の因子構造と,外的基準としてのY G
性格検査の各尺度と各反 応項目との相関を基にして,四つの尺度と三つの予備的尺度を構成している。この研究は1 9 5 7
年 当時,集団ロールシャッハ・テストに多次元尺度構成の概念を初めて導入し,個人法の知識のみ に頼ることなく,因子分析的手法によって実証的に尺度構成を行ったという点で,評価すべきパ イオニア的研究である。ただ,仮尺度の作成の際に,従来の個人ロールシャッハ・テストの指標 を基本にしていることや,最終的に選択された項目と本来求めようとする因子の方向とが,どの 程度合致しているのかなどの問題が残されている。さて,我々の研究目的は,このような問題点を考慮し,集団ロールシャッハ・テストがスクリ ーニング・テストとしてではなく,パーソナリティの諸側面をとらえることのできる多目的で,
信頼性と妥当性のある人格特性検査に発展させるために,因子分析的手法を用いた多次元尺度構 成を進めていくことである。そのために本研究では,反応形式として,
4
件法の評定法を採用 し,因子構造の解明に留意しながら,C a t t e l l
・辻岡( 1 9 6 4 )
及び辻岡( 1 9 6 4 )
の言う「因子的真 実性の原理」による項目分析を行うことにした。〔 方 法 〕
(I)
検査項目の収集尺度構成を行う第
1
段階として反応項目の収集を以下の手順により行・った。高橋清彦
( 1 9 5 4 )
の多肢選択集団ロールシャッハ・テストの反応項目より「何にも似たものな し」という項目を除いた2 7 0
項目と,高橋雅春( 1 9 5 7 )
の同テスト項目より「何にも見えませ ん」という項目を除いた2 7 0
項目のうち,全く同じ項目や極めて類似した項目はその一方だけを 採用した。その結果,反応項目の数は3 8 0
項目(各図版に3 8
個ずつ)となった。さらに,臨床上,特に必要と思われる項目を各図版に
2
個ずつ,合計2 0
項目を加え,最終的に反応項目は,各図版 に4 0
個ずつ,合計4 0 0
項目を採集した。なお,これらの項目は過去の集団ロールシャッハ・テス トの研究で用いられた項目をほぽ完全に網羅している。また,個人法の記号化をもとにした各図 版における反応項目の一般的な領域,決定因,反応内容,形態水準の分布状況はT a b l e1
から‑ 7 4 ‑
T a b l e 4
に示すとおりである。(ll) 被 験 者
大学生男子 335名(平均年齢20.1歳,
S .D 1 .
56), 同女子 241名(平均年齢19.7
歳,S.D 1 .
26)に昭和58年9月に実施した。この中で, 1年次生が全体の約50彩で,残りの50彩には, 2 年次生4
年次生がほぼ均等に含まれている。従って,以下の分析結果は,一般の大学生の中に 見出される集団ロールシャッハ・テストの構造であり,ここで見出される次元が他の集団におい て見出される次元といかなる同一性,あるいは転移可能性を有するかが後の問題となる。(:m:) 実 施 法
本研究で採用した映写法は,高橋・武田 (1972)の方法にほぽ従うものであるが,回答を「よ Table 1 Distribution of locations on ten cards
~ 竺 門
1i r r l m l r v l v l v i l w l
珊 IlX I X I Total 彩w
33 24 27 34 31 33 30 28 21 26 287 71. 8D 4 7 13 3 3 6 3 11 17 14 81 20.3 Dd 2 3
゜
3 6 1 4゜
1゜
20 5.0s
1 6゜゜゜゜
3 1 1゜
12 3.0Total 1 40 1 40 1 40 1 40 40 I 40 I 40 I 40 I 40 I 40 I 400
i
100%Table 2 Distribution of determinants on ten cards
D
こ二↑
I III
皿j w v l v i V J I I
珊I
]X XI
Total %M 5 3 6 1 3 1 4 3 1 27 6.8 FM 2 2 3 1 3 1 2 2 16 4.0
Fm 1 1 2 1 1 6 1. 5
mF,m 2 1 2 1 4 1 1 12 3.0
Fk
゜
0.0kF,k 2 1 1 1 1 1 2 2 11 2.8
FK 1 1 0.3
KF,K 1 1 2 1 3 2 10 2.5 F 25 21 11 19 23 26 21 16 19 12 193 48.3
Fe 1 1 3 1 6 1. 5
cF,c 1 1 2 1 2 1 8 2.0
FC' 1 2 5 2 10 2.5
C'F,C' 2 5 6 2 2 17 4.3
FC 2 6 5 1 5 19 4.8
CF 2 5
,
12 11 39 9.8 C 3 4 1 8 3 6 25 6.3 Total 1 40 I 40 I 40 I 40 I 40 I 40 1 40 I 40 I 40 1 40 I 400 J 100彩‑ 75 ‑
関西大学「社会学部紀要」第16巻第2号
Table 3 Distribution of contents on ten cards
~ I
II
III
1III
IVI
VI
VII
WI
VlllI
1XI
XI
TotalI
%H 7 6 8 7
,
4 6 2 5 5 59 14.8 (H) 1 2 1 2 3 3 12 3.0 A 11 11 10 10 10 6,
7 6 10 90 22.5(A)
゜
0.0AobJ 1 1 1 1 4 1.0
At 4 3 4 4 2 3 3 6 3 4 36 9.0
AAt
゜
0. 0Anal 1 1 2 0.5
Bl 1 1 2 1 1 6 1. 5
Sex 1 1 2 4 1.0
Xray 2 1 1 1 1 1 1 1
,
2. 3 N 3 2 4 3 6 3 1 1 3 26 6.5 Geo 1 2 1 1 1 1 7 1. 8Cl 1 1 2 2 1 1 1 2 1 12 3.0
Smoke 1 1 0.3
Fire 1 1 1 2 2 1 8 2. 0
Expl 1 1 1 3 0.8
Pl 2 1 1 3 2 4 5 4 22 5.5 Abst 1 1 4 1 2
,
2.3Arch 1 3 1 1 6 1. 5
Art 1 1 2 4 1.0
Cloth 1 1 1 ‑1 4 1.0
Em 1 1 1 1 4 1.0
Food 1 2 3 0.8
Mask 1 1 1 2 5 1. 3
ObJ 3 3 2 2 3 4 6 3 2 1 29 7. 3 Stain 1 3 5 2 2 1 2 3 2 4 25 6.3 Travel 1 1 1 3 0.8
Weapon 1 1 0.3
Other 1 1 2 1 1 6 1. 5 Total
I
40 1 40I
40I
40I
40I
40I
40I
40I
40 1 40I
400 j 100彩Table 4 Distribution of form levels on ten cards
~ I
II n I
IllI
IVI
VI
VII
VIlI
¥llII
IXI
XI
TotalI
彩+ 20 19 21 20 26 19 19 13 15 12 184 46.0 十一 12
,
12 14 12 10,
20 17 21 136 34.0 8 12 7 6 2 11 12 7 8 7 80 20.0 Total 1 40 1 40 1 40I
40 1 40I
40I
40I
401
40 1 40I
400 1100彩く見える」「まあまあ見える」「あまり見えない」「全く見えない」の
4
段階評定によって求める という点が異なり,最初の教示は以下のように行った。『今から10枚の絵をスクリーンに写しだします。皆さんは,その絵を見て何に見えるかを考えて下さい。こ の絵は特に何に見えるとは決まっていませんので,良い答えとか悪い答えとかは全くありません。自由に見 て下さい。
では,回答用紙への記入の仕方について説明します。
まず,スクリーンに1枚目の絵を写します。皆さんは,何もしないでその絵を見て何に見えるかだけを考 えて下さい。そして,こちらからの合図がありましたら,回答用紙の第1ページ目を開いて下さい。そこに は40個の項目が書いてありますので,それを上から順番に読んでいきます。その際,その項目が,
(1) 今,言われるまでもなく,以前からそのように見えていたと思う場合には「よく見える」のところへ 0をして下さい。
(2) 今,そう言われると,そのように見えると思う場合には「まあまあ見える」のところへ0を (3)今,そう言われても あまりそのようには見えないと思う場合には「あまり見えない」のところへ〇
を
(4) そのように言われても,私ならそのようには絶対見えないと思う場合には「全く見えない」のところ へ0をして下さい。
0印は,各項目に必ず1箇所だけつけるようにして下さい。
なお,途中で気が変わった場合は,先の答をX印で消して,新たに〇印をつけて下さい。あまり考えすぎ ると判断がつかなくなりますので,第1印象ですばやく答えるようにして下さい。以下10枚の絵についても 順次このような仕方で記入して下さい。
では, 1枚目の絵を写します。回答用紙は指示があるまでそのままにして,まず何に見えるかだけを考え て下さい』。
この教示を行った後,部屋を暗くし,
I
図版をスクリーンに投写する。最初の3 0
秒間は回答さ せずにインク像だけを注視させ,その後,回答用紙に記入するように指示し,項目を順々に読ん でいく。このような手続きを10枚の図版全てについて行う。実質の施行時間は各図版あたり,約4
分3 0
秒であった。〔結果の分析〕
(I)
出発尺度の構成辻岡 (1975)によれば,大規模な項目分析を行う場合,本来,信頼性の低い項目間の相関行列
(本研究では 400X400)をそのまま因子分析するよりも,習性水準 (Hexislevel)での項目群 によって出発尺度を作成し,これらの尺度を分析の単位とする方が,より安定した信頼性の高い 因子尺度が得られるという。なぜなら,このような項目群尺度によって続ら (1970, 1971)が強 調した項目ごとの多義性,特殊性を封じ込めることができるからである。
従来,習性水準の項目群を作成するには,項目変量の示す表面的,論理的妥当性の観点から,
類似した項目を集めるという手続きがとられてきた。しかし,ロールシャッハ・テストの反応項 目は,他の質問紙法の項目のように, その項目の表面的,論理的意味内容が必ずしも明確でな
‑ 77 ‑
関西大学『社会学部紀要」第16巻第2号
く,グループ化のための外的基準も定かではない。そこで,等質性の高い項目群を,個人法の知 識のみに頼ることなく帰納的に作成するためには,主成分分析によって,その結果を基に項目群 を作成することが賢明である。
その手続きとして,まず,男女大学生の576名の400項目への評定点によって, 400X400の項目 間相関行列を求め, ScreeTest (辻岡・東村 1975)の結果から,主成分分析の第20成分までを 抽出することにした。さらに,その結果を
Varimax
回転し,Promax
法で斜交解の単純構造 化をはかった。この結果を基にして,各成分ごとに内部相関の高い項目を選択し, 20尺度(合計 229項目)を作成した。 さらに,残りの 171項目に対しても,再度,同様の手続きによって主成 分分析を行い, 10尺度 (86項目)を追加した。これは,初回の主成分分析によって,大きな分散 の取り除かれた残りの171項目の中に,それらの分散は小さいが,なお個人ロールシャッハ・テ ストにおいて出現するような微妙な情報が残されているのではないかと推測したためである。さらに,論理的妥当性の観点から比較的明確な二つの尺度—平凡反応 (P 反応)と空白反応
c s
反応)の両尺度を追加した。P
反応もS
反応も共に個人法では重要な指標とされてきたが,先の2回の主成分分析の際には,これらの 2種の反応からなる純粋な主成分尺度が得られなかっ たため, 400項目の中で,従来から一般的にP反応, あるいはS反応とされてきた項目を選択 し,尺度としたものである。最終的に選択された項目数は400項目のうち, 32尺度340項目とな った。なお,尺度間に重複する項目がないようにそれぞれの項目を因子パタン値の大きい方へ配 属した。また,論理的妥当性の観点から,パクン値が大きくても解釈不可能な項目はそのグルー プには含めなかった。
以上のように,出発尺度を個人法の経験的な知識に偏ることなく主成分分析の結果を基にして 実証的に作成したが,これらの尺度には個人法で重要視されている指標のほとんどが網羅されて いるようである。各出発尺度と項目は次のとおりである。なお,反応項目は上記のような操作的 分類を行ったので, その尺度の全体的な性質とはやや異質な項目が含まれる場合も若干みられ た。また,項目数が多いために,全ての項目を列挙することは不可能なので,各尺度に対して特 に代表的と思われる項目を挙げることにする。各変量の次の
C
〕内のイタリック数字は各出発 尺度項目群の項目数を示し,反応項目の次の( )内のローマ数字はその項目の図版番号を示す。1 不定型,不良反応:F‑ (15)
決定因に Fーと記号化されるような反応項目からなる不定形の不良反応の尺度である。
内臓(N),いなびかり(VJ[) 胃と腸(lX) 骨(X) 2 色彩を伴う象徴的な反応:SY (13)
決定因に CFsymゃCsymと記号化されるような反応項目からなる象徴的な反応の尺度である。
春の風景(珊) 天国のよう(X) 小川の辺(X) 祭か何か人の集まり(X) 3 良形態の普通部分反応:F+ (15)
主として,良形態の普通大部分反応からなる尺度である。
色のついたチョウョウ (Ill) 大きな足(IV) カタツムリの頭(V) 2匹の獣(圃)
4
インク反応:ST (16)
内容に Stainと記号化されるような反応項目からなるインク反応の尺度である。
墨をこぼしたよう (IV) 黒い色(V) 赤や青やいろいろの色(憧) いろいろなしみ(X)
5
性・肛門反応:s x (9)
内容に SexゃAnalと記号化されるような反応項目からなる尺度である。
女性器(II) 生殖器(VI) 男性器(VI) 肛門(VJI)
6
動物の顔反応:lF (10)
主として
I
図の動物の顔に関する反応項目からなる尺度である。全体が動物の頭(I) 動物の面(I) こっちを見つめている目(I) 恐しい動物の顔(I)
7
建物・物体反応:AC (10)
内容に ArchゃObjと記号化されるような反応項目からなる尺度である。
教会(VI) 勲章(VI) 灯台(VI) 首飾り(VJI)
8 I
図の不定形の不良反応:1 ‑ (13)
I
図に生じる不定形の不良反応からなる尺度である。血(I) 内臓(I) 汚物(I) 溶岩(I)
9
非現実的人間全体反応:CH) (12)
内容に(H)と記号化されるような反応項目からなる尺度である。
カッパニ匹(Ill) 悪魔(IV) 羽をつけた悪魔(V) 鬼(V)
1 0
色彩を伴う解剖反応:AT (11)
決定因に CF,内容に Atと記号化されるような反応項目からなる解剖反応の尺度である。
内臓(II) 内臓(憧) 肉(WI) 内臓(IX)
1 1
動物や人間の顔反応:FA (12)
ほぼ全図版にわたる動物や人の顔に関する反応項目からなる尺度である。
動物の顔(II) 動物の顔(IV) 人間の顔(珊) 女の人の顔(珊)
1 2
エックス線反応:XY ( 8 )
内容にX Yと記号化されるような反応項目からなる尺度である。
レントゲン写真(I) レントゲン写真(IV) レントゲン写真(V) レントゲン写真(VJI) 13 II図, Ill図の人の顔反応:2F (8)
主として, II図と皿図の形態水準の低い人の顔反応からなる尺度である。
人の横顔(II) 両側に小さい顔がある (II) こっちを見ている二人の人(II) 女の人の顔(Ill)
1 4
人間全体反応:H (10)
内容にHと記号化される人間全体反応の尺度である。
人が坐っている (IV) マントを着たダンサー (V) 小さい人(VI) 人間 (lX)
1 5
対称的な人間反応:HS ( 9 )
主として,領域にWn,内容に Hと記号化される反応であり,図版の左右に二人の人間を答えるよ
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関西大学「社会学部紀要』第16巻第2号 うな反応項目からなる尺度である。
人が二人いる(I) サンタクロースが二人踊っている(I) 二人の消防士(]X) 二人の小人(1X)
1 6
抽象反応:AB ( 9 )
内容にAbstと記号化されるような抽象的な反応項目からなる尺度である。
天国と地獄(憧) 生と死(珊) 悪魔のいけにえ(1X) キリストの誕生(X)
1 7
運 動 を 伴 っ た 人 間 の 平 凡 反 応 :MP (9)
決定因にM+.内容にH,さらに平凡反応のPが記号化されるような反応項目からなる人間運動反応 の尺度である。
二人の人が手を合わせている(II) 子供が二人遊んでいる (II) お辞儀をしている二人の給仕(III) 二人の人が踊っている (VII)
1 8
血・火反応:C
〔14)
決定因に CFゃC,内容に FireゃBlと記号化されるような反応項目からなる尺度である。
血(II) 火と煙(III) 血(憧) 火が燃えている(憧)
1 9
植物反応:PL (14)
内容に Plと記号化されるような植物反応の尺度である。
葉(I) 葉(VI) きれいな花(憧) カンナか何かの花(1X)
2 0
拡散反応:KF (12)
決定因に KFと記号化されるような反応項目からなる拡散反応の尺度である。
噴火している火山(II) 煙(IV) 雲(IV) 黒い煙(V)
2 1
無 生 物 運 動 反 応 :m
〔13)
決定因に mF,m と記号化されるような反応項目からなる無生物運動反応の尺度である。
押しつぶされたダニ(II) 押しつぶされたもの(IV) 押しつぶされた体(V) 飛び散ったペンキ (X)
22 普 通 部 分 の 動 物 反 応 :D A (10)
領域にD,内容にAと記号化されるような反応項目からなる動物反応の尺度である。
鳥の頭(III) エビ(1X) ナマコ(X) アオムシ(X)
2 3
毛皮反応:A O ( 7 )
内容に Aobjと記号化されるような反応項目からなる毛皮反応の尺度である。
動物の毛皮(II) 動物の毛皮(IV) 毛皮の上衣を着た大男(IV) 大きなゴリラ(IV)
2 4 V
図の形態反応:5+
〔6)
主としてV図の形態反応からなる尺度である。
バレエの踊り子(V) 馬のよう(V) 人の腰から下(V) 人間の顔(V)
2 5
良 形 態 の 動 物 反 応 :A +
〔7)
決定因にFャ 内 容 にAと記号化されるような動物反応の尺度である。
鳥(I) コウモリ(IV) チョウ (VII) ガ(VII)
2 6
色彩反応:CF ( 9 )
決定因にFC, CF, Cと記号化されるような色彩反応の尺度である。
飾りのついたクリスマスの木(園) オレンジ(圃) 真赤な雲(1X) 地図(1X)
2 7
普通部分反応:DD (9)
主として普通部分反応からなる尺度である。
舌(I) ベン先(JI) 上の方の部分が山(Vlll) 塔(X)
2 8 I I
図,皿図の動物・解剖反応:2A (11)
主として, 1I図と皿図の動物反応や解剖反応からなる尺度である。
カメ(JI) 血のついた背骨(JI) 内臓(ill) 落ちていくネコ(皿)
2 9
人間の顔反応:HD ( 8 )
主とし人間の顔に関する反応項目からなる尺度である。
両側の所にインデアンの顔がある(JI) 石に刻んだ顔(JI) 冠をかぶった二人の王様の顔(VI) こっちをにらんでいる目(JX)
3 0
角など硬い突起のある長細い動物反応:LA
⑭)角などの硬い突起を持つ動物や長細い動物に関する反応項目からなる尺度である。
シカの角(河) タツノオトシゴ(JX) リュウ(JX) シカの角(JX)
3 1
平凡反応:p (17
〕Pと記号化される平凡反応の尺度である。
コウモリ(I) 二匹の犬(JI) 黒人が二人(皿) コウモリ(V)
3 2
空白反応:S
〔8)
領域に Sと記号化される空白反応の尺度である。
ロケット(JI) 白いコマ(JI) ランプのよう(W) 白い電気の笠(")
(Il) 出発尺度間相関
これら
3 2
変量の尺度得点について,先の被験者より積率相関による相関行列を求めた( T a b l e
5左下三角)。この相関行列をみると, 各変量とも極めて高い相関を示しており, 何らかの一般 反応傾向が働いているものと考えられる。石川の仮説尺度間相関行列の因子分析の結果でも,第一因子は総反応数の尺度に最も負荷し,
他の多くの尺度にもかなりの負荷を示している。彼はこの因子を『反応流暢性』, あるいは「自 由な反応機能」を示すものと考え,集団ロールシャッハ・テストの遂行において全般的に作用し ている一般因子であると述べている。このことから,本検査の遂行においても何らかの一般因子 の存在が考えられる。ただ,本検査では
4
段階評定を採用しており,評定法という反応形式自体 から生じる一般反応傾向と考えるのが最も妥当であろう。その傾向としては次のようなものが考 えられる。従来から言われているように,評定法の場合,各項目ごとの評定を行うために他の項目の見え やすさはほとんど考慮する必要がない。また,評定法は,あらかじめ項目を用意し,その反応項 目の概念とインク像の形態との一致度を問うという点で,個人法のような記憶の再生ではなく,
明らかに再認である。例えば,個人法で,ある健常者がインク像に『墨の散ったもの」を知覚し た場合,それを言語化する必要がある。しかし,評定法の場合は,あらかじめそのような反応が
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