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山梨子どもアートセンター及び子ども美術館構想について1

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Academic year: 2021

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山梨子どもアートセンター及び子ども美術館構想について1

―山梨県立美術館における造形広場―

伊 藤 美 輝

第8号までの活動報告において「アートセンターネットワーク構想」があると記述 したが、正確にはそのような構想が組織的に検討されているわけではない。あくまで も私案であり希望的なプランとして検討している状況で在ることを前提に報告させて いただく。

※また、文中において「地域アートセンター」「子どもアートセンター」等の違った 名称を使用するが、検討された時期による違いであり、基本的に同じものを指す。

1.「子どもアートセンター」―アートセンターネットワーク構想―

目的

「感じる」「考える」を包含した造形活動をとおして創造力を育成する。

「感じる」・・・・・五感への刺激・感覚を育てる

「考える」・・・・・体験的思考・失敗と成功からの学習 方法

・山梨県内を7地域位に区分し、各地域に造形表現活動のための地域アートセンター

(以下各センター)を設置する。

・各センターは、素材・道具を利用者に提供するとともに、造形活動に主体的に関わ るためのテーマ・方法を企画・運営する。

・各センターは、個々に造形活動の企画・運営を行うとともに、相互に情報提供を行 い活動の活性化を図る。

以上が雑駁であるがプランの骨子となるものである。

各センターの設立趣旨として、その考えを文章にしたものを以下に示す。山梨県東 八代郡地区にセンターを建設するために公的機関に提示した文章である。

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(2)

山梨子どもアートセンター及び子ども美術館構想について

山梨学院短期大学 伊藤 美輝 1.はじめに

子ども一人ひとりの将来への希望と可能性を育むことは、子どもの幸せと共に 私たちの社会全体の豊かさを育てることになります。

子ども本来の生きる力とは、「もの(者・物)」との関わりの中で自らの存在を 肯定することだと考えます。自己の存在を肯定することは、同時に他の人の存在 を認め、関わる力を持つことになります。

その力は、「関わる力」「表す力」により構成されます。また、この2つの力は

「関わること」「表すこと」により培われ、なによりも子ども自らの体験により 育っていきます。

その体験の中に必要な要素としては、「表す行為」の「試行錯誤」を楽しむこ とがあげられます。

「表す行為」の要素としては、「道具」と「素材」であり、最も基本的な道具 として子ども自身の「身体」の存在があります。この2つの要素は共に「関わり」

と「表し」において重要な役割を持ち、先に述べた「試行錯誤」における具体的 な「物」としてその環境に存在しています。

同時に「関わる」行為におけるきっかけとしての刺激を与える「物」として存 在し、子どもの好奇心と結びつき直接的体験的に関わる力を培います。

そしてその子どもを取り巻く環境には、その「表出・表れ」を受容する「人」

の存在を忘れることは出来ません。また、「人」は受容する存在であると共に、

刺激を与える重要な存在でもあります。

2.山梨こどもアートセンター(仮称)とは

先に「社会全体の豊かさ」と示しましが、その豊かさを実現するために社会を 構成する一人ひとりが豊でなければならないと思います。その逆、すなわち社会 が豊であれば、個人が豊になるという流れはあり得ないものと思います。すなわ ち、社会を構成する一人ひとりが豊であってこそ全体としての社会が豊になり得 るのだと言えます。

ここで言う「豊かさ」とは、先に述べたように「個人の存在」から生まれるも

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のであることはいうまでもありません。

山梨こどもアートセンターは、子どもも大人も「人・物・社会・自然」と関わ り、様々な方法で思いを確かめ表す過程を楽しむ場とします。

そして、その過程において「様々な問題との遭遇」「様々な課題の発見」「様々 な工夫の試行」を積み重ねることにより、子どもとして人としての「生きる力」

を自ら育むことになると考えております。

2.山梨県立美術館における「つくろうあそぼう造形広場」について

美術館に対する考え方は、その関わる立場で様々ある。山梨県立美術館のような公 立の美術館となると、そこに収蔵・展示されている作品(資料)の保存と展示という その役割の意味は「美術文化の未来への継承」ということになる。未来への継承を具 体的に考えるならば、次世代を引き継ぐ人材すなわち「子ども」への継承ということ が、その目的として重要な意味を持ち得る。

今更、ここで言うまでもなく、特に公立の美術館においては、教育機関としての役 割はすでに存在しており様々な試みがなされているが、その多くは受動的な内容で構 成されている。その内容はより積極的に関わるために様々に工夫はされているが、表 現する場としての「美術館」の企画は見られないわけではないが、伝統的な表現技法 の講座が中心であり、講座の参加対象も成人向けのものが大半であった。

このところに、現在の日本における「美術・美術教育」の理解の状況が現れてい る。すなわち、その意味は趣味性の強い行為であり、美術館を取り巻く状況にその考 え方が反映している。

短期大学の私の授業において、できるだけ美術館を訪問する機会を課題として設定 しているが、その際に提出されたレポートの多くには「久しぶりに美術館に行きまし た」との記述がみられる。その久しぶりは、小学校以来または中学校以来の2回目の 訪問で、山梨県出身の学生であっても「初めて訪問した」との記述もある。

さて、次世代を引き継ぐ「子ども」への継承を考え、子ども(幼児も含め)の頃か ら美術館を訪問する機会として鑑賞する場所ではなく表現する場所としての企画を以 前から提案してきた経緯がある。

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その企画の具体的なものが23年より実施している「つくろうあそぼう造形広場」

(以下造形広場)である。

2年秋に企画展として開催された「おもちゃ展」において造形コーナー設置し実 施し、好評を得たことから、23年にテストケースとして数回実施した。24年5月 の美術館のリニューアルの際に実習室が新しくなり、そこを会場にして毎月の開催と なった。(23年は展示室にて実施)

注1 30名中20名は、外部団体として参加申し込みがあり、別室で製作活動する。

注2 台風接近により、講師・ボランティアは参加を中止したが、来場者があり美術 館スタッフが対応した。

注3 山梨学院短期大学専攻科保育専攻学生(7名)による企画・運営により実施す る。

・開催時間 土曜日、午後1時30分より4時

・参加申し込み 事前の申し込みは不要

・参加費 無料

・材料・道具 会場に用意

・運営スタッフ 造形指導講師、美術館学芸課スタッフ、学生ボランティア

・参加対象 幼児・学童

2004年度(平成16年度)造形広場のテーマ・参加者数

開催期日 テーマ 主な素材 参加者(大人含)

5月15日 なんでもマリオネット ペットボトル・カップ・糸等 100名 6月19日 なんでも風車 紙皿・紙コップ・卵パック等 310名 注1 7月17日 ポップアップボックス 空き箱 200名 8月21日 動くおもちゃ 紙皿・ストロー・紙コップ等 118名 9月18日 秘密基地(私の部屋)をつくろう 空き箱・画用紙・ 43名 10月9日 動くおもちゃ 紙皿・ストロー・紙コップ等 20名 注2 11月6日 つなわたりの工作 画用紙・凧糸・クリップ等 58名 12月18日 サンタクロースがやってくる クッション材ペットボトル等 122名

1月15日 造形屋台 紙皿・紙コップ・卵パック等 107名 注3 2月19日 風で遊ぶ 凧作り ゴミ袋・紙コップ・凧糸等 85名

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造形広場 会場風景

造形広場 製作の様子

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(6)

「つくろうあそぼう造形広場」の企画目的は、基本的には1,「子どもアートセン ター」アートセンターネットワーク構想に示した目的と同じであるが、そのねらいも う少し具体的に述べると以下のようになる。

ねらい

・造形活動のテーマを通して、造形素材の体験と道具の体験をする。

・上記の体験から、素材および道具の性質・特を理解し、応用・発展させる力を養う。

・造形活動における工夫の面白さを実感することにより、その過程における楽しみ喜 びを見いだす。

内容

・様々な生活廃品を素材として準備し、造形活動を通してその特徴に触れる。

・様々な加工に必要な道具を準備し、造形活動を通じてその機能に触れる。

・素材の特徴、道具の機能を繰り返しの使用により理解する。

指導上の留意点

・子どもの製作した作品を受容する。

・テーマはあくまでも製作活動の導入として考える。

・製作過程の課題は、製作のヒントとして肯定的に捉える。

・道具は安全を第一にして使用するが、その範囲のなかにおいて応用することを促 す。

・テーマに含まれる造形の構造等の科学的要素を、参加者の発達段階をふまえて提供 する。

3.各子どもアートセンターと県立美術館の関係についての課題

各センターが、個々に企画・運営を行うなかでその中核になる存在としては、すで に述べた観点からも山梨県立美術館が最も相応しい場所である。その関係性について は、相互の情報の共有を基本にして独自の活動を展開することが望ましいと考えられ るが、運営に関する役割・予算など未検討な要素があることから、軽々しく中核にと はいえない。今後の具体的な活動を通して検討を進めていきたい。

次回には、25年4月より開設する子どもアートセンター「アールプラッツ」の活 動状況を含めてこの構想の進展を報告したい。

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