はじめに
全国の十三大都市立感染症指定医療機関(旧都
市立伝染病院)で構成される感染性腸炎研究会で は毎年,我が国における赤痢を初めとした感染性 腸炎の入院例に関する調査・集計成績を報告して きた.すでに,1962 年から 1994 年までのデータは
『感染性腸炎の最近の動向』
―1996〜2000 年における感染性腸炎研究会の調査成績より―
川崎市立川崎病院感染症科1),横浜市立市民病院感染症部2),福岡市立こども病院・感染症センター3), 京都市立病院感染症科4),札幌市立札幌病院南ヶ丘診療所感染症科5),東京都立荏原病院感染症科6),
財団法人平和協会駒沢病院内科7),国立感染症研究所感染症情報センター8), 現 金沢内科*
小花 光夫
1)相楽 裕子
2)青木 知信
3)金 龍起
*4)滝沢 慶彦
5)角田 隆文
6)入交昭一郎
7)山下 和予
8)(平成 14 年 1 月 11 日受付)
(平成 14 年 2 月 5 日受理)
第75回日本感染症学会総会学術講演会座長推薦論文
全国の十三大都市立感染症指定医療機関で構成される感染性腸炎研究会において 1996 年から 2000 年 までの 5 年間における感染性腸炎入院例の調査成績を集計した.
入院総数は 1998 年までは毎年 970〜1,100 名であったが,1999 年以後は赤痢の減少により約 2!3 に減 少した.赤痢菌属検出例は 1998 年までは年間 400〜500 例であったが,1999 年以後は著減し,5 年間の 合計は 1,514 例であった.菌株としては複数菌感染があるため 1,527 株であり,そのうち海外由来は 1,078 株,70.6% であった.サルモネラ属は 562 株,海外由来は 76 株,13.5% であった.O1 コレラ菌は全てエ ルトール型菌で,61 株中 44 株,72.1% が海外由来であった.赤痢アメーバは 225 株中 39 株,17.3%,ラ ンブル鞭毛虫は 46 株中 39 株,84.8% が海外由来であった.クリプトスポリジウムとイソスポーラは各々 3 株分離された.
臨床症状・経過では腹痛,嘔気,嘔吐の頻度は腸炎ビブリオで,最高体温,最高便回数はサルモネラ 属で最も高かった.血便の頻度は大腸菌,カンピロバクター属の順に高く,赤痢菌属では 24.1% に過ぎ なかった.赤痢菌属,サルモネラ属では国内例の方が海外由来例より重症であった.
赤痢菌属での OFLX 耐性は 1.7%,FOM 耐性は 9.3% であった.サルモネラ属での ABPC 耐性は 13.5
%で,OFLX 耐性はなかった.C. jejuniでの OFLX 耐性は 26.0% と高かったが,EM 耐性は 2.5% であっ た.
〔感染症誌 76:355〜368,2002〕
要 旨
別刷請求先:(〒210―0013)川崎市川崎区新川通 12―1 川崎市立川崎病院感染症科 小花 光夫
Key words: infectious enteritis, travelers diarrhea, shigellosis, salmonellosis, cholera
Table 1 Research group for infectious enteric diseases, Japan
Sapporo Sapporo city general hospital
Minamigaoka clinic
Sendai Sendai city hospital
Section of infectious diseases
Tokyo Tokyo metropolitan Toshima hospital
Department of infectious diseases
Tokyo Tokyo metropolitan Komagome hospital
Department of infectious diseases
Tokyo Tokyo metropolitan Bokutoh general hospital
Department of infectious diseases
Tokyo Tokyo metropolitan Ebara general hospital
Department of infectious diseases
Chiba Chiba municipal hospital
Department of internal medicine
Kawasaki Kawasaki municipal hospital
Department of infectious diseases
Yokohama Yokohama municipal citizen's hospital
Department of infectious diseases
Nagoya Higashi municipal hospital of Nagoya
Department of infectious diseases
Kyoto Kyoto city hospital
Department of infectious diseases
Osaka Osaka city general hospital
Department of infectious diseases
Kobe Kobe city general hospital
Department of infectious diseases
Hiroshima Hiroshima city Funairi hospital
Department of internal medicine
Kitakyushu Kitakyushu municipal medical center
Department of medicine
Fukuoka Fukuoka children's hospital and medical center for infectious diseases
Department of infectious diseases
他書
1)〜6)に 2 回にわたり発表した.今回は 1996 年 から 2000 年までの 5 年間の調査成績を集計して 報告することにより,これ以前の成績とも比較し ながら,我が国の感染性腸炎の最近の動向につい て述べてみたい.なお,衆知のとおり 1999 年 4 月 以降は「伝染病予防法」に代わって「感染症の予 防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」
いわゆる感染症法が施行され,これに伴い細菌性 赤痢やコレラなどの患者・保菌者に対する対応が 大幅に変更された.
対象と方法
対象は 1996 年 1 月から 2000 年 12 月までの間 に本研究会に参加している全国の都市立感染症指 定医療機関に入院した各種感染性腸炎患者および 保菌者である.ただし,感染症法施行後には保菌 者は原則として含まれていない.参加機関は Ta- ble 1 に示したとおりである.入院例について,そ の起因菌,臨床症状・経過,年齢分布,推定感染 地,月別発生状況,分離菌の抗菌薬感受性などを マークシート方式の調査票に記入し,郵送にて回 収した.調査票は国立感染症研究所感染症情報セ ンターにおいて解析した.複数の病原体が検出さ れた場合には,同一菌属であれば 1 例として,異 なる菌属であればそれぞれ 1 例として算定した.
また,赤痢アメーバ症の場合,原虫が検出された 例のみを算定しており,血清診断のみで原虫が検
出されなかった症例は病原体陰性例に含めた.抗 菌薬感受性測定は大部分が 1 濃度ディスク法によ り行なわれた.
感染性腸炎の臨床症状と経過においては,各疾 患ごとの比較を容易にするために各項目を数値化 して平均値を算出した.その算出法の詳細は紙面 の都合で他書
5)をみて頂きたいが, 例えば最高便回 数で 3〜5 回はその中間値を,20 回以上は 20 とみ なして計算している.この平均値は必ずしも正確 ではないが,一見しただけで各疾患の症状を比較 し得るという利点がある.
成 績
1.感染性腸炎入院患者数と各病原体別検出頻 度および分離株数(Table 2, 3)
1996 年 1 月 か ら 2000 年 12 月 ま で の 5 年 間 に 上記病院に入院した感染性腸炎患者・保菌者数を 年度別に Table 2 に示した.腸チフス,パラチフス は全身性感染症であって感染性腸炎ではないの で,Table 2 では除外して入院総数に対する各病 原体の検出頻度を示した. 入院総数は 1998 年まで は毎年 970〜1,100 名であったが,1999 年からは約 2 ! 3 に減少している.また,病原体陽性率も 1998 年までは約 85% 以上であったが,1999 年以後は 大幅に減少した.
赤痢菌属検出例は 1998 年までは年間 400〜500
例であったが,1999 年は 141 例,2000 年は 73 例
Table 2 Number of cases admitted and organisms detected in the hospitals for infectious diseases(1996―2000)
Total 2000
1999 1998
1997 1996
year
4,273 573
637 981
1,113 969
total No. of cases *
82.6%
3,529 67.4%
386 78.3%
499 88.2%
865 84.9%
945 86.1%
834 No. of pathogen positive * *
35.4%
1,514 12.7%
73 22.1%
141 50.6%
496 38.3%
426 39.0%
Shigella spp. 378
13.2%
562 12.6%
72 20.7%
132 10.1%
99 13.5%
150 11.2%
Salmonella spp. 109
1.4%
61 1.2%
7 1.1%
7 1.4%
14 1.8%
20 1.3%
Vibrio cholerae O1 13
3.3%
143 3.3%
19 3.9%
25 2.2%
22 3.7%
41 3.7%
Vibrio parahaemolyticus 36
8.3%
353 9.2%
53 8.8%
56 7.6%
75 7.5%
84 8.8%
85 ETEC/EIEC/EHEC/EPEC
6.1%
259 8.7%
50 5.8%
37 4.4%
43 6.2%
69 6.2%
Campylobacter jejuni/coli 60
5.3%
225 0.9%
5 2.7%
17 7.8%
77 6.2%
69 5.9%
Entamoeba histolytica 57
1.4%
58 1.6%
9 1.3%
8 0.8%
8 1.9%
21 1.2%
Klebsiella oxytoca 12
8.0%
343 12.2%
70 11.8%
75 4.5%
44 6.5%
72 8.5%
82 Rotavirus
7.1%
303 8.7%
50 5.8%
37 7.4%
73 6.2%
69 7.6%
74 others
17.4%
744 32.6%
187 21.7%
138 11.8%
116 15.1%
168 13.9%
135 pathogen negative
11 0
2 2
4
(Entamoeba histolytica) * * * 5
* No. of cases excluding enteric fever (Hospitals for infectious diseases)
* * A case with isolates of more than 2 species in the same genus of organisms was considered as a single case
* * * Serodiagnosed & pathogen-negative amoebiasis included in the pathogen-negative
ETEC ; enterotoxigenic E. coli, EIEC ; enteroinvasive E. coli, EHEC ; enterohemorrhagic E. coli, EPEC ; enteropathogenic E. coli
と著明に減少しており,5 年間の合計では 1,514 例であった.本菌属内においては複数菌感染が あったため,菌株数としては Table 3 に示したよ うに 1,527 株であり, うち海外由来株は 1,078 株,
70.6% であった.非チフス性サルモネラ属 (以下,
単にサルモネラ属と記す)は年間 70〜150 例で,
5 年間の合計では 562 例であった.本菌属内では 複数菌感染はなかったため,菌株数も 562 株であ り,うち海外由来株は 76 株,13.5% であった.O 1 コレラ菌は年間 7〜20 例で,全てエルトール型 コレラ菌であり,61 株中 44 株,72.1% が海外由来 であった.腸炎ビブリオは年間 20〜40 例で,143 株中 21 株,14.7% が海外由来であった.広義の腸 管病原性大腸菌(以下,単に大腸菌と記す)は年 間 50〜80 例であり,菌株数では 41.2% が海外由 来であった.カンピロバクター属は年間 30〜70 例で,259 株中 71 株,27.4% が海外由来であった.
赤痢アメーバ症は感染症法施行後には入院が不要 となって大幅な減少をみており,5 年間の合計で は赤痢アメーバ 225 株中 39 株,17.3% が海外由来 であった.ランブル鞭毛虫は 46 株中 39 株,84.8
%が海外由来であった.クリプトスポリジウムと
イソスポーラは各々 3 株分離され,それぞれ 2 株 が海外由来であった.他方,ロタウイルスは合計 343 株であったが,海外由来は 2 株,0.6% であっ た.今回の集計では血清診断のみで原虫が検出さ れなかった赤痢アメーバ症例は 11 例で,O139 コ レラ菌は 1 例も分離されていなかった.なお,Ta- ble 3 におけるブドウ球菌,ウェルシュ菌,Kleb-
siella oxytoca については調査票をそのまま集計し
たものであり病原菌とは意義付けていない.Ta- ble には示していないが,複数病原体検出例は 5 年間の合計で 278 例で, うち海外由来例は 213 例,
76.6% であった.
2.感染性腸炎の月別発生状況(Table 4)
年度毎に月別の主要病原体の分離状況を Table 4 に示した.5 年間の合計でみると赤痢菌属では 3 月と 9 月にピークがみられており,サルモネラ属 は 8〜9 月がピークであった.また,腸炎ビブリオ では 8 月に,大腸菌では 7 月にピークがみられた.
他方,カンピロバクター属はほぼ通年性に発生し ていたが, 10 月から 2 月にかけては少なかった.
3.感染性腸炎患者の年齢と性別(Table 5)
5 年間の合計で主要病原体別にその年齢をみる
Table 3 Number of isolates from all the admitted cases including enteric fever(1996―2000)
No. of total isolates(No. of overseas travelers cases)
organism
total 2000
1999 1998
1997 1996
4,062(1,816)
436(147)
591(205)
994(409)
1,080(557)
961(498)
total
1,527(1,078)
74( 61)
141( 83)
498(248)
430(361)
384(325)
Shigella spp.
38( 31)
1
( 0)
5
( 4)
9
( 8)
15( 11)
8 S. dysenteriae ( 8)
400( 171)
16( 12)
50( 11)
191( 41)
80( 60)
63( 47)
S. flexneri
32( 25)
1
( 0)
9
( 7)
12( 11)
10( 7)
S. boydii
998( 803)
51( 46)
80( 63)
276(181)
305(262)
286(251)
S. sonnei
59( 48)
5
( 3)
6
( 5)
13( 11)
18( 17)
17(12)
UK* Salmonella spp.
122( 106)
17( 16)
38( 36)
17( 13)
26( 22)
24( 19)
S. Typhi
70( 52)
6
( 6)
12( 10)
14( 9)
20( 13)
18( 14)
S. Paratyphi A
562( 76)
72( 4)
132( 13)
99( 14)
150( 23)
109( 22)
other Salmonella total
83( 18)
14( 1)
16( 0)
5
( 2)
27( 8)
21( 7)
O4
52( 7)
6
( 0)
20( 0)
4
( 1)
12( 5)
10( 1)
O7
23( 15)
3
( 2)
8
( 6)
6
( 4)
2
( 1)
4
( 2)
O8
376( 23)
44( 0)
86( 6)
78( 6)
102( 5)
66( 6)
O9
5
( 3)
2
( 1)
2
( 1)
1
( 1)
O9,46
14( 9)
3
( 1)
1
( 1)
3
( 0)
3
( 3)
4
( 4)
O3,10
2
( 1)
1
( 0)
1
( 1)
Others
7
( 0)
1
( 0)
1
( 0)
1
( 0)
2
( 0)
2
( 0)
UK
61( 44)
7
( 5)
7
( 7)
14( 12)
20( 10)
13( 10)
V. cholerae O1 CT +
60( 43)
7
( 5)
7
( 7)
14( 12)
19( 9)
13( 10)
El Tor OGAWA
1
( 1)
1
( 1)
El Tor INABA
2
( 2)
1
( 1)
1 V. cholerae O1 NT ( 1)
10( 5)
1
( 1)
3
( 2)
4
( 2)
2 V. cholerae non O1 ( 0)
143( 21)
19( 4)
25( 3)
22( 4)
41( 8)
36( 2)
V. parahaemolyticus
5
( 0)
4
( 0)
1
( 0)
V. fluvialis
398( 164)
66( 24)
58( 19)
86( 42)
92( 43)
96( 36)
E. coli
85( 63)
9
( 4)
10( 7)
14( 13)
27( 20)
25( 19)
ETEC
14( 11)
3
( 2)
3
( 2)
2
( 2)
3
( 2)
3
( 3)
EIEC
111( 56)
17( 8)
22( 7)
24( 16)
27( 14)
21( 11)
EPEC, serotype
153( 10)
27( 2)
23( 3)
37( 3)
27( 1)
39( 1)
EHEC
35( 24)
10( 8)
9
( 8)
8
( 6)
8
( 2)
UK
243( 64)
49( 9)
35( 10)
41( 15)
61( 17)
57( 13)
C. jejuni
15( 6)
1
( 1)
2
( 1)
2
( 1)
7
( 1)
3 C. coli ( 2)
1
( 1)
1 C. jejuni/coli UK ( 1)
1
( 0)
1 Y. enterocolitica ( 0)
29( 14)
2
( 1)
3
( 0)
13( 7)
5
( 3)
6 A. hydrophilla ( 3)
20( 13)
1
( 1)
2
( 2)
7
( 4)
2
( 1)
8 A. sobria ( 5)
1
( 1)
1 A. hydrophilla/sobria UK ( 1)
61( 55)
3
( 3)
12( 11)
17( 15)
17( 15)
12( 11)
P. shigelloides
7
( 1)
1
( 0)
2
( 0)
4 S. aureus ( 1)
8
( 4)
2
( 2)
3
( 0)
3 C. perflingens ( 2)
58( 2)
9
( 0)
8
( 0)
8
( 1)
21( 0)
12( 1)
K. oxytoca
225( 39)
5
( 1)
17( 0)
77( 8)
69( 14)
57( 16)
E. histolytica
46( 39)
7
( 7)
5
( 4)
8
( 7)
16( 11)
10( 10)
G. lamblia
3
( 2)
2
( 2)
1 C. parvum ( 0)
3
( 2)
1
( 0)
2 Isospora belli ( 2)
343( 2)
70( 0)
75( 0)
44( 0)
72( 1)
82( 1)
Rotavirus
98( 23)
27( 4)
12( 2)
19( 6)
17( 6)
23( 5)
Others
* Unknown (Hospitals for infectious diseases)
Table 4 Monthly incidence of the admitted cases with infectious enteritis due to indicated organisms(1996―2000)
total Dec.
Nov.
Oct.
Sep.
Aug.
Jul.
Jun.
May Apr.
Mar.
Feb.
Jan.
Shigella spp.
378 23 12 35 48 53 37 24 28 27 46 14 31 1996
426 14 12 34 69 44 34 55 35 42 52 22 13 1997
496 28 65 42 81 49 35 56 38 32 36 14 20 1998
141 3 2 9 6 4 8 4 4 14 41 31 15 1999
73 1 4 6 8 9 3 3 7 16 9 4 3 2000
1,514 69 95 126 212 159 117 142 112 131 184 85 82 total Salmonella spp.
109 5 12 11 17 19 15 12 7 4 5 0 2 1996
150 3 3 11 27 34 20 17 13 5 7 4 6 1997
99 0 6 11 16 18 9 10 11 8 3 4 3 1998
132 7 13 10 22 18 15 14 9 8 10 6 0 1999
72 3 6 10 11 12 6 7 5 2 4 1 5 2000
562 18 40 53 93 101 65 60 45 27 29 15 16 total V. parahaemolyticus
36 0 0 0 7 21 6 0 1 0 1 0 0 1996
41 0 0 0 10 13 9 8 1 0 0 0 0 1997
22 0 0 3 3 11 3 0 2 0 0 0 0 1998
25 0 0 1 6 11 5 0 0 0 0 0 2 1999
19 0 1 2 2 5 7 1 0 0 1 0 0 2000
143 0 1 6 28 61 30 9 4 0 2 0 2 total
ETEC/EIEC/EHEC/EPEC
85 3 3 5 8 10 30 8 1 2 8 2 5 1996
84 2 3 4 12 9 15 10 6 5 12 3 3 1997
75 1 6 5 3 11 23 8 4 2 3 1 8 1998
56 3 4 7 7 6 5 10 3 1 4 1 5 1999
53 1 3 5 4 6 7 7 6 7 3 1 3 2000
353 10 19 26 34 42 80 43 20 17 30 8 24 total C. jejuni/coli
60 3 1 2 6 5 10 9 3 5 8 2 6 1996
69 2 5 5 8 8 5 10 5 8 7 0 6 1997
43 3 2 4 7 2 1 6 8 2 5 0 3 1998
37 3 0 1 4 1 5 4 3 8 6 1 1 1999
50 2 5 4 1 7 8 4 5 6 5 1 2 2000
259 13 13 16 26 23 29 33 24 29 31 4 18 total
(Hospitals for infectious diseases)
と,Table 5 の よ う に 赤 痢 菌 属 で は 20 代 が 45.7
%,30 代が 16.1% であわせて 61.8% を占めてい た.サルモネラ属では 0〜4 歳が 23.3% と最も多 く,10 歳未満で 40.4% を占めていた.O1 コレラ菌 は 20 代 27.0%,30 代 17.5% , 40 代 11.1% , 50 代と 60 代,70 代以上がいずれも 14.3% であった.
大腸菌の中で毒素原性大腸菌(ETEC)では 20
代が 55.4% を占めていた.カンピロバクター属は 10 歳未満が 32.4%,20 代が 34.0% を占めていた.
ロタウイルスは 0〜4 歳が 90.7% と圧倒的最多で あった.なお,全体における男女比は 1.29:1 と,
やや男性優位であった.
4.赤痢菌属の流行菌種(亜群)と血清型
この 5 年間に分離された赤痢菌属全 1,527 株の
Table 5 Age and sex distribution of cases with infectious enteritis due to indicated organisms (total cases in 1996 ― 2000)
female male total 70 〜 60 〜 69 50 〜 59 40 〜 49 30 〜 39 20 〜 29 15 〜 19 10 〜 14 5 〜 9
(years)
0 〜 4
725 789 1,514 47 131 146 92 244 692 45 43 44 Shigella spp. 30
47.9%
52.1%
100.0%
3.1%
8.7%
9.6%
6.1%
16.1%
45.7%
3.0%
2.8%
2.9%
2.0%
249 313 562 18 33 40 29 42 81 28 64 96 Salmonella spp. 131
44.3%
55.7%
100.0%
3.2%
5.9%
7.1%
5.2%
7.5%
14.4%
5.0%
11.4%
17.1%
23.3%
23 40 63 9 9 9 7 11 17 0 0 0 V. cholerae O1 1
36.5%
63.5%
100.0%
14.3%
14.3%
14.3%
11.1%
17.5%
27.0%
0.0%
0.0%
0.0%
1.6%
61 82 143 12 22 28 21 12 33 8 7 0 V. parahaemolyticus 0
42.7%
57.3%
100.0%
8.4%
15.4%
19.6%
14.7%
8.4%
23.1%
5.6%
4.9%
0.0%
0.0%
48 35 83 2 5 3 5 14 46 3 1 1 3 ETEC
57.8%
42.2%
100.0%
2.4%
6.0%
3.6%
6.0%
16.9%
55.4%
3.6%
1.2%
1.2%
3.6%
136 138 274 12 8 15 15 25 70 15 20 34 60 EIEC/EHEC/EPEC
49.6%
50.4%
100.0%
4.4%
2.9%
5.5%
5.5%
9.1%
25.5%
5.5%
7.3%
12.4%
21.9%
114 145 259 3 7 6 8 17 88 18 27 43 C. jejuni/coli 41
44.0%
56.0%
100.0%
1.2%
2.7%
2.3%
3.1%
6.6%
34.0%
6.9%
10.4%
16.6%
15.8%
161 182 343 0 0 2 0 2 2 1 1 24 311 Rotavirus
46.9%
53.1%
100.0%
0.0%
0.0%
0.6%
0.0%
0.6%
0.6%
0.3%
0.3%
7.0%
90.7%
(Hospitals for infectious diseases)
Table 6 Number of Shigella isolates from domestic & overseas travelers cases by serovar(1996―2000)
No. of isolates from overseas travelers cases/Total cases(%)
species
(subgroup) 1996 1997 1998 1999 2000 total
31/38(81.6)
0/1( 0.0)
4/5(80.0)
8/9(88.9)
11/15(73.3)
8/8(100.0)
S. dysenteriae(A)
171/400(42.8)
12/16(75.0)
11/50(22.0)
41/191(21.5)
60/80(75.0)
47/63( 74.6)
S. flexneri(B)
25/32(78.1)
0/1( 0.0)
7/9(77.8)
11/12(91.7)
7/10( 70.0)
S. boydii(C)
803/998(80.5)
46/51(90.2)
63/80(78.8)
181/276(65.6)
262/305(85.9)
251/286( 87.8)
S. sonnei(D)
48/59(81.4)
3/5(60.0)
5/6(83.3)
11/13(84.6)
17/18(94.4)
12/17( 70.6)
Shigella UK *
1,078/1527(70.6)
61/74(82.4)
83/141(58.9)
248/498(49.8)
361/430(84.0)
325/384( 84.6)
total
* Species unknown (Hospitals for infectious diseases)
うち,海外由来株は 1,078 株,70.6% であったこと は前述したが,年度毎に菌種(亜群)別の菌株数 とそのうちの海外由来株 を Table 6 に 示 し た.
Shigella flexneri における海外由来株の比率をみる
と,1998 年と 1999 年に 20% 台と極端に低下して いる.これは,両年にまたがって大阪地区での大 規模な国内集団事例があったためである.S. son- nei は 1998 年のみ 65.6% であったが,それ以外の 年ではほぼ 80% 以上であった.
次に,赤痢菌属の中で各菌種(亜群)毎の分離
頻度の年次推移は Table 7 のようであり,S. son- nei が継続して最優位菌種の地位を占めていた. S.
flexneri と S. sonnei の 2 者合計ではいずれの年も 90% 以 上 を 占 め て お り,2000 年 に は S. flexneri が 21.6%,S. sonnei が 68.9% であった.また,S.
sonnei を除く各亜群においてその血清型は多岐に
わたっていたが,S. dysenteriae では 2 型が最も多
く, S. flexneri では 2a 型が圧倒的に多かった.これ
は前述の国内集団事例が本血清型によるもので
あったためもあるが, これを除外しても 2a 型が最
Table 7 Annual incidence of Shigella isolates by serovar(1996―2000)
No. of isolates species & serovar
(subgroup) 1996 1997 1998 1999 2000 total
S. dysenteriae(A)
3 2
1 1
16 1
2 3
4 6
2
4 3
1 3
4 1
2 1
4
3 3
6
1 1
9
1 1
11
6 1
5 UK *
38(2.5)
1(1.4)
5( 3.5)
9( 1.8)
15(3.5)
8( 2.1)
subtotal(%)
S. flexneri(B)
6 3
1 2
1a
21 2
1 6
6 6
1b
252 6
41 154
27 24
2a
13 1
5 6
1 2b
33 3
1 9
14 6
3a
1 1
3b
5 1
1 1
1 1
4a
3 1
1 1
4
2 1
1 5a
20 1
3 4
7 5
6
1 1
X
6 5
1 Y
35 1
1 7
13 13
UK
2 2
ND * *
400(26.2)
16(21.6)
50(35.5)
191(38.4)
80(18.6)
63(16.4)
subtotal(%)
S. boydii(C)
3 2
1 1
5 2
1 2
2
3 1
1 1
4
1 1
7
2 2
8
2 2
10
1 1
12
1 1
13
2 1
1 14
3 1
2 18
5 2
1 2
UK
4 1
3 ND
32( 2.1)
1( 1.4)
0( 0.0)
9( 1.8)
12( 2.8)
10( 2.6)
subtotal(%)
998(65.4)
51(68.9)
80(56.7)
276(55.4)
305(70.9)
286(74.5)
S. sonnei(D)(%)
59( 3.9)
5( 6.8)
6( 4.3)
13( 2.6)
18( 4.2)
17( 4.4)
Shigella unknown(%)
1,527 74
141 498
430 384
total
* : unknown, * * : not determined (Hospitals for infectious diseases)
多であった.S. boydii ではさまざまな血清型が少 数ずつ分離されていた.
5.サルモネラ属の血清型(Table 8)
サルモネラ属は 5 年間で 562 株が分離されてい
Table 8 Annual incidence of Salmonella isolates by serogroup, excluding S. Typhi and S. Paratyphi A (1996―2000)
No. of isolates(%)
serogroup
total 2000
1999 1998
1997 1996
Salmonella
83(14.8)
14(19.4)
16(12.1)
5( 5.1)
27(18.0)
21(19.3)
O4
52( 9.3)
6( 8.3)
20(15.2)
4( 4.0)
12( 8.0)
10( 9.2)
O7
23( 4.1)
3( 4.2)
8( 6.1)
6( 6.1)
2( 1.3)
4( 3.7)
O8
376(66.9)
44(61.1)
86(65.2)
78(78.8)
102(68.0)
66(60.6)
O9
5( 0.9)
2( 2.0)
2( 1.3)
1( 0.9)
O9, 46
14( 2.5)
3( 4.2)
1( 0.8)
3( 3.0)
3( 2.0)
4( 3.7)
O3, 10
2( 0.4)
1( 1.4)
1( 0.9)
others
7( 1.2)
1( 1.4)
1( 0.8)
1( 1.0)
2( 1.3)
2( 1.8)
UK *
562 72
132 99
150 109
total
* : unknown (Hospitals for infectious diseases)
Table 9 Comparison of clinical symptoms and course between domestic and overseas travelers cases with infectious enteritis due to indicated organisms(total cases in 1996―2000)
Days of illness elapsed to Bloody
stool
(%)
Frequency of bowel movements
(/day)
Highest body temperature
(℃)
Vom- iting
(%)
Nau- sea
(%)
Abdo- minal pain
(%)
No. of patients
organism Disappeared
bloody stool Improved
stool character Improved
bowel movements Deferve-
scence Total cases
5.1 5.3
4.8 2.4 24.1 9.9 37.5
15.9 28.1 62.9 1,301 Shigella spp.
4.4 6.3
6.1 4.2 26.2 12.8 38.7
52.2 61.5 87.7 521 Salmonella spp.
8.0 6.0
5.3 0.8 3.4 9.7 36.4
27.6 29.3 35.1 Vibrio cholerae O1 58
2.7 3.3
3.0 2.0 15.7 9.6 37.3
73.6 80.2 92.6 121 Vibrio parahaemolyticus
4.7 5.3
4.7 2.7 55.3 10.3 37.2
34.7 43.2 83.5 245 ETEC/EIEC/EHEC/EPEC
3.6 5.1
4.6 3.0 40.5 10.2 38.2
33.3 50.5 86.9 206 Campylobacter jejuni/coli Domestic cases
6.0 5.5
5.3 3.4 44.9 12.1 37.9
17.5 28.5 71.2 418 Shigella spp.
4.4 6.4
6.1 4.2 27.3 13.0 38.7
54.4 62.9 89.1 475 Salmonella spp.
8.0 5.8
5.8 0.5 5.9 9.0 36.1
35.3 29.4 17.6 Vibrio cholerae O1 17
2.7 3.3
3.0 1.9 17.4 9.8 37.2
73.4 79.8 92.7 109 Vibrio parahaemolyticus
4.7 5.4
4.9 2.6 67.6 10.3 37.1
34.3 40.6 87.4 183 ETEC/EIEC/EHEC/EPEC
3.6 5.0
4.5 3.0 44.3 10.2 38.3
35.3 50.9 87.4 175 Campylobacter jejuni/coli Overseas travelers' cases
4.0 5.2
4.6 2.0 14.4 8.9 37.3
15.1 27.9 59.0 883 Shigella spp.
3.9 6.0
5.8 3.8 15.2 11.4 38.2
30.4 47.8 73.9 Salmonella spp. 46
8.0 6.1
5.1 1.0 2.4 10.0 36.5
24.4 29.3 42.5 Vibrio cholerae O1 41
0.0 2.9
2.9 2.3 0.0 7.8 37.4
75.0 83.3 91.7 Vibrio parahaemolyticus 12
4.0 4.8
4.1 2.9 19.4 10.2 37.5
36.1 50.8 72.6 62 ETEC/EIEC/EHEC/EPEC
4.1 5.7
5.0 3.1 19.4 10.1 37.8
22.6 48.4 83.9 Campylobacter jejuni/coli 31
(Hospitals for infectious diseases)
たが, Salmonella Enteritidis が属する O9 群が終始 60% 以上と首位を占めていた.S. Typhimurium が属する O4 群がほぼこれに次いでいたが,1999
年は O7 群が多くみられたため,3 位であった.
6.感染性腸炎の臨床症状と経過(Table 9, Fig.
1)
5 年間の合計症例における主要病原菌別の症状 と経過を Table 9 上段および Fig. 1 に示した.Fig.
1 では各項目毎の対象例数を( )内に示してい る.腹痛,嘔気,嘔吐の頻度は腸炎ビブリオで三 症状とも最も高値であった. O1 コレラ菌での腹痛 の頻度は 35.1% と最下位であった.経過中の最高 体温はサルモネラ属が最も高く,平均 38.7℃ であ り,カンピロバクター属がこれに次いでいた.赤 痢菌属では平均 37.5℃ にとどまっていた.O1 コ レラ菌は 36.4℃ と平熱であった.経過中の 1 日最 高便回数はサルモネラ属が最も多く,平均 12.8 回であり,他方,赤痢菌属は 9.9 回と大腸菌,カン ピロバクター属よりも少なかった. O1 コレラ菌で は平均 9.7 回であった.経過中にみられた血便の 頻度は大腸菌が 55.3% と最も高く,カンピロバク ター属が 40.5% とこれに次いでいた.サルモネラ 属と赤痢菌属での血便はそれぞれ 26.2%,24.1%
であり,O1 コレラ菌では 58 例中 2 例,3.4% に血 便がみられた.発病後の経過においては解熱に要 した日数はおおむね 3 日以内であったが,サルモ ネラ属は最も長く,平均 4.2 日であった.1 日 2 回 以下となる便回数減少病日よりも,有形軟便とな る便性回復病日の方が遅く,赤痢菌属では平均し てそれぞれ 4.8,5.3 病日であった.サルモネラ属は 最も回復が遅く,それぞれ平均 6.1,6.3 病日であっ た.一方,腸炎ビブリオは最も回復が早かった.
血 便 の 消 失 は O1 コ レ ラ 菌 が 8.0 病 日 と 最 も 遅 かったが,これは血便の合併をみた 2 例がいずれ も血便消失までに 8 日以上を要していたためであ る.これを除くと,赤痢菌属が 5.1 病日と遅く,次 いで大腸菌,サルモネラ属の順であった.
国内例と海外由来例に分けて同じく分離菌別の 症状と経過をみると,Table 9 中段および下段に 示したように,赤痢菌属ではいずれの症状も国内
Fig. 1 Clinical characteristics of cases with infectious enteritis due to indicated or-ganisms(total cases in 1996―2000).