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感 染 性 腸 炎 に 対 す るLomenoxacin(LFLX,NY-198)とPipemidic
acid(PPA)の
二 重 盲 検 法 に よ る治 療 効 果 の比 較 検 討
LomeHoxacin感 染 性 腸 炎 研 究 班 (世 話 人:青 木 隆 一) 青 木 隆 一* 大阪市立桃山病院感染症 センター 清 水 長 世*,1) 東京都立荏原病院感染症科 冨 沢 功 滝 沢 慶 彦 市立札幌病院南 ケ丘 分院伝染病科 松 原 義 雄*,2)新田 義 朗 相 楽 裕 子 瀬 尾 威 久 金 久 直 子 東京都立豊島病院感染症科 村 田三 紗 子3)増 田 剛 太* 根 岸 昌 功 楊 振 典4) 東京都立駒込病院感染症科 今 川 八 束*,5)大西 健 児 東京都立墨東病院感染症科 山 口 剛6)辻 正 周7)細 谷 純 一郎 東京都立荏原病院感染症科 星 野 重 二 横浜市万治病院伝染科 天 野 冨 貴 子 中 村 千 衣 村 元 章 名古屋市立東市民病院伝染科 小 林 祥 男 今 井 千 尋 金 龍 起 京都市立病 院伝染病科 *)判定委員会 メンバー 1)現所属,東 京都台東区下谷保健所 2)現所属,東 京都小平保健所 3)現所属,東 京都立墨東病院感染症科 4)現所属,台 湾国立成功大学内科部感染症科 赤 尾 満* 大阪市立桃 山病院感染症セ ソター 藤 堂 彰 男 伊 吹 康 良 小 森 英 司 冨 田 周 介 樫 田 博 史 神戸市立中央市民病院消化器内科 相 坂 忠 一 新 美 正 信 中 村 正義 広島市立舟入病院内科 松 尾 利 子 北九州市立朝 日ケ丘病院内科 斎 藤 誠* 昭和大学医学部 中 谷 林 太 郎*堀 内 三 吉 稲 垣 好 雄 高 野 秀 子 後 藤 延 一8) 東京医科歯科大学医学部微生物学教室 小 林 芳 夫* 慶応義塾大学病院中央臨床検査部 佐 久 一・枝 東京都立墨東病院検査科細菌検査室 コソ トロ一ラー:竹 田 美 文* 東京大学医科学研究所細菌感染研究部 5)現所属,東 京都立荏原病院感染症科 6)現所属,東 京都立駒込病院感染症科 7)現所属,エ ビハラ病院内科 8)現所属,昭 和大学歯学部口腔細菌学教室 (63年12月1日 受 付) (63年12月21日 受 理)Key words : Lomefloxacin (LFLX, NY-198), Infectious enteritis, Double blind method
別 刷 請 求先:(〒543)大 阪 市天 王 寺 区筆 ケ崎 町2-25 大 阪 市立 桃 山 病 院感 染 症 セ ンタ ー
青 木 隆 一
感染 性 腸 炎 に対 す るLFLXとPPAの 二 重 盲検 試 験 607 要 旨 ニ ュ ー キ ノ ロ ン系 抗 菌 剤Lomefloxacin(LFLX , NY-198)の 感 染 性 腸 炎(細 菌 性 赤 痢,病 原 大 腸 菌 腸 炎,カ ン ピ ロバ ク タ ー腸 炎 な ど)に 対 す る 有 効 性,安 全 性 お よ び 有 用 性 を 客 観 的 に 評 価 す る 目 的 で , Pipemidicacid(PPA)を 対 照 薬 とす る二 重 盲 検 法 に よ り比 較 検 討 した . 治 験 薬 の1日 投 与 量 はLFLX:600mg,PPA:2,000mgで,1日4回 毎 食 後 お よ び就 寝 前 に経 口投 与 と し,投 与 期 間 は5日 間 と し た. 総 投 与 症 例 数 は290例 で,除 外,脱 落 例 を 除 き有 効 性 お よ び 有 用 性 の 評 価 対 象 例 は169例(LFLX群: 83例,PPA群:86例)で あ り,い ず れ の 背 景 因 子 に お い て も,両 群 間 に 有 意 な偏 りは 認 め ら れ な か っ た . ま た 安 全 性 の 評 価 対 象 例 は284例(LFLX群:141例,PPA群:143例)で あ っ た . 薬 剤 投 与 開 始 日 に症 状 の あ っ た73例 の 臨 床 効 果(有 効 率)は,LFLX群32/35例(91 .4%),PPA群32/ 38例(84.2%)で あ り,そ の うち 細 菌 性 赤 痢57例 に お い て も,LFLX群27/30例(90 .0%),PPA群22/ 27例(81.5%)と 前 者 が 優 れ た 傾 向 を 示 した が,両 群 間 に有 意 差 は 認 め られ な か っ た . 延 菌 株 数184株 に 対 す る 細 菌 学 的 効 果(有 効 率)は,LFLX群84/90株(93.3%),PPA群76/94株 (80.9%)と 前 者 が 有 意 に 優 れ(p=0.0153),そ の う ち 赤 痢 菌148株 に お い て も,LFLX群71/73株 (97.3%),PPA群59/75株(78.7%)と 前 者 が 有 意 に 優 れ て い た(p=0.0007) . 以 上 を 勘 案 し て 評 価 した169例 の 総 合 効 果(有 効 率)は,LFLX群77/83例(92 .8%),PPA群68/86例 (79.1%)と 前 者 が 有 意 に優 れ(p=0.0144),そ の うち 細 菌 性 赤 痢134例 に お い て も,LFLX群65/67例 (97.0%),PPA群52/67例(77.6%)と 前 者 が 有 意 に 優 れ て い た(p=0.0012) . 副 作 用 はLFLX群1/141例(0.7%),PPA群 は0/143例 で あ り,臨 床 検 査 値 異 常 はLFLX群10/132例 (7.6%),PPA群7/136例(5.1%)に 認 め られ た が,す べ て 軽 微 な も の で あ り,ま た 発 現 率 で は 両 群 間 に 有 意 差 は な か った. 以 上,有 効 性 と安 全 性 を勘 案 して 評 価 した169例 の 有 用 性(満 足 率)は ,LFLX群76/83例(91.6%), PPA群66/86例(76.7%)と 前 者 が 有 意 に 優 れ(p=0 .0111),そ の うち 細 菌 性 赤 痢134例 に お い て も,LFLX 群64/67例(95.5%),PPA群50/67例(74.6%)と 前 者 が 有 意 に 優 れ て い た(p=0 .0011). 以 上 の 成 績 か ら,LFLXは 細 菌 性 赤 痢 を 始 め とす る感 染 性 腸 炎 に対 し,臨 床 上 有 用 な 薬 剤 と考 え られ た. は じめ に Lomenoxacin(LFLX,NY-198)は 北 陸 製 薬 (株)中 央 研 究 所 で 合 成 さ れ,塩 野 義 製 薬(株)と 共 同 開 発 中 の ニ ュ ー キ ノ ロ ン 系 抗 菌 剤 で,化 学 構 造 式Fig.1に 示 し た 通 りで あ る.
Fig. 1 Chemical structure
Lomefloxacin(LFLX,NY-198) Pipemidic acid(PPA) LFLXは グ ラ ム 陽 性 菌 お よ び 陰 性 菌 に 対 し て 幅 広 い 抗 菌 ス ペ ク トル と抗 菌 力 を 示 す こ とが 確 認 さ れ て い る1)∼6). ま た,臨 床 的 に も,我 々 は 細 菌 性 赤 痢 を 始 め と す る各 種 感 染 性 腸 炎 に対 して,1日600mg分3投 与 に よ る治 験 を行 い,細 菌学 的 効 果(対 排 菌 効 果) の有 効 率 は赤 痢 菌,病 原 大 腸 菌,ビ ブ リオ に100%, カ ン ピ ロ バ ク タ ー に80%お よ び サ ル モ ネ ラ に 70.6%の 成 績 を得 た.こ れ に 臨 床 効 果(対 症 状 効 果)を 勘 案 し て評 価 した 総 合 効 果(有 効 性)は 全 体 で90.8%の 有 効 率 を 得 た7). 今 回我 々 は,細 菌 性 赤 痢,病 原 大 腸 菌 腸 炎,カ ン ピ ロバ ク タ ー腸 炎 な ど の感 染 性 腸 炎 に対 す る本 剤 の有 効 性,安 全 性 な らび に有 用 性 を客 観 的 に評 価 す る 目的 で,Pipemidicacid(PPA)を 対 照 薬 と して 二 重 盲 検 法 に よ り比 較 検 討 した.対 照 薬 と 平成 元 年6月20日
608 青 木 隆一 他 してPPAを 選 択 した 理 由 はPPAがLFLXの 化 学 構 造 と類 似 して い る こ と,細 菌 性 赤 痢 を 始 め と す る感 染 性 腸 炎 に対 して適 応 が認 め られ,広 く使 用 さ れ て お り,か つ安 全 性 の評 価 検 討 が 十 分 な さ れ て い る こ とか ら8)∼11),最も適 切 で あ る と判 断 し 選 択 した. 試 験 方 法 1.対 象 1987年3月 か ら1988年5、 月ま で に前 掲 の研 究 班 に参 加 の 都 ・市 立12病 院 に 入 院 した16歳 ∼75歳 の 細 菌 性 赤 痢,病 原 大 腸 菌 腸 炎,カ ソ ピ ロバ ク タ ー 腸 炎 な どの 感 染 性 腸 炎(腸 炎 ビ ブ リオ腸 炎,サ ル モ ネ ラ腸 炎 は除 く)の 患 者 お よび 保 菌 者 で,薬 剤 投 与 開 始 時 に一菌 が 陽 性 の症 例 を 対 象 と した. た だ し,こ れ ら の うち下 記 の いず れ か に 該 当す る も の は 除 外 した. (1)極 め て重 篤 な患 者. (2)重 篤 ま た は 進 行 性 の 基 礎 疾 患 ・合 併 症 を 有 し,投 与 薬 剤 の 有 効 性 ・安 全 性 の判 定 が 困 難 な患 者. (3)本 剤 投 与 前 に他 の抗 菌 剤 が 投 与 され,本 剤 に よ る治 療 経 過 に そ の 影 響 が 及 ぶ と判 断 さ れ た 患 者. (4)本 試 験 直 前 の 治 療 で,LFLXま た は そ の他 の キ ノ ロ ン系 抗 菌 剤(NA,PA,PPA,NALX, ENXな ど)が 投 与 され た 患 者. (5)キ ノ ロ ン系 抗 菌 剤 に 対 す る ア レル ギ ー 既 往 の あ る患 者. (6)て ん か ん 等 の 痙 李 性 疾 患 ま た は これ ら の 既 往 歴 の あ る患 者. (7)重 篤 な 腎 お よ び肝 障 害 の あ る患 者. (8)妊 婦,妊 娠 して い る 可 能 性 の あ る婦 人 また は 授 乳 中 の婦 人. (9)そ の他,主 治 医 が不 適 当 だ と認 め た 患 者. な お,本 試 験 の 開 始 に あ た って は,各 施設 の 実 情 に あ わ せ た 方 法 で 患 者 あ るい は 保 護 者 の 承 諾 を 得 る こ と と した. 2.治 験 薬 剤 1)内 容 ・被 験 薬:1カ プセ ル 中 にLFLX100mgを 含 有.
Fig. 2 Package of test drugs LFLX group PPA group LFLX inactive placebo ・対 照 薬:1錠 中 にPPA250mgを 含 有. これ ら両 薬 剤 は 相 互 に形 状 お よび1日 の投 与 回 数 が異 な るた め,そ れ ぞ れ の薬 剤 に 対 応 す る外 観 上 識 別 不 能 な プ ラセ ボを 用 い る ダ ブ ル ダ ミー法 を と り,二 重 盲 検 の 適 格 性 を期 した. 2)包 装(Fig.2) LFLX群,PPA群 と も2カ プ セ ル と2錠 を1 包 と した も の を1回 量 と し,4包 を1日 分 と し て 5日 分(各 シ ー トにNo.1∼No.20を 付 記)を1 箱 に 収 め 厳 封 し,1症 例 分 と した. 3.薬 剤 の割 り付 け 4症 例 分 を1組 と し,組 ご と にLFLXとPPA が 同 症 例 分 とな る よ う,コ ン ト ロー ラ ーが 確 率 化 操 作 を 経 て80組 割 り付 け を 行 い,日 標 症 例 は280例 と した.Keycodeは 治 験 終 了 ま で コ ン トロー ラ ー が 保 管 し,公 平 性 を保 持 した. な お,コ ン トロ ー ラ ー が無 作 為 に抽 出 した 両 薬 剤 に つ い て,崩 壊 試 験,含 量 試 験 な どの 製 剤 試 験 を 星 薬 科 大 学 薬 剤 学 教 室 ・永 井 恒 司 教 授 に 依 頼 し, い ず れ の 薬 剤 も 規 格 に適 合 す る こ とが 確 認 さ れ た. 4.投 与 方 法 お よ び投 与 期 間 1日 投 与 量 は,LFLX600mg,PPA2,000mg で,1日4回 毎 食 後 お よび 就 寝 前 に1包 ず つ 服 用 とし,投 与 期 間 は5日 間 とし た. な お,初 回 の服 用 は 時 刻 に 関係 な く,No.1の 薬 包 か ら と し,順 次No.20ま で 服 用 す る こ と と し た. 投 与 に 際 して,他 の 抗 菌 剤 お よび 非 ス テ ロ イ ド 感 染症 学 雑誌 第63巻 第6号
感 染 性腸 炎 に対 す るLFLXとPPAの 二重 盲 検 試験 609 性 消 炎 鎮 痛 剤 は併 用 しな い こ と と した.そ の他 の 薬 剤 も原 則 と し て併 用 しな い こ と と した が,併 用 した 場 合 は 調 査 表 に記 載 す る こ と と した . な お,副 作 用 お よ び 臨 床 検 査 値 異 常 の た め 投 与 を 継 続 で きな い場 合 な どを 含 め,主 治 医 が 中 止 の 必 要 を 認 め た 場 合 に は,投 与 中 止 の時 点 で 所 定 の 検 査 を 可 能 な 限 り実 施 し,そ の 結 果 を調 査 表 に記 載 し,中 止 理 由 を 明 らか に す る こ と と した. 5.観 察項 目 1)菌 検 索 原 則 と して,採 取 した 糞 便 はCary-Blair培 地 で 検 査 室 へ 送 付 す る こ と と した. (1)赤 痢 菌,病 原 大 腸 菌 な ど 使 用 培 地 はSS培 地 お よ びDHL培 地 を標 準 と し,下 記 の よ うに検 索 す る こ と と した . (1)薬 剤 投 与 開 始 日か ら投 与 終 了 後7日 間 以 上, 原 則 と して 連 日検 便 (2)可 能 な 限 り退 院 後 に1回(1週 間 前 後) (2)カ ン ピ ロノミク タ ー カ ン ピ ロバ ク タ ー はSkirrow培 地,Butzler培 地,Blaser培 地 の いず れ か を 使 用 し,下 記 の よ う に検 索 す る こ と と した. (1)薬 剤 投 与 開 始 日 (2)薬 剤 投 与 期 間 中 に1回 以 上 (3)投 与 終 了 後 は1週 間 に2回 以上,退 院 後1週 間前 後 にで きれ ば1回,あ る い は 少 な く と も1週 間 に1回 お よ び そ の 後 の1週 間 に1回. 観 察 期 間 中 初 回 分 離 株 お よ び 再 排 菌 株 に つ い て は,各 機 関 に お い てChloramphenico1(CP) , Tetracycline(TC), Kanamycin(KM), Ampici1-lin(ABPC)お よびNalidixic acid(NA)に 対 す
る感 受 性 検 査 を 行 い,さ ら に これ らの 菌 株 を東 京 医 科 歯 科 大 学 医 学 部 微 生 物 学 教 室 に 送 付 し, LFLXお よ びPPAの 最 小 発 育 阻 止 濃 度(MIC)測 定 を 日本 化 学 療 法 学 会 標 準 法12)に準 じ て行 う こ と と した. また,大 腸 菌 が 病 原 菌 と疑 わ れ る症 例 につ い て は,各 機 関 で 検 査 の都 度,DHL寒 天 培 地 か ら大 腸 菌 と思 わ れ る集 落 を,原 則 と して3個 ず つ 釣 菌 し, 組 織 侵 入 型(enteroinvasive Escherichia coli, EIEC),血 清 型(enteropathogenicEcoliser一 otype,EPEC)の 血 清 型 検 査 を 行 い,EPECま た はEIECの 血 清 型 に属 さ な い大 腸 一菌 は,東 京 都 立 墨 東 病 院 検 査 科 細 菌 検 査 室 へ 送 付 し,毒 素 型 検 査 を 行 うこ と と した. 2)臨 床 症 状 お よ び副 作 用 症 状 の確 認 発 熱,便 性,排 便 回 数 お よ び 嘔 吐,腹 痛 な どの 自他 覚 症 状 に つ い て 可 能 な限 り観 察 した.同 時 に, 副 作 用 と思 わ れ る随 伴 症 状 の す べ て に つ い て は 消 失 す る ま で追 跡 調 査 し,そ の種 類,程 度,発 現 日, 消 失 日,処 置,本 剤 との 因 果 関 係,転 帰 な どを記 録 す る と と もに 主 治 医 の コ メ ン トを記 載 す る こ と と した. 3)臨 床 検 査 可 能 な 限 りLFLX投 与 開 始 前 お よ び 投 与 終 了 後 に 下 記 の 検 査 を 実 施 す る こ と と し,本 剤 投 与 開 始 以 降 に 異 常 値 が 認 め られ た場 合 は,正 常値 また は投 与 前 値 に復 す る まで 追 跡 調 査 す る と と も に, 本 剤,併 用 薬 剤,基 礎 疾 患 な ど との 関 係 に つ い て コ メ ン トす る こ と と した . (1)血 液:赤 血 球 数 血 色 素 量,ヘ マ トク リ ッ ト 値,白 血 球 数,白 血 球 分 類,血 小板 数 な ど (2)肝 機 能:GOT, GPT, ALP,ビ リル ビン(直 接,総),LDHな ど (3)腎 機 能: BUN, 血 清 ク レ ア チ ニ ンな ど (4)尿 所 見:蛋 白,糖,ウ ロ ビ リノ ー ゲ ン,沈 渣 (赤 血 球,白 血 球,円 柱)な ど (5)そ の 他:血 清 電 解 質,赤 沈 値,CRPな ど 6.効 果 判 定 1)臨 床 効 果(対 症 状 効 果) 臨床 効 果 は主 治 医 の 判 定 に よ り,著 効,有 効, 無 効 の3段 階 に判 定 した. 2)細 菌 学 的 効 果(対 排 菌 効 果) 細 菌 学 的 効 果 はTable1に 示 し た 判 定 基 準 に 準 じて 判 定 した.な お,複 数 菌 検 出例 に お い て は, 個 々 の 菌 別 に判 定 した. 3)総 合 効 果 臨 床 効 果 お よ び細 菌 学 的 効 果 を勘 案 し,著 効, 有 効,無 効 の3段 階 に 判 定 した. な お,保 菌 者 に つ い て は 細 菌 学 的 効 果 を総 合 効 果 と した. た だ し,複 数 菌 検 出 例 に お い て は,1症 例 と し 平 成 元 年6月20日
610 青木 隆 一 他
Table 1 Criteria for evaluation of effectiveness in bacterial elimination
て判 定 した. 4)有 用 性 有 効 性 お よ び安 全 性 を 勘 案 して,本 剤 の有 用 性 を,(1)非 常 に満 足,(2)満 足,(3)ど ち ら と もい え な い,(4)不 満,(5)非 常 に不 満 の5段 階 に判 定 した. 7.除 外 お よ び脱 落 症 例 の決 定 治 験 薬 投 与 症 例 の調 査 表 は対 象疾 患 の如 何 を 問 わ ず す べ て コン トロ ー ラー に提 出 され,除 外 ・脱 落 お よ び 実 施 要 綱 の 規 定 に反 す る 症 例 の 取 扱 い は,開 票 前 に コ ン トロ ー ラ ー を含 む 小 委 員 会 で慎 重 に検 討 し,解 析 症 例 を 決 定 した. 8.デ ー タ解 析 デ ー タ の解 析 は,コ ン トロ ー ラ ー の指 導 の も と に塩 野 義 製 薬 株 式 会 社 解 析 セ ン タ ー が担 当 し,解 析 項 目の 特 性 に 応 じ てWilcoxonの 順 位 和 検 定 法,直 接 確 率 計 算 法 あ る い は カ イニ 乗 検 定 法 を 適 用 した.検 定 の有 意 水 準 は両 側0.05と した. 治 験 成 績 1.集 積 症 例 数 お よ び症 例 内 訳 総 投 与 症 例 数 はFig.3に 示 した よ う に2go例 (LFLX投 与 群:145例,PPA投 与 群145例)で あ り,有 効 性 お よび有 用 性 の評 価 は 除 外100例,脱 落 21例 を 除 い た169例(LFLX群:83例,PPA群: 86例)に つ い て行 った.ま た 安 全 性 の 評 価 は 除 外 2例,脱 落4例 を 除 い た284例(LFLX群:141例, PPA群:143例)で 行 い,そ の うち 臨 床 検 査 値 の検 討 は 投 与 前 後 に検 査 が実 地 され た268例(LFLX: 132例,PPA群:136例)で 行 った. 有 効 性 ・有 用 性 お よび 安 全 性 の症 例 構 成 に お い て,そ れ ぞ れ両 群 間 に有 意 差 は 認 め られ な か っ癒. な お,有 効 性.有 用 性 検 討 に お け る 除 外 ・脱 落 症 例 の 内 訳 はTable2に 示 した 通 りで あ っ た. 2.背 景 因 子 か らみ た 両 薬 剤 の 群 間 均 一 性 有 効 性 お よ び有 用 性 評 価 対 象 例169例 の 背 景 因 子 に つ い て 検 討 した. 1)性,年 齢,患 者 ・保 菌 者 別,疾 患,合 併 症 の 有 無,併 用 薬 の 有 無(Table3)な ど いず れ の 背 景 因子 に お い て も両 群 間 の症 例 構 成 に有 意 な 偏 りは認 め られ な か った. 疾 患 別 症 例 の 内 訳 で は 細 菌 性 赤 痢 がLFLX群 67/83例 (80.7%), PPA例67/86例 (77.9%)と 両 群 と も大 部 分 を 占 め て い た. そ の 他,投 与 開 始 日の 主 要 自他 覚 症 状 の 有 無 に お い て も,両 群 間 に 有 意 な偏 りは認 め られ な か っ た. 2)病 原 菌(Table 4) 病 原 菌 の 菌 属 お よび 赤 痢 菌 の菌 種 別 分 布 は,両 群 に 均 等 に分 布 し,有 意 な偏 りは認 め られ な か っ 感染症学雑誌 第63巻 第6号
感染性腸炎に対す るLFLXとPPAの 二 重 盲検 試 験 611
Fig. 3 Case distribution
Table 2 Reasons for exclusion and drop-out
た.そ の う ち,MIC測 定 試 験 に 供 さ れ た 分 離 菌174 株(LFLX群: 87株, PPA群: 87株)のMIC分 布 の 成 績 をTable5に 示 し た. 両 群 の 分 離 菌 に 対 す る そ れ ぞ れ 投 与 薬 剤 の MIC分 布 ピ ー ク 値 お よ びMIC8。 値 は,LFLX群 で は0.1,0.2μg/ml,PPA群 で は 両 方 と も1.56 μg/m1で あ り,両 薬 剤 のMIC分 布 に 有 意 な 偏 り が 認 め ら れ た(p≒0.0000) . し か し,両 群 よ り 分 離 さ れ た 各87株 に 対 す る LFLXあ る い はPPAのMIC値 は 両 群 に 均 等 に 分 布 し,両 群 間 に 有 意 な 偏 りは 認 め ら れ な か っ た. ま た,赤 痢 菌144株(LFLX群: 71株, PPA群: 73株)のMIC分 布 に お い て も,分 離 菌 全 体 のMIC 分 布 と 同 様 の 成 績 で あ っ た(Table5, Fig.4). 3.有 効 性 の 評 価 1)臨 床 効 果(対 症 状 効 果) 有 効 性 評 価 対 象 例169例 中 投 与 開 始 日 に 症 状 の あ っ た73例(LFLX群:35例, PPA群 二38例)の 臨 床 効 果 の 成 績 をTable6に 示 し た. 全 症 例 に お け る 著 効 率,有 効 率 はLFLX群 で は 51.4%, 91.4%, PPA群 で は63.2%, 84.2%で あ り,そ の う ち 細 菌 性 赤 痢57例(LFLX群: 30例, PPA群:27例)の 著 効 率,有 効 率 もLFLX群 で は 50.0%,90.0%,PPA群 で1ま63.0%,81 .5%で あ り,両 群 間 に 有 意 差 は 認 め ら れ な か っ た . 次 に,投 与 開 始 日 の 症 状 の うち 臨 床 効 果 の 評 価 に 従 来 か ら 用 い ら れ て い る 解 熱,血 便 消 失,便 性 平 成 元年6月20日
612 青 木 隆 一 他
Table 3 Background of cases evaluated for effectiveness and usefulness
* P: Exact probability z: Wilcoxon rank sum test
Table 4 Number of strains
回 復,排 便 回 数 の減 少 につ い て,そ れ ぞ れ に要 す る 日数 を 両 群 間 で比 較 した. (1)解 熱 に対 す る効 果(Fig.5) 発 熱 の み ら れ た27例(LFLX群: 12例, PPA 群: 15例)全 症 例 に お い て も,細 菌 性 赤 痢22例 (LFLX群: 11例, PPA群: 11例)に お い て も, 2日 以 内 に90%以 上 の 症 例 が,ま た4日 以 内 に 全 例 が解 熱 し,両 群 間 に有 意 差 は認 め られ な か った. (2)血 便 消 失 に 対 す る効 果(Fig.6) 血 便 を 認 め た34例(LFLX群: 14例, PPA群: 20例)全 症 例 に お い て も,細 菌 性 赤 痢28例(LFLX 群: 14例, PPA群: 14例)に お い て も,3日 以 内 の 消 失 率 はLFLX群 で は 約85%,PPA群 で は 約 70%で あ っ た が,両 群 間 に 有 意 差 は み と め ら れ な か っ た. (3)便 性 回 復 に 対 す る 効 果(Fig.7) 便 性 異 常 の み ら れ た70例(LFLX群: 34例, PPA群:36例)の 便 性 回 復 日 数 に お い て,LFLX 群 が 有 意 に 優 れ て い た(p=0.0225).3日 以 内 の 回 復 率 はLFLX群 で は79-4%(27例),PPA群 で は63.8%(23例)で あ っ た. 細 菌 性 赤 痢57例(LFLX群: 30例, PPA群: 27 例)に お い て は,両 群 間 に 有 意 差 は 認 め ら れ な か っ た. (4)排 便 回 数 の 減 少(1日2回 以 下)に 対 す る 効 果(Fig.8) 1日3回 以 上 の 排 便 を 数 え た50例(LFLX群: 26例, PPA群: 24例)の 排 便 回 数 減 少 日数 に お い 感 染 症 学 雑誌 第63巻 第6号
感染 性 腸 炎 に対 す るLFLXとPPAの 二 重 盲 検試 験 613
Table 5 Drug susceptibility distribution of clinical isolates (106CFU/ml)
Fig. 4 Drug susceptibility distribution of clinical isolates of Shigella spp. 144
strains (106CFU/ml)
* Drug: Drug used for determination of MIC
Group: group of cases administered
て, LFLX群 が 有 意 に 優 れ て い た(p=0.0150). 3日 以 内 の 減 少 率 はLFLX群 で は80.7%(21例), PPA群 で は54.2%(13例)で あ っ た.そ の う ち 細 菌 性 赤 痢40例(LFLX群: 24例, PPA群: 16例) に お い て,そ の 差 は 更 に 顕 著 で あ り,LFLX群 が 有 意 に 優 れ て い た(p=0.0027).3日 以 内 の 減 少 率 はLFLX群 で は83.3%(20例),PPA群 で は 43.8%(7例)で あ っ た. 2)細 菌 学 的 効 果(対 排 菌 効 果) 有 効 性 評 価 対 象 例169例 よ り分 離 さ れ た 病 原 菌 の 延 菌 株 数184株(LFLX群: 90株, PPA群: 94 株)で 検 討 した 細 菌 学 的 効 果 の成 績 をTable7に 示 した.そ の 内 訳 は赤 痢 菌 が148株(LFLX群: 73 株, PPA群: 75株)と 約80%を 占 め,病 原 大 腸 菌 が18株(LFLX群: 10株, PPA群: 8株),カ ン ピ ロバ ク タ ーが11株(LFLX群: 3株, PPA群 が 平成 元 年6月20日
614 青 木 隆 一 他
Table 6 Clinical effect
Fig. 5 Days required for defeverscence
Total cases Bacillary dysentery
Fig. 6 Days required for disappearance of bloody stool
Total cases Bacillary dysentery
感 染 性 腸 炎 に対 す るLFLXとPPAの 二 重盲 検 試 験 615
Fig. 7 Days required for improvement of stool character
Total cases Bacillary dysentery
Fig. 8 Days required for decrease in number of defecation (2 times/day)
Total cases Bacillary dysentery
Table 7 Bacteriological effect
616 青 木 隆 一 他 8株),そ の 他 の 感 染 性 腸 炎 の 病 原 菌 が7株(LFLX 群:4株,PPA群:3株)で あ っ た. 全 菌 株 に 対 す る 著 効 率,有 効 率 はLFLX群 で は 67.8%(61株),93.3%(84株),PPA群 で は54.3% (51株),80.9%(76株)で あ り,著 効 率 で は 両 群 間 に 有 意 差 は 認 め ら れ な か っ た が,有 効 率 に お い て はLFLX群 が 有 意 に 高 か っ た(P=0.0153).そ の うち,約80%を 占 め た 赤 痢 菌 に 対 す る 著 効 率, 有 効 率 はLFLX群 で は68.5%(50株),97.3%(71 株),PPA群 で は46.7%(35株),78.7%(59株) で あ り,著 効 率(p=0.0082),有 効 率(p=0.0007) と もLFLX群 が 有 意 に 高 か っ た. 次 に,病 原 菌 の 消 失 日 数 に つ い て 検 討 した 成 績 をFig.9に 示 し た. 全 菌 株 の 消 失 日 数 に お い て は,両 群 間 に 有 意 差 は 認 め ら れ な か っ た が,赤 痢 菌 に お い て はLFLX 群 が 有 意 に 優 れ て い た(p=0.0043).赤 痢 菌 の2 日 以 内 お よ び5日 以 内 の 消 失 率 はLFLX群 で は 68.5%(50株),94.5%(69株),PPA群 で は46.7% (35株),77.3%(58株)で あ っ た. ま た,赤 痢 菌 の う ち 株 数 の 多 か っ た2菌 種 の 消 失 日数 はFig.10に 示 し た よ うに,Shigella flex-neriで は 両 群 間 に 有 意 差 は 認 め ら れ な か っ た が,
Ssonneiに お い て はLFLX群 が 有 意 に 優 れ て い
た(p=0.0394).Ssonneiの2日 以 内 お よ び5日
以 内 の 消 失 率 は,LFLX群 で は64.6%(31株),
Fig. 9 Days required for eradication of organisms
Total organisms Shigella spp
Fig. 10 Days required for eradication of Shigella spp.
S. flexneri S. sonnei
感 染 性 腸 炎 に対 す るLFLXとPPAの 二 重 盲検 試 験 617
Table 8 Global clinical effect
Table 9 Side effect
91.7%(44株),PPA群 で は42.9%(21株),75.5% (37株)で あ っ た. 3)総 合 効 果(有 効 性) 有 効 性 評 価 対 象 例169例(LFLX群:83例,PPA 群:86例)に お い て,臨 床 効 果 お よ び 細 菌 学 的 効 果 を 勘 案 し 評 価 し た 総 合 効 果 の 成 績 をTable8 に 示 し た. 全 症 例 に お け る 著 効 率,有 効 率 はLFLX群 で は 61.4%(51例),92.8%(77例),PPA群 で は52.3% (45例),79.1%(68例)で あ り,著 効 率 で は 両 群 間 に 有 意 差 は 認 め ら れ な か っ た が,有 効 率 に お い て はLFLX群 が 有 意 に 高 か っ た(p=0.0144).そ の う ち 細 菌 性 赤 痢134例(LFLX群:67例,PPA 群:67例)に お い て も,著 効 率,有 効 率 はLFLX 群 で は62.7%(42例),97.0%(65例),PPA群 で は47.8%(32例),77.6%(52例)で あ り,前 者 で
Table 10 Laboratory finding
は 両群 間 に有 意 差 は 認 め られ な か っ た が,後 者 で はLFLX群 が 有 意 に 高 か った(p=0.0012). 4.安 全 性 の 評 価 1)副 作 用 の 有 無 の検 討 安 全 性 評 価 対 象 例284例(LFLX群:141例, PPA群:143例)の 副 作 用 はTable9に 示 した よ うに,LFLX群 の1例(0.7%)に 中 等 症 の悪 心 ・ 嘔 吐 ・下 痢 を 認 め(翌 日消 失,治 験 薬 は継 続),PPA 群 に副 作 用 発 生 例 は な か った が,両 群 間 に有 意 差 は 認 め られ な か った. 2)臨 床 検 査 値 異 常 の 検 討 安 全 性 評 価 対 象 例 中,治 験 薬 投 与 前 後 に臨 床 検 査 が 実 施 さ れ た268例(LFLX群:132例,PPA 群:136例)の 検 査 値 異 常 例 は,Table10に 示 した 平 成 元年6月20日
618 青 木 隆一 他 Table 11 Clinical usefulness
よ う にLFLX群 で は10例(7.6%),PPA群 で は7 例(5.1%)で あ り,両 群 間 に 有 意 差 は 認 め ら れ な か っ た.検 査 値 異 常 の 内 容 は 大 部 分 が 肝 機 能 検 査 の 軽 度 上 昇 で あ っ た. 5.有 用 性 の 評 価 有 用 性 評 価 対 象 例169例(LFLX群:83例,PPA 群:86群)に お い て,有 効 性 お よ び 安 全 性 を 勘 案 し評 価 し た 有 用 性 の 成 績 をTable11に 示 し た. 全 症 例 に お け る 「非 常 に 満 足 」率,「 満 足 」 率 は LFLX群 で は57.8%(48例),91.6%(76例),PPA 群 で は48.8%(42例),76.7%(66例)で あ り,「 非 常 に 満 足 」 率 で は 両 群 間 に 有 意 差 は 認 め ら れ な か っ た が,「 満 足 」率 に お い て はLFLX群 が 有 意 に 高 か っ た(p=0.0111).そ の うち,細 菌 性 赤 痢134 例(LFLX群:67例,PPA群:67例)に お い て も, 「非 常 に 満 足 」率,「 満 足 」率 はLFLX群 で は58.2% (39例),95.5%(64例),PPA群 で は46.3%(31例), 74.6%(50例)で あ り,「 非 常 に 満 足 」率 で は 両 群 間 に 有 意 差 は 認 め ら れ な か っ た が,「 満 足 」率 に お い て はLFLX群 が 有 意 に 高 か っ た(P=0.0011). 考 察 ニ ュ ー キ ノ ロ ン 系 抗 菌 剤LFLXの 感 染 性 腸 炎 (細 菌 性 赤 痢,病 原 大 腸 菌 腸 炎,カ ン ピ ロバ ク タ ー 腸 炎 な ど)に 対 す る 有 効 性,安 全 性 お よ び 有 用 性 を 客 観 的 に 評 価 す る 目 的 で,PPAを 対 照 薬 と す る 二 重 盲 検 法 に よ り比 較 検 討 し た. 対 照 薬 と し てPPAを 選 択 した 理 由 はPPAが LFLXの 化 学 構 造 と類 似 して い る こ と,細 菌 性 赤 痢 を 始 め とす る 感 染 性 腸 炎 に 対 して 適 応 が 認 め ら れ広 く使 用 さ れ て い る こ とか ら,最 も適 切 で あ る と判 断 し た た め で あ る.そ の 投 与 量 は 常 用 量 で, か つ 有 用 性 が 確 認 さ れ て い る1日2,000mg(分4) と した8).LFLXの 投 与 量 は,わ れ わ れ が 一 般 臨 床 試 験 に お い て,各 種 感 染 性 腸 炎 に 対 し そ れ ぞ れ 90%以 上 の 有 効 率 を得 た 既 報7)と同様,1日600mg (分3)と した. 総 投 与 例 数 は290例 で,除 外,脱 落 例 を 除 い た 有 効 性 お よ び 有 用 性 の 評 価 対 象 例 は169例(LFLX 群:83例,PPA群:86例),ま た 安 全 性 の評 価 対 象 例 は284例(LFLX群:141例,PPA群:143例) で あ った.除 外 例 が 多 か った の は薬 剤 投 与 時 に病 原 菌 が 陽 性 で あ る こ とを 治験 の 第 一 条 件 とした た め で あ る.さ らに 感 染 性 腸 炎 は経 過 が 急 性 で あ る た め 細 菌 検 査 の 結 果 が判 明 す る前 に 薬 剤 を 見 込 み 投 与 せ ざ る を 得 な か った こ と,ま た 赤 痢 菌 が検 出 され 入 院 した 例 で は薬 剤 投 与 開 始 時 既 に陰 性 で あ る症 例 が 多 い こ と な ど,感 染 性 腸 炎 の 治 験7)9)∼14) で は しば しば 遭 遇 す る と い う特 殊 事 情 に よ る もの で あ る. 背 景 因 子 につ い て は 性,年 齢,患 者 ・保 菌 者 別, 疾 患 な ど,ま た 両 群 よ り分 離 され た 菌 株 に 対 す る LFLXあ る い はPPAのMIC値,い ず れ も両 群 間 感染症学雑誌 第63巻 第6号
感 染 性腸 炎 に 対 す るLFLXとPPAの 二 重 盲 検 試験 619 に 有 意 な 偏 り は 認 め られ ず,均 質 の 背 景 を 有 す る 集 団 と し て 解 析 を 行 っ た. 有 効 性 お よ び 有 用 性 の 評 価 対 象 例 か ら 分 離 さ れ,MIC測 定 に 提 供 さ れ た 菌 株174株(LFLX群: 87株,PPA群:87株)に つ い て のMIC分 布 の ピ ー ク 値 お よ びMIC8。 値 はLFLX群 で0.1,0.2 μg/m1,PPAで は 両 方 と も1.56μg/m1で あ っ た. ま た,赤 痢 菌144株(LFLX群:71株,PPA群: 73株),のMIC分 布 も 分 離 菌 全 体 のMIC分 布 と 同 様 の 成 績 で あ っ た.な お,PPAに 対 し て 中 等 度 耐 性 を 示 した 赤 痢 菌 株19株(12.5μg/ml:17株,25 μ9/ml:2株)のLFLXに 対 す るMICはFig.11 に 示 す よ う に,0.39∼3.13μ9/m1の 範 囲 に あ り, LFLXに 対 し て も そ のMICは 高 い 傾 向 が 認 め ら れ た. 主 治 医 判 定 に よ る 臨 床 効 果 に つ い て,全 症 例(73 例)に 対 す る 有 効 率 はLFLX群91.4%,PPA群 84.2%で あ り,ま た 細 菌 性 赤 痢(57例)の そ れ は LFLX群90.0%,PPA群81.5%で,共 に 両 群 間 に 有 意 差 は 認 め ら れ な か っ た.こ れ は 細 菌 性 赤 痢 を 始 め と す る 最 近 の 感 染 性 腸 炎 は 比 較 的 軽 症 例 が 多 く,か つ 自然 治 癒 の 傾 向 が 強 い た め 差 が 出 な か っ た も の と思 わ れ る.し か し,解 熱,血 便 消 失,便
Fig. 11 Correlogram of MIC between LFLX and PPA against Shigella spp.
144 strains were tested: Inoculum size 108 CPU/m1
性 回 復,排 便 回 数 の減 少 な どの各 項 目につ い て, そ れ ぞ れ に要 す る 日数 を 両 群 間 で 比 較 す る と,排 便 回 数 の減 少 効 果 で は 全 症 例(50例)に つ い て も 細 菌 性 赤 痢 に つ い て もLFLX群 が 有 意 に 優 れ,細 菌 性 赤 痢 に お い て は そ の 差 が さ らに 顕 著 で あ っ た.便 性 回復 効 果 で も全 症 例(70例)に お い て の み 有 意 差 が 認 め ら れ た.細 菌 性 赤 痢 に お け る LFLX群 の3例 の無 効 例 は,う ち2例 が 便 性 回 復 の お くれ(た だ し細 菌 学 的 効 果 は 有 効 お よ び 著 効),1例 が 再 燃 に よ る もの で あ った. 次 に有 効 性 評 価 対 象169例 よ り分 離 され た184株 に 対 す る 細 菌 学 的 効 果 で の 有 効 率 はLFLX群 93.3%,PPA群80.9%で,LFLX群 が 有 意 に 高 か った.こ の うち,80%以 上 を 占 め る赤 痢 菌 に 対 す る著 効 率,有 効 率 は そ れ ぞ れLFLX群68.5%, 97.3%,PPA群46.7%,78.7%で あ って,著 効 率, 有 効 率 共 にLFLX群 が 有 意 に 優 っ て い た.病 原 菌 消 失 ま で の 日数 の比 較 で は,全 菌 株 を 対 象 に した 場 合 に は 両 群 間 に有 意 差 は認 め られ な か った が, 赤 痢 菌 に つ い て はLFLX群 が 有 意 に優 って い た. 次 に,LFLX群 の 無 効 例 を み る と,赤 痢 菌 の2例 は いず れ もSsonne云 に よ る再 排 菌 例 で あ り,そ のLFLXのMICは そ れ ぞ れ0.1,1.56μ9/mlで あ っ た.病 原 大 腸 菌 の1例 はEPEC,ETECの 複 数 菌 感 染 例 で,ETECに 対 して は 著 効 で あ った が,EPECは 投 与 終 了 後 た だ1回 の み 菌 が検 出 さ れ た.Cjのuniの1例 は 持 続 排 菌 例(LFLXの MICは25μ9/ml)で あ っ た.A.hydrophizaの2 例 は共 に投 与 終 了 後4日 目,8日 目に1回 の み 排 菌 を 認 め た も の で あ る. 以 上 の 臨 床 効 果 お よび 細 菌 学 的 効 果 を勘 案 した 総 合 効 果(有 効 性)の 結 果 で は,全 症 例(169例) の 有 効 率 はLFLX群92.8%,PPA群79.1%で あ っ て,LFLX群 が有 意 に優 っ て い た.細 菌 性 赤 痢(134例)に つ い も有 効 率 はLFLX群97.0%, PPA群77.6%で,LFLX群 が 有 意 に 高 か った. 安 全 性 評 価 対 象 例284例 中 の 副 作 用 はLFLX群 1例(0.7%)に の み 中 等 度 の 悪 心,嘔 吐,下 痢 が 1日 認 め られ た が,治 験 薬 を 中 止 す る程 の も の で は な か った.臨 床 検 査 値 の 変 動 は268例 に つ い て検 討 され,LFLX群 に10例(7.6%),PPA群 に7例 平 成 元 年6月20日
620 青 木 隆 一 他 (5.1%)異 常 が 認 め ら れ た が,両 群 間 に 有 意 差 は み ら れ ず,か つ 異 常 の 内 容 も 大 部 分 は 肝 機 能 検 査 値 の 軽 度 上 昇 で あ っ た. 以 上,全 症 例 特 に 細 菌 性 赤 痢 に お い て 有 効 性, 有 用 性 と も に 極 め て 優 れ た 成 績 で あ っ た こ と.カ ソ ピ ロ バ ク タ ー 腸 炎,病 原 大 腸 菌 腸 炎 な ど に つ い て は 対 象 例 が 少 な か っ た が,MICお よ び 一 般 臨 床 試 験7)の 成 績 か ら 推 論 す れ ば 有 用 性 を 期 待 で き る こ と.安 全 性 に つ い て も 副 作 用,臨 床 検 査 値 異 常 共 に 極 め て 軽 微 な も の で あ っ た こ と.さ ら に こ れ ま で わ れ わ れ がPPAを 対 照 薬 と し て 行 っ た OFLXlo),ENX11),NFLX13),CPFX14)の 二 重 盲 検 法 に よ る 治 験 の 成 績 と比 較 し て も 遜 色 の な い も の で あ る こ と.こ れ ら を 総 合 的 に 判 断 す る と,LFLX は 細 菌 性 赤 痢 を 始 め とす る 感 染 性 腸 炎 の 治 療 に 推 奨 で き る も の と 考 え ら れ る. 文 献 1) 広 瀬 徹, 他 二NY-198の 細菌 学 的 評価. Chemo-therapy, 36 (S-2): 1-24, 1988. 2) 横 田 健, 他: NY-198の 試 験 管 内抗 菌 力, 細胞 毒 性 及 び マ ウ ス培 養 マ ク ロ フ ァー ジ (Mφ) との協 力 的 殺 菌 作 用. Chemotherapy, 36 (S-2): 25-35, 1988. 3) 五 島 瑳智 子, 他: 新 ピ リ ドンカル ボ ン酸 系 抗菌 剤 NY-198のin vitro, invivo抗 菌 作 用. Chemo-therapy, 36 (S-2): 36-56, 1988.
4) 西 野 武 志, 他: NY-198のin vitroお よびin vivo 抗 菌 力 に つ いて. Chemotherapy, 36 (S-2): 57-74, 1988. 5) 後 藤 延 一, 他: NY-198の 腸 炎 起 因 菌 保 存 菌 株 に 対 す る 試 験 管 内 抗 菌 力. Chemotherapy, 36 (S.2): 87-92, 1988. 6) 後 藤 延 一, 他: NY-198の 腸 炎 起 因 菌 新 鮮 臨 床 分 離 株 に 対 す る 試 験 管 内 抗 菌 力. Chemotherapy, 36 (S-2): 93-98, 1988-7) 青 木 隆 一, 他: 感 染 性 腸 炎 に 対 す るNY-198の 臨 床 的 研 究. Chemotherapy, 36 (S-2): 792-802, 1988. 8) 鵜 飼 新 一 郎, 他: 急 性 腸 炎 (主 と し て 赤 痢) に 対 す るPipenidic acidの 治 療 効 果 の 検 討. Chemo-therapy, 23 (9): 2894-2899, 1975. 9) 斎 藤 誠, 他: 細 菌 性 赤 痢 に 対 す る ピ ペ ミ ド酸 (PPA) と カ ナ マ イ シ ン (KM) の 二 重 盲 検 法 に よ る 治 療 効 果 の 検 討. 感 染 症 誌, 57: 303-317, 1983. 10) 斎 藤 誠, 他: 感 染 性 下 痢 症 に 対 す る オ フ ロ キ サ シ ン (OFLX: DL-8280)と ピ ペ ミ ド酸 (PPA) の 二 重 盲 検 法 に よ る 治 療 効 果 の 検 討. 感 染 症 誌, 58: 965-981, 1984. 11) 橋 本 博, 他: 感 染 性 下 痢 症 に 対 す るEnoxacin (ENX,AT-2266) とPipemidic acid(PPA)の 二 重 盲 検 法 に よ る有 用 性 の 比 較 検 討. 感 染 症 誌, 58: 1114-1134, 1984. 12) 日本 化 学 療 法 学 会MIC測 定 法 改 訂 委 員 会: 最 小 発 育 阻 止 濃 度(MIC)測 定 法 再 改 訂 に つ い て. Chemotherapy, 29: 76-79, 1981. 13) 青 木 隆 一, 他: 感 染 性 腸 炎 に 対 す るNorfloxacin (NFLX)とPipemidicacid (PPA)の 二 重 盲 検 法 に よ る 治 療 効 果 の 検 討. 感 染 症 誌, 61 (7): 830 -848 , 1987. 14) 青 木 隆 一, 他 二感 染 性 腸 炎 に 対 す るCiprofloxa-cin (CPFX,BAYo9867) とPipemidicacid
(PPA)の 二 重 盲 検 法 に よ る 治 療 効 果 の 比 較 検 討. 感 染 症 誌, 62 (4): 322-339, 1988.
感 染 性腸 炎 に 対す るLFLXとPPAの 二 重 盲 検試 験 621
Comparison of Cinical Efficacy of Lomefloxacin (LFLX, NY-198) and
Pipemidic Acid (PPA) in the Treatment of Infectious
Enteritis by a Double-Blind Method
The Japan Research Committee of Lomefloxacin Research Group Enteritis (Manager: Takakazu AOKI)
Takakazu AOKI
Infectious Disease Center, Osaka municipal Momoyama Hospital, Osaka Nagayo SHIMIZU
Department of Infectious Diseases, Tokyo Metropolitan Ebara Hospital, Tokyo Isao TOMIZAWA & Yoshihiko TAKIZAWA
Department of Infectious Diseases, Minamigaoka Branch, Sapporo City General Hospital, Sapporo Yoshio MATSUBARA, Yoshiro NITTA, Hiroko SAGARA,
Takehisa SE0 & Naoko KANEHISA
Department of Infectious Diseases, Tokyo Metropolitan Toshima Hospital, Tokyo Misako MURATA, Gohta MASUDA, Masayoshi NEGISHI & Chenden YOUNG
Department of Infectious Diseases, Tokyo Metropolitan Komagome Hospital, Tokyo Yatsuka IMAGAWA & Kenji OHNISHI
Department of Infectious Diseases, Tokyo Metropoliatn Bokuto Hospital, Tokyo Tsuyoshi YAMAGUCHI, Masachika TSUJI & Jun-ichiro HOSOYA Department of Infectious Disease, Tokyo Metropolitan Ebara Hospital, Tokyo
Jyuji HOSHINO
Department of Infectious Diseases, Yokohama Municipal Manji Hospital, Yokohama Fukiko AMANO, Chie NAKAMURA & Akira MURAMOTO
Department of Infectious Diseases, Nagoya City Higashi General Hospital, Nagoya Yoshio KOBAYASHI, Chihiro IMAI & Yong-ki KIM
Department of Infectious Diseases, Kyoto City Hospital, Kyoto Mitsuru AKAO
Infectious Disease Center, Osaka Municipal Momoyama Hospital, Osaka Akio TODO, Yasuyoshi IBUKI, Hideshi KOMORI,
Syusuke TOMITA & Hiroshi KASHIDA
Department of Gastroenterology, Kobe City General Hospital, Kobe Tadakazu AISAKA, Masanobu NIIMI & Masayoshi NAKAMURA Department of Internal Medicine, Hiroshima City Funairi Hospital, Hiroshima
Toshiko MATSUO
Department of Internal Medicine, Asahigaoka Municipal Hospital, Kita-kyusyu Makoto SAITO
School of Medicine, Showa University, Tokyo Rintaro NAKAYA, Sankichi HORIUCHI, Yoshio INAGAKI,
Hideko TAKANO & Nobuichi GOTO
Department of Microbiology, School of Medicine, Tokyo Medical and Dental University, Tokyo Yoshio KOBAYASHI
Department of Central Clinical Laboratory, School of Medicine, Keio University, Tokyo Kazue SAKU
Department of Clinical Laboratory, Tokyo Metropolitan Bokuto Hospital, Tokyo Controller: Yoshifumi TAKEDA
The Institute of Medical Science, The University of Tokyo
The clinical efficacy, safety and usefulness of lomefloxacin (LFLX, NY-198), a new quinolone
622 青 木 隆 一 他